民生家庭部門の省エネルギー促進からの 低炭素社会実現(vol.2) ·...

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民生家庭部門の省エネルギー促進からの 低炭素社会実現 (Vol.2) 低炭素社会の実現に向けた 技術および経済・社会の定量的シナリオに基づく イノベーション政策立案のための提案書 社会システム編 Policy Recommendation toward Low Carbon Society on Promotion of Energy Saving in Household Sector (vol.2) Strategy for Social System Proposal Paper for Policy Making and Governmental Action toward Low Carbon Societies 国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター LCS-FY2015-PP-11 平成 28 年 3 月

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民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現 (Vol.2)

低炭素社会の実現に向けた

技術および経済・社会の定量的シナリオに基づく

イノベーション政策立案のための提案書

社会システム編

Policy Recommendation toward Low Carbon Society on Promotion of Energy Saving in Household Sector (vol.2)

Strategy for Social System

Proposal Paper for Policy Making and Governmental Action toward Low Carbon Societies

国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター

LCS-FY2015-PP-11

平成 28年 3月

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社会システム編 民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現(Vol.2)

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概要

 家庭自体の低炭素化を促すために実施した「家庭の電力使用量見える化実験」により、継続的

な節電行動を促すためには、単に電力使用量を表示するのではなく、他者との比較による社会規

範評価の刺激や必要最低限の情報を効果的に提供するナッジ(“Nudge”)の概念を取り入れるこ

とで低炭素化行動を支援する必要があることが明らかとなった。また、「家庭の電力使用量見え

る化実験」により平成 25 年度から収集した実データに基づき、今後の節電アドバイスに応用可

能な複数の知見が得られた。

冷蔵庫のデータ分析では、i-cosmos 家庭の約 27%で買い替えによる節電余地があることが確認

された。これらの家庭の冷蔵庫年間消費電力は 600kWh を超えており(平均値は年間 804kWh)、最新の冷蔵庫(年間消費電力 200kWh)へ買換えた場合、年間の電気代は平均約 1/4 に削減され、

冷蔵庫耐用年数以内に初期投資を回収できることから、費用便益評価を実際の行動につなげるた

めに、現在 LCS で取り組んでいる「電気代そのまま払い事業」への誘導も今後期待できると考

えられた。また、i-cosmos 家庭の約 70%で冷蔵強度の設定変更による節電余地もあることが確認

された。

テレビのデータ分析では、i-cosmos 家庭の約 81%で画面輝度の設定変更による節電余地がある

ことが確認されたほか、意識上の視聴時間よりも実際の視聴時間の方が長い傾向にあったことか

ら、こまめな電源オフも有効であることが示唆された。

今年度実施した i-cosmos への節電アドバイス機能では、カタログ値や実験室データから導いた

節電効果ではなく、実際に計測されたデータに基づいて節電効果を算定し、社会心理学の手法に

基づいて節電アドバイスを提示することが可能となった。

 今後もデータ分析を進めて節電アドバイスに応用可能な知見を得ると同時に、節電アドバイス

や節電目標の提示による実際の節電効果を明らかにし、日本全国に本システムを広める必要があ

る。

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Summary

 The demonstration experiment was carried out for the purpose of CO2 reduction in residential sector by visualization of real-time electricity consumption in households. It clarified that continued actions for electricity saving can be promoted by the social psychological approach is: a comparison with others based on the concept of social norms; and a provision of minimum information applied the concept of “Nudge”. In addition, we acquired through the experiment a lot of scientific knowledge which can be applied to the interactive communication website for energy saving named “i-cosmos”. According to the analysis of refrigerator, about 27% of experiment participants are able to save their electricity by replacement of refrigerator. Each refrigerator of those participants consumed over 600kWh/y (average 804kWh/y). If they replace them with new ones (200kWh/y, 100,000JPY), the electricity cost can be reduced to 1/4 and it enables early payback before lifetime of refrigerator. Also, about 70% of participants would be able to save their electricity by change the operation mode of refrigerator. The analysis of TV showed that the adjustment of screen brightness is possibly effective for electricity saving in 81% of participants. An average viewing time estimated by actual data was longer than statistical data based on questionnaire survey. This implies that an intentional behavior for power-off of TV is considered to be another effective way for electricity saving. The knowledge was acquired not from catalog or laboratory data but from the actual electricity consumption data. We started supplying an advisory system on “i-cosmos” which is useful for energy saving and well-reflecting reality, based on the social psychological approach. A further data analysis is necessary to obtain applicable knowledge for improving/updating electricity-saving advice and to verify the effects of actual energy saving resulted from the advices and target-setting for each household. Widespread diffusion of both knowledge and system will contribute to CO2 reduction in residential sector.

