cso開発効果に関する国際枠組み案 - 国際協力ngoセンター...

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CSO開発効果に関する国際枠組み案 CSO開発効果オープンフォーラム第二回世界大会へ参加する CSO、ドナー、政府の代表者たちへの検討資料 第二版 2010年11月 *英語版はOpen Forum for CSO Development Effectivenessの以下のページからダウンロード可能。 http://www.cso-effectiveness.org/IMG/pdf/version_2_november__framework_for_cso_dev_eff_final.pdf *仮訳:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC

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CSO開発効果に関する国際枠組み案

CSO開発効果オープンフォーラム第二回世界大会へ参加する

CSO、ドナー、政府の代表者たちへの検討資料

第二版

2010年11月

*英語版はOpen Forum for CSO Development Effectivenessの以下のページからダウンロード可能。

http://www.cso-effectiveness.org/IMG/pdf/version_2_november__framework_for_cso_dev_eff_final.pdf

*仮訳:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)

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1

セクション I 序文

開発効果への市民社会への関与 € 4 6 世界の数百万の市民社会組織(CSOs)は、変化と社会変容の革新的な媒体として、独自的で、かつ基

本的方法を持って開発に貢献している。これは長年にわたる貢献である。CSOは住民自身が開発に関

与する草の根の実施を支援し、開発の知識とイノベーションを推進し、開発の進歩を共にめざすために、

政府やドナーと包括的政策協議を模索している。 しかし、自身の貢献だけでなく弱点も認識している故、

CSOは開発アクターとして、CSO開発効果オープンフォーラム(以下、オープンフォーラム)を通して、自

分たちの開発効果を改善するために誓約した。

CSOはOECD/DAC援助効果作業部会の正式なメンバーとして、「開発効果」に関するマルチステークホ

ルダー・アジェンダづくりに積極的に取り組んできた。この努力を補完するために、我々はCSO開発効果

に関するオープン・フォーラムを発足させた。オープン・フォーラムはCSO開発効果の実践を定義し促進

するための基本方針の策定に向けて、世界中のCSOの完全参加を主導している。オープンフォーラムは、

CSOの幅広い多様性や地理的な広がりを考慮し、個々の国のCSOの状況や分野に適合でき、かつ大き

な意味をもつ独自の共通原則の適用を探っている。これまでのところ、およそ60カ国、2000団体以上の

CSOが国別の、もしくはセクター別のコンサルテーション(意見交換会)に参加しており、同時にドナーや

政府職員とCSOの開発効果に関する意見交換会も行われた。

2010年9月の第一回オープンフォーラム世界大会は、CSO開発効果の国際的な枠組みの草案を検討

するために、これまでコンサルテーションを行ってきたCSOの代表を招集した。1本稿の国際的な枠組み

はコンサルテーションの結果に基づいて策定されている。枠組みはCSOの活動における自身の考え、ア

プローチ、関係、そしてインパクトを考慮し、共通の開発効果の原則を明示している。

開発を理解することで、開発効果を知る…

開発効果は開発実践のインパクトを意味する。貧困、不平等、社会から取り残された状態の原因や状

況を取り除くために持続的な変化を起こすことができなければ、開発活動は効果的でないといえる。故に、

CSOにとって、開発効果は開発とつながっており、貧困者、

脆弱で取り残された人々を巻き込んでいく、多角的で、人間

的、社会的なプロセスと理解される。CSOは単一の開発モ

デルを想定しておらず、発展の道筋を当事者が自由に選択

できるように、人々や組織をエンパワーすること(自分たちで

問題を解決する力を高めること)に焦点を当てている。CSO

にとって、開発効果は開発における多くの代案を積極的に

受け入れることを求め、特にこれらは生態的持続性や「豊か

に暮らす(Living well)」という先住民の考えに基づくものであ

る。

貧困者と取り残された人たちは開発資源への平等なアク

セスを持たない。この不平等の原因は開発の実施能力や資

1 「オープンフォーラム 国別・セクター別コンサルテーション:総合結果」(2020 年 9 月)を参照のこと。

市民社会組織 (CSO) とは?

“CSOは人々が公共の場で共通の関心を追

及するために自身で組織を形成する、非市場

や非政府の組織である。CSO組織はメンバー

ベースのCSO、運動ベースのCSO、サービス

志向のCSOなどがある。具体的には、コミュニ

ティー・ベースの組織、村落組合、環境団体、

女性の権利団体、農民組合、信仰に基づい

た団体(FBOs)、労働組合、商工会議所、独

立研究機関、非営利メディアなどが含まれ

る。”

(アドバイザリー・グループによる調査結果と

提言のまとめより。2008年8月)

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金調達の能力不足だけでなく、ジェンダー不平等とともに、社会、経済、政治における権力集中によって

起こっている。これらの要因は開発と正義に対して、常に障害になっている。それ故、CSOの効果的な開

発の実施においては、CSOがどちらか一方を選んで、その一方の味方にならなければならない。すなわ

ちCSOは、貧困者と取り残された人々を単に絶望的な犠牲者としてではなく、独立した開発アクターと政

治的提言者とみなして関わっているのである。

開発に関するCSOのビジョンとは、援助のアクターでないが開発に関わっているCSOを含めて、開発ア

クターとしてのCSOの役割の多様性を訴えることである。2

効果的な開発活動とは、以下があげられる: 生活の質や生計手段の改善のために、女性の権利とともに権利を主張する人々をエンパワーする。

特に脆弱で取り残された人たちなどすべての社会アクターを巻き込んで、地域とセクターの能力を構

築する。

相互が合意した開発の優先事項とアプローチに基づいて協力し、相乗効果を模索するために地域、

市民社会、民間セクター、政府が共に協働する。

先住民の権利や彼らの言葉である「豊かに暮らすこと(Living Well)」 を尊重し、文化的な側面に裏

打ちされた精神的価値によって、彼らの尊敬が確保されること、そして:

開発の計画や成果から影響を請けるすべての人々に対し、CSOは開発アクターの一部としてアカウ

ンタビリティの責任を共有し、独自のアクターであることを認知させること。

CSOは人権ベースアプローチを優先するために、開発の実施において広く導入されているニーズ・ベー

スアプローチ、福祉やチャリティ・アプローチを次第に受け入れなくなっている。 人権ベースアプローチと

は、外部が決めるニーズや要求に応えるのでなく、受益者の権利の付与を支援するためにCSOの開発

活動を見直すことを示唆している。国際的に合意された人権の規範や基準は、法的な裏づけと既存のア

カウンタビリティ・メカニズムを有し、開発の目的と手段の両方を備えており、広く共有されている価値観

でもある。

開発効果の原則の定義

CSO 開発効果を特徴づける原則とは、貧困者、社会から取り残された人々の人権を優先することを明

白にしつつ、CSO の開発活動の方向性を示す価値や質を示す。他の開発アクターと同様に、CSO は組

織として業務実施の更なる効率化に向けて努力をしている。開発アクターとしてこれらの業務実施は開

発効果に影響を及ぼす一方で、CSO の開発効果の原則は開発のインパクトを高めることが基本になる

ので、独自の実践にも焦点を当てている。本枠組みで設定された原則はとりたてて新しい考えではない。

つまり、これらはオープンフォーラムに関わっている数百の CSO の数十年にわたる経験から導き出され

た成果なのだ。

2 添付資料 I にこれらの役割が要約されている。

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セクション II CSO 開発効果の原則 序文

市民社会組織は全ての国の民主的な生活にとって、活動的な存在で、かつ不可欠な存在である。自己

規定をもつボランティア組織として、市民社会組織はアカウンタビリティを確保し効果的であるよう努めて

いる。CSOは独自で自立した開発アクターとして貧しい人や社会的に取り残された人々に対し、開発成

果を出すために活動していると広く認識されている。パートナーと価値や関心を共有し協働しながら、社

会変革のための媒介になっている。

CSOは開発実践において多様性と新しいアイデアを打ち

出している。CSOは組織の価値、目的、関与の方法、セクタ

ー知識、組織、関心事、資源などを、一連の情報を提示す

ることができる。

開発とは人々が参加や権利を主張できるための社会的、

政治的なプロセスであり、それ自体が開発の成果でもある。

CSOは有権者を代表して、開発の変化、公共財の擁護を主

張する政治的主唱者でもある。すべてのレベルにおいて開

発による変化を促すために、コミュニティにいるパートナー

や開発アクターと協働している。CSOは現地での活動と密

接に、かつ独自の関係を持っているが、同時に国家や世界

レベルでも変容を探っている。しかし、形式的な国家権力に

よって開発に影響を与えようとする政党や社会運動とは異なり、CSOは自身の視点を表明し、社会の中

で独立し、どの政党にも属さない政治的アクターである。

CSOの開発活動は、非暴力の過程を誓約することが特徴である。 “do no harm(害を与えない)”という

原則を真価とし、開発活動におけるすべての潜在的インパクトを念頭に置き、プラスの成果を最大限に

引き出している。CSOは、差別、無力、貧困、格差などの問題を平和的な方法で表明し、国際人権基準

に遵守しながら、開発成果を確保するために活動している。多くの国で、CSOは法の原則を遵守し、公共

財の乱用を監視しながら市民と関わるなど、重要な役割を果たしている。CSOは市民活動のボランティア

的な存在を表し、民主的で包括的な開発を担う機能をもつ。

オープンフォーラムのコンサルテーションの中で、開発アクターとしてのCSOの特徴とは、自発的で多様

的、非政党的、独立、非暴力を推進し、変化のために協働し、開発の過程を結果と成果につなぐ存在で

あることが挙げられた。これらの視点は、以下に示すCSOの開発効果のイスタンブール8原則の声明の

基盤になっている。8原則は、平和時や紛争時、草の根から政策アドボカシーまでの異なるレベルでも、

そして緊急人道支援から長期的開発へ継続する中でも、CSOの活動や実践を導いていくものである。

イスタンブールにおいて承認された「CSO開発効果の原則」

1. 人権と社会的正義を尊重し、推進する。 すべての人々のために尊厳と適正な実践、社会正義と公平性をもちながら、開発への権利を含む個人

および集団の人権を推進する戦略、活動、実践を展開し、実施するときに、CSOは効果的であるといえ

る。

多くのCSOは設定した目的や活動において人権項目を含めており、権利ベースのアプローチの実

施を試みている。権利問題に関して人々が能力を高めるには、政府の人権責任への説明責任を求

CSO 開発効果の原則とは?

