水浸沈下を対象とした 宅地盛土の性能評価方法 · 2015-06-22 ·...
TRANSCRIPT
1
水浸沈下を対象とした
宅地盛土の性能評価方法
2015. 5. 27
神戸大学大学院 工学研究科
教授 澁谷 啓
宅地防災講演会主催:神戸市建設局
① 基本理念は「良い商品を安く提供」することにある
• 安全・高品質・安価な宅地の提供
• 消費者(end-user)の視点が最重要
宅地開発・造成に関する理念・目標
2
② 目標
消費者の自由意志による以下の選択を可能にする
a. 宅地の安全性に関するリスクを正しく認識した上で放置
➡100%自己リスク
b. 宅地の安全性に関するリスクを保険でカバー➡法整備が必要
c. 積極的なリスク低減➡地盤調査・対策に投資
宅地開発・造成に関する理念・目標
3
③ 理念・目標達成のための手立て
• 宅地造成マニュアルの改善➡宅地の品質保証
• 調査・試験の高精度化と安価な対策工の開発
• 新たな技術者資格制度の設立
• 情報開示の義務化,等
宅地開発・造成に関する理念・目標
4
®
地盤品質判定士協議会〒112-0011 東京都文京区千石4-38-2(公社)地盤工学会JGS会館内Tel.03-3946-8766,Fax.03-3946-8678E-mail:[email protected]:http://www.jiban.or.jp/jage/
地盤品質判定士®
地盤品質判定士は,宅地の造成業者,不動産業者,住宅メーカー,工務店,住宅及び宅地取得者,等のそれぞれの間に立ち,住宅用地盤としての適性や地盤災害リスク等に対して依頼者が適切な判断をできるように,地盤情報の量と質に応じた第三者的な地盤の評価(品質判定)を評価書として提供し,分かり易く説明する,地盤品質判定士協議会が認定した技術者資格
土地探しで助言が欲しい時,土砂災害や地震時の液状化が心配な時,その他,地盤についての疑問・相談は地盤品質判定士に!
7
造成業者不動産業者
住宅メーカー取得者(購入者)
地盤の品質の確認と説明
住宅の新築・建替え
宅地の造成
地質・地形・地盤の調査
住宅等(小規模建築物)の基礎
地盤の液状化
地盤・抗土圧構造物の安定性及び基礎の沈下・傾斜
地盤改良と地山補強
技術者倫理
地盤品質判定士
評価書
宅地のミニ開発等
法制度の整備・技術図書への記載
協議会による適切なルール作り
網羅的な知識・技術力
住宅の品質確認等促進法(性能表示)
宅地建物取引業法(説明事項)
建築物の構造関係技術基準解説書(黄色本)
建築基礎構造設計指針
・・
資格制度「地盤品質判定士」のコンセプト
8
2
• 創設:2013年2月
• 主体:地盤品質判定士協議会【(公社)地盤工学会,(一社)全国地質調査業協会連
合会,(一社)地盤保証検査協会,(NPO)住宅地盤品質協会,(公社)土木学会,(一社)日本建築学会,(一社)建設コンサルタンツ協会,(一社)全国土木施工管理技士会連合会】
• 事務局:(公社)地盤工学会
• 対象:建築,土木,不動産・住宅関連産業に従事する地盤技術者
地盤品質判定士資格制度
※ 地盤品質判定士協議会のHPより抜粋
受験:1474名合格: 384名
7
受験:658名合格:204名
二次合格31%
二次不合格69%
二次合格26%
二次不合格74%
地盤工学会:地盤調査の方法と解説、2004
宅地地盤の品質評価方法の現状
スウェーデン式サウンディング試験
(SWS試験)
8
JIS規格(JIS A 1221)
戸建て住宅の地盤調査
(N値,支持力,地盤の硬軟)
地盤の真の性能を正しく評価できない
(変形とは陽に関連しない!)
