Download - 個人線量計による個人被ばく 線量評価の経験hobkan/2014_autumn_section(3).pdf2μSv/h 程度 民家屋内・庭 居住区域(除染対象外) 空間線量率:
個人線量計による個人被ばく 線量評価の経験
放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター
被ばく評価研究チーム 大町 康
2014年9月9日 日本原子力学会 秋の大会 京都大学百周年時計台記念館
本日の講演内容
1.話題提供 東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に係る個人線量の 特性に関する調査(2013年9月) (内閣府支援チームからの依頼。日本原子力研究開発機構と放医研で共同実施)
2.調査結果を議論する中で気になった点 3.「シーベルト(Sv)」を正しく理解するためには?
1.東京電力㈱福島第一原子力発電所事故に係る 個人線量の特性に関する調査
(平成25年9月。日本原子力研究開発機構と放医研で共同実施)
調査の背景 ● 東京電力㈱福島第一原子力発電所における事故に係る避難指示区域の解除にあたり、帰還後の住民の被ばく 線量の評価を空間線量率から推定される被ばく線量ではなく、個人線量を用いることにする。(規制委員会)
● 帰還後に想定される住民の個人線量を、空間線量からの推測により、帰還前に把握することができれば、帰還 前の評価がより正確になり、帰還後に住民が線量計を携行する負担を軽減できる可能性。(支援チーム)
主な調査目的 ● 調査対象地域内の代表的な生活場所における空間線量率と人体等に装着した個人線量計応答の関係
● 生活パターンを考慮した現実的な個人線量の推定手法の確立。
地上1mにおける空間線量 (周辺線量当量)
調査地点の状況(平成25年9月時点) 未除染あるいは除染中の地域
実施時期: 平成25年9月
実施場所: ・田村市都路町、川内村、飯舘村 (避難指示解除準備区域・居住制限区域)
・家屋、山林、農地、公民館、学校、広場 (28地点)
調査の内容(1)
3)個人線量測定 測定器: 電子式個人線量計(シリコン半導体検出器) 4社5機種 -A社A1: 1分間毎、0.001μSv単位で記録 個人線量評価用に改良 A2: 1分毎、1μSv単位で記録。 -B社B:0.1μSv増加毎にデータ取得 -C社C :1時間毎、0.01μSv単位で記録 -D社D :1μSv増加毎にデータ取得
装着部位: 調査員の胸部、スラブファントム(地上1m)
4)行動記録 調査地点、活動開始・終了時刻を記録 緯度経度記録(携帯型GPSロガー)
5)解析 同じ場所と時間帯において、空間線量率をもとに計算した積算線量と個人線量計で記録された 積算被ばく線量を比較。
GPSロガー
個人線量計
1m
1)ガンマ線波高分布測定 測定器: Inspector1000(Canberra) NaI(Tl)シンチレーション検出器 測定条件: 地上1m、概ね10分間計測
2)空間線量率測定 測定器: NaI(Tl)サーベイメータ (日立アロカメディカルTCS-172B) 測定条件: 地上高さ1m 屋内:室内中央・四隅 (必要に応じ窓そば・窓下等測定) 屋外:建屋周囲壁から1~3m離れ、 4~5m間隔で高さ1mで測定
調査の内容(2)
ファントム。メタクリル樹脂板。 30㎝×30㎝×15㎝
ガンマ線波高分布測定 ・ Cs-134,137由来ガンマ線 ・ 地表沈着等からのガンマ線(直接成分) ・ 林などからのガンマ線が周囲の土壌、空気で散乱して、飛来 (セシウム後方散乱ピーク(188keV)の確認)
民家屋内外・農地 居住制限区域(未除染)
空間線量率: 2μSv/h程度
民家屋内・庭 居住区域(除染対象外)
空間線量率:0.3μSv/h程度
調査結果(1)
学校校庭 居住区域(除染済み)
空間線量率:0.13μSv/h程度
ファントムに取付けた個人線量計(A1~D)から求めた積算個人線量(縦軸)と、 空間線量率から推定した積算空間線量(横軸)との相関
・(ファントムに取り付けた個人線量計で実測した積算個人線量) =0.6~0.7×(空間線量率から推定される積算空間線量)
・ファントム装着面による違いは無。