CSO開発効果の原則とは、CSOの社会経済、政

治、組織的なつながりに影響を及ぼす価値や質

を表したものである。原則は、貧困、脆弱で、社

会から取り残された人々の権利を確実にする活

動を重視するもので、CSOの開発活動にとって

普遍的な基準となる。CSOの多様性を鑑みて開

発効果は、個々の状況、すなわちCSOが活動す

る地域、セクター、使命、ガバナンスや開発活動

における関係などの要因によって決められる。

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めるなど、CSOのプログラムと実践において総合的なアプローチが必要になる。これらのアプローチ

は、政治的、経済的、社会的、文化的な権利を含む国際人権基準に対応し、不平等、脆弱性、疎外、

差別や世界的な貧困など系統的な問題として扱われている。国際人権基準は、開発への権利宣言、

ILO条約、地域レベルの人権合意などを含む、国連人権システムから作られている。

2. 女性と少女の人権を推進し、ジェンダーの平等と公平性を実現する。

女性が開発プロセスにおいてエンパワーされたアクターとして参加でき、個人や集団が権利の獲得を実

現できるよう支援する一方で、女性の関心事や経験を反映しジェンダーの公平性を具体化させながら開

発協力を促進し実践するときに、CSOは開発アクターとして効果的であるといえる。

CSOは全ての側面においてジェンダー平等は持続的な開発の成果を実現するために必要不可欠な

要素として訴えている。ジェンダーの公平性を通して女性をエンパワメントすることは、あらゆるレベ

ルで女性や少女たちの機会、資源、意思決定への平等なアクセスに到達できることを可能にする。

CSOはこのプロセスに男性は重要なパートナーであると認識している。またCSO自身もジェンダー不

平等から解放されているわけではない。ジェンダー公平性を推し進めるは、女性の置かれた現状を

改善するとか、男女の力関係の不平等を是正するとか、差別的な法、政策、実践に立ち向かうなど

ということを超えて取り組まねばならない。少女や女性の権利や機会を率直に求めることはジェンダ

ー平等と女性の権利を実現するのに不可欠である。女性組織や女性運動は、開発にはなくてはな

らないアクターであり、女性のエンパワメントと民主化の原動力として特に重要になってきている。

3. 人々のエンパワメント、民主的オーナーシップと参加に焦点を当てる。

貧しく、社会から取り残された人々の生活に影響をもたらす政策や開発イニシアティブに対して、人々が

民主的オーナーシップを高め、エンパワメントと包括的な参加を実現できるよう支援するときにCSOは開

発アクターとして効果的であるといえる。

もし開発が主要な利害関係者である当事者のニーズ、知識、願望などに基づくのなら、開発は適切

で効果的であるといえる。エンパワメントをするための活動では、人々が地域の民主的なアクターや

権利を主張する個人としてその能力を構築できるように資源が配分されなければならない。そのよう

な能力を持つことで人々は影響力を強め、権力や資源への意思決定能力を高め、暴力から開放さ

れ、自分たちの生活を形成している要因をコントロールできるようになる。全ての人は国家の市民と

しての権利、自分たちの生活に影響を及ぼす公共政策への参加の権利を有している。CSOは政府、

ドナー、民間セクターとともに民主的な開発を推進する一方で、市民社会の自律性、多様性を守り、

市民やCSOの権利を行使できる道を模索している。CSO間の関係におけるエンパワメントのアプロ

ーチとは、現地のプログラムを管理している貧しい住民の組織を含む現地カウンターパートと力と資

源を共有することである。外部のCSOの役割は、途上国のCSOアクターを指揮したり、その声を代

弁することではなく、途上国のCSOの活動の可能性を広げ、彼ら自身が発する声を拡大していくこと

である。

4. 環境の持続性を推進する。

生態系保全と正義を確保するために社会経済、文化、先住民の置かれた条件に着眼しながら、気候変

動の危機へ早急な対応をし、現在と将来の世代に向けて環境の持続性を実現するための優先順位やア

プローチを策定し実施するときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

現代、次世代における人権は、持続可能性を全ての開発行動の基礎に置く開発方針や戦略によっ

て左右される。全ての人々は健康で持続的な環境のもとに居住し働く権利がある。気候変動の緩和

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や適応など、緊急課題を含む複雑な環境問題に対しては、開発の過程の全ての側面において生態

系の持続可能性を確保するための能力や技術が必要で、影響を受ける全ての市民を巻き込まなけ

ればならない。これらの課題に対応するには、環境への意識向上や新しいアイデアによる解決法だ

けでなく、環境正義の原則が適用されなければならない。特に途上国の多くの人たちは非常に脆弱

であるものの、危機的な気候変動をもたらした責任を有していない。CSOはどこで活動しようとも、開

発実践において持続性を強化するために現地の社会経済状態や、文化的、土地固有の方法を優

先していかなければならない。

5. 透明性とアカウンタビリティを遵守する。

透明性、多方向アカウンタビリティ(ダウンワード・アカウンタビリティ=受益者への説明責任、ドナーへ

のアップワード・アカウンタビリティ=ドナーへの説明責任など)、内部運営の公正さに関して組織的に責

任を持ち、持続的に実証したときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

独立した公的な非営利組織、そして正当性をもつ開発アクターとして、透明性、公開性、内部の民主

的実践は、CSOの価値である社会正義や公平性を強化する。透明性とアカウンタビリティは市民の

信頼に基づく支援の基礎になるとともに、CSOの信頼度や合法性を高める。アカウンタビリティは財

務報告のみに限定されるべきでなく、CSOの使命を正しく効果的に遂行するために、組織の取り組

みに対する公的審判も強化される必要がある。多くの場合、CSOは個別的にも集団的にも、透明性、

参加型意思決定、信頼度のあるアカウンタビリティ・メカニズムなどの基準に適切に対応している。

またCSOは、アカウンタビリティや透明性を改善し、合法化することが優先課題と認識している。既

存のグッド・プラクティス(好事例)から得られた重要な教訓はあるが、非常に弾圧的な体制や法律

のもとで活動しているCSOが抱える問題によって、進捗が妨げられている。また、組織の透明性や

アカウンタビリティを果たすための能力、技術、余裕のない草の根組織や適切に組織化されていな

いCSOには支援が必要になる。

6. 公平なパートナーシップと団結を模索する。

共通の開発ゴール、相互の尊重と信頼、組織の自立、長期的な関係と団結、そしてグローバル市民と

してCSOだけでなく他の開発アクターとともに透明性のある関係に関与するときに、CSOは開発アクター

として効果的といえる。

多様性の下、効果的なCSOのパートナーシップとは、社会的な団結を効果的に表明することである:

公平、かつ相互の協働や協力の中で、CSOは国際、国内、セクターにおいて熟慮した取り組みを行

っている。開発における効果的なCSOのパートナーシップには、どのような形成であるにせよ、関係

の中で生まれる信頼や尊敬によって作られた共通のゴールやプログラムの目的を協議しながら、長

期的なコミットメントが必要になる。そのようなパートナーシップは国を超えて市民意識に関する団結

を高め、ドナー国の市民の関与を促進させる。組織的自律性は公平な関係において不可欠なもの

である。公平なパートナーシップは、資源への不平等なアクセス、ジェンダー不平等、時として能力

の格差を引き起こすような不平等に対して、強者が力のバランスを是正するなど、両者による思慮

深い行動によって生まれものである。持続的な開発成果は異なる開発アクターの協働と協力を通し

て達成される。しかし、CSOは独立した正当性をもっている存在であり、ドナーや政府のエージェント

ではない。協調の基礎は、開発に関して明確な問題を共有し、相互が尊重し合い、合意することで

ある。

7. 知識を創出、共有し、相互学習に関与する。

地域の人々や先住民たちの知識、知恵を反映した開発の実践や成果に基づいて根拠をまとめ、人々

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の将来の希望、新しいアイデアや視点を導きだし、さらに他のCSOや開発アクターから学ぶ方法を拡充

するときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

目的を有する協働の学びの過程は、持続的な開発のインパクトや結果を評価するために不可欠な

要素になる。開発学習には、特に開発の新しいアイデアの側面という点で、組織やパートナーから

出された情報や知識を相互に共有する効果的なメカニズムが必要になる。相互学習の過程は、とり

わけ現地の知識、文化的問題、ジェンダー関係、価値や異なる方法による効果などの分野で、カウ

ンターパート間で尊敬や理解を深めることができる。開発パートナーや関係者と緊密に連携して行う

定期的な定性評価は、CSO開発活動における戦略、優先項目、作業手法の適用性や向上のため

にも絶対不可欠なものである。組織学習は “結果重視 (Managing for results)”の過程にのみに限

定するべきではない。

8. プラスの持続的変化の実現に寄与する。

貧しく、社会から取り残された人々の生活の持続的な変化につながる成果や条件に焦点をあて、現在

や未来の世代に遺産を残すために、開発活動の中で持続的な成果やインパクトをもたらすよう協働する

ときに、CSOは効果的な開発アクターといえる。

民主的な生活の開発アクターとして、よりよい社会変容の実現のためには、発展の可能性があり組

織的に持続性のある CSO が絶対不可欠になる。しかし、CSO だけで持続的な開発成果を生み出す

ことはできない。開発におけるプラスの変化は開発アクターが相互補完することで達成できる。CSO

は基本的な貢献を行い、重大なギャップを埋めることができる。しかし CSO は、教育、保健など全て

の人に強化され、有用であり、説明責任を伴う公共財を提供しなければならない国家に取ってかわ

ることはできないし、するべきではない。同時に CSO は、非常に複雑で時間の要する活動の結果に

対する証拠や持続性に関して、自分たちの能力を評価し発表することの重要性を認識している。よ

り良い社会的変容のために行った CSO の貢献の効果については、現地のカウンターパートや受益

者住民たちの視点に立って評価されるであろう。変化を目指す CSO の開発成果の持続性が可能に

なる場合、または悪影響を与える場合などの社会経済、政治的プロセスにも着眼しなければならな

い。

セクション III : 原則の実施:CSOのためのガイドラインと指標

実践上必要な価値と配慮という意味をもつCSO開発効果の8原則は、CSO間で合意されたものである。

しかしこれは単なる原則であり、この原則は開発に関わる数百万のCSOが持つ多様性、多様な目的、地

理的特殊性、課題などのすべてを考慮することはできない。開発実践に影響を及ぼすためにも、この原

則の意味は的確に解釈されなければならない。原則は、CSOの事情に適切にかない、その能力や役割

に適したガイドライン、指標、メカニズムを中心に、地域の現状に見合い、個々のCSOにも適用されるも

のでなければならない。

国際的にCSOは自分たちの開発アカウンタビリティ、効果、インパクトを向上させるために、様々なイニ

シアティブに取り組んでいる。オープンフォーラムは、新たなツールや報告システムを作ることで、既存の

プロセスと重複させ、CSOへ過重な負担をかけるつもりはない。CSOの持つ経験の多様性や既存のメカ

ニズムの重要性を認識しているので、オープンフォーラムは、既存のツールへの理解を深めながら、

CSO開発効果を向上させるためにどのように貢献できるかを探っている。

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オープンフォーラムの国別コンサルテーションでは数

百のガイドラインや指標が提示された。個々の指標項

目に合わせたガイドラインや指標のとりまとめは、この

ドラフト枠組みとともに、「オープンフォーラム国別コン

サルテーション:成果のまとめ」の中に記載されてい

る。

CSO開発効果のドラフト枠組みは、各原則項目の実

施をする際に広く採用されている方向性やガイドライ

ンを手本として策定されている。それらは、完全でもな

ければ最終的なものでもない。多くのCSOはコンサル

テーションでは、ガイドライン、特に指標はCSOの開発

効果へのアカウンタビリティを強化できるかをより深く

検討し、吟味することを求めた。オープンフォーラムは、

2011年の援助効果向上第四回閣僚級会合につなげ

るように、ガイドライン、指標、CSOアカウンタビリティ・

メカニズムに関する議論をさらに深めるよう努めていく。 CSO開発効果のイスタンブール原則の実施:CSO実践のためのガイドライン

1. 人権と社会的正義を推進する。

a) プログラムの分析、デザイン、実施や、ドナー、政府、受益者との対話のために、スタッフへの訓練や

能力構築を行うことで、権利ベースのアプローチを推進する。

b) 計測可能な指標を確立する-国際人権基準に見合った開発効果のために、計測可能な指標を確立

する。

c) 関係地域や利害関係者が自由に事前承認でき、状況を適切に説明して相手が同意できるような(イ

ンフォームドコンセント)メカニズムを構築する。

d) 現地主導のCSOの戦略的な計画やプログラムのデザインや実施、評価に受益者が参加できるように

保障し、運営を適切に行う。

2. ジェンダー平等と女性の権利を推進する。

a) CSOの使命や政策の中や、カウンターパートとの積極的な対話、人的、財政的資源の配分などの日

常実践において、ジェンダー平等と女性の権利を一体化して実施する。

b) 少女や若い女性に影響を及ぼす問題を考慮しながら、ジェンダー平等と女性の権利に基づく指標で

CSOのプログラムを計画、実施、モニタリング・評価を行い、プログラム計画においてもジェンダー平等の

指標を組み込む。

c) CSOは、本原則を適用する努力を行い(組織のキャパシティの度合いに比例して)、ジェンダー分析、

学習とトレーニングを拡大し強化するための時間と資源を確保する。

d) CSOの公的な関わりやアドボカシーの一環として、地域のダイナミクスを尊重し、ジェンダー平等と女

性の権利に関する成功例を示す。また、女性組織や女性運動への有効な支援を行い、ジェンダー平等と

定義

ガイドライン

各状況に即した提案。各原則がどのように実施さ

れ、特定の条件でどのようなアクションを取るのか、

などの方向性を示すもの。

指標

観測可能な兆し、代替的な変化(Proxy Changes)や

確定できる変化(Identified Changes)。これらはガイ

ドラインに提案された状況や変化を立証するための

信頼ある物差しになる。指標は関係者によりその妥

当性、実践度、明確さ、観測可能性などが確認され

ることになる。

メカニズム

各状況に即した方策。メカニズムは、CSOが合意し

た原則、基準、ガイドラインに対する説明責任の確

保やコンプライアンスの遵守を測るためのもの。

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女性の権利を目的とした組織的能力のためのパートナーシップづくりの努力を行う。

e) 女性の権利やジェンダー平等に影響を及ぼす重要な課題に関し、状況に応じた変化を生み出すため

に、協働で政策協議を行う機会を模索する。

3. 人々のエンパワメント、民主的オーナーシップと参加に着目する。

a) 特に女性が提案する開発方針や活動を考慮し、貧しく、取り残された人たちを把握し、彼(女)らを一

体化させ参加を促進させることで、開発政策やイニシアティブに直接影響を受ける人たちがプロセス関

与できるようにする。

b) ガバナンス、財務、プログラム管理、他の開発アクターとの関係づくりにおいて、カウンターパートが

独立したCSOアクターとして能力を構築し、持続的で自己開発が達成できることを優先する。

c) 現地の政府の政策をモニタリングし、社会、政治的問題の解決のためのアドボカシーを行っている地

域市民と共同して、CSOプログラムに関わる関係者の影響力や参加の多様性を促進する。

d) アドボカシーやグローバルな開発の場において活動する開発途上国のパートナーを巻き込み、CSO

が活動する国の公共政策において貧しく、取り残された人々の声を広げる。

e) 受益住民の変化に共に歩む(指揮するのでなく)ことの重要性と、開発における複雑な現実について

ドナー国市民の意識を高める。

4. 環境の持続可能性を促進する。

a) 長期的な環境および生態系の保全を確保し、現地の関係者に傾聴しながら支援し、持続可能性に関

する問題をCSO政策、プログラムの計画、デザインプロセス、アドボカシー、公的な関わり中に統合させ

る。 b) 環境の持続可能性を推進し、実施する能力を強化する目的で関わっている環境系CSOと開発系CSO

との間で、戦略的な連携と協力を構築する。

c) 国家開発戦略と活動に照らして、健康や環境の問題を抱える環境の下に居住し労働している人たち

の権利を確保する。

d) 生態系の保全や正義のために、社会経済、文化的、先住民の現状に照らしながら、環境悪化や、気

候変動による負の影響を削減する政策やアプローチに対して影響力を行使する。

e) 自国内、国際的調査やガイドラインを策定しつつ、持続的環境のための測定可能な指標を構築す

る。

5. 透明性、アカウンタビリティを実践する。

a) 監督官庁などに求められている監査済みの会計報告、事業報告を含む、CSOのすべての基本的な

政策や文書を出版、公開する。

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b) どのような情報がパートナー機関自身、およびその機関に関係する住民の生活に影響を及ぼすかを

