changes in the crystal structure and dielectric properites

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Page 1: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

Journal of the Ceramic Society of Japan 106 [7] 669-675 (1998) Paper

複 合 ペ ロブ スカ イ トSr(Ga0.5Ta0 .5)O3のA-サ イ トイ オ ン置 換 に伴 う

結 晶構 造 と誘 電 特 性 の 変 化

藤 井 孝 ・高 橋 順 一 ・嶋 田 志 郎 ・景 山 恵 介*

北海道大学大学院工学研究科物質工学専攻, 060-8628札 幌市北区北13条 西8丁 目* 住友金属工業 (株) 電子部品事業部

, 660-0856尼 崎市東 向島西之町1

Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites of the Complex Perovskite Sr(Ga0.5Ta0.5)O3 with A-Site Cation Substitution

Takashi FUJII, Junichi TAKAHASHI, Shiro SHIMADA and Keisuke KAGEYAMA*Division of Materials Science and Engineering, Graduate School of Engineering, Hokkaido University, Kita-13, Nishi-8, Kita-ku, Sapporo-shi 060-8628

* Sumitomo Metal Ind., Ltd., 1, Higashi Mukaijima-Nishinomachi, Amagasaki-shi 660-0856

A-site cation substitution with Ba2+ or Ca2+ ions was made for the complex perovskite Sr (Ga0.5Ta0.5)O3

phase to modify its dielectric properties. The largely sized Ba2+ ions could be incorporated in the A-site

sublattice up to 55mol% without cation ordering. On the contrary, the A-site Sr2+ ions were completely

replaced by the Ca2+ ions. The crystal symmetry of the (Sr,Ca)(Ga0.5Ta0.5)O3 perovskites correspondingly

changed from cubic to orthorhombic with increasing Ca content . Partial B-site cation ordering occurred

when 10-50mol% Ca2+ ions were incorpolated in the A-site Sr2+ ions. The A-site cation substitution caused

a very slight change in dielectric constant (ƒÃr) at microwave frequencies, suggesting a little effect of the

substitution on the ionic polarization of the perovskite structure . A substantial lowering in microwave Q

value observed for the solid solutions containing 10-20mol% Ba2+ or Ca2+ ions might be related to the lack

of long-range structure ordering. Temperature coefficient of ƒÃr at 1MHz changed from positive high values

of the Ca2+-containing perovskites to nearly zero for compounds with 20-40mol% Ba2+ ions . This change

was discussed in relation to the structual strain of (Ga,Ta)O6 octahedra in the compounds.

[Received October 15, 1997; Accepted May 19, 1998]

Key-words: Complex perovskite, (Ba,Sr,Ca)(Ga0.5Ta0 .5)O3, Cation substitution, Crystal structure, Dielectric proper

ties

1. 緒 言

一 般 式ABO3で 表 さ れ るペ ロ ブ ス カ イ ト酸 化 物 の 中 で,

B-サ イ トが 複 数 の イ オ ン種 か ら な る複 合 ペ ロ ブ ス カ イ ト

A(B′B″)O3は, A-, Bサ イ トイオ ン種 の幅広 い組 み合わ せ が可

能 であ り, そ の組 み 合 わ せ に よ り誘 電特 性 の制 御 も可 能 で あ

る. これ らの複 合 ペ ロブ ス カ イ トの 中 で, B-サ イ トの イオ ン

比 がB′B″=1:2と な るA(B′1/3B″2/3)O3 (以後 (1:2) 型 と

略 記 す る) はマイ ク ロ波誘 電体 として広 く研 究 され, Ba(Zn1/3

Ta2/3)O3やBa(Mg1/3Ta2/3)O3な どは優 れた誘 電 特性 を持 つ こ

とが報 告 さ れて い る1),2). しか しな が ら, B-サ イ トのイ オン 比

率 が等 しいA(B′0.5B″0.5)O3 ((1:1) 型) は, (1:2) 型 に比 べ

あ ま り多 く研 究 がな さ れて い な い. 著者 らは, (1:1) 型 複 合

ペ ロブス カイ トの マイ ク ロ波 誘電 特性 に及ぼ すイ オン置 換の 影

響 につ いて,B′=3価, B″=5価 の組 み合 わ せ に絞 って検 討 を

行 って きた3),4). そ の結 果, これ ま で にSr(Ga0.5Ta0 .5)O3(SGT

と略 記) が 優 れ た マ イ ク ロ 波 誘 電 特 性 (εr=27, Q=600 at

10.6GHz τ f=-50ppm/K) を 持 つ 材 料 で あ る こ とを 見 い だ

した4). この よ うにSGTは 高 いQ値 を持 つ が, 共 振 周波 数 の

温 度 係数 τfが負 で大 きいた め, イオ ン置換 等 に よ りで き るだ

け τf≒0の 特 性 を付 与 す る こ とが 望 まれ る. そ こでSGTに お

いて, 3価 のB′ イオ ンをGa3+か らIn3+, Y3+, Nd3+, La3+と

変 え た場合 の マイ クロ波 誘電 特性 の変 化 を調 べた ところ, い ず

れ の組 成 もSGTを 上 回 るQ値 は 得 られ ず, τfも負 で大 きい ま

まであ った4).

