cpap療法の最新事情 - respiration-sleep.com ·...
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� はじめに
2007年6月,ミネアポリスで開催された第25回
米国睡眠学会(AASM)において,2つの話題が大
きく注目された.1つは,complex sleep apnea
syndrome(complex SAS)である.閉塞性睡眠時無
呼吸症(OSA)のための CPAP治療により出現する
中枢性無呼吸が complex SASと定義された.こ
の complex SASのワークショップは立錐の余地
がないほど,参加者であふれていた.もう1つの
話題は,低呼吸の新しい基準についてである.低
呼吸が,4%の経皮酸素飽和度低下を伴う30%の
呼吸低下と,新たに再定義されたのである.
現在,2007年 AASMの推奨基準と呼ばれるこ
の新基準では,低呼吸の判定に脳波が必要なくな
った.また,米国の保健福祉省の内庁である
CMS(centers for medicare and medicaid services)
は,2008年,無呼吸低呼吸指数(AHI)の判定に2
時間以上の睡眠脳波の記録が必要であるとの条件
を外し,ポータブルモニター(簡易検査)による睡
眠検査においても CPAP療法を許可する方向性
を示した.
さらに,2011年度から公的保険制度下の CPAP
療法には大きな変革がもたらされた1).具体的に
は,①睡眠検査の前に必ず診察を行うこと,②終
夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)または簡易検査によ
る検査記録は,必ず医師により読まれなければな
らないこと,③CPAPの処方後は,12週間のアド
ヒアランスをチェックすること,の3項目である.
2012年度からは,民間保険制度も追従するとのこ
とである.日本とは異なり,米国における CPAP
療法は医師による CPAP処方で終了であった.
そのため,米国の医師には,これまでコンプライ
アンスという考え方が根づいてこなかった.今回
の変革により,米国の医師には,診療スタイルの
変容が要求されている.
これら大きな医療情勢の変化の中で,在宅医療
機器である CPAP装置も進化してきている.
CPAP療法の最新事情を2011年に登場した最新型
auto CPAP装置におけるベンチテストの結果を含
めながら,臨床呼吸器内科医の立場から概説する.
� OSAの新しい外来管理研究
2007年,成人における OSAの外来管理を確立
するために米国呼吸器学会(ATS),米国睡眠学会
(APSS),米国呼吸器医会(ACCP),欧州呼吸器学
会(ERS)による合同ワークショップが開催され
た2).現在 OSAの診断と治療には,ゴールドスタ
ンダードとされる睡眠検査室における PSGと
CPAPタイトレーションが必要とされている.し
かし,①時間・コストともに甚大であること,②
推定されている中等症以上の患者数を考慮すると,
年に10万人あたり2,310回の PSGが必要であるこ
と,③2002年時点で睡眠検査室が官民合わせて
1,355施設,年に人口10万人に対し590回の PSG
を行う能力しかないこと,などの問題点が提起さ
れた.
医療保険の立場からは,①良質なエビデンスが
睡眠医療 5:468―475,2011
* とくなが ゆたか:徳永呼吸睡眠クリニック内科・呼吸器科
CPAP療法の最新事情―マネージメント概念の変化に伴う機器の進化と今後の展望―
徳永 豊*
連載第�4回臨床医が語る
CPAP療法のディテール
468 睡眠医療 Vol.5 No.4 2011
OSAが疑われる患者
睡眠クリニック
睡眠検査室(スプリットナイト)PSG 在宅モニター検査
AHI<15
クリニックでのフォローアップ
睡眠検査室でのPSGにてAHI>15
睡眠検査室でのマニュアルCPAPタイトレーション
AHI<15
睡眠検査室でのPSG
在宅モニター検査にてAHI>15
在宅auto CPAPによるタイトレーション
タイトレーション結果に基づきCPAP圧決定
Auto CPAPタイトレーション結果に基づきCPAP圧決定
在宅CPAPのセットアップ
治療効果医療費コスト
ない現状で,簡易検査を疾患管理のパスとして評
価するための最もよい方法は何か?,②疾病管理
のパスの中で簡易検査が奏功しない場合,何を基
準に PSGの適応ケースと判断すればよいのか?