配慮しながら、ファンドの支援に関与しているパートナーも含めて、主要なカウンターパート機関のリスト

を公表する。

c) 市民に対して適切な言語で正確な情報を流し、情報の要請には時宜を得て、アクセス可能な方法で

提供する。

d) 明確な責任、透明性のある運営方針を評価し、誠実さ、公正さ、真実を表明しながら、組織内で説明

責任と能力をもつ指導力を確保し、民主的文化を推進し実践する。

6. 公平なパートナーシップと結束を遂行する。

a) パートナーシップの条件は“パートナーシップ合意書”の中で明確に示されなければならない。この合

意書は、カウンターパートの能力や参加を確実にするための適切な資源配分や相互の対話を尊重して

作られるもので、パートナーシップにおける役割、貢献、責任、意思決定、説明責任に関して記載されて

いるものである。なお、パートナーシップ合意書は資金契約に置き換えられるものとして扱われてはなら

ない。

b) プロジェクトレベルでなくプログラムレベルでの共通のアクションを構築する。プログラムのカウンター

パートとして長期的な関係をもち、組織において適切で主要な資金調整を検討し、すべてのレベルのパ

ートナーシップにおいて現在関与している関係者の参加を保障する。

c) 国内外のプラットフォーム、連合、ネットワークなど既存の機会や組織を活用し、新たな形の協力を推

進しながら、CSOの戦略的な連携とプログラム協働を強化する。

d) パートナーシップにおいて、政党や選挙民たちとともに、相互で合意できる条件や持続的なモニタリン

グ、評価、アカウンタビリティ、共同学習プロセスのメカニズムを構築する。

e) 長期にわたる関係の中で、お互いを深く理解し、現地国内の状況や問題をカウンターパートの現実や

経験に関連づけながら、公な関わりや活動に努力を向ける。 7. 知識を創出、共有し、相互学習に関わる。

a) 内在化、主流化した教訓、考え、実践をもちながらも、組織内、組織間のプログラム活動における参

加や公開性、信頼性をもとに、体系的な相互学習や交換学習などを行う機会や環境を整える。

b) 必要に応じて、開発活動を改善し、他の開発関係者(政府やビジネス部門など)と関わり、ネットワー

クや連携を通して知識の共有を推進する。 c) 開発イニシアティブや政策対話の中で、現地や先住民の知識の共有や活用を推進する。

d) CSOの知識を構築するために、確実性のあるデータや情報からの収集や共有をはかり、専門的、倫

理的な責任を伴った手法やツールを確立する。

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8. プラスの持続的成果を実現することに努める。

a) 長期的で持続的な開発の成果を得る条件を把握し評価する姿勢をもち、結果志向型の計画やモニタ

リングの開発活動のツールを活用する。

b) 政府が関係区域の住民に公共財を供給する際に説明責任を強化するために、他の開発関係者と共

有し合意した開発ゴールに関連する活動が持続的なインパクトを最大限に出せるために、CSOは他の

関係者との協働を強化する。

CSOのアカウンタビリティの強化

正当な資格をもつ開発アクターとして公共財のために活動しているCSOは、開発実践において説明責

任を十分果たしていることを示す義務がある。多くの国のCSOは高レベルの専門的運営を行い、誠実さ

を示しながら、市民や現地の関係者から高い信頼を得ている。CSOはその役割や状況によって様々な方

法でアカウンタビリティを示している。例えば、理事会による監視、外部監査やプログラム報告などの公

開、政府による定期的監督、CSO独自で作る様々な行動規範と透明性への取り組み、進行中のカウンタ

ーパートとの協議などを通して、アカウンタビリティに取り組んでいる。 アカウンタビリティへの課題

CSOは、アカウンタビリティを実証するために独自の課題を抱えている。まず、組織数が多く、多様性が

あること、パートナー関係における透明性の問題、ボランティアベースの組織と活動であること、アカウン

タビリティに対する多様な要求があること、などが課題として挙げられる。CSOは、個々の組織とともに

CSO全体的のアカウンタビリティの強化のために、実践的な新アプローチを開発し、既存の活動から出

た教訓を共有する必要があると認識している。

またCSOの説明責任は監査を受ける財務記録以上のものでもある。開発アクターの役割として、CSO

のアカウンタビリティは、権利を主張している最貧層や取り残された人々のために、持続的な開発成果を

示すような総合的な方法でなければならない。

CSO開発効果にある価値観に基づくアプローチは解釈が必要になる。CSO開発効果の原則に対応して、

妥当で客観的なアカウンタビリティの基準を作ることは、特に決定とモニタリングの点で非常に難しい。何

故なら、CSOのアカウンタビリティのメカニズムには、計測可能で直接的な開発効果だけでなく、成果の

原因の特定が単純に見極められない、変容のためのアドボカシーや動員なども含まれるからである。

CSOへの支援者、カウンターパート、政府、ドナーは、アカウンタビリティの必要基準として透明性をすぐ

に期待する。しかし、時間軸、コスト、作業量、カウンターパートの権利に関連するプライバシーや保護な

どの理由で透明性を確保できる時とできない時があり、実践の上で完全な透明性を示すのはしばしば困

難である。アカウンタビリティの基準を果たすためのCSOの能力は、組織規模の大小、組織のシステム

の欠落、ボランティアへの依存、不十分な報告や監査システム、モニタリングや評価の手段の欠如など、

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構造的な組織の弱さなどに大きく影響を受けている。

アカウンタビリティ・メカニズム

CSOはしっかりとしたアカウンタビリティ基準とメカニズムを作る責務に着手している。自分たちの活動を

改善し、自律と独立性を守るために必要な柔軟性のある方法を確保する必要があるが、それには政府

による「警察活動的な規則」ではなく自発的に作るアカウンタビリティ・メカニズムが重要であるとCSOは

強調している。実際にはそのようなメカニズムは数多く存在するが、基準を実施するための組織的なコミ

ットメントを改め、コンプライアンスの試みをより強力に進めることが求められる。

オープンフォーラムにおいてCSOはアカウンタビリティ・メカニズムを強化するためのいくつかの方策を

提案していく。具体的にはCSOのグッド・プラクティス、開発実践への明解なガイドラインなどの分析を通

して行う。これまでの国別のコンサルテーションによって提案された以下の方向性は今後のメカニズムづ

くりの作業につながっていく。

1. CSO開発効果の原則とガイドラインは、アカウンタビリティ基準の基礎となるが、アカウンタビリティに

は組織ガバナンスに関する広範な課題も含めなければならない。

2. アカウンタビリティ・メカニズムと状況に特化した要望や条件は、特に主要な関係者を含めて、作業活

動を計測される人とともに作るのが一番よい。これらの人々は、カウンターパート間の相互関係や組織

学習、弱点を是正するための方策などを推進しなければならない。

3. 誰が説明責任を持ち、誰に対して、そして何のために行うのかを明確にすることが基本となる。多様

な状況で、かつしばしば予測不能な条件下において、現実的に適用するためには柔軟性と適応性もメカ

ニズムには必要となる。 4 特に、予算、プログラム活動や資源配分などに関して、カウンターパートもCSOと同じ透明性を確保す

るべきとの期待を示すことがあるが、CSO自身が受け入れないような原則や方法を他者に強要してはな

らない。

5. 重複する作業や高い取引費用を防ぎ、公正なコンプライアンスの実施を示し、国レベルでアカウンタビ

リティを強化するために、既存のメカニズムを継続して活用し開発していく。

セクション IV CSOの開発効果を実現させる政策環境のための必要条件:政策と実践 3

CSOは独立、自律した組織であるが、だからと言って孤立して活動しているアクターではない。開発効

果の原則を遂行する能力は、他の開発アクターの行動によって制限され、影響を受けることがある。

開発のための政策環境は複雑である。昨今、すべての開発アクタ

ーは世界の経済、社会、気候などの分野で発生した危機に大きな

影響を受けてきた。政治的な条件は重要であり、一部のCSOは、自

身の活動において民主的な自由を制限されている。民間セクターも

3 オープンフォーラム ナショナル・コンサルテーションでまとめられた、政策環境の最低基準に関する CSO からの情報や提言は

添付 3 を参照のこと。

“政策環境の基準”とは何か?

政策環境の基準とは、開発アクターが

開発を持続的、効果的に遂行する能

力に影響を及ぼす一連の条件、

-法律、官僚、財政、情報、政治、文化

の分野での条件 - を指す。

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開発に影響を与える重要なアクターである。例えば、インフォーマルセクターで働く貧しい人々のために

市場や適切な仕事を創出することは必要不可欠である。

CSO開発効果のための本国際的枠組みは開発アクターとしてのCSOの役割に関連する最重要な原則

を打ち出している。オープンフォーラムを通じて、CSOはこの原則に基づいて自分たちの実践を評価し変

えるためのガイドラインと想定できる指標を提案してきた。またこの原則をもとに、最低基準を議論し合意

するために、CSOは政府やドナーとの協議を促進してきた。共同で策定されたこれらの基準は、CSOが

開発を行う中で最大限の能力を引き出せる環境を創出するであろう。そしてそれは「アクラ行動計画」の

中で承認された政府のコミットメントにも通じている。

これらの最低限の政策環境が整っていない場合は、CSOがこの「イスタンブール開発効果原則」を忠実

に実施することが困難になる。 これまでにCSOは、国別、地域別コンサルテーションで作られた

「Synthesis of Outcomes (成果のまとめ)」4にあるような課題や提案を出してきた。これらは結論ではない

が、政府やドナーとの更なる協議のための基礎になる考えである。2011年12月の釜山の援助効果第4

回閣僚級会合に提出する政策環境の最低基準を合意するために、政府やドナーとの協議では下記の主

要な要素を検討していかなければならない。

すべての政府は基本的人権に対する責務を果たすこと

ほとんどの国々のCSOは、政府による政策の転換や制約的な実施により、政治的、財政的、組織的に

非常に弱い立場にある。広く施行されている反テロ法により、政府がより厳しい財政や規則の制約を設

け、政治的な活動を制限するために権力を行使したり、政府の政策に批判的で、かつ人権の擁護者で

あるCSOリーダーを弾圧するなど、CSOは、民主的、法的な自由に及ぶ悪影響を懸念している。

CSOは民主的ガバナンスや全ての人を巻き込む(Inclusive)開発活動を強化、推進するために、政府や

他の関係者と組織化、協働を続けている。民主的な政府は、市民社会を活発にさせるための前提条件

である基本的な原則や基準を含めて、法律、規則、実践を策定する必要がある。5

結社の自由 CSOの法的承認

表現の自由

不当な国家介入がなく、自由に活動ができること 資源の模索と確保の自由

途上国政府の課題

途上国で実施されたCSOのコンサルテーションでは、CSOの開発効果に影響を及ぼす政策や実施に関

して、以下の問題や課題が挙げられた。6

4 See Section V of CSOの最低限の基準に関する課題と提案については、「Open Forum Country and Sectoral Consultations: A

Synthesis of Outcomes (September 2010)」のV節を参照のこと。

5 これらの原則の策定や発表は、“International Principles Protecting Civil Society”, in Defending Civil Society, A Report of the

World Movement of Democracy, February 2008 (市民社会を守る国際原則、市民社会の擁護、世界の民主化運動報告書

2008 年 2 月)” から出ている。詳細は以下のウェブから参照できる。 www.wmd.org/projects/defending-civil-society これらの

権利は国連市民権と政治権利条約や他の他国間、地位間条約などのもとで保証されている。 6 途上国とは、援助の受け取り国でも供与国でもある、インド、ブラジル、東欧などの新興国も含まれている。

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CSOの認知にかかる法的な枠組が欠如している、もしくは非常に制限があること。 CSOの活動に対して政治的干渉すること。 政府や法律が不寛容で異なる意見を受け入れない国において、表現の自由が限られること。

CSOがパートナーとして地域や国の開発活動に関わることを政府が制限すること。 政府の政策、予算、開発の取り組みに関する情報へのアクセスができないこと。

ドナーの課題

コンサルテーションでは、ドナーの政策や実践に関してCSOは以下の問題や課題を挙げた。これらの問

題はドナー政府の実践に関連するものだが、異なる方法や意味合いが含まれることがあるものの、CSO

自身がドナーとしての立場になった時も適用できる。 ドナー政策の明確さが欠落していること。 非常に指令的なドナー・コンディショナリティ(支援の条件付け)があり、高い取引費用、現地CSOへ

の干渉などがあること。 開発効果の改善のための相互学習や政策に関して、ドナーと関与するメカニズムが欠如しているこ

と。 ドナー国における市民や納税者向けの説明において、CSOのプログラムが軽視されていること。 CSO開発効果に影響を及ぼす資金メカニズム(予測不能な資金、管理やプログラム監督のための資

金の欠如、一回限りのプロジェクト志向の競争的資金調達、対応型の資金提供の機会を減らす一

方でドナーが支持する分野を優先すること、「結果重視管理」にのみ還元させるアカウンタビリティ)