本研 究 で は, SGTに おい て も う一 つ の置 換可 能 なA-サ イ ト

に着 目 し, SrをBa及 びCaで 連 続 的 に置 換 した 固溶 体 を 作

製 し, 置 換 に伴 う結 晶構 造 と誘 電特 性 の 変 化 を 明 らか に す る

こ とを 目的 と した. まず, A-サ イ トを100%Baで 置 換 した

Ba(Ga0.5Ta0.5)O3(BGT) は, これ までペ ロブス カ イ ト単一 相

が得 られて い ない こ とか ら, 最初 にBaの 正確 な 固溶量 を求 め

る こ とを試 み た. そ してBa置 換 に伴 う結 晶系 の変 化 とA-, B-

サ イ トイ オ ン の 規 則 化 に つ い て調 べ た. 一 方, A-サ イ トを

100%Caで 置 換 したCa(Ga0.5Ta0 .5)O3(CGT) ペ ロ ブ ス カ イ

ト化 合 物 に つ い て は, そ の 生成 が 明 らか に な って い る こ とか

ら5), SGTとCGTを 両端 成 分 とす る種 々の 固溶 体 を 作製 し,

Ca置 換 に伴 う結 晶 系 の変 化 を調 べ た. 更 に, そ れ らの合 成 し

た 複 合 ペ ロ ブ ス カ イ ト試 料 につ い て, A-サ イ トイ オ ン置 換 に

伴 うマ イ ク ロ波 誘 電特 性 と1MHzに おけ る誘 電 率 の温 度係 数

を検 討 し.。

2. 実験 方法

通 常 の粉末 混 合 に よ り焼結 体試 料 を作製 した. 原料 粉 と して

純 度99.9%以 上 の炭 酸 塩 (SrCO3, BaCO3, CaCO3; 高純 度化 学

研 究 所 製), 酸 化 物 (Ga2O3, Ta2O5; 三 井 金 属 製) を 用 い た.

これ らの原料 を所 定 の組成 とな る よう秤 量 し, 樹 脂製 容器 と安

定化 ジ ル コニ アポー ル を用 いて蒸 留 水 中で24h湿 式混 合 し, 乾

燥 後 空 気 中1200℃, 4h仮 焼 した. 仮 焼 粉 を粉 砕 後, 12mmnφ

×3mmnと12mmφ ×10mmに1軸 加 圧 (50MPa) 及 びCIP

(100MPa) 成 形 し, 空 気 中1400~1600℃ で1~96h焼 結 し

た. 得 られ た焼 結 体試 料 につ い て, 密 度測 定, 粉 末X線 回折

(XRD) に よる 生成 相 の 同定 と格 子 定 数 の 決 定, 波 長 分 散 型

X線 マ イクロア ナ ライザ ー (WDX) に よる組 成分 析 を行 った.

669

Page 2: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

670  複合ペ ロブス カイ トSr(Ga0.5Ta0.5)O3のA-サ イ トイオン置換 に伴 う結晶構造 と誘電特性の変化

誘 電 特 性 は, 焼 結 体 の 両 面 に銀 ペ ー ス トを焼 き付 け, LCR

メー ター で3端 子 法 に よ り誘 電 率 の温 度 変 化 (室温 ~150℃,

1MHz) を 測定 し, 温 度 係数 を求 め た. マ イ ク ロ波 誘 電 特性

につ い て は, 誘 電 体 共振 器 法 に よ り測 定 周波 数6.5~8.0GHz

で 測 定 した. ま た, 一部 の試 料 につ い て は, 熱 膨張 率 の 測 定

(室温 ~500℃) を行 い, 誘 電特 性 との関係 につ いて考 察 した.

3. 結 果 と考 察

3.1 Baの 固 溶量 と置 換 によ る結 晶構造 の変 化

最 初 にA-サ イ トへのBaの 固溶 量xに つい て調 べた. (Sr1-x

Bax) (Ga0 .5Ta0.5)O3に お いて01≦x≦0.7の 組成 とな る よう に混

合 し, 1500℃, 24h焼 結 した試 料 につ い てXRDで 生 成 相 の 同

定 を行 った. 図1に 代 表 的 な 試 料 のXRDパ ター ン を示 す.

0≦x≦0.5で はい ず れ も立 方 晶ペ ロブ ス カイ ト単 一 相 であ った

が, 0.55≦x≦0.575で は微量 な が ら第2相 のピー クが見 られた.

x=0.6で はBaGa2O4, Ba5Ta4O15, 及 び 未 知 相 が 現 れ, 単 一 相

が 得 られ なか った. x=0.7で は これ らの第2相 ピー クの強 度 は

更 に増大 した.

この 結果 か らBa置 換 で は ,固 溶 限界 は0.5≦x≦0.6の 間 にあ

る こ とが分 か った. 次 に, 正 確 な固溶 限界 を決 め るため, ペ ロ

ブ ス カ イ ト相 の格 子定 数変 化 を測 定 した. また, WDXに よ り

個 々の粒 子 の組 成 分析 を行 い, ペ ロブス カ イ ト相 のBa/(Sr+

Ba) 比 か らxを 求 め る こ と も試 みた. 図2の 格子 定 数 の変 化

か ら明 らか な よ う に, 出発 原 料 の 混合 比 率x=0.575ま で は イ

オ ン半 径 の大 きいBaの 固 溶 に伴 い格 子定 数 は直線 的 に増 加 し

た が, 以 後 格 子 定 数 は そ れ以 上 大 き くな らず に飽 和 した. 一

方, 組成 分析 結果 につ いては, 横軸 に出発 原料 の混合 比率xを

と り, それ に対 してWDXの 分析 値x′を プ ロ ッ トした (図3).