などの疑問点が出された.このワークショップで
得られたコンセンサスは,簡易検査の効用と対コ
スト効果を示すための結果評価に基づく研究
(outcome–bases research)が必要ということであ
った.このワークショップでまとめられた今後の
必要課題は,主に次の5点である.優先順位の高
いものから,①多施設間臨床研究を行うための適
切な研究ネットワークを創設すること,②臨床お
よび経済的評価のための前向き研究により得られ
るエビデンスに基づいた疾患管理モデルを確立す
ること,③外来管理に適した患者群を定義するこ
と,④OSAの診断や CPAPタイトレーションの
ための簡易検査について,センサー,信号制御,
データ解析の点から標準化すること,⑤OSAの
外来管理に関する臨床的な疑問点について,うま
く回答できるような適切な研究デザインを確立す
ること,である.
現在進行している PSGと簡易検査の使い分け
の研究デザインを示す(図1).これらの延長線上
として,AASMからは patient centered medical
home(PCMH)という概念のもと,今後の睡眠専
門医とプライマリーケア医との関わり方について
提案するレポートも出されている3).
� CPAPの変わらない点
CPAP装置の目的は,目標とする一定の陽圧を
上気道に持続的にかけることである.そのため,
CPAPの送風流量は吸気と呼気では異なっている.
吸気時には気道内圧が低下するために CPAPの
送風流量は増大し,呼気時には気道内圧が増加す
るために呼吸仕事量が増大してしまう.よって,
呼吸仕事量を可及的に減少させるため,呼気時の
CPAPの送風流量を速やかに減少させる必要があ
る.つまり,CPAP装置は一定の圧を保持すると
いうシンプルな概念に基づき,吸気および呼気の
送風流量コントロールを随時行っているのであ
る4).
加えて,この装置の特徴は,自発呼吸がないと
機能しないことにある.これにより,CPAPの送
図1 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する代替的な臨床マネージメントパス(文献2より改変引用)図中左の系は,これまでの標準的な睡眠検査室を経由したマネージメントパスを示す.右の系は,簡易モニターを応用したマネージメントパスを示す.
連載 臨床医が語るCPAP療法のディテール
睡眠医療 Vol.5 No.4 2011 469
風流量の増大が認められないとき,それは吸気が
行われていないということであり,つまりは無呼
吸状態を示している.よって,CPAPのフローパ
ターンを経時的にみていくだけで,無呼吸が起こ
っているかを簡単に判別できるのである.
� Auto CPAPのアルゴリズム
従来の auto CPAPのアルゴリズムは,フロー
パターンから無呼吸を感知すると,まず CPAP
の圧力を上昇させる.これにより無呼吸が改善す
る場合は「閉塞性」と判断し,無呼吸が改善しな
い場合は「中枢性」と判断して圧の上昇を停止さ
せる.しかしながら,CPAPの圧力上昇により閉
塞性と中枢性を判別する方法には,夜間の中途覚
醒をもたらす可能性がある.また,ヘーリング・
ブロイエル反射(Hering–Breuer reflex)を引き起
こし,中枢性無呼吸を起こす可能性もある.これ
らを予防するため,無呼吸を感知して圧を自動的
に上昇させていく auto CPAPは,ほとんどの機
種において10cmH2O以上の圧をかけないような
設定がなされている.これを auto CPAPの
apnea capという.したがって auto CPAPが10
cmH2O以上の圧をかけていくのは,明らかな閉
塞性イベントである呼吸パターン(フローリミテ
ーション,いびき)が認められる場合だけである.
しかしながら,auto CPAPによるタイトレーショ
ンの信頼性は睡眠検査室での監視下 PSGによる
CPAPタイトレーションに比較すると,低いこと
に留意が必要である5).
� 最新型auto CPAPの無呼吸認識のアルゴリズム
最新型の auto CPAPは,CPAPの圧を増大せ
ずに,閉塞性無呼吸か中枢性無呼吸かを判別する
独自の機能を有している.各社異なる手法を用い
ているが,その基本的なロジックは,閉塞性無呼
吸を気道閉塞,および中枢性無呼吸を気道開存と
認識することにある.
