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構造方程式モデリング基本の「き」

2010年 6月 14日@ Twittcher勉強会

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Agenda

超基本編– 構造方程式モデリングって何ですか?– 構造方程式モデリング基本の「き」

論より run! ~実践編– どうやって分析するの?– 分析結果を解釈してみよう

事例紹介

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今日の獲得目標 構造方程式モデリングを勉強する下地を作る

– 一体、何ができるの?– 勉強すると何がいいの?– どうやって分析・解釈するの?

「ちょっといじってみるかな?」という気分になること

入門書を読む前のウォーミングアップ

※ 簡単のために数式をできるだけ使わず、若干な乱暴な説明をします。 正しい表現は入門書を読みながら身につけましょう!

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超基本編

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

構造方程式モデリング 構造方程式モデリング( Structural Equation

Modeling, SEM )– 共分散構造分析( Covariance Structure

Analysis )ともいう– でも・・・構造方程式モデリングのほうが良い

– 共分散だけでなく、平均を構造化する分析もあるため

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

どういう特徴があるの?ざくっと言えば・・・

変数間の関係を統計的に検証できる

潜在変数(構成概念)を導入した分析ができる

わかりやすいパス図を使ったビジュアル表現

SEMを勉強すると色々な分析ができる

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

変数の関係を統計的に検証する 変数の間の関係を記述して、データとのあて

はまりを評価する、統計的な分析方法

B

A

Cデータに

あてはまってる? DataData

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例えば・・・病気罹患と食品摂取の関係

カロリー総摂取量

乳製品摂取量

大腸がん罹患率

誤差誤差

データへのあてはまり評価 DataData

影響力を推定する

変数の関係を描いて

同時に行う!

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

潜在変数を導入した分析ができる 複数の変数で潜在変数(構成概念)を規定することができる 構成概念って?

– とりあえずその存在を仮定することによって、複雑に込み入った現象を比較的単純に理解することを目的に構成する概念

– 「知能」、「抑うつ傾向」、「ブランドエクイティ」など・・

数理力

数学 科学物理

例えば・・・

○○ 傾向

設問 1 設問 3設問 2

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

パス図を使ったビジュアル表現 変数間の関係をパス図をつかってビジュアル化

– 矢印は「もと」から「さき」へ向かっての影響を表現– 長方形や楕円は変数の特徴を表現

関係性がわかりやすい– 直感的に変数の関係がわかる!

e

e

e

e

e

e

ξ

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

SEMを勉強すると色々な分析ができる 伝統的な統計モデルを下位モデルとして含んでいる 第 2 世代の多変量解析モデル

回帰分析

因子分析

分散分析

共分散分析 時系列分析

パス解析

不完全データの解析

潜在曲線分析

全て SEM で表現可能!

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【構造方程式モデリングって何ですか?】

よく因子分析と回帰分析の組み合わせとか説明される・・・

「因子のパス解析」とか 間違いではないけれど、 SEM の一部を表現

しているに過ぎない

もっといろんなことができるんです! 今日はあんまり触れない・・・。

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【構造方程式モデリング基本の「き」】

SEMを勉強するにあたり以下の表現を覚えておきましょう。

観測変数と潜在変数測定方程式と構造方程式 モデルの適合

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【構造方程式モデリング基本の「き」】

観測変数と潜在変数 直接に観測される変数を「観測変数」とよぶ

身長、体重、テストの得点など・・・ 構成概念を「潜在変数」とよぶ

知能、ブランドエクイティ・・・⇒SEM はこの 2種類の変数の関係を記述する

パス図では・・・

観測変数 潜在変数

観測変数は四角形で、潜在変数は円で表現する

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【構造方程式モデリング基本の「き」】

構造方程式と測定方程式 2種類の方程式を解くことで、変数間の関係を明らかにする

構造方程式:因果関係を記述する方程式 測定方程式:潜在変数とそれを構成する観測変数を記述する方程式

V1 V2 e

V2=α* V1+e

f1

V1 V2 V3

e1 e2 e3

1 1 1

α1 α2 α3

V1=α1* f1+e1V2=α2* f1+e2V3=α3* f1+e3

構造方程式 測定方程式

計算は機械がやってくれます・・・

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【構造方程式モデリング基本の「き」】

モデルの適合 解釈を行うためには、構成したモデルがデータに当てはまっている必要がある

データとモデルとのあてはまりを「適合度指標」を用いて評価する

DataData

model

各種適合度指標であてはまりの良さを評価!

(実践しながら説明します!)

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【構造方程式モデリング基本の「き」】

分析の流れ 仮説を構築→モデルで表現→母数(パラメータの

推定)→適合度評価→モデル修正→・・・・

Plan

DoCheck

Action•仮説を構築する•モデル(パス図)を作ってみる

•分析用ソフトウェアを使ってモデルを記述•影響力(母数)を推定する

•適合度指標をみて、データの当てはまりの良さを確認する

•【データ Fit 良い】結果の解釈を行う•【データ Fit悪い】モデル修正の検討→ Plan へ

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論より RUN !~実践編

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まずは分析環境 いろいろあって一長一短

AMOS がベスト。無料ならば AMOS の student版、もしくは R で始める

AMOS

R( Package sem)

Mplus

EQS

SAS(CALIS)

Mx

インターフェース

グラフィカル

グラフィカル

コマンド入力

コマンド入力

コマンド入力

分析領域

ほぼカバー

一部未対応

一部未対応

ほぼカバー

ほぼカバー

価格

有料(無料版あり)

無料

有料

有料

有料

オススメ!