オープンフォーラムは上記の問題や懸念に対応し、多数ある最低基準について合意を得るために、政

府やドナーとマルチステークホルダーの協議を模索している。これらの基準は限定的だったり、固定的な

内容でなく、CSOが開発効果の原則を実施するために必要な重要な視点をもつ最初の指針となる。

セクション V 今後の展望:

CSO開発効果の原則の実施について

第一回CSOオープンフォーラム世界大会は本CSO開発効果の国際枠組みのドラフトを検討し、修正を

行ってきた。CSOが合意した枠組みにある8つの広義の原則は開発アクターとして効果を発揮するため

の基礎となる。CSOは開発アクターとして、開発効果を高めるための基礎となる「開発効果イスタンブー

ル原則」に合意した。

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CSO、政府、ドナーのすべての開発アクターは相互依存の関係にあり、貧しく、社会から取り残された人

たちに対して、開発成果を効果的に実現するために協働しなければならない。現状を克服するために、

CSOを活発化させることに関心が出されている。CSOにおいては、これらの8つの原則に従って、開発ア

クターとしてセクターを強化、改善することを約束した。オープンフォーラムはCSO実践のための8つの原

則、ガイドライン、アカウンタビリティ・メカニズムの適用について、今後数ヶ月間にわたり議論を深めてい

く予定である。このために、CSOの開発活動について組織内での議論や、他の開発関係者や貧しい人々

を含めたグループ協議を国やセクターレベルで進めていく。2011年のCSOオープンフォーラム世界大会

は、CSO開発効果に関する国際枠組みの実施のために、CSOの提案に焦点をあてて議論する。

すべての開発アクターは国際人権基準に沿い、MDGsなど国際的に合意した開発ゴールに対しアカウ

ンタビリティを強化する努力をしなければならい。CSOもより良い統治を行う責任を認識しているので、

我々も例外ではない。それ故、オープンフォーラムのCSOは、開発アクターとして開発効果の原則やCSO

としての自律、独立性を尊重する一方で、アカウンタビリティのメカニズムを評価し、改良していかねばな

らない。これらの取り組みの適用は、国別に行っていく。

オープンフォーラムはCSOの活動実施において、開発効果の原則と課題を明らかにするために途上国

政府、ドナー政府、多国間機関が関与することを歓迎する。CSO開発効果のマルチステークホルダー・タ

スクチームは、政府とドナーの政策や実施における環境づくりや最低基準を検討するために、上級レベ

ルの対話を促進する目的で設立されたが、CSOはこのチームの使命に勇気づけられている。2011年韓

国釜山の援助効果第4回閣僚級会合につなぐために、すべての開発アクターは開発協力の改革を通し

て、人権、ジェンダー平等、社会正義を実現するように協働しなければならない。原則、規範やガイドライ

ンを含む本CSO開発効果の国際的枠組みづくりは上記の改革に貢献するために、CSOにとって意味深

い一歩となるであろう。

添付 1

イスタンブールにおいて承認された「CSO開発効果の原則」7

世界の国々の民主的な生活を確保するために、CSOは躍動的で必要不可欠な存在となっている。CSO

は多様な人々たちと協働し、人々の権利獲得を促進している。独自な開発アクターであるCSOの基本的

な特徴は、自発的、多様性をもち、超党派で自律的、非暴力で、変化に向けて協働している。そして、こ

れらの原則はCSO開発効果イスタンブール原則の基礎となっている。原則は、平和時、紛争時、また草

の根活動から政策アドボカシーまでの分野、そして人道、緊急支援から長期的な開発における市民社会

組織の活動と実践までを網羅する重要な指針となる。

1. 人権と社会的正義を尊重し、推進する。 すべての人々のために尊厳と適正な実践、社会正義と公平性をもちながら、開発への権利を含む個人

および集団の人権を推進する戦略、活動、実践を展開し、実施するときに、CSOは効果的であるといえ

る。

2. 女性と少女の人権を推進し、ジェンダーの平等と公平性を実現する。

7 2010 年 9 月 28 日から 30 日のオープンフォーラムの世界大会にて合意されたイスタンブール原則は、「オープンフォーラム

CSO 開発援助効果に関する国際的枠組み案」の基礎となっている。これらの原則は、第二版でさらに修正され、オープンフォー

ラムのホームページ www.cso-effectiveness.org で参照できる。

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女性が開発プロセスにおいてエンパワーされたアクターとして参加でき、個人や集団が権利の獲得を実

現できるよう支援する一方で、女性の関心事や経験を反映しジェンダーの公平性を具体化させながら開

発協力を促進し実践するときに、CSOは開発アクターとして効果的であるといえる。

3. 人々のエンパワメント、民主的オーナーシップと参加に焦点を当てる。

貧しく、社会から取り残された人々たちの生活に影響をもたらす政策や開発イニシアティブに対して、

人々が民主的オーナーシップを高め、エンパワメントと包括的な参加を実現できるよう支援するときに

CSOは開発アクターとして効果的であるといえる。

4. 環境の持続可能性を推進する。

生態系保全と正義を確保するために社会経済、文化、先住民の置かれた条件に着眼しながら、気候変

動の危機へ早急な対応をし、現在と将来の世代に向けて環境の持続可能性を実現するための優先順

位やアプローチを策定し実施するときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

5. 透明性とアカウンタビリティを遵守する。

透明性、多方向アカウンタビリティ(ダウンワード、アップワードなど)、内部運営の公正さに関して組織

的に責任を持ち、持続的に実証したときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

6. 公平なパートナーシップと団結を模索する。

共通の開発ゴール、相互の尊重と信頼、組織の自立、長期的な関係と団結、そして地球市民として

CSOだけでなく他の開発アクターとともに透明性のある関係に関与するときに、CSOは開発アクターとし

て効果的といえる。

7. 知識を創出、共有し、相互学習に関与する。

地域の人々や先住民たちの知識、知恵を反映した開発の実践や成果に基づいて証拠をまとめ、人々

の将来の希望、新しいアイデアや視点を導きだし、さらに他のCSOや開発アクターから学ぶ方法を拡充

するときに、CSOは開発アクターとして効果的といえる。

8. プラスの持続的変化の実現に寄与する。

貧しく、社会から取り残された人々の生活の持続的な変化につながる成果や条件に焦点をあて、現在

や未来の世代に遺産を残すために、開発活動の中で持続的な成果やインパクトをもたらすよう協働する

ときに、CSOは効果的な開発アクターといえる。

このイスタンブール原則に従い、CSOは自分たちの開発実践を改善し、確実に説明責任を示すために

積極的に行動することを誓った。同等に重要なのは、すべてのアクターによって生み出される開発の効

果を発現させるための政策や実践である。イスタンブール原則に従った行動を通し、ドナーや途上国政

府はアクラ行動計画 (AAA)で「CSOが開発への貢献において十分に能力を発揮できるよう保障する」と

宣言したことを実行しなければならない。すべての政府は、結社の自由、集会の自由、表現の自由など

を尊重し、基本的な人権を遵守する義務がある。これらの本質が開発効果の前提条件となる。

トルコ イスタンブール

2010年 9月 29日

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添付 2 開発におけるCSOの役割 結社や表現の自由への権利を主張する非営利のボランティアであるCSOを生み出すために、市民は結

集する。人々が生活の質を改善し、より民主的な社会を構築するための権利を人々が主張できるために、

CSOは社会の団結、サービス、動員を促す媒介機能を担う。これが開発アクターとしてのCSOの法的、

信用の基盤である。市民はCSOを通じて、人権を尊重、擁護し、実行する義務を有する政府のアカウンタ

ビリティに着眼して、「市民権」を積極的に訴えている。独自の活動とともに、他のCSOや他のアクターと

協働する組織として、CSOは開発において以下に関する活動を行う。

a) 人々の自立と現地の開発に関する新しいアイデアのために、コミュニティ、貧しく取り残された人々へ

の直接的な関与や支援を行う。

b) コミュニティが政府のサービスを受ける権利を確実に得られるようにエンパワーさせ、保護やケア、教

育、水と衛生などの分野を対象に、地域レベルの基本的サービスやインフラを提供する。

c) 能力構築、社会的動員の強化、地域や国家の開発を民主化する人々の声を通して、公共政策に参

画し、草の根の地域に住む取り残された人々、女性や貧困層をエンパワーする。

d) 地方政府や他の開発アクターや組織との協力、協働を促進する。

e) CSOの知識、問題、展望、提案を含めながら、公共政策の協議テーマを拡充する。

f) 政策研究や開発、政策対話、疎外され取り残された人々の知識に配慮した民主的なアカウンタビリテ

ィを通じて、政府やドナーの政策と開発実践をモニタリングする。

g) 知識の創出、情報共有を推進し、地球市民として人々の行動を活発化させることで、民主主義に内在

する社会的価値、団結、社会正義を養っていく。

h) 地域、国内、国際レベルにおいて受益者であるCSO、もしくはドナー資金の媒介役のCSOとして、開

発への資金源や人材源を模索し、強化する。

i) ターゲット集団の権利にプラスの影響を及ぼしているか否かの説明責任を果たすために、CSO内や

CSOと市民社会との連携やネットワーク作りを行う。

添付3 CSO開発効果を可能にする重要な条件:政策と実践 8 はじめに

国別コンサルテーションの第一の目的は開発アクターとしての市民社会にとって最重要な原則を提案す

ることだった。この原則は2010年9月のオープンフォーラム世界大会で合意される。これらのコンサルテ

ーションの間、CSOは原則に基づき、自分たちの活動を評価し変えていくための実践的なガイドラインや

8 政策環境への作業は 2011 年の枠組み草案の最終稿に向けてさらに修正と改良の作業を進めていく。この添付内容は CSO

にとっての開発効果を可能にする条件に対する見方で、「オープンフォーラム国別およびセクター別コンサルテーション:成果の

まとめ:CSO 開発効果の枠組みに向けて(2010 年 9 月)からの抜粋である。詳細は以下から参照のこと。

http://www.cso-effectiveness.org/IMG/pdf/synthesis_of_open_forum_consultations.pdf

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想定できる指標の設定を試みた。これらのガイドラインや指標は個々のCSOの状況に合わせて解釈され

