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本ニュースレターでは、世界の公正な投資市場をリードする専門資格CFA ® CFA協会認定証券アナリスト)の認定・推進機関であるCFA協会の 活動から、情報をお届けいたします。取材の参考資料としてご活用いただくことができれば幸いです。 CFA協会ならびに日本CFA協会の詳細はホームページをご参照ください。 CFA協会/http://www.cfainstitute.org ■一般社団法人日本CFA協会/http://www.cfasociety.org/japan CFA NEWSLETTER グローバル金融アナリストの情報誌 No.039/20163月号 CONTENTS Topics CFA新資格者授与式 ~レベルIII合格者数が日本CFA協会史上最高の88人に 8回リサーチチャレンジ国内大会開催 ~京都大学が初優勝 特別シンポジウム:「金融の将来」イニシアチブ を開催 2016 Asia-Pacific Regional Meeting参加報告 ~ソウル 日本取引所グループ・東京証券取引所との共催シンポジウム 「機関投資家はコーポレートガバナンスをどう評価するか」 CFAJ Update コミッティ活動報告 CFA News & Trend CFA Magazine 11-12月と3月号より ■短期志向を解決する ■ブロックチェーンがもたらす未来 ■ウェルス・マネジメント・テクノロジー:次 は何か? ESG投資の拡大 ■これから起こること ■アセットオーナーがGIPS基準を使うべき理 ■欧州の目論見書ルール改正はゲームチェン ジャーとなるか? ■カオスを予想するのは難しい ■テーラーメイド ■芸術のレッスン ■完全自動化 ■企業データを浄化する CFA People ■今後の主な予定

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本ニュースレターでは、世界の公正な投資市場をリードする専門資格CFA®(CFA協会認定証券アナリスト)の認定・推進機関であるCFA協会の活動から、情報をお届けいたします。取材の参考資料としてご活用いただくことができれば幸いです。 CFA協会ならびに日本CFA協会の詳細はホームページをご参照ください。 ■CFA協会/http://www.cfainstitute.org ■一般社団法人日本CFA協会/http://www.cfasociety.org/japan

CFA NEWSLETTER

グローバル金融アナリストの情報誌 No.039/2016年3月号

CONTENTS

Topics ■ CFA新資格者授与式 ~レベルIII合格者数が日本CFA協会史上最高の88人に

■ 第8回リサーチチャレンジ国内大会開催 ~京都大学が初優勝

■ 特別シンポジウム:「金融の将来」イニシアチブ を開催

■ 2016 Asia-Pacific Regional Meeting参加報告 ~ソウル

■ 日本取引所グループ・東京証券取引所との共催シンポジウム

「機関投資家はコーポレートガバナンスをどう評価するか」

CFAJ Update ■ コミッティ活動報告

CFA News & Trend

~CFA Magazine 11-12月と3月号より ■短期志向を解決する ■ブロックチェーンがもたらす未来 ■ウェルス・マネジメント・テクノロジー:次

は何か? ■ESG投資の拡大 ■これから起こること ■アセットオーナーがGIPS基準を使うべき理

■欧州の目論見書ルール改正はゲームチェン

ジャーとなるか? ■カオスを予想するのは難しい ■テーラーメイド ■芸術のレッスン ■完全自動化 ■企業データを浄化する

CFA People ■今後の主な予定

1

CFA新資格者授与式 ~レベルIII合格者数が日本CFA協会史上最高の88人に

Charter Award Ceremony (CFA新

資格者授与式)は毎年世界各国で行

われる重要なイベントの一つです。

長期間にわたって勉強してきたその

成果をお祝いするだけでなく、チャ

ーターホルダーとしての門出を心新

たに迎えていただけるよう、世界各

地のCFA Instituteからのゲストも出

席してこれからの心構えなどをお話

しする特別な日です。

昨年12月11日の授与式にはCFA Ins

tituteからのゲストとして、北京から

Board of GovernorsのMr. Hua Yu、

香港からはMs. Brenda Hou (Direc

tor, Society Relations Asia Pacifi

c)、Ms. Annie Lo (Director of inve

stment performance standards for

CFA Institute for the Asia-Pacific

region) 、Ms. Angela Chu (Mana

ger, Society Relations, APAC)が駆

けつけて下さいました。

授与式当日の運営はボランティア・

ベースで行われましたが、ボランテ

ィア・メンバーの方々の中にはチャ

ーターホルダーだけでなく、まだ受

験生の方もいらっしゃいます。この

セレモニーに限らず、多くの当協会

のイベントがこうしたボランティア

の方々のサポートによって支えられ

ていると言っても過言ではありませ

ん。

素晴らしいことに、レベルIIIの合格

者は88名と日本CFA協会始まって

以来過去最高となりましたが、他の

アジアの国、中国などでは受験者数

も格段と増えており、その存在感を

増しています。日本CFA協会では、

今後も日本でのメンバー増加のため

に各種サポートを行っていく所存で

す。

( 日本CFA協会理事

宝田めぐみ, CFA )

