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CytoFLEX Family による細胞周期の測定と Kaluza ソフトウエアによる解析
Introduction CytoFLEX Family は、従来の機種よりも⾼感度かつ広範囲の蛍光強度が表⽰することができます(⼀般的な従来機は4Log、CytoFLEX Family は7Log まで表⽰可能)。 ここでは、PI を使⽤した細胞周期のサンプル調製と、CytoFLEX の特⻑を踏まえた測定⽅法を記載します。 サンプル調製 多くの場合、細胞周期の染⾊には、細胞膜の透過性のない PI 等の蛍光⾊素を使⽤します。これらの蛍光⾊素は、⽣細胞の細胞内に⼊らず、DNA を染⾊することができません。そのため、細胞膜⾮透過性の蛍光⾊素を⽤いるには、細胞膜に⽳をあける処理が必要になります(裸核も含む)。 代表的な細胞膜の処理⽅法は、①低張処理(裸核化) ②固定処理の 2 つがあります。下記の各⽅法のメリットとデメリットを⽰します。 ① 低張処理* メリット︓ サンプル処理が⾮常に容易。
特に接着細胞の場合は剥がさず直接低張処理をしても可能な細胞が多い。
デメリット︓ サンプル処理後⻑期保存ができない。 処理操作の仕⽅によりM期の細胞が核膜外に流れて出て、実際よりも M 期の割合が低く出る場合がある。
*:弊社 DNA-Prep 試薬システムは、より簡単に低張処理をご使⽤いただける試薬です。
② 固定処理 メリット︓ ⼀般的に⻑期保存ができる。
低張処理の様に M 期の細胞だけ減少する傾向が少ない。
デメリット︓ 処理に⽐較的時間がかかる。 細胞や処理の⼿技により固定時に細胞の凝集を起こしやすく、かつ、チューブ壁⾯への吸着等で細胞のロスが起こりやすくなる。
サンプル調製 ① ―DNA-Prep による低張処理 - Ⅰ. サンプル
細胞: 浮遊細胞の場合は、遠⼼・回収します。 付着細胞の場合は、トリプシン・EDTA で細胞を単離後、PBS で遠⼼洗浄し、回収します。
Ⅱ. 試薬 DNA-Prep kit(製品番号 6607055)
Ⅲ. その他 40μm ナイロンメッシュ
Ⅳ. サンプル調製 1. 細胞を 1〜3×106/mL になるよう PBS で懸濁し、100μL を
テストチューブに分注。 末梢⾎の場合は、全⾎ 100μL をテストチューブに分注。
2. DNA Prep LPR 試薬 100μL を添加後 約 10 秒間攪拌。 3. DNA Prep Stain 試薬 2mL を添加後、約 10 秒間攪拌。 4. 暗所室温で 15 分インキュベーション。 5. サンプルを 40μm ナイロンメッシュに通します(凝集塊除去)。 6. FCM にて測定します。
Ⅵ. 参考⽂献 1. Crissman HA and Steinkamp JA. 1973. Rapid,simultaneous
measurement of DNA, protein, and cell volume in single cells from
large mammalian cell populations. J Cell Biology 59:766-771.
2. Vindelov LL, Christensen IJ and Nissen NI. 1983. Standardization of
high-resolution flow cytometric DNA analysis by the simultaneous
use of chicken and trout red blood cells as internal reference
standards. Cytometry 3:328-331.
3. Shapiro HM: 1995. Practical Flow Cytometry. Extrinsic Parameters.
Third Edition, New York: Wiley-Liss, p. 251-262.
4. Hedley DW, Shankey TV and Wheeless LL. 1993. DNA Cytometry
Consensus Conference. Cytometry14:471-500.
