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  • COVID19の血液浄化療法

    東京慈恵会医科大学附属柏病院

    臨床工学部 渡邊拓也

  • COVID19における急性腎不全

    • COVID19患者の死亡因子としてクレアチニン133μmol/L(1.47mg/dL)以上の患者は重症化・死亡率に関係があるZheng Z, Peng F, Xu B, Zhao J, Liu H, Peng J, et al. Risk factors of critical & mortal COVID-19 cases: a systematic literature review and meta-analysis. J Infect 2020.

    • COVID19患者の40%以上の高頻度で異常な蛋白尿症が認められるCheng Y, Luo R, Wang K, et al. Kidney disease is associated with in-hospital death of patients with COVID-19. Kidney Int 2020; 97: 829–38.

  • • 中国8本 USA1の文献をメタ解析• KDIGOのAKI基準を用いた評価• Primary Outcome院内・ICUにおけるAKI発生率→入院患者2702人中86人 3%の発生率→ICU患者122人中25人 19%の発生率

    • Secondary Outcome院内・ICUにおけるRRT使用率→入院患者2001人中31人 2%の発生率→ICU患者101人中14人 13%の発生率

    Acute kidney injury in hospitalized patients with coronavirus disease 2019 (COVID-19): A meta-analysis

    Journal of InfectionJ Infect 2020 May 8;S0163-4453(20)30280-2.

    AKI発生率

    院内 AKI 3%

    ICU AKI 19%

    COVID19患者がICU入室した場合約13%がRRTを必要とする

  • 日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会 2020年8月7日現在

    透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者数

    透析患者は増加傾向死亡数は抑えられている半数以上は関東地区人工呼吸器は2割で使用

  • 日本集中治療医学会ホームページ 日本COVID-19対策ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計

    人工呼吸器使用患者は上昇傾向にある前述の透析患者の人工呼吸器使用23名とすると、全体の約3%

  • COVID19×血液浄化療法

    ①CRRT:持続緩徐式血液浄化療法

    ②PE:血漿交換療法

    ③PMX:トレミキシンB

  • ① CRRT

  • Lancet Respir Med. 2020 Jul;8(7):738-742.

    • COVID19患者の約5%は、ARDS、Septic Shock、

    MOFを伴う重症化に発展する。

    • 上記の症状から、RRTを必要とするAKIの軽度タ

    ンパク尿は腎臓への関与は高い。

    • ICUに入院する患者の20%は、疾患発症から中

    央値15日にRRTを必要としている。

  • RRTが必要なCOVID19患者の管理

  • Indications:適応・循環血液量増加に反応しない乏尿・高カリウム血症・重篤なアシドーシス・高窒素血症

    ・サイトカイン放出症候群(CRS)が認められる場合、AKIがない場合でもサイトカイン除去の血液浄化を考慮する。・特例ケース※やRCT実施下において中分子/大分子カットの透析や血液吸着装置について、AKIがない場合においても考慮する。・他臓器支持療法(例えば低流量のECCO2R)を考慮する。・ECMOと共にRRTの実施を考慮する。

    ※特別ケースとして、免疫機能不全が明白である場合や、炎症パラメータまたはサイトカインが上昇しており、その他の治療が失敗または不十分である場合が挙げられる。

  • Preparation:準備・バスキュラーアクセス≧12.5Fr・望ましくは右の頸静脈を使用する。位置ずれを防ぐためにしっかりと固定をする。・ECMO回路との接続を避ける。※

    ・CRRT装置と追加物品やダイヤライザー、特殊膜や吸着カートリッジの在庫を確保する。・人員のシフトを調整や技術認定について確認をする。

    ※ブラッドアクセスが取れない場合、ECMOとの接続もありえる。その場合、人工肺によるガス塞栓のリスクを最小限にすることができる。

    The Egyptian Journal of Critical Care MedicineVolume 6, Issue 3, December 2018, Pages 95-100

    https://www.sciencedirect.com/science/journal/20907303https://www.sciencedirect.com/science/journal/20907303/6/3

  • 透析膜

    セプザイリス®(Baxter)AN69ST膜

    ヘモフィールCH(TORAY)PMMA膜

    COVID19に対する効果はいかに・・・

  • Prescription:処方・CVVHD/CVVHDF(CHD/CHDF)の選択・血液流量は150ml/min以上

    ・抗凝固の選択4%クエン酸を用いた抗凝固(初回量3.5mmol/L)UHF:未分画ヘパリン(10~15IU/kg/hr APTT60~90s)LMWH:低分子ヘパリン(初回3.5mg/hr)UFH:未分画ヘパリン(初回10-15IU/kg/hr)

    ・透析濾過量25-30ml/kg/hr 最小限の目標は20-25ml/kg/hrとする。・体液状態と血行動態に基づいて、毎日の体液バランスから除水量を調整する。

    →KDIGO Clinical Practice Guidelineの内容

  • Delivery:供給・カテーテル機能を確保する。

    ・再循環を回避する。

    ・濃縮率>20%を回避する。

    ・治療ダウンタイムを算出する。

    ・濾過量を他のバランスもとに計算する。

    ・可能であれば24時間毎にフィルターを交換する。

    ・様々な体外サポートシステムが統合し、最適化されていることを確認する。

  • Monitoring:監視・カテーテル位置を確認する(体位変換後)

    ・回路凝固状態を確認する(圧力)

    ・クエン酸抗凝固の場合、フィルター後のカルシウムイオンが0.25-0.35lU/mLにセットする。

    ・低分子ヘパリンの場合、抗Xa活性を0.25-0.35lU/mlにセットとする。

    ・未分画ヘパリンの場合、aPTTを60-90sにセットする。

    ・患者観察と体液バランスを確認する。

    ・患者の血行動態を確認する。

    ・モニタ透析/濾過率の計算を行う。

  • 廃液におけるウィルス

    Blood Purif. 2020 Jun 11;1-3.

