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Belle 実験における BD(*)K- 崩壊の測定
名古屋大学大学院 理学研究科
素粒子宇宙物理学専攻 高エネルギー物理学研究室
松本 崇博学位申請論文公開講演会 : 2002 年 1 月 1
0 日
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Belle 実験の目的
• B 中間子を用いた CP 対称性の破れのメカニズムの解明– CP 対称性の破れ (CP 非保存)とは?
• C 変換 粒子 反粒子変換、・ P 変換 空間反転変換• CP 非保存 C, P の連続変換前後で物理法則にずれ
– 宇宙が物質だけで構成され、反物質で構成されない? CP 非保存
• B 中間子崩壊機構の解明– B 中間子はさまざまな機構により崩壊を起こす– CP 非保存、標準理論を超えた物理の理解 ⇒基本過程も含めた各崩壊機構の把握が必要不可欠
• BD(*)K 崩壊– Cabibbo 抑制崩壊– CP 非保存を記述する小林 益川モデルのパラメータ ・ 3 の測定のため重要
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BDK 崩壊
R= Br(B D0K)/Br(B D0) ~ tan2c (fK/f)2 ~ 0.074
Factorization 近似による Naïve な予測
Cabibbo 抑制
C : Cabibbo 角 , C ~ 13° 、 fK, f : K, 中間子の形状因子 , fK/f ~ 1.2
fK sinCf cosC
崩崩崩崩 Br(K/Br( = 0.063±0.003 から位相空間の寄与を補正することで推定(精度 ~4% )
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CLEO 実験における B D0K 観測
B D0
B D0
B D0 シグナル事象の 14 倍
⇒B D0K/D0 分離が重要
B D0 分離が不完全
⇒ シグナル事象は明瞭に検出されず
E = (B のエネルギー ) – ( ビームエネルギー )
3.3x106 BB with CLEO [ PRL 80,5493(1998)]
dE/dx による K/ 識別
~1.5 @ P = 2.3 GeV/c
c.f. Naïve な予測値 ~0.074
R = 0.055 ±0.014±0.005
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Belle 実験における BD(*)K 崩壊の測定
• 高運動量領域における K/ 識別– dE/dx だけでなくチェレンコフ光の有無により遂行
⇒ BD(*)K/D(*) 分離• 高分解能による測定
– 荷電粒子運動量、光子エネルギーの高精度測定⇒ バックグラウンド分離
• 高統計 B 事象
1) BD(*)K 事象の明瞭な検出2) B D0K 崩崩だけでなく B D*0K, B0D+K,D*+K
を含めた崩壊率比測定による B 崩壊機構の定性的な評価
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B ファクトリー (KEKB/Belle)
高エネルギー加速器研究機構 (KEK)
で行われる電子 陽電子衝突による・ B 実験
KEKB 加速器
Belle 検出器
筑波山
国際共同実験
研究機関 ~ 50 、研究者数 ~ 300人
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KEKB 加速器• 電子 陽電子非対称エネルギー衝突・
– 電子 8.0 GeV 、陽電子 3.5 GeV • 低エネルギー ( s = 10.58 GeV )
– (4s) 共鳴状態が生成 : (Y(4s)) ~ 1 nb– 崩 B(bu) 、 B0(bd) ) が Threshold 付近で生成
• 高ルミノシティー加速器– 設計値 : L = 1034 cm2s( 108 BB /year )
KEKB 加速器
電子 陽電子・ 2 リング ( 周長 3.016 km )
電子 1.23 A/ 陽電子 0.78 A ( 1153 バンチ )
ビームサイズ : x ~ 100m/y ~ 3m
22 mrad 傾けて衝突
衝突点
√
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Belle 検出器
荷電粒子運動量測定 SVD 、 CDC: p/p ~ 0.35%
光子エネルギー測定 ECL: E/E ~ 1.8%
K/ 粒子識別 1)dE/dx 測定 : CDC
(dE/dx) ~ 7%
2) 時間測定 : TOF
t ~ 100 ps
3) チェレンコフ光有無 : ACC
zx
y
大きさ : 8m x 8m x 8m
重量 : ~ 1500 t
1.5T magnet
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Belle 実験における K/ 識別
低屈折率エアロジェル(based on SiO2) n=1.01~1.03
ACC
⇒P ~ 3.5 GeV/c まで K/ 識別
dE/dx(CDC)
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取得データ
測定使用データ( 2000 年終わりまで )
10.4 fb 、 11.2x106 BB
Lpeak= 5.5x1033 cms世界最高ルミノシティー
全蓄積ルミノシティー : 43.9 fb ( ~90% on Y(4s) 、 ~40x106 BB )
CLEO 実験の 3倍
