点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出...

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点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出と修繕予算の配分 吉田 武 1 1 国立研究開発法人土木研究所 道路技術研究グループ(〒305-8516 つくば市南原1-6E-mail: [email protected] 予算配分における客観性と公平性を確保するために,管理区間における修繕需要を定量的に表現する指 標が求められている.舗装点検要領の下では多様な点検方法が可能であり,道路管理者は点検により得ら れる情報と必要なコストを勘案した上で点検方法を選択することができる.本研究では,各管理区間にお ける診断区分IIIの施設数量により按分することで修繕予算の配分比を決定する方法を提案する.区分III施設数量は区分IIIに係る区分比率である不良率を全施設数量に乗じることで得られるため,点検方法の多 様化に対応した管理区間の不良率の算出方法を明らかにする.さらに,主要幹線道路における既存の実測 データを用いた適用事例を通じて,算出方法が予算配分比に及ぼす影響を実証的に分析する. Key Words : maintenance quality assurance, method of attributes, method of variables, performance measurement, visual inspection 1. はじめに 表層等のきめ細かな管理を通じた舗装の長寿命化,す なわち表層等の適時修繕による路盤以下の層の保護等を 通じた長寿命化を目的とした舗装点検要領が,2016 に国土交通省により策定され全道路管理者に通知され 1) .点検・診断・措置・記録のメンテナンスサイクル を機能させるためには措置の実施を担保する予算の確保 が必要である.財政の厳しい道路管理者のように全ての 修繕需要に見合う予算を確保できるとは限らない場合に 重視すべきは,予算配分における客観性と公平性の確保 である.従前の予算配分には各管理区間の全施設数量に よる按分あるいは過年度予算額に一定の係数を乗じるも のもあり,管理区間における修繕需要を定量的に表現す る指標が求められている. 舗装点検要領は診断の区分を I (健全),II (表層機 能保持段階),III (修繕段階)と三分法的(trichotomous に規定しており,管理区間の修繕需要を当該区間におけ る区分 III の施設数量により表すことができる.一方で, 舗装点検要領のベースとなった舗装マネジメントの考え 方は,大型車交通量や走行速度により求められるサービ スレベル等が異なり,それらに応じた管理が必要となる というものである 2) .道路管理者が現状を考慮して適切 な管理基準やマネジメントシステムの構築を図れるよう にするために 3) ,舗装点検要領は,道路の分類,管理基 準・使用目標年数の設定,点検頻度・点検手法の設定等 について道路管理者の判断に委ねている.このため舗装 点検要領の下では多様な点検方法が可能であり,道路管 理者は点検により得られる情報と必要なコストを勘案し た上で点検方法を選択することができる. 本研究では,舗装点検の結果は客観的であるとの立場 から,各管理区間における区分 III の施設数量により按 分することで修繕予算の配分比を決定する方法を提案す る.区分 III の施設数量は区分 III に係る区分比率である 不良率(Percent Defective: PD)を全施設数量に乗じるこ とで得られるため,点検方法の多様化に対応した管理区 間の PD (以下,「管理区間 PD」という)の算出方法を 明らかにする.さらに,上記の道路管理者による点検方 法の選択にあたり根拠となり得る技術的知見を提供する ために,管理区間 PD の算出方法が予算配分比に及ぼす 影響を確認する.PD の観点は既にマネジメントシステ ムを構築している道路管理者にも有用であり,本研究で 提案する方法は既存システムにも適用できるものを目指 している. 以下,第 2 章で,本研究における基本的な考え方とし て,診断区分と PD,道路管理者の判断,本研究の位置 付けについて整理する.第 3 章で,管理区間 PD の算出 方法を明らかにする.第 4 章で,主要幹線道路における 既存の実測データを用いた適用事例を通じて,管理区間 PD の算出方法が管理区間 PD と予算配分比に及ぼす影

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点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出と修繕予算の配分

吉田 武1

1国立研究開発法人土木研究所 道路技術研究グループ(〒305-8516 つくば市南原1-6)

E-mail: [email protected]

予算配分における客観性と公平性を確保するために,管理区間における修繕需要を定量的に表現する指

標が求められている.舗装点検要領の下では多様な点検方法が可能であり,道路管理者は点検により得ら

れる情報と必要なコストを勘案した上で点検方法を選択することができる.本研究では,各管理区間にお

ける診断区分IIIの施設数量により按分することで修繕予算の配分比を決定する方法を提案する.区分IIIの施設数量は区分IIIに係る区分比率である不良率を全施設数量に乗じることで得られるため,点検方法の多

様化に対応した管理区間の不良率の算出方法を明らかにする.さらに,主要幹線道路における既存の実測

データを用いた適用事例を通じて,算出方法が予算配分比に及ぼす影響を実証的に分析する.

Key Words : maintenance quality assurance, method of attributes, method of variables, performance measurement, visual inspection

1. はじめに

表層等のきめ細かな管理を通じた舗装の長寿命化,す

なわち表層等の適時修繕による路盤以下の層の保護等を

通じた長寿命化を目的とした舗装点検要領が,2016 年

に国土交通省により策定され全道路管理者に通知され

た 1).点検・診断・措置・記録のメンテナンスサイクル

を機能させるためには措置の実施を担保する予算の確保

が必要である.財政の厳しい道路管理者のように全ての

修繕需要に見合う予算を確保できるとは限らない場合に

重視すべきは,予算配分における客観性と公平性の確保

である.従前の予算配分には各管理区間の全施設数量に

よる按分あるいは過年度予算額に一定の係数を乗じるも

のもあり,管理区間における修繕需要を定量的に表現す

る指標が求められている.

舗装点検要領は診断の区分を I(健全),II(表層機

能保持段階),III(修繕段階)と三分法的(trichotomous)

に規定しており,管理区間の修繕需要を当該区間におけ

る区分 III の施設数量により表すことができる.一方で,

舗装点検要領のベースとなった舗装マネジメントの考え

方は,大型車交通量や走行速度により求められるサービ

スレベル等が異なり,それらに応じた管理が必要となる

というものである 2).道路管理者が現状を考慮して適切

な管理基準やマネジメントシステムの構築を図れるよう

にするために 3),舗装点検要領は,道路の分類,管理基

準・使用目標年数の設定,点検頻度・点検手法の設定等

について道路管理者の判断に委ねている.このため舗装

点検要領の下では多様な点検方法が可能であり,道路管

理者は点検により得られる情報と必要なコストを勘案し

た上で点検方法を選択することができる.