    • CRRT施行中のウィルス感染のリスクを評価するため、CRRTの廃液をPCR測定(計5回)

    • 結果5回中3回のサンプルから、少量のウィルスが検知された。• フィルターのポアサイズは7~10nm、ウィルスは100nm

    廃液についても感染物としての適切な処理が必要

  • 装置を室外に出す対策はNG

    コロナウィルス感染対策で、隣の部屋に装置を置いた状態で、血液回路を延長して治療をしていた際、戻りラインとブラッドアクセスデバイス間に新たな接続デバイスを使用したことで失血が起き、重症 2 件と患者死亡1 件の報告があった

    Washington University School of Medicine in St.Louis ホームページより

  • 装置におけるCOVID19エアロゾル 銅 ボール紙 スチール プラスチック

    スチール・プラスチック表面で72時間存在する

    N Engl J Med. 2020 Apr 16;382(16):1564-1567.

    メーカー通達では、安全を考慮し2〜3倍の期間(約10日間)ウィルスから隔離された場所で静置しておくことを推奨している。

    COVID19患者で使用した場合は、装置の使用制限を考慮する必要がある

  • ② PE

  • • COVID19患者における主要な死因はCytokine Storm syndromeとARDSであった。

    Cytokine Storm

    Lancet. 2020;395:497- 506.Clin Immunol. 2020;215:108448.Clin Infect Dis. 2020;ciaa248.

    • Cytokine Storm syndromeを呈している患者の50%はARDSへ進行する。

    J Clin Invest. 2020;130:2620- 9.

  • Cytokine Storm

    J Infect. 2020 Jun;80(6):607-613.

  • 血漿交換の除去領域

    血漿中の物質を除去、FFPまたはアルブミンによる置換を行う

  • Int J Infect Dis. 2020 Jun 22;S1201-9712(20)30499-9

    研究:単施設症例報告

    期間:2020年4月17日〜2020年5月11日

    場所: The Royal Hospital, a tertiary care hospital in Muscat, Oman,

    患者:COVID19患者31名のうち11名に対して血漿交換を施行

    方法:血漿交換施行群とコントロール群で比較 血漿交換は5回施行

    Outcome:28・14日死亡率、ICU滞在日数、抜管件数を比較

    装置:Spectra Optia (テルモ)抗凝固:ACD-A液(クエン酸)血漿交換置換量FFPを使用 置換量L=体重kg×(1/13)×(100-Ht値%)

  • ARDSについては両群間で優位差はない重症肺炎についてはPE施行群で優位に少ないそれぞれ6例ずつトシリズマブ(抗IL6受容体抗体)の投与があった

  • ICU滞在期間はPE群で優位に短い抜管はPE群で優位に多い死亡率14日、28日それぞれでPE群が優位に少ない

  • Pre:PE実施前 Post:PE実施7日後

  • Discussion• PEは、毒素と有害な炎症性サイトカイン(例えばIL-1、IL-6、顆粒球コロニー形成促進因子、腫瘍壊死因子と他の炎症性のパラメータ)を除去する。

    • 理論的には、PEは有害炎症伝達物質に加えて形成されたSARS-CoV-2抗体を除去することもできた。しかし、それは抗体産生応答がサイトカインストームの間、

    または、その後発現する場合かどうかは不明なままで

    ある。

  • Discussion

    •重篤な状況で放出される炎症性サイトカインが、

    疾患の発症のおよそ7~14日後に有意により高

    かったと報告された。

    • PE治療の初期の開始は、この期間以内に、より良

    好な結果と関係している可能性がある。本報告で

    はPEは7日と最高14の病日から始まった。

  • ③ PMX

  • 現状

    • COVID19患者にPMXを使用した研究報告は乏しい・・・今後の研究報告に期待・・・

    症例報告

    3例 1例は死亡CHDFとPMX施行(1例については白血球除去療法:LCAPも実施)いずれの感染症病棟での使用問題でCHDFも6〜12時間の施行2例はIL6減少に伴い、胸部X線で陰影の改善3例目はLCAPも施行している ECMO必要そうということで転院

  • まとめ

    • COVID19患者の重症化によるAKIに対するCRRT使用頻度は一定の割合で発生する。

    •サイトカインに除去に対する血漿交換は有効性があるかもしれない。

    •装置を介した感染伝搬と共に廃液の取り扱いにも充分注意する必要がある。

    •炎症性サイトカインや各メディエーターの吸着特性のあるフィルタによるCRRTやPMXの施行について有効性の情報が乏しい

  • 所感

    • COVID19患者に対する血液浄化療法の施行については、感染対策を含めた多くの労力を必要とする。

    •重症化によりAKIの発症となる場合、炎症物質吸着特性のある膜やナファモスタットの効果について今後の発表に期待したい。

    •血漿交換においてはIL6などの物質除去においては理にかなってはいるが、根本治療には至らない点と、医療コストを考慮して施行する必要がある。

    •人工呼吸器の台数問題が話題に上がるが、CRRT装置の台数についても十分配慮する必要があると考える。


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