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兵庫教育大学学校教育学研究, 2018, 第31巻, pp 71-77
高校家庭科における社会参画を促す学習課題の検討- 地域社会参画に関する高校生の生活実態調査から 一 71
The Contents of Senior High School Home Economics to Promote Social Participation : The Realities of the Senior High School Students About Their Participation in Social Community
前 田 ま どか* 永 田 智 子** MAEDA Madoka NAGATA Tomoko
本研究の目的は, 高校生の生活実態から社会参画を阻害 し ている要因 を探り , 学習課題を明らかにす るこ と である。 先
行研究よ り 社会参画の阻害要因 を考察 し , こ れを基に高校生と 地域社会の関係と実生活におけ る両者の関連について, 質
問紙調査法 を用いて把握 ・ 分析 し た。 こ の分析から , 地域の人と の係わり が意識さ れに く い実態には, 自分の行動影響力
を認識するこ と や社会的役割 を経験的に学ぶ機会が少ないこ と が影響 し ているこ と が示唆 さ れた。 こ こ から , 学習課題は
社会参画でき る場を捉え させるために, よ り広い社会におけ る自分の役割 と実生活の関連を理解するこ と であるといえ る。
そのため, 高校家庭科において社会参画を学ぶには, 高校生にと っ て身近な社会と教科学習 を関連づけ , 自分の行動が社
会に及ぼす影響 を捉え る必要性と可能性 を探究す る学習方法 を展開す るこ とが有効ではないかと考え ら れる。
キーワー ド : 社会参画, 地域社会, 社会的役割, 生活実態, 能動的
1 . 問題の所在と研究目的1 .1 社会参画の実践に関わる問題
新高等学校学習指導要領 (文部科学省2018) では, 社会に開かれた探究的な学習が重点化 さ れた。 公教育の最
終段階を迎える高校家庭科教育では, 共に支え合う 社会の実現に向けて主体的に地域社会に参画でき る生活者の
育成が目指 さ れる。 そこ で , 青年期から成人期へ移行する過渡期にい る高校生は, 広狭様々な社会で活動する主体と し て, さ ら に社会を運営す る一員 と し て生活でき るよ う にな る こ と が求めら れてい る。
しかし , 日本の若者の社会問題への関与や自身の社会参加に関する意識は諸外国と比べて も低いこ と が知 ら れ
てい る。 内閣府 (2014) の調査において, 地域の担い手と し て社会参画の意欲を示す若者は35.4% で , 自分の社会参加が社会現象を変えう ると考え る若者は30.2% と少数派であ った。 また, 内閣府 (2016) の調査では, 地域の人と の係わり が希薄で , 自身が地域や社会をよ り よ くす るのに役立つ意義 を見出 し てい る若者は少数派である
こ と が報告 さ れた。 学校や職場以外で他者と行 っ てみた
い活動については, ボラ ンテ ィ アや地域活動 (清掃, 防災な ど) が最も参加 し た く ない活動であるこ と が明 ら かにな っ た。 さ ら に注目すべきは , 同調査におい て地域での活動に参加 し た く ても でき ない主な理由が, 時間や費用等の資源不足であ っ たこ と である。
実際に高校生が使え る資源を , お金と時間の全国規模の調査結果から捉えた。 高校 1 年生が 1 ヶ月にも ら う 金額は, 平均値4,735円, 中央値4,500円であり (消費者教育支援センター 2016) , 15~ 19歳の自由時間の平日総平
均は, 312分 (総務省統計局 2016) であった。こ の調査結果から , 若者の社会参画が促 さ れない要因
と し て, 次の 2 つの問題が浮上 した。1 . 若者にと っ て社会参画は, 内発的意欲を向上させる
ほ ど価値が認めら れた活動でな く , 社会参画に関する意識は低い
2 . 高校生が社会参画す るために必要な資源が不足 し てい る