ResMed社の S9では,無呼吸が4秒以上続く
と上下に1cmH2O振幅の圧力を4Hz間隔でかけ,
その振幅に対する患者側からの圧とフローの変化
情報を認識して判別を行っている.この機能はマ
スク装着時に模擬的に4秒以上息止めを行うと振
幅波を体感することができるので,実際に試して
みることをお勧めしたい.さらに,心拍数変動を
フロー波形に感知すれば,気道開存と判断するロ
ジックも有している.Philips Respironics社の
REMstar Auto System Oneでは,無呼吸が6秒以
上続くと,2cmH2Oのパルス圧を発生させるこ
とにより,そのレスポンスから中枢性を判別して
いる.模擬的に6秒以上息止めを行うとパルス波
を体感することができる.このパルス圧波形は経
時的に内蔵メモリーに記録されている.フローパ
ターン記録とあわせて直前夜の8時間記録が6分
間隔で視認できるため,auto CPAPの効果判定に
大変有用である.日本製 CPAPであるメトラン
社のジャスミンでは,内蔵スピーカーから非可聴
域音を発生させて,気道の反響音から中枢性を判
別している.最近認可されたドイツ製Weinmann
社の SOMNObalanceでは,閉塞性無呼吸が解除
された直後の呼吸変動を選別し,中枢性との鑑別
を行っている.
� 最新型auto CPAPの吸気フロー認識と圧動作
最新型 auto CPAPは,吸気フローパターン認
識により auto CPAPの圧動作を規定している(図
2).吸気フローがない場合は無呼吸と判断し,
前述した様々な独自技術で閉塞性か中枢性かを判
別,閉塞性無呼吸(OSA)と判別した場合のみ
auto CPAPの圧を上昇させる.吸気フローがある
場合は,吸気フローリミテーションの有無の判別
を行っている.通常,気道狭窄が起こると,吸気
フローリミテーションが発生する.吸気フローリ
ミテーションは OSAの前駆症状である6).
最新型 auto CPAPでは,この吸気フローリミ
テーションに対し,早期治療介入を行っている.
すなわち,正常呼吸の正弦波形に戻すように吸気
流量を増大して,圧を連続的に上昇させている.
最新型 auto CPAPのタイトレーションは,圧レ
ベルだけでなく流量を補正するという新しい考え
方に立脚しているのである.
また,吸気フロー認識と吸気補正だけでなく,
470 睡眠医療 Vol.5 No.4 2011
一定 一定増加 増加増加
正常呼吸 フローリミテーション(気道狭窄)
いびき(気道振動)
閉塞性無呼吸(気道閉塞)
中枢性無呼吸(気道開存)
Auto CPAPにより認識されるフローパターン
Auto CPAPの圧動作
呼気についても配慮がされてきている.CPAPの
本質的な問題である呼気圧負荷による呼気仕事量
の増大を軽減するために,呼気圧軽減機能が選択
できるようになっている.
いびきについては相対的気道狭窄による気道振
動と考え,auto CPAPの圧を上昇させて対応して
いる.
� 最新型auto CPAPのベンチテスト
最新型 auto CPAP3機種を用いたベンチテスト
の結果を示す7).熟練した検査技師監視下の実際
の PSG記録をもとにした呼吸パターンを,実験
的テスト肺にシミュレートしている.実験的テス
ト肺に auto CPAPを接続し,閉塞性呼吸イベン
トに対する経時的な auto CPAP圧のレスポンス
を測定している.①正常呼吸30分間,次に②各々
の閉塞性呼吸イベント30分間(無呼吸,フローリ
ミテーション,フローリミテーションを伴った低
呼吸,いびき),その後③正常呼吸90分のプロト
コール,である(図3).
閉塞性無呼吸テスト(図4)では,ResMed社 S
9の応答性が高く,10分以内に20cmH2Oに達し
ている.Apnea capのロジックが設定されていな
いのがわかる.また正常呼吸後に10cmH2O以下
に減圧するのに45分以上かかっており,4cmH2O
に復帰するには90分かかっている.Philips Respi-
ronics社の System Oneでは,正常呼吸のときか
ら圧を定期的に上昇させている.11cmH2Oに達
するのに10分以上かかり,その後9cmH2Oまで
減少した後,プラトーから次第に圧を増大させて
いる.フィッシャーパイケル(F&P)社の Icon Auto
(2012年度認可予定)では,2分以内に7cmH2O
まで到達し,5分のプラトーに続き10cmH2Oま
で急に圧を上昇させた後,プラトーとなっている.
System Oneと Icon Autoでは4cmH2Oレベルま
で30分で復帰している.System Oneと Icon Auto
には,apnea capが設定されている.