(単位:cm)
支持地盤 構造種別コンクリートブロック構造
鉄筋コンクリート造,壁式鉄筋コンクリート構造
圧密層基礎形式 布 独立 布 べた
標準値(最大値) 2(4) 8(10) 10(20) 10~(15)
風化花崗岩(まさ土)
標準値(最大値) - 1.5(2.5) 2.5(4.0) -
砂層 標準値(最大値) 1.0(2.0) 2.0(3.5) - -
洪積粘性土 標準値(最大値) - 1.5~2.5(2.0~4.0) - -
圧密層
構造種別 基礎形式 標準値 最大値
木造布べた
2.5
2.5~(5.0)5.0
5.0~(10.0)
即時沈下 木造 布 1.5 2.5
(注)圧密層については圧密終了時の沈下量(建物の剛性無視の計算値),そのほかについては即時沈下量,()は2重スラブなど十分剛性の大きい場合木造の全体の傾斜角は標準で1/1000,最大で2/1000~3/1000)以下20cm以下は,高盛土や軟弱層が厚い場合などを除いた通常の造成で,木造戸住宅(2階建て)の許容残留沈下量(地宅地防災マニュアルの解説)
建築基礎構造設計指針
構造別の総沈下量の限界値
宅地盛土の沈下に関する規定の現状①
9 小規模建築物基礎設計の手引き
不同沈下時の沈下形状
傾斜角φ変形角θ2
変形角θ1
全体傾斜角φ
(c)への字型
図. 沈下傾斜の形状分類
変形角θ1
最大傾斜角φmax
(b)V字型
全体傾斜角φ 総沈下量Smax
(a)変形無し
一様な沈下
不同沈下量ΔS
相対沈下量SD
【一体傾斜】 【変形傾斜】
沈下傾斜量 下限 標準 上限
傾斜角φ 4/1000 6~8/1000 -
変形角θ2 3/1000 5/1000 8/1000
表. 小規模建築物の傾斜角と変形角の限界値
宅地盛土の沈下に関する規定の現状②
※ 不同沈下設計目標値:傾斜角(3/1000),変形角(2.5/1000)
10
(イ) (ろ) (は)
レ
ベ
ル
住宅の種類 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性
木造住宅,鉄骨造住宅,鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅
1
壁又柱
3/1000未満の勾配(凹凸の少ない仕上げによる壁又は柱の表面と,その面と垂直な鉛直との交差する線((2m程度以上の長さのものに限る)の鉛直線に対する角度をいう.以下この表において同じ)の傾斜
低い
床
3/1000未満の勾配(凹凸の少ない仕上げによる床の表面における2点(3m程度以上離れているものに限る.)の間を結ぶ直線の水平面に対する角度をいう.以下この表において同じ)の傾斜
2 3/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜 一定程度存する
3 6/1000以上の勾配の傾斜 高い
「国土交通省告示第1653号」
不等沈下:壁または柱・床(排水等の目的で勾配が付されているものを除く)
11
宅地盛土の沈下に関する規定の現状③
• 許容残留沈下量は実測の沈下性状から,供用後の宅地として機能が損なわれることのな
い値として,盛土高や載荷重の大きさに応じて決める必要がある.
一例として,鉄筋コンクリート造の連続(布)基礎で,圧密沈下の場合の許容最大沈下
量を20cmと定めている. 「建築基礎構造設計指針」((社)日本建築学会,昭和63年1月)
木造戸建住宅(二階建て)を予定建築物として想定するような場合(高盛土や軟弱層
が厚い場合を除く)の許容残留沈下量として,宅地の造成完了時点から宅地の購入者
への引き渡しの時期までの間を残留沈下時間と設定し,20cm程度以下の数値を目安と
している.
• 残留沈下量の目標値を決定するに当たっては,土地利用や施設位置などの宅地条件の他に,供用時期とその後の沈下速度にも着目して,その妥当性を評価することが重要
• 二次圧密を生じやすい泥炭質地盤もしくは軟弱層の厚い地盤では,二次圧密沈下を別途考慮する必要がある.