以上の 2 つの問題から , 社会参画を促すには, 有限の資源を活用 し ても参画する価値があると判断さ れるよ う , 社会参画が他の活動 と比べて優先 さ れるだけの魅力があ
る こ と を示せる学習の意義は小 さ く ない と考え ら れる。
1.2 生活実態に応 じ た社会参画種々の社会的役割を担う 生活者と して生き る私たちは,
対面し てい る社会や生活状況, 自身の特質に応 じた生活を営 んでい る。
御船 (2000) は, 欲求に動機づけ られなさ れる生活行為 をマスロ ーの欲求類型 (生存, 安心 ・ 安全, 所属, 尊敬 さ れる , 自己実現) と照ら し て, 組織への参画や人間関係を結ぶ人間関係行為は, 行為自体が欲求を充足 させる目的的行為であると示 した。 また, 教育心理学用語辞典では, 「内発的動機付け」 は自発的に生起さ れ, 行動そのも のが学習の目標と な る も のであり , 人間は自 ら行動 を始発 し環境に対 し て能動的に働きかけてい く 存在で
あると考え ら れている (岸本ほか 1998 pp211-212)。 これらの考え方に従えば, 社会参画が促 さ れない実態は, それを阻害す る問題が生 じ てい るこ と が疑われる。
* 兵庫県立猪名川高等学校 平成30年 7 月10日受理* * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育コ ース, 教育実践高度化専攻授業実践開発 コ ース 教授
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72 学校教育学研究, 2018, 第31巻
生活状況が社会参画意欲にもたらす影響をと らえた先
行研究は, 生活指導研究に複数見ら れる。 竹内 (1976) は, 現実の必要を反映し た人間的欲求が育たないのは, 認識の指導と 表現 ・ 技能の教育の分断が起因すると考え
た。 坂元 (1979) は, 知識の習得が労働や技術の習得と結びつき , 活動の動機やその目的の体系の中に組み込まれない能力育成の問題を指摘し た。 また, 増山 (1986) は, 活動の中味の楽 し さ に関心を寄せ, 人間関係を主体的 ・ 能動的に築 く 段階を経ながら , 自立 し て社会生活を営む能力 を育成する必要性を示 した。 こ れらの研究から , 生活を軸と し た能力育成や学習計画が社会参画を促す手
立てと なるこ と が示唆さ れる。 つまり , 高校生の生活実態に応 じた学習課題の明確化が社会参画学習の計画に不
可欠の手続き である と考え ら れる。
1.3 研究の目的本研究では, 社会参画を学ぶべき若者の中で も高校生
に対象 を絞り , 高校家庭科授業で実践可能な学習課題を検討する。 そのため, 高校生の生活や経験を調査すること から , 社会参画が実践 さ れない要因 を分析 し , 学習課題 を明 ら かにす るこ と を目的と す る。
2 . 研究の方法2.1 調査の時期と対象
調査は, 2017年 5 月に, 兵庫県公立高校全日制普通科1学年193人 (男子79人, 女子114人) を対象と して, - 斉に実施し た。
調査高校の進路状況は, 4 年制大学への進学率 4 ~ 5 割, 短大 ・ 専門学校進学率 5 ~ 4 割, 就職率 1 割弱の高校である。 また, 当校の所在地域は, 大阪府に隣接す る兵庫県の東端, 近畿地方のほぼ中央に位置する人口約 3 万規模の住宅都市化 し た町であ る。 年齢三区分人口は,
0 ~ 14歳15%, 15歳~ 64歳58%, 65歳以上26%であり , 高齢人口の割合は全国平均並, 年少人口は2 % 高い構成であ っ た。
2.2 調査内容作成した質問紙の調査内容と回答方式 を, 表 1 に示し
た。
表 1 調査内容と回答方式
調査内容 回答方式
1 地域社会と その境界 選択回答
2 地域社会におけ る役割と 実践 選択 ・ 自由回答
3 自分と家族の地域と の係 り 選択回答
4 食生活の実態と 時間 ・ お金 ・ 満足感 選択 ・ 自由回答
1 は, 対象と し た高校生が普段意識 し てい る地域社会は , どの領域 ・ 集団 を指 し てい るか, 実在す る地域社会の領域 ・ 集団の選択肢から複数回答で判断させる項目か
ら成る。