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目次

概要

1.提案の背景 …………………………………………………………………………………………… 12.節電アドバイス機能の開発 ………………………………………………………………………… 5 2.1 家庭のグループ化検討結果 ………………………………………………………………… 8 2.2 各種節電アドバイスの検討 …………………………………………………………………133.家庭による電力需要制御を目指した取り組み ……………………………………………………204.家庭部門の低炭素化に向けた政策提言……………………………………………………………22

参考資料 ……………………………………………………………………………………………………22

別紙 …………………………………………………………………………………………………………23

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1.提案の背景

 我が国において、民生家庭部門を由来とする CO2 排出量は依然として増加傾向にある。民生家

庭部門に求められている低炭素化策は、「家庭自体の低炭素化」と「社会(エネルギー変換部門、

産業部門、民生業務部門、運輸部門)の低炭素化への貢献」の 2 点に分けられる。

 低炭素社会戦略センター(LCS)では、生活の質を落とさずに家庭部門の低炭素化を実現する

ために、LCS が提案するエネルギー技術・経済統合モデルに基づき、各種低炭素化策について環

境・経済面から実施効果を推計すると共に、社会実証実験「家庭の電力使用量見える化実験(図

1)」を通して各種低炭素化策の普及促進に向けた検討等を行うための研究体制を構築した。

 

 前報 [1]「民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現」では、主に以下 4 点を目的

として開始した「家庭の電力使用量見える化実験」の概要および家庭の低炭素化策に対する意識

調査結果を報告した。

 

①一般家庭に電力計測器を設置してエネルギー消費実態の「見える化」を行うことにより、家庭

自体の低炭素化を促す。

②電力計測器により 1 分単位で計測された家庭の電力使用量データを、エネルギー技術・経済統

合モデルにおけるエネルギー需要モデル(家庭部門)の入力データとして活用する。

③各種低炭素化策に関する家庭の意識調査等を行い、社会心理・人間行動学等に基づいて各種対

策の普及阻害要因の分析および普及促進策の提案を行う。提案内容はエネルギー技術・経済統

合モデルにおける将来シナリオ設定に活用する。

④ 実験協力自治体と協調関係を構築し、家庭部門の低炭素化策に関する各自治体の環境施策立案

を支援することで、LCS が提案する社会の低炭素化に向けた政策提言の社会実装を促す。

図 1 家庭の電力使用量見える化実験および見える化 WEB サイト「i-cosmos」の概要

ご協力世帯

https://i-cosmos.jst-lcs.jp

エアコン

家全体

冷蔵庫

テレビ

1分単位で電力データを受信

インターネットで電気の使用状況を確認!

個々の家庭に最適な節電アドバイス情報を配信 WEBアンケート調査の実施 家庭との情報交換(質問への回答など)

家庭とLCSの情報交換WEBページ

低炭素社会戦略センター 電力データを分析 節電アドバイス情報を作成

ご協力世帯居住自治体LCSと連携して地域の環境政策立案

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 上記①で述べた「見える化」を行うため、実験参加家庭 1)と“双方向”にコミュニケーション

を持つことを可能とする WEB サービス「i-cosmos(アイコスモス)[1]」を開発・運用したところ、

運用開始当初は家庭の省エネを促す手段として実験参加家庭から一定の評価を得た(以下、実験

参加家庭を i-cosmos 家庭、または、i-cosmos 世帯と記す)。2014 年 2 月に実施した i-cosmos に関

するアンケート調査結果 [2] の一部を図 2 に示す。エネルギー消費実態の「見える化」は約 8 割の

家庭が「必要」であると感じており、実際に家庭内の行動でエネルギーを意識するようになり、

節電行動につながった家庭も全体の約 5 割に上った。

図 2 i-cosmos に関するアンケート調査結果 [2] の一部(見える化による変化について)