宅地盛土の沈下に関する規定の現状④
許容残留沈下量(宅地防災マニュアルの解説)
12
3
目的:住宅地盤の品質管理および品質保証のための原位置水浸沈下試験に関するガイドラインの作成
NPO住宅地盤品質協会と神戸大学との共同研究
将来的には、NPO住宅地盤品質協会、地盤品質判定士協議会、等と連携し、当該試験方法の基準化を目指す
【スケジュール】
平成26年度 ガイドライン案の作成
平成27年度 現場試行実験
平成28年度以降 基準化の検討
水浸沈下とは…
締固め不足の宅地盛土に降雨や地下水が流入
➡️地盤沈下(水浸沈下)
地盤の飽和化によるサクションの消失コラプス(Collapse)現象
14
水浸沈下の概念
原因
つぶつぶ+水+空気
(不飽和)
つぶつぶの隙間が全て水
つぶつぶの隙間が全て空気
つぶつぶの隙間が水と空気
つぶつぶ+水(飽和)
つぶつぶ+空気(乾燥)
表面張力
15
コラプス現象
コラプス現象
供試体を水浸
圧密過程
沈下量発生および収束
16
基礎研究成果(H23~H25年度)
室内水浸試験@神戸大学
細粒分(0.075mm未満) (%)
礫分(2 ~ 75mm) (%)
砂分(0.075 ~ 2mm) (%)
細粒分(0.075mm未満) (%)
礫分(2 ~ 75mm) (%)
砂分(0.075 ~ 2mm) (%)
:多可町試料(4)
:西宮市試料(4)
:春日栗柄線試料(3)
{SG}
西宮風化花崗岩
豊楽公園
剣谷第六公園
新池北公園
A-1
A-2
B-1
B-2
新東名設楽原P.A
新東名額田I.C
新名神佐保工事
No.62
C
A-下
西神戸盛土材
:西神戸盛土材試料(1)
:新東名・新名神試料(3)凡例
17
試験した盛土材料(15種類)
0.001 0.01 0.1 10
20
40
60
80
100
粒径 (mm)
通過重量百分率
(%
)
D,新池北公園
C,剣谷第六公園
B,豊楽公園
A,風化花崗岩多可町A1
多可町A2
多可町B1
多可町B2 仮置土A−下
新名神 佐保
新東名 額田
新東名 設楽原P.A
No.62盛土材西神戸盛土材 仮置土C
砂分
(%)
シルト
(%)粘土(%)
A-1 75.9 11.1 13.0
A-2 84.2 10.8 5.0
B-1 61.8 29.7 8.5
B-2 85.4 7.8 6.8
A風化花崗岩 75.4 12.0 12.6
B豊楽公園 80.4 11.2 8.4
C剣谷第六公園 74.0 14.1 11.9
D新池北公園 82.9 8.4 8.7
新東名,設楽原P.A 52.0 27.8 20.2
新東名,額田I.C 76.4 21 2.6
新名神,佐保工事 47.2 25.5 27.3
仮置土A-下 47.5 32.6 19.9
仮置土C 48.2 28.8 23.0
No.62盛土材 56.0 25.5 18.5
西神戸盛土材 76.1 11.7 12.2
粒度分布
4
2mmふるい通過試料(A-a法)
最大乾燥密度ρdmax (g/cm3)
最適含水比wopt (%)
A-1 1.941 12.1
A-2 1.860 12.0
B-1 1.845 13.3
B-2 1.890 11.6
A風化花崗岩 1.899 11.5
B豊楽公園 1.870 12.5
C剣谷第六公園 1.881 12.5
D新池北公園 1.863 12.4
新東名,設楽原P.A 1.614 21.4
新東名,額田I.C 1.783 12.6
新名神,佐保工事 1.715 17.7
仮置土A-下 1.773 16.0
仮置土C 1.855 14.6
No.62盛土材 2.037 10.1
西神戸盛土材 1.860 14.0
19
締固め試験結果(A-a法)
広範囲の載荷応力で初期含水状態が盛土材の水浸沈下特性に及ぼす影響に関しては未だに体系的な知見が得られていない.
水浸試験
試験条件
試料状態 撹乱試料
締固め度, Dc 80%, 85%,90%,95%
初期含水比最適含水比(wopt)
乾燥側含水比(wdry)湿潤側含水比(wwet)
鉛直応力 50,100,200,400 (kPa)
ρd (g/cm3)
w (%)dry wetopt
ρdmax
85%
20
最大粒径:2mm
一層,静的締固め
40mm
60mm
【供試体条件】
水侵沈下に及ぼす上載圧と初期含水状態の影響
乾燥側 最適含水比 湿潤側
50kPa
100kPa
200kPa
400kPa
凡例
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
平荘ダム
まさ土
購入土
上載圧および初
期含水比が
小さいほど
水浸沈下が大
Dc=95%で水浸沈下は生じない!!
