メタボロミクスの論文を読もう
プログラム
メタボロミクスの最近の話題
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メタボローム研究の組み立て方
第383回 TSMMセミナー E-130893
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ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
事業内容:
受託解析
バイオマーカー開発
メタボロミクスキット販売
設立: 2003年7月1日
営業所: 東京・京都・ボストン (USA)
提携受託実績:
武田薬品工業㈱、田辺三菱製薬㈱、
味の素㈱、協同乳業㈱、
他 製薬・食品・化学企業、学術機関 等
年間 >300 案件 (2012年度)
Web access:
http://humanmetabolome.com
メタボロミクスの最近の話題
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メタボロームとは?
メタボローム 動物・植物が自ら作り出す低分子(質量1000以下、脂肪酸、アミノ酸など)の化学物質
メタボローム ヌクレ オシド
ヌクレ オチド
診断 マーカー
物質 生産
身体 構成
細胞
食物
植物
ヒト
動物
抗酸化 物質
有機酸 脂質
リン酸化 化合物
アミノ酸 アミン
など
微生物
エネルギー 産生
創薬
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メタボロームとは?
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メタボロームとは?
高分子
低分子
糖 アミノ酸 核酸 脂質 補酵素
単糖
二糖
オリゴ糖 (n<10)
糖鎖
グリコーゲン セルロース
(修飾糖)
糖たんぱく質糖 糖脂質
アミノ酸
ペプチド
タンパク質 酵素
構造タンパク質
核酸
オリゴヌクレオチド DNA断片
RNA
DNA
脂肪酸
脂肪 脂質膜
低分子補酵素
(高分子補酵因子)
二次代謝分子
天然成分など
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メタボロームとは?
DNA mRNA タンパク質 表現型
ゲノム
Gene-ome
トランスクリプトーム
Transcript-ome
プロテオーム
Protein-ome
ゲノミクス
Gene-omics
トランスクリプトミクス
Transcript -omics
プロテオミクス
Protein -omics
メタボローム
Metabolite-ome
メタボロミクス
Metabolite -omics
利点 特徴
過去の知見(文献)が生かせる
結果の直接の原因を探しやすい
生物種間で共通
「物質」として測定される
表現型に近い
ゲノム情報に依存しない
メタボロミクス
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メタボロームとは?
“Information about the genetic nature of an individual human being, as reflected in the rates of various chemical reactions that take place in his body, usually catalyzed by enzymes, could be obtained by the through quantitative analysis of body fluids. Moreover, the through quantitative analysis of body fluids might permit differential diagnosis of many diseases in a more effective way than is possible at the present time.”
—Linus Pauling, 1971 when he proposed the idea of metabolome analysis of urine.
ひとりの人間の遺伝的性質に関する情報は、その身体で起きている多くの化学反応速度の反映であることから、体液の定量的分析を通して与えられる。さらに、体液の定量的分析を通して、現在よりもより効果的な方法で多くの疾病の診断を行うことができるかもしれない。
ライナス・ポーリング
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メタボロミクスへの期待
Title/abstract: metabolomics/metabolome Source: PubMed
年
?
2013年9月まで
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メタボロミクスへの期待
Recent publications (Metabolomics based on CE-MS)
T Takebe et al., Nature, 2013, in press ‘Vascularized and functional human liver from
an iPSC-derived organ bud transplant.’
S Yoshimoto et al., Nature, 2013, 499(7456) 97-101 ‘Obesity-induced gut microbial
metabolite promotes liver cancer through senescence secretome.’
M Matsumoto et al., Front Syst. Neurosci., 2013; 7, 9 ‘Cerebral low-molecular
metabolites influenced by intestinal microbiota: a pilot study.’.
N Ternette et al., Cell Rep., 2013, 3(3) 689-700 ‘Inhibition of mitochondrial aconitase
by succination in fumarate hydratase deficiency.’
H Miwa et al., Oncol. Rep. 2013, 29(5) 2053-7 ‘Leukemia cells demonstrate a
different metabolic perturbation provoked by 2-deoxyglucose.’
