癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 -...

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癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 平成20年11月14日 南九州発新技術説明会 小戝 健一郎 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 運動機能修復学講座 遺伝子治療・再生医学分野 教授 (兼任) 1. 久留米大学高次脳疾患研究所 客員教授 2. 聖マリアンナ医科大学 客員教授 3. 岐阜大学医学部 特別協力研究員 (連絡先)電話 099-275-5219 E-mail: [email protected]

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Page 1: 癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 - JST癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 平成20年11月14日 南九州発新技術説明会

癌への遺伝子・ウイルス治療薬

と肝疾患への再生医薬

平成20年11月14日 南九州発新技術説明会

小戝 健一郎

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻

運動機能修復学講座 遺伝子治療・再生医学分野 教授

(兼任) 1. 久留米大学高次脳疾患研究所 客員教授2. 聖マリアンナ医科大学 客員教授3. 岐阜大学医学部 特別協力研究員

(連絡先)電話 099-275-5219E-mail: [email protected]

Page 2: 癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 - JST癌への遺伝子・ウイルス治療薬 と肝疾患への再生医薬 平成20年11月14日 南九州発新技術説明会

1. 癌への革新的なウイルス/遺伝子治療薬

• 年間癌死亡数は依然増加していることからも、既存の治療法では癌の根治は不可能で、革新的な治療法の開発が必要。

• 遺伝子治療はその有力候補の一つで、臨床試験で安全性は確証できた一方、既存の方法では治療効果に限界があった。

• 革新技術開発や事業化にも、根幹技術であるベクターの独自開発が最重要事項だが、本邦の取り組みは乏しい。

• 現在、癌遺伝子治療で有望なベクター/戦略は、CRA(癌制限増殖アデノウイルス)だが、標準化できる効率的作製法がないため、既存のものは単純なCRAであり、「医薬として安全性、治療効果のさらなる向上が難しい」、「ベクター受託販売の事業化もできない」という技術的問題が残っていた。

研究背景、従来技術とその問題点

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1. 癌への革新的なウイルス/遺伝子治療薬

1. 効率的なm-CRA作製技術• 従来の「非効率な手作り」状況を克服する「標準化m-CRA作製法」を

初めて開発。• 桁違いの作業効率(ex. 従来の「手作り」で専門家が1つのCRA作製に

半年かけていた作業が、テクニシャンでも一、二ヶ月で10〜20個作れる)→初めてCRAベクターの受託作製事業が可能

• 次世代のm-CRA医薬(従来の単純CRAと一線を画す、安全性と治療効果の両方が向上した、高度なm-CRA医薬を開発できる技術

2. サバイビン反応性m-CRA(癌治療医薬)• このm-CRA作製技術で、従来有望なテロメラーゼ反応性CRAを癌治

療医薬の性能で遥かに凌ぐサバイビン反応性m-CRAを開発→医薬化を進めている

新技術の特徴、従来技術との比較(要点)

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癌の既存治療法の限界と新治療法開発の社会的要請

癌は未だに本邦、先進国の最多死因!

•本邦の年間癌死亡数 32万人

•本邦の年間癌発症者数 53万人

これらの問題を克服するため

革新的な治療法の革新的な治療法の開発が必要開発が必要!!!!

遺伝子治療はアデノウイルスp53の一般医薬販売→遺伝子医薬の市場基盤も形成中

JST大学発ベンチャー創出推進 (H19年度採択

→H22ベンチャー起業予定)

第3次対がん10カ年総合戦略(厚生労働科学研

究)革新的治療法の開発の分野(小戝班)

正常細胞→ウイルスは非増殖

→正常細胞の障害無し

癌細胞→ウイルスが増殖

→癌細胞を殺傷

原発巣

遠隔転移巣

癌特異的増殖型ウイルスを腫瘍内へ注射

癌細胞特異的にウイルスが増殖し癌細胞を殺す

既存の治療法では癌の根治は不可能•多発転移癌への効果的治療法はない•癌のみを特異的に治療できない

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癌遺伝子治療の歴史と臨床化の現状(1)1990年 初の遺伝子治療臨床試験(ADA欠損症)

1991年 癌に対する遺伝子治療開始

現在 遺伝子治療の世界の1300以上の臨床プロトコールにおいて、主対象疾患(67%)は癌、主使用ベクター (25%)はアデノウイルス(ADV)

• 全16(内、癌10)プロトコール•• オリジナルオリジナル性乏しい?( ベクター/治療遺伝子の知財権利無しなら・・・知財権利無しなら・・・)

本邦の現状と問題点

医薬化できず医薬化できず、本邦本邦の国民福祉国民福祉と経済の向上に繋がり難い?と経済の向上に繋がり難い?

