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Page 1: サバ魚肉に由来するPAI-1活性阻害ペプチドPAI-1阻害を通じた血栓症に対する予防作用 ・サバの新たな機能性価値として ・魚肉の新規の有効利用法の一つとして

サバ魚肉に由来する PAI-1 活性阻害ペプチド

伊藤光史(福井県大海洋生資)

村中隆司・山本誠一(カワイマテリアル株式会社)

【目的】

PAI-1 (Plasminogen Activator Inhibitor type-1):

   線溶系(血栓分解系)の調節因子の一つ

血栓(血液凝固塊)の骨格であるフィブリン繊維を

分解する酵素(プラスミン)の活性化を抑制する

=線溶系のブレーキとして作用する

⇒活性抑制物質が新規の血栓症治療薬として着目されている

【方法・結果】

サバ魚肉の加水分解

試料:マサバ、タイセイヨウサバ

       (ノルウェーサバ)

酵素:AmanoN(試料に対し 1%量添加)

37℃で 9時間加水分解

ペプチドの定量:Lowry 法PAI-1 終活性 5ng/ml  ⇒  ? ng/ml

サバ魚肉加水分解エキス(ペプチド終濃度 5ng/ml)

サバ魚肉加水分解物は多量のペプチドを含み、in vitro でPAI-1を阻害する

サバ魚肉の加水分解により多量のペプチドが生成

マサバ、タイセイヨウサバのいずれからも 2種類のジペプチド(Gly-Lys、Pro-Lys)が分離された

 ⇒血漿中の PAI-1 活性が低下(脂質負荷飼育の場合)

  in vitro で PAI-1 を直接阻害

=血栓症 予防に対しても有効と期待

=マサバ魚肉の新規機能性

=魚介類有効利用法の 1つとしても提唱可能

血漿中の PAI-1 活性抑制による

線溶系の亢進が示唆された

まとめ

0

20

40

60

80

100

ペプ

チド

量(mg/g)

生鮮魚肉 アマノN加水分解物

マサバ

生鮮魚肉 アマノN加水分解物

タイセイヨウサバ

0

1

2

3

4

5

6

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

対照 生鮮魚肉 アマノN加水分解物

マサバ

生鮮魚肉 アマノN加水分解物

タイセイヨウサバ

①ゲル濾過カラムによる分離

カラム:Superdex Peptide HR10/30 (Pharmacia)

溶離液:0.1%TFA 含む 30%ACN

流速:0.5ml/min

カラム温度:25℃

HPLC による分離②逆相カラムによる分離

カラム:TSK-Gel ODS-80Ts(Toso, 2 本直列)

溶離液:0.1%TFA 含む 1%ACN

    0.1%TFA 含む 95%ACN

流速:1.0ml/min

カラム温度:43℃

③強親水性カラムによる分離

カラム:ZIC-HILIC (Millipore)

溶離液:20mMギ酸アンモニウム含む 70%ACN(pH6.2)

流速:1.0ml/min

カラム温度:25℃

0

1

2

3

4

5

6

対照 マサバFr37-4

タイセイヨウサバFr37-4

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

マサバ

タイセイヨウサバ

Fr37

Fr37

Fr37-4

Fr37-4

逆相画分の PAI-1 阻害活性

合成ペプチドによる機能性評価試験

Wistar ラットへの投与 投与量:10mg/kg BW(飲水混合投与) 投与期間:10 日間 飼育餌料:一般飼育餌料        (日本クレア CE-2, 脂質 4.5%含有)      合成脂質負荷餌料(脂質 10.5%含有)

サバへしこ:

サバを塩漬けした後に糠漬けして

発酵・熟成させる福井県の伝統発酵食品

サバへしこの血栓抑制作用の主要因は

魚肉に含まれるペプチドと推定

PAI-1 阻害を通じた血栓症に対する予防作用 

  ・サバの新たな機能性価値として

  ・魚肉の新規の有効利用法の一つとして

               有望であると考えられる

tPA

act

ivity

(ng/

ml)

0

0.05

0.10

0.15

0.20

0day Control Heshikoextract

30day

0.25tPA

a

a

a

プラスミン

0

5

10

15

0day Control Heshikoextract

Rat

io (%

)

30day

c

b

a

0

0.1

0.2

0.3

0.4

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

0.5

ab

b

a

PAI-1

0day Control Heshikoextract

30day

線溶系(血栓分解系)

亢進

(血栓形成抑制)

抑制

(血栓形成促進)

プラスミノーゲンアクチベーターインヒビタ

(PAI-1:線溶酵素活性化因子阻害物質)

プラスミノーゲン

プラスミン(線溶酵素)

プラスミノーゲンアクチベーター

(PA:線溶酵素活性化因子)

フィブリン繊維

分解産物

フィブリン繊維

(血液凝固塊)

PAI-1 阻害活性の測定

0

1

2

3

4

5

6

7

Fr34 Fr35 Fr36 Fr37対照 Fr34 Fr35 Fr36 Fr37

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

マサバ タイセイヨウサバ

分子量画分の PAI-1 阻害活性 逆相画分の PAI-1 阻害活性

逆相画分からのペプチド単離

マサバFr37-4

タイセイヨウサバFr37-4

Gly-Lys (F1-2)F1-1~2

F3

F2

F1

F2

F1-1~4

F2-1~5

F3-1~4

Pro-Lys (F2)

Gly-Lys (F1-2)

Pro-Lys (F3-2)

F1

プロテアーゼによるサバ魚肉タンパク質加水分解物から PAI-1 阻害ペプチドを分離・同定する

へしこエキスによる線溶系活性の亢進

⇒血栓形成抑制作用

○亢進因子活性の上昇      ○抑制因子活性の低下

 (プラスミン、tPA)        (PAI-1)

サバ由来ペプチドを投与したラットの血漿 PAI-1 活性一般餌料(CE-2)飼育

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

ControlGroup

Gly-LysGroup

Pro-LysGroup

Plas

ma

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

ControlGroup

Gly-LysGroup

Pro-LysGroup

Plas

ma

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

脂質負荷食飼育

飼育餌料を変更

(再試験)

餌料による脂質の負荷がないと

PAI-1 活性は変化せず、ペプチドの

投与によっても変化が見られない

餌料により脂質の負荷がかかると

PAI-1 活性が上昇するが、ペプチドの

投与によって PAI-1 活性が抑制される

PAI-1 阻害活性の比較

0

1

2

3

4

5

6

Cont Gly-Lys Pro-Lys マサバFr37-4

タイセイヨウサバFr37-4

PAI-

1 ac

tivity

(ng/

ml)

サバ由来ペプチド 逆相画分

ペプチドはいずれも in vitro で

PAI-1 活性を抑制する

Fr37-4-F1

Fr37-4-F1

Fr37-4-F2

Fr37-4-F3

Fr37-4

Fr37-4

Fr.37

Fr.37

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