Topics

2

第8回リサーチチャレンジ国内大会開催-京都大学が初優勝

大学生による企業分析力を競う国内

唯一の金融国際大会、CFA 協会リサ

ーチチャレンジ(CFA Institute Res

earch Challenge)2015-2016 の国

内大会決勝を、12月4日(金)、東京

金融ビレッジにて開催しました。厳

正な審査の結果、京都大学(指導教

官:川北 英隆教授、メンター:中山

惠介氏、CFA、アムンディ・ジ ャ

パン株式会社)チームが初出場で初

優勝を果たし、日本代表としてアジ

ア大会への出場を決めました。

国内大会には、国内著名大学から13

チームが参加し、8月から始まる足

掛け4か月の激戦を戦いました。各

参加チームは、楽天株式会社(代表

取締役会長兼社長:三木谷 浩史、本

社:東京都)を分析対象とし、予選

では企業分析レポート(英文)によ

ってその分析力を競います。書類審

査結果で上位4チームが国内決勝大

会に進出しました。

決勝では、英語による10分間のプレ

ゼンと3人の審査員(三瓶裕喜氏(フ

ィデリティ投信株式会社ディレクタ

ーオブリサーチ)、前田正吾氏(シュ

ローダー・インベストメント・マネ

ジメント株式会社取締役日本株式運

用統括)、ズヘール・カーン氏(ジェ

フリーズ証券マネジング・ディレク

ター調査部長))による厳しい質疑応

答によって、その優劣を競いました。

決勝進出校の分析レポートに対する

評価が拮抗するなか、注目の各チー

ムのプレゼンで、京都大学は審査員

全員から高評価を得て他校を引き離

し、見事優勝しました。同大学をは

じめ最終審査に残った各チームは、

楽天の事業構造が複雑で分析が困難

であったにも関わらず分析がしっか

りできていた点等が評価された一方、

同社のキャッシュフローの源泉に対

する分析の甘さなど、専門家の視点

から厳しい指摘も受けました。

また、惜しくも敗れたチームの中か

ら、楽天の事業構造の本質を的確に

捉えていた点を評価され、中央大学

(指導教官:高橋 豊治教授、メンタ

ー:王子田 賢史、CFA、 BNY メロ

ン・アセット・マネジメント・ジャ

パン株式会社)に「楽天賞」が授与

されました。

優勝した京都大学は「アジア大会で

は、他の参加校の思いも背負って頑

張りたいと思います。そしてここま

でずっと寄り添ってきてくださった、

メンターの方や先生など周りのサポ

ートに感謝します。」と述べ、アジア

大会へ気持ちを新たにしていました。

京都大学は2016年4月12日-14日に

米国シカゴで開催されるアジア太平

洋地区大会へ進出し、連続して同地

で開催される世界大会への出場権を

かけて、アジアの強豪大学と対戦し

ます。

今年も5月から次回のリサーチチャ

レンジの準備として、分析対象企業

の選定、参加予定大学チームへの訪

問と大会の概要説明、メンターとグ

レーダーの選任などが始まります。

ビジネスとして企業分析をご経験し

たことのある方、またはその分野で

の知識を高めたいとお考えの方は、

是非メンター・グレイダーとしてご

参加いただけることを、コミッティ

ー一同お待ち申し上げております

(日本CFA協会理事

小澤大二, CFA)

Topics

3

特別シンポジウム:「金融の将来」イニシアチブ を開催

上場企業、年金基金、資産運用会社、研究者を招き盛況に終了

1月21日(木)に日本IR協議会の後援

のもと、特別シンポジウム『「金融

の将来」イニシアチブ - 企業価値

向上と持続的成長に向けて: 日本版

スチュワードシップ・コードとコー

ポレートガバナンス・コードを活か

し、世界に注目される日本になる。

二つのコード導入後のフォローアッ

プ - 』 を開催しました。参加登録

者は190名と多数に上り、昨年5月2

2日のシンポジウム同様、本テーマ

への関心の高さを示す結果となりま

した。

本シンポジウムは、金融の将来プロ

ジェクト」の掲げる課題「1.投資家

(顧客)第一主 義」に焦点を当て、安

倍政権の日本再興戦略において車の

両輪として重要な位置付けを与えら

れている日本版スチュワードシッ

プ・コードとコーポレートガバナン

ス・コード導入後、「形だけでなく

実効的に ガバナンスを機能させる

など、コーポレートガバナンスの更

なる充実は引き続き重要な課題であ

る。」との認識のもと、「スチュワ

ードシップ・コード及びコーポレー

トガバナンス・コードのフォローア

ップ会議」が開催されている中で、

一昨年12月10日に当協会が主催し

た同名タイトルのイベント・シリー

ズ第三弾との位置付けで実施されま

した。

今回のシンポジウムでは、基調講演

者に金融庁総務企画局参事官(国際

担当) 神田 眞人氏をお迎えし、

「スチュワードシップ・コード及び

コーポレートガバナンス・コード

のフォローアップ会議」メンバー4

名のご登壇を賜りました。また、全

体の4割強にあたる3名の女性のご

専門家及び外国人専門家をご講演者

に迎え、会社の持続的な成長を確 保

する上で、社内における女性の活躍

促進を含む多様性の確保の必要性が

叫ばれる中、ダイバーシティにも十

分な配慮をして実施いたしました。

プログラムは講演とパネルディスカ

ッションの二部構成で登壇者の

方々 からテーマに即した貴重なお

話を伺う最良の機会となりました。

冒頭、日本投資顧問業協会 会長 岩

間陽一氏から開会の挨拶を賜りまし

た。「日頃からCFA 協会の活動で、

特に職業倫理の向上とコーポレート

ガバナンスの改善への取り組みをな

さっていることについて、深甚なる

敬意を表する次第でございま

す。」、「この時期に、このテーマ

で、こ のシンポジウムを持たれると

いうことはまことに時宜を得た企画

であると、強く感じるところでござ

います。」との心強いお言葉をいただ

きました。

次に、「スチュワードシップ・コー

ドとコーポレートガバナンス・コー

ドについて」と題して、金融庁総務

企画局参事官(国際担当) 神田 眞人

氏の基調講演がなされました。ご講

演と当日配布資料にはシンポジウム

前日に開催されたフォローアップ会

議の結果も反映していただきました。

情熱的 に、懇切丁寧で分かり易い説

明をいただきました。また、「市場経

済においてクリティカルな役割を果

しておられるCFAの皆さん」との暖

かいお言葉もいただきました。続い

て、「二つのコードの導入、適用後

の現状と課題」と題して、日本投資

環境研究所主任研究員 上田亮子氏

より、また「ビジョナリーボードリ

ーダーシップ:長期志向のスチュワ

ードシップ」と題して、CFA 協会基

準および金融市場信頼性部門ヘッド

トニー・タン博士、CFAから、講演

をいただきました。

パネルディスカッションは、「スチ

ュワードシップ・コードおよびコー

ポレートガバナンス・コード のフ

ォローアップ:二つのコードの実効

性を高め、我が国の企業価値向上と

中長期的持続的成長の ため今何を

なすべきか。現状と課題を確認し、

将来に繋げる。」と題して、筆者がモ

デレーターを務め、パネリストとし

て、企業年金連合会 参与 コンプラ

Topics

4

イアンス・オフィサー 桂照男氏、ガ

バナン ス・フォー・オーナーズ・

ジャパン(株)代表取締役 小口 俊朗

氏(CFA)、ジェイ・ユーラス・アイ

アール株式会社マネージングディ

レクター、取締役、高山与志子氏、

(株) 資生堂 顧問(元 常勤監査役)