1) 23 自治体(関東地域 22 自治体、関西地域 1 自治体)の一般家庭 229 世帯。詳細は、別紙及び文献 [1] 参照。

変化があった 変化はない

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

問: 電力が「見える化」されたことで、日頃の行動に変化はありましたか。

問: 電力が「見える化」された後、具体的にどのような変化がありましたか。

0

10

20

30

40

50

60

70

色々な家電の電力消費量が

気になるようになった。

日本のエネルギー・環境問題に

対する関心が高まった。

家の外でも、以前より節電・

省エネを心がけるようになった。

設定温度を調整するようになった。

フィルターを掃除した。

扇風機を併用するようになった。

あまり使わなくなった。

省エネ型に買い換えた。

冷蔵強度を調整した。

扉の開閉を短くするようになった。

節電のために、庫内を整理した。

省エネ型に買い換えた。

画面の輝度(明るさ)を調整した。

あまり見なくなった。

省エネ型に買い換えた。

他の家電の使用頻度が減った。

他の家電の使い方が変わった。

省エネ型に買い換えた。

待機電力を減らす努力をした。

その他

(回答数)

<意識> <エアコン> <冷蔵庫> <テレビ> <その他家電><待機電力>

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①今日の電気使用量

②リアルタイムでんき

③家全体の電気使用量

④冷蔵庫の電気使用量

⑤テレビの電気使用量

⑥エアコンの電気使用量

⑦今週の電気使用量

必要 不必要 どちらでもない

問: i-cosmosの各表示内容は、あなたにとって必要な情報ですか。

※以下は左図番号の表示内容

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 しかしながら、実験開始から 2 年が経過した現在、家庭の i-cosmos への関心は薄れており、図

3 に示すように i-cosmos 閲覧回数は減少傾向にある。この現象は既往研究においても確認されて

おり [3]、単に「見える化」しているだけでは人の興味は薄れ、継続的な家庭の低炭素化を促すた

めのツールとしては不十分であることが本実験においても示された。

 

 i-cosmos に関するアンケート調査 [2] では、i-cosmos に追加して欲しい機能についても調査した。

その結果、特に他の家庭との比較や、自分の家に合った省エネアドバイスの提供に対する興味が

高いことが明らかとなった(図 4)。

図 3 i-cosmos 閲覧回数の推移

図 4 i-cosmos に関するアンケート調査結果 [2] の一部(機能追加について)

参考: i-cosmos閲覧回数実績(回/月)

0

100

200

300

400

500

600

700

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月

閲覧回数(回

/月)

2014年2015年

2014.1~2月機器設置期間

全家庭対象にi-cosmosへのログイン依頼

0% 20% 40% 60% 80% 100%

とても興味がある 少し興味がある

どちらでもない あまり興味がない

全く興味がない

①電力の使用状況を、他の家庭と比較できる機能

②自分の家に合った省エネアドバイスを表示できる機能

③アニメーションやキャラクターを入れるなど、子どもも楽しめる画面への改良

④エネルギーや環境に関する、専門家・国・自治体からの情報を表示できる機能

⑤家庭と研究者が互いに意見交換できる掲示板機能

⑥生活に役立つ地域情報(天気予報、防災情報など)を表示できる機能

問: i-cosmosへの追加を検討中の機能について、どのくらい興味をお持ちですか。

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 家庭の低炭素化を進めるためには、「見える化」に代表される定量的根拠に基づく省エネ情報

