焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が - jim2003/08/10  · fi78 研 究 策8卷...

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fi78 策8卷 焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が 輔級 球 軸 受 用 鋼 球 の 熱處 理 に就 い て研 究 す るに は,焼 入れ 後 の鋼 球 の 内 部 應 力 を 測 定す る必 要 が あ る.然 し 從來 のgcyn又 はSachsの 方 法 は,何れ も圓 筒 状 試 片 に のみ 適用 可 能 で,球盤 に は適 用 され ない 。よつ て こ こ で は先 づ 球 體 の内 部 應 力 灘 定 方法を 確 立 し,この 方 法 に よつ て各 極 寸 法 の 熱 處理 條 科 を異 に した球 軸1受用 鋼球 の 内部 穂力 を測 定 し,鋼 球 の 直 徑 懇處 理 條 件 及 び 内部 應力 の三 者 問 の 關聯 性 に就 い て 論及 した.な ほ 一 般 に金 屬 と熱 處 理 應刀 との關 係 を論 ず る場 合 に,球體 試 料を用ひて本法を適用すれ ば,種々の}點でよ り合理酌 であると魁1はれ る. (昭和19年8月4日 受 理) 1.緒 弾 性髄 が不均一一Vこ 加 工 され るか 又 は熱 處 理 され る 〓, 不 均 一 な残 留 變 形 を 受 け,内部應 力 を発 生 す る.この内 部 應 力 に よつ て,鋼材 の割 れ,變形,耐 蝕 性 の劣 化及 び 經 年 變 化 等 の種 々 の弊 審 が惹 超 され る.最 近球 軸 受Ft7大 型鋼 球 の 需 要 は盆 ゝ尨 大 な もの 〓な りつ つ あ る反 而,本 邦 に 於 げ る この種 の製 作 は 極 めて 最 近 の こ 〓 に屬 す るの で, その熱 處 理,研 磨 工 程 並 に製 品 の精 度 等 に關 す る點 に就 いて未 解 決 の問 題 が 數 多 く残 されて ゐ る.從 つ て焼 入 れ た鋼 球 の 内部 應 力 測 定 方法 を確 立 すれ ば,か か る諸 問題 解 決 の 一助 に役 立っ こ εは明 らか で あ る. 然 るに從 來 の 内部 應 力 に 關 す る研 究 は,主 〓して 加工 による影響 を見たこも0)が多く(1、,而 も測定 は棒 や板fxに いて行つたHeyn及び8auer(2)法 が一般 に廣 く應用 され て ゐ る に過 ぎ な い.を 外周 か ら切削3』る毎 にその長 さ 不二越研究所 *昭 和1G年10月本 會 第14回農 島 大 會 に発 表 (1) -‚ê tC H‚·7, G. Sachs, Pralaische Metallhunde, II (1934), 145 t- . $4 #, ‚Ä as g . (2) E. Heyn, O. Bauer, Tnt. Z. Metallogr.,1 (1911), 16; Stahl u. Eisen, 31 (1911), 760; E, IIeyn Stahl u. Eisen, 32 (1912), 2097; J. inst . Metals,12 (1914),3; Stah1 u. Eisen, 37 (1917), 442, 474, 497; Mitt. Mat.-Priif.-Amt., 35 (1917), 1 . (3) G. Sachs, Z. Metallk,, 19 (1927), 352; V. D. I„ 71 (1927), 1511; Metallwirtsch., 7 (1928), 1277, 8 (1929), 343. ANT. Pah renhorst, G. Sachs, Metal lwirtsch ., 10(1931), 783. の 變 化 を 測 る 〓 云 ふHeynの 方 法 で は,單 に長 さ方向の 應 力 の み し か測 定 出 來 な い の で,G. S郷hs(3)は これに改 良 を 加 へ,十 分0)長さ の 棒 状 試 料 の 中 心ASに穴 を 穿 つ て' 行 き,そ の 都 度 棒 の 長 さ 方 向 〓直 径 方 向 の 變 化 を測 定 す る 〓云ふ方法を考案 した・この 方法によ る時は,長さ方向, 切 線 方 向 及 び半徑 方向の藁つの主應力を計算で求めるこ 〓がて出・來る. のG・Sachsの 方 て9 H.Buhler. H.13uchholtz, E. H. Schulz及 びE. Scheil(4)は 熱處理に よ る 内 部 應 力 の 變 化 に 就 い て 詳 細 に 論 じ て ゐ る.槻 しこ の 方 法 は 試 料 の 中 心 部 に穴 を 穿 つ 方 法 で あ る の で,焼 れ に よつて 硬 化 す る もの に は適 用 され ず,主 〓 して 焼 人 れ 後 も十 分 に 切t3947能 なFe-Ni 取 扱 つ て ゐ る.又 A1輕 合金 の 熱 處 理 條件 〓内部 應 力 〓の關 聯 性 に關 す る 實 験(5)に もGSachsの方 法 は適 用可 能 で あ る.然 し焼 入 れ 後 硬 化 す る や う な 鋼 に 就 い て 熱 處 理 應 力 を 論 ず る場 合 に は,中 心 部 に穿 孔 す る こ 〓が 出 来 な いの で,由 田,田中 両氏(6)によ るや うに試 料 を外 側 か ら溶 解 させ て長 さ方 (4) 11. Bi hlcr, MitMitt. Ver. Stahl, 2 (1931), 149; H. Milder, H. Buchholtz, E. H. Schulz, Arch. Eisenhiittenwes., 5 (1931 /32) 413; H. Buchholt7, H. Buhler, St.hl u. Riser., 52 (1932), 490; Arch. Eisenhuttenwes,, 5 (1931/32), 247, 253; 6(1932/33)9 335; H. Buhler, E. Scheil, Arch. Eisenhiittenwes„ 6 (1932/ 33), 238; 7 (1933/34), 359. (5) Er1中,本 誌,5(】941),314, (6)田田,田中,昭 和18年4月 本 會 第13回 棄 京 大に発 表.