高山靖子氏をお迎えして、ショー

ト・プレゼンテーションをいただく

とともに、重要論点について活発な

議論が行われました。

なお、本シンポジウム講演録を日本

CFA協会ウエッブサイトに掲載して

おりますのでご活用ください。

(日本CFA協会 執行理事

原田武嗣, CFA)

5

2016 Asia-Pacific Regional Meeting 参加報告-ソウル

2月26-28日にかけて韓国ソウルに

おいて‘Leadership Excellence’と

いうテーマのもとAPAC Regional

Meetingが開催されました。参加国

は約15カ国、参加人数は約120名に

上りました。Training, Governance,

Brand Awarenessのフォーカスポ

イントについてお伝えします。

Train-the-Trainer Program-Using

Ethics Training to Engage Stake-

holders

Train-the-Trainer Ethics Program

(TTEP)はその名の通りEthicsに関す

るTrainerを育成するプログラムで、

CFAI本部のDirector, Society Ethics

TrainingのMichael G. McMillan氏

を講師として、模擬トレーニングと

して様々なEthical Dilemmaを議論

しました。

Global Brand Campaign

CFA協会はCFAブランドのアウェア

ネスを世界的に高めるためのキャン

ペーンを積極的にかつ段階的に実施

していきます。

最初に米国、英国、インド、中国と

いった国々において2016年2月/3月

にスタートして、順次その他の国々

に展開していきます。

インドの例

中国の例

Brand Campaign through Social

Media

CFAI香港本部のソーシャル・メディ

ア・マネジャーであるScott Lee氏を

講師として、「最初に行うべきことは

アクセス者、フォロワー(fan base)

の拡大」などのコメントの後、北京

協会の例(WeChatの活用)とイン

ド協会の例が紹介されました。

当協会でもFacebookにページを持

っていますが、特にオープンなペー

ジをより活用していくと効果的と感

じました。

Collaborations: Impact and

Innovation North Asia

Member Valueチームの議論で、参

加者間で共有された認識は、各協会

で実施されているイベントなどの情

報共有が、Member Value向上に役

に立つのではないか、ということで

す。

会員の皆様に他の協会のイベントを

紹介することもできますし、また他

の協会の企画が自分の協会のイベン

ト企画のヒントとなることもあるで

しょう。場合によっては、スピーカ

ーの相互紹介もできるかもしれませ

ん(事例はあるようです)。このよう

な活動を通じて、会員向けサービス

向上に結び付けることができるので

はないか、という視点です。

最後になりましたが日本CFA協会は

「2015-16Lowest Ratio of Charter

Pending Award」を受賞しましたこ

とをご報告します。こちらは会員の

皆様の日本CFA協会の活動に対する

評価の表れでありますので今後も価

値ある情報とネットワーキングの機

会を提供して皆様の満足度の向上を

めざして努めてまいります。

(日本CFA協会会長 青砥政孝, CFA、

同 理事 田原一彦, CFA、

同 理事 本間 晶, CFA)

Topics

6

日本取引所グループ・東京証券取引所との共催シンポジウム

「機関投資家はコーポレートガバナンスをどう評価するか」

国内日本取引所グループ・東京証券

取引所との共催シンポジウム「機関

投資家はコーポレートガバナンスを

どう評価するか」を、3 月 10 日に東

証ホールで開催しました。

シンポジウムは、三瓶裕喜様(投

資家フォーラム運営委員、フィデリ

ティ投信ディレクターオブリサーチ)

から「投資家フォーラム活動報告~

論点・問題意識・期待~」という内

容のご報告から始まりました。三瓶

様は、コーポレートガバナンス・コ

ードに対する企業のガバナンス報告

書の記載について、機関投資家から

見てどのような内容が高く評価され

るのか、具体的な事例を交えながら

説明されました。例えば他社が“コ

ンプライ”としているのと同等の状

況でも、あえて“エクスプレイン”

としている事例などに言及され、高

く評価されました。“コンプライ・オ

ア・エクスプレイン”では“コンプ

ライ”が重要なのではなく、いかに

“エクスプレイン”するのか、とい

う方が却って重要であることが浮き

彫りになったと思います。

次いで鷹羽美奈子様(MSCI ESG

Research シニアアナリスト)から、

「MSCI ESGアナリストのガバナン

ス評価ポイント」という題名で、

MSCI の、世界共通の評価体系によ

る ESG 評価について説明されまし

た。日本企業は平均的には、E(環

境)と S(社会)のスコアは悪くな

いが、G(ガバナンス)が極端に悪

いということが紹介され、日本企業

の課題が、改めて明確になった、と

いえそうです。

シンポジウムの後半は、佐藤淑子

様(日本 IR 協議会専務理事)にモデ

レーターをお願いし、三瓶様、鷹羽

様に加え、銭谷美幸様(第一生命ス

チュワードシップ活動推進チーム部

長)、豊田一弘様(シュローダー・イ

ンベストメント・マネジメント日本

株チームファンドマネージャー)に

もパネリストとして参加していただ

いて、「評価されるコーポレートガバ

ナンスと、評価されないコーポレー

トガバナンス」というテーマによる

パネルディスカッションを行いまし

た。

このシンポジウムでは、参加者は

直接質問するのではなく、質問は質

問票に書いていただいて司会が集

約・コントロールする、という方式

を取りましたが、通常よりも多くの

質問にお答えいただくことが出来、

充実した議論になったと思います。

参加した方のアンケートを見ても、

シンポジウム全体の評価について、

4 点満点で平均 3.43 点と、かなり満

足していただけたようです。

シンポジウムには 130人近くの方

にご参加いただきました。そのうち

約 90 人は日本 CFA 協会と直接関わ

りを持たない方々で、当協会の認知

を高める効果も相当あったのではな

いか、と考えています。

(日本 CFA 協会理事

田原一彦,CFA)

Topics

7

このコーナーでは、メディアおよび会員の皆様に日本 CFA 協会の各分野での活動状況をお知らせしております。

メンバーシップ

メンバーシップコミッティではCFAプロ

グラムを受講している受験生をサポー

トしています。6月試験にむけて、これ

ま で Study Kickoff 、 Calculator

Workshop, CFAプログラムに精通され

ているWiley社による間違えやすい箇

所の確認Study Session を行っていま

すが、5月には本番さながらのMock

Exam が予定されています。

他にもCLARITAS プログラム受講者

向けにも Study Session を行なって

いますが、当初は数名だった受講生も

今では20名を超えてきています。金融

の基礎知識を網羅した新資格に興味

のありそうな友人や同僚がいらっしゃ

いましたらお声掛けを下さい。

なお、HH(Happy Hour)は昨年同様

2月に開催し、ネットワーキングに役立

てていただいております。さらには、会

社が終わってからのHHに参加されに

くい女性会員のために luncheon

meeting を3月にCFAJ初めて開催し

ました。お昼の時間を使ってのネットワ

ーキングでしたが大変好評でした。今

後もネットワーキングの機会を作って

いきたいと思いますので、皆様ご参加

ください。

プログラム

プログラム・コミッティでは毎月2回の

セミナーを目処に企画・活動をしてい

ます。昨年12月から今年2月には以下

の通り、幅広いテーマで8回のセミナー

を実施しました。

12 月 1 日 : Why does non-Muslim

investors invest in the Islamic Bonds?

