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Page 1: 監修/一般社団法人日本インバウンド教育協会 · 安の殿堂が切り開くアジア観光交流圏という市場」メディア 研究所 ・中村好明2014「インバウンド戦略-人口急減には観光立

監修/一般社団法人日本インバウンド教育協会

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はじめに 2

1. なぜ今「観光立国」なのか? 4

2. インバウンド観光と公共哲学 6

3. インバウンドは輸出産業 8

P31章1章 理念編

1. 「教える力」認定講座 11

2. 理念と目標設定 12

3. 楽習モデルで教えよう 14

4. 学習プログラムを作成する 16

5. 「教える力レシピ」と「振り返りと評価」 18

6. インストラクショナル・デザイン 20

P101章2章 講師力養成編

1. Web教材の利用方法 23

2. インバウンド論 24

3. 着地型観光論 26

4. 着地型マーケティング論 28

5. マーケティング論 30

6. みなとまち観光論 32

7. 外客免税制度改正 34

8. Web教材の構成モデル 36

P221章3章 Web教材利用編

Contents

1

Page 4: 監修/一般社団法人日本インバウンド教育協会 · 安の殿堂が切り開くアジア観光交流圏という市場」メディア 研究所 ・中村好明2014「インバウンド戦略-人口急減には観光立

はじめにこのテキストは、インバウンド観光人材育成の指導者を

希望する受講生に対して、講義を展開するときに必要とな

る指導者のための手引き書になるように作成している。標

準的な授業計画は以下に記しているが、高等学校の総合

教育などで、観光キャリア教育として利用する場合は、第2

章は不要である。

1.概要

観光産業は大きく、インバウンド(訪日旅行)、アウトバウン

ド(海外旅行)、イントラバウンド(国内旅行)の3つに分け

ることができる。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開

催時にインバウンド観光客を2000万人にすることが政府の

成長戦略目標となっている。その規模は、現在の2倍にあた

り、新たなインバウンド観光市場に対応するには、知識と技

能を身につけたインバウンド観光人材を多数、早期に育成

する必要がある。そうした人材育成にあたる指導者の手引

きを提供し、指導内容、質を確保する。

まず、第1章では、日本の観光立国の概念とインバウンド

観光の必要性を理解するためにインバウンド観光需要にい

ち早く対応して成果をあげてきた中村好明(ドン・キホーテ

グループ株式会社ジャパンインバウンドソリューションズ代

表取締役社長)の論点(公共哲学の視点、外貨獲得の役

割)を理解する。

続いて第2章では、指導者の質を確保するため、前田出

の講師力養成ステップを学ぶ(「教える力認定講座」の著

者、一般社団法人生涯学習認定機構代表理事)。

第3章では、神戸夙川学院大学観光文化学部にて

2013年度より製作してきたeラーニングの教材を利用したレ

ベル1からの指導方法を学ぶ。

2.到達目標

文部科学省委託「成長分野における中核的専門人材

養成等の戦略的推進事業」で定義された中核人材レベル

2とレベル3の人材を育成する指導者の基礎的知識技能を

身につけ授業を行うことができることを目標とする。

3.講義計画

1)第1回〜第3回(理念編)

○テキスト第1章

日本の観光立国の理念とインバウンド観光の必要性を

理解する。

2)第4回〜第8回(講師力養成編)

○テキスト第2章

インバウンド観光指導者の講師力を養成する。

3)第9回〜第15回(Web教材利用編)

○テキスト第3章

・インバウンド論

日本のインバウンド観光の現状を理解し、ビジネスやプロ

モーション事例などから新しい観光のトレンドを理解する。

・着地型観光論

マスツーリズムに代わる地域が主体の新しい観光モデ

ルの理解と事例研究。

・着地型観光マーケティング論、マーケティング論

地域の魅力を商品化するためのマーケティング手法の

修得。

・みなとまち観光論

地域(みなとまち神戸)の歴史文化、自然について幅広

く知り、文化、産業と観光の関係性を学ぶ。

4.その他

Web教材を事前に予習とともに参考書で理解を深めて

おく。参考書としては、以下を推薦する。

・中村好明2012「ドン・キホーテ流観光立国への挑戦-激

安の殿堂が切り開くアジア観光交流圏という市場」メディア

研究所

・中村好明2014「インバウンド戦略-人口急減には観光立

国で立ち向かえ!」時事通信社

執筆者紹介

中村 好明 (なかむら よしあき)

㈱ジャパンインバウンドソリューションズ代表取締役社長一般社団法人日本インバウンド教育協会理事日本ホスピタリティ推進協会グローバル戦略委員会委員長神戸夙川学院大学客員教授

2000年ドン・キホーテ入社。広報、IR、マーケティング、新規事業の責任者を経て、08年7月、社長室ゼネラルマネージャー兼インバウンドマネージャーに就任。13年7月㈱ジャパンインバウンドソリューションズを設立、代表に就任。ドン・キホーテグループに加え、国、地方自治体、民間企業のインバウンド分野におけるコンサル業務、教育研修事業、プロモーション連携事業に従事。

《1章》

インバウンド観光人材育成指導者用テキスト

理念編

2 3

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事例①

ポイント

なぜ今「観光立国」なのか?

<2014年に1300万人を突破>

今、インバウンド観光、すなわち訪日外国人旅客の需要

が加速的に伸びている。日本政府観光局(JNTO)による

と、訪日外国人旅行者数は2013年(平成25年)に初めて

1000万人を突破し、翌2014年(平成26年)にはさらに増え

て1341万人となった。次の目標は、東京オリンピック・パラリ

ンピックが開催される2020年までに2000万人達成である。

2014年は、円安で訪日旅行の割安感が高まった。10月

に外国人観光客(非居住者)に対する消費税の免税対象

品が従来の家電や衣料品から、化粧品や食料品などの非

消耗品を含む全品に拡大したことも、好影響を与えたとみ

られる。

<世界の観光需要を取り込む>

日本はなぜ今、こうして外国人観光客の誘致を強化して

いるのだろうか。2012年(平成24年)に誕生した安倍晋三

内閣は、いわゆるアベノミクスの「3本の矢」、

①大胆な金融政策

②機動的な財政政策

③民間投資を喚起する成長戦略

という三つの基本方針を立てて経済政策を展開してい

る。この中で、③の成長戦略の最重点分野の一つに掲げ

られたのが「観光立国」である。

日本が目指す観光立国とは、「急速に成長するアジアを

はじめとする世界の観光需要を取り込むことにより、地域活

性化、雇用機会の拡大などの効果を上げること」。世界中

の人々が日本の魅力を発見し、伝播することによる諸外国

との相互理解の増進も期待されている。

<観光分野では新興国>

もっとも、国際観光市場において、日本のインバウンドの

存在感は決して大きいわけではない。日本の国際観光客

(外国人観光客)受入数の世界ランキングは、1000万人

を超えた2013年の段階で27位。2011年(平成23年)の

39位、2012年(平成24年)の33位からは上昇したが、GDP

(国内総生産)世界3位の日本がこの水準というのは非

常に残念な状況である。観光大国として知られるフランス

には年間8500万人以上が訪れている。隣の韓国をみて

も、2014年の訪韓外国人客数は1420万人を超える見通し

(韓国観光公社調べ)で、韓国はアジア各国へのビザ緩

和措置でも日本に先行している。

日本は、インバウンド観光の分野ではまだまだ遅れており、

インバウンド消費の指標となる国際観光収入(2012年)で

みると最も多いのは米国で、年間1395億6900万ドルに上

り、日本の10倍近い数字となっている。

<人口急減社会の救世主>

また、日本が観光立国を目指す背景の一つが、人口急

減社会の到来である。今、日本は人口の高齢化が進む一

方、出生率の低水準が続き、人口減少が年々深刻化し

ている。なかでも15歳から64歳の生産年齢人口(現役人

1年間の訪日外国人客数が1300万人を超えたのは

2014年12月14日。1300万人目はインドネシアの方で、セレ

モニーは九州への観光客誘致に貢献したゆるキャラのくまモ

ンも登場した。

インドネシアは政府が誘致に力を入れる東南アジアの国の

1つ。タイ、マレーシア、フィリピンなどのへのビザ条件緩和に

続き、2014年6月には、インドネシアのICパスポート所持者を

対象にビザ免除する方針も発表され、今後のさらなる需要拡

大が期待される。

□訪日外国人客数1300万人達成

口)の落ち込みは深刻である。次世代を担うべき若者、出

産適齢期の女性が減り、介護費などの社会保障費用の

かかる老齢人口が急増。生産力だけでなく、国内消費力

の落ち込みも懸念されている。こうしたなか、交流人口を増

加させるインバンド観光は、日本の活力を支え未来を創る

無限の可能性を秘めた産業であると言える。日本はサービ

スとおもてなしでこの国を豊かにする国づくりへのパラダイ

ムシフトが求められている。そのためには、インバウンド観光

に直接関わる人だけでなく、国民全体の意識変革が不可

欠である。

①訪日客1000万人突破も世界ランキングは27位

②アジアをはじめとする世界の平和を牽引する

③インバウンド観光需要で人口急減の地方を創生図1 訪日外国人旅行者数及び日本人海外旅行者数の推移

図2 国際観光客到着数(2013年)

国土交通省『観光白書』平成26年度版より

理念編 1

380

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

(注)1 日本政府観光局資料に基づき観光庁作成。 (注)2 平成24年の数値は暫定値。

(万人)

40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62元年平成 (年)昭和

3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 2324

日本人海外旅行者数訪日外国人旅行者数

2013年UNWTO国連世界観光機構のデータに基づき作成(万人)