オススメ!

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AMOS の Student版を利用ここからダウンロード可能

http://www.amosdevelopment.com/download/

8つの観測変数、 54の母数に使用が制限されている

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まずはパス解析をやってみよう 共分散構造分析 [AMOS 編 ] より

データ概要:結婚相談所において、女性が男性を自分の結婚相手としてどうかという観点から評価した架空のデータ 4 変数、 210オブザベーション

変数 「学歴」:男性の教育水準 「年収」:男性の年収(百万円) 「職業威信」:職業に対する主観的な地位の格付け 「結婚相手としての評価」:男性の結婚相手としての

評価

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仮説構築 こんな感じで考えてみる 通常は先行研究やコンセプトワークを行った結果が反映される いきなり仮説作りはじめると・・・道に迷うことも多々あり

学歴 年収

評価職業威信

Plan

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じゃぁ・・・ AMOS を起動して実行 まずはパス図を描く

誤差はしっかりつける その後・・・分析設定をする

推定法( estimation )はとりあえず最尤法( maximum likelihood)

1

2 3

標準化解( Standard estimates)間接効果、総合効果( Indirect ,total effects)修正指標(Modification Indice)

Do

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適合度を見てみよう GFI 、 AGFI 、 CFI

0.90以上が当てはまりの目安 RMSEA

0.05以下は良適合 0.10未満はグレーゾーン 0.10以上は適合 ×

Model RMR GFI AGFI PGFIDefault model 0.009 0.997 0.973 0.1Saturated model 0 1Independence model 33.367 0.414 0.024 0.249Model RMSEA LO 90 HI 90 PCLOSEDefault model 0.026 0 0.187 0.403Independence model 0.634 0.588 0.681 0

Check

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解釈してみよう~パス係数非標準化係数:独立変数が 1 単位変化したと

きの従属変数の変動量 標準化係数:標準化して相対的な影響力を表

現したもの

今回は変数間の相対的な関係に興味があるので、標準化係数を中心に解釈します

Action

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解釈してみよう~直接効果と間接効果

学歴

職業威信

年収

結婚相手としての評価.30

.32

.53

.70

e1

e2

.49

直接効果:変数→変数の直接的な影響 間接効果:変数を経由した間接的な影響 総合効果:直接効果+間接効果

b

a

<職業威信から評価への効果>

■直接効果

a=0.30

■間接効果

b=0.32*0.49=0.16■職業威信から評価への総合効果

a+b=0.30+0.16=0.46

Action

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結果のまとめ 結婚相手への評価に最も影響を与えるのは年収

職業威信の直接効果は年収の直接効果より低い– しかし、年収を経由した間接効果も合せて考慮す

るとほぼ年収と同等の影響力がある– 単純な回帰分析では導き出せない考察!

学歴→年収→評価の間接効果は 0.26 。– 職業威信の直接効果より低い。

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因子を組み合わせた分析 共分散構造分析 [AMOS 編 ]:パソコンセミナーの受講後アンケ

ートデータ( 5件法) 目的一致:内容は目的と一致していたか 理解度:内容はどの程度理解できたか テキスト:テキストについての評価 ペース:講義内容のペースについての評価 満足度:セミナー全体の満足度 プレゼン:講師のプレゼンについての印象 講師対処:質問の対処についての印象

No 名前 目的一致 理解度 テキスト ペース 満足度 プレゼン 講師対処1佐藤 4 5 3 4 5 5 52鈴木 2 4 4 4 3 4 53高橋 1 4 4 4 5 4 44田中 4 2 2 2 4 3 25渡辺 1 1 1 1 1 1 16伊藤 2 4 3 4 2 4 47山本 2 4 4 3 1 4 28中村 2 4 4 4 4 4 49小林 1 1 5 5 1 5 510斎藤 2 4 4 3 4 4 4

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仮説構築1. 「テキスト」、「プレゼン」、「ペース」、「講師対処」の背後に「講師の質」が存在すると想定

2. 「満足度」、「理解度」、「目的一致」の背後に「セミナー評価」が存在すると想定

3. 「講師の質」が「セミナー評価」に影響を与えていると想定

講師の質

テキストプレゼンペース 満足度 理解度 目的一致

セミナー評価

講師対処

1 23

Plan

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適合度 GFI 、 AGFI 、 CFI 、 RMSEA 全てで適合良

し。

RMR GFI AGFI PGFI CFIDefault model 0.07 0.97 0.93 0.45 0.97Saturated model 0.00 1.00 1.00Independencemodel 0.23 0.79 0.72 0.59 0.00