本研究では,舗装点検の結果は客観的であるとの立場

から,各管理区間における区分 III の施設数量により按

分することで修繕予算の配分比を決定する方法を提案す

る.区分 IIIの施設数量は区分 IIIに係る区分比率である

不良率(Percent Defective: PD)を全施設数量に乗じるこ

とで得られるため,点検方法の多様化に対応した管理区

間の PD(以下,「管理区間 PD」という)の算出方法を

明らかにする.さらに,上記の道路管理者による点検方

法の選択にあたり根拠となり得る技術的知見を提供する

ために,管理区間 PD の算出方法が予算配分比に及ぼす

影響を確認する.PD の観点は既にマネジメントシステ

ムを構築している道路管理者にも有用であり,本研究で

提案する方法は既存システムにも適用できるものを目指

している.

以下,第 2章で,本研究における基本的な考え方とし

て,診断区分と PD,道路管理者の判断,本研究の位置

付けについて整理する.第 3章で,管理区間 PDの算出

方法を明らかにする.第 4章で,主要幹線道路における

既存の実測データを用いた適用事例を通じて,管理区間

PD の算出方法が管理区間 PD と予算配分比に及ぼす影

Page 2: 点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出 …点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出と修繕予算の配分 吉田 武1

響を実証的に検証する.第 5章は,本研究で論じた内容

のまとめ,および今後の課題と検討の方向である.

2. 本研究における基本的な考え方

(1) 診断区分とPD

舗装点検要領は,診断の区分として I(健全),II

(表層機能保持段階),III(修繕段階)を規定しており,

管理区間の修繕需要を当該区間における区分 III の施設

数量により表すことができる.区分 III を「管理基準に

照らし,それを超過している又は早期の超過が予見され

る状態」と定義しており,管理基準は区分 II と区分 III

の境界すなわち区分 II の上限規格値となる.一定延長

の区間において点検で得られた情報すなわち舗装の状態

を表す指標の測定値(以下,「測定データ」という)が

複数存在する場合,図-1 に示すような測定データの度

数分布が得られる.健全性の診断は,道路管理者が設定

した管理基準に照らし,点検で得られた情報により,適

切になされるものである.本研究では,診断区分が管理

基準と測定データにより決定されるものとする.こうす

ることで,度数分布の部分割合により診断区分の比率が

決まり,診断区分別の施設数量は全施設数量に当該比率

を乗じることで得られる.また,注目する一定延長の区

間の全体が同一のパフォーマンスカーブにより特徴付け

られるものとする.本研究では,管理区間の修繕需要を

当該区間における区分 III の施設数量により表し,次式

で定義される比率を不良率(Percent Defective: PD)と呼

ぶ.

100

whole

defective

Q

QPD (1)

ここで,PD:不良率(%),Qdefective:不良とされた施設

数量,Qwhole:全施設数量.

規格値の満足・不満足という二分法的(dichotomous)

な観点から,PD とは規格値を満足しない百分率,基準

内率(Percent Within Limit: PWL)とは規格値を満足する

百分率を指す.規格値には,維持管理指数(Maintenance

Control Index: MCI)の判断基準「5以上であれば望ましい

管理水準,4 以下であれば修繕が必要,3 以下であれば

早急に修繕が必要」4)のような下限規格値(Lower Specifi-

cation Limit: LSL)と,ひび割れ率,わだち掘れ量,平た

ん性による補修要否判断の目標値 5)のような上限規格値

(Upper Specification Limit: USL)がある.米国交通調査委

員会(Transportation Research Board: TRB)によれば,品質

保証(Quality Assurance: QA)とは製品や施設が要求され

た品質を満足していることを保証するのに必要な証拠を

提供する活動であり,品質を定量化するために確立され

た尺度には PD,PWL,品質指数(Quantify index)が含ま

図-1 舗装の診断区分と測定データの度数分布

れている 6).品質指数は標本の平均と標準偏差を規格値

に関連付けたものであり,適切な表とともに用いること

で PD や PWL を推定することができる.米国連邦道路

庁(Federal Highway Administration: FHWA)は,施工に係

る品質保証における 善の指標として,母集団の中心と

散らばりの数値的尺度を与える PWL の使用を推奨して

いる 7), 8).PWL は性能規定型契約の精算におけるボーナ

ス,ペナルティ等を決定する支払い係数(pay factor)の

算出にも用いられる.日本では八谷 9)が,空港舗装にお

ける施工性能の定量化のために,表層アスファルト混合

物のコアの締固め度データに対して PWL を用いた評価

を行っている.維持管理の分野では米国諸州が,道路施

設に係る独自の維持管理品質保証(Maintenance Quality

Assurance: MQA)プログラムにおいて,施設特性の評点

化に PD あるいは PWL を用いている.複数の評価単位

区間(各 160m)からなる管理区間の PD を求める方法

には method of attributes(以下,「属性法」という)と

method of variables(以下,「変量法」という)がある.

舗装の場合,属性法は評価単位区間内の損傷の有無に着

目し,損傷があれば当該評価単位区間は不良と評点化さ

れる.変量法は評価単位区間内の損傷の延長に着目し,

当該延長の 160m に対する割合により当該評価単位区間

が評点化される.全数調査の場合の管理区間 PD は,属

性法では不良区間数の全区間数に対する割合で与えられ,

変量法では全損傷延長の管理区間延長に対する割合で与

えられる 10).Schmitt et al.11)は,MQAプログラムに適用で

きる統計学の知見を整理するとともに,区間推定された

PD の信頼限界を基準値と比較することで管理区間の合

否を判定する方法を提案した.

(2) 道路管理者の判断

舗装点検要領は,道路の分類,管理基準・使用目標年

数の設定,点検頻度・点検手法の設定等について道路管

理者の判断に委ねている.

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評点化

の方法

点検手法 評価単位区間

データ 第 1 第 2 第 3 第 4 管理区

間PD

変量法

機器を用いた手

法 複数の測定デ

ータ 3/20

15%

目視による診断

と延長測定 PD 0% 40% 20% 0%

60/4 15%

属性法 目視による診断

のみ 基準内・不良

の別 基準内 不良 不良 基準内

2/4 50%

注)管理区間は第 1~第 4の 4つの評価単位区間よりなる.複数の測定データは評価単位区間内の 5測定点のものであり,区

分 Iを緑色,区分 IIを黄色,区分 IIIを赤色で示す.区分 IIIを不良とみなす.