0

2,000

1,000

3,000

5,000

7,000

4,000

6,000

8,000

8,500

1位 フ

ランス

2位 ア

メリカ合

衆国

3位 ス

ペイン

4位 中

5位 イ

タリア

6位 トルコ

7位 ド

イツ

8位 イ

ギリス

9位 ロ

シア

10位

タイ

11位

マレーシア

12位

香港

13位

オースト

リア

14位

ウクライナ

15位

メキシコ

16位

ギリシャ

17位

カナダ

18位

ポーランド

19位

マカオ

20位

サウジアラビア

21位

オランダ

22位

韓国

23位

シンガポール

24位

クロアチア

25位

スウェーデン

26位

ハンガリー

27位

日本

28位

モロッコ

29位

アラブ

首長

国連

30位

南アフリカ共

和国

8,500

6,977

6,0665,569

4,770

3,780

3,146 3,1172,836 2,655 2,572 2,567 2,481 2,467 2,373

1,792 1,659 1,584 1,427 1,321 1,280 1,218

未確定

未確定

1,096 1,068 1,036 1,005 991 951

4 5

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事例①

事例②

ポイント

インバウンド観光と公共哲学

<観光立国元年は2003年>

日本のインバウンドは、観光産業の中でも極端に新しい市

場である。国内旅行は平安時代の京都からの和歌山への

熊野詣や伊勢詣でなど長い歴史がある。アウトバウンド観光

(海外旅行)も1964年(昭和39年)の海外旅行自由化以

降、半世紀で年間1800万人前後の市場にまで急伸した。

それに対し、日本政府がインバウンド観光に力を入れ始

めたのは2003年(平成14年)からで、まだ10数年に過ぎな

い。当時の小泉純一郎首相が施政方針演説で言及した

のをきっかけに、「外国人旅行者訪問促進戦略」が掲げ

られ、海外の観光見本市への出展、メディアや旅行関係

者の招請事業を中心とした「ビジット・ジャパン・キャンペーン

(VJC)事業」が始まった。これが日本の観光立国の元年

だと言われている。

それ以来、インバウンド観光推進の中心を担ってきたの

は国や自治体である。訪日客の増加が見込める国や地域

を「促進重点国・地域」などとして定め、国費や県費などの

税金を投じて各地でインバウンド観光の振興に取り組んで

きた。

もちろん、これら官の力は重要だが、今後は民間による違

う角度からのアプローチが不可欠である。実際、ここ数年、

大型商業施設や小売りチェーン、ホテル、旅館、運輸、ITと

いった各種サービス産業の人々が協働して誘致に取り組

み始めている。

<私とあなたではなく私たち>

インバウンド観光の発展において意識すべきは「私た

ち」の関係として物事を捉える公共哲学の視点である。公

共哲学の基本的な概念である「公共世界」は、英語では

PUBLICSと複数形で表記される。公共を普通に英訳すれ

ばPUBLICだが、英語の名詞の末尾に-Sを付けると複数

形になる。公共哲学において、「公(おおやけ)」という概念

は一つではないということである。

つまり、公共哲学の視点は、「私とあなた」ではなく、「私

たち」の関係である。組織・団体生活を送っていく上で規

律、モラルは必要であるが、人間人格的な関係に上下、優

劣は存在しない。しかも、成功している組織は常にフラット

で風通しがいい。

これからのインバウンド観光振興は、個人の力によって支

えられた民間企業と、政府・自治体の官民連携なくして成立

しない。全国各地の自治体と民間企業との協働の中でも、

官民連携の礎は、関係者の公共哲学的モラルの中にある。

この「私たち」の関係を日本国内で完結させず、近隣諸

国との関係にも拡げる必要がある。インバウンド観光は、一

方的に日本に旅客を誘致するでは持続しない。例えば日本

からもアウトバウンド観光の旅客がいないかぎり、国際航空

路線は赤字となる。双方の国が、ライバルではなく、パート

ナーとなることが、インバウンド観光の持続的な発展には必

要不可欠である。

公共哲学は「私たち」の哲学。日本のインバウンド観光で

も、こうした「私たち」の取り組みが誘致に結び付いた事例が

生まれつつある。その一つが民間企業、しかも普段はライバ

ル同士にある同業種の企業が連携して外国人を呼び込んだ

「新宿ショッピングキャンペーン2014」だ。

同キャンペーンでは、春節と呼ばれる中華圏における大型

連休の訪日需要を狙い、ドン・キホーテ、伊勢丹、京王百貨

店、マルイ、東急ハンズ、ビックカメラ(ビックロ)、ルミネの7社

12店舗が共同で「新宿お買い物ガイドブック」を多言語で作

成し、計8万部を配布した。

その結果、参画企業の一つであるドン・キホーテの新宿地

区2店舗の外国人客の売上は前年比で400%を超えた。冊

子を持って店をハシゴして買い回りを楽しむ外国人の姿も目

立った。ライバル同士が街を盛り上げる目的に一直線に向

かった事業の好例と言えるだろう。

民と民の連携に、さらに官の力が加わった成功事例が、同じ

く2014年に行われた「指宿春節フェスティバル」である。

春節に合わせた1月30日~2月3日、鹿児島県の指宿駅に

は焼酎の鏡開き、ぜんざい、豚汁、さつま揚げ、お茶などの屋

台が用意され、外国人観光客1000人にふるまわれた。また、

市民によるフラダンス、地元の太鼓などのパフォーマンスも行

われた。フェスティバルに際し、まだ訪日外国人旅客者の誘

致に取り組んでいない宿泊施設からも、“未来のために”と協

賛が相次いだ点でも注目される。指宿地区はもともと官民の

連携ができており、商工会議所の青年部、旅館組合も結束し

ている。フェスティバル当日には、指宿市長をはじめ、市役所、

鹿児島県観光局の幹部も駆けつけた。

その後、指宿の観光関係者はこの夜の動画や画像を携え

アジア各地にセールスに回っている。その結果、観光客は着

実に増えている。

□新宿ショッピングキャンペーン

□指宿春節フェスティバル

①インバウンド観光において「公」は一つではない

②公共哲学「私たち」の視点でインバウンド観光を展開する

③アジアは日本のパートナーである

理念編 2

新宿ショッピングキャンペーン2014

指宿春節フェスティバル

6 7

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ポイント

事例① 事例②インバウンド観光は輸出産業

<無形の思い出も持ち帰る>

インバウンドを教育する指導者を目指す皆さんにぜひ理

解してほしいのが、観光立国による経済効果である。観光

産業は大きく、インバウンド(訪日旅行)、アウトバウンド(海外

旅行)、イントラバウンド(国内旅行)の3つに分けることがで

きる。このうち、外国人が日本を訪れるインバウンドは「輸出

産業」だろうか。それとも「輸入産業」だろうか。

インバウンドという単語は、外国人が日本の中に(IN)向

かって入って来る(BOUND)という意味であり、輸入産業

と思われる方が多いかもしれない。ところが、人は日本に

入って来るが、日本では買い物をして日本の商品を持ち帰

る。あるいは、食事や観光で体験した無形の思い出を持ち

帰る。さらに、その物品が気に入れば、自国に帰国してから

も追加で手に入れたいと思う。つまり、インバウンド観光に

は、モノやコトの「輸出」という側面がある。インバウンド観光

産業は、外貨を稼ぐ産業、新しい「輸出産業」と言える。

逆に、海外旅行先のパリでブランド品などを買い物して

帰国する行為は、日本のお金が海外に出ること。「輸入産

業」と位置付けられる。

<旅行収支が44年ぶりに黒字>

財務省によると、2013年度の日本の国際収支はわずか

7899億円の黒字で、日本という国の儲けが1兆円を初めて

割り込んだ。そうした中で、一つの朗報だったのが旅行収

支の大幅な改善だ。旅行収支とは、国際収支統計におけ

るサービス収支の一項目で、訪日外国人旅行者が日本で

支払った金額(インバウンドの収入)と、日本人旅行者が海

外で支払った金額(アウトバウンドの支出)との差額である。

2014年4月、5月、10月、11月は、訪日客数の増加で単月の

旅行収支が大阪万博以来、約44年ぶりの黒字となった。訪

日外国人増加が内需を補う効果が如実に現れている。

<2013年の外客消費は1.4億円>

観光立国の代表的な指標は外国人観光客数であり、日

本政府は2020年までに2000万人という具体的な目標を発

表している。もちろん、この目標の達成は大切だが、これか

ら人口が減少していく日本の未来を考えた場合、より重視

すべきなのが、「インバウンド消費」だろう。旅行収支の状況

をみても分かるように、訪日外国人旅客1人当たりのインバ

ウンド消費額を上げていくことが、GDP(国内総生産)の増

大などの経済効果に直結する。

観光庁によると、2013年の訪日外国人旅行者による旅

行消費額は1兆4167億円だった。2014年は前年比43.3%

増の2兆305億円と推計され過去最高となるようだが、世界

の観光大国と比較すると、まだまだ少ない。2013年の国際

観光収入のトップはアメリカ合衆国の1396億ドル。日本は

169億ドルで、大きな開きがあることが分かる。

①インバウンド観光はモノやコトの輸出産業

②インバウンド消費でGDPをあげる

③外国人観光客への全品免税制度が改正

理念編 3

日本で一番人気のある観光地がどこか皆さんご存じだ

ろうか。正解は「新宿」。理由はまちに独特の雰囲気があ

り、宿泊施設が充実していること。そしてショッピングが魅

力的なこと。B級から高級まであらゆるグルメのレストラン

があり、大規模商業施設が集中、歌舞伎町という世界

有数の歓楽街も有している。つまり、何でもそろっている

のがその理由である。

私たち日本人にとって、新宿をはじめとした都市の生活

は「日常」で、寺社仏閣や自然は「非日常」だが、訪日外

国人には、日本の都市もまた「非日常」である。こうした都

市の機能や市民との交流を楽しむ観光は、観光学の専

門用語で「アーバン・ツーリズム」と呼ばれている。

事例①のアーバン・ツーリズムを構成する要素の中で

も最も重要なのがショッピング・ツーリズムである。ショッピ

ング・ツーリズムは、高級ブランド品をはじめ、その国や都

市特有の商品を買うことを目的とする国際旅行を指す。

観光庁の2013年の統計によると、ショッピング消費

は旅行消費の3分の1を占め、トップの宿泊消費とほとん

ど同額で4600~4800億円である。今後は円安に加え

て、2014年10月に改正された全品免税制度により今ま

で免税非対象であった消耗品が免税となり、外国人観

光客の消費に大きなインパクトを与えることが期待され

る。また免税店も1年間で倍増し、4月の5777店から11

月には9361店となった。流行語に「インバウンド消費」

が選ばれたことも注目される。

□アーバン・ツーリズム □ショッピング・ツーリズム

○平成25年の訪日外国人の旅行消費額は、1兆4167億円と推計。訪日外客数前年比24.0%の伸びに対して、旅行消費額は前年比30.6%増。

○旅行消費額を国籍・地域別にみると、多い順に中国、台湾、韓国。

図1 訪日外国人旅行消費額(平成25年)

0

2,000

861.1

621.9

835.8

8,135

14,167

10,846

1,036.4

11,490

平成22年

旅行消費額と訪日外客数の推移

平成23年 平成24年 平成25年

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

旅行消費額(億円)・左目盛 訪日外客数(万人)・右目盛

1兆4,167億円

訪日外国人旅行消費額

国籍・地域別 旅行消費額 単位:億円

中国2,759(19.5%)

台湾2,475

(17.5%)

韓国1,978

(14.0%)米国1,362

(9.6%)

その他1,516

(10.7%)

香港 1,054(7.4%)タイ 576(4.1%)オーストラリア 521(3.7%)英国 329(2.3%)フランス 316(2.2%)シンガポール 311(2.2%)カナダ 288(2.0%)マレーシア 256(1.8%)ドイツ 190(1.3%)ロシア 127(0.9%)インド 109(0.8%)

観光庁「訪日外国人の消費動向」平成25年次報告書

8 9

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「教える力」認定講座

この認定講座は、女性起業支援として、「好きを仕事に!」

をテーマに公益財団法人日本生涯学習協議会(所管:内

閣府)の監修・認定で認定講師を創出する楽習フォーラム

事業モデルを元に誕生した講座である。この楽習フォーラ

ム事業では、13年間で47,000名のビーズアクセサリーやプ

リザーブドフラワーなどホビー業界の「認定講師」が養成さ

れ、現在も多くの女性講師が起業し活躍している。

戦後の学校教育は「工場モデル」と言われ、画一的な

単純作業を行う人を育成するプログラムが中心であった。

一方、カルチャーセンターでは、「楽しく習う」をテーマに女

性を中心に、話し合い、体験する講座が主流になり、日本の

文化を作る一端を担うまでに成長してきた。「楽習モデル」

は「明るく、笑いがあり、出会いがあり、動きがある」教育方

法である。主役は受講生であり、受講生が「学ぶ」ことによ

り、豊かになり、笑いを持ち、向上することが出来る。そして、

その学びを仕事に生かすことが出来る仕組み「楽習モデ

ル」を構築してきた。

その後、この楽習モデルを発展させ、ビジネス業界に「社

会に良いことをしながら利益を出す仕組み」として、2007年

に「新・家元制度」を提唱し、5年間で80協会の設立に関

与した。そこでは、教育をビジネスに取り入れる仕組みや協

会ビジネスモデルを構築する仕組みを提供してきたが、基

盤となるのは、講師の「教える力」である。ここでは、ビジネ

ス講師で成功するための考え方と技能を多くの実績から

体系的にまとめられたカリキュラムとなっている。

本来は、2級から1級そしてマスターと3段階の講座に

なっているが、ここではベーシックコースである2級講座をイ

ンバウンド観光人材育成に仕様変更して作成している。

インバウンド観光は、今までのアウトバウンド観光と異な

り、経験者が非常に少なく、新しいスキルを持った多くの人

材が早期に求められている。新卒の学生や観光事業者以

外の業界からも求められている。このように需要が多い業

界の人材育成には、指導者の育成が第一である。質の確

保された技能をもち理念を共有した指導者を数多く輩出す

ることにより、早期に一定のスキルを持つ人材が輩出され

ていく。そしてその指導を新しい知識や技能を提供し、実

践経験を重ねながら、学びを持続することにより業界は発

展していくのである。

講師の仕事は、受講生に「真の目的」を理解させ、ゴー

ル(目標)まで導くことである。ここでは次のステップ1からス

テップ10までを段階的に学んでいく。

ステップ① 「学ぶ力」とは?

