「地理総合」とは-その特徴-
井田仁康 (筑波大学)
1.新学習指導要領との関連-学びの概念
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学びに向かう力・人間性等(どのように社会・世界と関わり合いよい人生
を送るのか)
個別の知識や技能(何を知っているか・何ができ
るか)
思考力・判断力・表現力等
(知っていること、できることをどう使うか)
教科・科目(何を学ぶか)
資質・能力(何ができるようになるか)
アクティブ・ラーニング(どのように学ぶか)
2.新科目設立の背景ー教育の流れとして
• 「知識・理解」から「知識活用・問題解決型」への授業転換
• 「主体的な学び・対話的な学び・深い学び」、いわゆるアク
ティブ・ラーニングが可能な学習へ
• 思考力重視へ:見方・考え方の位置付けの強化
• 判断力・表現力を育成できる教科・科目の必要性
→ 18歳以上選挙権に対応
・社会参画を促す学習内容3
3.思考力=見方・考え方 小から高校までのつながり
社会的事象の見方・考え方
社会的事象を位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係に着目して捉え、比較・分類したり地域の人々や国民の生活と関連付けたりして
社会的事象の地理的な見方・考え方
現代社会の見方・考え方
社会事象の歴史的な見方・考え方
小学校
社会的事象の地理的な見方・考え方
人間と社会の在り方についての見方・考え方
社会事象の歴史的な見方・考え方
中学校
高等学校
地理的分野 公民的分野 歴史的分野
地理歴史科地理 公民科 地理歴史科歴史
5つの地理学概念:地理的な見方・考え方
(1) 位置(の規則性)・分布(パターン)
*分布パターンとすることにより、空間的な傾向性、つまり一般的共通性を追究することになる。
(2) 場所(その場所の自然や人文的特性)
*(1)との関連からみると、地方的特殊性の追究
(3) 地人相関(自然と人間生活の関連性)
(4) 空間的相互依存作用(地域間の結びつきー貿易・交通)
(5) 地域(空間的に意義のある範囲)
*時間的に自然、経済、文化などにより、その範囲は変化する。
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4.「地理総合」の内容A. 地図や地理情報システムで捉える現代社会
(1) 地図や地図情報システムと現代社会
→ 位置や分布などに着目
➡ GISの位置付けが焦点、地図という扱いで柔軟に対応か!
B. 国際理解と国際協力
(1)生活文化の多様性と国際理解
→ 場所や人間と自然環境との相互依存関係に着目
➡ 世界地誌として網羅的に扱うべきではない。
(2)地球的課題と国際協力
→ 空間的相互作用や地域に着目して
C. 持続可能な地域づくりと私たち
(1)自然環境と防災
→ 人間と自然環境との相互依存関係や地域に着目して
(2)生活圏の調査と地域の展望
→ 空間的相互作用や地域に着目して ➡ 地域調査基づきたいところ
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小学校社会科:
地域の調べ学習
夢物語的な社会事象の解決策
中学校社会科地理:
地理的な見方・考え方に基づいた地誌、系統地理による地理的知識の習得
ローカル・グローバルな課題の気づき地域の構想
高校地歴「地理総合」
中学校までの地理的知識などを踏まえて、主題学習
ローカル・グローバルな課題の発見と解決案生活圏の将来像
高校地歴科「地理探究」(選択)
課題の解決にはさらなる知識や深い考察が必要なことから、地誌、系統地理の理解を深めたうえでの日本の将来像の構築
75.小学校から高校までの学習内容の連続性
6.中学校から高等学校へ(学習指導要領)
基礎的知識・技能・能力 知識・技能の活用 知識・技能の深化
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中学校地理の学習内容
A.世界と日本の地域構成(概観)B.世界の様々な地域(地誌)C.日本の様々な地域(系統地理、地誌)
高等学校「地理総合」(1)地図と地理情報システムの活用(手法)
(2)国際理解と国際協力(生活文化に基づいて、地球的課題→ 主題的学習、解決策に向かう)
(3)防災と持続可能な社会の構築(地域調査、将来構想→ 問題解決的な学習)
高等学校「地理探究」
1.系統鶴的考察2.地誌的考察3.将来の国土像
地理的な見方・考え方
対象とした地域の将来構想
生活圏とする地域の将来像の構築
国土の将来像の構築
7.「地理総合」実施にあたっての課題
・中学校社会科の学習などを踏まえた主題的学習の教授法
→ 系統地理的学習、地誌的学習を踏まえた問題解決的な学習
・知識・スキルの活用、(地球的・生活圏)課題の解決に向ける
→現状の理解から未来志向への脱皮
・思考力ー地理的な見方・考え方の重視
→知識を教えるより見方・考え方を働かせた思考力育成への転換
・地図・GIS、アクティブラーニング、防災、地域調査、ESDなどを含む
→ 教員の技能が問われる → 教師の不安
⇒ 1部では地図・GISへの対応を考える。
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