サンプル調製 ② -固定- Ⅰ. サンプル
細胞: 浮遊細胞の場合は、遠⼼・回収します。 付着細胞の場合は、トリプシン・EDTA で細胞を単離後、PBS で遠⼼洗浄し、回収します。
Ⅱ. 試薬 PI SIGMA 社 RNase SIGMA 社 70%エタノール(-20℃で冷しておきます)
Ⅲ. 溶液 ・PI 溶液組成︓
500μg/mL PI 上記を PBS に溶解します。
・RNase 溶液組成: 0.25mg/mL RNase(⽤時調製) 上記を PBS に溶解します。
Ⅳ. その他 40μm ナイロンメッシュ
Ⅴ. サンプル調製 1. 細胞を 1〜5×106/mL に濃度調整します。 2. PBS で細胞を 2 回洗浄します(1,000〜1,500rpm×
5min) 3. ペレットに冷 70%エタノール(-20℃で保存)10mL をボル
テックスしながら、徐々に加えます。 4. 4℃で 2 時間放置します。(注︓細胞により固定時間は異な
ります。) 5. PBS で細胞を 2 回洗浄します。 6. 0.25mg/mL RNase 溶液を 1×106 細胞に対して 1mL
加え、37℃で 15〜60 分インキュベーションします。 7. PI 溶液を最終濃度 50μg/mL になるよう加え、4℃で 30 分
暗所に放置します。 8. サンプルを 40μm ナイロンメッシュに通します。 9. FCM にて測定します。
Ⅵ. 参考⽂献 1. Aderine L. Block et al: Experimental Parmeter and
Biological Standard for Acridine Orange Ditection of
Drug-Induced Alterations in Chromatin Cindensation.
Cytometry 8:163-169, 1987
サンプル測定 ここで使⽤する PI は、取り扱いが容易で明るい蛍光⾊素なので、歴史的に多く使⽤されています。PI の最⼤蛍光波⻑は約 617nm です。
CytoFLEX は、従来のフローサイトメーターと⽐較して感度が⾼いため、PI の染⾊条件によっては、検出する蛍光が検出器の検出限界以上(サチレーション)になる場合があります。このような場合は、ND フィルター付きのバンドパスフィルターのご使⽤をお勧めします。ND フィルターをご使⽤いただいても感度調整が適切に⾏えない場合は、弊社アプリケーションにご連絡ください。
600nm 700nm
PI 蛍光波長と検出器のバンドパスフィルター
PI 蛍光波長
ECD用検出器のバンドパス
フィルター(610/20)
ECD-A
1.CellCycle standard Template の呼び出し 1. CytExpert ソフトを起動します。File をクリックし New
Experiment from Template… をクリックします。
2. New Experiment の項⽬の Brows ボタンをクリックし、
Experiment 名と保存先を設定します。次いで SAVE をクリックします。
3. Template︓の項⽬の Brows ボタンをクリックします。
細胞周期測定⽤の Template*を選択し、Open をクリックします。 *︓PI 染⾊の細胞周期測定⽤ Template は、ベックマン・コールターのホームページからダウンロードできます。 使⽤している CytoFLEX モデルに該当する Template を選択してください。 (URL アドレス)
4. OK をクリックします。
なお、ホームページには、操作説明の動画がありますので、ご参考にしてください。なお、Template の感度条件は、装置や細胞、染⾊状態により調整が必要になる場合があります。 2.PI の感度調整 1. サンプルをセット Run ボタンをクリックし、測定を開始します。
画⾯左の Event/Sec の表⽰をみて細胞が流れたことを確認します。
2. PI のプロット(All Event)で感度調整を⾏います。
画⾯上の Adjust Gain をクリックして感度を動かしたい⽅向にドラッグ&ドロップします。 G0G1 のピークが⾒やすいチャンネルに合わせます。(実験の⽬的等によりチャンネルは変える場合があります。)
3.FS/SS の AutoFit 1. FS/SS の PLOT のプロットプロパティボタンをクリックします。
2. X Axis と Y Axis の Auto ボタンをクリックし細胞集団を適切