… Ms.Rejina Rahim & Mr.Ramlie

Kamsari (Nomura Asset Management

Malaysia)

12月7日:Fintechが変える金融ビジネ

・・・楠真氏(野村総合研究所 理事)

1月7日:【日本CFA協会新春特別セミ

ナー】「通説」の検証を通じて、2016年

の世界投資環境を点検する

・・・馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレッ

ト代表)

1月21日: The Dawn of the Digital Age

in Financial Services

・ ・ ・ Mr. Scott Burns (Morningstar

Global Head – Asset Manager Client

Solutions)

1 月 22 日 : 2016 Global Economic

Outlook from Markit PMI perspective

emphasis on China … Mr. Chris

Williamson (Chief Economist, Markit

Group)

1月26日:石油価格はどうなる?

・・・岩瀬昇氏(エネルギーアナリスト)

2月4日:

The New Neutral, Worldwide

Valuations and the Case for

Fundamental Index Investing …

Professor Jeremy J. Siegel (Senior

Investment Strategy Advisor,

WisdomTree)

2月18日:責任投資とESG・・・松原稔氏

(りそな銀行 信託財産運用部企画・モ

ニタリンググループ グループリーダ

ー)

また3月10日に開催した、日本取引所

グループとの共催シンポジウム「機関

投資家はコーポレートガバナンスをど

う評価するか」にも、プログラム・コミッ

ティとして参画しました。

今後については、日本証券アナリスト

協会/CFA Institute/日本CFA協会共

催国際セミナー「資産運用における新

しいパラダイム」を4月7日に開催しま

す。

また4月21日から、「DCについて考え

る5回連続講座―インベストメント・チェ

ーン最に適化の為に」を毎月一回

(4/21、5/27、6/24、7/22、8/26)開催

する他、5月にはMulti-Asset Investing

に関するセミナーも企画しています。

更に 、最近実施 していな かった

Webcastセミナーを実施すべく、良い

題材を選定中です。

今後も引き続き様々なトピックでのセミ

ナーの開催を予定しております。

関心のあるトピックのご提案、セミナー

講師をつとめていただける方のご紹介

などを歓迎しますので、日本CFA協会

事務局までご連絡ください。

エンプロイヤー・アウトリーチ

当コミッティーは、2016年の理事会の

新体制の紹介を兼ねて、現在のスポ

ンサー企業に対して協会の活動報告

を行い、継続的な協力のお願いをして

おります。資産運用・金融業界は昨年

秋以降の市場環境の変化で、財務的

に十分に余裕があるという状況ではあ

りませんが、引き続き当協会の活動の

支援をお引き受けいただいており、大

変感謝いたしております。今後の注力

ポイントとしては、協会が開催するセミ

ナー等へのスポンサー企業からの参

CFAJ Update

8

加を、協会会員だけではなく、その他

の役職員にも広げていくことと考えて

います。また、Claritasのトレーニング・

コースについては、このような活動に

合わせて紹介を続けております。

アドボカシー/倫理教育

CFA 協会の重点施策である 「金融

の将来プロジェクト(the Future of

Finance Project)」に継続的に取り組

んでいます。よりよい社会に奉仕し、

信頼の置ける未来志向の金融業界を

形成するというミッションのもと、CFA

協会本部と連携して当プロジェクトに

関連する諸々の施策を推進して行き

ます。 「金融の将来プロジェクト」は、

金融に携わる全ての人が関心を持つ

べき課題として、1.投資家(顧客)第一

主義、2.金融知識、3.財務報告の 透

明性と公平さ、4.退職後の生活保障、

5.適切な規制と施行、6.金融システム

の安定の 6 つの主要トピックスに焦点

を当てています。 中でも、日本 CFA

協会では、1.投資家(顧客)第一主義に

フォーカスした活動を実施しておりま

す。その一環として、1 月 21 日(木)に

日本 IR 協議会の後援のもと、特別シ

ンポジウム「金融の将来」イニシアチブ

- 企業価値向上と持続的成長に向け

て: 日本版スチュワードシップ・コード

とコーポレートガバナンス・コードを活

かし、世界に注目される日本になる。

二つのコード導入後のフォローアップ

- を開催しました。参加登録者は 190

名と多数に上り、昨年 5月22日のシン

ポジウム同様、本テーマへの関心の

高さを示す結果となりました。 詳細は

3 ページをご覧ください。

ユニバーシティ

大学生による企業分析力を競う国内

唯一の金融国際大会、CFA 協会リサ

ー チ チ ャ レ ン ジ ( CFA Institute

Research Challenge)2015-2016 の国

内大会決勝を、12 月 4日(金)、東京

金融ビレッジにて開催しました。詳細

は別記事〈2ページ〉をご覧ください。

今年も5月から次回のリサーチチャレ

ンジの準備として、分析対象企業の選

定、参加予定大学チームへの訪問と

大会の概要説明、メンターとグレーダ

ーの選任などが始まります。ビジネス

として企業分析をご経験したことのあ

る方、またはその分野での知識を高め

たいとお考えの方は、是非メンター・グ

レイダーとしてご参加いただけることを、

コミッティー一同お待ち申し上げており

ます。

広報・出版

日経ヴェリタス(2015/12/6掲載)に、

CFAレベル3試験合格者を祝う広告を

掲載しました。前年は広告を掲載するこ

とができませんので2年分となりました

が、多くの方が多大な時間を掛けて困

難な試験に合格されたことに対して紙

面を借りて表彰することができました。

さまざまな観点から金融市場を読み解

くCFAブログの翻訳は引き続き週1本ペ

ースで行っています。また隔週で発行さ

れる「ファンド情報」誌ではこれらの翻訳