ることが求められるので、CSOはその適用やアカウンタビリティのメカニズムの強化との関連について、

国レベルで引き続き議論をすることになるだろう。

CSOは独立し自律した組織であるが、孤立して活動している開発アクターではない。開発効果のための

原則に従って行動するCSOの能力は、他の開発アクターの行動によって制限や影響を受ける。全ての政

府は、2008年アクラ行動計画(AAA)において「CSOが開発への貢献を最大化できるよう保障する」ことに

署名合意した。この目的のために、オープンフォーラムの国別CSOコンサルテーションとマルチステーク

ホルダー討議(CSO、政府、ドナー代表との)は政府とドナーの政策や実践における一連の課題や想定

される基準を提示してきた。

これらの条件と基準は、コンサルテーションで出されたCSO開発効果の原則の実施を可能にし、促進さ

せることを目的としている。CSO開発効果を可能にする条件とは「持続的で効果的な方法で開発プロセ

スに従事する開発アクターの能力に影響を及ぼす、法的、官僚的、財政的、情報、政策的、文化的側面

に関連した一連の条件」と解釈されている。

2011年11月に韓国釜山で開かれる第四回閣僚会合(HLF)に向け、CSOはHLFにおいてすべての開発ア

クターが開発効果を強化するための包括的な合意を達成するために活動を続けている。オープンフォー

ラムはより広範なCSOプラットフォームであるBetter Aidと協働している。釜山HLFに向け、オープンフォー

ラムはCSO開発効果の国際枠組みを綿密に策定するために、CSO自身と政府、ドナーのための開発効

果の原則とそれを可能にさせる条件を提案している。来年に向け、オープンフォーラムを通じてマルチス

テークホルダー協議を継続する目的は、政府、ドナーがCSO開発効果のために重要な政策環境の条件

や基準に関する共通基盤を模索することである。

国別コンサルテーションでは、CSOが開発アクターとして役割や効果を高めるために想定しうる条件、課

題や方向性について意義深い議論ができた(CSOセッションとマルチステークホルダーの双方の議論で)。

このセクションは、結論でなくCSOと政府やドナーによるさらなる討議の基礎となる課題や最低基準の提

示をまとめるものである。

このまとめは課題と提案された基準を三つの対象者-すべての政府、途上国政府、そしてドナー政府-

への適用に分類している。

1) CSO 開発効果を可能にする、すべての政府に対する課題と基準

すべての国別コンサルテーションにおいて、CSOは自身が開発を計画し活動する中で民主的な側面、ま

た法的な面で共通の懸念を取り上げた。ほとんどの国のCSOは、自国政府の政策や実践において政治

的、財政的、制度的脆弱性を経験し、影響を受け続けていると指摘している。これらの圧力は以下のよう

に例証されている。

反テロに関する法的対策を徹底し、9.11後、世界全体にわたり安全保障アジェンダに焦点が当てら

れていること。

特に援助に依存している市民社会に対して、政府の財政および規制の制度を変更すること。

市民権や、文化的、社会的、経済的権利に関連する基本的な政策課題について批判的な姿勢を持

ってアドボカシーを行うCSOに対し、政治目的での攻撃を行う「Chill effect (冷却効果:ぞっとするよ

うな寒さを覚えるという意味)」があること。

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これらの詳細は、その程度、時期、地理的位置によって異なるが、市民組織や権利、そして開発に関し

て代替的な政策を提唱し活動を行っている市民の場に対して、政府による広範で時に非常に攻撃的な

行動が存在したとされている。

CSOは政治的動機に基づく情報の開示を求め、資源や技術の国際的な交換を制限する国際協力に関

する新たな法律や規則の枠組みを協議してきた。長年の懸案事項であった包括的な政策策定プロセス

へのアクセスは、意見を異にしたり、批判的な声をもつ団体にとって更に制限のかかったものとなってき

ている。多くの国で政府は政治的活動に益々制限を加えるようになっており、現下において反体制と思

われる者に罰則を与える裁量権を多大に行使している。

これらのマイナスの傾向にも拘わらず、CSOは民主的ガバナンスと包括的な開発活動に貢献し、それを

強化するために政府や他の関係者とともに活動を進めている。国際人権法の下で、すべての政府は基

本的な原則や基準を尊重し従わなければならない。9 これらの基準のいくつかは、市民社会が堅固で効

果的なものとなるための基本的な前提条件である。

a) 結社の自由:人権や基本的自由の推進や保護など、公共の利益につながる一連の活動や目的を追

求するために、個々人は自由にCSOを設立、加盟、参加する権利を有する。結社の自由とは法的な基盤

をもつ組織を形成する権利も含むものである。

b) CSOに対する法的認知:CSOは、身近で、明確で、コストがかからず、時宜に適って、特定の政党とは

関わらない方法を確保しながら、法的な地位を得なければならない。法的地位の決定は客観的に、かつ

公正な管理基準により導入されなければならない。

c) 表現の自由への権利:多元性、情報へのアクセス、異なる意見を表明する権利は民主的社会や開発

効果にとって基本的な特徴といえる。CSOは政府の法律や実践を批判することに対し、法的な保護や手

段をもち、また人権侵害に対して政府の関心を高めるようにしなければならない。国家は、規制に関する

言語が明確であろうと漠然であろうと、表現の自由を制限する法律を有するべきでない。

d) 国家の不当な干渉を受けずに活動する権利:国家による干渉は、民主的社会にとって明らかに必要

と思われる場合、もしくは法によって規定されている場合のみ正当化されるべきである。国家は、すべて

の法や規制が非政治的で一貫性と透明性をもって実行されることを保障する責任を有している。CSOの

解散は、恣意的な決定でなく、客観的な基準で判断されなければならない。

e) 資源の模索と確保の権利:すべての市民社会組織は、個人、ビジネス、他CSO、国際機関、地方、国

家、海外政府を対象に、合法的な資金源を模索し、確保することができる。

2)途上国政府:CSO開発効果を可能にする課題と基準

途上国政府の政策や実践に関しては、途上国のCSOにより多くの課題や基準が指摘された。この文書

において、途上国政府とはODAを供与される国だけでなく、援助供与するドナーであるインド、ブラジル、

東欧諸国などの新興市場経済諸国も含めることとする。

提起された課題と問題

9 これらの原則に関する構成や提示は、民主主義の世界的動向に関する報告書(2008 年 2 月)の中の市民社会の擁護「市民

社会を守る国際的原則」に基づいている。詳細は www.wmd.org/projects/defending-civil-society。これらの権利は国連の市民

と政治的権利(ICCPR)に関する国際誓約や他の多国間や地域条約により保障されている。

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a) 法的枠組みへの課題

途上国の多くのCSOは、活動の実施環境において法的枠組みが欠如していることが主な課題であると

指摘した。政府の持つ基本的な義務については前述の通りだが、CSOへの法的枠組みの課題とは、人

権や社会運動を扱う組織へのあからさまな制限やその登録却下などから、法や政策の制定が完全に欠

落した状態まで多岐にわたっている。これはCSOが対処する問題に対する現政府の考え次第で、あいま

いで行き当たりばったりの制限を生み出している。その他の課題として挙げられるのは、CSOの活動や

実施プロセスに関して、政府から高い要求が出され、その法的許可や承認制度がCSOの実施の阻害に

なっているという事実である。これらの問題はCSOへの脅威となってきている。

b) 市民の責任と政治的干渉

ある状況下において、政治家はCSOの活動効果に影響を及ぼすような干渉をすることがある。多くの場

合、CSO組織は市民の責任においてコミュニティをエンパワーするため、政治的プロセスに関与するのも

事実であるが、そういう中でもCSOは中立の立場を保持し、いかなる政党にも加担はしない。

多くの場合、政府や政治家が行う活動や干渉は政党活動に直結する傾向があり、結局CSOにとって脅

威となり、政治的な干渉につながる。多くの国において、政府の職員はCSOに対して否定的な固定観念

をもち、開発活動において政府と緊張関係に陥るなどの経験をCSOはもっている。

c) 制限された表現の自由

政府や国の法律が非常に不寛容な場合、CSOは長期にわたって、警察や治安部隊による脅威や恣意

的な措置を経験している。これらのCSOは平和的な集会、集団行動などは一切許されず、メディアへの

アクセスも持たない。この状況から、一部の国では多くの市民社会リーダーが裁判を受けることなく投獄

されてきた。

d) CSOの開発活動に対する政府の限られた関与

透明性や民主的文化の実践が存在しない国(例えばプロジェクトデザインや計画への関係者の参加を

保障することなど)では、賄賂、汚職、公開性の欠如などは共通の現象である。契約署名、資金拠出や

意思決定における遅延や優柔不断な態度、開発プロジェクトの実施における政治的偏重などもCSOが

直面する問題である。地方、国家レベルでの意思決定にCSOが関与しない所では、開発におけるCSOに

よる影響が非常に限られてしまう。

e) 情報へのアクセスの欠如

多くのCSOは情報へのアクセスの欠如を指摘しており、このことはCSOが監視的役割を担うのを困難に

している。公共財を監視する役割として、CSOは政府やドナーによる公共財の活用に関する情報へのア

クセスを持たなければならない。もし政府やドナーが透明性を高め、情報へのアクセスを容易にするのな

ら、CSOは公共財が貧困や公正な成長に最大限の影響をもち、活用されているかを確認することができ

る。

途上国政府へ提案する最低限の基準

以下はオープンンフォーラムの国別、セクター別のコンサルテーションから引き出された基準である。こ

れらは、オープンフォーラムのプロセスにおいて限定的または包括的な基準リストというわけではない。

2010年9月の第一回世界大会の目的はこれらの提案への理解を深めて拡大し、最低基準に関して政府

やドナーと協議を開始することであった。

コンサルテーションによって導き出された、CSO開発効果を可能にするために途上国政府が担う最低基

準は、CSOを認知し、その声を推進すること、CSOの対外関係を高め、能力を構築すること、また、CSO

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に長期的な資金を拠出し、彼らを包括的に対話の中に含めていくことを中心に展開されている。