な お, 得 られた分 析値 は, 各組 成 の試料 におい て焼結 体 を構 成

す る個 々の 粒 子 間 に差 はな く, 実験 誤 差 内 で一 致 して い た.

図3で は, ペ ロ ブ ス カ イ ト相 のBa/(Sr+Ba) 比 は 混 合 比 率

x=0.5ま で は勾配=1の 関 係 が成 立 して い るが, そ れ以 上 では

傾 きが緩 や か にな り, 分 析値 がx′=0.55付 近 で一定 とな った.

x≧0.5に お いて は, 実験 誤 差 を考 慮 に入 れ て も出 発混合 比 率x

と分 析 値x′との 間 に は若 干 の 差 が認 め られ る. x=0.55及 び

x=0.575の 試 料 で は, 図1のXRD回 折 図形 か ら明 らかな よ う

に第2相 (主にBaの 化合 物) が認 め られ る こ とか ら, 生 成 し

た これ らのペ ロブ ス カイ トの組成 は 出発 原料 の混 合比 率xで は

な く, 分 析値x′に近 い と考 え られ る. 図2, 図3と もに, x=

0.575す なわ ちx′=0.55で 格 子 定 数 及 び組 成比 が一 定 に な っ て

い る こ とを示 して い るの で, A-サ イ トのSrに 対 してBaは55

m0l%ま で 固 溶 可 能 で あ る こ とが 明 ら か とな っ た. な お,

XRDに おい て 出発 混 合 比 率 がx=0.55の 組 成 の 試 料 で 微量 の

第2相 が 現 れ たの は, 組 成 が 固溶 限 界 に近 いた め に, 反 応 が

完全 に平衡 に達 してい なか った ため と考 え られ る. また, 混合

比率x=0.575の 組 成 で は, Ba量 が 固溶 限 界x′=0.55を 超 え た

ため に微量 の第2相 が生 じた と思 われ る.

Fig. 1. X-ray diffraction patterns of (Sr1-xBax)(Ga0 .5Ta0.5)O3

samples sintered at 1500•Ž for 24h.

Fig. 2. Lattice constant change of (Sr1-xBax)(Ga0.5Ta0.5)O3 with Ba content.

Fig. 3. A-site cation ratio of (Sr,Ba) (Ga0.5Ta0.5)O3 sintered samples analyzed with WDX.

次 に, B-サ イ トの規 則 化 につ い て検 討 した. 一 般 に, 複 合

ペ ロブ スカ イ トのB-サ イ トの規 則化 は, B′, B″イ オ ン間の 電荷

又 は イオン半 径 の差 が大 きい場 合 に起 こ りや す い6). 前 報 で,

Sr(B′0.5Ta0.5)O3の 規則 化 の有 無 につ いて詳 し く調 べ た ところ,

B′イ オ ン がTa5+(78pm7)) よ り大 きいSc3+(88.5pmn) や

In3+(94pm) では立 方 晶 とな り, B-サ イ トは規則 化 した. 更

に イオ ン半 径 が大 きいY3+(104pm), Nd3+(112.3pm), La3+

Page 3: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

藤井 孝 他  Journal of the Ceramic Society of Japan 106 [7] 1998 671

(117.2pm) で は対 称性 が 低下 して菱 面 体 晶や 正方 晶 とな った

が, 同様 にB-サ イ トイ オ ンは規 則 化 して いた. 一 方, Ta5+と

大 き さが ほ ぼ 同 じGa3+(76pm) で は規 則 構 造 を とらな か っ

た4). 今 回, A-サ イ ト置 換 した 固溶 体 につ い て規則 化 を調 べ た

が, 立方 晶ペ ロブ ス カ イ ト単 一 相 が得 られ た す べ て の組 成 で

A-サ イ トイオ ソ 及 びB-サ イ トイ オ ン の規 則化 に伴 う超 格 子 線

は見 られな か った.

3.2 Ca置 換 に よる結 晶構 造の 変 化

Ca置 換 で は, 1500℃, 10h焼 結 で 得 られ た 試 料 は す べ ての

組 成 でペ ロブス カ イ ト単一 相 とな り, 全域 固溶 が確 認 され た.

図4にCa置 換 に 伴 うXRDパ タ ー ン 変 化 を 示 す. SGTと

CGT間 全域 の変 化 を示 して い る図4 (A) か ら明 らかな よ うに,

Ca置 換 に伴 いy=0.4ま で は 基 本 的 にy=0のSGTと 同 じパ

ター ン とな って い た. 更 に置 換 量 の 多 いy=0.6で は一 部 の 回

折 線 にブ ロー ドニ ン グが認 め られ, y=0.8に な る と回折 線 の分

離 が 観察 され る こ とか ら, y=0.8で はCGTと 同 じ斜 方 晶 で あ

るこ とが 分か る. 更 に, 組 成 に よ る結 晶系 の変 化 を詳 し く調 べ

るた め, 高角度 側 で一番 ピー クの分離 挙 動 が 明瞭な2θ=87° 付

近 の 回 折 線 (立 方 晶系 で は (222) 回 折 線) に 注 目 した. 図4

(B) に0.5≦y≦0.8の 各組成 におけ る回折線 の詳細 な変化 を示 す.