RMSEADefault model 0.04Independencemodel 0.17

Check

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結果の解釈 標準化解

講師の質は「プレゼン」の影響が最も高い セミナー評価は「満足度」の影響が最も高い 講師の質→セミナー評価のパス係数も大きい *

講師の質 セミナー評価

講師対処

e4

.54

プレゼン

e3

.81

ペース

e2

.43

テキスト

e1

.32

目的一致

e7

.39

理解度

e6

.40

満足度

e5

.66

.45

d1

Action

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事例紹介

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指導者が評価するサッカータレントの構造サッカーコーチが評価するユース年代のサッカータレント構造を検証することを目的。– デルファイ法で仮説構築→調査票作成– 243名の 有資格サッカーコーチが,プロレベル

156名,全国レベル 175名,地域レベル 173名,計 504名のサッカー選手のユース年代におけるサッカータレント を評価

– SEM で検証を行う

http://www.taiiku.tsukuba.ac.jp/sc/1_1/09/index.html

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まさに、王道!仮説構築 SEM による検証

シンプレックス構造分析

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発信する顧客は優良顧客か? コミュニティユーザーがオンラインコミュニティのどの要因を評価してリピート訪問をしているのかを特定する

@ cosmeユーザーに対してアンケートを実施 併設オンラインショップ購買履歴データとのシングルソースデータ分析を行っている

http://www.journalarchive.jst.go.jp/english/jnlabstract_en.php?cdjournal=acs1993&cdvol=11&noissue=1-2&startpage=35

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先行研究より、サイト訪問目的の構成概念を図 1 のように整理 その上で、以下の仮説を立てている

サイトロイヤルティはサイト訪問目的の構成概念の関数 サイトロイヤルティと優良顧客度との間に有意で正の関数がある

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コミュニティ上で書き込むユーザー・ロイヤルティの源泉は購買前後サーチ、コンサマトリー、 B2Cインタラクション(発信行為自体はロイヤルティへの影響は少ない)・サイトロイヤルティから優良顧客へは正の影響

-0.018

0.040

0.232

0.240

0.604

0.449

0.215

購買データ

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ブランドジャパン 日経 BPコンサルティングが主体となり実施 ブランドエクイティの測定

– 顧客から、一般社会からの評価を測定– 国内ブランドを一般消費者、ビジネスパーソンが評価– 2001年から年 1 回のペースで実施し、経年の変化を追う– 2003年までは WEB調査と郵送調査のハイブリッド– 2004年以降は WEB調査のみとなり、傾向スコア補正して

いる– 構造方程式モデリングにより 2 つの観点からブランドエク

ティ(構成概念)をスコアリングしている

http://www.nikkeibpm.co.jp/bz/chosa/brand_j/index.html

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BtoCモデル 1側面では測定できないブランドエクイティを 4つの下位因子を構成して規定 下位因子をまとめる gを総合指標としてブランドエクイティを規定

フレンドリ - イノベーティブ アウトスタンディング コンビニエント

g

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BtoBモデル 5 つの下位因子と 5 つの観測変数

で総合力「 g 」を規定 親和力

活力

先見力

信用力

人材力

g

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スコアの推定

出典: http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/release/bj_100409.pdf

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2010年のコメント( BtoC編) ブランド総合力 92.3ポイントを獲得したユニクロが、

今回はじめて首位となった。 過去 5年間の結果をみると、確実にブランド力を上昇させてきたことが分かる。(中略)しか し最大の理由は、イノベーティブ因子のポイントが驚異的に伸びたことだ。(中略)第 2 位のグーグルとは、 18.2ポイントという大差がついている。

ブランド間のブランドエクイティ(構成概念スコア)を比較できる時系列でのエクイティの変遷を追うことができる下位因子を構成していることで、エクイティの要因分解を行うことができる

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今後の勉強のために・・・ 初級

– 入門 共分散構造分析の実際(朝野・鈴木・小島) 講談社サイエンティフィック

– 共分散構造分析 [AMOS 編 ] (豊田編著) 東京図書– はじめての共分散構造分析― Amosによるパス解析 (小

塩) 東京図書 中級

– グラフィカル多変量解析― AMOS 、 EQS 、 CALIS による 目で見る共分散構造分析 (狩野・三浦) 現代数学社

– 共分散構造分析 [入門編](豊田) 朝倉書店– 共分散構造分析[事例編](豊田編著) 北大路書店

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おまけ・・・質問に回答できなかった時系列分析ラグつき変数の分散共分散行列(トープリッツ行列)を算出し、そこから分析します。 自己回帰 AR( 1)モデルの方程式

V_t=α_t-1* V_t-1 +e_t AR( 2)モデルの方程式

V_t=α_t-1* V_t-1 + α_t-2* V_t-2 +e_t 移動平均MA( 1)モデルの方程式

V_t=F_t – β_t-1* F_t-1 ARMAモデルの方程式

V_t=Σα_t-r* V_t-r + Σβ_t-r’* F_t-r’

*t が時系列をあらわす記号詳しくは・・・豊田( 2000 )共分散構造分析[応用編]に記載があります


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