第24章 磁場
電流と磁場
磁石
電荷の同極同士(+と+、と)と同じように、磁石の同極同士(NとN、SとS)は反発し合い、異極同士(NとS)は引き寄せ合う。
N極からS極までの、各点の磁界の向きを表した線を磁力線という。
磁石による磁気の特性 磁極間に発生する磁力線
磁界(磁場)
磁石を割っても必ずN極とS極の対
になっている。これを磁気双極子という。磁石は必ず磁気双極子の形で存在し、単極のみの粒子(モノポール)は存在しない。これを磁気単極子不在の法則という。
磁気単極子不在の法則より、閉じた空間を貫く電気力線の代数和は必ずゼロになる。これを磁界に関するガウスの法則という。
磁気単極子不在の法則 磁力線とガウスの法則
地球の磁界
地球は大きな磁石で、北にS極、南にN極を配置した形になっている。た
だし、地理上の北極とは一致しておらず、また長い周期で極性が反転しているのも知られている。磁気的北極を北磁極、磁気点南極を南磁極と呼ぶ。
実際には地球の磁力線は、直線的に南極側から北極側に向かっておらず、地域により地球の構造的影響を受け、複雑に曲がっている。
例えば、北海道では真北から西寄り約9度を北として指し、東京付近では約7度、沖縄では約5度西寄りになる。これを西偏と呼ぶ。
世界の偏角
電流の作る磁界
導線の下に方位磁針を置き、電流を流すと方位磁針は一定の方向を向く。これは電流の回りに磁界ができていることを意味する。
直線的な電流の回りにできる磁界の向きは、電流を右ねじを押し込む方向とすると、右ねじをまわす方向であることから、右ねじの法則と言われる。
I
I
右ねじの法則
電流I
右ねじの進む向き
右ねじを回す向き
磁界の向き B
電流I
親指の向き
4本指の向き
磁界の向き B
電流I
電流I
磁界の向き B
磁界の向き B
※コイルにできる磁界
直流電流のつくる磁界
直流電流のつくる磁界の方向は、右ねじの法則からわかる。また、そのときの磁束密度は、電流の強さに比例し、距離に反比例する。電流からの距離を r とすると、磁束密度 Bは、
となる。
02I
B r
荷電粒子のつくる磁界
磁界の中を運動する荷電粒子は、磁界から力を受けるだけでなく、荷電粒子の動き自体がまわりの磁界を発生する。
電荷 q の荷電粒子が速度 v で運
動する場合につくる磁束密度の大きさは、荷電粒子からの距離を r とし、速度ベクトルとのなす角度を とすると、
となる。ここで、比例係数 0 は真空の透磁率といい、
である。磁界の方向は右ねじの進む方向と同じなので、これを右ねじの法則という。
024
sinqvB
r
70 4 10 [T m/A]
r
q v
ビオ-サバールの法則
電流は移動する電子の集まりなので、電流による磁束密度は多くの電子からの磁束密度の重ね合わせで考えることができる。
区間 d、断面積 S の区間にある
自由電子の数は、電子の密度を nとすると nSd 個となり、この区間の
電荷は q = enSd と表すことができ
る。電流 I と電荷の関係は、qv =Id となるので、この区間によってで
きる磁束密度 dBは、
となる。これを積分することで、電流による磁束密度 B を求めることができる。
これをビオ-サバール(Biot-Savart)の法則という。
024
sind
IB dr
024
sinIB dr
I d
r
0 0
04 2sinI IB dx x
= x / tan d = (x / sin2) dr = x / sin
より、x
O
アンペールの法則
電流のまわりの閉曲線を考える。この経路を長さ dl の小さな線分に
分割する。その大きさと方向を表すベクトルを としたとき、磁界との内積 を全体に対して積分すると、
となる。これをアンペールの法則という。これはちょうど電界に対するガウスの法則と同様に扱うことができる。
証明)
と、
より、
d
Bdr
'
dB
d
0 dB I
d cos dr
02IB r
0 0
02 2
d d cos
d d
B B
