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図 1 G タンパク質共役受容体を介するシグナル伝達

図 2 神経前駆細胞における G タンパク質 / リン酸化シグナルによる細胞骨格のダイナミックな動態変化

図 3 オーファン GPCR に対する機能性抗体の作成とシグナル伝達の解析および抗体医薬への展開

研究・教育の 概要

ヒ ト の 身 体 は 60 兆 個 の 細 胞 、 そ の 集 合 体 で あ る 組 織 、

器 官 か ら 構 成 さ れ 、 そ れ ら の 連 携 に よ り 生 命 活 動 が 維 持 さ

れ て い ま す 。 ホ ル モ ン 、 神 経 伝 達 物 質 、 細 胞 増 殖 ・ 分 化 因

子 な ど に よ っ て 多 彩 な 細 胞 応 答 が 引 き 起 こ さ れ ま す が 、 応

答 に い た る シ グ ナ ル 伝 達 経 路 は 複 雑 な ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成

し て い ま す 。 一 方 、 種 々 の 疾 患 に お い て シ グ ナ ル 伝 達 系 の

異 常 が 見 出 さ れ 、 ま た シ グ ナ ル 伝 達 系 の 構 成 因 子 を 標 的 と

す る 薬 剤 が 数 多 く 用 い ら れ て い ま す 。 本 研 究 室 で は 、 シ グ

ナ ル を 受 け た 細 胞 の 応 答 の 分 子 機 構 の 解 明 、 お よ び 神 経 疾

患 、 癌 そ の 他 の 疾 患 の 病 因 究 明 と 、 そ の 治 療 へ 向 け た 研 究

を 進 め て い ま す 。

主 な 研 究 テ ー マ

1 ) G タンパク質共役受容体を介するシグナル伝達機構

G タ ン パ ク 質 共 役 受 容 体 ( G protein-coupled receptor, GPCR )