に表⽰させます。(サンプルにデブリスが多い場合は細胞集団かどうかの確認が必要な場合があります。)
上図︓FSC-A / PI-A プロット
細胞周期の部分はカラー表⽰されています。スレッシュホールドで⽬的の細胞集団(カラー表⽰)がカットされていないかを確認します。
下図:FSC-A /SS-A プロット
FSC-A でシュレッショールドにか
かっているところをチェックします。
シュレッショールド位置
EC
D-A
4.ズームとリージョンの調整 多くの場合、G2M 期の分部に G1G0 等のダブレットが混⼊してしまうことがあります。その為、細胞周期の測定では、ダブレット除去を⾏います。 1. PI-H/PI-A のプロットをクリックしてズームボタン
をクリックし、拡⼤したいエリアを選択します。
2. Single Cellリージョンをクリックするとリージョンの変形の画⾯になりますので■や□のポイントで形を整えます。
測定中のポイント 細胞周期解析は、分解能が重要です。分解能を上げるため、サンプルのフローレートトは Slow で測定ことを推奨します。 Template は Slow になっています。
5.Stop Event の設定 1. Event to Record のレコードイベントの数値を⼊⼒します。
(Template は Single Cell の GATE で 20000 個のシングルセルの測定終了の設定になっています。測定の⽬的に応じて
変更してください。)
6.サンプル名の⼊⼒ 1. 画⾯左下の Name 上をダブルクリックして、サンプル名を⼊⼒し
ます。 または、右クリックを⾏い、Edit Name を選びサンプル名を⼊⼒します。
2. 続けて複数のサンプルを測定する場合は、New Tube ボタンをサンプル数だけクリックします。
G0G1 G2M
ダブレット
ECD-
H
ECD-A
Fast Medium Slow
7.Template の別名保存 1. 画⾯左上の File をクリックして Save As Template を選択
して、Template 名を⼊⼒して保存します。 2. Save をクリックします。
8.機器のシャットダウン 通常使⽤している Flow Clean(Cat No. A64669)は、細胞の洗浄には適していますが、PI 等の⾊素を使⽤した場合、⼗分に洗浄が⾏えず、⾊素残留の可能性があります。そのため、次亜塩素酸ナトリウム約 3%溶液*で洗浄します。 *溶液の希釈には、DI Water を使⽤してください。アルキルエーテル硫酸エステ
ルナトリウム等の界⾯活性剤が含まれていたほうが、より洗浄効率が⾼くなります。
1. Menu の Cytometer をクリックし、Daily Clean を選択します。
2. Daily Clean ウインドウが表⽰されます。
3%次亜塩素酸ナトリウム溶液 2mL を⼊れたチューブをチューブホルダーにセットします。 Duration を変更して洗浄時間を 5 分変更し、Run をクリックします。
3. ⾃動的に洗浄を開始します。 4. 2mL の DI Water を⼊れたチューブをチューブホルダーにセット
します。 Duration を変更して洗浄時間を5分に変更し、Run をクリックします。⾃動的に洗浄を開始します。
5. 洗浄完了が表⽰されます。Close をクリックし、Daily Clean を終了し通常の通り機器を終了してください。
細胞周期データ解析
【フローサイトメーターによる DNA 量分析】 細胞周期のデータは、G0G1 の集団のピークと S 期集団の⼀部がオーバーラップし、また同様に S 期と G2M 期の間もオーバーラップが存在します。そのため、蛍光標識抗体の測定時に⽤いられるような直線リージョンを⽤いた解析では、各期(G0G1期・S 期・G2M 期)の解析が不正確になります。つまり、細胞周期に適したアルゴリズムを⽤いた細胞周期の解析ソフトが必要になります。 Kaluza2.1 では、新たに細胞周期解析がサポートされ、複雑なマルチカラー解析だけではなく、DNA 量を⽐較する細胞周期解析もできるようになりました。 Kaluza による解析操作 1.データの選択
Kaluza ソフトウエアを開きます。
Open File をクリックし、データファイルを開きます。
または、データファイルをワークスペースまたは、Analysis List にドラッグ&ドロップします。
2.Single Cell GATE の作成(ダブレット除去)