実験結果(Dc~ひずみ)
乾燥側 最適含水比 湿潤側
50kPa
100kPa
200kPa
400kPa
凡例
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
75 80 85 90 95 1000
5
10
15
20
締固め度, Dc (%)
水浸による圧縮ひずみ
,
(%)
平荘ダム
まさ土
購入土
Fc
52.2
51.8
19.9
Fcが低いほど
水浸沈下が小
実験結果(Dc~ひずみ)
23
※9.5mmふるい通過分試料 試料A
土粒子密度ρs(g/cm3) 2.737
最大乾燥密度ρdmax(g/cm3) 1.458
最適含水比wopt(%) 25.7
礫分(%) 3.9
砂分(%) 47.2
細粒分(%) 48.9
0.001 0.01 0.1 1 10 1000
20
40
60
80
100
粒径 (mm)
通過質量百分率
(%
)
最大粒径9.5mm
10 20 30 401.30
1.40
1.50
含水比, w (%)
乾燥密度
,
d (
g/c
m3)
wopt = 25.7 (%)
dmax = 1.458 (g/cm3)
最大粒径9.5mm
ゼロ空気間隙曲線
模型地盤による浸透実験@神戸大学
24
【模型地盤寸法】高さ25cm×幅50cm×奥行き15cm
【地盤初期条件】
w0=6.2%(Sr0=9.8%)
Dc=68.7%(d=1.002g/cm3)
・上載圧はかけない
水分計の設置位置
模型地盤による浸透試験@神戸大学
5
25
𝑆𝑟 =𝜗
𝑛× 100(%) 𝜗:水分計で計測された体積含水率
𝑛:初期間隙率
𝑆𝑟:飽和度
②
③ ④
0 60 120 1800
20
40
60
80
100
:測定点②
:測定点③
:測定点④
注水開始からの経過時間,t (min)
換算飽和度,
Sr(
%)
模型地盤による浸透試験の結果
0 60 120 1800
20
40
60
80
100
:測定点②
:測定点③
:測定点④
注水開始からの経過時間,t (min)
換算飽和度,
Sr(
%)
26
𝑆𝑟 =𝜗
𝑛× 100(%) 𝜗:水分計で計測された体積含水率
𝑛:初期間隙率
𝑆𝑟:飽和度
②
③ ④
水が 深度5cm到達までに10~15分
模型地盤による浸透試験の結果
0 60 120 1800
20
40
60
80
100
:測定点②
:測定点③
:測定点④
注水開始からの経過時間,t (min)
換算飽和度,
Sr(
%)
27
水が 深度17.5cm到達までに1時間半
水分計の設置深度:5~15cmが目安
②
③ ④
𝑆𝑟 =𝜗
𝑛× 100(%) 𝜗:水分計で計測された体積含水率
𝑛:初期間隙率
𝑆𝑟:飽和度
模型地盤による浸透試験の結果
④
②
④
②
④
②
④
②
④
②
④
②飽和度(%)飽和度(%)飽和度(%)
100
80
70
5030
20
100
80
70
5030
20
100
80
70
5030
20
(a) t = 30min (a) t = 60min (a) t = 90min小型地盤模型試験の浸潤前線と解析結果の比較
浸透流が深度17.5cn(測定点②)に達するまで1時間強を要した
模型試験と浸透流解析結果の比較
29
・試験地盤面から深度10cmを水分計の設置位置の目安
・水分計の反応時間が原位置水浸沈下試験の終了時刻
原位置水浸沈下試験では簡易性を重視しているため,可能な限り試験時間を短縮したい
模型試験および浸透流解析から...
模型試験と浸透流解析の比較
30
○ 現場試験での沈下の有無を判断⇒密度の異なる盛土を用意
・試験盛土の条件高さ1m,天端2m×2m
・初期含水比自然含水状態(w=16%)
・上載圧20kPa(おもり100kg)
・SWS試験,現場密度試験を実施
パターン1密度 小(緩詰め)
パターン2密度 大(締固め)
Dc=77.5%(d=1.475g/cm3)
Dc=55.8%(d=1.062g/cm3)
水分計の設置位置
100cm
試験盛土@住宅地盤品質協会+神戸大学
6
31
注水開始から2分強で崩壊
不良地盤
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1050
40
30
20
10
0
注水開始からの経過時間,t (min)
水浸による沈下量,
S(m
m)
水浸沈下量
ゆる詰め盛土(Dc=55.8%)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 241
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
:① :② :③ :④
注水開始からの経過時間,t (hour)
換算飽和度,