ステップ② 「ゴール・目標」を設定する

ステップ③ 「楽習フォーラム」の仕組み

ステップ④ 「教え方」の基本

ステップ⑤ 効果的な学習プログラム

ステップ⑥ モチベーションを高める

ステップ⑦ モチベーションマネジメント

ステップ⑧ 障害を乗り越えるプログラム

ステップ⑨ 振り返りと評価

ステップ⑩ インストラクショナル・デザイン

各回で二つのステップを学ぶように設計している。この

「楽習モデル」をインバウンド観光人材を育成する指導者

にも理解していただき、日本に求められている新しいインバ

ウンド観光人材を育成する「インバウンド指導者」を育成し

ていきたい。

講師力養成編 1

執筆者紹介

前田 出 (まえだ いずる)

一般社団法人生涯学習認定機構代表理事一般社団法人日本インバウンド教育協会理事

女性起業支援として、「好きを仕事に!」をテーマに公益財団法人日本生涯学習協議会の監修・認定で13年間で47,000名の「認定講師」を養成。社会に良いことをしながら儲ける仕組みとして、2007年よりビジネス業界に「新・家元制度」を提唱。5年間で80協会の設立に関わる。2020年までに年商1億円200協会の設立を目指す。

《2章》

インバウンド観光人材育成指導者用テキスト

講師力養成編

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Page 9: 監修/一般社団法人日本インバウンド教育協会 · 安の殿堂が切り開くアジア観光交流圏という市場」メディア 研究所 ・中村好明2014「インバウンド戦略-人口急減には観光立

ポイント ポイント

理念と目標設定

インバウンド観光は日本の観光産業の中でも極めて新し

い市場だ。これまでの国内観光市場とは全く異質の新分

野で、従来の旅行業だけでなく、小売、金融、不動産をはじ

めとしたさまざまな産業が関わってくる新規事業でもある。

そのため、指導者を目指す皆さんにも、新規事業に携わ

る人材を育成していく覚悟が必要である。第1章で学んで

いただいたように、インバウンド観光の発展には、「私たち」

という公共哲学の視点を持って柔軟に連携できる新しい

人材の育成が求められている。

指導ポイント①

インバウンド観光は、従来型の旅行商品造成、需要開拓

に関する知識や技術を学ぶだけでは、市場を開拓していく

ことはできない。着地型ツアーの開発、地元産品の販売、

通訳、接遇など、それぞれ目指す目標は違っても、自分が日

本の社会を変えていくのだという強い意気込みを持って取

り組んでいかないかぎり、未来はないと思うべきである。

そのためには、インバウンド観光に携わっていきたいと考

える新人に対し、それぞれの具体的な①知識・情報、②技

術、スキルを提供し、どんな変化を促せるかはっきり示す必

要がある。そのためには、教える側の実績を示し、「インバウ

ンド観光で社会を変えたい」という目的に向かって一緒に

戦う仲間を集めなければならない。

インバウンド観光は人口急減社会が到来する日本におい

て、無限に伸びる唯一の産業である。ただ、誤解してほしく

ないのは、日本の人口、内需が減っているために、外国人観

光客の誘致に活路を求めるのではない。国内客が獲得で

きないため、それを補うべく外客を呼ぶためのインバウンド活

動を行おうと考えても、多くはうまくいかない。インバウンドは足

し算だと思って取り組み、国籍は関係なく、お客様は全部お

客様であるという考え方を根本的に持つ必要がある。

指導ポイント①

インバウンド観光の講師力養成のワークを重ねることで、

教える側もなぜインバウンド観光に携わるか、教えたいと思

うのか、本質を導き出せるようになるだろう。指導でも、受講

生の受けがいいネタ、インバウンド観光の華やかな世界を

見せるのもいいが、長年にわたり宿泊施設などの現場で外

国人客を迎え入れてきた先人の苦労を語るなど、さまざまな

角度から考え方の変化を促すことも重要である。

指導ポイント②

インバウンド観光を指導する目的は、受講者の自分の理

想とする意思を引き出し、目標・ゴールに導くこと。①知識、

情報、②技術、スキル、気づき、③ワーク、④エピソードを分

類し、使い分けて指導すべきである。

指導ポイント③

インバウンド観光を目指す人材には、現状の仕事・学習

□インバウンド観光で日本社会を変える □明確な目標・ゴールを設定する

指導ポイント②

インバウンド観光の理念や現状、取り組み事例などの情

報、スキルを得た人材は、みんな仲間であるとも言える。日

本のインバウンド誘致が本格化した歴史はまだ十数年に過

ぎず、こうした仲間は幕末の志士のような存在だ。どうして

インバウンド観光に取り組もうと思ったのか。お金や地域と

いった報酬以上に、それぞれがきちんと語れるように指導す

ることで結束力も高まるだろう。

の不満、コンプレックスの解消を求める人と、より高みを目指

す人の2種類のタイプがある。お互いを批判するムードを作

らせないためには、目的を明確化し、カテゴリーを分けて指

導してもいいだろう。

①本人の社会を変えたいという強い思いがないかぎり、成功はない②どんな素晴らしい講義をしても、覚悟がある人がいなければ伝わらない③教えるという行為は、あなたと受け手の覚悟があって成り立つ④同じ情報を出しても、受け手の器、意欲によって、成功への道は変わる

①インバウンド観光を通じ、自分の理想に近づく意思を引き出す②意思を引き出すために、どのようなポイントで指導するか③教える相手から望ましい行動を引き出す④新人が求めているのは、「情報・知識」と「技術・スキル」の2種類

【ワーク】

①あなた自身がインバウンド観光に携わってみようと思ったきっかけを列挙してみてください。

②そのきっかけから、あなたは何を思いましたか。

③あなたのインバウンド観光人材育成における一番のセールスポイントは何ですか。

【ワーク】

①新しい人材に対し、目標を数値化、理想像を示すことができますか?

②あなたが目指すインバウンド観光人材のゴールは何ですか?

③理念をどうやって指導していきますか?

④あなたのインバウンド観光における技術、スキルは何ですか?

⑤インバウンド観光に関し、どのようなエピソードを持っていますか?

⑥どんな気づきを提供できますか?

⑦それぞれ目標に向けて、どのように行動を習慣化させますか?

講師力養成編 2

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ポイント ポイント

楽習モデルで教えよう

観光立国とは、インバウンド観光振興を通して日本を豊

かにしていくこと。「日本にどうぞ来てください」という通り一

遍のスローガンだけでは、外国人の心をつかむことはできな

い。教育、インフラ、法整備、公共投資、産業振興といった

日本のすべての要素の基盤を観光振興の視点に照らして

再構築する必要がある。

指導ポイント①

今や日本の産業別名目GDPにおける第三次産業の割

合は4分の3に上る。なかでも着目されているのがインバウ

ンド観光である。もっとも、講師としてインバウンド観光を教

えていくのは簡単ではない。私たちが学んだ学校教育は、

均一なホワイトカラーを大量生産する仕組みとしては優秀

だったが、インバウンド観光のように個人の信念に基づいた

パブリックス(公共世界)の領域は、画一的な指導だけで

は優秀な人材を生みにくいからである。そこで、「工場モデ

ル」から「楽習モデル」に。楽しく学び、ゴールをいつも意識

し、自分が確実に上昇する感覚を味わうモデルへの転換を

目指そう。

指導ポイント②

ゴールに導く方法を理解した後は、ゴールに到達した受

講生が何を得られるかに着目。インバウンド観光で何に取り

組みたいのか、あなたが提供してあげられるネットワーク、ポ

ジション、気持ち、報酬を具体的に考えよう。

これからの日本を担い、観光立国の担い手となるのは、

人口減少の加速していく厳しい未来の日本を生きる次の世

代の若者たちである。そのため、真の観光立国実現には、

中長期的な視点からの教育が不可欠だと考えられる。おも

てなしの基盤となる語学はもちろん、観光が自分たちの未

来を変える大きな力になると教えることが重要になる。

指導ポイント①

⒈人は学びたいことしか学ばない

⒉ 積極的な参加意欲を持つと、学びの質、量が比較的に

増える

⒊インバンド観光の価値を認めると、積極的に学ぶ

⒋安心して学べる環境が必要

⒌仲間と協力して学ぶと、効果は高い

⒍振り返りとフィードバックがあるとよい

⒎称えあったり、教えあったりするとよい

□工場モデルから楽習モデルに □教え方の基本

指導ポイント③

やる気を引き出すには、できるというイメージを持たせるこ

とが大切である。以下のどのレベルまで到達したいのか、

はっきりさせよう。

①知識、気づきのレベル

②できるようにするレベル

③使いこなせるレベル

④伝える、普及させるレベル

⑤教えるレベル

①楽しく学び、常にゴールを意識する

②受講生がインバウンド観光で取り組みたいことを知る

③どこまで到達したいかを理解させる

①観光立国を実現するためには、次世代の若者に対し中長期的な教育が不可欠だ

②インバウンド観光の価値を認め、仲間で協力し合うと効果が高い

【ワーク】

①あなたの理念は何?なぜインバウンド観光を教えるのですか?

②受講生にとってのゴール・目標は何ですか?

③受講生はどんな結果を出すことができる?出口戦略は?

④受講生の学ぶ意欲を引き出す仕組みを作る。

⑤あなたの冠は何?受講生が修了後に得られる冠は?

⑥インバウンド観光をコンテンツではなくカリキュラムとして教えられますか?

⑦受講生が修了の後のバックアップはどうしますか?

⑧終了後はどんなフォローをしますか?

【ワーク】

①あなたが今まで受講した講座や研修、授業でつまらなかったものを列挙してください。「教わりたくない」「期待外れだった」と思う理由は何ですか?

