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健康コーナー
辻
和之
先生
の
18
わかりやすい東洋医学講座
第18回 肝の「志」 「竅」 「液」
「体」 「華」について
第68回東洋医学の基礎理論⑱
肝の「志」 「竅」 「液」
「体」 「華」について
⑴
肝の志…怒
「頭に来た」と云う日本語を
英語に翻訳すると、「頭に来
た」と云うその文には主語
がありません。主語がない
日本文を英訳するには、
戸惑うかも知れませんが、
ほぼ「I feel angry.
」とか
「I am angry.
」
に訳しがち
になるかと思います。
実は、「頭に来た」の文章
の隠された主語は「I」で
ある「私」ではなく、「肝気」
なのです。肝気が頭(心)に
どんどん上がってきて、
肝気が過剰となって、熱を
帯びて肝気が肝火になって
しまい「怒」に至るのです。
(図1)肝気が、心に過剰に
上がって来て、肝火を生じ
ないためには、疏泄が巧く
行っていたり、(気の巡りが
良くて)肝血が十分あって
肝気の上昇が抑えられて
いれば、過剰な肝気は頭に
上がってきません。
⑵
肝は、目に開竅する
目には五臓六腑の精気が
全て注がれますので、目は
いずれの臓腑とも関係して
いますが、なかでも肝との
関係が密接です。視力は、
肝気の疎泄(気の巡り)と肝
血の栄養に依存しています。
ストレスによる肝気欝結
(肝気の疎泄がうまくいか
なくなったり)、加齢や食餌
の不摂生、女性では月経、
妊娠、授乳などで肝血が
不足すると、ドライアイ、
かすみ目や視力低下が起こ
ります。また長時間パソコン
を使うなど目の酷使は肝血
を消耗し、眼瞼痙攣(まぶた
の痙攣)や手足のしびれな
ど、肝血不足による筋の栄
養不足を引き起こします。
⑶
肝の液…涙
肝は目に開竅するので、
涙は肝の液とされます。
涙は、眼球を潤し保護する
働きがありますが、肝血が
不足すると、涙の分泌が減
り、ドライアイになります。
⑷
肝の体…肝は筋を主る
中医学では、筋は、西洋医学
での腱、肌肉は、筋肉を指し
ます(図2)が、筋は、骨に付
着して関節と肌肉を繋ぐ組
織になります。四肢の関節
の屈伸運動は、筋と肌肉が
収縮・弛緩することにより
行われますが、筋は、肝血に
よって滋養されていること
から、*『黄帝内経』の『霊枢』
に「肝は筋を主る」という
記載があります。肝の血が
充足していれば、筋は十分
に養われ、力強く円滑に動
きます。もし肝気と肝血が
衰えれば、筋が栄養されな
いために、筋力の低下や運
動障害、手足の震えや痙攣
などの症状が現れます。
⑸
肝の華は爪にある
爪とは、手足の爪の甲を
指します。「爪は筋の余り」
と云われ、中医学では爪を
筋の延長と考えます。肝血
が十分あれば、爪は硬く艶
があります。肝血が不足
すると、爪は軟らかく薄く
なり、脆くなります。
*『黄帝内経』:中国の紀元前の春秋
戦国時代に医療の実績と治療実績を
まとめて記された書物です。中医
学の独特な理論体系をはじめて確立
したもので人体の生理、病理、診断、
治療、予防などが詳しく論述されて
います。﹇素問﹈﹇霊枢﹈の2部で構成
され、その内容には、臓象・経絡・病
機・診察法・弁証・治療原則、さらに鍼
灸・湯液治療なども含まれています。
現存最古の医学巨書で中医学発展の
基礎となっている書物です。
かいきょう
きょう
きょう
つかさど
れいすう
こうていだいけい
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19
【図1】
【図2】
頭に来た
平常心の状態
肝気が頭(心)に上昇し、過剰な気が熱を帯びて肝火になると、怒る状態になる。
肝血が十分で肝気の疏泄が良好だと肝気が上昇しない
気の巡り・流れ
頭に来た状態(怒)
肝血不足・肝気の巡りが悪いと肝気が上昇
肌肉筋
筋と肌肉
← 脾が管理← 肝が管理
肝火
医療法人和漢全人会
花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士
辻
和
之
昭和26年 北海道江差町に生まれる昭和50年 千葉大学薬学部卒業昭和57年 旭川医科大学卒業平成 4年 医学博士取得平成10年 新十津川で 医療法人和漢全人会花月クリニック開設日本東洋医学会 専門医日本糖尿病学会 専門医日本内科学会 認定医日本内視鏡学会 認定医
医療法人社団和漢全人会花月クリニック
東洋医学の基礎理論⑱
肝の「志」 「竅」 「液」
「体」 「華」について
⑴
肝の志…怒
「頭に来た」と云う日本語を
英語に翻訳すると、「頭に来
た」と云うその文には主語
がありません。主語がない
日本文を英訳するには、
戸惑うかも知れませんが、
ほぼ「I feel angry.