Sr (%
)
水浸による沈下量,
S(m
m)
水浸沈下量
土壌水分センサー
32
ましな盛土(Dc=77.5%)
33
加古川
土粒子密度s(g/cm3) 2.684
最大乾燥密度dmax(g/cm3) 1.903
最適含水比wopt(%) 11.9
礫分(%) 44.0
砂分(%) 25.0
細粒分(%) 31.05 10 15 20 25
1.60
1.70
1.80
1.90
2.00
含水比, w (%)
乾燥密度
,
d (
g/c
m3)
ゼロ空気間隙曲線
A–a法締固め曲線(最大粒径19mm)
dmax=1.903g/cm3
wopt
=11.9%
0.001 0.01 0.1 1 10 1000
20
40
60
80
100
粒径 (mm)
通過質量百分率
(%
) 原粒度
現場水浸沈下試験の対象試料
条件 室内 wopt Dc=75% 室内 wwet Dc=75% 現場 wwet Dc=77.5%
圧縮ひずみ(%) 0.70 1.25 0.54
水浸ひずみ(%) 0(-0.30) 0(-0.05) 0.17
沈下ひずみ(%) 0.40 1.20 0.71
現場vs室内 水浸試験の結果の比較
■ 上載圧が大きくなるほど,初期含水状態が乾燥側になるほど水浸による圧縮ひずみが大きくなる
■ 試料によらずDcが増えれば水浸による圧縮ひずみが減少し,Dc=95%以上で沈下がゼロ
■ 所定の密度で締固められた盛土材料の沈下量について
① 初期状態から圧密完了後までは初期の含水状態を含めた応力経路に依存
② 初期状態で乾燥している供試体ほど水浸による沈下ひずみが圧密による沈下ひずみより大きくなる
③ 水浸後の乾燥密度は圧力が一定であれば初期含水状態によらず一定値に収束する
35
室内水浸試験のまとめ
36
■ 注水箇所から同心円状に浸透
■ 深度10cm程度が水分計の設置位置に適切
浸透流模型実験および現場水浸試験のまとめ
7
住宅地盤での性能評価手法に関する
原位置水浸沈下試験のガイドライン(案)
38
試験の目的
本試験は住宅地盤に対して一定荷重を載荷し,一定量の水を
地盤内に供給することで地盤の沈下量を計測し,盛土全体の水浸
による沈下量を測定するための試験.その結果から,最終的に住
宅地盤の水浸沈下を評価することが目的.試験自体は住宅地盤
の表層部分で実施し,補足式によって盛土全体の水浸沈下量を
推定.
39
原位置水浸沈下試験方法
適用範囲
この規格は,盛土により造成された住宅地盤(以下,地盤)を対象とし,原位置
において地盤表面の水浸沈下量を測定する試験方法について規定
用語の定義
・ 沈下は,載荷板を設置してから所定の荷重を載荷し終わった時までの圧縮沈下
と地盤を水浸させたときに生じる水浸沈下の2種類を定義
・ 沈下ひずみとは,測定された地盤表面の沈下量を対象深さで除した値
原位置水浸沈下試験方法
試験装置および器具
①載荷板:直径φ=25cmの円形を標準とし,上下面が平滑な金属板
②載荷装置:宅地地盤の表面に,所定の一定荷重を載荷できる能力を有する器具あ
るいは装置を使用し,スウェーデン式サウンディング試験で用いられている
おもりまたはこれに準ずる載荷装置
③注水用円管:掘削孔壁面を止水する目的で設置し,円管の直径Dは,載荷板直
径 の3倍以上
④敷き砂:載荷重を地盤に均等に作用させるために,地表面と載荷板の間に標準砂も
しくは粒子破砕性の小さい粒状試料
⑤変位計:最小メモリが1/100mmで,最大20mmまで測定できるダイヤルゲージまたはこ
れに準ずる性能の変位計
⑥沈下量測定装置:変位計取り付け装置を備えた載荷板の沈下量の測定装置
⑦浸透流感知装置:注水した浸透水が地盤内の所定深度に到達したことを感知する
装置(光ファイバー,電圧計など)
原位置水浸沈下試験方法 試験方法
①試験実施箇所の選定:住宅基礎の端部において,少なくとも直下の盛土の厚さが最大となる地点およびその対角線上の2地点で実施
②現場密度測定試験の実施:上記①の試験実施地点のそれぞれにおいて,現場密度試験により地盤の乾燥密度および含水比を求める
③試験場所の養生:盛土を造成してから試験実施までの期間は可能な限り短くし,試験実施前に天日乾燥させる.降雨や降雪等により地盤内に水が侵入しないように試験実施予定箇所をブルーシート等で覆う
原位置水浸沈下試験の概略 試験対象地点の選定 現場密度測定
原位置水浸沈下試験方法 試験方法
④試験孔の掘削:地盤表面から深さhの試験孔を掘削し,掘削面を水平に整地.掘削中央部の載荷板直下の面は,大粒径の礫を除去し丁寧に整地.試験孔を確保してから止水用の円管を設置.ここで、掘削幅Dは載荷板の直径φの3倍以上とし、掘削深さhは盛土造成時の撒き出し厚さHsdの半分程度.撒き出し厚が不明な場合,hを30cm程度.