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BD(*)K 崩壊の測定
解析の流れ1)B 中間子再構成2) バックグラウンド事象の分離
a)qq バックグラウンド ( q=u,d,c,s)
b)BD(*)
3)BD(*)K/D(*) 事象数抽出4) 崩壊率比 Br(BD(*)K)/Br(BD(*)) の測定
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1) B 中間子再構成
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BD(*)K/D(*) 再構成
• hor– h にはの質量を仮定
• 荷電共役状態も含む
B D0h
K 、 K+0 、 K++
B0D+h
K++ 、 KS 崩 KS 崩 KK
B D*0h
D00
B0D*+h
D0+, D+0
再構成過程
0 、 KS の再構成 : 0 崩 KS +
B D(*)
⇒ コントロール事象
検出器の分解能、 系統誤差の評価
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0/KS 再構成
• 再構成された粒子の運動量は観測された不変質量に PDG に示される値を仮定してフィッティングすることにより再定義する
0
KS +
= 5.3 MeV/c2)
= 4.6 MeV/c2)
±2 cut ±3 cut
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D 中間子再構成
1) 不変質量に対するカット– ±2.5 cut
– = 5~ 13 MeV/c2
2)K 中間子識別– D0K+ 、 D*+ 崩壊からの
D0 P(K/)>0.3
– その他 P(K/)>0.7
P(K/) : Likelihood K: P(K/) ~ 1 : P(K/) ~ 0
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D* 中間子再構成
• D* 崩 D 崩崩崩崩崩崩– M(D*) – M(D) ~ M()– P() ~ 40 MeV/c ( D* の静止系 )
• D*+ D0+
– ±3 cut ( ~ 0.5 MeV/c2)• D* D0
– ±2 cut ( ~1 MeV/c2 )
m = M(D*) – M(D)
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B 中間子の再構成1) エネルギー差
– E = EB* - s/2√
√
MC
2) Lab constraint 質量Mlc = EB
2 – PB2
–EB = (s/2 – PB Pee)/Eee
–(Pee,Eee) e+e系の4元運動量
粒子質量の miss assignment
→ BDK/D 間の E シフト
ローレンツブーストの影響
→分解能の違い
mean : ~5.28 GeV/c2
カット : 5.27<Mlc<5.29 GeV/c2
BD0
: 2.8 MeV/c2
BD0
mean: 0 MeV
mean: 49 MeV
: 16 MeV
: 19 MeV
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2) バックグラウンド事象の分離
a) qq バックグラウンド
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qq バックグラウンド、トポロジー
• トポロジーが異なるバックグラウンド除去に利用
N(qq)/N(BB) ~ 3 @ (4s) 共鳴状態
BB 事象 : 低運動量球面事象
qq 事象 : 高運動量ジェット事象
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qq バックグラウンド、分離変数
signal qq
i)R2<0.5 96% 75%
ii)+|cossph|<0.75 75% 20%
i) バックグラウンドの少ない過程 (D0K+,D*+D0+
を含む過程)ii) その他
R2 = i,j|pi||pj|P2(cosij)/i,j|pi||pj|p : CM系の運動量 .i,j : i,j 間の角 .P2(x) : ルジャンドル関数
|cossph| BB← →qq →qq
sph: B候補の Sphericity軸とそれ以外の粒子に対する Sphericity軸の間の角度
R2
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2) バックグラウンド事象の分離
b)BD(*)
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BD(*) 分離、 ACC
崩壊における運動量の角度依存に対応して n=1.01~1.03 と異なる屈折率をもつシリカ エアロジェル検出・器が配置
B D0 MC
B から直接崩壊した の運動量 P v.s. 放出角度 cos
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BD(*) 分離、 Likelihood
• Likelihood P(K/)– P(K/) = LACCxLCDC
• L = Prob(K)/(Prob(K) + Prob())
– ACC : 光電子分布– CDC : dE/dx 分布
• 性能評価– D*+ D0(K+)+, 純度 >95%
P(K/)>0.8 K eff. 76.5% miss ID 2.0 %
c.f. CLEO K/⇒ 分離 1.5
K 中間子
中間子
P(K/)
K like→← like
BDK/D 領域 (2.1 < PCM<2.5 GeV/c )
miss ID = 20% with same K eff.