2 は , 対象者の考え る地域におい て自分には どのよ う
な役割があるか記述 させる項目 を設け た。 そ し て , 石島(2012) の高校生の社会参画意識項日 を参考に, 自分たちの住みよい地域づ く り に関わる必要性や, その機会や場があ るかを尋ね, 自分たちの行動が地域社会に及ぼす影響 を どのよ う に捉え てい るか問う 項目である。 さ ら に, 斎藤 (1999) ・ 吉田ら (2000) の社会考慮尺度を引用し, 個人と他者 ・ 社会と の関係 を問う 11項目から成る。 回答方式は, 「 5 , よ く あてはま る」 , 「 4 , ややあてはま る」 , 「 3 , どち ら と もいえ ない」 , 「 2 , ややあてはま ら ない」 , 「 1 , ま っ た く あてはま ら ない」 の 5 件法と し た。
3 は, 通常参加 し てい る地域活動 を調べた, 京都大学こ こ ろの未来研究セ ンタ ー 『地域社会の 「つながり」 と
暮ら し につい てのア ンケー ト』 を引用 し た選択肢から成
る o
4 は, 地域社会と日常的に係わる生活場面と し て食行動を取り 上げ, 平日の昼食手配と 喫食の実態を問い, 高校生の限ら れた資源の活用状況と その結果得 ら れる満足
度 を調べ る項目から成 る。
2.3 分析の方法選択回答方式 を用いた問いは記述統計量を算出 し て分
布 を把握し , 集計結果について正確二項検定を行っ た。 このう ち, 5 件法の回答は 「 5 , よ く あてはまる」 , 「 4 , ややあてはま る」 を肯定群, 「 2 , ややあてはま ら ない」 , 「 1 , ま っ た く あてはま ら ない」 を否定群, 「 3 , どち らと もいえ ない」 は肯定 ・ 否定群のどち ら にも該当 し ない
群と し , 肯定群と その他の 2 群に分類し て検定を行った。また, 自分の役割等の自由回答方式 を用いた問いは,
すべての記述を通読 し て カ テ ゴリ ーを生成 し , 記述統計量を算出し て分布を確認した。
その上で , 地域社会や自分の社会的役割に対す る認識や生活実態から学習者であ る高校生の特質 と 学習課題の
分析を行った。
3 . 結果3.1 調査対象者の社会参画意識と使え る資源
有効回答数193人で, 男子79人 (40.9%) , 女子114人(59.1%) であった。 その内, 選択回答方式 (複数回答可の項目を除く ) の空欄及び自由回答で未記入のものは分析対象から除き , 項目毎に有効回答数を示し た。
地域づ く り に関す る認識 を尋ねたと こ ろ , 図 1 のよ うな結果 と な っ た。 「私た ち の住みよ い地域づ く り を実践
する必要がある」 の項目では, 肯定群は63.2%であり , その必要性を認識 し てい る高校生が一定数い るこ と が示
唆 さ れた。 し か し , 「社会を変え ら れる と 思う」 か どうかを, 「地域住民」 や 「高校生」 , 「自分」 の活動主体別に尋ねた と こ ろ , 「地域住民」 は地域社会を変え る主体であ るが, 「自分」 は地域社会を変え う る活動主体で ない と捉え る傾向が明 らかと な っ た。
次に, 対象と する高校生が 「 1 ケ月のう ち自由に使えるお金」 は, 平均4,328円, 中央値3,000円で, 「平日で自由に過ごせる時間」 の平均は234分 ( 3 時間54分) であっ
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高校家庭科におけ る社会参画を促す学習課題の検討
た (表 2 ) 。 お金 ・ 時間共に最小値から最大値の範囲が広く , 全国調査のお金平均値4,735円, 中央値4,500円, 時間平均312分 ( 5 時間12分) より若干少ない数値であるこ と が明 ら かにな っ た。 よ っ て , 全国調査で地域の活動に参加 し た く てもでき ない主な理由が, 時間や費用等の資源不足であるこ と をふまえ , 本調査対象者においても社会参画 しがたい状況であるこ と が推測 さ れた。
N= 193 (人)ロ 肯定群 ■ どち らでも ない群 ■否定群 (% )
私たちの住みよい地域づく り を
実践する必要性がある