 ⑴講座、研修、授業内容について

 ⑵講師、教師について

②あなたが「教える」ときに必要なことは何ですか? ⑴講座、研修、授業内容について

 ⑵講師、教師について

③記憶に残る教え方の比率を考えてください。 ⑴聞いた時 (     )% ⑵見た時 (     )% ⑶話し合った時 (     )% ⑷体験した時 (     )% ⑸他の人に教えた時 (     )%

学習定着率「LearningPyramid」出展:NationalTrainingLaboratories

Lecture 5%

10%

20%

30%

50%

75%

90%

AverageRetention Rates

TraditionalPassive

TeamingActive

ReadingAudio-Visual

DemonstrationDiscussion GroupPractice by Doing

Teach Others/Immediate Use

講師力養成編 3

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ポイント ポイント

学習プログラムを作成する

これまでも学んだように、日本のインバウンド観光は、国内

旅行、海外旅行に比べ、非常に歴史が浅い分野である。日

本政府は成長戦略の重点分野にインバウンド観光を位置

付けているが、さまざまな政策や事業を観光で再構築する

ためには、まだまだ不都合な規制や障害がある。2014年の

免税制度改正のように、インバウンド観光に関わっていく人

はもちろん、日本人全員が観光でこの国を豊かにするとい

う視点でパラダイムチェンジが必要である。

指導ポイント①

観光立国の機運の高まりとともに、インバウンド観光につ

いて学べるセミナー、インバウンド観光を紹介するメディア

が世の中にあふれるようになってきた。ところが、充実した内

容だったにもかかわらず、その後、普段の仕事に忙殺され

て観光の視点で自らを見直すことがないまま過ごしてしまう

ケースも少なくない。

原因の一つは、セミナーの講師やメディアがコミュニケー

ションの仕組みまで構築していなかったためである。もう一

つは、受講生がやる気を失うか、活用できない環境を改善

できなかったからだろう。

インバウンド観光を指導する講師として、次のような項目

を常にチェックしていきたい。

■潜在意識が変化を好まない ■習慣づける仕組みを組

み込んでいない ■ゴール設定が曖昧 ■仕事が忙しく活

□効果的な学習プログラム □障害を乗り越えるプログラム

かせる状態にない ■自分の能力に自信がない ■同僚・

家族・友人が協力的でない ■会社・上司が好意的でない

指導ポイント②

インバウンド観光について学んだことを活かすためには、

タイミングと対象者が重要になる。まず、タイミングは、受講

前、受講中、受講後の3つのタイミングで学習を継続するた

めの仕組みを組み込む。

一方、対象者については、受講者には自分で考える行

動計画、講師はできない可能性を意識、上司・同僚・家族に

は、協力してもらう仕組みを提案できるといいだろう。具体的

には以下のプログラムが有効だ。

■潜在意識の作用を十分に理解し、習慣化する仕組みを

組み込む ■講座の中で、受講後に起こる障害を各自検討

させる ■障害を乗り越える対応策をグループワークで検討

する ■受講後の行動計画を作成させる ■フォローの仕組

みをつくる ■コミュニティーをつくる ■企業研修の場合は、

企業の体質、方向性を確認する ■イベント開催、発表会

①新しい教え方の流れを理解する

②「工場モデル」から「楽習モデル」へ

③「場」を作る方法

①インバウンド観光を学んだ後に活用できないケースもある

②障害を乗り越えるためのプログラムを事前に検討しよう

【ワーク】

①工場モデルと楽習モデル

②あなたが楽習モデルの「場」を作る時の方法を列挙してください。⑴緊張をほぐすには… ⑵笑いを演出するには… ⑶意見が出やすいようにするには… ⑷参加者同士が親しくなるには…

観点 工場モデル 楽習モデル

学びのスタイル個人、知覚中心聞く、見る、書く、覚える受動的

グループ+個人、知覚+身体全体アイスブレーク、シェアする、発表する、共感する、能動的

講師の役割指導者、権威的、絶対的情報提供者

進行役、参加者、ファシリテーター情報提供者体験の演出者

講師の関心秩序、知識と技能の伝授平均、平等言いたいことを伝える

参加者が深く考えられるようにサポート目的の達成と共有を常に考える気付きを与え、行動に移させる

受講生のゴール画一的、均一な知識集団行動ができる点数が上がる

知識、情報+スキル+エピソード+ワークらせん状にゴールに向かい上昇する気付きを得る事で自ら行動しゴールを決める

学びの環境を作るまじめ、硬い秩序、規律眠い、苦痛

やわらかい、アイスブレーク名前の重要性(名札)発表する、楽しい

仲間の存在は? 競争、ライバル、ひとり共感する、切磋琢磨、グループワークアイスブレーク、シェアで親しくなる時間を作る

アフターフォロー 個人で研鑽コミュニティーを作る障害を取り除くプログラム 【ワーク】

①学んだことを活用できない理由はなんだと思いますか。

②障害を乗り越えるためにはどんなプログラムが必要ですか。

③あなたが指導するインバウンドカリキュラムの中にも、フォローの仕組みを組み込んでみましょう。

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ポイント ポイント

「教える力レシピ」と「振り返りと評価」

繰り返しになるが、そもそも、皆さんはなぜ今、インバウンド

観光に取り組んでいるのだろうか。皆さんにあらためて考え

てみてほしい。日本の人口が減り、内需が減っているから、

補うために海外から人を呼ぼうとしているのだろうか。もしそ

う考えているなら、訪日客は減った国内客の代わりに過ぎ

指導ポイント①振り返りの効果

インバウンド観光を学ぶことで、受講生のそれまでの知

識、体験に上積みし、新たな知識を作り出すプロセスが重

要である。そのために大切なのが振り返りの時間だ。

また、自分が伝えたかった一番大事なことを、最後にもう

一度伝える。ストーリーとして伝えることで、受講者の意識も

変わる。

●振り返りの時間の使い方

⒈意図的に時間をきちんと取る

⒉異なる視点を受け入れる態度、心構え

⒊ 学んだことに自分の意見、体験を取り入れ、自分用にカス

タマイズさせる

⒋ 自分のゴール、インバウンド観光を通じ何に取り組みたい

のか確認する

⒌新しい視点や理解の仕方を吟味する

●知識・情報の共有

 ワークで得た気づきをグループ、全体で共有する時間を

作る。

⒈何を学んだか。

⒉何を疑問に感じたか。その意味は。

⒊ この学びから何を得たのか。それをどのように活かし、イン

バウンド観光で国を豊かにする社会を作っていくのか。

□「教える力」レシピ □振り返りと評価

ず、外国人の方々に対してとても失礼である。国内客と訪

日客を区別するのではなく、みんなで協力し、知恵を絞り、日

本に呼びこむ。世界を相手に全力で商売していこうという

気概を持ち、インバウンド観光を通して、地域、企業、日本が

持続的に発展する社会に変えていかなければならない。

●評価する

⒈ インバウンド観光の意味、何を学びたかったのかを明らか

にする。

⒉ ゴールに向かって上昇したか。何を学んだかを整理し、

評価する。

参考図書として前田出氏の著書2冊を紹介する。

① 前田出2008「一気に業界No.1にな

る「新・家元制度」顧客獲得の仕組

み―どんなビジネスにも使える!継続

率96%の秘密」ダイヤモンド社

② 前田出2013「「学び」を「仕組み」

に変える新・家元制度」アチーブメン

ト出版

①インバウンド観光を教える基本レシピを理解する

②教えるストーリーを作ることで、受講生の心をつかむ

①振り返りの時間を取ることで、着実に新たな知識を作り出す

②知識、情報を全員で共有することで、その後の具体的な連携につなげる

③ゴール・目標に向けて何を学んだか整理し、評価する

【ワーク】

①あなたの講座に来た人の目的は何ですか?目的と目標を明確にしましょう。目標を追求するあまり、行動が目的と反していませんか。

②あなたの講座に来た人の目標は何ですか? 具体的な目標数値、Have・Do・Beを示しましょう。目標を達成するための行動として、無・増・少リストを作り、生活習慣にまで落とし込みましょう。

③受講生の特徴を把握しましょう。インバウンド観光に取り組もうとする人材の中にも、マイナスからの脱出派と、より成長を目指す自己実現派がいます。メインターゲットを初めからはっきりするとともに、自己実現派には、出口戦略を明確に示しましょう。

④もう一度、あなたが指導を通じて提供できるものを整理しましょう。

 ⑴情報・知識 ⑵スキル ⑶ワーク ⑷エピソード ⑸ネットワーク ⑹その他

⑤教える環境とツールを整えましょう。「工場モデル」ではなく、「楽習モデル」に必要な教えるスタイルとは? ⑴机の配置、目的の配置 一緒に学ぶ、ワーク中心型の机の配置、チームの作り方を検討 ⑵ホワイトボード、プロジェクターの使用方法 教え方の中心は何か。プロジェクター中心で進めると注意が散漫になります

 ⑶配布資料 配布資料を配布するタイミングも重要です ⑷テキスト テキストを完璧に仕上げると、講義を聞かない可能性もあります ⑸参考資料

⑥講座のタイトルをつける ⑴タイトルから具体的にインバウンド観光を想像できますか ⑵キャッチコピー ターゲットに響きますか?ラブレターになっていませんか ⑶あなたの肩書 インバウンド観光を指導するために魅力ある実績、肩書がありますか ⑷あなたは指導することで何を目指しているか語れますか

講師力養成編 5

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インストラクショナル・デザイン

第2節から5節まで、インバウンドを指導する講師として

の、さまざまな力を学んでもらった。近年、インバウンドの需要

は加速度的に増加しているのに対し、理念、情報・知識、ス

キル・技術を兼ね備えた人材は不足している。その先頭に

立って、インバウンド観光、着地型観光の教育ノウハウを発

信していくのが皆さんである。

第2章、講師力養成の最後となる第6節では、これまで

の学びをもとにより効果的で魅力的なプログラムを構築す

るため、インストラクショナル・デザイン(ID)の考え方に基づ

いて、あなたが考えるインバウンド指導をチェックしていきた

い。

インストラクショナル・デザインとは、受講生の自由度を保

ちながら、高い効果を得る学習方法のこと。学校の授業や

企業で行われる研修プログラム、さらに教材などをどのよ

うに設計・構成していくかの方法論をまとめた体系である。

日本のでも、主にe-ラーニングの授業を中心に導入する大

学、組織が増加している。

このチェックと第4~7回のポイントの振り返りを通じ、将来

的に多くの人がインバウンドで活躍するために何をしていけ

ばよいのか。あらためて検証しよう。

□第2~5節のポイント

2.理念と目標設定

<インバウンド観光で日本社会を変える>

①社会を変えたいという強い思い

②覚悟がある人がいなければ伝わらない

③あなたと受け手の覚悟があって成り立つ

④受けての器、意欲で成功への道は変わる

<明確な目標・ゴールを設定する>

①理想に近づく意思を引き出す

②意思を引き出す指導ポイントを明確化

③望ましい高度を引き出す

④情報・知識と技術スキルの2種類がある

3.楽習モデルで教えよう

<工場モデルから楽習モデルに>

①楽しく学び、常にゴールを意識する

②受講生の取り組みたいことを知る

③どこまで到達したいか分からせる

<教え方の基本>

①次世代の若者に対する中長期的な教育

②仲間と協力し合うプログラム作り

4.学習プログラムを作成する

<効果的な学習プログラム>

①新しい教え方の流れを理解する

②工場モデルから楽習モデルへ

③場を作る方法

<障害を乗り越えるプログラム>

①活用できないケースを知る

②障害を乗り越えるための事前準備

5.「教える力レシピ」と「振り返りと評価」

<教える力レシピ>

①インバウンドの基本レシピを理解する

②教えるストーリーを作る

<振り返りと評価>

①振り返りの時間を取る

②知識、情報を全員で共有

③ゴールに向けて何を学んだかを確認・評価

1.受講生の関心を引き付ける 「今、なぜこれが必要かに気付かせる」

2.ゴールを示す 「受講生に目的意識を持たせる」

3.前提条件を思い出させる「今自分がどのくらいの知識があるかを思い出させる。前回の知識を呼び出す。」

4.新しい事項を提示する「講座の一番重要なポイントを強調。新しい事を覚えさせる」エピソードで感動と共感を与える。

5.学習の指針を与える「新しい事を記憶する方法を示す。繰り返す。実例を示す。たとえ話をする。」やらなければいけない→やりたい!