図-2 評点化の方法,点検手法および評価単位区間データの関係ならびに管理区間PDの例

a) 評点化の方法

舗装点検要領は,「記録する単位(延長等)は道路の

特性等に応じて,道路管理者が適切に設定すること」と

しており,診断区分が同一な区間を軸に,対象車線を区

分していくことが基本と考えられる.橋梁およびトンネ

ルの点検要領は,健全性の診断の単位を 2段階で設定し

ている.橋梁については部材単位と道路橋毎,トンネル

については変状等とトンネル毎である.構造物毎の健全

性の診断は,構造物の管理者が保有する構造物全体の状

況を把握するなどの目的で行うものである.一般には,

構造物の性能に影響を及ぼす主要な部材あるいは利用者

や構造物の機能に影響を及ぼす変状等に着目して, も

厳しい健全性の診断結果で代表させることができる,と

している 12), 13).本研究における評価単位区間が構造物毎

に相当するものとし,先述の評点化の方法に照らせば,

個々の損傷に着目する変量法と も厳しいもので代表さ

せる属性法の思想が見受けられる.2013 年に実施され

た道路ストックの総点検において国土交通省が示した方

針は,市町村は概ね 100m 毎の評価単位区間内の平均的

なひび割れ率(度),わだち掘れ量,IRI を評価するこ

と 14),直轄国道では調査結果の整理は管理単位延長

(100m)ごとに行うこと,およびわだち掘れ量は 20m

ごと 5 断面の外側わだち部と内側わだち部の 10 個の値

より 大値と平均値を計算すること 15) ,であった.修

繕需要を明らかにするためには,損傷の程度と範囲を把

握する必要がある.しかし,主要な路面特性として測定

されることの多い,ひび割れ,わだち掘れ,縦断凹凸は,

評価単位区間の平均値の形で評価に用いられる.図-1

に示すように,評価単位区間平均値は,当該区間におけ

る複数の測定データを必要としながら,評価においては

部分的な損傷に係る情報を提供し得ない.評価単位区間

大値では損傷の程度は把握できるが範囲は不明である.

評価単位区間の細分化はデータの増加を伴い,記録の煩

雑化をもたらす.

本研究では,従前のマネジメントシステムの枠組みを

踏まえ,管理区間が複数の評価単位区間により構成され

るものとする.評価単位区間の延長を 100m とし,評価

単位区間毎に点検と診断の結果が記録されるものとする.

評点化の方法として属性法と変量法を用いる.

b) 点検手法

舗装点検要領は,点検手法について「目視又は機器を

用いた手法など道路管理者が設定する適切な手法」と規

定している.機器を用いた手法により,例えば 20m 間

隔のわだち掘れ量のように評価単位区間あたりに複数の

測定データが得られ,変量法による評点化が可能となる.

目視による診断により,評価単位区間あたりの基準内・

不良の別が得られ,属性法による評点化が可能となる.

亀山らは,100m の評価単位区間の損傷レベルを 3 段階

(小・中・大)で判定する目視点検として歩きながら点

検する歩行点検と走行車両から点検する走行点検の 2方

法を考え,走行点検でもスクリーニングを目的とした舗

装の一次点検としては実用に値する精度であることを検

証した 16).目視点検による場合,損傷の程度と範囲の両

方に誤差を含む可能性がある.しかし,機器を用いた場

合も,離散的に配置された測定点以外の部分は測定され

ないため,同様の誤差を含む可能性がある.

本研究では,目視点検により評価単位区間における基

準内・不良の別という二分法的な識別とその大まかな延

長割合の把握が可能であるとの立場から,目視による診

断と延長測定を点検手法に加える.

これまでに述べた評点化の方法,点検手法および評価

単位区間データの関係ならびに管理区間 PD の例を図-2

に示す.評価単位区間データとして,複数の測定データ

とは,機器を用いた手法により,ある 1つの評価単位区

間内の複数の箇所で得られた例えばわだち掘れ量である.

PD とは,ある 1 つの評価単位区間内の例えばわだち掘

れの分布から推定される,評価単位区間の PD である.

基準内・不良の別とは,ある 1つの評価単位区間が基準

内と考えられるか,不良と考えられるかという二分法的

な評点である.点検手法として機器を用いた手法を選択

した場合,評価単位区間データとしての複数の測定デー

タ,PD,基準内・不良の別,さらには当該評価単位区

間の平均値や 大値を求めることができるが,相応のコ

ストが必要となる.目視点検により評価単位区間内の不

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良部分の識別とその大まかな延長割合の把握が可能であ

るとの本研究の立場については既に述べた.目視による

診断と延長測定とは,例えば図-2の第 2評価単位区間に

おいて不良部分の範囲が 40%程度であると把握すること

である.評価単位区間データとして PD を用いることに

より,例えば図-2の第 2と第 3評価単位区間のように,

属性法による評点では同等とされた複数の評価単位区間

の損傷の範囲を比較できる.管理区間 PD については属

性法が変量法よりも高い値となる.これは,属性法では

不良とされた評価単位区間に存在する基準内部分が管理

区間 PDに反映されないためである.

c) 調査の方法

舗装点検要領は,計画的な点検を規定しており,単年

度ではなく計画的に管内の道路を網羅していく考え方と

なっている.当年度点検の対象でない区間のデータにつ

いて,従前のマネジメントシステムでは,過年度の測定

データと予測式により補完するものが一般的である.施

設の状態・性能に関するネットワークレベルでの点検結

果の蓄積と予測に基づき,管理水準とライフサイクルコ

スト(LCC)の観点から 適な計画立案と予算配分を行

うマネジメントの一例である.相応の予算と技術を要す

るこの方式が全ての道路において適当であるとは限らな

い.また,この方式であっても新規に導入する場合には,

ベースラインとなる過年度の測定データを全ての評価単

位区間について揃えるには点検 n箇年計画の一巡を待た

ねばならない.管理区間の修繕需要を表す区分 III の施

設数量は,全ての評価単位区間の診断区分が与えられた

場合には区分 III とされた部分の施設数量の総和として

得られるが,そうでない場合には別の方法が必要となる.

本研究では,区分 IIIの施設数量は全施設数量に PDを

乗じることで得られることと,標本の平均と標準偏差を

規格値に関連付けた品質指数を適切な表とともに用いる

ことで PD を推定できることに着目する.舗装点検要領

は管内の道路を分類 A~Dに区分することとしているが,

管理区間は区分された道路であり母集団として推定でき

るものとする.調査の方法として,推定を用いる標本調

査と用いない全数調査を区別する.管理区間のデータは,

過年度に点検された評価単位区間のデータの有無と予測

式の有無により,当年度点検によるもの,過年度データ

と予測式によるもの,当年度データを標本とする推定に

よるものの 3つに類型化される.例えば図-3に示すよう

に点検 9箇年計画の 5年目の場合,予測式が存在すれば

4 年目までの点検データを用い予測式による部分と 5 年

目の点検データを用いて推定する部分が混在する.計画

が一巡目でない等により過年度データが完全であり,か

つ予測式が存在すれば全数調査となる.予測式が存在し

なければ,過年度データの有無に関わらず,当年度点検

によるもの以外は推定によらざるを得ない.