・実験室における回転照射実験(セシウム-137線源)でも同様に、上記関係は0.6-0.7 となり、調査地点はROT場と考えてよいことが支持された。
サーベイメータ指示値と個人線量計指示値の関係(ファントム)
調査結果(2)
各調査員(A-E)の個人線量計から求めた積算個人線量(縦軸)と、 行動記録と空間線量率より推定した積算空間線量(横軸)との相関
それぞれの調査地点における積算空間線量と 積算個人線量との比較例
・(標準的な体型の成人男性が着用した個人線量計で実測した積算個人線量) =0.7 × (空間線量率から推定される積算空間線量)
・調査員(B)は他の調査員に比べて体格がよく、ガンマ線の遮蔽効果が大きかったために、 個人線量計の読み値が約10%小さくなったと考えられた。
・今後の課題として、体格との関係(特に子供)に関する調査が必要と考えられた。 ⇒ 背面からの遮蔽効果の程度、個人線量計装着位置(地上からの高さ)
調査結果(3)
サーベイメータ指示値と個人線量計指示値の関係(調査員)
今回の条件 ・Cs-134,137由来ガンマ線のROT場と考えてよい放射線場 ・放射線管理用に校正されたNaIシンチレーションサーベイメータ ・地上高1mの空間線量率 ・標準的な体型の成人男性 ・放射線管理用にAPで校正された個人被ばく線量計 ・概ね地上高1mにおける個人線量計による計測
×0.7 (実測)
サーベイメータ指示値と個人線量計指示値の関係(まとめ)
健康リスク評価上 知りたいものは
実効線量
今回の条件 ・Cs-134,137由来ガンマ線のROT場と考えてよい放射線場 ・放射線管理用に校正されたNaIシンチレーションサーベイメータ ・地上高1mの空間線量率 ・標準的な体型の成人男性 ・放射線管理用にAPで校正された個人被ばく線量計 ・概ね地上高1mにおける個人線量計による計測
×0.7 (実測)
今回のような測定条件においては、周辺線量当量と実効線量(ROT)の関係、 周辺線量と個人線量計指示値の関係が、それぞれ0.7とたまたま同じになり、 実用量である個人線量計指示値は実効線量のよい指標になると考えられた。
サーベイメータ指示値と個人線量計指示値の関係(まとめ)
健康リスク評価上 知りたいものは
実効線量
×0.7 (計算)
・「放射線量」、「空間線量」、「ひばく線量」 等の漠然とした用語を用いやすい
・物理量・実用量・実効線量の関係 実用量はあくまで実効線量の代用であり、保守的に評価されていることの理解・認識。 実効線量、個人線量(個人線量当量)、空間線量(周辺線量当量)が混乱。数字の一人歩き
・実効線量の評価 放射線場やガンマ線エネルギーにより異なる (例)E(AP),E(ROT)等 評価方法 (例)換算係数を用いた評価、詳細な計算評価がある
・周辺線量当量(H*(10)) (例)地上高1mでNaIサーベイメータで実測した・・・ 航空機モニタリングにより推計された地上高1mの・・・
・「空間線量」 周辺線量当量か空気吸収線量かの確認。 (理由)モニタリングポスト測定値は「空気吸収線量(Gy/h)」。国公表資料でSv/hで表記。
・個人線量当量(Hp(10)) (例)積算の・・・ 年間の・・・(屋外○○時間屋内△△時間遮蔽率□□で計算された・・・) 子供における装着部位、相対する空間線量率のデータのあり方は今後の課題
・自然放射線(バックグラウンド) 個人線量計では自然放射線の寄与を除いているが、メーカーにより異なり、詳細不明。 低線量レベルの追加被ばく評価における、バックグラウンドの取り扱いは今後の課題。
2.調査結果を議論する中で気になった点
「量」の名称・定義・単位について
・防護量なのか実用量なのか
・周辺線量当量なのか個人線量当量なのか
⇒「Sv」だけの表記でなく、誤解を防ぐ用語表記や説明 (どれとどれをどのように比較するのか、できるのか)
値の持つ意味について
・被ばく状況における実効線量の代用の考え方
・評価にいたる仮定条件・計算過程の説明
・どの程度の「保守的な評価」であるか
3.「シーベルト(Sv)」を正しく理解するためには?
数字の一人歩き それぞれの「量」の
意味の混同 分かりやすい 用語表記
謝辞
今回の調査に際しては、田村市役所、都路行政局、川内村役場、飯舘村役場の方々、また測定のために自宅やその農地をご提供いただいた住民の方々に多大な協力をいただきました。感謝の意を表します。