6.練習させる「知識の場合はミニテスト、実技の場合は実際にやってみる。」ワークで確認させる。

7.有益なフィードバックを与える「正確に伝わっているかをチェックする。」知識、情報、理解の共有。ゴールに向かって上昇させるファシリテーション。

8.成果を評価する「テスト、発表等で確実に身に付けたかを確認し、評価する。」進歩を褒める。比べるのは昨日の自分。

9.使いこなし、カスタマイズさせる「頭で理解しただけでなく、自分用に使いこなせるレベルにまで指導する。」知る→わかる→やってみる(行動)に移す

□ガニェの9教授事象

講師力養成編 6

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ポイント

Web教材の利用方法

第3章では、Web教材となっている「インバウンド論」、

「着地型観光論」、「マーケティング論」、「みなとまち観光

論」をそれぞれ解説する。ここでは、これらのWeb教材を利

用した授業の展開方法を紹介する。

この教材は、インバウンド観光に興味のある人なら誰で

も受講できる内容であり、eラーニングを自宅で自由な時間

に受講すれば非常に効率的に学ぶことができる。高校生

の異文化理解を目的とした国際理解教育、2020年には雇

用が求められるインバウンド観光人材を目指したキャリア教

育、社会人やシニアにも興味深いコンテンツであり、生涯学

習としても人気を集めるであろう。

地域の観光振興のため異業種が集まり、地元の将来の

コンセンサスを取るためのワークショップの事前教材などに

も利用可能である。

対象は高校生から老人まで、観光事業者から主婦の方

まで幅広い方が対象となる。実際にインバウンド観光の発

展は、特定の一部の日本人が担うものではなく、日本人全

体が外国人を理解し、日本の魅力とサービスを提供してい

くことが重要である。

例えば「みなとまち観光論」では神戸の歴史や文化を紹

介している。「着地型観光論」や「インバウンド論」に比べ

て観光との関係は薄いような印象を受けるが、実は地域産

業の歴史文化を外国人は日本の魅力として評価している

ことを忘れてはいけない。

神戸以外の地域で授業を展開する場合は、このまま神戸

の事例で紹介するのもよいが、地元の産業の歴史文化を紹

介しクローズアップする方が、臨場感が増すはずである。

本来eラーニングは、教員がいなくても自由に好きな時間

に学べるように作成されているが、通常の授業スタイルで

も、このWeb教材を受講生といっしょに見ながら学習するこ

とをお勧めする。再生中は、それぞれの受講生の反応を確

かめながら授業を行い、eラーニング終了後、繰り返し振り

返りを行うことで、一層理解が進む。

また、インバウンド観光は急速に発展している市場であ

り、新しい政策が次々に発表され、実績の数字も変化が激

しいため、この辺りも確かめながら授業を展開していただき

たい。

この教材を利用し、特に「着地型観光論」と「マーケティ

ング論」を受講しながら、是非課題としてツアーをつくってい

ただきたい。グループワークで、地域づくりを共有しながら実

習するのもいいが、できるだけ個性の違うツアーが発表され

ると講義も盛り上がるので、個人別にコースを作成し、各自

でコースの魅力を発表、プレゼンテーションをすることでさら

に興味が深まり、自ら学習するであろう。

地元のツアーを作成し、受講生でフィールドワークとして

そのツアーを実践してみることで、旅行者の視点で観光を

考えることができる。また、地元の魅力を再発見するいい機

会に恵まれる。

①Web教材を利用して地元のツアーをつくってみよう

②高校生の国際理解教育、キャリア教育、一般人の生涯学習としても利用可能

③異業種で一緒に学ぶこともインバウンド観光振興の第一歩

Web教材利用編 1

執筆者紹介

小野田 金司 (おのだ きんじ)

神戸夙川学院大学教授・副学長一般社団法人日本インバウンド教育協会代表理事

和歌山市出身、1980年より大手旅行会社で勤務、退社後2002年より前田氏とともに楽習フォーラム事業の担当取締役として4年間指導者育成事業を経験。2007年より神戸夙川学院大学教授に就任。観光プロモーションやイベント系科目を教えながら、地域研究所長として、全国各地の観光振興事業を経験。着地型観光人材育成、就業力育成等のテキストを制作し、大学生が、地域振興の現場で役に立ちながら、成長できる仕組みづくりを目指している。西日本最大のチャリティロックフェス「COMIN'KOBE」の理事も務めている。