フローリミテーションテスト(図5)では,Res-
Med社の S9が2分で,Icon Autoは15分以内で
20cmH2Oに達している.また S9と Icon Autoは
4cmH2Oに復帰するのに90分近くかかっている.
これとは対照的に,System Oneはフローリミテ
ーションには30分で8cmH2Oの緩徐な速度で上
昇し,20分で4cmH2Oに復帰している.
次に,フローリミテーションを伴う低呼吸テス
ト(図6)では,S9および Icon Autoは15分以内
に20cmH2Oに達している.System Oneは30分で
図2 最新型 auto CPAPのフローパターン認識と圧動作最新型 auto CPAPは,吸気フローパターンを認識する.フローを感知しなくなると,独自のメカニズムで閉塞性と中枢性無呼吸の判別を行う.閉塞性では圧を継続的に上昇させる.中枢性では圧を上昇させない.さらに,上気道閉塞の前駆状態としてフローリミテーションおよびいびきを認識する.最新型 auto CPAPには,フローリミテーションへの早期治療介入を目標として,吸気流量を補正し,圧を連続的に上昇させるタイプがある.
連載 臨床医が語るCPAP療法のディテール
睡眠医療 Vol.5 No.4 2011 471
正常呼吸
フローリミテーション
無呼吸
フローリミテーションを伴う低呼吸
いびき(いびきの吸気フローにいびき音を付加)
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sec
lpm
lpm
lpm
lpm
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-20-40-60
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sec0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
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sec0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
13cmH2Oまで上昇,4cmH2Oへの復帰には15分
程度を要している.
いびきテスト(図7)では,S9は11cmH2Oまで
上昇しプラトーとなっているのに対し,Icon
Autoは無反応である.また System Oneは5分
で8cmH2Oに達し,徐々に圧を上昇させている.
閉塞性呼吸イベントに対して圧を上げる最新の
auto CPAPのベンチテストの結果をみると,イベ
ントに対して迅速に対応する能力は向上している
ことがわかる.しかし,医学的見地からすると,
CPAPレスポンスが認められない場合に上限まで
圧を上昇させ,その圧を維持するロジックには今
後検討が必要と考えられる.
� 最新型auto CPAPをどのように使うか
前述してきたように,最新型 auto CPAPでは
中枢性,閉塞性の判別能が向上している.この機
能は患者の呼吸状態の改善に寄与するだけでなく,
特に中枢性優位の患者において auto CPAPデー
タを中枢性,閉塞性イベントの経時的評価法とし
て応用することが可能となったともいえる.一方,
近年循環器疾患の睡眠呼吸障害へのアプローチと
して呼気圧(EPAP)を自動制御し,中枢性の無呼
図3 呼吸フローパターン(文献7より改変引用)実際の PSGデータより抽出された呼吸イベントをもとにシュミレーションされた呼吸フローパターン.
472 睡眠医療 Vol.5 No.4 2011
閉塞性無呼吸 正常呼吸 正常呼吸 正常呼吸正常呼吸
ICON Auto System One REMstar AutoS9 Auto
Pressure(cm H2O)
Time(h:mm)
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フロ-リミテーション 正常呼吸 正常呼吸 正常呼吸正常呼吸
ICON Auto System One REMstar AutoS9 Auto
Pressure(cm H2O)
Time(h:mm)
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吸やチェーン―ストークス呼吸を改善する adap-
tive servo–ventilation(ASV)が急速に注目を集め
ている8).診断,評価機能の点から auto CPAPと
ASVを比較すると,auto CPAPには自発呼吸が
維持されているため,治療へのレスポンス変化を
容易に評価することができるという利点がある.
心疾患患者にも閉塞性優位の者が含まれているこ
とから,まず最新型 auto CPAPを処方して治療
介入へのレスポンスを評価した後,ASVの適応
を検討するという管理パスも有効であると考えら
れる.
