緩和ケアの基本...

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Hybrid Assistive Limb 姿使使使使沿使使第117回近畿救急医学研究会(日本救急医学会近畿 地方会)が神戸市内で開かれた。テーマは「DNAR 〜臨床倫理と法律の狭間で〜」。このなかで岸和田徳 洲会病院(大阪府)が7演題を発表、うち5演題を2017 年に入職した初期研修医が口演(口頭発表)した。 多くは症例報告で、横山翔平2年次研修医は 「海水溺水に気胸を併発した一症例」、篠﨑浩 平医師2年次研修医は「口 こうくう 腔内出血の誤 えん によ る呼吸困難で来院した特発性血小板減少症の 一症例」、飯野竜彦2年次研修医は「原因不明 の脳炎からSIADH(ADH分泌不均衡症候群)を 来した1症例」、林萌乃果2年次研修医は「腎腫 瘍破裂の一症例」がテーマ。ほかに、「結節性多 発動脈炎による腎破裂の一症例」と題し、山田 元大・救急科医師らが発表した。症例報告以 外では、弘中雄基2年次研修医が自院で経験 した前頭葉脳挫傷患者さんをテーマに発表した。 同院救命救急センターの篠﨑正博顧問と鍜 冶有登センター長も会場に足を運び、発表の 様子を見守った。篠﨑顧問は「若手医師にとっ ての登竜門」として、毎年4月に入職した初期研 修医に同研究会での発表を勧めている。「会の 規模や開催時期などが、ちょうど良い」と今後も 続ける意向を示した。 岸和田徳洲会病院(大阪府)は6月9日から 2日間、緩和ケア研修会「PEACE」を初めて開 催した。同研修は主に医師を対象に日本緩和 医療学会が作成した教育プログラムで、徳洲 会グループ内外から24人(医師19人、看護師 5人)が参加、座学やロールプレイ、グループ ワークを通じ緩和ケアの基本的な知識、技術、 態度を学んだ。参加者24人のうち15人は岸和 田病院の医師。 厚生労働省は、がん対策基本法に基づく、 がん対策推進基本計画で「すべてのがん診療 に携わる医師が研修等により、緩和ケアにつ いての基本的な知識を習得する」ことを目標 に掲げている。 同院は、こうした社会背景に加え、大阪府 がん診療拠点病院(府指定拠点病院)の指定 を受けていることから、緩和ケア医療の底上 げを図るため研修会を開催。徳洲会グループ 内外の医師が講師やファシリテーターとして運 営に協力した。 初日の冒頭、主催者挨拶として岸和田病院 の牧本伸一郎副院長が「がん医療を行ううえ で緩和ケアは避けて通れません。この研修会 はグループワークなど実践的な内容になって います」と積極的な参加を呼びかけた。 講義テーマは緩和ケア概論、つらさの包括 的評価と症状緩和、がん疼 とうつう 痛の評価と治療、 呼吸困難、消化器症状、気持ちのつらさ、せ ん妄――の7つ。緩和ケアが「病気の時期」や 「治療の場所」を問わず、がんと診断された時 から提供することや、苦痛のスクリーニング方 法、チームアプローチの大切さ、鎮痛薬使用 の ポ イント、 呼 吸 困難、消化器症状 などの評価や治療、 ケアの方法につい て学んだ。 「がん疼痛事例」と 「療養場所の選択と 地 域 連 携」に 関 す るグループワークは3班に分かれ、症例に即し て痛みの評価やマネジメント、在宅移行への 進め方などを協議、発表した。 一方、ロールプレイは3人1組に分かれ、難 治がんを伝える医師役、告知を受ける患者さ ん役、両者の観察者役を全員が順に体験。同 様に、医療用麻薬に対する患者さんの誤解を 解き、副作用を適切に説明してスムーズに同 薬を導入するポイントを学ぶロールプレイを 行った。 受講者のひとりとして参加した岸和田病院 の東上震一院長(医療法人徳洲会副理事長)は 「ロールプレイを通じ患者さんの気持ちがわか るなど、参加者にとっては学びが多々あったと 思います」と手応えを感じた様子。 同院循環器内科の森下優医師は「緩和ケア はすべての患者さんに必要な考え方だと日常 臨床を通じ痛感していました。患者さんや家 族に対するケア、鎮静剤の使い方などを学び たいと思い参加しました」。研修企画責任者 の西畑雅也・泌尿器科部長は「グループワー クでは活発な議論が、あちらこちらで見られま した。内容の濃い研修会になったと思います。 来年以降も開催していきたい」と意欲的だ。 若手医師の“登竜門” 近畿救急医学研究会 PEACE 研修会を初開催 緩和ケアの基本 知識・技術学ぶ 徳洲会グループ内外から 24 人が参加。講師陣と記念撮影 医療者、患者・家族、観察者の 立場を体験するロールプレイ リハビリ 専用機器で体を持ち上げ HAL を装着 患者さんの動作に合わせて HAL がサポート HAL を用いたリハビリは理学療法士が 2 人体 制で実施 リハビリ終了後に患者さんに具合を尋ねる堀越・ 理学療法士 岸和田徳洲会病院 命だけは平等だ 平成 30 7 2 日 月曜日│ No. 1140

