水熱法による水酸アパタイト...

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10 20 30 40 50 60 2θ/°(CuKα) Fig.1 HA 顆粒(a)と水熱・焼成後の試料(b)XRD パターン 水熱法による水酸アパタイト光触媒複合材料の作製 (東北大院環境) ○川口 脩、上高原 理暢、渡邉 則昭、井奥 洪二 e-mail[email protected] 【緒言】 近年、光触媒は環境浄化に活用できることから、環境分野においても多くの注目を浴びている。特に 酸化チタン(TiO 2 )は化学的安定性と光触媒活性の高さから、最も注目されている光触媒のひとつである。 一方、骨の無機成分である水酸アパタイト(Ca 10 (PO 4 ) 6 (OH) 2 HA)は有機物に対して高い吸着能を有し、 クロマトグラフィーのカラム充填剤などの吸着剤として広く利用されている。積極的な吸着能を持たな TiO 2 と、光触媒活性を持たない HA を複合化することによって、互いの長所を活かし弱点を補い合い、 より効率的な環境浄化材料が作製できると考えられる。本研究では水質浄化を目的とし、汚染物質を吸 着・分解できる材料の作製を試みた。 【実験方法】 HA 顆粒の作製 :ゼラチン溶液に α-TCP 粉末を加えたスラリーを液体窒素中に滴下し、その後1週間 4 ℃で乾燥させた。得られた α-TCP/ゼラチン顆粒を 1200 ℃で焼成し α-TCP 顆粒を得た。これを 160 , 24 h 水熱蒸気処理し、HA 顆粒を得た。 HA-TiO 2 複合顆粒の作製 28 %NH 3 2.5 cm 3 30 %H 2 O 2 10 cm 3 の混合液中に、水冷しながら Ti 粉末 0.125 g を加えて撹拌し、Ti を溶解させた [1] 。この溶液 4 cm 3 HA 顆粒 0.1 g を加え、240 , 6 h 水熱処理した。処理後、顆粒を 1 日室温乾燥させた後、700 , 1 h 焼成した。 【結果と考察】 Fig.1 HA 顆粒と水熱・焼成処理後の試料の XRD パターンを、Fig.2 にそれぞれの SEM 写真 を示した。Fig.1 から、得られた試料は HA とア ナターゼの混合相であり、その他の相は含まれて いないことが確認できた。また Fig.2 から、アナ ターゼ微粒子が HA 粒子の表面を覆うように析 出していることが観察された。 HA 表面でアナタ ーゼの不均一核生成が起こったため、このように アナターゼが析出したと考えられる。 【まとめ】 本研究を通じて、 HA 表面にアナター ゼを析出させた材料の作製に成功し た。今後、アナターゼの析出量を制 御することにより、それぞれの特性 を活かした複合材料を作製できると 考えられる。 ※ 参考文献 [1] M. Kakihana, M. Tada, M. Shiro, V. Petrykin, M. Osada, Y. Nakamura, Inorg.Chem. 2001, 40, 891-894 Fig.2 HA 顆粒(a)と水熱・焼成後の試料(b)SEM 写真 HA anatase (b) (a) 1 μm 1 μm (a) (b)

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Page 1: 水熱法による水酸アパタイト 光触媒複合材料の作製ehtp.kankyo.tohoku.ac.jp/ioku/0811serakyouKawaguchi.pdf10 20 30 40 50 60 2θ/ (CuKα) Fig.1 HA 顆粒(a)と水熱・焼成後の試料(b)のXRD

10 20 30 40 50 60

2θ/°(CuKα)

Fig.1 HA 顆粒(a)と水熱・焼成後の試料(b)の XRD パターン

水熱法による水酸アパタイト―光触媒複合材料の作製

(東北大院環境) ○川口 脩、上高原 理暢、渡邉 則昭、井奥 洪二

e-mail:[email protected]

【緒言】

近年、光触媒は環境浄化に活用できることから、環境分野においても多くの注目を浴びている。特に

酸化チタン(TiO2)は化学的安定性と光触媒活性の高さから、最も注目されている光触媒のひとつである。

一方、骨の無機成分である水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2:HA)は有機物に対して高い吸着能を有し、

クロマトグラフィーのカラム充填剤などの吸着剤として広く利用されている。積極的な吸着能を持たな

いTiO2と、光触媒活性を持たないHAを複合化することによって、互いの長所を活かし弱点を補い合い、

より効率的な環境浄化材料が作製できると考えられる。本研究では水質浄化を目的とし、汚染物質を吸

着・分解できる材料の作製を試みた。

【実験方法】

・HA 顆粒の作製:ゼラチン溶液に α-TCP 粉末を加えたスラリーを液体窒素中に滴下し、その後1週間

4 ℃で乾燥させた。得られた α-TCP/ゼラチン顆粒を 1200 ℃で焼成し α-TCP 顆粒を得た。これを 160 ℃,

24 h 水熱蒸気処理し、HA 顆粒を得た。

・HA-TiO2複合顆粒の作製:28 %NH3水 2.5 cm3 と 30 %H2O2 水 10 cm3 の混合液中に、水冷しながら Ti

粉末 0.125 g を加えて撹拌し、Ti を溶解させた[1]。この溶液 4 cm3 に HA 顆粒 0.1 g を加え、240 ℃, 6 h

水熱処理した。処理後、顆粒を 1 日室温乾燥させた後、700 ℃, 1 h 焼成した。

【結果と考察】

Fig.1 に HA 顆粒と水熱・焼成処理後の試料の

XRD パターンを、Fig.2 にそれぞれの SEM 写真

を示した。Fig.1 から、得られた試料は HA とア

ナターゼの混合相であり、その他の相は含まれて

いないことが確認できた。また Fig.2 から、アナ

ターゼ微粒子が HA 粒子の表面を覆うように析

出していることが観察された。HA 表面でアナタ

ーゼの不均一核生成が起こったため、このように

アナターゼが析出したと考えられる。

【まとめ】

本研究を通じて、HA 表面にアナター

ゼを析出させた材料の作製に成功し

た。今後、アナターゼの析出量を制

御することにより、それぞれの特性

を活かした複合材料を作製できると

考えられる。

※ 参考文献

[1] M. Kakihana, M. Tada, M. Shiro, V. Petrykin, M. Osada, Y. Nakamura, Inorg.Chem. 2001, 40, 891-894

Fig.2 HA 顆粒(a)と水熱・焼成後の試料(b)の SEM 写真

:HA :anatase (b)

(a)

1 μm 1 μm

(a) (b)