y=0.5で は1本 の ピー クで あ った が, y=0.6, 0.7で は ブ ロー ド

にな る とともに, 新 た な回折 線 と思 われ る もの が よ り低 角度側

に認 め られ, y=0.8で は ピー クが2本 に分 離 した. y=0.8の ブ

ロー ドな ピー クはそ れぞ れ斜 方 晶の (440), (044) 回折 線 に帰 属

で きた. したが って, 結 晶系 は0≦y≦0.5で は 立 方 晶 に, 0.8

≦y≦1で は斜 方 晶 とな る こ とが 明 らか とな っ た. ま た, 0.6

≦y≦0.7で は既 に立 方 晶で はな い が, 不 明瞭 な ピー ク分離 のた

め正 確 な結 晶系 を決 め る こ とは 困難 で あ る. ただ し, y=0.8で

は斜 方 晶 とな るこ とか ら, 恐 ら く正 方 晶 に近 い状 態 で あ る と推

察 され る.

一 方 , Ca置 換 量の少 な いy=0.2の 試 料 で も, 高 角 度側 の一

部 の ピー クに分離 が見 られ た. そ こで, 0≦y≦0.25の 試 料 につ

いて, 高 角度 側 の ピー ク形 状変 化 を よ り詳 細 に 調 べ た. 図5

(A) に は10h焼 結 した試 料 のXRDパ ター ン を示 す. 立方 晶の

y=0 (SGT) では鋭 い1本 の ピー クで あ った (220), (310) 各 回

折 線 に おいて, y=0.1の 試料 で は それ ぞ れKα1-Kα2の ピー ク

分 離 が不 明瞭 にな った り, 低 角度側 に肩 が現 れ る変 化 が認 め ら

れた. y=0.15で は (310) 回折線 の 低角 度側 に新 しい ピー クが現

れ た. しか しな が ら, y=0.25に な る と再 び単 一 の 回折 線 に戻

り, 図4 (A) か ら明 らかな ようにy=0.5ま で は1本 の ピー ク,

す なわ ち立 方 晶で あ った. これ らの 試料 を更 に長 時 間 (96h)

焼結 して も (図5 (B)), 10h焼 結 の 場合 とほ ぼ 同 じパ ター ン を

示 した. た だ し, 組成 に伴 う回折パ ター ンの変 化 は, 他 の 回折

線 では観 察 され なか った. この よ うな一 部 の ピー クの みが一 時

的 に変化 す る原 因 につい ては不 明であ るが, 以 下 で述 べ る よう

なB-サ イ トイオ ン の 規則 化 に先立 って 生 じる現 象 か も しれ な

い。

Fig. 4. X-ray diffraction patterns of some selected samples of

(Sr1-yCay) (Ga0.5Ta0.5)O3 sintered at 1500•Ž for 10h: (A) a serial

change between the end members and (B) detailed profiles at

2ƒÆ•à=86-88•‹.

Fig. 5. X-ray diffraction patterns of some selected samples of

(Sr1-yCay) (Ga0.5Ta0.5)O3 sintered at 1500•Ž for (A) 10h and (B)

96h.

Fig. 6. X-ray diffraction patterns of (111) superlattice reflection

and (200) fundamental reflection of (Sr1-yCay)(Ga0.5Ta0.5)O3

samples sintered at 1500•Ž for (A) 10h and (B) 96h.

次 に, 固溶 体 のA-, 及 びB-サ イ トの規則 化 につ い て検 討 し

た. 図6か ら明 らか な よ うに, 0.1≦y≦0.5の 試 料 で は規 則 化

に よ っ て 生 じる2θ=19.5° 付 近 の (111) 超 格 子 回 折 線 が, プ

ロ ー ドで 小 さ い ピ ー ク な が ら も観 察 され た. ま た, 0.1≦y

Page 4: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

672  複合ペ ロブス カイ トSr(Ga0.5Ta0.5)O3のA-サ イ トイオン置換に伴 う結 晶構造 と誘電特性の変化

≦0.5の 各組成 と も長時 間焼 結 に伴 い (111) 超格 子線 の 強度 が増

大 して い た. た だ し, 図4 (B) で立 方 晶 とみ なせ な くな った

y=0.6, 0.7の 試 料 で は この ピ ー ク は消 失 した. した が って,

0.1≦y≦0.5で はA-, 又 はB-サ イ トが一部 規 則化 して い る と考

え られ た. 規 則 化 が 起 こっ てい る と考 え られ る0.1≦y≦0.5の

各試 料 に つ い て, 構 造 因 子 を計 算 してX線 理 論 強 度I(hkl)c.

を求 め, X線 積 分 強 度 の 実 測 値I(hkl)obs. との 比 か らA-, 又 は

B-サ イ トの規則 化度Sを 求 めた8). Sは (1) 式 で表 され る.

(1)

Is(111): (111) 超 格 子 線 の 強 度

看(200): (200) 基 本 回 折 線 の 強 度

ま た, X線 理 論 強 度I(hkl)calc. は (2) 式 で 表 さ れ る.

I(hkl)calc.=L(θ)・j・|F(hkl)|2 (2)

L(θ): Lorentz偏 り因 子

j: 多 重 度 因 子

F(hkl): 構 造 因 子

構 造 因 子F(hkl)は, 基 本 回 折 線Ff(hkl), 超 格 子 線Fs(hkl) そ れ ぞ

れ に つ い て (3a) 式, (3b) 式 で 表 さ れ る.