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Page 1: 焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が - JIM2003/08/10  · fi78 研 究 策8卷 焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が 川 口 寅 之 輔級 球軸受用鋼球の熱處理に就いて研究するには,焼

fi78  研 究  策8卷

焼 入 れ に よ る球 軸 受 用 鋼 球 の 内 部 應 が

川 口 寅 之 輔 級

球軸受用鋼球の熱處理 に就いて研究す るには,焼 入れ後の鋼球の内部應力を測定す る必要が ある.然 し從來 のgcyn又

はSachsの 方 法は,何れ も圓筒状試片にのみ適用 可能で,球盤には適用 され ない。よつてここでは先づ球體 の内部應力灘定

方法を確立 し,こ の方法によつ て各極寸法の熱處理 條科を異に した球軸1受用鋼球 の内部 穂力 を測 定し,鋼 球の直徑 懇處

理條件及び内部 應力 の三者問の關聯性 に就いて論及 した.な ほ一般に金屬 と熱處理應刀 との關係 を論ず る場合 に,球 體試

料を用ひて本法を適用すれ ば,種 々の}點でよ り合理酌 であると魁1はれ る.

(昭 和19年8月4日 受理)

1.緒 雪

弾性髄が不均一一Vこ加工されるか又は熱處理 される〓,

不均一な残留變形を受け,内部應力を発生する.この内部

應力 によつて,鋼 材の割れ,變形,耐 蝕性の劣化及び經年

變化等の種々の弊審が惹超 される.最 近球軸受Ft7大型鋼

球の需要は盆 尨ゝ大なもの〓なりつつある反而,本 邦に

於げるこの種の製作は極めて最近のこ〓に屬するので,

その熱處理,研 磨工程並に製品の精度等に關する點に就

いて未解決の問題が數多く残されてゐる.從 つて焼入れ

た鋼球の内部應力測定方法を確立すれば,か かる諸問題

解決の一助に役立っこεは明 らかである.

然るに從來の内部應力に關する研究は,主 〓して加工

による影響を見たこも0)が多く(1、,而も測定は棒 や板fxにつ

いて行つたHeyn及 び8auer(2)法 が一般に廣 く應用 され

てゐるに過ぎない.を 外周から切削3』る毎にその長さ

舞 不二越研究所

*昭和1G年10月 本會第14回 農島大會に発表

(1) -‚ê tC H‚·7, G. Sachs, Pralaische Metallhunde, II

(1934), 145 t- . $4 #, ‚Ä as g .

(2) E. Heyn, O. Bauer, Tnt. Z. Metallogr.,1 (1911), 16; Stahl u.

Eisen, 31 (1911), 760; E, IIeyn Stahl u. Eisen, 32 (1912),

2097; J. inst . Metals,12 (1914),3; Stah1 u. Eisen, 37 (1917),

442, 474, 497; Mitt. Mat.-Priif.-Amt., 35 (1917), 1 .

(3) G. Sachs, Z. Metallk,, 19 (1927), 352; V. D. I„ 71 (1927),

1511; Metallwirtsch., 7 (1928), 1277, 8 (1929), 343. ANT. Pah

renhorst, G. Sachs, Metal lwirtsch ., 10(1931), 783.

の 變 化 を測 る〓云 ふHeynの 方 法 で は,單 に長 さ方 向 の

應 力 のみ し か測 定 出來 な い の で,G. S郷hs(3)は これ に改

良 を 加へ,十 分0)長 さの棒 状 試料 の 中心ASに 穴 を穿 つて'

行 き,そ の 都 度 棒 の 長 さ方向 〓直 径 方 向 の 變 化 を測 定 す

る 〓云 ふ方 法 を 考案 した・この 方法 によ る時 は,長 さ方向,

切 線 方 向 及 び半徑 方 向 の 藁つ の 主應 力 を計 算 で 求 め るこ

〓がて出・來 る.

以 上 のG・Sachsの 方 法 を 利 用 し て9 H. Buhler.

H.13uchholtz, E. H. Schulz及 びE. Scheil(4)は 熱 處理 に

よ る内部 應 力 の 變 化 に就 いて 詳 細 に論 じて ゐ る.槻 しこ

の 方法 は試 料 の 中 心部 に穴 を穿 つ 方 法 で あ るの で,焼 入

れ に よつて 硬 化 す る もの に は適 用 され ず,主 〓 して 焼 人

れ 後 も十分 に切t3947能 なFe-Ni 取 扱 つ て ゐ る.又

A1輕 合金 の 熱 處 理 條件 〓内部 應 力 〓の關 聯 性 に關 す る

實 験(5)に もGSachsの 方 法 は適 用可 能 で あ る.然 し焼 入

れ 後 硬 化 す るや うな鋼 に就 いて 熱 處 理 應 力 を論 ず る場 合

に は,中 心 部 に穿 孔 す る こ 〓が 出 来 な いの で,由 田,田 中

両氏(6)に よ るや うに試 料 を 外 側 か ら溶 解 させ て 長 さ方

(4) 11. Bi hlcr, MitMitt. Ver. Stahl, 2 (1931), 149; H. Milder, H. Buchholtz, E. H. Schulz, Arch. Eisenhiittenwes., 5 (1931 /32) 413; H. Buchholt7, H. Buhler, St.hl u. Riser., 52 (1932), 490; Arch. Eisenhuttenwes,, 5 (1931/32), 247, 253; 6(1932/33)9 335; H. Buhler, E. Scheil, Arch. Eisenhiittenwes„ 6 (1932/ 33), 238; 7 (1933/34), 359.