地域住民の意識が地域社会を
変 え ら れると 思 う
高校生でも地域社会を
変え られる と 思 う
自分の行動で地域社会が
変えら れると 思 う
l
*
*
*
*
*
*
*
* * p く . 01 * p く . 05 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% '10% a )% 90% 100%
図 1 地域づ く り に関する認識
表 2 自由に使 う こ と のでき るお金と時間
平均値
最大値
最小値
S.D. 中央値
最頻値
お金( 円) 時間( 時間)
N=191(人) N=192(人) 4,828.2 25,000
03,497.85
3,000 5,000
96
88
10
14
22
以上より , 前出の内閣府の調査対象者と本調査で対象と し た高校生を比べたと こ ろ , 次の 2 点において, 同様の傾向 を持つこ と が示唆 さ れた。
1 ' . 自分自身が地域づ く り の主体と なるこ と が意識さ れていない
2 ' . 社会参画を図る資源は不足が疑われるこ れより , 本調査の対象と した高校生は, 全国調査か
ら捉え ら れた問題を抱え る高校生と類似 し た対象である
と みなせる。
**p< .0自分の';らす社会の将来が気になる自分の';らす社会の間題が気になる
自分の行動に対する他者の受け止め方を考える
社会で異なる立場の人のこ と を考え る
社会全体の動向に関心がある
自分が同 じ社会に暮らす人に及ぼす影響を考える
社会で自分の置かれる立場を考える
自分の暮らす社会全体について考える
社会がいかに成り立 ってい るか考え る
生活と 社会のし く みの関連を考える
自分が社会に及ぼす影響を考える
73
3.2 社会参画に関する認識特性高校生が地域の役割 を担う 場面 を思い浮かべて記述さ
せたと こ ろ , 具体的な活動内容と し て 「清掃活動」 , 抽象的な活動内容と し て 「 ボラ ンテ ィ ア」 の回答が顕著に
見 ら れ, その他の活動や役割イ メ ージを持つ生徒が少ない こ と が明 ら かにな っ た (図 2 ) 。 こ れよ り , 地域におけ る高校生の役割 と し て, 「清掃活動」 や 「 ボラ ンテ ィア」 が固定的なイ メ ージと し て定着 し てい るこ と が示唆
さ れた。 この2 つはいずれも , 先行調査 (内閣府2016) で最も参加 した く ない活動であるこ と が示唆 さ れた活動
であり , こ の役割認識が社会参画に対する意欲を抑制 してい るのではないかと推察 さ れた。
さ ら に , 社会に対す る認識 ・ 思考の特性 を探 る ため ,
社会考慮尺度の項目について肯定群の回答率を算出 した
(図 3 ) 。 肯定群の割合の上位, 下位のそれぞれ2 項目に着目す ると , 「自分の暮らす社会」 の 「将来」 や 「問題」に関心 を寄せつつも , 「自分が社会に及ぼす影響」 に意識が向け ら れに く い傾向が見ら れた。 こ れよ り , 自分の行動の能動的側面から関係性を捉え るこ と に課題がある
こ と が示唆 さ れた。 ま た, 「自分が社会に及ぼす影響」よ り も , 「同 じ社会に暮らす人に対す る影響 を考え る」こ と ができ る人が多い傾向が明 らかと な っ た。
清掃活動
挨拶 をする
ルールやマ ナーを守 る ・ 示す
祭りへの参加 ・ 運営手伝い
福祉支援
募金
具体的な他の地域活動
ポ ラ ンテ イ ア
地域活動
抽象イ メ ージ
な し
N= 192(人)50 (%) - - ' - 3
● 2 ・ 2
● 2
a 6 国 3
13
図 2 高校生が担 う 地域の役割イ メ ージ (複数回答)
N= 193 (人)
0 10 20 30 40 50 60 70 (%)
図 3 社会考慮尺度項目における肯定群の割合
-
74
以上よ り , 社会に対する認識 ・ 思考の特性と し て, 対象の高校生は次の 3 つの特性を持つこ と が推察さ れた。 ・ 高校生の主な社会的役割と し て 「清掃活動」 や 「 ボラ
ンテ ィ ア」 への参加が定着 し てい る
・ 自分と 社会の関連は受動的な側面に意識が偏向 し能動
的な側面が意識 さ れに く い