されたCFAブログが厳選され「海外特約」

コーナーで活用されています。今年に

入ってからも、米国のエネルギー問題、

スイスにおける銀行制度の抜本的な変

革の可能性、アクティブ運用の選別な

ど、多様な内容が紹介されました。

CFAJ Update

9

このコーナーでは、 CFA Institute会員に配布される隔月刊の会員誌 CFA Institute Magazineから計6本の記事を日本語

で要約しています。原文は以下の URLをご参照ください。

http://www.cfapubs.org/toc/cfm/cfm/26/6

http://www.cfapubs.org/toc/cfm/cfm/27/1

短期志向を解決する Solving Short-Termism

ローリー・フィッツジョン・サイクス

欧米では、ビジネスの短期志向に起

因する問題が増えていますが、その

解決策は十分ではありません。この

百年間において企業の所有構造が緩

やかに変化した結果、企業の存在意

義やガバナンス構造は大きく変化し

ました。多くの人は、資本主義にお

いて短期志向は避けられないと考え

ていますが、過去の歴史を振り返っ

てみると企業の存在意義はこれまで

も常に変化してきたのです。

初期においては創業一族によって多

くの株式が保有されていましたが、

1920、30年代になると彼らは持分を

処分しはじめ、1950、60年代には、

企業は取締役会によって支配される

ようになりました。また、持分が細

分化される過程でファンドによる保

有も増えファンドマネジメント業界

が興隆しました。そして、1980年代

に入るとバイアウトファンドが登場

し、買収防衛のために経営者がスト

ックオプションを発行する等で、株

主価値の重視が企業の存在意義とな

りました。

しかし、現在の株主価値重視の問題

点は、短期的な利益重視に繋がって

いることです。株式持分が細分化さ

れているため、長期的なエンゲージ

メント(目的を持った対話)を行え

ず、ファンドは短期的なトレーディ

ングでリターンを追求しています。

一方、ファンドというプロの投資家

による保有が増えた結果、市場をア

ウトパフォームすることが難しくな

っています。

短期志向への解決策は2つあります。

1つは、かつて創業一族が多くの持

分を保有していたように持分を集中

させたり、または取締役会に多くの

権限を委譲することでより閉じたシ

ステムに立ち返ることです。もう1

つの方法は、企業の長期的な価値に

関するリサーチを充実させたり、フ

ァンドが共同してエンゲージメント

を行う等して透明性の高い新たなシ

ステムを作り上げることです。この

ようにして現在の短期志向は回避で

きるはずです。

(要約翻訳:斉藤哲朗、CFA)

ブロックチェーンがもたらす未来 Chips Off the Old Blockchain

シェリー・デコブニー ビットコインは、政府や中央銀行の

統制外でサービスを提供するバーチ

ャル通貨システムとして創設され、

今や、低い処理費用と海外取引のし

易さに魅了され、商品サービスの決

済手段として受入れられ、その時価

総額は35兆ドル弱と言われていま

す。

とりわけ、その根幹をなす技術で

あり分散型元帳として知られるブロ

ックチェーンは、これまでとは全く

異なる方法で価値やリスクを移転し、

その応用範囲は、決済、貿易金融、

証券取引、清算、資産の所有権移転

など多岐にわたっています。

実際、NY州金融サービス局がビット

ライセンスを発行するほか、即時決

済を可能とするtØという暗号証券

CFA News & Trend

10

の取引所、投資信託やETF、指数創

設のほか、価格や変動性の算出・提

供もなされ、大手銀行や証券会社に

よるR3との提携なども進んでいま

す。

加えて、世界中で20億人とされる

銀行口座を開設できない層にも、非

現金経済に参加できる道を提供して

います。

学術的研究もなされ、ビットコイン

と金や石油、S&P500などの資産と

の相関性や、デジタル世界における

ポートフォリオの効率性などについ

ても解明されようとしています。

一方、インセンティブスキームの問

題や膨大な電力消費、51%攻撃に対

する脆弱性など、「採掘」に関する重

大な構造的欠陥についての理解は進

んでおらず、長期的に、そのビジネ

スモデルはリスクやコストに見合う

ほどの収益性や活力は期待できず、

コントロール困難な分散型システム

に対する政府からも懸念が寄せられ

ています。

それでも、積極的な研究者は、ビッ

トコインやブロックチェーンが未来

の金融オペレーティングシステムに

なり、既存企業にとって代わるビジ

ネスモデルの基盤になりうると考え

ています。初期段階から次世代企業

に投資する利点の多くは、イノベー

ションのスピードや将来の価値創造

からもたらされます。

(要約翻訳:大浜 匠一、CFA)

ウェルス・マネジメント・テクノロジー:次は何か? Wealth Management Technology: What’s next?

エド・マッカーシー テクノロジー革命は、ウェルス・マ

ネジメントに影響します。CFAマガ

ジンは、ジョエル・ブラッケンシュ

タイン氏とジェイミー・マッキンタ

イア氏に、両氏が考える今日の技術

革新が、ウェルス・マネジメント・

マネジャーの顧客業務に及ぼす影響

についてインタビューをしました。

ジョエル・ブラッケンシュタイン氏:

ロボ・アドバイザー

ロボ・アドバイザーが登場した時に

は、多くの人はそのビジネスモデル

に懐疑的でしたが、ロボを受け入れ

ることにより、現在の顧客に役立つ

だけでなく、将来の顧客を得ること

ができるでしょう。

アドバイザリー価値の賦課

ファイナンシャル・プランニング以

外に、税務対策や相続計画等の分野

で賦課できる価値があります。

ビッグ・データが与える影響

金融サービスではビッグ・データの

活用は未だ実務に浸透していません

が、今後数年間のうちに、多くの企

業がそれらを活用する手段を見つけ

るでしょう。

ジェイミー・マッキンタイア氏

クラウドファンディングの利

顧客資産の一部をこの新しい投資方

式に配分するようアドバイスをする

べきだと思います。

新しい不動産投資

クラウドファンディングの利用例と

しては、住宅の改装への資金提供を

行うパッチ・オブ・ランドがありま

す。

(要約翻訳:吉野 雅法)