a) 独立と自主規制

市民社会組織は、倫理綱領や行動規範によって規定されている。これらはCSO内外の組織、制度、政策、

CSOの独立性や自主規制などを表している。自身で規定に基づくコンプライアンスを示すCSOは、その

法的妥当性や信頼性を高め、官僚主義を削減するために、政府とCSO間の代償的要因-お互いを埋め

合わせる要因(quid pro quo)-になっていくだろう。

b) CSOの認知

正当性をもつ開発アクターとしてCSOを認識することは重要である。CSOはサービスの供給、政策や法

律への影響という点で補完的役割を担っている。また、CSOは社会との密接的な関係、自律性(非政治

的)、貧困層や取り残された人々に対する経験や配慮を持つ、という点で、開発における主要なアクター

となっている。彼らの役割は抑制されるのでなく、高められなければならない。

i. CSOとの伝達経路

CSOと政府組織が正式で、かつ開かれたコミュニケーションを持つことによりCSO開発効果を高めるこ

とができる。CSOの補完的な役割において、情報へのアクセスと政府とCSO間のフィードバック機能は、

相互関与、相互学習、相互交換を拡大することができる。

ii. CSOの参加への道筋

政府は国レベルの重要なプロセスにおいて、CSOが包括的で意味ある参加ができるよう政策環境を整

えなければならない。例えば、2011年の韓国の第四回閣僚会合に向けた準備プロセスにおいて、多く

の国レベルの技術作業部会はCSOの代表を含めていない。政府は政策協議において、CSOが関われ

るような機会を積極的に作るべきである。

iii. 相互学習と手作り解決策

政府はCSOがその土地固有の知識の促進者で発動者であることを認めなければならない。CSOの活

動や社会的連帯という特殊な性質からも、CSOは人々の願望を示すことを可能にし、社会における多

様で、貧しく、取り残された人々の生活の改善に寄与することができる。

c) 法的な環境枠組み

法的な環境枠組みは、CSOが脅威や威嚇を受けずに、開発に貢献する能力を効果的に発揮できるよう

保障するものである。法的枠組みはCSOの役割、政府やドナーの期待、相互関係の方法などを明確に

することができる。

i. 人権条約の主要項目に基づく法的枠組み

ほとんどの開発途上国政府は、人権条約の主要項目に批准している。上述のように同条約は結社や

表現の自由など、CSOが効果的なアクターになることを可能にする法的枠組みを設定し、適切な前提

条件を提供している。

ii. 財政システム、コンプライアンス(法への遵守)、支援

登録、課税、報告などにまつわる事務的手続きは、コンプライアンスを高めるために複雑にするべきで

はない。CSOの活動はフィランソロピー(慈善)的な特徴を有しているので、租税免除の対象とするべき

である。

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d) パートナーシップと技術支援

民主主義が根付いたばかりの国や脆弱な民主主義国家において、民主主義の環境と歩調を合わせて

いるCSOの成長の初期段階は、依然として政府の資金や技術支援に直結して(しばしば依存している)

のが現状である。CSOと政府の密接なつながりにおいては、CSOの独立性を保障する適切なパートナー

シップの取り決めが必要になる。

e) 透明性、公開性、アカウンタビリティ

政府はパートナーであるCSOとの関係において、政策や実践に対する透明性や明確さ、時宜を得た情

報共有、政策協議におけるCSOの参加やアカウンタビリティ、多岐にわたる関係者の声に傾聴する必要

性などを含め、良い統治の原則を実践しなければならない。政府は技術活用が可能な限りにおいて、す

べての人々が公的な情報にアクセスできるようにしなければならない。

3)ドナー: CSO開発効果を可能にさせるための課題と基準

ドナーの政策や実践における多くの課題や想定できる最低基準が多数提起された。これらはドナーと途

上国政府における国別コンサルテーションにおいて打ち出された。提起された課題や基準は、ドナー政

府に関連するものだが、その多くはドナーとして活動する国際NGOを含むCSOにも適用しうる一方で、援

助を受けるCSO(世界のどの地域に属していても)側の開発効果に異なる方法や示唆もある。

提起された課題と問題

a) ドナー政策の透明さの欠如:援助を受ける側のCSOは、CSOに対するドナーの政策(ドナーとしての

CSOも含める)が -特にCSOのパートナーに間接的に影響を及ぼす変化に関して-、が常に変更され

たり、明確さを欠いていることにしばしば不満を持っている。援助を受けるCSO組織を巻き込んだ協議や、

説明責任を盛り込んだCSO政策や実践に関して、ゴールや目標を定めているドナーは非常に少ない。

b) 開発効果を改善するための相互学習や、政策のためのドナーとのスケジュール化した関わりが欠如

していること:定期的にスケジュール化した協議を通して、開発効果を左右する状況に関して、ドナーも

CSOも開発アクターとして共に学び、影響を与え合えることをCSOは認識している。しかし、情報交換、相

互学習のプロセスやスケジュール化した協議はしばしば場当たり的で、資金処理の問題や特定のプロジ

ェクトやプログラムの報告に終始するなど、非常に狭い範囲の話に焦点が当てられている。特に政治レ

ベルでのドナー、途上国政府、CSOの相互関係においては、CSOに対する固定化された誤解やCSOの

開発への貢献に関する情報の欠如が依然として残っている。CSOの役割は監視と、政府の政策への挑

戦であるにも拘わらず、あるドナーは、CSOへの支援を開発活動における基準でなく、政治基準に基づ

いて決定要因を定めている。

c) ドナー国における市民や納税者向けの説明において、CSOのプログラムが軽視されていること。

特にドナー国におけるCSOの重要な役割の一つとして、グローバル市民としての人々の活動を促進する

ことで、市民を啓発し、社会団結の価値や社会正義を形成することがあげられる。こうしたの活動は市民

が援助、団結、開発活動に対し積極的に支援することを可能にするものの、公的ドナー組織は途上国で

の開発活動の支援を第一にしているため、上述の活動に対する資金援助は二の次に扱われ、その額も

非常に僅かである。CSOは市民の関与をサポートする一方で、ドナーは国内(アドボカシー活動を目的と

する)または国外(技術協力専門家などが活動する場)においてプログラムに対する国民意識を高めよう

と傾向がある。つまり、開発活動により直接関与できるよう市民を動員することはほとんどしない。

一方で、南側諸国のコンサルテーションでは、現地ドナー代表が活動地域を訪問し関与する際や、ドナ

ーのアクセス、資金援助などに関して、ドナーはコミュニティベースのCSOを軽視する傾向があることが

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指摘された。

d) ドナーによる過度なコンディショナリティ(支援の条件付け)と地元CSOへの干渉:公的ドナー(またド

ナーとして活動する大型CSO)は、特定の政策命令や、プログラムの優先順位、途上国における市民社

会の活動や開発実践に関して強固な意見を出す。これらの優先付けや方向性の多くは、ドナー国の有

権者や援助実施機関から出てくるもので、途上国の地元の有権者が直面する現状に配慮したり、関連

付けたりすることはほとんどない。地元のCSOが非常に依存的で、多様な資金源の確保ができない状況

下では、ドナーの資金コントロールは、地元のCSOがもつ目的、開発活動における優先順位の選択、便

益を受けるコミュニティの管理や相互関係を築く能力に対して、非公式、公式に影響を及ぼしている。

一方、最近ドナーが強調している途上国政府が出す優先順位に準ずる「アライメント(政策への整合化)」

は、政府の優先順位を指している。これらの政策は、CSOと政府間の協力や、国におけるCSOの優先付

けなどとは関係なく、パートナーシップにおいてCSOが中央、地方政府の開発計画や優先順位に次第に、

無批判にアラインする方向になっている。

e) CSO開発効果の資金メカニズムの影響:ドナーとの関係と言えば、CSOの開発資金へのアクセスに関

連する関係であると理解されている。CSOは、CSOを通した(through CSO)、CSOへの(to CSO)開発資

金の調達に関して、現在のドナー政策の傾向に対して多くの懸念を表明している:

i) 長期にわたる遅延と予測不能な資金は、ドナー国の政策や優先順位が変更されることによって影響

をうけており、また公的ドナー機関に依存しているドナーCSOが(through CSOとして間接的に)資金を

受けとる場合に特に起こる。

ii) 進行中のCSOプログラムの管理や監督をする管理資金の欠如は、組織の継続や、地元有権者との

効果的な関与を可能にするコア資金の取得機会がほとんどないことを意味している。

iii) 単発のプロジェクト志向の競争的な資金は、途上国のCSOプログラムの戦略的計画を出す機会を

少なくし、開発プロジェクトの調達に多くの作業が伴い、資金拠出の選定は極めて競争的で、不明瞭、

不透明なメカニズムに陥る可能性がある。

iv)非常に高い調達コストは、プロ的なNGOのみが対処できるような複雑な資金条件を伴い、公的ドナー

やドナーとしてのCSOの間でその適用や報告要件などの統一性がほとんどない。

v) CSOの優先順位に対応した資金確保の機会の減少において、 (いくつかのドナーに限り)、「対応性

(Responsiveness)」はドナーのもつ多くの方法の一部に過ぎなくなっている。ドナーのCSO支援は、ドナ

ーの戦略枠組みと「契約する」こととされており、「正当性をもつ開発アクター」として自身の開発理論や

規範をもちながら、独自の役割、優先順位、取り組みを示すCSOを長期的なパートナーとして捉えること

はほとんどない。

vi)アカウンタビリティが実際には軽減する資金メカニズムである「結果重視管理(RBM)」は、開発成果

のためのアカウンタビリティについて幻想を抱かせている。実際に、RBMは 反復性を伴い、リスクや複

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雑な開発活動がある現場や、受益住民が開発により受けるインパクトを改善するための実践的な学習