Y Mitsuishi et al., Cancer Cell. 2012, 22(1) 66-79 ‘Nrf2 redirects glucose and
glutamine into anabolic pathways in metabolic reprogramming.’
JM Fusin et al., Cell Rep. 2012, 1(4) 341-349. ‘Rhythmic nucleotide synthesis in the
liver: temporal segregation of metabolites.’
M Matsumoto et al., Sci Rep. 2012, 2: 233. ‘Impact of intestinal microbiota on
intestinal luminal metabolome.’
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2
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メタボロミクスの活用法
BM Screening
Target analysis
Profiling
マーカー探索
診断・創薬マーカー など
◎ 統計モデル解析、多変量解析
◎ 未同定分子の同定
プロファイリング
化合物スクリーニング、品質管理 など
◎ リピドミクス、ペプチドミクス
◎ 大規模なデータベース
ターゲット解析
基礎研究におけるメカニズム解明
◎ 代謝経路解析
◎ 安定同位体ラベル解析
網羅性 解析効率
定量性 同定能
データベース 生化学的知見
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マーカー探索
メタボローム解析により、大うつ病 (MDD) を血液検査で診断し、さらに治療効果を評価することが可能なマーカー分子を発見しました。
大うつ病の患者さんの血漿では、マーカー分子 (リン酸化アミン)の濃度が健康者や不安障害の患者さんと比べて低下していました。
この低下は投薬による治療効果を反映して緩和され、寛解した場合には健康者と同じ濃度域になることから、大うつ病の発見だけではなく、治療方針の選択に有効であると期待されます。
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
0 10 20 30 40 50 60
healthy subject
MDD
adjustment disorder
MDD
MDD
Control
AD
血中マーカー濃度
[μ
M]
CES-D score
平成23年5月21日 朝日新聞
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プロファイリング
2000年
2001年 2004年
2005年 2006年
2007年
月山ワイン山ぶどう研究所 との共同研究、第4回 メタボロミクスシンポジウム、2009/11/18~19
ワインの代謝成分プロファイリングにより、ヴィンテージを予測することが可能な 品質評価プログラムを確立することに成功しました。
2000 2001 2004 2005 2006 2007 製造年代
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20081999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
推定値
年代
R2=0.991
推定年代
実年代
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
重み
代謝物
2000年 2001年 2004年 2005年 2006年 2007年
ヴィンテージ(製造年代)が異なるワインに含まれる
代謝成分をCE&LC-TOFMS分析することで、各年代に特徴的な挙動を示す分子を「品質評価」マーカーとして抽出しました。また、これらを指標に用いた
「品質評価プログラム」の確立に成功しました。
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ターゲット解析
Ooga T. et al., (2011) Mol. Biosyst., 7, pp. 1217-1223.
生活習慣病(脂質異常症)モデルマウスの各組織メタボローム解析することにより、 病態による代謝異常と投薬によるその回復をモニターすることに成功しました。
H/HC – H/HS
Central carbon
metabolism
Amino acid
Amino Acid
metabolism
Lipid
metabolism
Nucleotide
metabolism
Coenzymes
Other
Peptide
log (ratio)
LI CM BR PL
THF
健常群 HC 高脂血症群 H 投薬群 HS
動脈断面 動脈断面
シンバスタチン投与
病態モデルで肝臓など複数の
組織で、酸化ストレスによる
脂質代謝異常が観察された。
また、このような代謝異常の
多くがスタチンの多面的効果
により緩和することを発見!
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See the future in Metabolomics
fin
メタボロミクスによるバイオマーカー探索
2.A
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薬物による急性肝炎マーカーの探索
オフタルミン酸(血中マーカー) グルタチオン(抗酸化物質)
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泳動時間 (min)
質量数
中性物質
低分子イオン性
代謝物質
測定時間は30分-45分程度の
短時間で代謝物質の包括的
解析が可能!