11

ESG投資の拡大 Expanding ESG Coverage

ロリ・ピッザーニ 持続可能な投資、インパクト投資、

環境・社会・ガバナンス(ESG)に

よるスクリーニングという呼び方に

違いはあっても、投資にこれらの手

法を取り入れる傾向が、明らかに主

流となってきました。最近までは株

式投資が主でしたが、債券投資にも

ESGによる銘柄選択が拡がってき

ています。こうした投資の金額は、

株式・債券合わせて、2014年に世界

で21.4兆ドルとなり、2012年と比べ

て61%増となっています。「投資分析

の文化的な変化」が起きていると言

えるでしょう。この傾向は、分散投

資をしている年配の投資家と見識あ

るプロの投資運用者という主に2種

類の投資家が主体になっています。

ESGの要素が投資のリスクとリタ

ーンに大きく影響すると認識される

ようになり、投資家は、銘柄選択、

資産配分、リスク・パフォーマンス

計測などにESGの手法を取り入れ、

経 営 陣 と の 積 極 的 な 対 話

(engagement)も見られるようにな

っています。リスクを管理しアルフ

ァを得られるようなESGの統計的、

経験的証拠へのニーズがあるため、

客観的なESGに関する評価への関

心が高まっています。ESGのうち最

も投資家の関心が高いのはガバナン

スですが、それほどリターンに影響

があるわけではないとの研究もあり

ます。

最近のESG関連の現象には、グリー

ン・ボンドの登場もあります。調達

資金の使途を限定したもので、世界

中の環境にやさしい計画への投資家

層を増やそうと作られたものです。

債券市場では、グリーン・ボンドの

発行が増えています。利回りを犠牲

にすることなく、また、余計なリス

クをとることもなく投資ができるよ

うになったと感じると指摘する投資

家もいます。

(要約翻訳:今井義行、CFA)

これから起こること Look Ahead

ジョン・ルビーノ これからの10年間、今まで経験した

ことがなかったような劇的な変化が

資産運用の世界で起ころうとしてい

ます。それらについてご紹介しまし

ょう。

まず一つ目は、過剰負債の収斂です。

債券の発行残高はこれまで一貫して

拡大してきましたが、これからは減

少に転じようとしています。なぜな

ら資金の借入れを行ったとしてもそ

の後の成長が見込めなくなってきて

いる上、レバレッジの高まりによっ

て市場の不安定さが高まってきてい

るからです。

二つ目に投資収益率の低下です。金

融危機の前までは長期にわたって資

産価格は上昇し続けてきましたが、

今後それは見込めないでしょう。株

式のバリュエーションは既に高く上

昇余地が限られていますし、市場金

利は歴史的な低水準で推移している

からです。

三つ目は資産運用におけるロボット

の活用です。ロボットは顧客の属性

に応じて最適なポートフォリオを提

案することができるだけでなく、例

えば税金を抑えながらETFと同じ運

用をする等のように、人間では難し

い運用手法も自在に行うことができ

るのです。

四つ目がクラウドファンディングの

拡大です。インターネットを介した

個人間の借入れは2桁のペースで増

加していますが、今後更に拡大が見

込まれるのは株式による個人間の資

金調達です。小口の新興企業株式は

流動性が乏しいのが問題ですが、そ

れをひとまとめにして取引できるよ

うな仕組みも今後作られていく見込

みです。

最後に、ビットコインに代表される

インターネット上の仮想通貨の普及

です。仮想通貨は低コストで迅速に

為替取引を行うことができるため、

世界中で急速に広まっています。こ

れにより銀行などの伝統的な金融サ

ービスは大きな影響を受けることに

なるでしょう。

(要約翻訳:金子豊和、CFA)

12

アセットオーナーがGIPS基準を使うべき理由 Why Asset Owners Should Use the GIPS Standards

べス・カイザー、CFA、CIPM 運用会社に加えて、年金基金や機関

投資家などアセットオーナーも、

GIPS基準の準拠を表明することが

できますし、既に何社かが表明して

います。

実際、外部顧客を有していないだけ

で、運用指図があり、投資一任資産

を運用し、実績基準で報酬を受けて

おり、自身でも運用しているという

点で、アセットオーナーは運用会社

と同じですので、採用している運用

会社に対して準拠を求めると同時に、

オーナー自身もGIPS基準の準拠を

表明することができます。

そもそも、GIPS基準が業界に浸透し

たのは、運用会社に準拠を求めたア

セットオーナーなどによるところ大

であり、運用会社採用の判断にも影

響するからです。

アセットオーナーは、その利点を理

解しており、準拠を表明することに

よって、自身のパフォーマンス計算

や開示に同じ指針を適用しようと尽

力してきました。その利点とは、立

法機関、監視当局、一般社会に対し

て、(1)公正な表示と完全な開示方

針に基づいて、パフォーマンス計算

と開示に関する世界的な業界水準に

沿っていること、(2)運用実績の評

価に関するベストプラクティスへの

拘り、(3)健全な運用実績方針と手

続きの確立、(4)一貫性、透明性、

比較可能性ある運用実績の計算と開

示方法の表明、(5)採用している外

部運用マネジャーと同様基準を採択

していること、の5点を伝えられる

ということです。

CFA協会では、アセットオーナーが

GIPS基準の準拠を表明するための

手続きを進める一助として、「アセッ

トオーナーのためのGIPS基準の適

用」というタイトルのガイダンスを

制定しています。

(要約翻訳:大浜匠一、CFA)

欧州の目論見書ルール改正はゲームチェンジャーとなるか? New European Prospectus Rules: Game Changer?

マイユ・ハムネン 2015年11月、欧州委員会(EC)は

欧州連合(EU)における目論見書に

関するルールの改正案を提案しまし

た。これは、2019年実施に向けて始

動した資本市場同盟(CMU)構築の

アクションプランのひとつです。

CMUの主な目的は、EU加盟28ヶ国

間の資本市場へのアクセスを改善す

ることにより資本の流動化を促し、

資本市場の厚みを増やすことです。

EU内での金融サービスに関する法

制度の統一が中心的な政策です。

その中でも、目論見書指令の見直し

が重視されています。現状、EU加盟

国それぞれが異なる形で国内法への

置き換えを行っており、クロスボー

ダーで取扱いをする場合複雑なプロ

セスを踏むことになります。改正案

では、目論見書に関するルールがEU

域内で統一的に適用されるよう、指

令(Directive)から規則(Regulation)