予測式

有り

予測式

無し

過年度データ

完全

1 2 3

6 5 4

7 8 9

1 2 3

6 5 4

7 8 9

過年度データ

不完全

1 2 3

6 5 4

7 8 9

1 2 3

6 5 4

7 8 9

注)着色された 9つのセルは評価単位区間の群を表し,数字は

点検の順序を表す.例示は点検 9箇年計画の 5年目の場合で

ある.

凡例 i 当年度点検による

i 過年度データと予測式による

i 当年度データを標本とする推定による

図-3 管理区間データの類型化

(3) 本研究の位置付け

道路舗装に係る点検・診断・措置・記録のメンテナン

スサイクルを機能させるためには措置の実施を担保する

予算の確保が必要である.実施部局は所管する管理区間

の修繕需要に応じた修繕予算を配分される.財政の厳し

い道路管理者のように全ての修繕需要に見合う予算を確

保できるとは限らない場合に重視すべきは予算配分にお

ける客観性と公平性の確保である.コストを伴う法定点

検の結果は,予算を要求し維持管理を実施する実施部局

のみならず,予算を配分する企画部局にとっても重要な

情報である.予算配分における修繕需要を施設数量ベー

スとすることは,実施部局の主観を排除しきれない費用

ベースとするよりも客観的かつ公平であると言える.一

方,既に述べたように舗装点検要領の下では点検方法が

多様化し,道路管理者は点検により得られる情報と必要

なコストを勘案した上で点検方法を選択することができ

る.

本研究では,点検方法の選択肢は,1) 評点化の方法と

して,変量法あるいは属性法,2) 点検手法として,機器

を用いた手法,目視による診断と延長測定あるいは目視

による診断のみ,3) 調査の方法として,推定を用いない

全数調査あるいは推定を用いる標本調査である.評点化

の方法と点検手法により決まる評価単位区間データは,

i) 複数の測定データ,ii) PD,iii) 基準内・不良の別である.

第 3章で,評価単位区間データと調査の方法に応じた管

理区間 PD の算出方法を明らかにする.本研究で提案す

る方法は,点検の省力化および措置の実施を担保する予

算配分における客観性と公平性の確保に資するものとし

て,既にマネジメントシステムを構築している道路管理

者でも参考になるものを目指している.さらに,第 4章

Page 5: 点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出 …点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出と修繕予算の配分 吉田 武1

で,管理区間 PD の算出方法が管理区間 PD と予算配分

比に与える影響について,いくつかの課題を検証する.

上記の道路管理者による点検方法の選択にあたり根拠と

なり得る技術的知見を提供するためである.著者の知る

限り,舗装点検要領がもたらす点検方法の多様化に対応

した修繕需要の比較と予算配分比の決定に関する研究事

例は見あたらない.

3. 管理区間PDの算出方法

(1) 複数の測定データを用いる推定

正規分布を用いる統計学的検定のように標準正規分布

曲線の下の面積パーセントを用いる場合,観測値は次式

により標準化される.

X

Z (2)

ここで,Z:標準正規分布表で用いる Z 統計量,X:観

測値,μ:母集団の平均,σ:母集団の標準偏差.

品質指数は次式で定義されている.

s

LSLmQL

(3)

s

mUSLQU

(4)

ここで,QL:下限規格値を用いた品質指数,QU:上限

規格値を用いた品質指数,LSL:下限規格値,USL:上

限規格値,m:標本の平均,s:標本の標準偏差.

管理区間 PD を点推定する場合は,FHWA17) が公開し

ている PD 表を用いる.標本サイズ毎に用意された表で,

品質指数の小数第 1 位までを左の見出しから,小数第 2

位を上の見出しからそれぞれ読み取れば,交わった欄の

値が当該品質指数に対応した管理区間 PDの値となる.

Schmitt et al.11)によれば,管理区間 PDを区間推定する場

合,信頼区間の下限と上限は次式で得られる.

n

Q

nZQZ L 2

1 2

2

(5)

n

Q

nZQZU 2

1 2

2

(6)

ここで,ZL:下限 pLに対応した Z 統計量(PDL=100pL),

ZU:上限 pUに対応した Z統計量(PDU=100pU),Zα/2:信

頼水準(Confidence Level: CL)に対応した Z 統計量

(CL=95%ならば α/2 = 0.025,Zα/2=-1.96),n:標本サイズ,

Q:式(3)あるいは(4)による品質指数.標準正規分布表を

用いる場合には,Z 統計量の絶対値に着目し,求められ

た pLおよび pUを 1.0あるいは 0.5とされる全体から差し

引くことに留意する必要がある.

(2) 基準内・不良の別を用いる推定

基準の適合・不適合のような二分法的な母集団におけ

る不適合割合は,点推定の場合,次式で表せる.

nkp (7)

ここで,p:母集団における不適合割合(PD=100p),

k:不適合とされた評価単位区間の数,n:標本サイズ.

区間推定の場合,信頼区間の下限と上限は,それぞれ

二項分布の累積分布関数の形で表された以下の式の pと

なる.

21

n

kx

xnxxn ppC (8)

2111

n

kx

xnxxn ppC (9)

ここで,x:不適合とされる評価単位区間の数を表す変

数,nCx:二項係数(nCx=(n(n-1)…(n-x+1)) /x!=n! /x!(n-x)!),

α:信頼区間が p を含まない確率(CL=95%ならば α=

0.05).離散型の二項分布と連続型のベータ分布の関係

として次式が知られている.

dzzzknkB

ppC knp

kn

kx

xnxxn

11,

11

0

1

(10)

ここで,B( ):ベータ関数(B(n,m)= Γ(n)Γ(m)/Γ(n+m)

=(n-1)!(m-1)! /(n+m-1)!),Γ( ):ガンマ関数(自然数 nのと

きΓ(n)= (n-1)!).式(8)と(9)を

211,

1

0

1

dzzzknkB

knp

k (11)

21,1

1 11

dzzzknkB

kn

p

k (12)

と書き換えることができる.米国の空軍開発試験センタ

ー(Air Force Development Test Center)は小数第 3位までの統

計数値表を公開している.CL および n と k をそれぞれ

表の上と左の見出しから拾い,対応する信頼区間の下限

と上限を読み取る 18).

(3) PDを用いる推定

複数の測定データからは規格値を用いた品質指数が得

られるが,PD からは得られない.評価単位区間データ

として PD が与えられた場合には,管理区間 PD の点推

定は算術平均による.区間推定は次式で表される t 統計

量が自由度 n-1の t分布に従うことに着目する.

nu

mt

(13)

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表-1 上限規格値による場合の管理区間PDの算出方法

評点化の方法 変量法 属性法

点検手法 機器を用いた手法

目視による診断と延長測定 目視による診断のみ

評価単位区間データ 複数の測定データ PD 基準内・不良の別

調査の方法 全数調査 PDに変換し算術平均 算術平均 不良区間数/全区間数

標本調査 点推定 式(4) 算術平均 式(7) 区間推定 式(5),(6) 式(14) 式(11),(12)

注)評価単位区間の延長が一様に 100mであることを前提としている.区間推定は両側推定である.