(5) Er1中,本 誌,5(】941),314,

(6)田田,田中,昭 和18年4月 本 會 第13回 棄 京大に発 表.

Page 2: 焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が - JIM2003/08/10  · fi78 研 究 策8卷 焼入れによる球軸受用鋼球の内部應が 川 口 寅 之 輔級 球軸受用鋼球の熱處理に就いて研究するには,焼

第10號 焼 入 れ に よ る球 軸 受・用 鋼 球 の 内 部 應 力 579

陶の變化を測るご云ふE。Heynの7法 による以外にない.

以上の方法は何れ も相當に長い棒である場合に限 り適

用可能で,鋼 球の焼入れによる内部應力の測定には用ひ1bれない.よ つてここで訳に記述するやうな鋼球0)内 部

力測定方法を考案 した・ 又金屬材料の熱處理 〓内鞭

力〓の關聯性に就いで一般的に論ずる場合にも,鋼 球試

料を用ひた方が次のや うな諸點で最 も合理的である〓考へられる.即 ち〉(1)G・Sachsの方法である〓,十分に長い

棒状試片を用ひ,その應力分布は回轉對欝的であり,〓の

表面にも均一に分布 してゐる〓云ふこ〓を暇定してゐる.

長い棒状試片では1棒 の一端が焼入液に浸される〓同時

にその周圍に不均一な蒸氣の流れを受け,均 一一に焼入れ

るこ〓は先づ不可能である.こ れに反し球状試料である

、V,焼きがより對稱的に入る.(2)從 來の方法による〓相

當長い棒状試片の長 さ變化を見 る必要があ り,且 つ標點

距離閥の測定ではいろいろの誤差が入 り易い歓點がある

が,球體である〓端面間の寸法變化の測定が出來るので,

結果が正確である.(3)實験用球状試片は豫めグイス鋼で

上及び下型を作つて置けば,實 験室の アムスラー型萬能

試験機によつて熱間又は冷問で容易に作 の得る・

II.應 力 の 測 定 方 法

.鋼球の内部應力を測定するには,第1圖 に見 るや うに、

焼きの入つた鋼球の雨端部をパラフィンで被覆して置き,

錫球全部を10%硝 酸溶 液中に浸漬し漸次表面から溶解

せしめ,そ の都度直徑間の寸法變化を測定して内部應力

を計算する.然 し寸法變化の測定をコンパ レーターで行

ふためには,熱 處理を施 した後實験するに先だち豫め鋼

第3圖 に於 て球 の 牛徑 方 向及 び 圓 周 方 向 の 引張 を それ

ぞれP・Q〓 し,厚 さ(dr.量 徑Tよ りな る一小 圓形 部 分

の 李 衡 を考 へ τ見 る.こ の 圓 の直 徑 が球 の 中 心に 對 す る

角 を2〓 す る 〓,こ の圓 の 牛徑 は近 似 的 にr又 その

圓 周 は2π}で あ る.こ の 圓 周 の各 胆位 の長 さに働 く力

はQ49・ で あ り,何 れ も第3圖 に於 け る中 央 の牛 徑OA

だけ傾いてゐるか ら,これ等の力の合力は

次 式の や うに な る.即 ち,

又 内 面 にな單 位 面積 につ い て力Pが 作 用 し,こ の 内面

に結 局 ・(r)2Pの カ を 與 へ る.こ の 全力 の要 素 は何 れ も

平 行 して ゐ な いけ れ さ も,合 力 はzr2θ2P〓 θ3よ り小

きい桁 の 量 だ け しか違 つ て ゐな い か ら,こ れ を合 力 〓考

へ て差 支 へ ない.同 標 に 外 曲 面 に 作 用 す る合 引 張 は

π9(r+ch)2(P+〃)〓 な り,♂rπ瓦(dr2の 項 を省 略す

る 〓・π2{r2P十(1(9・2P)}..な る・ よつ て2面 の 引 張 の

差 即 ち外 方 に半 鰹 に沿 つ て働 く力 は πθ2d/r2P,〓 な る.

これ は 内方 に 半徑 に沿 つ て働 く力2πrθ2(21r〓 準 衡 し

な けれ ば な らぬ か ら,

πθ21(72P)一 一27t9・ θ29・Zr・

これ を書 改 め る 〓,

(1)

(2)

ここで 牛 徑 方 向 の力 のみ を 受 け て る る均等 な球 に於 け

る三 直 角 軸 方 向 の引 張 歪 を それ ぞれ α,β及 び γ〓 し・力

が球 の中 心 か らの距 離 を,・ か ら(9.+2G,に 變 へた 〓すれ

ば,牛 徑 方 向 の 歪 αは,

(3)

〓な る.こ のpr牛 徑(r十u)な る

球 の表 面 の任 意 の 圓 周 は2πr

か ら2π(r十u)に 變 化す るか ら,

圓周 方 向 の歪 βは,

第1圖 鋼球 の應力

測 定用試片第2圖 應 力測定中 の試験

片形状

球の兩端を平面研暦機で李行に而も李滑に研磨 して置い

た方が實験 し易いので,この方法に從ふこ〓にした二・而し

て測定には1/1000mrnま で測定可能 な寺岡式コンバレーターを使用 した・第2圖 の左側のものは洲定の途中に

ある鋼球,'右側の ものは測定を完了した鋼球である.10%

硝酸溶液で腐触 させ る〓,腐 蝕は豫想以上に一様に行き

(±O.5mm),腐 蝕面 も非常に綺麗である.但 し硝酸溶液に

浸漬中,鋼 球の位置を屡 ミ變化せ しめる事は勿論である.