に変更されました。。

改正案は、投資家保護の観点から、

現行では何十ページにも及ぶ目論見

書の要約を6ページ以内に制限する

としています。リスクに関する記載

についても縮小する方針です。これ

により、投資家がより明確な情報を

得ることが可能になると欧州委員会

は考えています。

また、SME growth marketsに上場し

ている中小企業(SME)を対象とし

た目論見書の簡素化にも重点をおい

ています。さらに、頻度の高い発行

者向けには、当局への届出に関して

一括登録制度(URD)を新たに導入

し、一定の条件下において簡易的な

書類にて発行登録が可能となります。

現在、欧州議会と欧州理事会は個別

に欧州委員会の改正案を精査してい

ます。その後、最終段階である3者

協議に入ります。政治的な思惑次第

ですが、2017年過ぎ頃には新ルール

が施行される見通しです。

この改正がこれまでの流れを変える

ゲームチェンジャーとなるかは、今

後の政治的な交渉にかかっていると

いえます。CFA協会では引き続き注

視します。

(要約翻訳:井上佐知子)

13

カオスを予想するのは難しい Chaos Is Hard to Predict

スヴャトスラフ・ローゾフ 「破壊」は技術が既存産業を侵食し

ている状況でよく見かけます。タク

シー業界にとってのウーバー社

(Uber)や時計産業にとってのアッ

プル社です。

フィンテックも金融業界を破壊しそ

うな技術であり、とりわけ、運用業

界においては、ロボアドバイザーが

極めて重要な挑戦を投げかけていま

す。

破壊的イノベーション理論でいえば、

ロボアドバイザーが投資管理業界に

とって破壊的であるためには、これ

まで締め出されてきた「好まざる」

顧客をターゲットとし、従来とは異

質なトレードオフを伴う非対称的競

争をもたらし、それらを可能とする

技術的なコアが伴っているか次第で

す。

そして、そのような変化の速度に影

響を与える2つの要素としては、技

術が変革していくスピードと、顧客

がその変化を受け入れるスピードで

す。

さらに、技術革新は常に、専門職に

対する挑戦を招きますが、破壊を寄

せ付けない方法として、自分たちの

ために、新しい職業を「発明」しな

ければなりません。

アルゴリズム的な投資は、HFT(高

頻度取引)やにわか景気と同じ道を

たどるかもしれませんが、落とし穴

や逆行をもたらすかもしれません。

もしシステムに対する信頼が失われ

たなら、今後の拡大に遅れが生じる

でしょう。金融における「革新」は、

ブームとその破裂のサイクルを辿る

傾向があり、そこでは、新しいツー

ルが濫用され、カオス的な結果を招

くことがありますが、残念ながら、

カオスを予想することは困難です。

総じて、「金融革新」というものには

懸念が伴います。金融は、社会の中

でも脆弱な建造物であり、市場がど

う動くかについての薄弱な前提にあ

まりにも頼りすぎています。ブラッ

クスワンは、そこにも潜伏していま

す。

(要約翻訳:大浜 匠一、CFA)

テーラーメイド Tailor Made

エド・マッカーシー、金融ライター フィナンシャル・アドバイザーの一

部は、より良い情報を顧客向けステ

ートメントに載せる試みを行ってい

ます。彼らは、競合する他のフィナ

ンシャル・アドバイザーと差別化す

るために、顧客により関連性のある

有用な情報を与えるよう、ステート

メントをカスタマイズしています。

ニューヨークにあるPSGは、1990

年の設立以来、カスタマイズされた

ステートメントを重要視してきまし

た。同社の設立者であるリチャー

ド・ヨーケン氏は、最初にステート

メントに第三者による報告書や顧客

に有用と考える情報を添付しました。

PSGのマネージング・ディレクター

であるトム・ゾットナー氏は報告書

の作成にあたり、マイクロソフトの

VBAを使用しています。同社は継続

して商業ソフトウェアを検証してい

ますが、ニーズに完全に対応したソ

フトウェアは未だ見つかっていませ

ん。

多くのフィナンシャル・アドバイ

ザーはVBAやその他のコンピュータ

ー言語を扱いたいとは思っていませ

ん。ソフトウェアベンダーと共に提

供する情報を修正することで、ステ

ートメントのカスタマイズはより実

現しやすくなります。

フィナンシャル・アドバイザーは、

直感的に理解可能なステートメント

の開発を目標としています。とはい

え、ステートメントは記録文書とし

ても重要です。正しい文脈とサポー

ト項目を伝達することにより、フィ

ナンシャル・アドバイザーと顧客の

ディスカッションを向上させ、両者

の関係を維持するものであるべきで

しょう。

(要約翻訳:吉野 雅法)

14

芸術のレッスン Art Lessons

エド・マッカーシー CFA協会のコンテンツ・ディレクタ

ーであるジェイソン・フォス(Jason

Voss)氏は、多くの運用プロフェッ

ショナルが創造性の潜在価値を軽視

していると述べています。「The

Investment Idea Generation Guide」

の共著者であるフォス氏は、創造的

思考力は身につけることができ、投

資判断の改善に役立つと考えていま

す。

創造性は人間に本来的に備わってい

る能力であり、必ずしも特別な才能

ではありません。創造性を意識的に

高めることが広く関心を集めていま

す。創造性は今までにしたことがな

いことをする、組み合わせたことが

ないものを組みあわせることと定義

されますが、自分が何を知らないか

を知るためには、知っていることを

把握、整理するというマッピングの

必要があります。自分の知的能力や

考え方の癖を見直すことにより、潜

在的な盲点が見つかることがありま

す。

シナリオプランニングは創造性を解

き放ち、ビジネスツールとして活用

するための枠組みを提供します。マ

ッピングとシナリオプランニングは

広く使用され定評のある手法ですが、

運用プロフェッショナルは依然とし

て銘柄選択能力やバリュエーション

に基づくスクリーニングに大きく依

存しています。

創造性はパターンを認識して多数の

異なる要素を組み合わせることであ

り、ただ業務を遂行して他の人を真

似ることではありません。創造的投

資を成功させるためには創造的プロ

セスを導き、結果として生まれる投

資アイディアを明確に規定された枠

組みと併せて評価する必要がありま

す。創造性の奨励と大局的な見地か

らの実際の運用のバランスをうまく

とる必要があります。

(要約翻訳:森由紀、CFA)

