就職に強い...

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九州工業大学の教育活動と産学連携 就職に強い企画制作/中日新聞広告局 社会での活躍を支える明専会 知的好奇心を刺激する学び 佐藤育男中日新聞 大阪支社支社長 学長 尾家 祐二(おいえ ゆうじ)氏 1954 年長崎県生まれ。1980 年京都大学大 学院工学研究科修士課程修了後、日本電装 株式会社入社。佐世保工業高等専門学校助 教授、奈良先端科学技術大学院大学情報科 学センター教授、九州工業大学教授、副学 長を経て2016 年4月より現職。 相談役 網岡 卓二あみおか たくじ1949 年広島県生まれ。1971 年九州工業大 学工学部金属加工学科卒業後、トヨタ車体 株式会社入社。2008 年代表取締役副社長、 2010 年代表取締役社長、2014 年代表取締役 会長を経て2017 年相談役に就任。2016 年� 月藍綬褒章受章。 1909 年、4年制の私立工業専門学校「明治専門学校」として 開校。�年に官立に移管され、�年に国立九州工業大学とな る。教育理念に「技術に堪能(かんのう)なる士君子」を掲 げ、深い専門性、幅広い教養、十分なコミュニケーション力と 技術者倫理を備えた、新しい技術の開発・研究にあたる高度専 門技術者の育成を目指す。広く産業界から意見を採り入れる 「産学連携教育審議会」を創設するなど、企業参加による人材 育成に精力的に取り組む。 1945 年、トラックボデーの専門メーカーとして創業。以来、 日本初のスチールキャブBX型トラックや世界初のミッドシ ップを採用したミニバン「エスティマ」など、時流に先んじる 自動車を開発・生産。福祉車両やユニットの開発・生産にも力 を注ぐ。2017 年4月には自動車生産累計台数3,000 万台を達 成。一昨年設置されたトヨタグループ製品軸カンパニー体制で ミニバン・商用車・SUVなどを手がける「CV Compa ny」の中核を担う。本社・愛知県刈谷市。

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Page 1: 就職に強い 九州工業大学の教育活動と産学連携...会長を経て2017年相談役に就任。2016年 月藍綬褒章受章。 福 岡 県 内 に 3 キ ャ ン パ

九州工業大学の教育活動と産学連携〝就職に強い〟

技術者はどんな状況でもタフに尾家氏

世代や企業の垣根を越え交流を網岡氏

企画・制作/中日新聞広告局

社会での活躍を支える明専会知的好奇心を刺激する学び

佐藤育男中日新聞大阪支社支社長

国立大学法人 九州工業大学

学長 尾家 祐二(おいえ ゆうじ)氏

 1954年長崎県生まれ。1980年京都大学大

学院工学研究科修士課程修了後、日本電装

株式会社入社。佐世保工業高等専門学校助

教授、奈良先端科学技術大学院大学情報科

学センター教授、九州工業大学教授、副学

長を経て2016年4月より現職。

トヨタ車体株式会社

相談役 網岡 卓二(あみおか たくじ)氏

 1949年広島県生まれ。1971年九州工業大

学工学部金属加工学科卒業後、トヨタ車体

株式会社入社。2008年代表取締役副社長、

2010年代表取締役社長、2014年代表取締役

会長を経て2017年相談役に就任。2016年�

月藍綬褒章受章。

 福岡県内に3キャンパスを有し、2学部3大学院で約5600名の学生が学ぶ国立大学

法人九州工業大学。世界的レベルの研究活動推進、同窓会組織「明専会」の協力によるキ

ャリア教育などが特徴とされ、その取り組みは教育、研究活動に関する世界的な指標評価

においても高く評価されている。九工大の教育活動や研究分野での産学連携、企業と大学

をつなぐ「明専会」の存在意義や役割などについて、尾家祐二学長と、同大の卒業生で

「明専会」中京支部支部長を務めるトヨタ車体株式会社の網岡卓二相談役に話を伺った。

◎聞き手/佐藤 育男(中日新聞大阪支社 支社長)