ここで,u:標本の不偏標準偏差(u2=ns2/(n-1)).これを

μ について解くことで,次式のように信頼区間の下限と

上限を得る.

n

untm

n

untm 11 (14)

ここで,tα(n-1):自由度 n-1の t分布の信頼水準 CLに

対応した臨界値(CL=95%ならば t分布表の t0.05).

(4) 管理区間PDの算出

全数調査の場合の管理区間 PD は,属性法では不良区

間数の全区間数に対する割合として算出する.変量法で

は,評価単位区間データとして PD が与えられた場合に

は算術平均により,複数の測定データが与えられた場合

には,評価単位区間の PD を求めた上で,その算術平均

により管理区間 PDを算出する.

上限規格値による場合の評価単位区間データと調査の

方法に応じた管理区間 PDの算出方法を表-1に示す.

4. 課題の検証結果と考察

(1) 検証の方法

本研究で提案する方法は,管理区間の全施設数量に管

理区間 PD を乗じた施設数量を修繕需要とし,各管理区

間の修繕需要により按分することで修繕予算の配分比を

決定するものである.ここでは簡単のために,管理区間

の施設数量が延長で表され,かつ比較対象である全管理

区間の延長が等しいものとして,施設数量ベースの修繕

需要を管理区間 PD で代替する.これは評価単位区間デ

ータと調査の方法に応じた管理区間 PD の算出方法が予

算配分比に及ぼす影響を確認するためであり,全管理区

間の延長が等しくない場合には各管理区間の全施設数量

に管理区間 PD を乗じた施設数量を修繕需要とする必要

がある.

本研究で提案する方法は,わだち掘れ量,ひび割れ率,

IRI 等の個別指標および MCI 等の複合指標に適用できる

ものであるが,ここでは既存データとして評価単位区間

の平均値と 大値を得やすいわだち掘れ量を用いて論を

表-2 管理区間のDmaxとDmeanの傾向

管理区間 A B C D E F

Dmax

(mm)

大 42 44 45 41 39 40

小 3 7 4 3 3 5

Dmean

(mm)

大 33 32 32 25 35 24

平均 14 14 14 10 9 11

小 3 5 3 3 3 4

進める.道路維持修繕要綱 5)によれば交通量の多い一般

道におけるわだち掘れ量に係る補修要否判断の目標値は

30mm~40mmであることから,上限規格値として 30mm

あるいは 40mmを用いる.

評価単位区間の既存データとして平均値と 大値を与

えられた場合,属性法による場合の評価単位区間データ

である基準内・不良の別は 大値により決定できるが,

変量法による場合の評価単位区間データである複数の測

定データと PD は決定できない.ここでは与えられた平

均値と 大値から 10 個の測定データを生成し,変量法

による場合の評価単位区間データを決定する.

(2) 解析データ

a) 実測データと評価単位区間データ

実測データについては,路面性状測定車による測定デ

ータを用いており,点検の精度に係る議論は不要である.

具体的には,国内の主要幹線道路におけるアスファルト

舗装に係る既存の実測データに基づき,100 個の評価単

位区間(各 100m)よりなる延長 10km の管理区間を 6 区

間設定した.それぞれの評価単位区間から,平均わだち

掘れ量 Dmeanと 大わだち掘れ量 Dmaxを抽出(合計で 600

組)した.各管理区間の Dmaxと Dmeanの傾向を表-2 に示

す.

属性法による場合の評価単位区間データである基準

内・不良の別は Dmax により決定した.変量法による場

合の評価単位区間データである複数の測定データを得る

ために,次に示すように Dmeanと Dmaxから 10個の測定デ

ータを生成した.

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(a) 管理区間A(歪度=0.66)

(b) 管理区間B(歪度=1.02)

(c) 管理区間C(歪度=0.60)

(d) 管理区間D(歪度=1.18)

(e) 管理区間E(歪度=1.66)

(f) 管理区間F(歪度=1.02)

注)縦軸は度数を表す.横軸の数字は階級の 大値を表す.例えば,4 と示された階級には 0 から 4mm の測定

データが含まれる. 図-4 測定データの分布形状

b) 測定データの生成

延長 10m の測定単位区間を代表する測定データ Diは

Dmean 周りに対称かつ等間隔に分布していると仮定して

次式に拠った.

mean diff11 2 9iD D i D (15)

(i=1,・・・,10)

ここで,Ddiff:Dmaxと Dmeanの差(Ddiff = Dmax-Dmean).Ddiff

が Dmeanよりも大きい場合は Diが負となり実際の道路で

はあり得ないので,全ての評価単位区間で Di の 小値

である D10=2Dmean-Dmax が負とならないことを確認した.

各管理区間における 1,000個の Diの分布形状をヒストグ

ラムにより視覚的に確認した.図-4 に示すようにいず

れも正の歪みを持つ単峰型であり,歪度の 小値は管理

区間Cの 0.60, 大値は管理区間Eの 1.66であった.

全数調査に用いる PDは USLにより決まるため次式に

拠った.

mean max

max diff mean max max

max

100 2

45 2

0

PD

USL D D

D USL D D D USL D

USL D

(16)

ただし,PD は切り上げにより十の位までの概数にした.

標本調査の場合,管理区間から n個の評価単位区間を

抽出することで標本サイズが 10nの測定データ Xが得ら

れる.推定において必要となる標本の平均 m は n 個の

Dmeanの算術平均である.標本の標準偏差 sについては

210 10

2 2 2 2mean

1 1 1

1 1 1 1

10 10

n n n

ij i j

s X m D Dn n n

(17)

表-3 変量法と属性法による管理区間PD

管理区間 A B C D E F

変量法 管理区間PD

(%) 5.9 5.5 5.9 0.9 1.4 0.6

属性法 管理区間PD

(%) 18.0 17.0 20.0 3.0 3.0 2.0

両管理区間

PDの比 3.1 3.1 3.4 3.3 2.1 3.3

図-5 変量法と属性法による管理区間PDに基づく予算配分比

であるが,式(15)の関係から式(17)を Ddiffと Dmeanすなわ

ち Dmaxと Dmeanの関数の形に書き換えることができる.

標本抽出は無作為抽出が原則であるが,100 個から n 個

を抽出する組み合わせは膨大な数に上るため,ここでは

等間隔で分布する評価単位区間を管理区間の中央から抽

出した.例えば,n=30 の場合,7,10,・・・,94 番目

の評価単位区間である.