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癌遺伝子治療の歴史と臨床化の現状(2)1990年 初の遺伝子治療臨床試験(ADA欠損症)

1991年 癌に対する遺伝子治療開始

臨床試験

ベクター 遺伝子導入法(投与法)

治療遺伝子 ①臨床試験の結論と医薬化の現状/②問題点

①90年代初頭

レトロウイルス

Ex vivo サイトカイン ①②治療効果乏しく、経費莫大で、臨床化ならず

②90年代後半〜

非増殖型ADV

In vivo(腫瘍単結節への注射)

自殺遺伝子、サイトカイン遺伝子など多種

①安全で、一部が一般医薬化実現/②治療効果未だ不十分

③2000年代〜現在

癌優位増殖型ADV (CRA)

In vivo( 腫瘍単結節への注射)

増幅ウイルスの癌溶解効果が主体

①臨床試験で安全で治療効果も改善/②癌特異化、治療効果が完全ではない

現在 遺伝子治療の世界の1283の臨床プロトコールにおいて、主対象疾患(67%)は癌、主使用ベクター (25%)はアデノウイルス(ADV)

我々の技術

多因子で癌特異化m-CRA

In vivo( 腫瘍単結節注射→微小遠隔転移癌)

増幅ウイルスの癌溶解効果+癌特異的に作用する治療遺伝子

研究レベルでは、格段に増強した精密な癌特異標化と治療効果→革新的医薬の潜在能力

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癌遺伝子治療用のアデノウイルスの変遷従来の「非」増殖型アデノウイルス(90’前半〜)

○ 作製法が確立。臨床化で安全だが・・

X 遺伝子「未」導入癌細胞からの再発

ベクターの腫瘍内投与

癌結節遠隔転移巣

周囲の癌巣

ADVゲノムΔE1

治療遺伝子

m-CRA(多因子で精密に癌特異化する増殖型アデノウイルス)の迅速効率な作製法を独自開発

P1:増殖制御

E1A

LoxH

(1) (3) (4)(2)

E1B

E1B∆55K

Promoter A Promoter B

I-CeuI PI-S

ceI

pA

kanr pUC ori

E1A∆24

P2:治療遺伝子導入

(5) (6)

LoxP治療遺伝子

tetrR6Kγ ori

pA

Promoter C

P3: ADV

I-Ceu

I

PI-S

ceI

PacI

Adenovirus genome

Sw aI

ITR PacI

ITRFiber

(7以上)

ampr pUC ori

遺伝子治療+

溶解性ウイルス療法

◎ 癌への遺伝子導入効率の向上。癌溶解性作用

△ 単一因子で癌の特異化が未だ不十分

X 効率的作製法なし」→手作りで非効率な研究

CRA(癌特異的増殖型アデノウイルス)(90’後半〜)

ADVゲノムE1

タイプ 2タイプ 1

ADVゲノムE1

ΔRb, p53結合領域 癌特異的プロモーター

溶解性ウイルス療法遺伝子治療

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(1) E1A発現用Promoter(2) Rb結合領域欠損(3) E1B発現用Promoter(4) E1B55kDの欠損(5) 治療遺伝子発現用Promoter(6) 治療遺伝子(7) Fiber改変など

(8) ・・・・・・

7因子以上の腫瘍特

異化因子を挿入可能

独自開発の初めての標準化m-CRA作製技術

P1:増殖制御

E1A

LoxH

(1) (3) (4)(2)

E1B

E1B∆55K

Promoter A Promoter B

I-Ceu

IN

otI

Mlu

ISn

aBI

PI- S

ceI

BG

HpA

Nde

IM

feI

EcoR

VSalI

kanr pUC ori

E1A∆24or or

P2:治療遺伝子導入

(5) (6)