I Ir Ir
直流電流のまわりの磁界
直流電流のまわりの磁界を求めるときは、半径 rの円を考えると、
となる。よって、
02 d dB B rB I
02IB r
d B
r
ソレノイドの作る磁界
導体をコイル状に巻いたものをソレノイドまたはコイルという。
電流の向きI I
磁界の向き
I I I I I
磁界の向き
線間磁界
電流の向き
ソレノイドの中の磁界
アンペールの法則より、
長さ1[m]の区間ABCDを考えると、
この区間には電流が存在しないので、B = 0 となる。区間ABFEを考えると、EF間だけ磁界と平行になるため、cos' = 1となり、d = 1[m]より、
となる。また、この区間内にn本の電流があったとすると、
となる。
0 dB I
dB B
n本
0 dB B nI
ソレノイドコイルを強くする
ソレノイドコイルに強磁性体を入れることでコイルの磁束密度を大きくすることができる。
この rを比透磁率という。
0B nI
0rB nI
材質 比透磁率
銅 0.999991水 0.999991
真空 1.0空気 1.0000004
コバルト 250ニッケル 600軟鉄 2,000
鉄(純度99.6%) 5,000珪素鋼 7,000
純鉄(純度99.96%) 200,000スーパーマロイ 1,000,000
磁性体の磁化特性
Bi は入力した磁束密度を表し、Boは検出器での磁束密度を表している。磁化の特性(磁気特性)は、はじめにO点から出発し、その後A → B → C → D→ E → F → A → B → C → D →・・・を繰り返す。±BC は保磁力を示し、これが大きいほどこの磁性体が永久磁石に適することとなる。
ヒステリシス曲線(磁気特性)
被測定磁性体
積分器交流源 O
BC
Bi
CBC
D E
F
A
横軸(x) 縦軸(y)
磁気特性測定構成例
Bo
B
B
コイルの利用
電流 I によってよって生じる磁束
は全て磁芯内を循環し、理想的には外に漏れることはない。
I
トロイダルコイル 可動コイル型電流計
N S
永久磁石目盛
軟鉄心
回転できるコイル
N
SI
r
例題
図のように半径Rの円形の導線に電流Iが流れている。この円の中心軸上で、中心からzだけ離れた点における磁束密度を求めなさい。
軸に垂直な成分は、円周上の反対の部分と打ち消しあうので、軸方向の成分のみを考えれば良い。よって、ビオサバールの法則より、
となる。ここで、
なので、
よって、
IR
z
dB
d
2 2r R z
0
24cosd cos d
IB Br
2 2r R z
cos Rr
03 22 24 /
d( )I RBR z
03 22 22 /( )
I RBR z
例題
図のような導線にI[A]の電流が流れている。点Oでの磁束密度を求め
なさい。また、この結果を利用して非常に長い直流電流の作る磁束密度の大きさを求めなさい。
である。よって、
ここで、
より、
また、非常に長い場合は、1 = 0、2= を代入すると、
図のAB以外からの影響はない。区間AB内の点 x = R / tanでの微小区間 dx から点Oまでの距離は r= R / sin であるので、この区間が点Oに作る磁束密度 dBは、
30 0
2 24 4sin sin
d d dI IB x xr R
30
24sin
dIB xR
2d dd d dd d tan sinx R R
θ
2
1
0
01 2
4
4
sin d
(cos cos )
IB RIR
02IB R
A Bx2
1 R
例題
図のように中心から半径Rの非常
に長い直線の導線に一様に電流が流れている。導線内外の磁束密度を求めなさい。
導線内の半径 r の円内の電流は、電流は面積に比例するので、
である。よって、この円にアンペールの法則を適用すると、
となる、これより、
となる。
r > Rのときは、
22rrI IR
20 22
d ( ) rB B r I
R
022rB IR
02IB r
I
R