⑤載荷板の設置:試験孔の中央部に敷き砂を1cm程度の厚さに敷き,その上に載荷板が水平となるように設置
⑥浸透流感知装置の設置:鋼管等で覆われた浸透流感知装置を所定の深度L(=10cm)の地点まで載荷板の中央から鉛直方向に挿入
⑦沈下量測定器具の設置:載荷板の上部に変位計を鉛直方法に取り付けて変位の初期値を計測
浸透流感知装置の設置箇所 載荷板の設置 測定装置の設置
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原位置水浸沈下試験方法 試験方法
⑧荷重の載荷:ゆっくりと荷重を増やし,所定の荷重に到達した後に一定値に保つ⑨給水:掘削面から掘削高さhまで注水し,水位を一定に保持⑩水浸沈下量:注水開始時から浸透流感知装置が反応したときまでの水浸沈下量(Ssub)を記録⑪試験の終了:沈下量の時間推移を15分程度観察記録し,試験を終了
水浸沈下量
100L
Ssubm
ここで, m :沈下ひずみ(%)
subS :水浸による沈下量(cm)
L :注水の到達深度(=10cm)
荷重の載荷
給水
記録および結果の整理
本試験方法の解説
➡️ 本試験方法は,以下の3つの事柄を仮定して規定
① 盛土全体は均質:同じ材料を用いて,同じ含水比で同じ程度に締固められた盛土を想定
② 本原位置試験は擬似要素試験:地表面の沈下量を測定し,これを地表面近傍の土要素の沈下ひずみに換算し,この換算ひずみを盛土全体に適用して盛土全体の沈下量を推定
③ 住宅荷重による圧縮沈下は無視:戸建住宅の荷重による地盤表面での応力増加は20kN/m2程度であり,盛土深部では急激に小さくなる.加えて,低い応力下では圧縮沈下量よりも水浸沈下量の方が遥かに大きくなる.これらの理由により,戸建住宅の荷重による圧縮沈下を無視
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本試験で標準的に規定している(深さ/基礎幅)= (L/B) = 10(cm)/25(cm) = 0.4
よりも浅い地盤内応力は,地表面の応力(=載荷重/基礎幅)の80%程度以上であり,基礎
幅方向の一様性も高い.深さ10cmまでの表層では,地表面応力にほぼ等しい鉛直応力がほ
ぼ一様に作用していると考えてもよい.
等分布荷重下の地盤内圧力分布
本試験方法の解説
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■ 水浸時の載荷圧は,A過程で200kPa,B過程で100kPa
水浸時の上載圧が異なるにもかかわらず,水浸試験終了時の間隙比(つまり,乾燥密度)
は最終載荷圧に依存
■ 水浸沈下量は,上載圧が大きくなるにつれ,次第に大きくなる.これらの実験事実から,
水浸試験実施時の上載圧を試験箇所の最も深い盛土底部の応力と同等となるように規定.
これは,かなり安全側の設定であり,実際の水浸沈下量を過大評価する虞があることに注
意が必要
➡️ 載荷および水浸履歴の違いによる間隙比の変化
本試験方法の解説
住宅地盤の性能評価指標としての活用
建物床の傾斜による不具合事象発生の基準
地盤保証の適用が「建物の床レベルにおいて、3m以上離れている2点間を結ぶ直辺の水辺面に対する角度5/1000以上が確認された場合に保証適用」であることを考慮
1000
5 BS a
(い) (ろ) (は)
レベル 傾斜勾配構造耐力上主要な部分に
瑕疵が存する可能性
1 3/1000未満の勾配の傾斜 低い
2 3/1000以上6/1000未満勾配の傾斜 一定程度存する
3 6/1000以上の勾配の傾斜 高い
建設省:住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準,建設省告示第1653号,2000
住宅地盤の性能評価指標としての活用
住宅品質確保促進法の定めている勾配傾斜は,2地点間の相対的な沈下量
(a) 切盛土境界 (b) 谷埋め盛土
盛土層厚の求め方
不同沈下かつ許容沈下に対する指標であり,本原位置水浸沈下試験で求めた水浸沈下ひずみが式を満足しているかどうかで住宅地盤の性能の良否を判断
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今後の課題
▶ ガイドライン案に対応したデータシートの作成
▶ 本ガイドライン(案)に従って試験が実施可能であるかどうか,誰が実施しても同じような結果が得られるかどうか,等の確認が必要
▶ 試行的に複数の現場でパイロット試験を実施し,その結果をフィードバックして本案を改善