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Page 1: 緩和ケアの基本 知識・技術学ぶ...湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)はロボットスーツ「 H ALルハ Hybrid Assistive Limb )医療用下肢タイプ」を導入、4月に1例目の患者さんに対しHALを用い

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)はロボットスーツ「Hハ

ルAL (Hybrid Assistive

Limb

)医療用下肢タイプ」を導入、4月に1例目の患者さんに対しHALを用い

たリハビリテーション入院を実施した。HALは体に取り付けたセンサーが装着

者の動こうとする「意思」を皮膚表面に流れる微弱な生体電位信号として感知し、

装着者の動作をアシストする。徳洲会では同院のほかに和泉市立総合医療センター

(大阪府)と南部徳洲会病院(沖縄県)でも導入。

ハビリ室に入室する。ベ

ッドに腰かけ、専用機器

で体を持ち上げHALを

装着後、歩行訓練を実施。

この間、理学療法士2人

が付きっきりで対応する。

同院では月に2人ほどの

患者さんを受け入れる予

定だ。

堀越・理学療法士は「患

者さんには、歩行が可能

になることでリハビリを

頑張る気力が湧いてくる

と言っていただきました。

また、体幹が鍛えられ、

車いすに座る姿勢が楽に

なり、ご飯も食べやすく

なったそうです」と効果

を実感。「難病の患者さ

んですが、生活の改善に

つながるのであれば、積

極的に使っていけたら良

いと思います」と意欲を

見せる。

亀井総長は「まだ症例

数は少ないですが、患者

さんには心理的な面も含

め良い影響を与えている

ようです。また、新しい

技術だからこそ、当初は

想定していないような効

果が得られることもあり

ます。これは症例を重ね

ないとわからないことで

す」と課題を提示。さら

に、「難病の患者さんには、

希望をつなぐ、ひとつの

手段になると思いますの

で、慎重に検討していき

たいです」と期待を寄せ

ている。

の命令を筋肉に伝える運

動神経が侵され、筋肉が

萎縮していく進行性の難

病。治療の主な目的は、

使わないために落ちる筋

力を維持することだ。患

者さんは、これまで外来

でリハビリを続けていた

が、今回、HALを用い

たリハビリ入院を行った。

入院期間は約2週間で、

毎日1時間から1時間半

ほどの時間をかけHAL

を用いた歩行訓練を行う。

患者さんは病室で生体電

位信号を感知するセンサ

ーを皮膚表面(大だ

いたい腿

部前

面・後面、鼠そ

径けい

部、臀で

部)