LoxP

治療遺伝子

tetrR6Kγ ori

BGHpA

Age

IA

paI

StuI

XhoI

Sac I

Promoter C

P3: ADV

I-Ceu

I

PI-S

ceI

PacI

Adenovirus genome

SwaI

ITR PacI

ITRFiber

(7以上)

ampr pUC ori

Cre → DH5α+ Tet

293細胞

P1

Kanr pUC

P2

Tetr R6Kγ

P3

Ampr

P1+2

pUC Tetr

P1+2+3Ampr

Tetr

I / PI ライゲーション→ DH5α+ Amp

293細胞

P1

Kanr pUC

P1+2+3Ampr

Tetr

P3

Ampr

P1+3

Ampr

P2

Tetr R6Kγ

Cre → DH5α+Tet

I / PI ライゲーション→ DH5α+ Amp

P1

Kanr pUC

P3

Ampr

P1+3

Ampr

P2

Tetr R6Kγ

恒常的Cre発現293細胞

I / PI ライゲーション→ DH5α+Amp

3プラスミドシステム3プラスミドシステムパーツ作製

→自由に組み合わせ1. 1. パーツ化パーツ化

①①増殖部、増殖部、②②治療遺伝子、治療遺伝子、③③ADVADV

2. 2. 融合融合

①①リコンビネーションリコンビネーション②②Unique ligationUnique ligation

3. 3. セレクションセレクション①①OriOri、、②②抗生剤耐性抗生剤耐性((AmpAmprr, , KanKanrr TetTetrr))

•Nagano S et al. Kosai K. Gene Ther (2005) •国際出願→欧米日指定国移行中(JST特許支援事業)

基本特許1

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新開発m-CRAのSurvivin依存性m-CRAは画期的癌治療薬となる(特許2)

Survivinとは?

1. Inhibitor of apoptosis gene family 2. G2/M期に最大発現しmicrotublesへ作用 3. ほとんどの癌で高発現、正常組織では発現が未検出 4. 発現レベルと癌患者の悪性度が相関

Survivin依存性CRAADV genomeE1

EGFPE1BΔ55KSurvivinpromoter

CMVpr CMVpr(wt or mt)E1A

正常細胞• Survivin 発現 (-)• ウイルス増殖/細胞障害 (+/-)

1 3 5 7日後

癌細胞• Survivin 発現 (++〜+++)• ウイルス増殖/細胞障害 (+++)

全種類全種類の癌

が治療適応医薬特許

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HE染色

×20

×100

Surv.CRAはマウスの皮下腫瘍(骨肉腫)を劇的に殺し縮小させる

Kamizono J. et al. & Kosai K. Cancer Res (2005)国際出願→米日指定国移行

肉眼的解析

組織学的解析

非増殖型ADV(コントロール)

広範囲な壊死

顕微鏡観察では生存癌細胞

はない

腫瘍結節の壊死化

Surv.CRA wt Surv.CRA mt

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我々が開発したSurvivin依存性CRAを既存では最高のCRAと性能比較

Surv.CRAwtTert.CRAwtAd.∆E1

1 3 5 7Days after infection

EGFP

-pos

itive

cel

ls (%

)

HepG2 HOS-MNNG

020406080

100

#

* * * ** *

*WI-38

** * *

CRAのウイルス増殖速度

正常線維芽細胞肝癌 骨肉腫

1 3 5 7 1 3 5 7

020406080

100120140160180

HepG2 HOS-MNNG WI-38

Ad.Surv-LacZAd.Tert-LacZ

Rel

ativ

e pr

omot

er a

ctiv

ity

(% o

f Ad.

CM

V-La

cZac

tivity

)

Promoter活性

正常線維芽細胞肝癌 骨肉腫

Days after virus injection

Surv.CRAwt

Ad.ΔE1Tert.CRAwt

0 4 7 11 14 18 21 25 28 32 35Tu

mor

vol

ume

(mm

3 )0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

* * *

マウス腫瘍モデルでの腫瘍抑制効果

結節内は癌細胞死で癌治療効果はさらに大

Survivin

TERT

MKN-1

MKN-45

HCT-15

LoVo Colo-205

HepG2

Hep3B

Hela HOS-MNNG

KHOS-NP

SaOS-2

293 Neg.Osteo-blast

WI-38

mRNA (内因性発現レベル) 癌 正常細胞

我々のSurvivin依存性CRAは(初期型ですら)、既存では最高のTelomerase依存性CRAを、癌特異性(安全性)、癌治療効果の両面で凌ぐ Cancer Res (2005)/ 国際出願→米日指定国移行

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技術面のまとめ

原権利 ①m-CRA作製方法(試薬) ②サービビン反応性m-CRA(医薬)

