短歌 応募作品 - kasai ·...
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短歌 応募作品
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1
もし明日青空ならば私たす僕たす俺でイザ飛び越える
西宮市
朝
日
弘
茂
2
支えてることで却って私が支えられてることに気がつく
〃
〃
3
右手上げ整備士並び見送るを窓に応えし機長の右手
加東市
宮
田
賢
三
4
白しろい布ぬのオーロラみたいに大おおぞら空の真まん中なかにあり海うみの幸さちとる
広島県福山市
中
田
昌
伸
5
生いきるもの一いち度どは土つちにもどるのかはむかいもせず日にっしゃ射に消きえる
〃
〃
6
答辞読む声のつまりししじまには保護者席にも動くハンカチ
西脇市
藤
原
絋
一
7
少しずつ時刻の違う掛け時計茶の間書斎と寝室にあり
〃
〃
8
年ごとに濃くなる母の影引きてはや四よ十そ年とせの春も過ぎゆく
たつの市
武
内
栄
子
9
役目おえ卵の殻は捨てられしその上に被さる玉葱の皮
〃
〃
10
やったるぞと意い
き
ご気込み過すぎて息いき切きれたわが人じんせい生をしみじみ思おもふ
畑町
齋
藤
恒
義
11
愛いとし妻つま逆さからわずして機き嫌げん取とる夫ふうふ婦喧けんか嘩に牡おすの本ほんのう能
〃
〃
12
夢忘れ四十年が過ぎた今背を押す妻が横におり〝笑み〟
茨城県常陸太田市
鴨志田
祐
一五一
-
13
平凡が似合い過ぎる人生に〝幸せじゃないの〟素直に笑う
茨城県常陸太田市
鴨志田
祐
一
14
プロポーズ返事せぬまま三十年いつの間にかに子も巣立ちゆき
茨城県常陸太田市
鴨志田
和
枝
15
〝ありがとう〟ふいにあなたが言うからねあの日のように背伸びのキッス
〃
〃
16
ふんわりと地上に落ちる夏椿乙女のように白く清らか
西脇市
生
田
頼
夫
17
戸を叩く何時もと違う雨音に不安が募る独り居の老い
〃
〃
18
我が思い文字に記して伝えたい真実のこと歴史綴りて
愛知県春日井市
西
谷
寿
19
人の世に生まれ落ちたる我れなればどんな難にもただ耐えにけり
〃
〃
20
さざ波の立ちいる池に闇迫りつがいの水鳥身を寄せあいぬ
神崎郡福崎町
多
田
多美子
21
窓開けて巣立った孫こ等にそっくりの案山子に一ひと日びよろしく頼む
上芥田町
為
広
鈴
美
22
門先の車待つ間の旅かばんぴょこんと乘りし青蛙かな
〃
〃
23
旬しゅん野菜夫つまの自慢の白菜を土の匂においと軽トラいっぱい
鶉野町
塩
河
和
代
24
今年また夫つまとぶどうの袋かけ終えて真っ赤な夕ゆう陽ひに仰あおぐ
〃
〃 五
二
-
25
逃げ場なきこの焦燥感を持ちあぐね迷い込みそううつという字に
佐用郡佐用町
竹
田
フサヱ
26
きっちりと分量はかり穂肥まく米あまる世となりたる今も
加東市
岸
田
玲
子
27
あれそれと互に言いて通じたり合せ鏡のようなる暮し
高砂市
小
島
和
子
28
農就ついでくれとは云えぬ子の事をふと思いつゝ畦あぜに佇たたずみ
中野町
小
谷
みちよ
29
術じゅつ後ご診みて「ああよくなったね」穏おだやかな主治医の声に心安やすらぐ
〃
〃
30
原発が若狭の海に位置を占めおさなき頃の景色は見えず
赤穂市
大
黒
政
子
31
若き日に歌詠む姉に憧れし我はとつとつ未だあと追う
〃
〃
32
お母さん「ちょっとどこかへ出かけよか」行く先不定の興味に從きゆく
神崎郡市川町
長
尾
たづ子
33
夜明けの気に弾かれかすか音のせりブルーの朝顔十五個目覚む
〃
〃
34
夏至くれば明日から昼は短かいと忙わしく言いし亡母を想う