《3章》

インバウンド観光人材育成指導者用テキスト

Web教材利用編

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ポイント

事例①

事例②

事例③

インバウンド論

<インバウンド観光の基礎知識>

インバウンド論1では、訪日外国人客数が2013年に1000

万人を突破したこと、2020年の東京オリンピック・パラリン

ピック開催というビッグチャンスを控え、2000万人計画を政

府が掲げ、日本をどう世界に売っていくか、観光庁のビジッ

ト・ジャパン事業を中心に観光立国に向けてどういう戦略を

進めているのかを解説している。観光庁のほか、経済産業

省のクールジャパンや農水省の6次産業政策なども関係し

ていることもあわせて解説する。

訪日客を地域別にみると、2013年の1036万3904人のう

ち、76.7%はアジアからの旅行者である。新しいターゲットと

して東南アジアのイスラム圏が注目され、ハラールフードな

ど食文化や宗教文化の理解が、インバウンド観光の促進

には必要である。

<インバウンド観光の現状>

ここでは、各種のデータを引用しながら、インバウンド観光

分野では、日本が世界各国から遅れをとっていることを説

明する。日本の観光がアウトバウンドであり、海外でのプロ

モーション、ビザの緩和などインバウンド観光政策が遅れて

いたのも原因である。この課題を解消したことにより、東南

アジア6カ国からの旅行者で100万人を超え、豊かになった

アジアの人々が、異なる国の文化を享受する旅へと出かけ

るようになった。アジア、ASEANのパワーで1000万人を達

成したとも言える。

日本が観光立国を実現していくには、世界、とりわけこの

アジアの力が不可欠である。

また、各国や地域によって日本の人気都市が違っている

のも興味深い。Web教材では各国の訪日観光客の訪れ

る都道府県ランキングで、各国の旅行ニーズを分析してい

る。自国にない魅力は自然なのか歴史文化なのか訪日観

光プロモーションを検討するには非常に参考となるデータ

である。それぞれの国を理解しなければ、誘客に結びつか

ないということである。日本食のランキングも面白いデータと

なっている。和食がユネスコ無形文化遺産登録されている

が、豪華な会席料理ではなく和のファストフードも人気が高

いということである。現代の若者の食文化と一致している。

各国別のマーケットの特徴を見てみると、日本の魅力が

再確認され、整理される。まずは、日本人自らが、日本の自

然、歴史文化などの魅力や価値をもう一度理解し直し、誇

りをもって、正しく伝え、継承していくことを重要である。

①訪日客2000万人計画に欠かせないアジア戦略

②訪日外国人の観光目的を理解すると日本の魅力が見えてくる

③スポーツツーリズムは国家プロジェクト

Web教材利用編 2

レベル2からは、インバウンド観光事例を紹介して、イン

バウンド観光の実態を理解することを目的としている。若

者にも認知度の高いドン・キホーテに来訪する外国人の

商品購買の実態を通じて、インバウンド観光を身近な存

在として感じ、興味を持つことが第一歩である。最近出版

された「ドンキに行ったら外国人がすごかった」(著:嶋村

ヒロ、発行株式会社KADOKAWA)はコミックエッセイで

外国人観光客のショッピングの実態がわかりやすく描か

れているので参考図書として薦める。

一方ドン・キホーテのインバウンド観光に対する理念や

戦略については、この教材を見た後に再度第1章をよく

復習していただきたい。マーケティング戦略は、着地型観

光のマーケティングと考え方は同じである。さらに深い理

解を得るためには、このドン・キホーテのインバウンドプロ

ジェクトリーダーであり㈱ジャパンインバウンドソリューショ

ンズの中村好明氏2012「ドン・キホーテ流観光立国へ

の挑戦」(発行:メディア総合研究所)、2014「インバウン

ド戦略」(発行:時事通信社)を是非参考図書として読ん

でおいていただきたい。

インバウンド観光は、2020年の東京オリンピック・パラ

リンピックの決定後、急速に注目されているが、これこそ

国家プロジェクトとして成功したスポーツツーリズム事例

である。スポーツツーリズムとは、わが国の優れたスポーツ

資源に旅行、観光の視点を取り入れて積極的に誘致し、

地域を活性化することである。具体的には、“観る”スポー

ツ、“する”スポーツ、“支える”スポーツの3つがある。日本

は自然に恵まれ、スキーなどのウインタースポーツからダイ

ビングなどの夏のマリンスポーツまで多彩なスポーツを楽

しめる国際クラスのスポーツ環境資源を持っている。

今後は東京オリンピック・パラリンピックの事前キャンプ

市場や2019年開催のラグビーワールドカップなどスポー

ツツーリズムはインバウンドの面でも期待されている。ア

ジアからは、ウインタースポーツ、特に日本では減少傾向

のスキー・マーケット開拓が、人口急減社会の地方の創

生策として期待される。

レベル3では、インバウンド観光のプロモーションに成

功しているオールアバウトの取り組み事例を学ぶ。日本

への外国人観光形態には団体型と個人型があるが、こ

れからは個人型のリピーターづくりが、事業者としては重

要となる。インターネットの進展、個人旅行化など旅行を

取り巻く環境の変化に伴い、インバウンドの情報発信も

進化している。日本の情報を多言語で発信するサイトは

少なくないが、オールアバウトとジャパンパートナーシップ

が共同運営している外国人向け日本情報サイト「Japan

Travel(旧名称JapanTourist.jp)」は、日本に住む外国

人ライターが独自の視点で各地域の観光情報を発信。

通常の観光とは異なる、地元の人 し々か経験できない日

本を伝え、ガイドブックでは得られない情報として人気を集

めている。

マーケティング論で学んだAISASモデルの成功事

例である。SNSを利用した集客方法の事例として紹介

する。

□ドン・キホーテのインバウンド戦略

□スポーツツーリズム

□オールアバウトの取り組み

図1 訪日外国人の主要国の割合

タイ 3%

豪州 2%

シンガポール 2%

カナダ 2%

マレーシア 2%

ドイツ 1%

インドネシア 1%

イギリス 2%

韓国 24%

中国 17%

台湾 18%

米国 9%

その他12%

香港6%香港6%

出典:日本政府観光局2013年

24 25

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ポイント

事例① 事例②着地型観光論

<マス・ツーリズムの発展>

ここでは、日本の観光形態の変遷から日本独特の団体型

観光モデルをレベル1にて学習する。日本の高度経済成長期

「大型・高速・大量」の時代に大きく成長したマス・ツーリズム

が主流となって当時の日本の経済発展にも貢献してきた。

日本のマス・ツーリズムにおいて、流通の役割を担って発

展したのが旅行会社であり、旅行会社は団体のスケールメ

リットを活かして航空会社や宿泊施設から低廉な料金を引

き出し、さらに全国に営業拠点を置き、各所在地域の市場

で効果的に観光客を集め、地域から各方面へ出発する旅

行商品、いわゆる発地型観光商品を造成して提供する流

通主導のビジネスモデルを構築した。当時の交通機関、道

路などのインフラ整備、リゾート開発なども追い風となって大

きく成長し、日本の観光を先導することとなった。最近では、

このマス・ツーリズムモデルが、観光客が急増する中国など

アジア各国でも参考にされている。

<インターネット登場で流通革命>

このビジネスモデルに変化が起きたのが、1990年代であ

る。インターネットが登場し、また旅行の形態が団体から個

人へと変化するのに伴い、観光業界に流通革命が起きる。

1996年(平成8年)に日立造船が立ち上げたインターネット

宿泊予約サイト「ホテルの窓口」を皮切りに、新しい流通経

路は顧客の支持を受け、楽天トラベル、じゃらんなどのイン

ターネット専用予約サイトの台頭へとつながっていく。宿泊

や交通機関なども直接予約へと転換し、マイレージカードな

どとも連動し、観光ビジネスの流通形態が大きく変革したの

である。

<マス・ツーリズムから着地型観光へ>

この日本の観光ビジネスの変化は、地域活性化政策に

効果的に組み込まれていく。地域が主体となって商品を開

発する着地型観光である。着地型観光は、ニューツーリズ

ムとも呼ばれる。ツーリズムという言葉もこの時代から使われ

ることが多くなってくる。エコツーリズム、グリーンツーリズム、

バリアフリーツーリズムなどと細分化された観光目的別に誕

生する。

マス・ツーリズムでかつて恩恵を受けた観光地が、流通

の転換についていけず荒廃するケースが増加し、全国各

地ではこの地域づくり、まちづくりを重視した着地型観光

が、地域主導型観光と呼ばれて受け入れられていく。

着地型観光では、地域が主体となり観光商品開発を進

めていくため、独自の流通の仕組みや顧客対象を選別して

いくことが重要となる。旅行会社に頼らず、自らマーケティン

グを学び、地域の持続可能な観光システムの形成が重要

であることを理解したい。

着地型観光により、地域が抱える経済、環境、コミュニティ

の課題が解消される価値のある手段であることを理解して

いただきたい。修学旅行での民泊体験などで成果を上げる

地域も増加していることも参考にして欲しい。

①日本の観光は流通主導のマス・ツーリズムで発展

②インターネットによる流通革命で着地型観光が創出

③地域の魅力をアートを利用して国内外へ発信する

Web教材利用編 3

レベル2では、和歌山県の串本町の民泊修学旅行事

例を紹介する。マス・ツーリズムからニューツーリズムへの

転換をうまく実施し、新しい魅力創出と既存観光の再構

築に成功した地域である。串本町は本州最南端に位置

する人口1万8000人の漁業のまち。トルコとの友好が

深いことでも知られている。

串本町の新しい観光のスタートが、1999年のジャパン

エキスポ南紀熊野体験博から始まった。行政、観光事業

者、住民が一体となって串本の主産業である漁業と自然

を活用した体験型観光を開発に乗り出す。今やブランド

化された近大マグロの養殖体験、ホエールウォッチング、

漁業体験に加えて自然を生かしたシーカヤック・カヌー体

験などを揃えて、首都圏の修学旅行誘致に成功し、串本

町大島地区を中心に継続して実施している。

このような既存の地域産業を観光に転換した事例

は、民泊修学旅行の誘致に成功している地域に多く見

られる。

こうした成功要因の背景にあるのが、行政と事業者と

住民の協力、チャレンジングなプログラム開発、ワンストッ

プによる情報の受発信にあることは言うまでもない。この

ようなプログラムに外国人も非常に興味を示している。

修学旅行の次はインバウンド観光にチャンスがありそうで

ある。

日本では、2000年あたりから、建築、美術分野で地域

再生、景観づくり等をテーマにした屋外アートイベントが

増加している。個人客、若者、外国人などマス・ツーリズム

で集客が苦手な客層を集める新しい観光振興手法とし

て注目されている。トリップアドバイザーでも屋外アート美

術館としは日本を代表する箱根彫刻の森美術館は常に

上位にランキングされている。

越後、瀬戸内などの広域で開催されるアートイベントに

は数多く外国人が訪れている。その運営手法は、まさに

地域主体となった着地型観光のマーケティングそのもの

である。

現代アートを介在して地域の自然や文化を再発見す

る新しい旅の提案は、全国各地に拡大している。

神戸市では六甲山のミーツアートの事例で着地型観

光事例を紹介している。神戸市でも神戸ビエンナーレも

開催されているが、着地型観光コンテンツとしては六甲

ミーツアートを紹介したい。阪急阪神グループが開発した

六甲山の観光施設は、マス・ツーリズム型で集客に苦し

んでいたが、このアートイベントを契機に各施設間の連

携が深まり、回遊性も高くなり、新しい顧客の獲得、リピー

ターづくりに効果を上げている。

もう一つの事例はスペインの巡礼を紹介しているが、こ

こでは行政の観光推進組織シャコベオの機能を注目し

てほしい。

□和歌山県串本町 □屋外アートイベント

国土交通省『観光白書』平成26年度版より

26 27

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ポイント

事例①

着地型観光マーケティング論

<リピーターは満足度を求めていない>

レベル1では、マーケティング論の導入部分として、着地

型観光の商品化に必要なマーケティングの基礎を展開し

ている。

従来のマス・ツーリズムは、大衆による消費行動が主流

で、多くの人が特定の商品に対して購買欲求を持つという

「何を売るか」という時代だった。しかし、収入や階層意識

などによる階層化、趣味嗜好や生活スタイルの多様化に伴

う分裂化(オタク化)が進む現在は、多品種少量生産・消

費に象徴される消費の分散化が進み、「何が売れるのか」

という観点で多種多様な観光客のニーズを把握すること

が重要になっている。

地域主導の着地型観光推進も同様である。観光商品を

企画・開発・販売する機能を強化する上で顧客ニーズの把

握は不可欠だが、顧客満足=リピートするとは限らない。初

めての旅行に比べ、滞在が長いリピーター客増やすには、

「非日常」以外に、その地域にある「日常」に着目した商品

開発が有効だとみられる

<ハッピーエンドを考える>

多種多様な顧客に対して「何が売れるのか」を追求す

る時に重要なのは、その地域を舞台に顧客を主人公とし

たハッピーエンドの物語(ストーリー)を考えることである。

そのためには、物語が繰り広げられる舞台(観光地域)

のことを深く知らなければならない。舞台の観光資源を具

ことがカギを握る。

この調査はグループでアンケートを作成し、実際に一定

期間で調査するのが、ベストの方法である。現在の顧客像

がはっきりすれば、顧客が皆さんの地域に何を求めている

のか、そして、まだ顧客となっていない層はどこなのか、その

理由は何なのか分析するための準備が整うだろう。

<環境分析(3C分析)>

売れる観光商品を企画するために、まずは事業主体を取

り巻く環境を総合的に整理し、何が求められているのか分析

する必要がある。その有効な手法の1つが3C分析である。

3C分析とは、Customer(顧客、市場環境)、Company

(自社、地地域)、Competitor(他社、他地域)の3つの要

素に基づき、市場ニーズの変化と競合の取り組みを整理し

ながら、自地域の強みがどのように活かせるか分析する手

法。着地型観光においては、具体的に図のように分析する。

<事業戦略(SWOT分析)>

自分の地域、自社の状況については、SWOT分析が

有効だ。地域がもつ観光資源の「強みStrength」と「弱

みWeakness」と、地域を取り巻く環境における「機会

Opportunity」と「脅威Threat」を分析し、地域の事業機

会と潜在的リスクを明確化。その結果に基づき、注力すべ

き方向性、開発する旅行商品のコンセプト(事業戦略)を

策定する。

体化し、既存の観光客のイメージを整理することが、物語を

つくる最初の一歩となる。地域に存在する資源を精査し、

その価値を明らかにした上で、既存顧客を分析し、潜在顧

客を増やすために何を提供すれば喜ばれるのかという観

点から観光商品を企画するのである。

<地域を知ろう>

ここからは、グループワークで授業を展開することを勧め

る。地域の資源、顧客のイメージを明確にするには、それぞ

れ具体的に整理する必要がある。たとえば、地域の資源を

整理する上で指標となるのが、下記の項目などである。

●地域のイメージ

●主要な観光資源

●来訪者を惹きつけるポイント

●来訪のきっかけ

●来訪時期と来訪者数

●リピート者の割合

●観光資源のコスト構造

参加者で地元地域資源を整理しながら共有していく作

業は重要である。

<顧客を知ろう>

一方、ひとことで顧客と言っても、その背景は様々だ。顧

客が今、何を求めているかを知るためには、①基本情報、

②行動特性、③意識特性というそれぞれの観点から顧客

の実像を正確にとらえ、深い洞察力と細やかな分析を行う

<4P分析>

SWOT分析で明確になったコンセプトに基づき、観光商

品を構成する主な要素、Product(商品)、Price(価格)、

Place(販売チャネル)、Promotion(広告)のそれぞれを

検討し、効果的に販売するためのマーケティング戦略を策

定する。

①「何を売るか」ではなく「何が売れるのか」を考える

②顧客と地域の絆(ストーリー)を考える

③地域資源を3C分析、SWOT分析、4P分析を使ってグループワークしよう

Web教材利用編 4

顧客と地域の物語を考えるために有効なのが、

⒈舞台(観光地域)を深く知る

⒉観光資源を具体化し

⒊既存客のイメージを整理する

という3つのステップ。たとえば、神戸の真珠産業の場

合は、下記となる。

⒈真珠の歴史を深く知る

⒉真珠の加工技術を知る

⒊自分に似合う真珠を選ぶ

□神戸と真珠のストーリーCustomers:顧客年齢層/居住地/可処分所得/来訪目的/頻度/滞在時間/客単価など

Competitor:他地域主なサービス/サービス単価/来訪者数/稼働率/市場シェア/経営資源など

Company:自地域主なサービス/サービス単価/来訪者数/稼働率/市場シェア/経営資源など

価値の選択

差別化要因

価値の提供

地域を取り巻く環境

弱み(Weakness)

強み(Strength)観

光資源

機会(Opportunity)

脅威(Threat)