▶ 「劣悪な地盤に対して本試験によって得られた結果が性能を満たしているという判断を下す」ことは最も危険
▶ 実盛土において原位置水浸沈下試験および現場密度試験の両方を実施し,現場の密度と含水比に調整した試料を用いた室内試験により,原位置水浸試験の適用性を検証
▶ ハード部分の当面の課題は,荷重載荷装置の開発,経済的で信頼性の高い浸透水感知装置の研究開発,等
現場試行実験(H27年5月)
■ 試験位置図 【中部地方整備局管内】
上記位置図内、A地・B地にて、各1箇所ずつ試験実施
A
B地
■ 原位置水浸沈下試験-概要図
①載荷板:上下面が平滑な金属板(Φ25cmの円形を標準)
②載荷装置:所定の一定荷重を載荷できる装置・器具(ex.スウェーデン式サウンディング試験用おもり)
③注水用円管:床掘壁面を止水する板(※ D(円管直径)=Φ(載荷板直径)× 3倍以上)
④敷き砂:載荷重を地盤に均等に作用させるために地表面と載荷板の間に敷く砂(ex.珪砂)
⑤変位計:ダイヤルゲージ(分解能:1/100mm、最大20mmまで測定可)
⑥浸透流感知装置:注水した浸透流が地盤内の所定深度に到達したことを感知する装置(ex.水位計)
■ 原位置水浸沈下試験-試験方法①①試験場所の養生:盛土造成後から、可能な限り短期間で試験実施
→ 試験実施前には天日乾燥※ 降雨・降雪による盛土内への水の浸入を防ぐため、
ブルーシート等による養生
②試験箇所の選定:住宅基礎端部で直下の盛土厚が最大となる地点、及び対角線上の2地点
③現場密度試験:②の各々の地点にて地盤の乾燥密度及び含水比を求める
■ 原位置水浸沈下試験-試験方法②④試験箇所床掘:試験箇所において、以下の規格に準じて床掘り
・(掘削幅:D)=(載荷板直径:Φ)×3倍以上・(掘削深さ:h)=(盛土造成時撒出厚:Hsd)×1/2程度
【 Hsdがわかる場合】= 30cm程度【 Hsdが不明の場合】
⑤載荷板設置:試験箇所中央部に敷き砂(t=1cm程度)をした後、載荷板を水平に設置
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■ 原位置水浸沈下試験-試験方法③⑥浸透流感知装置の設置:載荷板直下から鉛直方向に10cmである地点(深度)に設置
⑦沈下量測定器具の設置:載荷板上部に変位計を設置し、荷重載荷後の地盤変位量を計測
塩ビ管(Φ13mm)を地中に10cm打ち込み、管内に水位計を挿入
■ 原位置水浸沈下試験-試験方法④⑧荷重の載荷:下式で求まる最終荷重になるまで、段階的に荷重を載荷
P=γt×H×AP:最終荷重(kN)γt:盛土の単位体積重量(=18kN/m3)H:盛土層厚(m)A:載荷板の断面積(=φ^2/4、ex.φ=25cmのとき、A=0.0491m2)
⑨圧縮沈下量(Sc)の測定:荷重載荷開始から最終荷重に到達後、沈下収束までの沈下量を記録砂礫質土 → 最終荷重に到達してから10分程度で打ち切り
粘性土 → 3t法を適用して、打ち切り
■ 原位置水浸沈下試験-試験方法⑤⑨給水:床掘面から掘削高さ:hまで注水し、水位を一定に保持
⑩水浸沈下量(Ssub)の測定:注水開始から浸透流感知装置が反応するまでの沈下量を記録
⑪試験終了:⑩後、15分程度沈下量の推移を観察し、試験終了
■ 試験結果① 【現場密度試験結果】
A地 B地
ω :含水比(%) 20.0 20.8
ρ t:湿潤密度(g/cm3) 1.54 1.45
ρ d:乾燥密度(g/cm3) 1.28 1.20
■ 試験結果② 【平均盛土層厚の推定】
盛土厚の推定 → スウェーデン式サウンディング試験により、基盤と盛土の境界を確認
A地平均盛土層厚
1.54m
A地
B地
No.4:0.75m
No.3:1.50m
No.2:1.25m
No.1:2.25m
No.5:2.00m
No.2:2.50m
No.1:2.75m
No.4:3.00m
No.5:2.00mNo.3:3.00m
B地平均盛土層厚
2.65m
No.0:1.50m
■ 試験結果③ 【沈下量-時間関係】
《段階載荷サイクル》0.20kN → 0.45kN
→ 0.70kN → 0.95kN(1分毎に載荷)
【A地結果】Sc:0.100cmSsub:0.015cm
(Send:0.109cm)
【B地結果】Sc:0.119cmSsub:0.009 cm
(Send:0.022 cm)0 10 20 30 40 50 60
-2.00
-1.50
-1.00
-0.50
0.00
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.0
経過時間: t(min.)