III.計 算 方 法 の 基 礎

第3圖 球 内の一小

圓形部分

(4)

この歪 は牛 徑r二 直 角 な方 向 で

あ るか ら,牛 徑(r十u)の 球 に接

す るfi面 上 に二 つ の直 角軸 を 〓

り,こ の軸 の方 向 の 歪 を β,γ〓

す る 〓,

bな る.

歪 α,β及 び γの方 向 の 應 力 は そ れ ぞれP,Q及 びQで

あ るか ち,刀 を弾 性 率,σ をボ ア ソン比 〓す れば ・應 力 〓

歪 〓の關 係 か ら,

應力の計算方法を確立するためには,先 づ球について

變形〓應力 〓の關係を求めて置く必要がある(7)

(7)球 の年 衡 式 に つ い て は,プ レス ・・。 曙,山 岡譯 應 用弾

性學(コ ロナ社 刊),263を 参 照 され たい.

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580

これ を(3)及 び(4)式 に 代 入 す れ ば,

(5)

(6)

よつ で(1),(1)・(6)式 か らeta P,9を 求 め るこ 〓が 出來 る

(5),(6)式 か らuを 消 去 す るた め(6).式 にrを 乗 じて 微 分

す る 〓,

(7)一(5)を 求 め る 〓,

(1),(8)式 か ら9を 溝 去 す る強

こ こ で7'・21)雲y〓 置 く 〓,

よつ て(9)式 は

この式は同次線型方程式であるから,その解は,

(7)

(81

(9)

(10)

(11)

以上は球の一般平衡式であるので,こ れを各面に均等

な1力 を受ける同心の二つの球面を境界 〓する均質 な物

體に關する解に應用出來る.こ こで同心圓内外の牛徑を

α,b〓 し,内外面の壓力を2),1〓 すれば,

?'=caの 時 は P=ーP

r'=bの 時 はP=一9

(10)式 に これ 等 の 値 を代 人す る 〓,

これ をtl0),(11)に 代 入 して,.A, Bを 消 去 す る 〓,

t12)

(13)

第8卷

以上の 君Qの一 般解を利用 すれは,鋼 球の内部應

の計算を次のやうな方法で行ふこ〓が出來る.

av.應 力 の 計 算 方 法

第4圖 に於て雫徑bの 球を半徑α まで溶解 し去つた

時,MN間 の寸法變化の測定結果が2uで あつた〓する,

こ の2uに ついて考へて見 る〓,

(1) この變形は外側牛徑 αなる中實球(以 下内球〓も

稱 す)に外側半徑b,内 側牛徑 αなる中空の球殼が覆はれ

てゐて,その接燭面に接觸歴が作用 してゐねか らである.

(2)こ のや うに外側 単徑αGな る中實球 〓それを糧つ

てゐた球殻 〓の接觸面に應力があつた〓すれば,そ の應

力のために中實球自身及び球殻自身に憾 應力が引起され,

變形を起してゐたこ筈である。

第4圖 溶解に より除表した球 殻 と中實球

應力の算出方法の方針〓

しては,先 づ腐蝕溶解前に

球殻〓内球〓の接觸面に働

いてゐたこ應力(必 ずしも壓

縮力のみでなく,引 張の機

合を も合む)を假定 し,その

應力値によつて球殻の應力

を算出 し,次 に球殻の變形

量を求める.同 様 にして内、

球の變形量を算出し,か くして計算きれた球殼の變形量

〓内球の變形量 〓の和が測定 された變形量u(牛 徑當り)

に等 しい〓する.以上の式を導くこ〓によつて,始 めに假

定 した球殻〓内球〓の接燭面に働いて ゐた應力を代數的

に算 出 す るこ 〓が 出 來 る.

(1)球 殻 の 變 形 量

球 殻(外 側 半徑 ゐ,内側 牛徑tc)に 内 燈2)の み が 働 き,外

歴9=0な る場 合 の應 力 は,(12)及 び σ3)式 に よつ て與へ

ちれ る。即 ち,

而して變形に對しては(6)式 か ら

又球殻内側に於ける牛徑方向及び圓周方向の應力をそ

れぞれP`及 びQα 〓すれば・r・=CCであるから,

(14)

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酢10鶏 焼 入 れ に よ る球 軸 受 用 鋼 球 の 内 部 應 力

ごの 應 力に よ る變 形 量 をu〓 し,こ れ に(鋤 式 を代

すれ ば・

同 様 に して 球 殻 外 側 に於 け る應 力 を それ ぞれPL,軌

〓すれば,r=bで あ るか ら・ 評

ssr

Aこ のヱP〓qを 半徑 方 向の 應 力PCG以 つて 表 はす こ 〓

〓す る 〓,2},2は それ ぞ れ球 殻 内 面及 び 内球外 面 に對 し

て 何 れ も壓 縮 力 〓 して働 いて ゐた の で あ るか ら,2),4は

Pa〓 して取 扱 ふべ きで あ る。 即 ち球 穀 及 び内 球 に 對

して の變 形量 は,

(16)式 よ り

(15}

この時 の變 形 量 をuT〓 し,(17)式 を代 入 す れ ば,

r=α か ら,'一vに 至 る迄 の 闇 に於 け る變形量uaは,

~。-a=~uδ 一 ~㌔

(1G)