ドットは一つ一つの代謝物質
メタボロームを測る ~CE-MSによる網羅的測定~
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メタボロームを測る ~CE-MSによる網羅的測定~
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4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
泳動時間 [min]
m/z 72.99 Glyoxylate
m/z 75.01 Glycolate
m/z 87.01 Pyruvate
m/z 89.02 Lactate
m/z 115.00 Fumarate
m/z 117.02 Succinate
m/z 133.01 Malate
m/z 145.01 2-Oxoglutarate
m/z 166.98 PEP
m/z 168.99 DHAP
m/z 171.01 Glycerol3P
m/z 173.01 cis-Aconitate
m/z 184.99 3PG
m/z 195.05 Gluconate
m/z 199.00 Erythrose4P
m/z 229.01 Ribulose5P;Ribose5P
m/z 259.02 G1P;F6P;G6P
m/z 264.95 2,3-DPG
m/z 275.02 6-Phosphogluconate
m/z 338.99 F1,6P
T. Soga et al. Anal. Chem. 72, 1236-1241 (2000)
m/z 346.06 AMP
m/z 426.02 ADP
m/z 505.99 ATP
m/z 662.10 NAD
m/z 742.07 NADP
m/z 403.56 Acetyl CoA
m/z 432.56 Succinyl CoA
G1P
F6P
G6P
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メタボロームを測る!
CE-MS法は多成分を高い精度で簡便に測定するために開発された手法 →メタボロミクスに適している
代謝物質はDNAやタンパク質と違い、
さまざまな物性を持つ化学物質の集合
すべての代謝物質を一度に分析できる手法はない
エネルギー代謝
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メタボロームによるバイオマーカー探索
遺伝子変異
遺伝子制御
タンパク質
代謝物質
1980年
1990年
2000年
2010年
ゲノム
トランスクリプトーム
プロテオーム
メタボローム
遺伝病 生活習慣病・老化
遺伝病 生活習慣病・老化
遺伝病 生活習慣病・老化
遺伝病
生活習慣病・老化
ゲノム =“将来のリスク” を予測
メタボローム =“現在のイベント”を評価
先天的疾患
後天的疾患
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デオキシコール酸 Deoxycholic acid (DCA)
腸内細菌由来の発がん性物質
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Trimethylamin N-oxide
腸内細菌由来の生活習慣病リスク因子
メタボロミクスによるプロファイリング・ターゲット解析
2.A
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培地メタボロミクスによる仮説探索と検証
Glycine
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ミトコンドリア病に対するピルビン酸の作用機序解析
MELAS:
mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes
Pyruvic acid
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研究領域別論文リスト
http://humanmetabolome.com/rd/researchlist
最新の論文情報はこちらをご覧ください
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https://twitter.com/me_taro
最新のメタボロームを知るには?
メタボローム研究の組み立て方
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何を見たいのか?
サンプルの背景を一番ご存知なのはお客様ご自身
目的・技術的制限に応じたスタディデザインが重要
目的:バイオマーカー探索・メカニズム解析 試料:血清・培養細胞・臓器 規模:ラボサンプル・実験動物・臨床検体
スタディデザインで重要なのはサンプルに関する 背景情報と知見 仮説検証型:背景データから得られた仮説をどう やったら証明できるか? 不偏的探索:どのような検体を集めたら有用な 情報が得られるか?
スタディデザインがすべて!