潜在的リスク

事業機会

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ポイント

ターネットを通じて必要な情報を検索し、他の類似サービス

と比較検討を行って、納得いくまで吟味する。彼らの背中を

押すのが、既存顧客、先駆者の情報提供である。

一方、売り手にとっては消費者同士の交流サイトをリピー

ト率、ブランド化が高まるよう上手に運営することも求められ

る。また、売り手側である地域の観光事業者同士が理念や

思いを共有し、観光商品に結晶化する意味でもソーシャル

メディアの存在は大きいと言える。

ソーシャルメディアにおける顧客同士の情報共有、クチコ

ミは、批判の場になる危険性もあるが、リピーター創出の可

能性も大きいと言える。

マーケティング論

<AIDMAからAISASへ>

マーケティングには、環境分析(3C分析)、事業戦略

(SWOT分析)、マーケティング戦略(4P分析)といったさ

まざまな手法がある。インターネットの普及などで市場環境

が激変するなか、インバウンド指導者として特に重視したい

のが消費者行動モデルとしてのAISASの実践である。

従来、顧客との接点はマスメディアが中心で、顧客が記

憶して購入する「AIDMA」モデルが主流であった。それ

に対し、インターネットの普及でパソコンやスマートメディアを

用いた顧客と事業者の双方向コミュニケーションや、顧客

同士のコミュニケーションが可能となった現在、「AISAS」

モデルの導入が進んでいる。

「AISAS」モデルの特徴は、2つの「S」、つまり「Search

(検索・吟味)」と「Share(共有)」にある。消費者はイン

<マーケティングの進化>

レベル2では、マーケティングを1960年代から時系列

に理解する。前回で学んだことを復習しながら、1960年

代のマーケティング1.0では「4つのP」マーケティングミッ

クスを学習し、1980年代のマーケティング2.0ではSTP、

Segmentation 市場細分化、Targeting 標的の設定、

Positioning地位の獲得を学ぶ。リーマンショック以降の

2010年代からのマーケティング3.0は売り手と買い手の共

創の時代であり、コトラーのマーケティングを理解し、ソー

シャルメディア型のプロモーション事例としてトリップアドバイ

ザーを紹介する。

直接、「日本観光」を世界に発信する情報ツールとして、

アメリカ発の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が有名

である。全世界で約2500万人の会員が投稿する旅の口コ

ミ情報を検索、閲覧できるサービスである。これもマーケティ

ング売れる仕組みを構築した一つの事例である。

<購買意思決定プロセス>

レベル3では、企業のマーケティング活動として重要視さ

れている購買意思決定プロセスについて学ぶ。企業間競

争が激化し、社会が成熟する中、売り手の論理では、消費

者を獲得することができないからである。ここでは旅行者の

購買心理に焦点をあげて、購買に際して5段階ある意思決

定プロセスを解説する。

①旅行に対する欲求<欲求(問題)認識>

まず、なぜ旅行者は旅行をするのか?食を楽しむ、マッ

サージで癒されるなどリフレッシュしたい欲求があり、過去

の経験などから海外旅行により問題が解決できることを

知っている。

②旅行に関する情報探索<情報探索>

口コミやインターネット、旅行会社のパンフレットなどから

検索を始める。

③旅行目的地を評価<選択肢評価>

次にその情報の評価を行う。集められた情報から、欲求

である「最もリフレッシュできる旅行」がどれなのかを評価す

る。航空機、ホテル、旅行会社などの選択を同行する友人

や家族、経験者と相談し目的地を決定する。

④旅行商品を購買<購買>

最も評価の高かった商品を最も評価の高い店で購買

する。

⑤旅行中・旅行後の評価<購買後評価>

旅行者は、旅行中Facebook等のソーシャルメディアを

利用して、タイムリーな風景や食事などを評価し情報発信

する。また旅行後も楽しかった旅の思い出をソーシャルメ

ディアで評価する。友人はその評価に反応し、評価は拡散

されていく。

このように旅行商品の購買は5段階のプロセスをたどっ

ている。これは、旅行だけではなく、全て消費もこのプロセス

をたどっているのである。そのため企業は、購買意思決定

プロセスの段階に合わせたマーケティングが必要となる。

<購買意思決定プロセスとマーケティング>

①②の段階では、マス広告・パブリシティでプロモーショ

ンが必要である。旅行の場合では、目的地の魅力や滞在

中のメニューの豊富さなどを広報宣伝する必要がある。

③④の段階では、購買店のサービス内容、提供商品の

質などのプロモーションが重要となります。旅行の場合で

は、旅行会社の店頭カウンターのディスプレイや社員の態度

や欲しい情報と新しい情報の提供などがポイントとなります。

⑤の段階では、購買が終了した後のフォローで、購買

者の満足度を上げ、ソーシャルネットメディアなどの口コミ

で商品情報を拡散し、リピーター化になるような施策が必

要となる。

企業は、この購買意思決定プロセスの各段階でプロ

モーションを変化させる必要がある。このように企業と消費

者の関係を築くためには、消費者の行動、心理を理解する

ことが重要となってくる。

①インターネット時代はAISASモデルに着目

②売り手もソーシャルメディアを活用する

③消費者行動、購買意思決定のプロセスを理解する

Web教材利用編 5

消費行動 AIDMAとAISASの違い

AIDMA

Attention(注意喚起)

Action(行動・消費)

Interest→Desire→Memory(興味)→(欲求)→(記憶)

AISAS

Attention(注意喚起)

Interest(興味)

Search→Action→Share(検索)→(行動)→(共有)

Attention(注意喚起)

Interest(興味・関心)

Search(検索・吟味)

Action(行動・消費)

Share(共有)

30 31

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ポイント

事例①

事例②

事例③

伝統産業の販売の事例を紹介する。

神戸以外の地域で授業を展開する場合は、このまま神

戸の事例で紹介するのもよいが、地元の産業の歴史文化

と外国との交流事例を探し、紹介してみることが、より臨場

感が増し、具体的なインバウンド観光の学習となるはずで

ある。

みなとまち観光論

みなとまち観光論では、みなとまち神戸の歴史や文化を

紹介している。着地型観光論やインバウンド論に比べて、

観光との関係は薄いような印象を受けるが、実は地域産業

の歴史文化が外国人にとって日本の魅力として評価して

いることを忘れてはいけない。ここでは、神戸を舞台に展開

された外国と神戸の文化交流、宗教の共存そして地域の

①歴史性と計画性がファッション都市神戸を生んだ

②多様な宗教との共存は、世界を映し出す鏡となる

③時代の変化を乗り越える伝統産業は技術革新とチャレンジ精神で未来を拓く

Web教材利用編 6

諸外国における近代化が時代の変

化そのものを指すのに対し、明治維新と

ともに、西洋文化を積極的に吸収する

ことで西洋に追いつこうとした日本の近

代化は少し意味が異なる。

西洋文化の一つである洋装の浸透

で常に日本全体をリードし続けた神戸の

近代化は、まさに西洋化と直結する事

例である。21世紀に入り、2002年(平

成12年)にはリアルクローズの神戸コ

レクションがスタート。2007年(平成17

年)には上海公演も行われるなど、神戸

のファッション文化はさらに発展し、世界

に飛び出している。

明治時代以降、近代化の一環として

西洋化が進められる中、みなとまち神戸

は、橋渡しとなってきた。日本人の洋装

の歴史で、1872年(明治5年)、明治

政府が洋服を正装とする布告を出した

のは画期的だったが、神戸はそれ以前

の1869年(明治2年)から居留地に洋

服の仕立屋がオープン。日本近代洋装

発祥の地として石碑も立てられている。

やがて昭和初期に日本初の月刊ファッ

ション誌が芦屋で刊行され、終戦後も

神戸には婦人服、子供服の業者が次々

と誕生する。神戸のまち全体が観光資

源化するなか、ファッションも一つの魅力

としてとらえられ、1997年(平成9年)、

ファッション専門の神戸ファッション美術

館が開館した。

歴史の積み重ねによって自然と備

わったファッション性の高さと洗練され

た雰囲気に、中期的ビジョンに根差した

計画性が加わった結果、ファッション都

市としての新しい標準が生み出された

好例に学ぶべき点は多い。

神戸・北野町の宗教施設もこれまで

観光施設でなかった資源に観光の視点

を取り入れた事例である。神戸が国際

都市である背景には、多宗教都市とし

て、さまざまな宗教、文化と共生、共存し

てきた歴史がある。現在も異人館が保

存されている神戸市北野町を中心に約

60カ国、4万人の人が暮らしている。全

国的にも高い数字になっている。

神戸市の外国人墓地には2800人の

方々が埋葬されており、その宗教はなん

と20種類にもわたると報告されている。

宗教、文化の豊かさは、現存する宗教施

設をみても際立っている。北野町界隈に

は、現存する宗教の中で最も古いといわ

れているユダヤ教、アッラーを信仰するイ

スラム教、インドを中心とするジャイナ教、

シーク教の宗教施設が点在している。

中国の人々が信仰する関帝廟、仏教寺

院、神社ももちろん存在する。

外国人たちは神戸の発展を支えてき

たという歴史も併せ持つ。たとえば、神

戸は古くから真珠の加工、輸出などの

産業が栄えてきた。日本の真珠を買う海

外バイヤーとしてユダヤ人、中国人、台

湾人とともに大きな役割を果たしたのが

ジャイナ教徒である。ジャイナ教徒は第

二次世界大戦後、真珠産業の拠点をイ

ンドのムンバイから神戸に移し、現在に

至るまで活動している。

国際都市・神戸にある多彩な宗教施

設は、日本にいながらにして世界の宗

教、文化に接することができる施設とも

いえる。

その一つ、世界で最も古く、約3000

年前に成立したユダヤ教の教会(シナ

ゴーグ)が日本にあるのは東京(広尾)

と神戸のみ。神殿にはカーテンがかけ

られ、奥に巻物の形をした聖書が安置

されている。上部には、神と人間とを結

ぶ証であるモーセの十戒(シナイ契約)