・ 社会と自分の関連よ り , 社会 を構成す る人 と自分の関連を考え てい る割合が多い
3.3 地域社会に該当する領域最も小 さ な社会的領域である家庭から広がる領域を細
分化 し て, 対象の高校生は どの領域を地域社会と捉え ていたか調べ, 回答者の過半数を超え る領域のみ, 正確二項検定の結果を図 4 , 5 に示 した。 過半数を超え る回答者が地域社会である と考え , かつその一員であるこ と を意識 し てい る領域は, 「市町村」 であ るこ と が明 ら かとな っ た。
3.4 地域づ く り に関わる機会や場の有無対象の高校生が住んでいる町内で通常参加し ている活
動は, 地域行事に参加する人数が最も多かった (図 6 )。 また, 1 人当たり の活動個数の合計平均は1.35 (±0.82) 個, 最頻値は 1 個であ っ た。 なお, 参加 し てい る活動がないと回答 し た人は, 9.3%であり , 参加する活動は限定的で少ないが, 約 9 割の人が地域と接点 を持 っ てい るこ と が明ら かにな っ た (図 7 ) 。
(% )10 0
9080
70e 0
6 0
4030
2010
0
**p
-
。 0
1 0
5-
同年代のグループの活動
s
一
自、一
i
一介謹活動
8
■
自主防災活動
9
■
趣味関係の活動
5 6 l
地域行事
4 5 l
自治会
9080, 0
6 050
4 030
2 010
0
高校家庭科におけ る社会参画を促す学習課題の検討
N= 193 (人
3
一
その他の活動・
イベント
s9 l
ごみの分別活動
2
一
冠婚一井祭の手伝い
2
一
地域資源の保全
3
一
同業者グループの活動
5 -
同性グループの活動
図 9 家族の活動別参加人数の割合 (複数回答)
3
一 SNS
の仲間
l2-
市民
3 0 l
全校生
**631
クラスメート
**
65 l
部活動員
l * * 721
友人
一
** p**
741
家族
(% )10 0
器
70
器
40
器
100
図10 協力 して物事に取 り組む集団
)0
00
00
00
00
00
%0
98
76
54
32
1
(1
5
l 一
5 0
* P1* *
7 31
一
** P**
7 51
差
* 56
l 4一1 1
・ 2 1
◆ SN
S
の仲間
市民
全校生
クラスメート
部活動員
友人
図11 立場が想像でき る集団
N= 193 (人)
1
一
その他
回
10
・ 習い事の仲間
数複
9
・ ポランテイア活動の仲間
(
N= 193 (人)
1
一
その他
答
4-
習い事の仲間
回数
2
一
ポランテイア活動の仲間
複
関係の構築や, それぞれの立場 を想像す る こ と に課題があ る こ と が示唆 さ れた。
3.6 地域社会と 係わる食生活の実態対象と し た高校生の昼食入手先について, 1 週間の登
校日 5 日のう ちそれぞれから入手する日数を尋ねた。 その結果, 自宅弁当 を持参する頻度が突出 し て高 く , 平均
75
が4.61 (±0.96) 日であった (図12)。 なお, 持参する昼食を作 る人についても同様に日数で頻度 を尋ねたと こ ろ ,
親が平均4.21 (±1.54) 日と突出 し て高いこ と が明らかになった (図13)。
N= 193 (人)
自一毛 弁当一4.61ス ーパーマ ーケ ッ ト ■ 0.13コ ン ビニエ ンスス ト ア 1 0.16学校食堂 ■0.09
その他 1 0.010 1 2 3 4 5 (日)
図12 昼食の入手先と 頻度
N= 190(人)
親 -4.21き よう だい 1 0.03自分 - 0.43祖父母 ' 0.12従業員 ■0.07その他 I 0.060 1 2 3 4 5 (日) 図13 昼食の作り手と頻度
次に, 自分で弁当 をつ く るこ と ができ ると答え たのは73.6% で , でき ない と答え た26.4%の主な理由 と し て, 能力と経験, 準備時間がないこ と が挙げら れた (図14) 。
N= 193 (人)
簡単調理食品
が ない
1%
計画的で ない
1%
3%図14 弁当調理の可否と でき ない理由