は αβγ の 3 つ の サ ブ ユ ニ ッ ト よ り 成 る 3 量 体 GTP 結 合 タ ン

パ ク 質 ( G タ ン パ ク 質 ) を 活 性 化 し 、 細 胞 内 へ シ グ ナ ル を

伝 達 し ま す ( 図 1 ) 。 GPCRを 介 す る シ グ ナ ル は 、 神 経 系 、

内 分 泌 代 謝 系 、 免 疫 系 、 個 体 形 成 な ど 、 様 々 な 生 体 を 統 合

す る シ ス テ ム に 必 須 の 機 構 で す 。 し か し GPCRシ グ ナ ル の 制

御 機 構 お よ び そ の 生 理 機 能 に お い て 不 明 な 部 分 が 多 く 残 さ

れ て い ま す 。 新 規 GPCRシ グ ナ ル 制 御 分 子 の 同 定 と 機 能 解 析

か ら 、 シ グ ナ ル 構 成 因 子 を 標 的 と し た 創 薬 へ の 発 展 を 目 指

し て い ま す 。

2 ) 神経幹細胞の自己複製と分化、遊走の制御機構神 経 細 胞 、 グ リ ア 細 胞 の い ず れ に も 分 化 で き る 神 経 幹 細 胞

の 自 己 複 製 、 分 化 、 遊 走 の メ カ ニ ズ ム な ど 多 く の こ と が 不

明 で す 。 神 経 幹 細 胞 や 脳 切 片 の 培 養 系 と タ イ ム ラ プ ズ 蛍 光

顕 微 鏡 を 用 い て 分 子 の 動 態 を 詳 細 に 解 析 し 、 神 経 発 生 過 程

に お け る ダ イ ナ ミ ッ ク な 分 子 制 御 の 解 明 に 取 り 組 ん で い ま

す ( 図 2 ) 。

3 ) 抗体を用いたオーファン GPCR の活性化機構および機能の解析

ゲ ノ ム 上 1000 近 く あ る GPCRの う ち 1 0 0 種 類 以 上 が 未 だ 生

体 内 の リ ガ ン ド が 不 明 な オ ー フ ァ ン ( 孤 児 ) 受 容 体 で す 。

私 共 は オ ー フ ァ ン GPCRに 対 す る 抗 体 を 作 成 し 、 細 胞 応 答 を

惹 起 す る ア ゴ ニ ス ト の よ う に 働 く 抗 体 、 ま た 癌 細 胞 あ る い

は 神 経 幹 細 胞 の 遊 走 を 阻 害 す る 抗 体 を 得 ま し た ( 図 3 ) 。

リ ガ ン ド の 探 索 と と も に 、 そ れ ら の 抗 体 を 用 い て オ ー フ ァ

ン GPCRの 機 能 解 析 と 抗 体 医 薬 へ の 展 開 を 目 指 し た 研 究 を 進

め て い ま す 。

4) 一次繊毛の形成メカニズムと細胞機能の解析

ほ ぼ 全 て の 哺 乳 動 物 細 胞 に 存 在 す る

一 次 繊 毛 は 、 細 胞 外 の シ グ ナ ル を 受 容

す る ア ン テ ナ と し て 機 能 し 、 そ の 破 綻

が 多 く の 疾 患 を 惹 き 起 こ し ま す 。 し か

し 、 一 次 繊 毛 の 形 成 ・ 機 能 を 制 御 す る

分 子 メ カ ニ ズ ム は 殆 ど 分 か っ て い ま せ

ん 。 こ の 課 題 に 取 り 組 む こ と で 、 将 来

的 な 疾 患 治 療 へ の 展 開 を 目 指 し て い ま

す 。

5) 上皮形態形成を制御するシグナル伝達機構の解析

上 皮 組 織 は 器 官 の 表 面 を 覆 う 組 織 で 、

発 生 過 程 に お い て 管 状 や 嚢 胞 状 の 複 雑

な 形 態 へ と 変 化 し ま す 。 こ の よ う な 上

皮 組 織 の 形 態 形 成 に は 細 胞 の 増 殖 、 移

動 、 接 着 、 極 性 形 成 な ど の 様 々 な 過 程

が 厳 密 に 制 御 さ れ る 必 要 が あ り ま す が 、

そ の 分 子 メ カ ニ ズ ム に は 不 明 な 部 分 が

多 く 残 さ れ て い ま す 。 上 皮 組 織 の 破 綻

は が ん の 浸 潤 ・ 転 移 と も 密 接 に 関 連 し

て お り 、 上 皮 形 態 形 成 の 分 子 機 構 を 明

ら か に す る こ と で 新 た な が ん 治 療 法 の

開 発 を 目 指 し た い と 考 え て い ま す 。

主 な 発 表 論 文 ・ 著 作

[1] Kobayashi T. et al., Cell Cycle., 16, 817, 2017

[2] Kobayashi T. et al., EMBO Rep., 18, 334, 2017

[3] Ohta S. et al., Biol. Pharm. Bull., 38, 594, 2015

[4] Kobayashi T. et al., J. Cell Biol., 204, 215, 2014

[5] Jenie RI. et al., Genes Cells, 18, 1095, 2013

[6] Toriyama M. et al., J. Biol. Chem., 287, 12691, 2012

[7] Kobayashi T. et al., Cell, 145, 914, 2011[8] Kobayashi T. et al., J. Cell Biol., 193, 435,

2011[9] Nishimura A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci.

USA, 107, 13666, 2010[10] Tago K. et al., J. Biol. Chem., 285, 30622,

2010[11] Nagai Y. et al., J. Biol. Chem., 285,

分子情報薬理学

バイオサイエンス研究科

教授 :伊東 広 :[email protected]助教 :小林 哲夫 :[email protected]助教 :梶 紀子 :[email protected]

http: //bsw3.naist. jp/ i toh/

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11114, 2010[12] Nakata A. et al., EMBO Rep., 10, 622, 2009[13] Mizuno N. & Itoh H., Neurosignals, 17, 42, 2009[14] Iguchi T. et al., J. Biol. Chem., 283, 14469, 2008[15] Urano D et al., Cell Signal., 20, 1545, 2008[16] Sugawara et al., Cell Signal., 19, 1301, 2007[17] Nishimura A. et al., Genes Cells, 11, 487, 2006[18] Mizuno N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, 12365, 2005[ 1 9 ] 伊 東 広 他 , 生 化 学 , 85, 531, 2013[ 2 0 ] 伊 東 広 , 実 験 医 学 , 31, 382, 2013

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