完全自動化 Full Auto

ネイサン・ジェイ ロボットを活用した資産運用アドバ

イザリーサービスは急速に拡大して

いて、その市場規模は2020年には

4,900億ドルに達すると見られてい

ます。そこでこの市場を牽引するベ

ターメント社の設立者、ジョン・ス

タイン氏に話を聞きました。

ベターメント社は2010年に設立さ

れた後、市場の拡大と合わせて急速

に成長し、2015年末には預かり資産

30億ドル以上、12万5千もの顧客と

取引を行っています。またその顧客

は若年層に限らず、中高年にも広が

りを見せています。2015年には確定

拠出年金向けのサービスも開発し、

今後更にサービスの幅が広がってい

くでしょう。

自動化されたアドバイザリーサービ

スの特徴は信頼性です。顧客の相談

を受ける際、同じ内容の質問に対し

ては常に同じ答えを提示します。こ

のような再現性や透明性の高さが顧

客のニーズに合っているのです。ロ

ボットによるアドバイスは人間によ

るアドバイスに置き換わるような存

在ではありません。ベターメント社

も200人もの人間のアドバイザーが、

必要に応じて顧客の相談を受け付け

ています。彼らは顧客の相談内容を

把握し、その上でロボットを使った

アドバイス業務を行っているのです。

ですので、ロボットと人間どちらか

らアドバイスを受けるかではなく、

ロボットからアドバイスを受けるか

もしくは何もアドバイスを受けない

か、で比較するべきなのです。

また、自動化によってアドバイス業

務における職業倫理も強化されるよ

うになりました。ロボットによる再

現性や透明性の高いアドバイスは、

全てが明瞭であるがゆえに利益相反

は起こり得ません。また預かり資産

に比例した報酬体系も無用な取引を

抑えることとなり顧客の利益に貢献

するものでしょう。業界においては

更に高い倫理基準を設けるべきでし

ょうが、ロボットによるアドバイス

はそれを満たすものとなりうるでし

ょう。

(要約翻訳:金子豊和、CFA)

15

企業データを浄化する Cleaning Up Company Data

モヒーニ・シン CFA協会では、企業が構造化データ

の中でも特にXBRL(拡張可能な事

業報告言語)を利用することをサポ

ートしてきました。XBRLを利用す

るメリットは、財務データの配信に

関して、効率性、透明性、比較可能

性、即時性が増すことです。構造化

データの利用は、財務データの「民

主化」ともいえるでしょう。

他の技術と同様に、XBRLの実装に

関して、拡大に伴う困難に直面して

います。最も大きな困難は、データ

の質であり、XBRLデータの自動分

析に支障をきたします。データの質

に関する最も大きな問題の1つは不

必要なタクソノミ(EDINETが提供

する財務報告のための電子的雛形の)

拡張の使用であり、例えば、米国会

計基準に関して企業が選択可能な項

目が多いため、同様な項目に対して

異なるタグ付けが行われるといった

具合です。このため、米国の全上場

企業がSECに対して財務データを

XBRLで提出しているにもかかわら

ず、XBRLデータの質への懸念から、

その自動分析は限定的な利用にとど

まっています。

この問題を解決するために、米国

XBRLはDQC(データクオリティセ

ンター)を設立しました。DQCのメ

ンバーには、ソフトウエアプロバイ

ダや、データのサプライヤー、機関

投資家、会計の専門家、学識経験者

がいます。

DQCは、最近になって初めての規則

策定を完了しました。これは、タグ

付けといった直接的なトピックに関

する財務データの浄化を意図したも

のです。我々は、企業に対して、

XBRLレポートに含まれるエラーや

不整合を解決するために、検証規則

に従うことを推奨しています。

(要約翻訳:斉藤哲朗、CFA)

16

4月以降、日本CFA協会が主催する主なセミナー等の予定は 以下の通りです。

●4月7日(木)

日 本 証 券 ア ナ リ ス ト 協 会 /CFA

Institute/日本CFA協会共催国際セ

ミナー「資産運用における新しいパ

ラダイム」

会場:経団連会館2階国際会議場・ホ

ール

時間:13:00-18:10

○4月19日(火)

「第3回クラリタス勉強会」

会場:東京金融ビレッジRoom1

時間:19:00-20:30

内容:教材 -第 8章 (Quantitative

Concepts)、第9章(Debt Securities)

対象者:クラリタス・プログラムに

登録した方、または登録予定の方

●4月21日(木)

「DCについて考える5回連続講座―

インベストメント・チェーン最適化

の為に」

第1回「制度発足依頼のDC発展の経緯

と現状の問題点」

会場:東京金融ビレッジ

時間:19:00-20:30

講師:オフィス・リベルタス代表 大

江英樹氏

モデレーター:年金シニアプラン総

合研究機構 特任研究員 三木隆二

郎(CFA)

●5月13日(金)

「Multi-Asset Investing: A

Practitioner's Framework」

会場:東京金融ビレッジ

時間:19:00-20:30

講師:Mr. Pranay Gupta, CFA

○5月17日(火)

「第4回クラリタス勉強会」

会場:東京金融ビレッジRoom1

時間:19:00-20:30

内容:教材-第10章 (Equity

Securities)- 第11章

(Derivatives)

対象者:クラリタス・プログラムに

登録した方、または登録予定の方

○5月22日(日)

「CFA試験LIVE Mock Exam」

会場:中央大学駿河台記念館

時間:9:30-16:30

対象:CFA試験(6月)受験者

●5月27日(金)

DC連続講座第2回「企業型DCの課題と

そのベストプラクティス」

会場:東京金融ビレッジ

時間:19:00-20:30

講師:帝国データバンク 中川みゆき

氏、企業年金活用研究会 錦織隆生氏、

プルーデントジャパン 瀧川茂一氏

●5月31日(月)

「金融パーソンのためのストーリー

重視のプレゼン術」

会場:東京金融ビレッジ

時間:19:00-20:30

講師:筑波大学客員教授、高杉事務

所代表 高杉尚孝氏

●6月24日(金)

DC連続講座第3回「DBとDCのハイブリ

ッド型年金」

会場:東京金融ビレッジ

時間:19:00-20:30

講師:厚生労働省年金局企業年金国

民年金基金課 山本進氏、企業年金連

絡協議会 田川勝久氏、CAC専門顧問

佐野邦明氏

CFA People

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[報道に関するお問い合わせ先]日本CFA協会 事務局

〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-7

大手町フィナンシャルシティサウスタワー5階

Tel 03-3517-5471 / Fax 03-3517-5472

E-mail:[email protected]