(3) 評点化の方法の影響

表-3 は,USL=30mm とした全数調査(n=100)におけ

る変量法と属性法による管理区間 PDである.機器を用

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表-4 全数調査と点推定による管理区間PD

管理区間 A B C D E F

属性法

全数調査 不良区間数 18 17 20 3 3 2

管理区間PD(%) 18.0 17.0 20.0 3.0 3.0 2.0

点推定 不良区間数 5 2 8 0 1 0

管理区間PD(%) 16.7 6.7 26.7 0.0 3.3 0.0

両管理区間PDの比 0.93 0.39 1.3 0 1.1 0

変量法

全数調査 管理区間PD(%) 5.9 5.5 5.9 0.9 1.4 0.6

点推定(複数の測定データ) 管理区間PD(%) 3.2 1.0 6.0 0.0 0.0 0.0

点推定(PD) 管理区間PD(%) 6.3 2.7 9.0 0.0 0.7 0.0

いた手法で得られる複数の測定データを用いた変量法に

よる管理区間 PD の方が真の値に近いと考えられるが,

不良区間数を用いた属性法による管理区間 PD は大きく

異なる値となった.両管理区間 PDの比は管理区間 Cで

大の 3.4,管理区間 Eで 小の 2.1であった.管理区間

PD については属性法が変量法よりも高い値となる.こ

れは,図-2 でも触れたように,属性法では不良とされ

た評価単位区間に存在する基準内部分が管理区間 PD に

反映されないためである.

図-5は,表-3の変量法と属性法による管理区間 PDに

基づく予算配分比である.評点化の方法による差は管理

区間 Cで 大の 0.03ポイントであった.管理区間 PDに

基づく予算配分比については評点化の方法による差は小

さい.

ここで,既存データに係る制限等により評価単位区間

データとして複数の測定データ,PD,基準内・不良の

別を用いることができない場合を見通し,従前から一般

的に用いられている管理区間平均値について簡単に言及

しておく.共通の管理基準を有する複数の管理区間にお

ける度数分布の形状が似通っている場合,管理区間平均

値が大きいほど管理区間 PD が大きくなる.この事実は,

管理区間平均値に着目することで管理区間 PD に基づく

予算配分比を近似できる可能性を示唆するものである.

しかし,例えば実際の道路において管理区間 PDが 0 で

ある場合,管理区間 PD に基づく配分比は 0 となるが,

管理区間平均値が 0 となることは考えにくく管理区間平

均値に基づく配分比は 0 とならない.当該影響を減じる

ためには管理区間 PD が大きいと考えられる管理区間す

なわち管理区間平均値が大きい管理区間の配分比を増大

させる操作が必要となるが,この問題は本研究の範囲を

超える.

(4) 調査の方法の影響

調査の方法には全数調査と標本調査があり,標本調査

には点推定と区間推定がある.はじめに,全数調査と点

推定による管理区間 PDおよび当該管理区間 PDに基づ

図-6 全数調査と点推定による管理区間PDに基づく予算配分

く予算配分比を管理区間間で比較した.次に,全数調査

と区間推定について同様の比較を行った.なぜなら,標

本調査による推定で得られる母数は,標本として抽出さ

れなかった多数の要素による誤差を排除できない.全数

調査の結果と点推定の結果および区間推定の上限・下限

を比較し,その相違を認識しておく必要がある.区間推

定においては信頼水準と信頼区間の設定方針が推定結果

に及ぼす影響を確認しておく必要がある.

a) 全数調査と点推定

表-4 は,USL=30mm とした全数調査(n=100)と標本

調査(n=30)の点推定による管理区間 PDである.

属性法による管理区間 PD を全数調査と点推定で比較

すると,両管理区間 PDの比が管理区間 Aでは 0.93と大

差ないものの,管理区間 B では 0.39,管理区間 C では

1.3 と差があった.また,管理区間 D と F は標本に不良

区間が含まれず,点推定による管理区間 PDは 0であっ

た.

全数調査における不良区間数に着目すれば,管理区間

A~C は不良区間が多く,管理区間 D~F は不良区間が

少ない.標本調査における不良区間数から,管理区間 B

と C は母集団の性質を反映しておらず,管理区間 D~F

は母集団の性質を反映していることがわかる.前者すな

わち母集団の性質を反映しない標本については,標本調

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表-5 区間推定による管理区間PD

管理区間 A B C D E F

属性法 管理区間PDL(%) 5.6 0.8 12.3 0 0.1 0

管理区間PDU(%) 34.7 22.1 45.9 11.6 17.2 11.6

変量法

複数の測定データ 管理区間PDL(%) 0.8 0.2 2.0 0.0 0.0 0.0

管理区間PDU(%) 10.9 5.8 15.6 0.2 0.5 0.3

PD 管理区間PDL(%) 0.5 -1.2 2.8 0.0 -0.7 0.0

管理区間PDU(%) 12.1 6.6 15.2 0.0 2.1 0.0

注)管理区間PDの添え字について,Lは信頼区間下限値を表し,Uは信頼区間上限値を表す.

表-6 PDを用いた変量法による管理区間PD

管理区間 A B C D E F

全数調査 管理区間PD(%) 5.9 5.5 5.9 0.9 1.4 0.6

点推定 管理区間PD(%) 6.3 2.7 9.0 0.0 0.7 0.0

両側推定(上限) 管理区間PDU(%) 12.1 6.6 15.2 0.0 2.1 0.0

片側推定(上限) 管理区間PDU(%) 11.1 6.0 14.1 0.0 1.8 0.0

査のための抽出に係る一般的な課題であり,その対策と

して無作為抽出であるという公平性と透明性の確保が必

要となる.後者すなわち母集団の性質を反映した標本を

用いた点推定による管理区間 PDが 0となる事実は,本

研究が維持管理水準の高い道路の実測データを用いたた

めであるが,本研究で提案する方法の根幹に関わるもの

である.すなわち,標本調査は不良区間が多い道路への

適用が有効である.不良区間が多いとは,必ずしも維持

管理水準が低いことを意味しておらず,管理基準を厳し

く設定する場合も該当する.

変量法については,複数の測定データを用いる点推定

で式(4)とともに用いる PD 表 17)において Q≧3.45 ならば

PD=0.00であり,管理区間 D~Fにおける管理区間 PDが

0 となった.式(4)から,Q が大きくなるのは標本の平均

が小さい場合あるいは標本の標準偏差が小さい場合であ

る.このような場合には,管理区間 E のように標本に

不良区間が含まれていても複数の測定データを用いる点

推定による管理区間 PDが 0となり得る.