(18)式 よ り(但 しr=α)、

扨て實験に於て測定する變形量は,前述 したこ通 の,球殼

の溶解除去のため中實球外糊 に働いてゐたこ外壓がなくな

り中實球が球殼によって變形せしめられた變形歪が回

復した量 一uGi〓,球 殻が接觸壓によつて變形せしめら

れたこ賜-aが 内壓除去によって回復した變形量 一2CL〓

の 和 で あ る.

今測 定 値 を2u〓 すれ ば,牛 徑 當 りで はta〓 な る.

よつ て 定u=一(uG1+1GA-a)

〓なり,内 側 に1な る應 力 が隙 ・て ゐ る場 合 の球 殼 の變

形量を與へ る.

(2)内 球 の變 形 量

()2},(13)式はそ れ ぞ れ 球殻 の 圓 周 方向 の應 力Q〓 牛徑

右向の應 力Pを 與 へ る式 で あ るが,若 し内側半 徑(に0

〓すれば,そ れは中 實球 のkJ合 〓な る.こ こでP1,(Qを

内球の應 力 〓す れ ば,(12),(13)式 よ り

(l7}

即ち内球 は静 水 壓 を 受 け て ゐ るこ 〓に な り,半 徑 方向 の

應力は丁度 外 壓 に等 しい こ 〓に な る(8)・從 つ て-9な る

外壓を受 けた 場 合,中 蜜 球 は それ に よつ て變 形 す る.そ の

變形最u1を 求 めて 見 る 〓・(17)式 を(6)式 に代 入 して

(3)全 體 の變 形量

(18)

以上で球殼〓内實球の變形量を求めたのであるが,中

寅球〓球殻ξは溶解前,即 ち實験前に於ては互に密着し

て應力を及ぼし合つてゐたこのであるから,中 實球に對す

る外壓は球殻に對する内壓 〓全 く等 しい鐸である.よ っ

て(16)式に於けるP〓 α8)式に於ける?〓 は符號 も大

きさも全 く等 しくなければならぬ.

(8,(121,(13)式 に於 て='1の 時 に は げ の總 て の櫛 ・對 し

汐編 一pと な り,こ れ は材 料 が 神 水 壓 を受 けて ゐ る こ とを

窯味 す る.

(rs)

(20)

即 ち内球 〓球殻 〓の接觸両には 7aな る半徑方向の應力

が作用 してゐたここ〓になる.

(4)球 内各部に於ける半徑方向の應力

實験 に於 け るや うに球 を12,n,書 個 の 重 り合

つ た もの 〓假 定 し,球 殻 を一一重 づ つ 溶 解 し去 り乍 らそ の

度 毎 に第4圖.に 於 け るMN間 の寸 法 變 化 を測 定 し,2戦,

2(2,… …2un,… … な る長 さの 變 化量 を得 たこ〓す る.而 し

て この場 合の結 果 を次 表 の如 く示 し,任 意 の 球 殻 に於 け

る内 側 半徑rnな る面 に於 け る半 徑 方 向 の應 力 を 計 算 し

て 見 る.

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582  研

よつ て(20)式 か ら

(5)球 内各部に於ける圓周方向の應力

(1)式の微分を行ふ〓,

(21)

よ つ て'〉'nの11,3=の 圓 周 方 向 の 應 力 をQnこ す れ ば,

(22)

既に前簡によつて半徑方向の應力1)が 既知 であるか

らP-r曲 線 を描 き,任 意 の半徑 ㌦ に於ける微分・植

を タ ・ゼ … 一 タで求 め,こ れ に を乗 じ,

更 にそ の結 果 にPgtを 加 へ れば,rし な る面 に於 け る園周

方 向 の 應 力Qnを 求 め る こ 〓が 出來 る.

中 心 部 に於 て はr=0で あ るか ら, 一1' な1),牛

徑 方向 の應力 ご圓周 方 向 の 應 力 ごは相等 しい・

但 し以 上 の 應 力 値 は,測定 の た め に残 して あ7,兩 端 の

未 溶 解 部分 を無視 して の結 果 で あ るか ら・ 鋼 球0)寸 法0)

小 さい 時 に は その 影響 が大 き く現 れ る こ ごは明 らか で あ

る.こ れ が さの 程 度 に影 響 す るか に 就 い ては,後 で 實 験 結

果 を以 つ て明 確 に す るで あ らう.

v.實 験試料 と實験方 法

實験 に は 」,112,2及 び2%4"の 鋼球 を用 ひ た.こ れ等

の鋼 球 は鍛 造後,焼 準(920。),焼 鈍176〔0)を 施 され,次 で

特 に大型 鋼 球 は旋 盤 加 工後 研 剛 の 工程 に移 され る.研削

に よる寸 度 が 士0℃2mm以 内に なつ ナこもの か ら試料 を採

取 した.