が刻まれている。ユダヤ人は当初横浜

中心に居住していたが、20世紀初頭に

神戸に移って以来、神戸で暮らしてい

る。建物は1930年代のものを改修し、

1970年に建立された。

このように神戸市民は異なる文化や

宗教を理解しながら外国との交流を実

現した町づくりに成功している日本有数

の年である。この過去の先人達の考え

方や仕組みがインバウンド観光の発展

にも繋がるものである。

国一の酒どころ、灘。全国の3割を製

造する国内最大の日本酒の里である。

江戸中期より大きく発展し、1785年頃

には全国の約50%の占有率があった。

地域の資産家は、様々な技術革新と設

備投資を行い、事業を拡大していった。

明治以降、明治政府の締め付けで酒

造家の経営が苦しくなる中、海運業や

金融業など経営を多角化するなど生産

力、経営規模の大規模化を図り、苦難

を乗り越えてきた。

1945年(昭和20年)の神戸大空

襲で全国の酒造地の中でも最も被害

を受けたが、鉄筋コンクリートの大型高

層蔵、生産設備の自動化・機械化を進

め、近代産業としての四季醸造を実現

した。

さらに1995年(平成7年)の阪神大

震災を経て、中小には廃業するメーカー

も少なくなかったが、機械化していた大

手を中心に復興する。

日本酒の国内消費が減少するなか、

「灘の生一本」という統一ブランドで、

欧米に向けて日本酒のプロモーションを

積極的にチャレンジしている。

2012年にノーベル賞を受賞した山

中伸弥教授の晩さん会では、灘の「福

寿」という日本酒が乾杯に使われるな

ど、欧米での灘の生一本人気は高まっ

ている。

神戸、西宮地区の酒造会社は、地域

の社会資本整備にも大いに貢献してい

る。多くの有名私立学校のスポンサー

や西宮の上水道の整備、私立美術館

の設立などにも支援している。

(レベル1)神戸とファッション 洋装文化を通じて見る神戸の近代

(レベル2)神戸・北野町の宗教施設 そのディープな魅力を探る

(レベル3)神戸・灘の酒造業 時代の変化をのりこえてきた伝統産業

神戸ファッション美術館

32 33

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ポイント

は早く、観光庁が発表した免税店の目標店数は2020年ま

でに現在の倍増の1万店だったが、2014年10月1日時点の

全国の免税店数は既に9361店となり、年内すでに目標に

近い数に到達。最も多いのは東京の3268店、2位が大阪

の1259店、3位は北海道の594店だった。数は2桁台と少な

いものの、岩手、和歌山、島根なども大きく増えている。

<免税対象品目の拡大>

一般的に外国人観光客向けの免税サービスは、消費税

の免税(TAX FREE)と関税の免税(DUTYFREE)の

二種類がある。今回の免税制度改正で全品免税になりイ

ンバウンド消費を積極的に進めるのは前者の消費税免税

(TAX FREE)である。

新しい免税制度ではどのような点がポイントになっている

のだろうか。まず、訪日外客新免税制度では、これまで免税

非対象だった食品、飲料類などの消耗品、薬品、化粧品も

すべて免税対象になった。従来は、家電製品、カバン、着

物・服といった非消耗品に限られていた。

ただ、全品免税するためには、1人1日1店舗あたり、新

規免税対象品目(消耗品)だけで、5001円以上50万円未

満、既存免税対象品目(一般物品)だけで1人1万1円以

上の買い上げであることが必要だ。消耗品と一般物品は

合算することはできない。

<免税手続きの簡素化>

また、新制度では免税手続きの簡素化も図られた。免税

外客免税制度改正

<外客免税制度の改正の背景>

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時に

2000万人の外国人観光客を誘致する政策の一つとして、

2014年10月から新しい外客免税制度が始まった、外国人

観光客(非居住者)に対する、消費税の全品免税制度で

ある。免税制度の改正は62年ぶりで、訪日外国人観光客

であれば、消耗品も含めた全品が免税となることになった。

消費税率が5%から8%へと上がり、今後さらに10%への引

き上げも予定されている中、この制度は外国人観光客に

とって大きな魅力となってくる。

<ショッピング・ツーリズムの振興>

「インバウンド消費」は2013年度日経MJの商品ヒット番

付の東の横綱、ナンバーワンに輝いた。インバウンド観光

客の消費額は、2013年の観光庁の調べでは、全体で1兆

4,167億円、第一位の宿泊費が4,763億円と並んで買い物

代が4,632億円となっている。今後は全品免税制度の効果

でショッピングが第一位となるのは間違いない。

インバウンド消費は輸出産業である。今までのアウトバウ

ンド(海外旅行)消費が多い時代では、日本の旅行収支は

赤字であったが、2014年4月には単月ながら177億円の黒

字になっている。これは、大阪万博以来、約44年ぶりであ

る。インバウンドの消費を上げること、すなわち輸出を増やす

ことで日本のGDPを上げていくことができるのである。

このショッピング・ツーリズムの動きには、民間企業の反応

店ではそれまで所定の購入記録表への記載とパスポート

への貼付が必要だったが、2014年10月以降は所定の購

入記録表の様式が廃止された。また、上陸地が記載不要

になり、国籍、上陸年月日、パスポート番号、購入年月日を記

載すれば、コンピューターを使った印刷対応も容易になっ

た。改正で新たに加わった消耗品を免税販売する場合

は、外国人旅行者はその商品を日本出国まで消費すること

ができない。「透明、ほぼ透明のプラスチック製の袋」または

「段ボール製、発砲スチロール製等の箱」による密封梱包

が義務付けられた。

<地域にもチャンス>

消耗品にも範囲が広がったことは、地域活性化の面でも

期待されている。従来の免税対象だった家電やスーパー

ブランドは、品揃えに優れ、価格競争力が高い大都市圏に

ニーズが集中していた。一方、今後は日本国内のあらゆる

地域の農林水産物、そのほか銘菓などの食品、地酒など

が、外国人観光客のお土産商品として売り込む大きなビジ

ネスチャンスが生まれることになる。人口減少が進む日本の

地方にとっては、地方の魅力ある商品を創出して、免税制

度を活用して海外へ売り出すという地域産業活性化のた

めの絶好の機会が訪れている。

①ショッピング・ツーリズム拡大の起爆剤

②食品や化粧品など人気の日本の消耗品にも対象が広がる

③インバウンド消費は、地方創生のビジネスチャンス

Web教材利用編 7

既存の免税対象物品 新規の免税対象物品

一般物品(消耗品以外のもの)

消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品)

出典:外客免税コーディネーター養成講座2014年発行日本インバウンド教育協会

※非居住者が事業用又は販売用として購入することが明らかな物品は免税販売対象外。※酒の販売には「酒類販売業免許」、たばこの販売には「たばこ小売販売業の許可」が必要。

同一の非居住者に対して、同一店舗における1日の一般物品の販売合計が、10,001円を超えるもの

同一の非居住者に対して、同一店舗における1日の消耗品の販売合計が、5,001円を超え、50万円までの範囲内のもの

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Page 21: 監修/一般社団法人日本インバウンド教育協会 · 安の殿堂が切り開くアジア観光交流圏という市場」メディア 研究所 ・中村好明2014「インバウンド戦略-人口急減には観光立

インバウンド観光人材育成指導者用テキスト発行日 2015年2月9日

発行     〒230-8577神奈川県横浜市鶴見区東寺尾4-11-1

  TEL.045-571-3901 FAX.045-571-4125

  http://www.shodai.ac.jp

編著者 一般社団法人日本インバウンド教育協会

  中村好明・前田出・小野田金司・野間麻衣子

デザイン 株式会社グラフィックス

印刷 小笠原印刷株式会社

平成26年度文部科学省委託

成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業

<観光分野>地域産業活性化のためのインバウンド観光人材育成

MICE教育開発ワーキンググループ委員

宍戸学 横浜商科大学商学部貿易・観光学科教授

小野田金司 神戸夙川学院大学観光文化学部教授

小槻文洋 神戸夙川学院大学観光文化学部准教授

海老澤昭郎 長崎国際大学人間社会学部観光学科准教授

堀川まゆみ 駿台トラベル&ホテル専門学校トラベル学科学科長

高橋修一郎 神田外語大学グローバル推進室課長

高野陽子 日本政府観光局(JNTO)コンベンション誘致部

       (MICE推進担当)市場戦略グループマネージャー

藤原弘一 一般財団法人日本ホテル教育センター事業部教育事業室室長

岡崎三奈 公益財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー経営部長

中垣内隆夫 全国高等学校観光教育研究協議会会長

  岐阜県立益田清風高等学校校長

浅井新介 MPIJapanChapter名誉会長

  一般財団法人日本ホテル教育センターMICE塾塾長

中村好明 株式会社ジャパンインバウンドソリューションズ代表取締役社長

市岡浩子 多摩大学グローバルスタディーズ学部教授

中込洋 株式会社リアセックキャリア教育推進グループ

田中敦 株式会社JTB総合研究所コンサルティング事業部

  コンサルティング第四部長主席研究員

改正を加えて、順に解説してきた。2014年度は、これらに加

えてレベル4のインバウンド論Ⅳの教材を開発している。レベ

ル1から4まで区分した全体のWeb教材の構成モデルは次

の通りである。

Web教材の構成モデル

前項まで、2013年度神戸夙川学院大学で開発した、積

み上げ式学習ユニットとしてのe-ラーニング教材(レベル1

~3)をインバウンド論、着地型観光論、マーケティング論、

みなとまち観光論と2014年度に制作した外客免税制度の

Web教材利用編 8

【レベル1】

【レベル2】

【レベル3】

【レベル4】

【レベル2】

【レベル3】

【レベル4】

・着地型観光論Ⅰ「地域と流通と顧客による持続可能な観光(1)(2)」       「和歌山県串本町の着地型観光開発事例」(講師:小野田金司/神戸夙川学院大学)・インバウンド論Ⅰ「2020年に向けて2000万人計画(1)(2)」(講師:小野田金司)・着地型観光マーケティング論Ⅰ「地域と観光客の絆をつくろう」            「マーケティング手法を理解しよう」(講師:小野田金司)・みなとまち観光論Ⅰ「神戸・北野の宗教施設~そのディープな魅力を探る」(講師:小磯学/神戸夙川学院大学)

・着地型観光論Ⅱ「事例屋外アートイベント」「巡礼」(講師:小野田金司)・インバウンド論Ⅱ「スポーツツーリズムで地域活性化」(講師:西村典芳/神戸夙川学院大学)      「ドン・キホーテのインバウンド観光成功事例」(講師:小野田金司)・マーケティング論Ⅱ「観光産業適用ケース(1)(2)」(講師:田邊文彦/神戸夙川学院大学)・みなとまち観光論Ⅱ「神戸とファッション:洋装文化を通じて見る神戸の近代化」(講師:伊多波宗周/神戸夙川学院大学)

・着地型観光論Ⅲ「着地型商品の企画造成」       「Webシステムへの登録」(講師:冨澤美津男/㈱ティー・ゲート)・インバウンド論Ⅲ「AllAboutの取組事例」(講師:小野田金司)・マーケティング論Ⅲ「旅行者行動論Ⅰ・Ⅱ」(講師:田中祥司/神戸夙川学院大学)・みなとまち観光論Ⅲ「神戸・灘の酒造業:時代の変化を乗り越えてきた伝統産業」(講師:小槻文洋/神戸夙川学院大学)

・インバウンド論Ⅳ「20年前のインバウンド/インバウンドはビジネスへ①②」(講師:海老澤昭郎/長崎国際大学)       「ASEANからのインバウンドを迎えるにあたって「ハラールとは何か」①②」(講師:杉山維彦/四国学院大学)       「インバウンドにおける外国語版観光マップ」(講師:正木聡/昭文社)       「インバウンド観光外客免税制度改正」(講師:小野田金司)

※本年度は、以下のようなMICEのWeb教材も制作した。参考までに紹介する。

「MICEとは?」(講師:乾有貴/観光庁MICE推進担当参事官付観光渉外官)「MICEのM・I」「MICEのC・E」(講師:秋山友志/横浜商科大学)

「日本の再興戦略と観光立国実現に向けたアクション・プログラム」(講師:乾有貴)「旅行会社におけるMICE業務」(講師:矢嶋敏朗/日本旅行)「ホテル業界が考えるべきMICEのポイント」(講師:清水隆吉/神戸夙川学院大学)「MICEに取り組む先進的ホテル事例~㈱プリンスホテルのMICE戦略①②」(講師:宍戸学:横浜商科大学)

「MICEに取り組む都市(横浜市の事例紹介)」(講師:秋山友志)「グローバルMICE戦略都市とユニークベニュー」(講師:乾有貴)「神戸国際観光コンベンション協会のMICE取組概要」(講師:渡邊光/神戸国際観光コンベンション協会)

□Web教材の構成モデル

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