の提供と、実際に低炭素化行動(省エネや家電の買い換えなど)を促すための仕掛けの、両者が

必要である。社会心理学では節電等環境配慮行動を促す規定因やその構造に関して多数の研究が

行われてきた [4]。規定因の中でも、社会規範評価(個人の行動が社会の規範や期待に沿っている

か否かを判断すること)を刺激することの有効性が多数報告されており、東京電力では電力使用

量をウェブ上で確認できる“でんき家計簿”に、O-Power 社(米)のシステム(自分と他者の電

力使用量を比較表示するシステム)を導入している。図 4 に示した「①電力の使用状況を、他の

家庭と比較できる機能」への興味は、まさに社会心理学における社会規範評価に合致するもので

あり、i-cosmos 参加家庭においても節電行動を促すのに有効な手段であることが示唆された。

 また最近では、“ナッジ(“Nudge”)”の概念に基づき、各家庭の行動特性に適した簡易な情報

提供を行うことによって節電を促す手法も提案され始めている [5]。情報の提供量を絞り、その家

庭にとって必要な最小限の情報をナッジする(ひじでつつく)ように提供することが、行動を促

すのに有効であるという概念は、まさに図 4 に示した「②自分の家に合った省エネアドバイスを

表示できる機能」への興味の高さに合致する。

 LCS ではこれらの背景を踏まえて、実際に低炭素化行動を促すために社会規範評価を刺激する

仕掛けを取り入れた「節電アドバイス機能」を開発し、i-cosmos に実装した。具体的には、過去

の電力計測データと i-cosmos 上で回答したアンケート調査に基づいて、その家庭が実施していな

い節電対策の中で最も節電効果の高いアドバイスを自動選択し、他者との比較も取り入れながら、

直感的にわかりやすい 4 コマストーリーで節電アドバイスを表示するシステムを開発した。節電

アドバイス機能は、平成 28 年 1 月より i-cosmos に実装している。

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2.節電アドバイス機能の開発

 節電アドバイス機能は 4 コマの図をストーリー仕立てで表示する。4 コマは基本的には“起承

転結”となるよう設定した。過去の電力使用実績や世間一般的に言われている情報を「起」に表

示し、「承」ではそれを受けて他の家庭と比較した結果を表示した。「転」では「承」に示した自

分の状況を改善するための方法(その家庭が実施していない節電対策の中から、節電効果の高い

対策を選択)を示し、「結」では節電アドバイスを短いコメントとイラストで表現した。

 節電アドバイスの設定テーマは、(1)冷房の節電、(2)暖房の節電、(3)冷蔵庫の節電、(4)テレ

ビの節電、(5)ピークカット、(6)待機電力カット、(7)過去の振り返り(自分の家のみ)、(8)過去の振り返り(他者との比較)の 8 通りに大別される(表 1)。具体例として、冷蔵庫の節電アド

バイス「放熱面の確保」を図 5 に示す。

 表 1 に示したように、節電アドバイスの表示内容は、基本的には i-cosmos で取得した電力使

用データに基づいて作成した。データ欠損がある場合には、平均値などで補完する作業が必要と

なるが、欠損データが著しく多い家庭は補完後データが実態と大きく異なってしまう可能性があ

るため、節電アドバイス表示の対象外とした。欠損データが生じる原因として、家庭のインター

ネット通信状況が悪いことや、データ収集機器の電源を誤って抜いてしまうことなどが挙げられ

る。家庭へのヒアリング調査を行った結果、通信状況の悪さが原因の家庭におけるデータ取得率

は約 70%強であった。本システムでは、家庭側で対処のしようのない問題を抱える家庭への救済

措置として、データ取得率 70%以上の家庭を対象に節電アドバイスを表示することとした。

表 1 節電アドバイス一覧

テーマ 分岐条件 コマ 1“起” コマ 2“承” コマ 3“転” コマ 4“結”

(1)冷房の節電

対象家庭の前年

月別電力使用量

夏期(6 ~ 9 月)

合計電力使用量

の他世帯との比

夏期時刻別平均

電力使用量の他

世帯との比較

冷房の節電アド

バイス(対象家

庭が未実施の対

策のみ表示)

(2)暖房の節電

対象家庭の前年

月別電力使用量

冬期(12~ 3月)

合計電力使用量

の他世帯との比

冬期時刻別平均

電力使用量の他

世帯との比較

暖房の節電アド

バイス(対象家

庭が未実施の対

策のみ表示)

(3)冷蔵庫の

  節電

製造年≦ 2005かつ前年消費電

力≧ 600kWh

対象家庭の前月

電力使用量の内

訳(冷蔵庫、エ

アコン、テレビ、

その他)