 1909年、4年制の私立工業専門学校「明治専門学校」として

開校。�年に官立に移管され、�年に国立九州工業大学とな

る。教育理念に「技術に堪能(かんのう)なる士君子」を掲

げ、深い専門性、幅広い教養、十分なコミュニケーション力と

技術者倫理を備えた、新しい技術の開発・研究にあたる高度専

門技術者の育成を目指す。広く産業界から意見を採り入れる

「産学連携教育審議会」を創設するなど、企業参加による人材

育成に精力的に取り組む。

 1945年、トラックボデーの専門メーカーとして創業。以来、

日本初のスチールキャブ「BX型トラック」や世界初のミッドシ

ップを採用したミニバン「エスティマ」など、時流に先んじる

自動車を開発・生産。福祉車両やユニットの開発・生産にも力

を注ぐ。2017年4月には自動車生産累計台数3,000万台を達

成。一昨年設置されたトヨタグループ製品軸カンパニー体制で

ミニバン・商用車・SUVなどを手がける「CV Compa

ny」の中核を担う。本社・愛知県刈谷市。

 ―企業と大学が相互に補完

しあう「産学連携」のまさに

典型例ですね。他にはどのよ

うな事例がありますか。

 尾家 共同研究は従来から

行っていますが、一昨年は新

たに「共同研究講座」を設け

ました。これは、企業の方に

本学に常駐いただき学生も参

加する形で共同研究を行う制

度です。また、企業の人事部

長様などに委員を務めていた

だく「産学連携教育審議会」

を設置し、本学の教育活動に

関して直接意見を賜るほか、

学生の活動報告に対しコメン

トをいただいています。

 ―産学連携に関して企業側

は大学にどのようなことを期

待しますか。

 網岡 共同開発などの産学

連携はニーズ(需要)とシー

ズ(提供可能な技術)のマッ

チングがカギになります。九

工大では、企業と共同の研究

活動について紹介する『九工

大世界トップ技術』という書

籍を発行しています。「あの

開発を九工大がやったのか」

と初めて知り驚くような研究

も紹介されているので、当社

では書籍が発刊されると新規

事業担当役員にそれを提示し

共同研究につながる可能性を

探るよう指示しています。企

業としては、九工大が持つ知

見を知る機会を提供してい

ただくことを期待していま

す。

九工大独自の

ネットワーク

 ―尾家学長は「モノづくり

の街」と言われる愛知県など

東海地方をどのように見てい

ますか。

 尾家 九工大の大学院と学

部の卒業生のうち、毎年�~

�名ほどが東海4県に就職し

ております。私も大学を卒業

して愛知県の自動車部品メー

カー「日本電装(現デンソ

ー)」に勤務していました。

この地域で仕事をすることを

通じて、モノをつくることで

社会との繋がりが実感でき、

自らが成長するきっかけを教

えてくれる街だと感じまし

た。

 ―「明専会」とはどのような

組織で、中京支部の支部長で

ある網岡相談役は支部の役割

や今後の運営についてどのよ

うなお考えをお持ちですか。

 網岡 九工大の学生・卒業

生の絆の強さを具現化してい

るのが「明専会」です。中京支

部圏内には自動車をはじめ飛

行機、電機、リニアなど日本

を支える産業が集積していま

す。それを部品メーカー、金型

メーカー、素材メーカーとい

った企業群が支え、そこに数

多くの九工大生が所属してい

ます。そうした有機的なつな

がりのなか、私どもの役割は

世代や企業の垣根を越え、同

窓生が交流できる機会をつく

ることだと思っています。地

区総会などを開催すると、参

加者から「大学を卒業して初

めて明専会のありがたみが分

かる」という声が聞かれま

す。

 ―最後に、尾家学長から工

学を志す学生にメッセージを

お願いします。

 尾家 モノづくりの面白さ

は〝知りたい〟〝できるよう

になりたい〟という好奇心を

持つことから始まります。科

学、サイエンスは「今を知る

学問」なのに対し、工学、エ

ンジニアリングは「明日を創

る学問」だと思っています。

このやりがいのある工学をぜ

ひ九工大で学んでください。

多様な教育活動

世界的にも評価

 ―日本の産業発展に寄与し

た優秀な技術者を数多く輩出

している九州工業大学の特色

などについてお聞かせくださ

い。

 尾家 明治時代、炭鉱業で

財を成した安川敬一郎氏が私

財を投じて開学した歴史ある

工業大学で、「明治専門学校」

が前身です。昨年公表された

「THE世界大学ランキング」

(日本版)で日本の全大学中

�位にランクインするなど、

世界的にも評価されていま

す。工業系の大学ですので、

産業界との連携は非常に良好

な関係を保っており、特に就

職率についてはほぼ100%

で、それを継続しています。

背景には、本学の教育活動へ

の高い評価、卒業生の活躍実

績に加え、同窓会組織「明専

会」による明専塾や明専スク

ールなどの支援があります。

 ―広島県ご出身の網岡相談

役がなぜ九州工業大学を志望

されたのでしょうか。

 網岡 高校の先輩に勧めら

れたのがきっかけですが、た

またま1967年に九工大に

金属加工学科(現マテリアル

工学科)が新設され、加工分野

に興味があったので志望しま

した。私は第1期生です。大げ

さに言えば、信念とか生き方

みたいなものが醸成されるの

が大学時代ではないかと思う

のですが、そういうことがで

きた良い校風の学舎でした。

世界を意識した

教育プログラム

 ―九工大が力を入れている

教育活動についてお聞かせく

ださい。

 尾家 グローバル化する現

代社会においては、技術者に

はどんな状況にあってもタフ

に自分の持つ技術やスキルを

向上し続け、それらを活用し

続ける能力が求められます。

本学では、その能力を「グロー

バル・コンピテンシー」と定義

づけ、グローバル・エンジニ

アを養成する教育プログラム

を推進しています。具体的に

は、技術者に求められるコン

ピテンシーの要素を「多様な

文化の受容」「コミュニケーシ

ョン力」「自律的学習力」「課題

発見・解決力」「デザイン力」

と定義し、〈海外学習体験〉〈海

外就業体験〉〈グローバル教養

教育〉〈語学教育〉〈留学生との

協働学習〉を5つの柱として

教育を実施しています。マレ

ーシアに海外拠点を設置した

のも、こうした教育方針の一

環です。平成�年度は517

名がこの拠点をはじめ海外で

の学びを体験しています。

 網岡 もともとは、九工大

がマレーシアプトラ大学にサ

テライトキャンパスをつくる

という情報が入って、マレー

シアには弊社もトヨタ自動車

もあるのでひと肌脱いだので

す。マレーシアは英語圏のう

え多様な文化があって、学生

が自由に勉強したり、友達に

なっていく。大変すばらしい

国です。

 尾家 実際、マレーシア企

業でのインターンシップは網

岡相談役のご尽力でスタート

出来ました。最初のきっかけ

をつくっていただき感謝して

います。今ではたくさんの企

業にお引き受けいただき、学

生にとって実に貴重な学習の

機会になっていると思いま

す。