水稲におけるスクミリンゴガイ対策
~スクミリンゴガイピッカーが現地を救う!?~
千葉県長生農業事務所 小宮良美
千葉県農業の状況
都市農業地帯大消費地に近い地区園芸等が盛ん
大規模農業地帯全国有数の農業地帯
基盤整備が進み、水田、露地野菜、施設園芸、畜産など、が盛ん
中山間・観光農業地帯
温暖な気候や地形を生かした多彩な品目を生産観光農業も盛ん
・農業産出額 全国4位
・首都圏に立地した優位な産地
・露地、施設で様々な野菜を生産
・生乳、豚肉、卵も全国トップレベル
・年平均気温は15.7℃で温暖な気候
・東日本屈指の早場米の産地
長生地域の農業
1 経営耕地面積
9,202haうち水田面積6,517ha
(水田率70.8%)
2 農家数
5,045戸
3 産出額155.3 億円
米: 65.8億円(割合42.4%)
野菜: 53.7億円
スクミリンゴガイとは
• 通称ジャンボタニシ
• 南米原産の淡水巻貝
• 1980年代に日本に侵入、その後水田で野生化
水田内のスクミリンゴガイと水稲の被害
田植直後の水稲苗を食害
食欲旺盛
現場の状況
稲に産み付けられた卵
現場の状況
繁殖力が高い
冬(12月~2月)が暖かいと発生圃場率が高くなる
冬期(12-2月)の平均気温と発生地点率の関係
冬の平均気温(℃)
発生地点率(
%)
松下(2012)より
被害対策の推進~チラシの配布~
スクミリンゴガイ対策7つのポイント
1 厳冬期の耕耘、水路の泥上げ
2 水口へのネットの設置
3 早期移植や成苗移植
4 浅水管理
5 卵塊の除去、貝の捕殺
6 薬剤防除
7 収穫直後の石灰窒素の散布
実施ほ場では被害率が減少している。
効果が高いことは理解されているが・・・・・○ 最近は秋冬に雨が多くて、田の耕耘ができない。○ 田の面積が増えて、全て耕耘することが難しい。などの理由で全面積で実施するまでには至らない。
◎ 水田の土が硬い収穫後に耕耘◎ 貝の破砕と貝を寒気にさらす効果で殺貝。◎ 深度は浅め(6cm程度)で良く、通常の1/2以下の作業
速度で一気に耕耘すると効果が高い。
厳冬期の耕うん
研究データや取組事例により効果が実証されているが、ネットがつまり、交換・掃除が大変である。
5mm~10mmの網目のネットや金網を設置 水口に設置することで用水からの侵入を防ぐ
水口へのネット等の設置
実施ほ場では被害率が減少している。
効果が高いことは理解されているが・・・・・○ ほ場の均平が難しく、田面が出てしまうと除草剤の
効果が不安定になる。○ 用水供給に不安がある
◎ 移植後2~3週間は4cm以下の浅水にする◎ スクミリンゴガイの活動を抑制する
浅水管理
卵塊の除去、貝の捕殺
棒などを使って、一つ一つを破壊・落下させる大変地道な作業である。
見つけ次第捕殺する
水稲が成長すると、稲への実害がなくなるため、対策をやめてしまうことが多い。
○ 薬剤防除では、殺貝効果や食害防止効果のある農薬が苗箱施用や本田散布で登録されている。
薬剤の特徴を理解し、適期に使用できれば効果はある。
○ 基本的には専用剤が中心なので、防除には新たな経費や手間(作業)がかかる。
○ 近年の米価や1戸あたりの面積の拡大を考えると、経費や手間(作業)の増加に、ためらいをみせる人もいる。
薬剤散布
用水路の貝と卵
地域ぐるみで対策したいが・・・
越冬場所となる用排水路の管理
用排水路は重要な増殖場所
①卵の払い落とし②冬期の泥上げ、清掃
を地域ぐるみで対策すると効果的
効果があることは理解されているが、完全な実施には至っていない
スクミリンゴガイの防除
耕種的防除 薬剤防除
地域ぐるみでの防除
貝密度が増加してきているのでは?その結果、各種対策の効果にも悪影響がでていないか?
生産現場の夢
・貝や卵塊を死滅させ、
・新たな作業(手間)が増えずに、
・できれば経費もあまりかからない、
こんな手法や機械、器具等があれば、
貝密度を大きく減らすことができ、
被害も大幅に減少できるのでは!
生産現場の夢
例えば・・・
○ スクミリンゴガイを1か所に効果的に集める
⇒ 貝を捕殺することが、格段に楽に!
○ 耕耘と同時に貝を拾い上げられる機械
⇒ 1度の作業ででき、貝も減らせる!
○ 水路などを走行し、卵塊を駆除できる機械
⇒ 最小限の人員で地域ぐるみの防除が可能
幅広い視点や分野からのアイデア、助言をいただき、協力しながら、実証や普及を進め、スクミリンゴガイの被害軽減による水稲農家の生産安定と所得向上を目指したいと思います。
生産現場の夢
ご静聴ありがとうございました