(3a)

(3b)

fx: x-サ イ トの原 子散 乱 因子

L: 長距 離規 則パ ラメー ター

(3a), (3b) 式 の 原子 散乱 因子fの 添 字 は各 サ イ トを表 し, fx*は

各 サイ トご とに構 成 イオ ンの 平均 原子散 乱 因子 を表 す. 以上,

(1), (2), (3a), (3b) 式 よ り, (111) 超 格 子線 が見 られ た0.1≦y

≦0.5の 各試 料 につ い て, 規則 化 度Sを 計 算 した. な お, 原子

散 乱 因子fxとLorentz偏 り因 子L(θ)は, Cullity9)の値 を用 い

た. Is(111)/If(200) の計 算 値 と実 測値, 及 びSを10h, 96h焼 結 試

料 に つい て表1に ま とめ て示 す. た だ し, (111) 超 格子 線 の計

算値 は, 規則 化 したサ イ トがA-サ イ トの場 合 とB-サ イ トの場

合 で結果 が異 な るので, サ イ ト別 に分 け, 一 方 のサ イ トのみ が

完 全 に規 則 化 した もの と仮 定 して 求 め た もの で あ る. 表1よ

り, X線 強度 比 の実測 値 {4(111)/If(200)}obs. は, 10h焼 結 ではA-

サ イ トが完 全 に規 則 化 した場 合 の 計算 値 と同程 度 の 値 とな っ

た. しか しな が ら, 96h焼 結 で は 実測 値 が計 算値 の3~8倍 の

値 で あ り, A-サ イ トが規 則 化 した と考 え るの は不 適 当 と思 わ

れ る. 一 方, B-サ イ トが 完 全 に規 則 化 した場 合 の 計算 値 と比

べ る と, 実 測値 は計 算値 の0 .2~0.3倍 とか な り小 さ くな ってい

た. したが って, 0.1≦y≦0.5の 試料 で現れ た (111) 超 格子線 は,

B-サ イ トのGa3+, Ta5+の 一 部 が規 則化 して い る こ とを示 して

い る. 以 上 よ り, Ba置 換 ではB-サ イ トは全 く規 則化 しなか つ

た が, Ca固 溶 系 で はA-サ イ トイ オ ン がB-サ イ トの規 則 化 に

影 響 を及 ぼ す こ とが 明 らか とな った. な お, A-サ イ トイオ ン

の 規則 化 につ いて は, 表1に 示 した よ うに, (111) 超 格子 線 の

理 論強 度 がB-サ イ トイオ ンの場 合 と比 べて かな り小 さ いた め,

A-サ イ トの 規 則化 度 を正 確 に 見積 もる こ とは困 難 で あ った.

また, (111) 超 格 子線 は, 結 晶系 が立方 晶か らよ り対称 性 の低

い 状 態 とな るx=0.6で 消失 して い る こ とか ら, 対 称 性 の 低下

に伴 い再 びB-サ イ トイ オ ンは無 秩序化 した と考 え られ る.

Table 1. Ordering Parameter of (Sr1-yCay)(Ga0.5Ta0.5)O3 Sampies

固溶 体の 格子 定数 の変 化 と単位 胞 の体積 変化 を ま とめ て図7

に示 す. ここで, y=0.1, 0.2の 試 料 につ いて は, 図5で 見 られ

た ような肩 が現 れた ピ ー クは除 いて, 立方 晶 で指数付 け で きる

回 折線 の みか ら格 子 定数 を求 め た. y=0.6及 び0.7の 試 料 に つ

い ては, 図4 (B) で見 られた よう に, 一部 の 回折 線の 分離 が始

ま って い る こ とか ら既 に立方 晶で は ない が, ピー ク分 離 が不 明

瞭 なた め, 他 の結 晶系 (正方 晶, 斜方 晶) で正確 な格 子定 数 を

求 め る こ とは で きな か っ た. そ こで, 比 較 的鋭 い回 折 線 を選

び, 便宜 上立 方 晶 として 格子 定数 を求 めた ため, 他 の組成 の も

の よ り正 確 さは 劣 つて い る. また, 図7の0.1≦y≦0.5の 組 成

域 の格子 定 数 は, (1:1) 型 規則 構造 に基 づ く値 であ る. y=0,

0.6, 0.7の 各 組 成 で は, B-サ イ トは規 則 化 しない が, 格 子定 数

の連 続的 な変 化 を示 すた め, 規 則構 造 を とる と仮 定 した値 (規

則 化 しな い場 合 のm倍 の 値) を 図 中 に示 した. イオ ン半 径 の

小 さなCaの 固溶 に伴 い, 単 位胞 も単調 に小 さ くな るこ とが示

され た.

Fig. 7. Changes in lattice constant and cell volume of (Sr1-yCay)(Ga0.5Ta0.5)O3 perovskites.

Page 5: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

藤井 孝他  Journal of the Ceramic Society of Japan 106 [7] 1998 673

3.3 マイ ク ロ波誘 電特性

A-サ イ トをCa及 びBaで 置 換 した 固溶 体 の マ イ クロ波誘 電

特性 の測 定結 果 を図8に 示 す. 測 定 に用 いた試料 は いず れ も相

対密 度95%以 上 で あ った.

