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―― 実施例 ――

― 34 ―ヒートポンプとその応用 2002.7.No.58

■キーワード/

ñ建築設備設計研究所 設計部 藤 野 茂 行

飛騨・世界生活文化センターの空調設備

■キーワード/複合施設・ヒートポンプ・蓄熱

1.はじめに飛騨・世界生活文化センターは,歴史の町・高山に飛

騨地域活性化の中核施設として整備された複合文化施設

である。高山市南西部の丘陵地に位置し,市街地中心部

から直線距離にして約2‹の地域にある。

計画にあたっては,周囲の環境,自然との調和に配慮

するとともに,飛騨の特性である「木の文化」を取り入

れるよう工夫して進められた。

建物は,飛騨コンベンションホール(イベントホール

棟),飛騨芸術堂(小ホール棟),ミュージアム温故知新

(展示棟),食遊館(レストラン・会議棟)などの使用目

的・使用時間などの異なった施設が,広場を内包するシ

ステム回廊で連結され構成されている。

2.建物概要建物名称 飛騨・世界生活文化センター

建 築 主 岐阜県

所 在 地 岐阜県高山市千島町

建物用途 複合文化施設

構造規模 地下2階,地上5階 

RC造,SRC造,一部S造,W造

敷地面積 44,573.11fl

建築面積  8,495.79fl

延床面積 24,210.76fl

工事工期 平成11年3月~平成13年3月

設計監理 芦原・西設計業務特別共同企業体

建築施工 竹中・大林・金子特定建設工事共同企業体

林・堀口特定建設工事共同企業体

飛騨建設

機械施工 三建・丸紅・伊藤特定建設工事共同企業体

洞口・飛冷特定建設工事共同企業体

岩佐鉄工所

電気施工 栗原・安田電暖・杉浦特定建設工事共同企業体

中田・古川特定建設工事共同企業体

小水電機

外構施工 丸仲建設

写真-1 建物外観

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―― 実施例 ――

ヒートポンプとその応用 2002.7.No.58

3.空調設備概要3-1 主要機器

空気熱源ヒートポンプチラー 270kW(RR-I-0101) ×1基

空気熱源チラー       270kW(RR-I-0102) ×1基

直焚吸収式冷温水機     800kW(RB-I-B101)×2基

(RB-I-B102)

真空式温水器        930kW(BH-I-B101)×1基

水蓄熱槽          930„(冷水専用)

空調機 46台

ファンコイルユニット 78台

空気熱源ヒートポンプ(ビルマルチ) 9台(系統)

3-2 熱源設備

建設地の飛騨高山は寒冷地であるため,熱媒に不凍液

を採用し,冬期の凍結対策を行っている。また本施設は,

それぞれ用途の違う4つの施設が回廊とエントランスホ

ールでつながり形成されているが,熱源機器のコスト・

設置スペース・維持管理労力の低減化をはかるため,飛

騨コンベンションホール棟の地下機械室に機器を集約

し,それぞれの施設に熱源供給を行っている。

エネルギー源は,電気・プロパンガスの併用とし,さ

らに深夜電力を利用した水蓄熱システムも合わせて採用

している。

3-3 空調設備

空調方式は,部屋の使用用途・使用時間帯・負荷特性

を考慮し,方式および系統分けを行った。

ミュージアム温故知新の展示室,収蔵庫系統の空調温

度制御は,急激な温度変化を起こさないようにするため,

立ち上がり時などは段階的に温度が変わるように配慮し

ている。また,空調停止時にも設定された室内の上下温

度を超えた場合は,空調機(熱源機を含む)を自動起動さ

せ,室内条件の確保を行っている。

H C

C C

ミュージアム温故知新(展示棟)� 食遊館(レストラン・会議棟)� 飛騨芸術堂(小ホール棟)�飛騨コンベンションホール�(イベントホール棟)�

H C

CH

HHR-1-B102HCR-1-B102

HHR-1-B101HCR-1-B101

HCS-1-B102

HCS-1-B101

HHS-1-B102

HHS-1-B101

CC C

CH C CH C

エントランス棟�

RB-1�-B102

BH-1�-B101

RR-1�-0101

RR-1�-0102

HEX-1�-B102

HEX-1�-B101

RB-1�-B101

(放熱)�

(放熱)�

PC-1-B103

PC-1-B105

PC-1-�B104

PC-1-B102

PC-1-B101

PH-1-B101

PCH-1-B103

PCH-1-B102

PCH-1-B101

写真-2 熱源機械置場

写真-3 アリーナ

図-1 熱源フロー図

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―― 実施例 ――

3-4 飛騨コンベンションホールの空調方式

本施設のインドアアリーナである飛騨コンベンション

ホールは,最大収容人員2,000人を見込み,見本市・展

示会・大規模会議・大規模音楽会・芸能講演・軽スポー

ツなど,多目的利用が可能であるよう計画されている。

アリーナ部分は,複雑な構造の屋根面をもち,壁面に

設置された36個のノズルおよび舞台天井面のノズルに

よって冷暖房を行うように計画されている。しかし,ア

リーナ部分は約36m×70mの広い空間であり,天井面

は床上15m以上あるため,冬期は特に温風が上昇して

しまい,十分な暖房ができない可能性があった。このた

め冬期の利用を考慮した場合,居住域での温度条件の確

保は重要と思われた。

対策として,アリーナ天井面にはデリベントファンお

よびノズルを設置して上昇した暖気を吹き落とし,有効

利用できるよう計画している。また,舞台を含むアリー

ナ床面には,深夜電力を利用した蓄熱式床暖房を全域に

わたって敷設している。

図-2にアリーナの空間形状を示す。図-3に示すと

おり,冬期にデリベントファンと床暖房を併用した場合,

大部分の居住域で22℃以上の温度となり,快適な温熱

環境の確保が可能である。

4.おわりに今回の計画では,周囲の自然環境を考慮し,できる限

りクリーンな熱源の採用を行うとともに,蓄熱システム

の採用により,公共の建物において,電力平準化による

CO2削減という社会的ニーズを満足させることができ

た。

最後に,当設計および施工にあたり,ご指導・ご協力

いただいた各方面の皆さまに,深く感謝申しあげます。

図-3 アリーナ空間解析結果

32.0�31.0�30.0�29.0�28.0�27.0�26.0�25.0�24.0�23.0�22.0�21.0�20.0�19.0�18.0�17.0�16.0�15.0�14.0�13.0�12.0

(℃)�

図-2 アリーナ室内空間モデル


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