分離 ~2.5
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B D(*) 分離、 E v.s. P(K/)
• DK/D 分離B D0K
B D0
B から直接崩壊したハドロンに対する K らしさ
K like
like
~2.5 K/ 分離
⇒DK の明瞭な検出に成功
B D0KP(K/)>0.8 ]
BD0P(K/)<0.8 ]
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3) BD(*)K/D(*) 事象数抽出
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事象数抽出手法
• E 分布に対して binned likelihood フィット – L = i ei i Ni/ Ni! L を最大にする
• Ni : 実験により観測された個数• i : 各 bin に対して期待される数
• i の構成要素
– 各分布の推定• BD(*)K コントロール事象 B D(*)
• qq バックグラウンド サイドバンド事象• BB バックグラウンド MC
2)BD(*) 過程a)BD(*) シグナルb)qq バックグラウンドc)BB バックグラウンド
1)BD(*)K 過程a)BD(*)K シグナルb)BD(*) からの miss ID による事象c)qq バックグラウンドd)BB バックグラウンド
MC によらない評価
( 5.20<Mlc<5.26 GeV/c2 )
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BD(*)K フィッティング
a) BD(*)K シグナル– two Gaussian ( 高さを変位 )
• K をと仮定したことによる E のシフトと分解能の広がりの影響
– コントロール事象 BD(*) を BD(*)K と仮定して再構成したときの E 分布から推定
b) BD(*) からの miss ID による事象– two Gaussian ( 高さを変位 )
• 他のパラメータは BD(*) のフィットから推定
c) qq バックグラウンド– サイドバンド事象のヒストグラム、高さを変位
d) BB バックグラウンド– MC
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BB バックグラウンド
1) , の missing
• B D0
– B D*0(D00,D0)
– B D0(0)
– B0 D*+(D0+)
2) の miss ID
• B D0 + X B D0K
D0
D0
MC
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E 分布 :B D0K/D0
• 点 : データ、曲線 : フィットの結果、 ヒストグラム:バックグラウンド( qq=ハッチ)
BD0 [ P(K/)<0.8 ]
N(D0) = 2402.8±97.8 N(D0) = 138.4±15.5
BD0 [ P(K/)>0.8 ]
N(D0) =52.4±11.4
~2% miss ID
2/d.o.f = 0.96
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E 分布 : その他
B D*0K B D+K B D*+K
N(D*0K)=32.8±7.8 N(D+K)=33.7±7.3 N(D*+K)=36.0±7.1
世界で初めての測定
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観測結果
• BD(*)K の統計的有意度の評価 : S = 2ln(L(0)/L(max))• L(max) : ベストフィットの時の Likelihood• L(0) : #Signal = 0 とした時の Likelihood ( 他のパラメータは変位 )
⇒ どの過程も S>5 を満たす
B D*0K, B0 D+K, D*+K 崩崩崩崩崩崩崩崩崩
~2% の miss ID の割合
√
BD(*)K S BD(*)
N(D(*)K) N(D(*)) N(D(*))
BD0h 138.4±15.5 52.0±11.4 11.7 2402.8±97.8
B D*0h 32.8±7.8 6.8±4.9 5.8 548.8±32.8
B0D+h 33.7±7.3 10.4±4.9 6.1 681.9±32.1
B0D*+h 36.0±7.1 21.0±5.7 7.6 640.9±30.8
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4) 崩壊率比 Br(BD(*)K)/Br(BD(*)
) の測定
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崩壊率比
• N : 事象数• 崩 : K/ 粒子識別効率
– (K) = 0.765±0.006 、 () = 0.980±0.003 Data (D* コントロール事象 )
• : 検出効率 (K/ 崩崩識別以外 )– D(*)K の効率 : K の decay in flight の影響により ~5% 減 MC
Br(B D(*)K) N(BD(*)K) () (D(*)) Br(B D(*)) N(BD(*)) () (D(*))R = = x x
比をとることで大部分の系統誤差は相殺 ( D(*) の崩壊分岐比、検出効率 )
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系統誤差
全体の系統誤差 < 統計誤差
D0h D*0h D+h D*+h
D(*) 事象数(%)
5.9 9.3 8.5 7.1
D(*) 事象数 (%) 4.6 5.4 5.3 4.1
K/ 識別効率 (%)
2.0
Total (%) 7.8 11.3 10.3 8.5
その他–MC による検出効率の統計 ( 1%)
–D(*) の崩壊分岐比の誤差 ( <1%)
フィッティングのパラメータ±1 、バックグラウンドの寄与 D* コントロール事象のモデリング、統計誤差
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崩壊率比 測定結果
• Factorization 近似の予測値 tan2C (fK/f)2 ~ 0.074 と非常によい一致 ⇒ Cabibbo 抑制が BDK/D 崩壊において予想通り生じる• c.f. CLEO 実験の結果
– Br(B D0K)/Br(B D0) = 0.055±0.014±0.005
値は Consistent 、かつ精度を2倍向上
Br(B D0K)/Br(B D0) 0.079±0.009±0.006
Br(BD*0K)/Br(B D*0) 0.078±0.019±0.009
Br(B0 D+K)/Br(B0D+) 0.068±0.015±0.007
Br(B0D*+K)/Br(B0D*+) 0.074±0.015±0.006
BDK/D 崩壊率比 第2項 : 統計誤差、第3項:系統誤差
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まとめ
• Belle 実験で取得した 11.2x106個の BB 事象を用い、 BD(*)K崩壊を測定– BD(*)事象を 2% と飛躍的に抑制し,シグナル事象を明瞭に検出
CLEO 実験と比べ、 3 倍の B 事象、良い K/ 分離
⇒BD0K 事象を明瞭に 検出することに成功
BD*0K 、 B0D+K 、 D*+K 崩崩崩崩崩崩崩崩崩崩崩崩壊率比 Br(BD(*)K)/Br(BD(*)) は Naïve な予測値と一致
⇒ Cabibbo 抑制の影響が BDK/D 崩壊機構において 予想通り記述されることを証明