桑原田町
松
尾
繁
子
35
死と呆といずれが先か分からねど草を引きつゝ今日も幸せ
〃
〃
36
住み慣れし生まれ育った土地が好き身ぎれいにして生き終りたい
吸谷町
後
藤
幸五三
-
37
夕焼けに遠き住む子を思ふ時東の空にあふれる想い
吸谷町
後
藤
幸
38
少年の蹴りしボールが桜はなを撃ち幹をなでつつ詫びいる少女
加古川市
恩
賀
敬
子
39
グラジオラスのみを揺らせてむらさきの風ぐらぐらと過ぎてゆきたり
福居町
楊
井
佳代子
40
夏まつりよりわが家に来たる甲虫居心地いささか悪しと言へり
〃
〃
41
雑草の林となれる二坪の畑に夕べ来るきりぎりす
坂元町
大
谷
明
美
42
梅雨明けの畑の雑草もり上がりむぎわら帽子の爺を隠せり
〃
〃
43
鶴頸の花瓶にそそがれゆく水の充ちたる時に鶴の声生なす
谷口町
山
野
淑
子
44
日焼けした胸に水着の形置く少女の肌に弾力がある
〃
〃
45
観光地夏限定の特産とお手頃価格味にも工夫
岡山県岡山市
佐
藤
邦
夫
46
晴天に入道雲がもくもくと水浴びメイン楽しパラソル
〃
〃
47
排水路を掘りすすめれば遠き日に父と打ちたる杭の現る
山枝町
仲
井
清
澄
48
天気図に投網のごとく広がれる台風ありて沖縄捕える
〃
〃 五
四
-
49
この国を思いのままに変えたいとそうはさせまじこぶしをにぎる
広島県三次市
佐
藤
昌
樹
50
廃屋の息吹か塀に張りつきて燃えいる蔦の風吹けば鳴る
〃
〃
51
十回を目ざそうよ姪達のはげましに旅の一夜に心待ちしおり
加東市
西
本
きよ子
52
戦爭に志願せしとぞ。終戦が三日遅れていたならと夫の顔強ばりしを
〃
〃
53
雨戸なくサッシのガラス一枚で台風去るをひたすらに待つ
神戸市
伊
東
民
子
54
台風の過ぎれば路上に青葉散り橡のころがる花梨も数多
〃
〃
55
昭和期は団扇で涼を取りて夜は今はなつかし時代の流れ
西脇市
安
達
豊
56
酔う程に昔を語る齢になりゆっくり老の至福の至り
〃
〃
57
夫のオペ予定二時間半は過ぎ赤きランプを祈り見つむる
青野町
繁
田
和
子
58
地の果てのアイスランドより中天へ拡がりゆけるオーロラの夜
〃
〃
59
八月になればかならず戦争の話をしをり親の世代は
神戸市
山
﨑
洋
子
60
お坊さん法衣なびかせ颯爽とバイクで走る書き入れ時に
〃
〃 五
五
-
61
音符のごと槌音ひびかう新築の材移動せり声掛け合いて
広島県三次市
錦
佳
秋
62
ひたすらの我をほめたき思いありバラの絵柄の飾り皿買う
〃
〃
63
寒む空に遥かな頂落葉踏み時雨れる峯の雪彦山
西脇市
片
岡
紀
宏
64
人生を気紛に生きて丸くなり平均寿命を生きてみる
〃
〃
65
道みちばた端に落おちし手てぶくろ袋フレミングの法ほうそく則に似にて生せいと徒からかふ
加古川市
柳
茂
66
無む人じん駅えきかすりの柄がらの長なが布ふとん団はからふ人ひとの温ぬくもりを見みる
〃
〃
67
蝉は三日蛍は二十日蜉蝣はたった一いち
じつ日の命が燃える
尼崎市
藤久保
登
68
茫々と野に還りゆく山峡の沿線くだる銀の馬車道
神崎郡市川町
山
本
道
子
69
反抗をするがに膨らむ冬布団を圧縮ケースに押し込みて夏
西横田町
古
角
田鶴子
70
死に近き蛾が自らの鱗粉で机上に図形を描きゆく哀れ
〃
〃
71
先祖より受け継ぎし田を跡取りが損得なしにひたすら守る
下芥田町
宮
﨑
幸
子
72
意識もうない母の手をしっかりと握って温め別れ感じる
〃
〃 五
六
-
73
手を握り最期看取れた母と父古里の墓盆と正月
三木市
今
津
隆
74
お互いに迷惑かけるのが家族心掛けてる許し合うこと
〃
〃
75