ま ず, 図8 (A) の誘 電 率 εr(6.5~8.0GHz) につ い て は, 本

固 溶 系 で はCa→Sr→BaとA-サ イ トイオ ン種 が変 化 す るに つ

れ て εrはわず か しか増大 しな い こ と, すな わちA-サ イ ト置換

はマ イ クロ波帯 で の結 晶の イオ ン分極 に大 きな変化 を与 え ない

こ とが明 らか とな った.

次 に, マ ・イク ロ波 のQ値 に つ いて は, 図8 (B) に, 縦 軸 を

Qと 測 定 周 波fの 積Qfと して 示 した. CGTで は長 時 間 焼

結 に よ りQfが 大 き く低 下 す る現 象 が 観察 され て い る5)が, 本

研 究 で作製 した固溶 体試 料 で は, いず れの組 成 にお いて も焼 結

時 間 に よ るQ値 の変 化 は ほ とん どな か っ た. そ こで,焼 結 時

間を24hと して組成 とQ値 の 関係 を検 討 した. Ca置 換 の場 合,

y=0.1付 近 で大 幅 な低下 が認 め られた が, この領域 は 図5で 示

された ように一 時 的 に余分 なXRDの ピー クの 出現 す る固溶体

組 成 と よ く一 致 して い た. 一 般 に, Q値 に与 え る結 晶 構造 の

影 響 と して不 純 物, 格子 欠 陥, 空孔 な どの 存在 が知 られ て お

り, これ らに よ って 結 晶構 造 の規 則 性 が低 下 し, Q値 を低下

させ る といわ れ てい る. 本 固溶 系 のCa置 換量10~20mol%で

現 れ た急 激 なQ値 の 低下 の原 因 として は, 不均 一 な イオ ン 置

換 に よる構 造 の規則 性 の低下 の可 能性 が考 え られ るが, 現在 の

デー タの み で は詳 細 は 不 明 で あ る. また, B-サ イ トの規 則 化

とQ値 の関 連 に つ いて考 えた. 0.2≦y≦0.5の 組成 範 囲 では,

若 干増 加 す る傾 向 が見 られ るが, 焼結 時 間 に よ る α の 変化 が

ほ とん ど見 られ な い こ とか ら も, 規 則化 は ◎値 に は本 質的 な

影 響 を与 えな い と思わ れ る.

一 方 , Ba置 換 に お い て は, 0.2≦x≦0.4でQf=60000GHz

と比較 的高い値 が得 られ たが, x=0.1付 近 で低 下が認 め られた.

Ba置 換 の場 合, 構 造 に 関 す る平 均 的 な知 見 を与 え るXRDの

結 果 で は, それ らの固 溶体 は いず れの組 成 も立方 晶 で対称 性 の

低下 は認 め られな か った. しか しな が ら, 微 量 固溶 した場 合 に

Q値 が 低下 してい る こ とか ら, 恐 ら くCa置 換 の場 合 と同様 の

原 因 によ る結 晶構造 の長 距離 規 則性 の低 下が 生 じて い る こ とが

考えられる. これ らの結果から, 本固溶系においても, Q値

は結晶構造の長距離規則性の変動を敏感に表すことが示され

た.

Fig. 8. Microwave dielectric properties of densified (Sr1-yCay)(Ga0.5Ta0.5)O3 and (Sr1-xBax) (Ga0.5Ta0.5)O3 perovskite samples: (A) dielectric constant and (B) microwave Q-value.

3.4 1MHzで の誘 電率 の温 度係 数

一般 に, 酸化 物誘 電体 な どイオ ン性結 晶の 分極 は, 測 定周波

数 に よって変 化す るこ とが知 られて い る. マイ ク ロ波 帯 で は電

子 分極 とイ オ ン分 極 に基 づ くの に対 し, 1MHz付 近 で は双 極

子分 極 が加 え られ る. そ こで, 本 固溶系 の複 合 ペ ロブ ス カイ ト

化 合物 に対 し, 1MHzで の誘 電 率 εrを測 定 し, マ イ クロ波 帯

の それ と比較 す る こ とに よ り双 極子 分極 の寄 与 を見 積 もった.

代 表 的 な組成 につ い て の εrの値 を 表2に 示 す. A-サ イ ト置 換

に伴 う εrの変 化 は1MHz, マ イ クロ波 帯 ともほ ぼ 同 じ傾 向 を

示 し, ま たい ずれ の組成 も1MHzの εrの値 が マ イク ロ波 帯 よ

り大 き くな っ て い る. しか し, そ の差 は Δεr=2~3程 度 で あ

る こ とか ら, 双 極 子 分極 の寄 与 は小 さい (1MHzに お い て 最

大 で も10%程 度). した が って, 本 固溶 体試 料 で は, 1MHzに

おい て もイオ ン分 極 が支配 的 であ る と考 え られ る.

マ イ ク ロ波 帯 で の共 振 周 波 数 の温 度 係 数 避 につ い て は, 誘

電 率 の温 度 係 数TCεrと の 間 に (4) 式 に よ り表 され る関 係 が知

られ て い る10).