図-6 は,表-4 の全数調査と点推定による管理区間 PD

に基づく予算配分比である.前項で述べたように,全数

調査(n=100)における変量法による管理区間 PD が真

の値に近いと考えられる.いずれの管理区間においても,

3通りの点推定の結果に大差はない.管理区間 Bと Cに

おいて全数調査と点推定の結果が乖離しているのは,既

に述べたように,標本が母集団の性質を反映していない

ことによるものと考えられる.

b) 全数調査と区間推定

表-5は,USL=30mmとした標本調査(n=30)における

信頼水準 95%での区間推定による管理区間 PDである.

属性法については,標本に不良区間が含まれない管理区

間 Dと Fにおける管理区間 PDの信頼区間下限値が 0と

なった.

変量法については,複数の測定データを用いる区間推

定で式(5),(6)とともに用いる標準正規分布表において Z

の絶対値≧3.9ならば p=0.0であり,管理区間 D~Fにお

ける管理区間 PDの信頼区間下限値が 0となった.一方,

PDを用いる区間推定で,管理区間 Bと Eにおける管理

区間 PD の信頼区間下限値が負の値となった.これは信

頼区間の幅が広すぎることによるものであるが,途中経

過として,信頼区間の幅を狭めた信頼水準 90%での区間

推定でも両者は負の値のままであることを確認した.両

管理区間における標本に含まれる不良区間が少ないこと

が,管理区間 PD の信頼区間下限値が負の値となった理

由と考えられる.

信頼区間下限値が 0あるいは負の値をとり得るという

事実は信頼区間の設定に関し重要な示唆を与えている.

第 1の示唆は,予算配分のために施設数量ベースの修繕

需要を推定する場合の関心事は管理区間 PD の 大値で

あり,区間推定では信頼区間上限値に着目するというも

のである.標本に不良区間が含まれていても複数の測定

データを用いる点推定による管理区間 PDが 0となるこ

とが前項で確認された管理区間 E だけでなく,標本に

不良区間が含まれない管理区間 D と F についても,属

性法と複数の測定データを用いた変量法による信頼区間

上限値は 0とならない.信頼区間上限値に着目する方法

は,管理区間 PDが 0の管理区間に係る推定で管理区間

PDが 0とならない可能性を有するが,管理区間 PDが 0

でない管理区間に係る推定で管理区間 PDを 0とするも

のよりも,道路管理の観点からは安全側の推定と言える

であろう.第 2の示唆は,推定の精度を高めるために上

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図-7 PDを用いた変量法による管理区間PDに基づく予算配分

図-8 変量法による管理区間PDに基づく予算配分比

表-7 2段階の上限規格値の下での管理区間PD

管理区間 A B C D E F

変量法

管理区間PD(30) (%) 5.9 5.5 5.9 0.9 1.4 0.6

管理区間PD(40) (%) 0.3 0.5 0.4 0.1 0.0 0.0

両管理区間PDの差(%) 5.6 5.0 5.5 0.8 1.4 0.6

属性法

管理区間PD(30) (%) 18.0 17.0 20.0 3.0 3.0 2.0

管理区間PD(40) (%) 3.0 3.0 2.0 1.0 0.0 0.0

両管理区間PDの差(%) 15.0 14.0 18.0 2.0 3.0 2.0

限のみの片側信頼区間を用いるというものである.

表-6 は,USL=30mmとした PDを用いた変量法による

管理区間 PD である.区間推定については信頼区間上限

値である.標本調査(n=30)の区間推定には信頼水準

95%を用いた.信頼水準 95%の片側推定の上限値は,信

頼水準 90%の両側推定の上限値として表-1 により求め

た.両側推定に代えて上限のみの片側推定によることで

管理区間 PD の推定精度を高めることができるが,標本

に不良区間が含まれない管理区間 D と F については管

理区間 PDが 0のままである.点推定との優劣について

は判断できない.

図-7 は,表-6 の PD を用いた変量法による管理区間

PD に基づく予算配分比である.両側推定と上限のみの

片側推定の予算配分比に係る推定精度は大差ないが,点

推定よりも若干ではあるが高い.

(5) 修繕需要と補修需要の分離

舗装点検要領は,「管理基準を超過した段階,若しく

は早期に超過する見込みとなった段階で実施する切削オ

ーバーレイや,路盤を含めた舗装打換など舗装を当初の

機能まで回復させる措置」を修繕,「管理基準未満で実

施される,ひび割れ箇所へのシール材注入や,わだち部

の切削など,現状の舗装の機能を維持するための措置」

を補修と定義している.切削オーバーレイとわだち部の

切削のように修繕と補修は単価に大きな差があり,両者

の事業費をその事業量により比較することはできない.

このため,予算配分においても修繕需要と補修需要の分

離は重要な課題である.

ここで 2段階の上限規格値を設定し,区分 Iと IIの境

界を補修基準,区分 II と III の境界を修繕基準と呼ぶこ

とにすれば,補修基準を上限規格値として両措置に係る

PD,修繕基準を上限規格値として修繕に係る PDを得ら

れる.両 PD の差が補修に係る PD となる.本節では補

修基準を USL=30mm,修繕基準を USL=40mm とし,前

者に対する PD を PD(30),後者に対する PD を PD(40)と

した.ここで留意すべきは,変量法では PD(30)-PD(40)が

区分 II と診断された部分の割合を表すのに対し,属性

法の PD(30)-PD(40)には区分 III と診断された評価単位区

間に存在する区分 II 相当部分が反映されないことであ

る.このように属性法で区分 III と診断された評価単位

区間については補修需要が存在しないことになるが,実

際の道路で修繕需要と補修需要が共存する評価単位区間

は少なくないと考えられる.

表-7 は,2 段階の上限規格値の下での全数調査

(n=100)における管理区間 PD である. 上で述べた理

由から,属性法による補修需要すなわち両管理区間 PD

の差については,評価に反映されない部分が存在すると

考えられる.

図-8は,表-7の 2段階の上限規格値の下での管理区間

PD のうち変量法によるものに基づく予算配分比である.

管理区間 PD(30)から区分 II+III すなわち両措置,管理区

間 PD(40)から区分 IIIすなわち修繕,両管理区間 PDの差

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から区分 II すなわち補修に係る予算配分比を求めた.

このように,変量法によることで,修繕に係る予算配分

比に加え,補修に係る予算配分比も決定することが可能

になる.

2 段階の上限規格値の下で,各評価単位区間における

区分 I,II,III という三分法的な診断区分比率を求める

場合の,点検方法について述べる.点検手法が機器を用

いた手法の場合,評価単位区間データとして複数の測定

データを得られるため,1 回の点検により各評価単位区

間における区分 I,II,III という三分法的な診断と延長

測定が可能である.第 2章において,目視点検により評

価単位区間内の不良部分の識別とその大まかな延長割合

の把握が可能である,との本研究の立場について述べた.