また,ベンチテストの結果から,ResMed社の
S9や F&P社の Icon Autoはフローリミテーショ
ンおよび低呼吸を伴うフローリミテーションに対
して積極的に吸気流量補正を行い,治療介入しよ
うとする次世代のロジックを有しているのがわか
る.筆者はフローリミテーション補正が早い S9
を用いる際,患者の鼻腔通気度が不良の場合には,
図4 最新型 auto CPAP装置の圧動作(閉塞性無呼吸テスト)(文献7より改変引用)
図5 最新型 auto CPAP装置の圧動作(フローリミテーションテスト)(文献7より改変引用)
連載 臨床医が語るCPAP療法のディテール
睡眠医療 Vol.5 No.4 2011 473
20
18
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14
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Time(h:mm)2:00
System One REMstar AutoS9 AutoICON Auto
Pressure(cm H2O)
フロ-リミテーション+低呼吸 正常呼吸 正常呼吸 正常呼吸正常呼吸
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System One REMstar AutoS9 AutoICON Auto
Pressure(cm H2O)
いびき正常呼吸 正常呼吸 正常呼吸正常呼吸
まず座位で CPAPを試行し,次に仰臥位に移り
CPAPレスポンスを観察している.加えて S9は
apnea capがないため,初期設定には留意が必要
である.
Philips Respironics社の System Oneは,睡眠検
査室での CPAPタイトレーションをシミュレー
ションするようなロジックを有していると考えら
れる.System Oneはフローリミテーション補正
には慎重である.
筆者は,診察した患者の呼吸イベントの生記録
(特にワーストイベント)をもとに,auto CPAPの
選択を行っている.さらに OSA患者の自他覚症
状と CPAPレスポンス記録を参考に,毎月の指
導管理を行っている.最新型 auto CPAPをどの
ように使うかは,今後の様々な外来管理研究の検
討が待たれるところである.睡眠検査室でも,
CPAPタイトレーションにおいて至適圧だけでな
く,吸気流量補正の視点が必要となってくるもの
図6 最新型 auto CPAP装置の圧動作(フローリミテーションを伴う低呼吸テスト)(文献7より改変引用)
図7 最新型 auto CPAP装置の圧動作(いびきテスト)(文献7より改変引用)
474 睡眠医療 Vol.5 No.4 2011
と考えられる.
� おわりに
CPAP療法のコンプライアンスに対する概念が
希薄であった欧米の昨今の取り組みに対し,日本
では既に1998年に国民皆保険制度のもと,アドヒ
アランスという概念を含有した CPAP療法が保
険適応となっている.これは,唯一日本だけが
CPAP療法のアドヒアランスを国および医療関係
者の努力によって保険制度上で確立してきたとい
うことである.
また最新の auto CPAP装置では,フローリミ
テーションへの早期治療介入が行えるようになっ
た.このことは OSAの診断・治療において,
CPAPの圧だけでなく流量への考慮も必要になっ
てきたということである.CPAP装置のレスポン
スについても,一呼吸ごとのフローパターン記録
が可能となったことにより,各症例の呼吸モニタ
リングが一層容易になってきている.SAS診療
に関わる者にとって,CPAPの技術革新が管理上
のモニタリング機能および治療機器としての機能
向上をもたらしている反面,その機能を効果的か
つ安全に活用するためには,生体の呼吸生理と機
器特性のより深い理解が求められる時代が到来し
てきているともいえるだろう.
文 献
1)Local coverage determination(LCD)for positiveairway pressure(PAP)devices for the treatmentof obstructive sleep apnea(L11518)6/1/2011.(https:// www . virtuox . net / dyndocs / Documents /LCDforPAP.pdf)
2)An official ATS/AASM/ACCP/ERS workshop re-port:Research priorities in ambulatory manage-ment of adults with obstructive sleep apnea. ProcAm Thorac Soc 2011;8:1―16.
3)Strollo PJ et al:The future of sleep medicine.Sleep 2011;34:11613―11619.
4)徳永 豊:医療機器としての CPAPとその仕組み.睡眠医療 2011;5:83―89.
5)山城義広:CPAPの処方圧と自動タイトレーションの問題点.睡眠医療 2011:5;337―342.
6)Beninati W and Sanders MH:Optimal continuouspositive airway pressure for the treatment of ob-structive sleep apnea/hypopnea. Sleep Med Rev2001;5:7―23.
7)Rovert McCoy, Ryan Diesem:A Bench Compari-son of Three Auto–Adjusting Positive AirwayPressure Devices:Response to Apnea, Hypopnea,Flow Limitation and Simulated Snore. Valley In-spired Products Inc, March 18,2011.
8)Javaheri S:The performance of two auto-matic servo–ventilation devices in the treat-ment of central sleep apnea. Sleep 2011;34:1693―1698.
連載 臨床医が語るCPAP療法のディテール
睡眠医療 Vol.5 No.4 2011 475