第1表 軸 受 球 鋼 の 化 學 成 分

鋼球の化學成分は何れも第1表(臨 時 日本標準規絡)の

規格内に入つてゐる。而して豫め本鋼種の焼入温度を見

るために・10mmφ ×鈴mmの 圓筒 を各焼 入瀧度 から

10%食 鹽水(以 後單 に水ε稱する)〓 油に焼入れて實験

究 第8卷

して見た所・食鹽水焼入れでは81A。・油焼入れでは8硬

で最高殿 の得 られるこ〓棚 つたので,以 後の實験

は総てこの温度を採用 した(第5圏 及び第6圖).3ζ 焼λ

/温度に於ける保持時間13鋼 球の大 きさに從ひ1,1/,2及

び2%"鋼 球につき,それぞれ8,10.,15及 び25分 εした

實験は以上各寸法の水焼入れε油焼入れした鋼球につ

第5圖 硬度に及ぼす煙入温度 の影響α0%食 鹽水焼入 れ)

第6h硬 度 に 及ぼ す焼 入温度 の影響(油焼 入れ)

を以 つ て示 した.

いて,そ の

内部應力を

前述の方法

で測定 し,

訳 で1/”

鋼球につい

てのみ焼入

淵度ε焼灰

濃度の内部

應力に及ぼ

す影響を實

験した.實

験結果は總

て各5{固の

鋼球につい

て行つた測

定の平均植

な ほ計 算 上 本鋼種 の焼 入れ 後 のEEヤ ン グ率)の 値 を知

る必要 が あ るの で,直 徑m21 ,:平 行 部 の長 さ115mm,

標 點距 離5{}mmの 試1,を 用 ひ,松 村式5t萬 能試験 機に

マル テン ス鏡 を取 付 けて 測 定 を 行つ た.第2表 は この結

果 で,媛 入 れ に よつ て 難 性率 は焼 鈍 鋼 の 約8%前 後低 く

第2表 焼 入れ 焼戻 した 軸 受11鐸ク ロ ム轟 の弓弾性率

なっ て 來 て ゐ る.然 し油 焼 入 れ ご水焼 人 され た もの この

間 には 著 し い 差 異 は認 め られ ない.よ つ て以 後 の計 算で

は,Eは 總 て20,{}9{kg/mm盛 ご して 計算 し,ボ ア ソ ン比,σ

は1/444し て1汁算 した.

▽工 實 験 結 果

實験結果は掌徑に封 する寸法變化一溶解による鋼球の

表面からの深 さの曲線を描き,こ れから半徑方向V圓 周

方向の應力をそれぞれ(21)・(22)式による計算式から求め

た.

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第10號

(1)本 測定方法の鯖度

燈 入 れ に よ る 球 軸 受 用 鋼 球 の 内 部 應 力

前述 したやうに本方法では,寸 法變化を測定する部か

583

大 き く,な ほ これ に寸 法 變 化 の絶 對 値 が 微 小(1/1000mm

程 度)で あ る 〓云 ふ 囚 子 も加 は る課 で あ る.然 し何 れ の場

合にも中心部に向ふに從つて,そ の差は次

第に大〓なつてゐる.

なほ鋼球は第9圖 の肉眼組織に見るやう

な鍛造による方向性(9)が存するので,實 験

を完了した全鋼球の杵状残部について,そ

の切断面を作 り研磨 した後深腐蝕して繊維

方向性を調べ,測 定値ε比較對照して見た

のであるが,本測定の精度内では,方向性 〓

應力分布〓の間の明確な一般的關係を掴み

得なかつた.

(2)1・1/2,2及 び23/9"鋼 球の内部應力

第10圖 は1"鋼 球について表面からの溶

第7圖1鋼 球 の表面 か らの溶解 こ伴ふ牛徑當 りの寸法 憂化

第8圖23/4σ鋼 球 の表 面 か ら0)溶

解 に 伴ふ=十半徑uiり の寸 法 變化

第m圖1'.球 の表

面 か らの溶解に伴ふ

半徑當 りの寸法鍵化

第ll圖1'焼 入れ鋼

球 の 内 部應 力 分 布

第9圖 鍛造 による 隊 の灘 組織

を鋼球の雨端に残すので,鋼 球全 體の表面積に封 ず

る未溶解部分の面霞の割合だけ誤差が入つて來る課

である.從つて鋼球の直徑の小 さいものは,それだけ

測定値に誤差が多いこ〓になる.例へば1"鋼 球につ

いてその雨端部に直徑5mmの 未溶解部分を残 した

〓する〓,そ の部分の面積 の鋼球表面積に對する割

合は約1:4、になり,.2?}"鋼球で雨端部に直徑10m皿

の未溶解部分を残 した〓する〓・その割合は約1:97

〓なる.

以後の各球 についての應力値は5個 の測定結果の李均

値 を以つて示 したが・例へば第咽 及び第8圖 はそれぞれ

1"〓2%"の 水焼入れされ燗 球の表面からの1欝 に作

ふ寸法變化を示 してゐる.これで見 る〓5個 の測定結果に

は多少の不同があるが,こ れは球の全表面積に對して未

溶解部分の面積を完全に一定に出來難いこ〓もその一因

であら'う.特に鋼球の直徑の小さい昂合1・1よこの灘 が

解に件ふ寸法變化の李均値を示 し,第11圖 はこれか ら計

算によつて求めた牛徑方向〓側周方向の應力分布を示し

てゐる.同 様に第12-17圖 は1}Σ",2"及 び2%"鋼 球

の實験結果 〓それから計算で求めた應力値を與へてゐる.

ここで特に注意 したい こ〓は,2"以 上の鋼球は油焼入れ

(91端 山1岩 佐,應 用 物理,11(1942)338.