τf=

1

/2 TCεr-α (4)

α: 線 熱膨 張率

一般 的 な誘 電 体 セ ラ ミ ックスで は , α=9~11×10-6/Kの 値 を

と る. した が っ て, τf≒0の 材 料 を 得 る た め に は, 7Cε.≒

-20×10-6/Kが 一 つ の 目安 とな る . 本研 究 におけ る固溶 体 で

は, 上 述 した よう に, 1MHzに おけ る εrは主 に構造 中 の イオ

ン 分極 に よ る もの と考 え られ る. す な わ ち, 1MHzで のTC

εrの値 か らマ イ クロ波 帯 で の τfの変 化 につ い て もお お よそ 予

測 が 可能 とな る. ま た, 誘 電 体 のTcεrに 影 響 を及 ぼ す 要 因

につい ては いま だ明 らか にされ て いな いた め, 本固溶 系 の よ う

に連 続 的 な イオ ン 置 換 に伴 うTCεrの 変 化 を追 跡 す る こ とは

非 常 に重 要 で あ る. A-サ イ トイ オ ン 置 換 に伴 う1MHzで の

TCεrの 変 化 を図9に 示 す. SGTで は120ppm/Kと 正 で大 き

な 値 で あ り, Ca置 換 を 行 う と固溶 量yの 増 加 と ともに7TCεr

も徐 々 に増 大 し, CGTで は210ppm/Kと な っ た. 一 方, Ba

置 換 で は, Baが 微 量 固溶 す る とTCεrは 大 き く減 少 し, 0.1

≦x≦0.5で は 固溶量 に よらず0近 傍の 値 とな った.

TCεrと 熱膨 張 率 αとの問 には, (5) 式 で表 され る関 係 が あ

り, 多 くの化 合物 が 従 う と報 告 され てい る11).

TCεr=-εr× α (5)

Table 2. Dielectric Constant at 1MHz and Microwave Frequencies for Some Selected Samples

Page 6: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

674  複合ペ ロブス カイ トSr(Ga0.5Ta0.5)03のA-サ イ トイオン置換に伴 う結晶構造 と誘電特性 の変化

しか しな が ら, 本 固溶 体 に対 して は, そ れ らの εr(28~30)

及 び α(9~11×10-6/K) の値 か ら明 らか な よ うに, (5) 式 の

関 係 は全 く成 り立 た な い. 一方, Reaneyら は, これ ま で合 成

さ れ た 多 くの複 合 ペ ロブ ス カ イ トのTCεrを そ の 寛 容 因 子 で

ま とめ, TCεrの 変 化 を ペ ロ ブ ス カ イ ト構 造 中 のBO6八 面

体 の連 結 状 態 と関連 づけ て 検 討 した12). す な わち, 寛 容 因 子

t≒1の と き はBO6八 面 体 は 歪 み の な い 状 態 で 連 結 して い

る ("untilted"13),14)) が, t≦0.98で はBO6八 面 体 は イ オ ン

の 変 位 に よ り折 れ 曲 が っ た 状 態 で 連 結 す る ("antiphase

tilted"13),14)). 八 面 体 の 連 結 状 態 が "untilted" か ら "an-

tiphase tilted" へ と変 化す るの に伴 いTCεrは 負 か ら正 へ と急

激 に変 化 す る と述 べ て い る12). た だ し, Reaneyら は その 理 由

につ い て は説 明 して い な い. 本 固 溶 系 のTCεrに つ い て, 同

様 に寛容 因子 に対 して プ ロ ッ トす る と図10の 結果 が得 られた.

図 中破線 はReaneyら に よ って報告 され た値 であ る. 適 合 す る

寛容 因子 の範 囲は 異な るが, 破 線 ど類似 の変 化 が認 め られた.

Fig. 9. Temperature coefficient of dielectric constant at 1MHz for densified perovskite samples.

物 質 のTCεrに っ い て理 論 的 な検 討 を加 え た 研 究 は ほ とん

ど見 当 た らな い. BosmanとHavingaは, 立 方 晶 の ア ル カ リ

ハ ライ ドや酸化 物 に対 して, そ れ らの誘 電率 の温 度依存 性 に影

響 を 与 え る 因 子 に つ い て 考 察 した15). そ こ で は 巨 視 的 な

Clausius-Mossotti式

(6)

が 成 り立 つ もの と して 議論 を進 め (αm: 体積Vの 小球 の分 極

率), TCεrを 体 積 に依 存 す る二 つ の項 (A+B項) と, 分 極

率 の温 度依 存 の項 (C項) の合 計 として表 した. この場 合, 前

者 (A+B項) はTCεrに 対 して正 の寄 与 (すなわ ち温 度上 昇

に伴 う誘 電率 の増 大) を, 一方 後者 (C項) は, 一 般的 に は負

の寄 与 (温度上 昇 に伴 う誘 電率 の減 少) を示 す. した が って,

εr≧20の物 質 で見 られ る負 のTCεrは, 主 にC項 に よ る もの

で あ る と説 明 して い る. た だ し, εr<20の 物 質 で は, C項 は正

と負 の 両方 の 値 を とる こ とか ら, そ の結 晶構造 がC項 に影響

を与 え る可 能性 につい て も指 摘 した (物理 的説 明 はな されて い

な い)15).