に貼り付けたうえで、リ

卒中や脊髄損傷の患者さ

んへの使用に関する臨床

研究も進んでいると聞い

ていますので、その結果

も参考にしていきたいと

思います」。

運動量が大幅にアップ

生活改善にもつながる

「自分の力では歩けなく

なっていたのに、こんな

にたくさん歩けるなんて

嬉しいです」

取材当日、ALSが進

行し歩行が困難になって

いた患者さんが、驚きの

声を上げた。これまでは

リハビリ平行棒を使い1

往復するのがやっとだっ

たのが、HALのアシス

トによりリハビリ室内を

2周できるまでに運動量

が増えた。

ALSは脳や脊髄から

ロボットスーツHAL

は2016年1月に保険

適用となり、筋萎縮性側

索硬化症(ALS)、脊せ

髄ずい

性筋萎縮症、球脊髄性

筋萎縮症、シャルコー・

マリー・トゥース病、封

入体筋炎、遠位型ミオパ

チー、筋ジストロフィー、

先天性ミオパチーの8疾

患が対象。

人が身体を動かそうと

する時、脳は神経をとお

して動作に関する信号を

筋肉に送り出す。健常者

の体では、この信号を受

け取ることにより、動作

に必要な分の力で筋肉を

動かすことができる。H

ALは独自に開発したセ

ンサーを皮膚に貼り付け

るだけで、皮膚表面から

漏れ出る微弱な信号(生

体電位信号)を読み取る

ことが可能。これにより

装着者がどのような動作

をしたいと考えているの

か認識する。

さらにHALは、認識

した動作に合わせてパワ

ーユニットをコントロー

ル。これにより装着者の

意思に沿った動きをアシ

ストしたり、ふだんより

大きな力を出したりする

ことが可能になる。この

コントロールには、生体

電位信号を検出して装着

者の思いどおりに動作す

る「サイバニック随意制

御システム」と、生体電

位信号を検出できなくて

も動作を実現する「サイ

バニック自律制御システ

ム」のふたつを混在させ

ることで、装着者の動き

をアシストする先進技術

を使用している。

また、人の体が動いた

時、脳は実際に体がどう

いう信号でどのように動

作したか確認を行う。た

とえばHALを用いて

「歩く」動作をアシスト

した時、「歩けた」とい

う感覚のフィードバック

が脳に送られる。これに

より脳は「歩く」ために

必要な信号の出し方を少

しずつ学習していく。こ

うしたメカニズムも、足

の不自由な方がHALを

装着しなくても歩くこと

ができるようになるため

の一歩につながる。

湘南藤沢病院の亀井徹

正総長は昨年1月、都内

でHAL研究会に出席。

そこで開発元から全国の

徳洲会病院での導入に関

する提案があり、亀井総

長は、その可能性を探っ

た。そこで神経内科常勤

医師がいるなど条件を挙

げて複数の病院をピック

アップ、まずは湘南藤沢

病院と南部病院が導入す

ることになった。同時期、

新築移転したばかりの和

泉市立総合医療センター

でも近畿大学医学部との

連携によりHALの導入

を決めた。

導入にあたり亀井総長

はHALを使用している

民間病院を見学。また、

湘南藤沢病院の福武滋・

後期研修医と堀越一孝・

理学療法士、角田賢史・

理学療法士は、メーカー

提携の研修病院で3日間

の技術講習を受けた。

亀井総長は「HALも

そうですが、今後はAI

(人工知能)など従来と

違う枠組みの技術が、ど

んどん医療に導入されて

くると思います。まさに

時代が変わる入口に立っ

ている期待感がありま

す」と関心を寄せる一方、

「HALは、まだ新しい

技術ですから導入には慎

重を期す必要があります。

ただし、保険適用されて

いる8疾患以外にも、脳

第117回近畿救急医学研究会(日本救急医学会近畿地方会)が神戸市内で開かれた。テーマは「DNAR〜臨床倫理と法律の狭間で〜」。このなかで岸和田徳洲会病院(大阪府)が7演題を発表、うち5演題を2017年に入職した初期研修医が口演(口頭発表)した。多くは症例報告で、横山翔平2年次研修医は