新規性 世界初で「唯一」の技術 新規の癌治療医薬

競争優

位性

• 事業化しうる他技術はない

(累乗レベルの効率の違

い)*従来のCRA作製:専門家のみ可能で、「手作業」で半年に1個作製。

*本法:素人の技術員でもプロトコールに従い一度に複数検体を扱い1ヶ月に20〜30個以上を作製。

• 癌治療医薬として従来の

CRAより遥かに優れた性能

を持つm-CRAを作製可能

•(我々にとっての)初期型

ですら、既存で最高のCRA(テロメラーゼ依存性

CRA)を、癌特性(安全

性)、癌治療効果の両面で

凌ぐ

→最高性能のCRA癌治療薬

•我々のm-CRA化技術で、

さらに優れた癌治療薬に改

良されている

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事業構想

試薬(研究支援)事業

医薬開発事業

GMP医薬

供給事業

1. m-CRAの受託作製販売(300〜 万円/件)

2. カスタムメードm-CRAの販売3. m-CRA作製キット、各オプションパーツ試

薬の販売

m-CRAベクター(特許1)

細胞移植療法

特許3:心疾患の遺伝子医薬

特許4:肝疾患の再生医薬

移植細胞

特許6:ES細胞再生医学

その他特許

m-CRAのGMP 医薬供給(数千万円〜2億円

/臨床試験第一相)

癌治療薬

1. Survivin反応性CRA(特許2)• 脳腫瘍、消化器癌、骨軟部• 適応拡大(全癌に対応の能力)• 改良型のSurvivin依存性m-CRA

2. 同様に新規の第二、第三弾、・・・m-CRA癌治療医薬を次々に開発→一般医薬化

3. 癌幹細胞を治療するm-CRA医薬(全く新規の治療法)

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1. 癌への革新的なウイルス/遺伝子治療薬<事業化>

平成22年4月にベンチャー創業予定

企業への期待

①m-CRAの受託作製販売の試薬(一部医薬)事業•研究者向けの受注販売を試薬メーカーと提携したい•創薬、製薬企業と、共同で癌治療薬を開発(委託作製)したい

②Surv.m-CRA(癌治療)の医薬事業•臨床試験予定のSurv.m-CRA(臨床試験先、GMP医薬供

給先の海外施設はほぼ確定)だけでなく、開発中の第二、第三弾の新規m-CRA医薬も含め、製薬企業と提携・共同

で医薬開発・事業展開したい

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2. 肝疾患の再生治療薬

• 肝疾患への既存の医薬は、対症療法にすぎない。つまり直接的に「病気の進展を止め治癒を促す」根治医薬は未だない。

• 現在注目される再生医療の中でも真に理想的な戦略は、「生体内で臓器を再生治癒」する医療である。肝臓は生後も再生能力を保持しているため、その可能性がある。

• 我々はHGF(肝細胞増殖因子)が、直接的に「肝細胞死を強力に阻止し、肝細胞再生を誘導する」、肝疾患への根治医薬となる可能性を見いだした。これは蛋白質製剤として魅力的シーズであるが、一方でHGFは物質特許も複雑で、既に世界中で研究がなされている。

研究背景、従来技術とその問題点

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再生医学(医療)

(2)体外で新たに再建した細胞や組織を移植

(再建医学)

心筋細胞神経細胞多くの臓器

(1)生体の元来の再生能を利用して生体内で再生

(生体内再生医学)

血球細胞肝細胞皮膚血管細胞

骨髄幹細胞臓器幹細胞ES(胚性幹)細胞

薬剤組み換え蛋白遺伝子治療

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急性肝炎(本邦で年間数万人?発症)↓1〜2%(約1000人?)が劇症肝炎へ進展

↓60〜70%が死亡

劇症肝炎とFas•原因

肝炎ウイルス(>90%)、薬剤、その他

•病態ウイルス感染肝細胞への過度の免疫などによる異常なアポトーシス(細胞死)亢進

•治療法根治療法なし

•予後不良(70%の死亡率;数日〜数週間)

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生体内再生治療ー我々はまずHGFでこの革新治療手法を示したー

HGF

急性肝炎

劇症肝炎

死亡

FasTNF-α

壊死

Kosai K, et. al. BBRC (1998)Kosai K, et. al. Hepatology (1999)

HGFSaline

HGF: 肝細胞増殖因子肝再生の本体の因子

Kosai K, et. al. Hum Gene Ther (1998)肝再生

治癒

劇症肝炎は治療できる

生体内で治療と再生→ 最適の再生医療

但し、HGFはやり尽くされている

→同じ治療手法で、新しい物質の探索へ!