この よ うに, 分極 率 の温度 依存 性 (C項) は結 晶構造 に よ り

変 化 す る こ とが考 え られ る こ とか ら, Reaneyら の結 果 と合 わ

せ て, 複 合 ペ ロ ブ ス カイ トにお け る構 造 とTCεrと の定 性 的

な関 連 性 につ い て推 定 した. まず, 室 温 にお いてBO6配 位 多

面 体 が 歪 み の な い状 態 で連 結 して い る結 晶構 造 を 持 つ場 合 に

は, 多 くの物 質 に見 られ る よう に分 極率 は負 の温 度依 存 性 を示

す ため, TCεrは 負 とな る. そ れに対 し, BO6八 面 体 の連 結 に

折れ 曲が りが生 じる構造 にお いては, む しろ分極 率 の温 度依存

性 が0か あ るい は正 に な ゆ, そ の場 合 に は正 のTCεrが 観 察

され る と考 えた. この ような考 え方 を本 固溶 系 に適用 し, 置換

に伴 うTCεrの 変 化 の 説 明 を試 み た. 本 固 溶 系 にお い て は,

骨 格 の 配 位 多 面 体 が か な り歪 ん だ 構 造 を して い るCa固 溶 系

で は, TCεrは 正 の 値 で あ る. 一 方, 結 晶 系 が す べ て立 方 晶

で あ るBa固 溶 系 で は, SGTとx=0.1の (Sr0.9Ba0 .1)(Ga0.5

Ta0 .5)O3の 間 にお いてTCεrは 大 き く変 化 した. 図11に 示 し

た線 熱膨 張 の温度 特 性 か ら分 か る ように, 両試料 は ほぼ 同 じ熱

膨張 挙動 を示 す た め, 体 積膨 張 が誘電 率 に直接 影響 を与 えて い

る とは思 わ れな い. した が っ て, そのTCεrの 変化 の 原 因は,

SGT自 身 は立 方 晶で あ るが お そ ら く配位 多 面体 にま だ若 干歪

み が含 まれて お り, そ の歪 み が10mol%以 上 のBaの 置換 固溶

に よって低下 す る ため であ る と推 察 され た.

以上, マ イ クロ波 帯 も含 めて 固溶体 の誘 電特 性 をま とめ る.

SGTにBaを 置 換 す る と, 0.2≦x≦0.4で はQf=60000GHzと

Q値 が比較 的大 き く, か つTCεr (1MHz) が0付 近 の値 が 得

られ た. ま た, Ca置 換 の 場合 には, 大 きなQ値 が得 られた組

成 もあ るが (y=0.9, Qf=62000GHz), TCεr (1MHz) は 全

体 に正 で大 きな値 とな った.

Fig. 10. TCƒÃr vs. tolerance factor for perovskite compounds

fabricated in this study (a broken line shows the result reported by

Reaney et al.12)).

Fig. 11. Temperature dependence of (A) dielectric constant and (B) thermal expansion of the SGT and (Sr0.9Ba0.1) (Ga0.5Ta0.5)O3 samples.

Page 7: Changes in the Crystal Structure and Dielectric Properites

藤井 孝 他  Journal of the Ceramic Society of Japan 106 [7] 1998 675

4. ま と め

本研 究 は, (1:1) 型複 合 ペ ロ ブ ス カイ ト構造 を持 つ 固溶 体

(Sr1-xBax)(Ga0.5Ta0.5)O3, 及 び (Sr1-yCay)(Ga0.5Ta0.5)O3を

合 成 し, A-サ イ トイオ ン置 換 に伴 う結 晶構 造 及 び誘 電特 性 の

変 化 に つ い て検 討 した. そ の結 果 以下 の こ とが 明 らか とな つ

た.

(1) A-サ イ トをBaで 置 換 す る と, Baはx=0.55ま で固 溶

した. そ れ らの 固溶 体 で は, 結 晶系 は す べ て立 方 晶 で あ り,

B-サ イ トイオ ンは規 則化 しな か った. 一 方, Caで 置換 す る と,

す べ ての組 成 でペ ロブ ス カイ ト単 一相 が 得 られた. この場合,

結 晶系 は0.1≦y≦0ョ2で わ ず か な対 称 性 の 低下 を示 唆 す る現 象

が 見 られた が, y=0.5ま で は立 方 晶で あ った. y=0.6に な る と

対 称 性 が 低 下 し (恐 ら く正 方 晶), 0.8≦y≦1で は 斜 方 晶 と

な った. また, 0.1≦y≦0.5で はB-サ イ トイオ ン の一 部 が規 則

化 し, 焼結 時 間が長 くな るにつ れ規則 化 度 は増大 した.

(2) 焼 結 体 試 料 の 誘 電 率 は, マ イ クロ波 帯 及 び1MHzと

もにA-サ イ トのBa, Ca置 換 に伴 う変化 はわ ずか であ る こ とよ

り, A-サ イ ト置 換 は結 晶 の イ オ ン分 極 にほ とん ど影 響 しな い

と考 え られ た. マ イクロ波 のQ値 はBa, Caと も約10mol%の

置 換 にお いて著 し く低下 した が, これ は結 晶構造 の長 距離 規則

性 の低 下 に よ る もの と推 察 さ れ た. ま た, 1MHzで のTCεr

はCa置 換 した 固 溶体 で は正 で 大 きな値 であ った が, Ba置 換

の0.2≦x≦0.4で はTCεr≒0の 値 を得 る こ とが で きた. A-サ イ

トの イオ ン置 換 に伴 って生 じるTCεrの 変 化 につ い て は, 骨

格 構造 の (Ga,Ta)O6八 面体 の歪 み と関連 させて考 察 した.

謝 辞 本研究を行うに当たり, 熱膨張率の測定に・協力して頂いた北海道立工業試験場の赤澤敏之氏に感謝致します.

文 献

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