早起きの水遣りの今朝初なりのゴーヤ発見目覚めのスムージー
神戸市
松
本
文
子
76
荒草と闘い刃こぼるるを娘は研ぎており農に慣れきて
東笠原町
佐
伯
幸
子
77
五十歳の娘の折りし子鶴読みさしの本のページに羽を休むる
〃
〃
78
父残しサンショウ有りてこの香り思い引き出し強きスパイス
坂本町
山
本
光
範
79
夏木立ち埋まり見えないサンショウは香にて存在生き方教え
〃
〃
80
天命に従う気なれど延命の治療拒否欄サインの鈍る
野上町
伊
藤
悦
子
81
赤とあお朝顔の花数える児今日はお指が足りないと言う
〃
〃
82
戦争を語らず深く秘め込みし卆寿の人は口を開きぬ
北条町北条
谷
垣
わきゑ
83
長き日を口に出さずにふところに秘め生き来し人は戦争をかたる
〃
〃
84
稲子捕へ草も毟りて食べました八十八年生きればあんた
小野市
松
尾
鹿
次五七
-
85
嬰みどり児ごは天使の様な顔をして母の乳房をすがりて眠る
網引町
板
井
ちさ代
86
刈取りの迫る稲田に波のよう三日つづきの雨に叩かる
〃
〃
87
久学寺木洩れ日を浴び石段を登り行く膝笑いだしてる
三口町
中
倉
千恵子
88
久学寺空高く見ゆ雄大さ手を合せたる身が引き締まる
〃
〃
89
これの世の空気を吸いて声をあぐ嬰みどり児ご小さきこぶし握りて
中西町
松
田
辰
子
90
新しき黄色の縞を光らせて女郎蜘蛛朝の巣を揺すりおり
〃
〃
91
碑いしぶみ
に花散りかかり海兵の伯父の勇姿を今も顕たちくる
北条町北条
繁
田
茂
美
92
花好きの友は施設に入りしとう留守の狭庭に花は満開
〃
〃
93
秋風にたなびく雲の絶え間より澄みし月影庭を照らせじ
尾崎町
今
井
しげ子
94
孤独死はないが家族と離れいて施設の母は楽しと涙
〃
〃
95
ふところに百余る実を擁く枇杷こがねに輝く昭和の母性
姫路市
竹
原
俊
三
96
高三の燃ゆる葉月の十五日戦ひてありぬ背の芨重し
〃
〃 五
八
-
97
クーラーの部屋に籠りて雑草の庭を横目で今日も見ており
西谷町
石
野
乃倫子
98
逝きし娘の十七回忌がはやもきて忘れ形見は大学院生
〃
〃
99
暦では何ひとつない今日この日孫陽よう旬しゅんのひとり立ち記念日
別所町
松
本
育
子
100
待ちにまちやっと歩きし男孫なり拳振りつつテンポ八拍子
〃
〃
101
建物に吸い寄せらるるサイレンの音を聴くたび我今を感ず
大阪府大阪市
谷
口
英
幸
102
バラ愛でる信州の旅甘い香が心に残り名『ロサ・グラウカ』
西上野町
世良田
瑞
穂
103
戦地での「母国の便り」ひもとけば家族の日常生きくる励み
〃
〃
104
窓窓を開け放ちたる村工場青田吹き来し風を吸ひ込む
畑町
河
原
すみ子
105
餅を搗く兎が住むと信じてゐたあの日と同じ今宵の月は
〃
〃
106
頂より望む盆地の家並はわが血縁の生あれて死すまち
広島県三次市
錦
武
志
107
三次野の里に高く磨ぎ住む山脈をわが故郷の八十二歳
〃
〃
108
特攻機の征きたる跡やうずら野に六十九回目の彼岸花咲く
加東市
丸
山
義
隆五九
-
109
開聞岳かすめて征きし特攻の戦とも友世に在らば米寿なり鳴呼
加東市
丸
山
義
隆
110
秋めきて君と訪ねし古寺の寄り添うな野仏の群れ
神戸市
新
田
和
代
111
統合の小学校の跡なりて特とく
ら
う
別養護老人ホーム「さくら苑」たつ
神戸市
山
岡
倭
112
青き実を撓につけて立つ公孫樹炎暑に耐ふる妊婦さながら
〃
〃
113
水田の餌を啄ばみいし鷺の群れ我寄りゆけばゆっくり舞い上ぐ
多可郡多可町
徳
原
久
美
114
わが背をそーとさすりて小一は「うの字みたい」と笑顔に覗く
坂元町
後
藤
記代子