Density プロット(または Dot、Contour プロットでも可)を作成します。
DNA 染⾊した Parameter の Aria 信号を X 軸 Height 信号を Y 軸に表⽰します。
凝集塊を除いた Single Cell GATE を作成します。
Point 細胞の凝集塊を含めたまま DNA データ分析を⾏うと、細胞周期の分析データの精度を下げる原因の⼀つになります。G1 期の細胞が 2 つ凝集したダブレットは、G2 期の Area の蛍光強度と同じになります。FS と Areaの蛍光強度だけでは、G2 期の細胞と G1 期のダブレットは区別ができません。⼀⽅、Height のシグナルの蛍光強度は、G1 期の細胞のダブレットは、G2 期の細胞より弱くなります。そのため、Area と Height を⽤いて凝集塊のデータを除く GATE を作成します。
3.細胞周期のアルゴリズムの実⾏
Plots&Tables のタブの Cell Cycle アイコンをクリックします。
表⽰された Plot の下部 Choose a parameter をクリッ
クして DNA 染⾊した Parameter の Lin Aria を選択します。
G0G1 ダブレット
Time Time
Hight
蛍光強度
光
源
G1 期の凝集塊 G2 期の細胞
Are
a
蛍光強
Time Time
ECD-
H
ECD-A
Plot 上部の Ungated をクリックし、Single Cell GATE
(ダブレット除去の GATE)を選びます。 ⾃動的に解析が⾏われます。
【解析アルゴリズム】 Kaluza の細胞周期解析には、2 つのアルゴリズムが選択できます。 Michael H.Fox のアルゴリズム デフォルトのアルゴリズムです。Plot に表⽰された細胞の分布が、G1細胞が正常なガウス曲線を⽰していて、G2 期、S 期のデータが滑らかな曲線にフィットするアルゴリズムです。 J.V.Watson のアルゴリズム このアルゴリズムは Michael H.Fox のモデルと同様に、G1 期及びG2 期が正規のガウス曲線を⽰していますが、G1 期と S 期のオーバーラップ部分と G2 期と S 期のオーバーラップの重なりを減らしたアルゴリズムです。S 期のデータの修正はされません。 初期設定では、Michael H. Fox のアルゴリズムが選択されています。必要に応じて J. V. Watson 切り替えてご使⽤ください。 アルゴリズムの変更
Plot 上でマウス右ボタンをクリックし、ラジアルメニューを表⽰します。
Data アイコンをクリックします。
必要に応じて、アルゴリズムを選択します。
J. V. Watson Michael H. Fox
2018.11
【CytoFLEX による測定データの注意点】 Kaluza による細胞周期解析時の表⽰は、測定機種のパラメータのスケール表⽰に従いします。CytoFLEX の測定スケールは、1〜1×07(7Log)です。測定時の G0/G1 期のピークチャンネルが低チャンネルである場合、G0/G1 期と G2/M 期のチャンネル分離が⼗分でないと、⾃動で細胞周期解析を⾏わないことがあります。⾃動解析を⾏わない場合は、以下の⼿順に従い G0/G1 期と G2/M 期の分離が明確になるよう、Parameter を作成して解析を⾏ってください。
Parameter のタブの Custom Parameters をクリックします。
Box の左下の New をクリックします。 NameとDescriptionを⼊⼒します。Descriptionは、
Plot の Parameter 名として表⽰されます。
Formula を⼊⼒します。
Parameters をクリックすると Parameter の⼀覧が表⽰されます。 ⼀覧から DNA を染⾊した Parameter の Aria を選びます(例︓ECD-A)。
パラメータの表⽰チャンネル数を⼤きくするため、*アイコン
をクリックします。 Formula の*の後に直接キーボードから数字を⼊⼒します。(ここでは 5000 を⼊⼒しています。必要に応じて、G0/G1期、G2/M期の表⽰が⾒やすくなるよう値を⼊れてください。)
Add をクリックし、次いで OK をクリックします。 Cell Cycle アイコンをクリックします。
開いた Plot の Choose a parameter をクリックします。
新しく作成した Parameter を選択し、GATE を設定すると、解析結果を表⽰します。