」とか
「I am angry.
」
に訳しがち
になるかと思います。
実は、「頭に来た」の文章
の隠された主語は「I」で
ある「私」ではなく、「肝気」
なのです。肝気が頭(心)に
どんどん上がってきて、
肝気が過剰となって、熱を
帯びて肝気が肝火になって
しまい「怒」に至るのです。
(図1)肝気が、心に過剰に
上がって来て、肝火を生じ
ないためには、疏泄が巧く
行っていたり、(気の巡りが
良くて)肝血が十分あって
肝気の上昇が抑えられて
いれば、過剰な肝気は頭に
上がってきません。
⑵
肝は、目に開竅する
目には五臓六腑の精気が
全て注がれますので、目は
いずれの臓腑とも関係して
いますが、なかでも肝との
関係が密接です。視力は、
肝気の疎泄(気の巡り)と肝
血の栄養に依存しています。
ストレスによる肝気欝結
(肝気の疎泄がうまくいか
なくなったり)、加齢や食餌
の不摂生、女性では月経、
妊娠、授乳などで肝血が
不足すると、ドライアイ、
かすみ目や視力低下が起こ
ります。また長時間パソコン
を使うなど目の酷使は肝血
を消耗し、眼瞼痙攣(まぶた
の痙攣)や手足のしびれな
ど、肝血不足による筋の栄
養不足を引き起こします。
⑶
肝の液…涙
肝は目に開竅するので、
涙は肝の液とされます。
涙は、眼球を潤し保護する
働きがありますが、肝血が
不足すると、涙の分泌が減
り、ドライアイになります。
⑷
肝の体…肝は筋を主る
中医学では、筋は、西洋医学
での腱、肌肉は、筋肉を指し
ます(図2)が、筋は、骨に付
着して関節と肌肉を繋ぐ組
織になります。四肢の関節
の屈伸運動は、筋と肌肉が
収縮・弛緩することにより
行われますが、筋は、肝血に
よって滋養されていること
から、*『黄帝内経』の『霊枢』
に「肝は筋を主る」という
記載があります。肝の血が
充足していれば、筋は十分
に養われ、力強く円滑に動
きます。もし肝気と肝血が
衰えれば、筋が栄養されな
いために、筋力の低下や運
動障害、手足の震えや痙攣
などの症状が現れます。
⑸
肝の華は爪にある
爪とは、手足の爪の甲を
指します。「爪は筋の余り」
と云われ、中医学では爪を
筋の延長と考えます。肝血
が十分あれば、爪は硬く艶
があります。肝血が不足
すると、爪は軟らかく薄く
なり、脆くなります。
*『黄帝内経』:中国の紀元前の春秋
戦国時代に医療の実績と治療実績を
まとめて記された書物です。中医
学の独特な理論体系をはじめて確立
したもので人体の生理、病理、診断、
治療、予防などが詳しく論述されて
います。﹇素問﹈﹇霊枢﹈の2部で構成
され、その内容には、臓象・経絡・病
機・診察法・弁証・治療原則、さらに鍼
灸・湯液治療なども含まれています。
現存最古の医学巨書で中医学発展の
基礎となっている書物です。
れいすう
そもん