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遺伝子治療研究によるHB-EGFとCD9の生体内機能の解明と治療法開発

IntegrinIntegrin

CD9CD9

HBHB--EGFEGF

心、肝:①臓器形成因子。②成体の障害後も発現上昇

• 膜4回貫通蛋白; MRP-1• IntegrinとHB-EGFと複合体形成• proHB-EGF作用を増強

• 卵に発現し、受精の際に精子と卵の融合に必須の膜蛋白

肝臓

肝障害後にHGFより先にHB-EGFが発現、慢性

肝炎でHB-EGFは高発現→HB-EGFは肝栄養因

子でありそう→新たな肝再生治療薬になる?

Miyado K., Kosai K., et al. Science (2000)

心臓

Ushikosi H, et al. & Kosai K. Lab Invest (2005)

① 心筋細胞死に無影響② 血管新生作用無し③ 線維化、筋線維芽細

胞、マクロファージの集積を促進

④ 心筋細胞肥大

リモデリング促進、病態悪化の中心的因子XX--galgal染色染色TTC/Evans BlueTTC/Evans Blue

心筋梗塞後に梗塞巣周囲でHB-EGF遺伝子強発現

HB-EGFの肝障害抑制作用、

肝再生促進作用を検証!

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ADV injection Anti-Fas injectionSacrifice (36h)

Sacrifice (24h)

0 24 48 72 96 108 hours

3000

2500

2000

1500

1000

500

0

HB-EGFはHGFより強力な肝治療(保護+再生)作用を持つ

Ad.dE1.3

血清

ALT

値(

IU/L

) 60

70

50

40

30

20

10

0

Ki-6

7-po

sitiv

e ce

lls(%

)

Ad.dE1.3Ad.HGF

P=0.22

*

*

*

Ad.HGFAd.HB-EGF

* *

P=0.66

# P<0.05

#

P=0.72

*

Ad.HB-EGF

肝障害 肝再生

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結論1. マウスのFas誘導劇症肝炎へのアデノウイルスによるHB-

EGF、HGF肝遺伝子治療は、肝障害を強力に抑制し、肝再生

を強力に誘導した2. 肝障害抑制作用(肝酵素)は、HB-EGFの方がHGFより強力

であった。3. 肝細胞への抗アポトーシス作用(TUNEL染色、肝病理組織)

は、HB-EGF、HGFとも同等に強力であった。4. 肝再生誘導作用(Ki67免疫染色)はHB-EGF、HGFとも強力

だが、特に早期の肝再生はHB-EGFの方がより強力であった。

HB-EGFはHGFより強力な新規の肝疾患(急性肝

炎!劇症肝炎!肝障害一般)治療薬になる

NC Khai et al. & Kosai K. J Hepatol (2006)

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急性肝炎(本邦で年間数万人?発症)↓

1〜2%が劇症肝炎へ進展↓

60〜70%が死亡(根治療法なし)

肝疾患を生体内で再生治療するHB-EGF医薬(特許3)

HB-EGF

急性肝炎

劇症肝炎

死亡

FasTNF-α

壊死

肝再生

治癒

劇症肝炎は治療できる

1. 画期的な肝再生治療薬(肝障害をみつけたらHB-EGFの注射で病気が治る

→臨床化し易い)

2.2. HBHB--EGFEGFはHGFよりさらに治療効果、再生効果が強い

3. 新規性高い(特許性高い;まだHGFほど研究されてない)

4. 急性肝炎への蛋白質製剤としての開発は、極めて現実的である。

5. 他の肝疾患へも適応拡大できる

J Hepatol (2006)日米欧に指定国移行中(JST特許支援事業)

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2. 肝疾患の再生治療薬<事業化>

企業への期待

まずはHB-EGFの蛋白質製剤として、製薬

企業と提携・共同で医薬開発したい

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お問合わせ先

鹿児島大学

産学官連携推進機構 産学官連携部門中武貞文

TEL 099−285−8491FAX 099−285−8495e-mail [email protected]

*技術については小戝(連絡先1頁目記載)へ