115
秋の陽に白く輝き聳え立つ父はは夫も逝きし病院
〃
〃
116
盆の客去りて声なき山合いの小村の昼を小綬鶏の啼く
網引町
岡
田
笑
子
117
垂れそめし早稲田に風の渡るとき羽音を見せて群雀立つ
〃
〃
118
震災の痕あとがなだらになってゆく二十年経へたる考かうひ妣の墓標
大阪府池田市
太
田
省
三
119
面影の薄れぬやうにアルバムを開く八月妣ははは病弱
〃
〃
120
雪いだくアラスカの山遠く見て鯨の潮の上がるを追へり
神戸市
塩
谷
凉
子六〇
-
121
青く澄むアラスカ氷河は時として轟音たてて崩れ落ちたり
神戸市
塩
谷
凉
子
122
麦畑黄金色に輝けりゴッホの畑に迷いこみたり
北条町古坂
定
行
芙久代
123
寒き夜お湯につかれば「極楽」と声の出る出る呪文の如く
〃
〃
124
ぽこぽこと若き葉っぱの育ちたる公園にはや緑の木陰
三田市
加
藤
容
子
125
さくら橋からたち橋と続きたり花の名多き街を楽しむ
〃
〃
126
亡き夫が愛読したる文庫本棚より今日もわれを見つめる
鶉野町
河
合
幸
127
九条の傘に守られ六十九年「きけわだつみのこえ」に泣かさる
田谷町
岡
本
一
成
128
孟蘭盆会子や孫たちの集まりて先祖の御霊安かれと南無
〃
〃
129
名月に行ってくるぞと旅行するそんな時代の夢をみている
別府町
松
末
智
行
130
菜の花の陽炎くぐり一両の電車のたりとホームにつきぬ
窪田町
後
藤
千
明
131
川の面にひと筆書きの文字ゆらぎ蛍飛び交う短き刻を
〃
〃
132
大雨の合い間にぬっと赤い月寒さの夏を悼むがごとく
神戸市
多
田
信
治六一
-
133
くっきりと瀬戸の島々眺めよし霞もいっぷく初夏の笠形
神戸市
多
田
信
治
134
右、左、どこから見ても祭壇の亡夫が私を見ているようで
南網引町
山
下
さかゑ
135
まるまりて胎児のように寢ねてみる母よも一度話がしたい
〃
〃
136
門先に並びし早苗朝露の小さき玉が葉先に光る
北条町小谷
長
尾
八重子
137
乳がんの手術前なる友の声吾の体験役に立つなら
〃
〃
138
夏萩の溢れ咲くなり朝露にその広がりの疎ましきまで
西宮市
中
山
敬
子
139
柏餅退いた後には水無月のとろりと座り雨の予感す
〃
〃
140
猛暑日のやうやう暮れて青き田に葉擦れかそけく風の音聞く
加東市
藤
原
峰
夫
141
下宿屋で三分待ちし日偲びつつ今日の昼餉は即席ラーメン
〃
〃
142
はじめての女の曽ひ孫まご「陽ひなたちゃん」はよ顔みたい抱いてやりたい
東剣坂町
中
本
千鶴子
143
終戦日び特攻基地に孫と来て若き勇士の碑いしぶみ
なでる
〃
〃
144
死にちかき娘に添ひ寝の夜の更けて馬追ひの声腸にしむ
加東市
桂
日呂志
六二
-
145
ペコちゃんのやうな顔して奈々ちゃんは黙って髪をくくられてゐる
小野市
濱
崎
敬
子
146
母となり腕かいなに抱き吾子をみる愛のまなざし名画のやうな
神戸市
竹
平
洋
子
147
真白なるカーテンふわあっと揺るがして緑入り来る我が枕元
別所町
千
石
嘉代子
148
亡き夫の洋服タンス背広つり三十余年やっと捨てたり
多可郡多可町
宮
﨑
喜美子
149
声かけば赤子の燕口を開け可愛いい燕巣立てば淋し
〃
〃
150
地球という星に生まれて24年なぜか今更気になる空の青
神戸市
北
野
中
子
151
からあげを嚙み切る時の唇で愛を告げたり、死を告げたり、ひと
〃
〃
152
バス停にきらめく若き声のしてお元気ですかと吾に問うなり
神戸市
田
頭
幸
子
153
連凧の紐を掲げて走れども幼に風は届かざりけり
〃
〃
154
いささかの危を乗り越えて金婚式とにもかくにも今日を迎えし