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584  研 究  第8卷

の楊合に却って燐割れるこ〓が多いので,豫 め30個 の鋼

球を油焼入れ して置き,焼 入後數 口を経過 して も罰れの

水焼入れ 〓油焼入れによつて内部應力に左程著 しい差

は認め難いが,2"以 上0)鋼 球ではその差が可成 り大きく

第12圖

1%'銅 球 の表

藏 か らの溶解

に伴ふ4塁徑 當

りの寸法變化

第13圖1%β 焼入れ鍋球の内部應 力分霧

第14隙nl2銅球 の表

面か らの溶

解に伴ふ 牛

徑 常り の寸

法變化

第15岡 即 焼入れ鋼球 の内部 應力分布

第16圖

2鐸 鋼球 の表面か らの

溶解 に伴ふ梁徑 當 りの

寸法謎化

第17圖2%4焼 入れ錨球 の内部應 力分霧

発生 しないものにのみついて實駿を行つた。 この焼割れ

の詳細及び原陽については別報にて報告する.

以 上 の結 果 につ い て 見 るに,1",玉1/2"鋼 球 の場 合 に は

なつて來でゐる.な ほここに注意 すべ1きこ〓は1"・1三三"

鋼球は水焼入れ〓油雛入れの兩者,2"鋼 球は油焼入れの

場合にのみ表面からの溶解に伴ふ寸法變化は(+〉 になる

に反し,2"鋼 球の水焼入れ2a4"鋼 球の水焼入れ〓油焼

入れの場合には,表 面か らの溶解に件ふ變化が(一}に な

つて來てゐるこ〓である.從 つてこれに伴ひ内部應力の

分布駅態も異つて來るのは當然である.即 ち表面の溶解

に伴ひ寸法が正 こ變化する楊合は,牛 徑方向の應力は壓

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策10號  髄 入 れ に よ る 球 軸 受 解 鋼 球 の 内 部 應 力

縮力であり・圓栂方向の應力は鋼球の外棚が張力,内側は

蜜縮力〓して作用 する.こ れに反 し表輝から0)溶解に伴

ひ寸法が負に變化する場合{よ,半徑 方向の應力は張力〓

綿5

中心都に起る變態量を知るため,こ れ等鋼球の硬化能

曲線を求めて見るに2"鋼 球である〓中心部の硬度はロ

ックウエルC58~6{前 後で トルースタイトが現れてゐる.

從つて周邊部に壓縮力,中 心部には張力が残 るこ〓にな

る.但 し2"鋼 球の油爐人れの場合には,水焼人れに比較

して熱應力は左程大きくないので應力あ反轉が起つτゐ

る.

以上の應力分布圏に於ては極く表面部の應力は零か又

は僅か反鯨を示 してゐる.こ れは表暦部に於けるAr"變

態後の熱的放縮によつて周遇部のみ應力の反轉が起きた

ためであ る.

(3)應 力分:布に及ぼす燐入温度の影響

焼 入濃 度 が 高 い 〓焼割 れ を伴 ふ の で,焼 入 温 度 に よつ

て 内部 應 力 が如 何 に影 響 され るか に つ い て實 験 して 見 た.

一 例 〓 し て1%"鋼 球 を8{0082(1,840及 び8(6O。 か ら油

第 王8隅 變態 が熱應 力反樽 後開始 し室温に歪つて も終 了せ ぬ場合 の圓柱形鋼材内の體

績變化 と應力 分布駅態 の模型的表示圖

して作用 し,圓 周 方 向 の應 力は 鋼 球0)外 側 が 壓縮 力,内 側

は張力 〓して 作用 し て ゐ る.

かや う に 應 力 〉}布に 反 轉 の あ る こ〓 に 就 い て は,

$ultlerごSthe三lci0が 第18圖 の や う な説 明 圖 を用 ひ て巧

に説明 して ゐ る.こ の 圖 ば 變態 が熱 應 力 反 轉 後 開 始 し,室

温 に至 つて も終 了 しな い場 合の 冷 却 中 に於 け る鋼 材噺 面

の3部 分 の時 腿 の経 過伴 ふsc積 變 化 〓應 力 分布 状 態 を

定性的 に見 た もので あ る.時 間11ま で は熱 應力 の 反 轉

を伴ひ つつ純 梓 な熱 應 力 が 発生 し,こ れ は第18圖aの や

うに分 布す る.Z1 後/周邊 部 に變 態 が起 り體 積 が 膨 脹

し,、前記 の 應力 は 同圖bの や う仁 一暦 増加 す る.こ の應

力 は中心 部 の變 態 が進 行 ず るに._從ひ最 高値 に達 し,そ れ

か ら毒 ぴ減 少 す る.そ の程 度 は熱 應 力 ご變態量 の 如 何に

よつて 定つ て 來 る.も し 室 濃 に 達 す る迄1に中 心 部 の 憂

態量 が十 分 大 で あ る 〓,2回目 の 應 力の 反轉 が起 り,結 局

cσ)や うに,萬邊部酎巽よ張長力, 中 毛」〔〉部1よ壓縮力 を受 け る こ 〓

に なる。

鋼球 の 直徑 が1",1',2"の や うに小 さい鰍に ば一{」心

部 まで{一分 に焼 き が 人 るの で,中 心 部 の變 態 のた め應 力

"'ANA]`を 起 し,燭 邊部は 張 力 ・中 心 部{よ壓 縮 力(第18圖c)

〓な る.