さ ら に , 学校の食堂は必要か尋ねたと こ ろ , 92.2%が必要と答え た。 判断理由 を尋ねた結果, 必要と考え る主な理由は, 「非常事態の備え」 と 「家庭の事情」 であるこ と が明ら かにな っ た (図15) 。 こ れよ り , 昼食の入手におけ る セー フ テ ィ ーネ ッ ト を要 し てい る こ と が示唆 さ
れた。
3.7 お金 ・ 時間 ・ 生活に対する満足度お金 ・ 時間 ・ 生活に対す る満足度を 5 段階評価で数値
化 させた。 その結果, 中央値は, お金 ・ 生活 4 , 時間 3 と , 多 く の生徒が中程度以上の満足感を持 っ てい るこ とが示唆 さ れた (表 3 ) 。 中で も , お金満足度は最頻値が5 であり , お金のやり く り に不満を感 じ る人は少数である こ と が明 ら かにな っ た。
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76 学校教育学研究, 2018, 第31巻
N= 192 ( 人)0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
非常事態への備え
家庭の事情
, 付加価値を重要視
関心がない
1
'-'-Ill 1
■ 3
l 2
1
l l
l l
l 2 1
9
自分にと って価値がない
種類の少な さ
提供温度不満
栄養面不満
金銭面不満
自活推奨
そ の他
図15 学校食堂の必要性と判断理由 (複数回答)
表 3 お金 ・ 時間 ・ 生活の満足度N= 191 (人)
平均値
S.D. 中央値
最頻値
お金 時間 生活
3.6 1.28 4.0 5.0
3.3 1.30 3.0 3.0
3.4 1.16 4.0 3.0
4 . 考察4.1 社会参画を進める上での問題
「3.1調査対象者の社会参画意識」 およ び 「3.4地域づく り に関わる機会や場の有無」 よ り , 高校生の多 く は, 社会への関心や住みよい地域づ く り を実践す る必要性を
認め, 地域づ く り に関わる機会や場 を持 っ ていた。 し かし , 「3.2社会参画に関す る認識特性」 の結果から互いに影響 を及ぼ し合 う 関係は意識 さ れてお ら ず, 自分の行動の能動的側面から関係性を捉え るこ と ができ ない認識面
の問題が明ら かにな っ た。 地域社会におけ る高校生の役
割イ メ ージは, 通常参加す る地域行事や清掃活動な ど単発的に活動し ている像が定着 し ており , 日常生活と密接に関連する社会参画像を持つていないこ とが示唆さ れた。
「3.3地域社会に該当す る領域」 よ り , 高校生は所属意識が持てる地域を 「市町村」 と捉え てい るが, 「3.5地域社会における人間関係」 より , 協力 し て物事に取り 組み, 立場を想像でき る集団はその一部分に限ら れていた。 こ れよ り , 地域社会において自分が関わっ てでき る活動を広 く 捉え るこ と ができず, 補足的な学習な しに 「市町村」 で互いに生かさ れる関係性を探究 させるのは困難で
あ る こ と が示唆 さ れた。
また, 「3.6地域社会と係わる食生活の実態」 よ り 具体的な生活場面と し て, 平日の昼食手配では, 自分の能力の有無に関係な く 親に依存する傾向が見ら れた。 加え て, 「3.7お金 ・ 時間 ・ 生活に対する満足感」 より , 現在の生活にそこ そこ の満足感を持っ ている割合は高 く , 生活の内省や, 生活課題の探究が個々に動機づけ ら れる状況ではないこ と が示唆 さ れた。 その反面で , 活用頻度が低いに も かかわら ず, 学校食堂の必要性 を訴え る割合は高い
83
実態があ っ た。 こ れは, 不測の事態に備え るセーフ テ ィ ーネ ッ ト と し て, 親が果たすあら ゆる役割 を代替えでき るし く みを求めた結果ではないかと考え ら れる。
以上の実態調査の結果から , 社会参画に対する内発的意欲の向上や, 主体的かつ能動的な活動の実践を期待でき ない要因 と し て , 次の問題があ るこ と が示唆 さ れた。 ・ 日常的に関わっ てい る社会的な活動 を理解 し ていない
よ り身近な地域社会の集団であ る全校生徒と の関係で
さえ , 関係構築が難しいと実感 し ている・ 親密な関係にある親に依存 し た生活に満足 し ており ,
個人的に生活を見直す必要性は低い