冷蔵庫前月電力

使用量の他世帯

との比較

製造年別冷蔵庫

消費電力(カタ

ログ値)の表示

冷蔵庫の節電ア

ドバイス「買い

替え」(買い替

えた場合に節約

できる電気代も

表示)

上記以外かつ冷

蔵強度設定≠

“弱(小)”

冷蔵強度を変更

した場合の節電

率実績を表示

冷蔵庫の節電ア

ドバイス「冷蔵

強度の調整」

上記以外 対象家庭の前年

月別電力使用量

の表示

冷蔵庫の節電ア

ドバイス「放熱

面の確保」

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表 1 節電アドバイス一覧(続き)

テーマ 分岐条件 コマ 1“起” コマ 2“承” コマ 3“転” コマ 4“結”

(4)テレビの

  節電

画面輝度設定≠

暗め

対象家庭の前年

月別テレビ電力

使用量

テレビ前月電力

使用量の他世帯

との比較

画面サイズ別画

面輝度設定別の

テレビ視聴時電

力消費(W)実

績の比較

テレビの節電ア

ドバイス「画面

輝度の調整」(輝

度設定を変更し

た場合の節電率

実績を表示)

上記以外 テレビの節電ア

ドバイス「こま

めな電源オフ」

(テレビ前月視

聴時間の他世帯

との比較)

(5)ピーク

  カット

平日在宅家庭 系統電力の夏期

時刻別電力需要

カーブ概念図を

表示

対象家庭の前週

(平日)の時刻

別平均電力使用

量を表示

前週(平日)13時~ 16 時の日

平均電力使用量

を他世帯と比較

ピークカットの

アドバイス

上記以外 (非表示) (非表示) (非表示) (非表示)

(6)待機電力

  カット

テレビの待機電

力≠ 0対象家庭の前週

の時刻別平均電

力使用量を表示

夜間(夜 10 時

~翌 8 時)の冷

蔵庫を除く電力

使用量の他世帯

との比較

テレビの待機電

力が 0 でない家

庭の割合と対象

家庭のテレビ待

機電力(W)を

表示

待機電力カット

のアドバイス②

上記以外 待機電力カッ

ト(テレビ以外)

のアドバイス①

(7)過去の振り

  返り(自分

  の家のみ) ―

前月の電力使用

量ランキング

(対象家庭およ

び似た世帯を色

別表示)

対象家庭におけ

る平日・休祝日

の時刻別平均電

力使用量を比較

表示

対象家庭におけ

る前月・前年同

月の時刻別平均

電力使用量を比

較表示

対象家庭におけ

る前月・前年同

月の電力使用量

内訳を比較表示

(8)過去の振り

  返り(他者

  との比較)―

前月電力使用量

を住宅設備グ

ループ別に表示

対象家庭が属す

る住宅設備グ

ループにおける

電力使用量を世

帯人数別に表示

対象家庭が属す

る住宅設備グ

ループにおける

電力使用量を延

床面積別に表示

対象家庭が属す

る住宅設備グ

ループにおける

電力使用量を平

日日中の在宅状

況別に表示

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図 5 冷蔵庫の節電アドバイス表示例(アドバイス内容:放熱面の確保)

図 5 冷蔵庫の節電アドバイス表示例(アドバイス内容:放熱面の確保)

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 他の家庭と電力使用量を比較する際、対象家庭と全く異なる条件の家庭と比較しても対象家庭

にとって参考にはならないと考えられた。そこで、条件の似た家庭をグループ化するために、主

要住宅設備の情報に基づいて家庭を分類した上で、家庭の電力使用量を決定づける因子について

分析を行った。

 