「海水溺水に気胸を併発した一症例」、篠﨑浩平医師2年次研修医は「口

こうくう

腔内出血の誤ご

嚥えん

による呼吸困難で来院した特発性血小板減少症の一症例」、飯野竜彦2年次研修医は「原因不明の脳炎からSIADH(ADH分泌不均衡症候群)を来した1症例」、林萌乃果2年次研修医は「腎腫瘍破裂の一症例」がテーマ。ほかに、「結節性多発動脈炎による腎破裂の一症例」と題し、山田元大・救急科医師らが発表した。症例報告以外では、弘中雄基2年次研修医が自院で経験した前頭葉脳挫傷患者さんをテーマに発表した。同院救命救急センターの篠﨑正博顧問と鍜冶有登センター長も会場に足を運び、発表の様子を見守った。篠﨑顧問は「若手医師にとっての登竜門」として、毎年4月に入職した初期研修医に同研究会での発表を勧めている。「会の規模や開催時期などが、ちょうど良い」と今後も続ける意向を示した。

岸和田徳洲会病院(大阪府)は6月9日から2日間、緩和ケア研修会「PEACE」を初めて開催した。同研修は主に医師を対象に日本緩和医療学会が作成した教育プログラムで、徳洲会グループ内外から24人(医師19人、看護師5人)が参加、座学やロールプレイ、グループワークを通じ緩和ケアの基本的な知識、技術、態度を学んだ。参加者24人のうち15人は岸和田病院の医師。

厚生労働省は、がん対策基本法に基づく、がん対策推進基本計画で「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により、緩和ケアについての基本的な知識を習得する」ことを目標に掲げている。同院は、こうした社会背景に加え、大阪府がん診療拠点病院(府指定拠点病院)の指定を受けていることから、緩和ケア医療の底上げを図るため研修会を開催。徳洲会グループ内外の医師が講師やファシリテーターとして運営に協力した。初日の冒頭、主催者挨拶として岸和田病院の牧本伸一郎副院長が「がん医療を行ううえで緩和ケアは避けて通れません。この研修会はグループワークなど実践的な内容になっています」と積極的な参加を呼びかけた。講義テーマは緩和ケア概論、つらさの包括的評価と症状緩和、がん疼

とうつう

痛の評価と治療、呼吸困難、消化器症状、気持ちのつらさ、せん妄――の7つ。緩和ケアが「病気の時期」や「治療の場所」を問わず、がんと診断された時から提供することや、苦痛のスクリーニング方法、チームアプローチの大切さ、鎮痛薬使用

のポイント、呼吸困難、消化器症状などの評価や治療、ケアの方法について学んだ。「がん疼痛事例」と「療養場所の選択と地域連携」に関す

るグループワークは3班に分かれ、症例に即して痛みの評価やマネジメント、在宅移行への進め方などを協議、発表した。一方、ロールプレイは3人1組に分かれ、難治がんを伝える医師役、告知を受ける患者さん役、両者の観察者役を全員が順に体験。同様に、医療用麻薬に対する患者さんの誤解を解き、副作用を適切に説明してスムーズに同薬を導入するポイントを学ぶロールプレイを行った。受講者のひとりとして参加した岸和田病院の東上震一院長(医療法人徳洲会副理事長)は「ロールプレイを通じ患者さんの気持ちがわかるなど、参加者にとっては学びが多々あったと思います」と手応えを感じた様子。同院循環器内科の森下優医師は「緩和ケアはすべての患者さんに必要な考え方だと日常臨床を通じ痛感していました。患者さんや家族に対するケア、鎮静剤の使い方などを学びたいと思い参加しました」。研修企画責任者の西畑雅也・泌尿器科部長は「グループワークでは活発な議論が、あちらこちらで見られました。内容の濃い研修会になったと思います。来年以降も開催していきたい」と意欲的だ。

岸和田徳洲会病院・初期研修医が発表

若手医師の“登竜門”近畿救急医学研究会

PEACE 研修会を初開催

緩和ケアの基本知識・技術学ぶ

徳洲会グループ内外から24人が参加。講師陣と記念撮影

医療者、患者・家族、観察者の立場を体験するロールプレイ

ロボットスーツ「HAL」導入

湘南藤沢

徳洲会病院

神経難病8疾患が対象

リハビリ

専用機器で体を持ち上げHALを装着

患者さんの動作に合わせてHALがサポート

HALを用いたリハビリは理学療法士が2人体制で実施

リハビリ終了後に患者さんに具合を尋ねる堀越・理学療法士

岸和田徳洲会病院

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 平成 30 年 7 月2 日 月曜日 │ No.1140 ❹