などにはほとんど対応していない。

ドナーに対する最低基準の提案

以下の基準はオープンフォーラムのコンサルテーションで出されたものである。これはオープンフォーラ

ムプロセスにおいて、唯一で包括的な基準リストを提言しているものではない。9月下旬の世界大会はこ

れらの提案を進化、拡大し、最低基準に関してドナーと政府との協議を開始することを目的とする。

a) CSOの独立性

i. 独立性と自律性:ドナーは、CSOが公的ドナーや政府とは異なる使命や正当性をもつ開発アクターで

あることを認識し、CSOが組織的な独立性や自律性、また開発効果を高めるために、その役割や活動

を支援する政策や実践を作りあげるべきである。

ii. CSOの役割の多様性:ドナーは、CSO開発効果のためのオープンフォーラム、[OECD/DAC内] 援助

効果作業部会下にあるCSOと開発効果マルチステークホルダー助言グループで出された総合報告書

(2008年)の中のCSOの役割の多様性を認識し、支援する。いくつかのドナー国では、ドナーとCSOプラ

ットフォームとの間でパートナーシップ合意書が入念に作られている。

iii. CSOの誠実性と倫理的実践:ドナーは、誠実さと倫理的実践を示しているCSOと協働すべきである。

この誠実さと倫理的実践とは、開発においてCSOが自発的につくっている1つ、もしくはそれ以上の規

範やアカウンタビリティ文書、もしくはCSOが活動する特殊な条件に配慮したオープンフォーラムの開発

効果原則の実施などで表されている。

b) CSOを開発アクターとして支援するための一貫した政策

iv. 透明性と一貫した政策:ドナーは国レベルのプログラム実施計画を含む、ドナーの総合戦略枠組み

や計画の中にCSOの位置づけや役割を記した、明白で率直、一貫性のある政策を作らなければならな

い。これらの計画はCSOを正当性のもつ開発アクターであることを認め、関連するCSOアクターを含め

た協議を基本としなければならない。

v. ドナー戦略枠組みの最新情報の共有:ドナーはCSOとともに戦略的枠組みの修正をする場合、明確

で、透明性をもち、時宜を得てそれを行わなければならない。これにより、枠組みにあるプログラムにお

いてCSOが関連すると判断される場合、CSOが効果的に行動することができる。

vi. 開発途上国、および新興国のCSOが、現場での開発効果において主要なドライバーであることを認

識すること:ドナーやドナー国のCSOによって作られた政策は、途上国や新興国のCSOが現地で開発

効果をもたらすために、彼らを主要な組織でドライバーであると認識し、尊重しなければならない。

vii. 地元の知識や文化に根付いた能力を促進する:土着の文化、伝統、遺産に照らして地域の制度、

考え、能力を高める努力をしているCSOの取り組みを通じて、ドナー政策は地域の専門性や知識の活

用を認識し推進しなければならない。

viii. ジェンダー平等と女性の権利:全てのドナー政策を通して、ドナーは開発活動の中で、女性の参加

や女性の権利への配慮を中心的な重要課題と認識する。特にジェンダー平等や女性の権利の推進を

第一の使命としているCSOへの資金拠出を保障する。

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iv. ドナー助言委員会の構成:ドナーは、開発におけるCSOの役割を支援するため、特にドナーの政策

や運営実務へのアドバイスを提供するために設置された独立の助言委員会にはドナー国内外からの

CSOを含め、協議しなければならない。

e) 尊敬しあうパートナーシップ

x. CSOの使命と目的に基づくパートナーシップ: ドナーは、貧しく、取り残された人々の権利や物質的

環境、生計の向上や変化を促進させるため、CSOの組織的使命やプログラム目的に合致させて、CSO

との関係を築かねばならない。

xi. 対応型パートナーシップを第一にすること: CSOプログラムの取り組みや技術改良が発展的に効

果をあげられるよう、高い柔軟性と現地のオーナーシップを保障しつつ、ドナーは援助効果を達成する

ための政策、資金、運営上のメカニズムにおいてCSOの要望にすぐ対応できるパートナーシップを築く

ことを最優先しなければならない。

xii. 適切なプログラム戦略への構築に向けてカウンターパートであるCSOの権利を尊重するパートナー

シップ: ドナーは、パートナーであるCSOが独立した統治とプログラムを構築する権利を尊重した上で

パートナーシップ合意を結ばなければならない。ドナーは誠意をもって交渉し、パートナーであるCSOと

の相互貢献の合意を結ばねばならない。また、ドナーは納税者や受益者自身の要求に応じて作られた

CSOプログラムの自由度を著しく妨げる政策や資金上の運営条件を押し付けることは慎まねばならな

い。

xiii. 直接的、間接的資金: ドナー国外のCSOへの直接的な資金援助は、CSOが開発アクター、および

パートナーとして評価され、その使命、経験、プログラムの優先順位などを尊重するものでなくてはなら

ない。そのような資金援助は、CSOが生み出した長期にわたる団結に基づく国際的協働という独自の

貢献を尊重、強化して提供されなければならない。

d) 資金拠出の条件

xiv. CSO開発効果のための資金拠出条件: ドナーは変化するニーズ、反復性(1回限りでない)をもつ

CSOのプログラミングや技術革新に対応するよう、長期的な視点と柔軟的な条件をもって資金提供をし

なければならない。そのような資金拠出は、CSO開発効果に資するために、以下のような条件を特徴と

する。

ドナーはCSOの取り組みに即応し、予測可能で透明性の条件をもって複数年にわたる資金拠出を

優先させる。

ドナーは、自立的な地元のCSOへの革新的な支援を含め、多様なCSOアクターが利用できる公正

で透明性のある資金拠出メカニズムを作るための条件を設定する。

ドナーは自分たちや政府の勅令でなくCSOの取り組みに基づき、CSOとの協働、アライメント(政策

への整合化)、ハーモナイゼーション(調和化)への努力を促進する。

ドナーはCSOの開発活動に資金拠出するための法的環境の整備を進める。

ドナーは報告やモニタリングの手続きを簡素化し、ドナー協調の共同体を通して活動する。

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CSOを開発において持続性のある組織として強化するために、ドナーはCSO組織のための中核的

な資金を創出し増やしていく。

ドナーは枠組み、評価、報告、アカウンタビリティを共有し、開発の政策やアドボカシーの目的をもつ

CSO主導のCSO間戦略、マルチレベルの戦略的協働を作る努力を支援する。

ドナーは、特に小規模で、地域に根ざしたCSOがより効果的な開発を行えるよう、彼らの能力開発

の支援する。

ドナーが法的必要要件として国内議会への説明責任を果たすことは、柔軟性を確保し、受益者であ

るCSO納税者に対するより一層の説明責任を提供することにもなる。

ドナーは自分たちが想定する期待効果に関する説明責任より受益者住民へのインパクトを向上でき

る教訓に焦点をあてる。

xv. マルチドナーによるCSO信託基金への支援:ドナーは、CSOプラットフォームの管理下、もしくは共

同主導の下で、途上国においてマルチドナー信託基金を支援し、地元のCSOがこの資金に対して民主

的なオーナシップをもって管理を行う。ドナーの支援によるこのような取り組みは、CSOの自立性を醸成

し、リスクを共有する新手法を生み出し、CSOが共に活動し学びあうことで様々な能力、経験、専門性を

もつ機会を与え、地元の能力強化につながる。

xvi. 資金拠出の合意に関するアカウンタビリティや報告に関する適切な方式:ドナーは結果に基づく管

理(RBM)手法やロジカルフレームワーク分析(LFA)への依存を超えて、より幅広い、ダイナミックな報

告方式や多様なアクンタビリティ方法を考案すべきである。この方法により、CSOやドナーはCSOのもつ

特殊で、かつ共通の開発への取り組み、個別かつ集団的な取り組みなどをより効果的に報告をするこ

とができる。

ドナーへの報告やアカウンタビリティは、開発プロセスが長期的で、かつしばしば予期できない性質

をもつことを踏まえる。

ドナーはプログラムの修正や学習のための機会を提供し、強化する。

ドナーはCSOと共同、もしくはCSO監督のもとで、実施される評価とモニタリング活動の支援予算を

プロジェクト、プログラムの中に盛り込む。

CSOを支援するドナープログラムの結果に関する総合報告は、関連CSOとの協議を通して包括的な

プロセスで進める。

e) 透明性とグッドガバナンス(良い統治)

xnii. グッドガバナンスの原則の実践:ドナーは政策や実践において、透明性と明瞭さ、適時な情報の共

有、政策協議における包括性とアカウンタビリティ、一連の関係者の意見聴取などを確保し、パートナ

ーCSOとの関係においてグッドガバナンスの原則を実践しなければならない。

xviii. 地元CSOの情報へのアクセス: ドナーは援助の透明性を高める国際イニシアチブ(IAIT)で合意

された原則や実施計画に従い、途上国のCSOと市民がドナーのプロジェクトやプログラム、実施計画や

モニタリング報告書などを入手、-現地語での情報提供に配慮して- できるようにしなければならな

い。

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f) 政策対話と幅広い市民の関与

xix. 包括的な政策対話への支援:ドナーは、CSOと政府の公共政策担当官と多国間機関との間で、包

括的な政治・政策協議を強化し支援しなければならない。これは、政策に影響を及ぼすアドボカシー活

動の実施や、政策策定の協議に参加する能力などを含む。

xx. CSOのプラットフォームへの支援:政府やドナーがCSOの首尾一貫した政策提言内容に、より適切

に対応できるように、CSOの連合体や、CSOのネットワークやプラットフォームの組織活動、調査活動に

資金提供を行う。

xxi. 途上国での政策対話と参加:ドナーは、CSOを独自性をもって開発に貢献しうるアクターとして尊重

し、地方、中央の政府職員を含む開発関係者間による国主導の政策対話にCSOを含めるよう包括的に

推進する。ドナーは、CSOが推進する民主的オーナーシップや国際人権基準と一貫させる形で、途上

国の法的、規則的環境の整備のためにCSOと協働する。

xxii. 市民による関与活動への支援:ドナーは、市民による幅広い関与がCSO開発効果にとって必要不

可欠であることと理解する。ドナーとCSOは、以下に関する課題を定義し、市民を巻き込んでこれを推進

していく: 教育と意識向上、地球規模の重要問題、CSOと国際的カウンターパートによる開発のための

資源創出活動、開発活動の動員、政策問題や人権に関するアドボカシーなど。ドナーは、プログラム全

体の割合において、市民の幅広い関与活動を阻むのでなく奨励するよう、柔軟な指針をもって、市民関

与のための資源を割り当てなければならない。