西笠原町
堤
田
恵
子
155
里山に熱きシャワーを浴びるごとくま蝉さわぎ暑さしみ込む
〃
〃
156
手廂に桜咲く日を推りおり退院近き窓辺に寄りて
北条町横尾
宮
﨑
艶六三
-
157
ターミナルに運び込まるるゴミの嵩戦時思えば罪のごとしも
北条町横尾
宮
﨑
艶
158
黒雲を押しやる強き風受けて若き穂先は垂れず抗う
西笠原町
尾
上
陽
香
159
おむつ替えつつリピート押せばコキリコ節に拍子とる姑
西笠原町
尾
上
静
子
160
おかえりと孫に一番に言うことを姑は生き生き声高め言う
〃
〃
161
わたくしの踏みかためたる蕨みちにくずの葉しげりぬ
夏は来にけり
西笠原町
岸
本
延
子
162
みぎひだり長さが違う薬指ゆび輪をするのに不便はないが
神奈川県横浜市
松
岡
紀
子
163
雪知らぬ君の歩みはへつぴり腰今日は私が待つててあげる
〃
〃
164
かばさんが大き肉塊乗せねむる短き脚をしびれさせつつ
谷町
垣
内
啓
子
165
巨大なるイージス艦に揚げられし日の丸みゆる震えてみゆる
〃
〃
166
食べるにも腹七分目で箸運ぶ卒寿の父ちちの静かな力
多可郡多可町
藤
本
るみ子
167
星空の飛行機のあかり目で追いて旅人となる夢のひととき
〃
〃
168
くつきりと対岸の木を映す上へでワルツを踊るアメンボの群
野条町
宮
﨑
要
子六四
-
169
家近き畑ではたらく夫と子に鍋をたたきてお昼のあひづ
野条町
宮
﨑
要
子
170
プールへは車で送る夏休み時とき代の流れか脆弱なりて
上芥田町
為
広
恵
子
171
北条の鉄道を撮る精也さんいつまでも見たしと録画する
西宮市
舟
辺
隆
雄
172
笑わない親父が独り電球の下から人を見る古本屋
〃
〃
173
思いっきり声あげて泣く幼いて夏の医院のいきいき清し
中西町
岸
本
洋
子
174
乾からちち乳を吸われる痛みに耐えながら「マレーシア機を撃墜」を聞く
神戸市
金
沢
多勢子
175
会いたいと思う気持を押し潰しハンバーグこねキャベツを刻む
〃
〃
176
選られつつ花輪なしゆく花のやう神に編まるる人との縁
神戸市
和
田
愛
子
177
潰されし乳鉢にナッツ砕きをり姑との遠き葛藤もまぜ
〃
〃
178
石の上にスーパーマンの飛ぶかたち腹をペタンと付けて寝る犬
野上町
伊
藤
美
鈴
179
前列の頭と肩の間より子に似た顔のハモニカを吹く
〃
〃
180
たぶん台所からだなカネタタキ会話に割って入るのが好き
神奈川県横浜市
松
岡
正
人六五
-
181
叱られて歯を食いしばる子もなぜか慰め言葉で涙ポロポロ
神奈川県横浜市
松
岡
正
人
182
ひよどりの鳴き声おぼろにきこえくる何にもしない海王曜日
神戸市
上
杉
憲
一
183
星を出たあやなす光の通い路をほんの一ひととき瞬一人占めする
〃
〃
184
明太子の粒一つにも生命があったとばかり歯牙に弾けり
鶉野町
河
合
弘
美
185
一人居の私の留守を守るごと部屋いっぱいに百合の香のたつ
倉谷町
山
本
智
子
186
遠くより「オーイ」と呼びて小学生の男の子が手を振る我も手を振る
〃
〃
187
伝えたき何のありてか夕顔は天を仰ぎてふるう花びら
上野町
能
瀬
みよ子
188
不治の病やまい二つ余りを身に抱きておたおたと吾老の坂ゆく
〃
〃
189
村内でたった一つの鯉のぼり男おの子三人嬉嬉と弾みぬ
笹倉町
岩
井
清津子
190
加西のブランド根日女みどり十年作る八十路なれども多く出荷す
〃
〃
191
被災地の大地に触れしたなごころ疼痛染みる地球の叫び
岐阜県加茂郡
細
江
隆
一
192
一本松波に抗うしなやかに自然の猛威学びし姿
〃
〃 六
六