形式としてのメタ情報
• ある部分が他の部分を説明するという構造が見受けられる
• 端的な例では学術論文。学術論文は冒頭にAbstractがあって、論文が提示する内容を要約してある
• Abstractが本論を説明している
• より一般的なところでは• 音楽CDのライナーノーツ• ドラマの予告編と本編• など
• この構造がメディアテクストの中に頻繁に見受けられる
• 一つの表現の形式として一般的に認知されている事を示す
• 「説明する部分」と「説明される部分」が一対となって配置される形式
• 「説明する部分」をメタ情報と呼ぶ• メタ情報はメタデータとも呼ばれる• メタとは「高次な~」「超~」「~間の」「~を含んだ」「~の後の」等の意味のギリシャ語の接頭語
• メタ情報とは、情報についての情報と言う意味
• メタ情報は、説明対象のデータの内容をメタレベル(俯瞰する位置)から説明している
• メタ情報の提示の仕方にも形式性がある
• 形式性には多くのバリエーションがある
• これらは、説明の仕方の直接性・間接性よって分類可能
• 学術論文のAbstractは「要約」と言う形式→直接的
• 本論の内容を簡潔に伝える「解説」「解釈」と言う形式→直接的
• 作品の「ジャンル」→間接的• 作品の「タイトル」→間接的• 「著者」「作者」→間接的
• 「間接的な説明」は記号の持つ共示義としての効果による
• 「タイトル」は、それが本編の内容を説明すると明示的に宣言されていないにも関わらず、読み手は本編の何らかの特徴を説明するものとしてみなす
• 共示義による効果を考えると、それぞれが何かを示唆する事を条件に、あらゆるメディアテクスト同士の間に、「説明する/説明される」の関係が成立する可能性がある
• 一見単独でメッセージを発するように思われるメディアテクスト
• 他のメディアテクストによる説明の対象である
• 同時に別のメディアテクストの説明を行うものでもある
• あらゆるメディアテクストは、原理的に、他のメディアテクストに対するメタ情報である可能性を持つ
• あるメディアテクストは、自らを何かのメタ情報として位置づける事で、積極的にその「何か」との関連性を創出する
• 関連性を持たされた「何か」はメタ情報を読み取る際のコンテクストを提供する
• 関連性を「持たされた」側のメディアテクストが読み取られる際に、逆にメタ情報がコンテクストを提供する
• 「メタ情報→情報」と言う単一方向的な情報階層は解消され、互いが互いのコンテクストを提供すると言う相互規定的な関係が発生する
• 読解の際に焦点になる事• あるメディアテクストの表現が、いかなるメタ情報を想定して構成されているか
• 読解の対象となるメディアテクストが、いかなる種類のメタ情報を構成し得るのか
物語的な形式性
• メディアテクストが伝達を試みる際に、伝達されるべき内容、即ちメッセージは多くの場合に何らかの図式に従って表現される
• 最も単純な例として「原因→結果」の図式を考える
• この場合、メッセージは自ずと、「原因Aが結果Bを生み出す」と言う一つの物語に従って読み取られる可能性を持つ
• 物語的な形式性は、多くのメディアテクストの中に顕在的・潜在的を問わず見受けられる
• 顕在的にそれを有する例としては、テレビドラマ・ロールプレイングゲーム・ビジネスプレゼンテーション等がある
• 共通して持つ特徴として、主題の差異に関わらす、メディアテクスト自体が明確な「始まり」と「終わり」を意識して編成されている事が挙げられる
• それぞれの表現が最終的な物語の結末を示す為の構成要素として、その結末の必然を物語る為に明確に位置づけられる
• 様々なメディアテクストが、多かれ少なかれ何らかの物語的な形式を意識しながら構成されている
• 結末の予測が不可能だと言う意味で、物語的な形式から最も遠いと考えられるスポーツの試合
• テレビ番組として提示される場合に、何らかのトーナメントの決勝戦であれば、それまでの戦いを振り返るシーンの挿入により、その試合自体を物語の結末に位置づける
• 物語的な形式の導入は、読み手の意識を結末へ集中させる効果を持つ
• 物語の展開を中心とする、中心化の例であると言える
• メディアテクストの表現には「物語の本筋」を構成するものと、一見物語の本筋とは無関係に見えながら結果的にその展開を補完する「副次的な要素」との、分化による秩序づけが行われる
• 導入される物語の形式が明確であればあるほど、物語の俎上に上がらないものの存在は見えにくくなる→隠蔽
• 物語的な形式に注目しながら読解を行う
• メディアテクストに導入される物語の存在を明らかにし、その形式性を実現する上での貢献度と言う観点から、それぞれの表現に与えられる階層的な秩序性を見出す
• 物語の存在とそれに伴う表現の階層的な秩序性は、メディアテクスの記号化コードを強く反映する
• 物語は、当然に人為の産物• 従って、その存在は、仮にそれが読み手を説得する要素として機能するとしても、本質的に恣意的なもの
• よって、メディアテクストの中に見出される物語の必然性を考慮しなくてはならない
• 物語的な形式の導入によって、メディアテクストから隠蔽されるものを考える上で有効
主題における形式性
• 主題の導入が中心化を促す一つの形式である事を学んだ
• 換言すれば、主題の存在それ自体が、表現における一つの形式である
• メディアテクストが一つ以上の主題を持つこと、それを構成する一つ一つの表現が何らかの主題に結びつく
• メディアテクストの性質が必然的にそうさせるのではなく、それが一つの形式として認められ、反復される事によってのみ維持される
• 主題は、表現における記号の使用に一貫性を与える上で、その効果を発揮する
• 記号表現のレベル(色調、文字や図形の形態的特徴、語り方のリズム等)
• 記号内容のレベル(示される事柄、取り上げられる話題の種類・性質など)
• これら両面において、表現に用いられるべき記号の取捨選択の基準を与える
• 同時に、構成されるメディアテクストに、ある統一した装いをもたらす
• 逆に、そのようにしてもたらされる統一性は、読み手に対して主題の存在を示唆する指標となる