然し更に鋸球の寸法が大きくなつて ツノ,2%"鯉 球程

度になる〓,焼入れに伴ふ熱應力は箔だ大きく・これに反

して中心部の變態最は餘 の大きくないので應力の反轉は

起り得ない.

(10) H. BUhlcr, E. Scheil, Arch. Ei cuhuttnenwes., 6(1932/33), 283.

第19圖焼 入温 謎を 異に した132"銅 球 の

表面 か らの溶 解 に 伴ふ半 徑 富 りの寸法變 化

第17圖 焼入温度 を異 に した11/2"鋼 球の内部應 力分布

に塊 人れ そ の時 の 内部 應 力 を測 定 した ・應 力 の測 定 方法

は前 〓全 く同 一で,第19及 び20圖 に そ の結 果 を示 しナこ.

これ 等 の 結 果 に よ る 〓焼入温 度 が8OO,820で 焼 きが

完 全 に入 つて ゐ ない や うな場 合 に は,こ れ に伴 ふ 應 力値

は可成 り低 くなつ て ゐ る.

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586  研

(4)焼 戻潟度による内部應力の除去

焼 入 れ られ 喪鋼 の 内 部應 力 は焼 戻 しに よつ て緩 解 され

る.焼 入れ 鋼 の 内 部應 力 に及 ぼ す焼 展漁度 ご時間 の影 響

に就い て1よ,H. Buchholtz 〓 H.】Buhler(1)に よつ て餘

す 〓 ころ な く詳 細 に 論 じ られ て ゐ る.

第6)1V縄 焼 入れ 後 焼戻 し を施 した11/2鈴 球 の表 画 か らの溶 解 に 伴ふ 牛徑 宮 りの寸 法 變 化

第 隣 焼 入 れ後 燈 戻 しを施 した1」6σ鋼 球の 内部鋸應力分 布

こ こで は鋼 球 につ いて 檢11し て見 るた め・ 水1二焼 人れ

た1,1/2鋼 球 を そ れ ぞれ 三5(},300及 び4鋤 。に 各30分 つ

つ焼 灰 し,こ れ の 内 部 應 力 を測 定 した の結 果 を第21

及 び,?,2圖 に 示 す.第22圖 〓焼 入れ 直 後 の値 を示 して ゐ

る第13圖 εか ら,圓 周 方向 に於 け る最 大 張力 のiftiが焼戻

温度 に よつ て如 何 に影 響 され るか を 見 れば,他 の 何 れ の

丈獻 結 果 Σ同様,焼 廃 温 度 の 高 くな る につ れ て 内部 應 力

は漸 次 緩 解 され て ゐ るこ 〓が知 られ る.

(ll) PI. Buchholtz, H. B,ulcr,Arch, Eisenhuttenwes,,6(1032), 317.

究 第8卷

VII.結 論

鋼球の内部應力を測定するために鋼球の南端面の極 く一部を残 してTLの 部分を表面から溶解 し去 り,雨 端間の

寸法變化を測つて 半徑:方向 〓圓局方向の應力を算出 する

〓言ふ方法を確立 した.こ の方法を用ひτ各種寸法の環

軸 用大型鋼球の焼入れ應力を算出し次のやうな結論を

得た。

(1)こ の方法による時は,從 來の棒状試片による方法

に比べて焼 きが均一に入るので,一 鯛に金屬の熱處麗〓

内部應力 〓の關係について考究するのに應用する〓,ま

り合理的である〓思はれ る.な ほこの場合鋼球の方向性

〓應力〓の間には明確な關聯性は認め られない.

(2)1"ε1/"鋼 球では,油 焼入れ〓10%食 鹽水焼

人れによる内部應力には著 しい差異を認め難いが,2"以

上の鋼球になる〓油焼入れによる方が食鹽水焼入れのも

のに比較 しで遙に内部應力値は低 い.從 つて焼割れ又は

翼球度の經年變化〓言ふ立場 よりする〓,油 焼入れの方

が2,k しい譯であるが,内部應力値は低いにも掬 らず,油

焼入れの場合には焼割れの缺陷 が伴ふので,更 にこの點

に就いても愼重に 慮しなければならぬ.こ の原因に就

いては別報にて報告する.

(3)焼 人鋼球の内部應力は二つの過程 によつて誘起 さ

れ,ag冷却による普通の放縮によつて鋼の周邊部には壓縮

力・中心部には張力力発生する.而 して中心部 に於ける

Ar變 態 量 の太き.5によつて應力分布は反轉し周邊部

に1よ張力,中心部に1よ壓縮力が現はれる.特に應力の反轉

は,9"鋼 球以下φものに しい.な ほ極く表面部の應力

は零か又は僅か應力の反轉傾向を示 してゐるが,こ れは

表暦部に於けるAr"變 態後の熱的牧縮に原因してゐる.

(4)焼 入濃度の高いもの程,残留内部應力は高い。從つ

て焼きの入 る範圍内で焼入温度はなるべ く低くする必要

がある.例 へば球軸受用 クロム鋼では,10%食 鹽水焼入

れはζ82(0,憂油焼入れでは840を採 用するこ〓が望 まし

い.

φ)焼 戻:温度を高めれば,加 工によつて生ぜせしめら

れた岬 應力同.入 れによる内部應力を職 り緩

解するこ 三が出來 る.

實験に當 り御指導を忝 くした前不二purr究 所長石田求

博士並に金澤工專大岩藤造数擬に深謝する〓共に,蟹 験

に多大の努力を拂 はれた日下俊一君の'に 鋤 し多謝する.