その上で,目視点検は,目視による診断と延長測定およ

び目視による診断のみの 2通りとした.ここでいう識別

とは,一定の上限規格値に対する基準内・不良の別とい

う二分法的な識別である.2 段階の上限規格値の下では,

両上限規格値に対する識別が必要であり点検回数は 2回

となるというのが本研究の立場である.例えば図-2 の

第 3評価単位区間では,区分 IIの上限規格値に対する点

検により区分 III の割合が 20%であることを確認し,区

分 I の上限規格値に対する点検により区分 II+III の割合

が 80%であることを確認する.この 2回の点検により,

第 3 評価単位区間における区分 I,II,III という三分法

的な診断と 20m,60m,20m という延長測定が可能とな

る.目視による診断のみの場合は,属性法により評価単

位区間としての識別のみが行われ,既に述べたように評

価に反映されない部分が存在する.一方,目視による診

断と延長測定の場合は,評価に反映されない部分は存在

しない.

5. おわりに

本研究では,各管理区間における診断区分 III(修繕

段階)の施設数量により按分することで修繕予算の配分

比を決定する方法を提案するとともに,区分 III の比率

を PD と呼び,舗装点検要領の下での点検方法の多様化

に対応した管理区間 PD の算出方法を明らかにした.具

体的には,評点化の方法(変量法,属性法)と点検手法

(機器を用いた手法,目視による診断と延長測定,目視

による診断のみ)により決まる評価単位区間データ(複

数の測定データ,PD,基準内・不良の別)について,

調査と推定の方法(全数調査,点推定,区間推定)に応

じた算出方法を整理した.その上で,道路管理者による

点検方法の選択にあたり根拠となり得る技術的知見を提

供するため,主要幹線道路における既存の実測データを

用いた適用事例を通じて,算出方法が管理区間 PD と予

算配分比に及ぼす影響を実証的に分析した.

簡単のために管理区間の施設数量が延長で表され,か

つ比較対象である全管理区間の延長が等しいものとして,

施設数量ベースの修繕需要を管理区間 PD で代替し,管

理区間 PD に基づく予算配分比を用いた結果,得られた

知見は以下の通りである.

1) 管理区間 PD については評点化の方法による差が大

きく,属性法が変量法よりも高い値となる.管理区

間 PD に基づく予算配分比については評点化の方法

による差は小さい.

2) 標本調査は不良区間が多い道路への適用が有効であ

る.標本に不良区間が含まれず点推定による管理区

間 PD が 0 となった場合でも,属性法と複数の測定

データを用いた変量法による管理区間 PD の信頼区

間上限値は 0とならない.PDを用いた変量法による

当該管理区間 PD の信頼区間上限値は 0 のままであ

る.両側推定と上限のみの片側推定の予算配分比に

係る推定精度は大差ないが,点推定よりも高い.

3) 修繕と補修の予算費目を分ける際に必要なように両

措置に係る需要を分離するためには,管理区間につ

いて三分法的な評価を行う必要がある.機器を用い

た手法により評価単位区間データとして複数の測定

データを得る場合は 1 回の点検により可能である当

該評価が,二分法的な目視点検の場合は 2 回の点検

を必要とし,属性法による場合は評価に反映されな

い部分が存在する.

本研究で提案した方法については,実証分析の対象と

してとりあげた道路区間と異なる環境での分析を蓄積す

ることで,その有効性を継続的に確認する必要がある.

例えば,舗装の状態を表す指標として,本研究で用いた

わだち掘れ量以外の,ひび割れ率,IRI 等に対する適用

可能性は検証されていない.また,本研究で仮定した単

峰型の分布と測定データの分布形状に大きな乖離がある

場合における,推定される管理区間 PD および予算配分

比の精度も検証されていない.国内における各種指標に

係る測定データの分布形状の確認および単峰型分布以外

の分布形状に対するアプローチに係る検討は,今後の課

題である.さらに,本研究で提案した方法の有用性を高

めるためにいくつかの研究課題が残されている.第 1に,

1 回の目視点検による評価単位区間内の三分法的な識別

とその大まかな延長割合の把握の可能性である.二分法

的な診断と延長測定を行う変量法は,二分法的な診断の

みを行う属性法と比較すると,管理区間の三分法的な評

価のために 2回の点検が必要となる点は同様であるが,

評価に反映されない部分が存在しない点では優れている.

三分法的な診断と延長測定を行う目視点検について,二

分法的な診断と延長測定を行う目視点検を 2回行う場合

とのコスト比較を含めて,その実現可能性を検証する必

要がある.第 2に,標本調査における母集団の設定基準

Page 12: 点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出 …点検方法の多様化の下での 道路舗装の不良率の算出と修繕予算の配分 吉田 武1

である.舗装点検要領は管内の道路を分類 A~Dに区分

することとし,舗装劣化の緩急を決定する要因として大

型車交通量を例示している.本研究では,管理区間は区

分された道路であり母集団として推定できるものとした.

しかし,舗装のパフォーマンスすなわち交通による舗装

の時間的な損傷遷移は舗装の構造により異なっており,

舗装構造も加味した母集団の設定が必要である.第 3に,

時間軸の考慮である.本研究は注目する区間の全体が同

一のパフォーマンスカーブにより特徴付けられる前提で

ありながら,その内容は点検時点における横断面的な比

較にとどまった.交通条件と道路条件を考慮して母集団

が設定され当該前提が成立する場合には,時間軸を考慮

した計画的修繕の検討が可能となる.例えば,本研究は

診断による舗装状態の判定は測定データだけで決定され

るものとし,「管理基準に照らし早期の超過が予見され

る状態」を区分 III に含めていない.予防保全の観点か

らは当該状態での修繕が重要である.本研究では補修需

要と定義した区分 II の施設数量の一部を次年度の修繕

需要と定義することも可能である.

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(2017. 8. 31 受付)

ESTIMATING PERCENT DEFECTIVE AND ALLOCATING FUNDS FOR REHABILITATION OF ROAD PAVEMENTS

UNDER THE DIVERSIFICATION OF INSPECTION METHODS

Takeshi YOSHIDA

For ensuring objectivity and impartiality in budgetary allocations of road pavements, a new index to quantify the rehabilitation demands of a corridor is required. Under the pavement inspection guideline, there are diversified methods of inspecting and the road administrators can make decisions of which one to use by taking into consideration the information content about surface distress and cost of them. In this paper, a method for setting a budget allocation ratio in proportion of each corridor’s quantity allocated to state three is proposed. Since a quantity allocated to state three is a condition state rate for state three, which is called “percent defective”, multiplied by a corridor’s total quantity, calculation methods of the percent defective for corridors are clarified corresponding to the diversification. Finally, calculation methods’ influence on the budget allocation ratio is investigated by a case study dealing with the primary road in the real world.