沈下量:
S(
mm)
載荷荷重:
P(
kN)
Sc
Send
Sc
SendSsub
Ssub
載荷荷重 A地沈下量 B地沈下量
※ Ssubが正確に計測できていない可能性があるため、Sendも考慮
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■ 試験結果④ 【住宅基盤としての良否の判断(暫定)】
《沈下ひずみの数式》
εm=Ssub/L×100
εm:沈下ひずみ(%)Ssub:水浸による沈下量(cm)L:注水の到達深度(=10cm)
《沈下許容量の数式》
Sa=B×5/1000
Sa:許容沈下量(cm)B:基礎幅(cm) ※ 右図より728cm
《住宅基盤性能の良否の指標》
εm≦B/(Hmax-Hmin)×5/1000 かつ εm≦10/Hmax
Hmax及びHmin:最大及び最小盛土層厚(cm)
(a) 切盛土境界 (b) 谷埋め盛土
■ 試験結果④ 【住宅基盤としての性能良否の判断】
試験結果より、A地・B地共に住宅基盤としての性能は否?
A地 B地
① ε m (Ssub採用) 0.15 0.09
①' ε m' (Send採用) 1.09 0.22
② 728 728
③ 3.64 3.64
④ 225 300
⑤ 75 200
⑥ 0.024 0.036
⑦ 0.044 0.033
Hmin
B/(Hmax-Hmin)×5/1000
10/Hmax
Sa
評価項目
B
Hmax
① ≦ ⑥ ① ≦ ⑦
0.15 > 0.024 0.15 > 0.044
①' ≦ ⑥ ①' ≦ ⑦
1.09 > 0.024 1.09 > 0.044
① ≦ ⑥ ① ≦ ⑦
0.09 > 0.036 0.09 > 0.033
①' ≦ ⑥ ①' ≦ ⑦
0.22 > 0.036 0.22 > 0.033
NG
NG
NG
住宅基盤としての性能良否【A地】
住宅基盤としての性能良否【B地】
かつ
かつ
かつ
かつ
NG
■ 検討事項① 【盛土層厚の推定】
スウェーデン式サウンディング試験では正確に盛土と基盤の境界を把握できない?→ 別の方法が必要か?
・簡易貫入試験を行った場合の結果と比較するとどうか?・盛土築造前の情報収集が必要?
転圧転圧 転圧
転圧転圧
転圧
転圧
転圧
転圧
基盤
基盤基盤
基盤基盤盛土築造時の転圧にムラが生じている.→試験結果より転圧した層厚がわかる.締固度が一定でない.
■ 検討事項② 【沈下量-時間関係】
注水開始から、それぞれ以下の時間で水位計が反応→ 3号地:注水開始から、1分10秒後に反応
5号地:注水開始から、58秒後に反応→ あまりにも短時間過ぎる → 試験機解体後の水の排水状況よりも明らか→ 塩ビ管と地山の間を注水が伝わってしまった→ 水浸沈下量:Ssubが正確に計測できていない → 計測方法に課題
試験機解体直後 試験機解体2時間後
■ 検討事項③ 【載荷荷重の不足】
当試験では計算で求まる最大積載荷重まで載荷できなかった.(0.95kN迄)→ 沈下量(沈下ひずみ)に影響を与えたか?※ 3号地必要荷重:P=18×1.54×0.0491=1.36kNの載荷が必要
5号地必要荷重:P=18×2.65×0.0491=2.34kNの載荷が必要→ 必要荷重まで載荷して再試験する必要がある.
■ 検討事項④ 【性能評価式】
性能評価式に検討の余地があるか?→ 仮に1mmの水浸沈下が生じた場合、
締固度:90%以上の土でもほとんど性能評価で良とならない.宅地盛土の締固度の品質規定は80%~ → ほぼすべての盛土がOUT
『沈下:1mm』 → 現場サイドからすると、誤差ともとれてしまう絶対値
→ 性能評価方法を再検討する必要がある.