4.2 学習課題の検討明 らかにな っ た問題 をふまえ る と , 身近な地域社会の
集団で, 自分たちの活動が同 じ社会で生活する人に及ぼす影響を捉え る学習が必要であるこ と が示唆 さ れた。
対象 と した高校生の場合は, 地域社会の人よ り 先に全校生徒集団において, 協力関係と生活の関連を学ぶ必要があ っ た。 よ っ て , 個々の行動が学校生活の運営に影響を及ぼす活動を取り 上げて, その計画 ・ 運営に対 し自分の意見を発信 ・ 行動す るこ と で , 何ができ るか考え させるこ と が第一 に取り 組むべき学習課題であ ると言え る。
また , こ の学習への内発的意欲 を向上 させるには, 現在の生活 を変容 させう る速効的な メ リ ッ ト ない しは, それが得 ら れる確実性 を実感 させるこ と が課題にな る と 推
察 さ れた。
こ れら を踏まえた学習課題例と し て, 学校食堂の活用状況の低さ と 理想の食堂にするための要望を考え る学習
が挙げら れる。 こ れによ り , まず全校生徒内でも自分と異な る立場の生徒と の関係構築 を教え るこ と ができ る。
さ ら に, 学校食堂は地域住民が運営す る も のであ るこ とから , 地域社会へと 視野を広げさせるこ と ができ る。 この学習では, 地域住民が運営する学校食堂が, 自分たちが支払う お金で運営 さ れてい る事実を知り , 皆の生活を豊かにする運営方法を学び, 自分の行動の影響力 を広 く捉え る手立てと な ると考え ら れる。
こ れは, 高校家庭科における 「家庭経営」 と 「社会福
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高校家庭科におけ る社会参画を促す学習課題の検討
祉」 を考え る教科学習と し て学ぶこ と が可能な内容であ
り , 高校生の生活実態に応 じ た社会参画学習であると いえ る。
5 . まと めと今後の課題今日, 社会的役割が家庭内外で提供さ れる商品, 公共
サー ビス と な る過程で , 種々の役割や機能 を理解 し な くても生活が成立する状況がある。 本調査結果から , 地域の人と の係わり の希薄 さは, 自分の行動影響力や役割 を経験的に学ぶ機会の少な さ を意味 し てい るこ と が示唆 さ
れた。
それぞれが固有の社会的役割 を取得 し て社会に参画す
る ためには , 現在の生活がいかに し て成立 し てい るか理解す る必要があ る と 考え ら れる。 現段階におい て , 「全校生徒」 や 「市町村」 な どより広い社会における 「自分」
「高校生」 の役割が実生活と どのよ う に関連し ている
か理解できないこ とが, 重大な課題であると考え ら れる。 地域社会への参画は, そこ に築かれる人間関係の理解なしには展開 し難い。 そのため, 教科の学習内容と し て計画するには, 既存の協力関係を説明でき る領域において, 高校生が関わっ ている社会的な活動を捉え直す必要性と
可能性を学ぶのが有効ではないかと考え ら れる。
また, 偏向 し た社会参画像に基づ く 検討は, 暗黙のうちに学習者を画一 的に評定 し , 学べる生活価値を制約する等, 負の影響 を与え るこ と が危惧 さ れる。 社会に開かれた学びを計画し , 社会参画を促す教員はこの危う さ を理解し , 社会参画学習 を展開する際は, 現在を生き る生活者の視点で個々に生活創造を探究する家庭科学習と関
連付け るこ と が望ま しい と考え ら れる。 そのため, 高校生にと っ て身近な社会参画の実態を把握し , 系統立てられた教科学習 と の関連を整理 し て, 授業 を開発 ・ 実践 してい く こ と が今後の課題であ る。
謝辞
本研究の質問紙調査の実施にあたり , 多大なご協力 を賜り ま し た兵庫県立 I 高校の皆様に深 く 感謝申 し上げます。
引用文献
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京都大学こ こ ろの未来研究セ ンタ ー 『地域社会の 「つな
がり」 と 暮ら し につい てのア ンケー ト』 につい ては,
郵送留め置き法で実施さ れ2016年11月 4 日に締め切ら れた質問紙調査を参考に し た。