基礎化学 1 プリント 1 電子顕微鏡写真 · プリント3 遮蔽と貫入...
TRANSCRIPT
~ 1 ~
基礎化学 1 プリント 1 電子顕微鏡写真
PbFeO2F の電子顕微鏡写真
~ 2 ~
~ 3 ~
~ 4 ~
基礎化学 1 プリント 3 遮蔽と貫入
遮蔽と有効核電荷 電子と原子核の間にはクーロン力が働いている(図
4)。では内側の軌道にある電子と外側の軌道にある電
子では同じようにクーロン力が働いているのか?Li 原
子の場合を例に考えてみよう。Li は 3 個の電子を持っ
ており、1s 軌道に 2 個、2s 軌道に 1 個の電子を持っ
ている。2s 軌道の電子が感じる原子核の正の電荷は、
内側の 1s 電子に打ち消されているので+3 より小さく
なっているはずである(図 5)。
このように電子によって原子核の電荷が打ち消され
る効果を遮蔽といい、外側の電子が感じる、遮蔽によ
って実際の核電荷より減少した核電荷を有効核電荷
という。Li の場合 2s 電子が感じる有効核電荷は+1.28
である。表 1 に計算で求められた幾つかの元素有効核
電荷を示す。
図 5 クーロン力の模式図
図 6 Li 原子の模式図
図 7 有効核電荷の考え方
原子核
+
電子
- +と-の間で引きつけ合う
力が働いている。
𝑭𝑭 =𝒛𝒛𝟏𝟏𝒛𝒛𝟐𝟐𝒆𝒆𝟐𝟐
𝟒𝟒𝝅𝝅𝜺𝜺𝟎𝟎𝒓𝒓𝟐𝟐
表1 有効核電荷の表
~ 5 ~
-貫入-
電子雲の図は最も電子密度が高いところを線で描いてい
る。1s 軌道の場合、原子核から 0.1nm あたりで電子密度が
最大で、形が球状なので、このように描かれている。
では 2s 軌道ではどうだろうか?下の図2を見ると 2s 軌
道は 2 重になっており、1s 軌道の内側に電子密度の高いと
ころがあるのがわかるだろうか。これは 1s 軌道の外側にあ
る 2s 軌道の電子が、1s 軌道を通り越し、1s 軌道の内側に
まで入ってきていることを示している。これを貫入という。 貫入は s 軌道以外にも見られ、p 軌道の場合、外側にある
3p 軌道が 2p 軌道の内側に入り込んでいる。(図3)
注 2s 軌道の電子密度分布が最大の部分は 1s 軌道の外側にある。
たとえ電子が貫入していたとしても、主量子数が大きい軌道の方が外側にあることにはかわりはない。
図 2 1s、2s 軌道の密度分布
図 3 p 軌道の電子密度
図 1 1s 軌道の電子雲
~ 6 ~
~ 7 ~
-電子軌道のエネルギー準位-
ここで電子が軌道を埋める順番を思い出してみよう。“基本的には”クーロン力によって原子核に近い
軌道、すなわち主量子数の小さい軌道の方がエネルギー的に安定であるので、主量子数の小さい軌道か
ら順に電子が詰まっていく。しかし、電子には遮蔽と貫入の効果が働いている。例えば 4s 軌道は内側の
軌道の中にまで貫入しているので、遮蔽の効果を受けにくく安定になる。一方、3d 軌道は貫入していな
いので、内側の軌道による遮蔽の効果を強く受け、比較的不安定となる。その結果、軌道のエネルギー
順位が入れ替わるのである。しかし、この貫入と遮蔽の効果はきわめて微妙で 3d 軌道に電子が入ると、
d 軌道による遮蔽の 4s 軌道が不安定となり、エネルギー順位は再度入れ替わる。
図 4 エネルギー準位の入れ替わり
~ 8 ~
基礎化学 1 プリント 4 化学結合
図 3 金属結晶とイオン結晶の違い
図4 O2分子の分子軌道 図5 C2分子の分子軌道 図6 Li2~F2分子の分子軌道
σ結合 π結合
図 1 σ結合とπ結合
図 2 ケテラーの三角形
~ 9 ~
図 7 極性分子と双極子モーメント
図 8 水素結合の模式図
図 9 ファンデアワールス力
~ 10 ~
基礎化学 1 プリント 5 固体の構造
問 1 次の A~E のうち単位格子として正しいのはどれか
4 つの空間格子と 7 つの結晶系
A
B
C
D E
単純格子 (P) 体心格子 (I) 面心格子 (F) 底心格子 (C)
primitive lattice body-centered lattice face-centered lattice base-centered lattice
~ 11 ~
7 つの結晶系と14のフラベー格子
結晶系 格子定数の関係 空間格子
立方晶系 cubic system a=b=c α=β=γ=90º P, I, F
正方晶系 tetragonal system a=b≠c α=β=γ=90º P, I
斜方晶系 orthorhombic system a≠b≠c α=β=γ=90º P, I, F, C
六方晶系 hexagonal system a=b≠c α=β=90º, γ=120º P
三方晶系 trigonal system a=b≠c α=β=90º, γ=120º P
(菱面体晶系) rhombohedral system a=b=c α=β=γ≠90º
単斜晶系 monoclinic system a≠b≠c α=γ=90º, β≠90º P, C
三斜晶系 triclinic system a≠b≠c α≠β≠γ≠90º P
問 2 次の結晶の結晶系と空間格子を答えなさい
結晶系 斜方晶 空間格子 面心 配位数 結晶系 空間格子 配位数
結晶系 空間格子 配位数 結晶系 空間格子 配位数
NaCl 型構造 a=b=c α=β=γ=90º
ダイヤモンド型構造 a=b=c α=β=γ=90º
CsCl 型構造 a=b≠c α=β=γ=90º
a≠b≠c α=β=γ=90º