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検体数について
試料形態 推奨検体数 理由・備考
培養細胞・微生物 1〜3程度 繰返し実験数を意味します 細胞集団の不均一性を解消(同調)できるときはn=1でも結果は出せる
飼育動物・栽培植物 3〜10程度 薬剤応答などで検証できる場合はn=3でも結果は出せる 単純な差分解析の場合はn=5〜10必要
臨床試料・野生動植物 20〜 個人差についてはn=20くらいで評価できる 症状がはっきりしている場合はn=20程度 群内に潜む不均一性(精神疾患など症状がまちまち)を考慮するとn=50程度必要 ※いずれの場合も年齢、性別、BMIなど予測できる限りの交絡因子を排除できるよう無作為割付けする必要がある
ラボサンプルと臨床サンプル
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試料 標準化の方法 考え方
血液 体積 血清や血漿では「単位体積あたり」で表現する
尿 クレアチニン 尿では一般的に「単位クレアチニン濃度あたり」で表現する
臓器や組織 重量 肝臓などの臓器や植物の葉などは「単位重量あたり」という表現をする (単位DNA量やタンパク質量を用いることもある)
培養細胞 細胞数
培養細胞の場合は細胞数を計測し、「単位細胞数あたり」という表現をする 微生物の場合は「単位OD値あたり」とすることもある(この場合体積を反映)
標準化の考え方はいろいろ考えられるので、ご相談ください。
濃度で表現できない場合の標準化の考え方
標準化についての考え方
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研究目的に応じた分析法の選択
CE-MS GC/MS LC-MS FT-ICRMS NMR
主な標的代謝物 イオン性分子 揮発性分子 主に
中性分子 主に
イオン性分子 (制限なし)
網羅性 ◎ ◎
(誘導体化) △ × ○
誘導体化反応 不要 揮発性分子 以外の多く
不要 不要 不要
分離能 ○
(構造異性体も) ○ × ×
◎ (原子レベル)
感度 ○ ○ ◎ △ ×
定量性 ◎ ○ △ × △
操作性 × ○ △ △ ○
それぞれの研究で注目する代謝分子や求められる分析精度によって装置を選択
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代謝経路の変動を鋭敏に検出可能 ・注目中の特定経路 ・予期しない経路 両方の変動を把握する
代謝物質の 全体像を把握可能 メタボロームプロファイリングにより各群の特徴を把握する
CE(LC)-MSによるHMTのメタボローム解析
多数の代謝物質を検出可能 尿中代謝物質:200個以上
カチオンモード:約160 アニオンモード:約60
生体内の情報を包括的に取得
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HMT 受託解析サービス
サンプリング
検体送付
測定できる状態まで前処理
サンプル測定
データ処理
データ解析
報告書作成・納品
お客様
HMT
お客様に行っていただく前処理(代表的なもの)
細胞・微生物など メタノールによるクエンチングののち、-80℃で凍結保存。
血漿など サンプリングののち、-80℃で凍結保存。
組織など サンプリングののち、液体窒素で凍結。-80℃で保存。
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HMT 受託解析サービス
生体液 血漿、血清、全血、血球、尿、涙、汗、母乳、脳脊髄液
その他生体由来 肝臓、腎臓、肺、筋、脳、血管壁、膵臓、前立腺、皮膚、毛髪、脂肪組織、腸粘膜、培養細胞(接着・浮遊)、大便
微生物 培養微生物(大腸菌、枯草菌、酵母、乳酸菌、糸状菌など)、培養液、藻類
植物 植物葉、茎、果実、花弁、種子、藻類
食品 醗酵乳、各種酒など
その他 魚個体丸ごとなど
これまでにHMTで解析を行った実績がある試料例
※上記以外の解析実績についてはHPをご確認下さい。解析実績がない試料種については、サンプルテストの実施を推奨いたします。
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研究目的に応じたHMTの解析プラン
Advanced Scan
Dual Scan
C-SCOPE
Basic Scan
BM screening
Mechanism
CE-TOFMSによる水溶性代謝物の包括解析。
未同定化合物も含めたバイオマーカーの探索に。
動物の基礎代謝に関与する数百分子を一斉に測定。
基礎研究からプロファイリングまで幅広い用途に。
代謝の中心を担う116分子の濃度を測定。
従来法では得られない「高密度」代謝経路
から詳細な代謝変化を読み解くことが可能。
LC-TOFMS による脂質解析を加えた広範な
プロファイリング。脂質を含めたエネルギー代謝
の包括的な解析ツール。
Profiling
ご静聴大変ありがとうございました