2.1 家庭のグループ化検討結果

 電力使用量に影響を及ぼす主要住宅設備として、電気給湯器の有無や主要暖房機器の種類など

が挙げられる。特に暖房機器に着目した理由は、2014 年の i-cosmos データによると、実データに

基づく季節区分(図 6 に基づき、夏期を 7 ~ 8 月、冬期全盛を 12 ~ 2 月、冬期前後を 3 ~ 4 月

と 11 月、中間期を 5 ~ 6 月と 9 ~ 10 月と定義する)で平均世帯の日平均電力消費量を比較した

結果、夏期(12.9kWh/ 日)と冬期前後(11.8kWh/ 日)は中間期(9.8kWh/ 日)の約 1.2 ~ 1.3 倍、

冬期全盛(16.3kWh/ 日)は中間期の約 1.7 倍となり、暖房機器の影響が大きいと推測されたため

である。なお、2014 年の i-cosmos データ分析結果については別紙を参照されたい。

図 6 i-cosmos 世帯平均の月別時刻別電力消費量

他の家庭と電力使用量を比較する際、対象家庭と全く異なる条件の家庭と比較しても対象家庭

にとって参考にならないと考えられた。そこで、条件の似た家庭をグループ化するために、主要

住宅設備の情報に基づいて家庭を分類した上で、家庭の電力使用量を決定づける因子について分

析を行った。

2.1 家庭のグループ化検討結果 電力使用量に影響を及ぼす主要住宅設備として、電気給湯器の有無や主要暖房機器の種類など

が挙げられる。特に暖房機器に着目した理由は、2014 年の i-cosmos データによると、実データに

基づく季節区分(図 6 に基づき、夏期を 7~8 月、冬期全盛を 12~2 月、冬期前後を 3~4 月と 11月、中間期を 5~6 月と 9~10 月と定義する)で平均世帯の日平均電力消費量を比較した結果、夏

期(12.9kWh/日)と冬期前後(11.8kWh/日)は中間期(9.8kWh/日)の約 1.2~1.3 倍、冬期全盛

(16.3kWh/日)は中間期の約 1.7 倍となり、暖房機器の影響が大きいと推測されたためである。

なお、2014 年の i-cosmos データ分析結果については別紙を参照されたい。

図 6 i-cosmos 世帯平均の月別時刻別電力消費量

0

200

400

600

800

1,000

1,200

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23

主幹

電力消

費量(Wh/ 時

/ 世帯

時刻

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

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 そこで、i-cosmos 全世帯に対して実施したアンケート調査結果(回答率 85%)に基づき、協力

家庭を表 2 に示す大・中・小分類で整理した。

表 2 主要住宅設備情報に基づく家庭の分類

 他の家庭と電力使用量を比較する際、中分類で整理すると「IH 以外オール電化」に該当する

家庭は 3 世帯のみ、「電気給湯+ IH」に該当する家庭は 5 世帯のみとなり、比較対象として少な

すぎることから、大分類を採用することとした。

 

 次に、住宅設備以外に電力使用量に影響を及ぼす可能性のある因子として、以下を仮定した。

 ・世帯人数

 ・住宅の種類(戸建・集合)

 ・延床面積

 ・住宅の建築時期

 ・乳幼児の有無

 ・高齢者の有無 

 ・乾燥機能(食洗機・洗濯機の乾燥機能)の使用頻度

 ・平日日中(10 時頃~ 16 時頃)の在宅状況

 ・節電対策の実施数

 ・特殊な電力消費増加要因(防犯のために照明などをつけっぱなしにする、外出時もペットの

ために空調などをつけっぱなしにする、等)

 

 大分類(オール電化、電気給湯、一般)の各グループについて、2015 年 1 月~ 12 月の全ての

月においてデータ取得率が 70%以上であった家庭の年間電力使用量を非説明変数とし、上記に示

した因子を説明変数とした重回帰分析を行った。具体的には、年間電力使用量との相関が 0.2 以

上となる説明変数のみを重回帰分析の対象とし、多重共線性が確認された説明変数を除いて重回

帰分析を行った。結果を表 3 に示す。

大分類名 中分類名 小分類名 オール電化 電気給湯IHクッキング

ヒーター

冬の暖房

(エアコン

のみ)

冬の暖房

(家電以外

使用)

該当

家庭数

該当家庭数

(2015年各月データ

取得率≧70%)

オール電化 オール電化 オール電化1 ○ ○ ○ ○ × 2 2

オール電化 オール電化 オール電化2 ○ ○ ○ × × 14 6

電気給湯 電気給湯+IH オール電化3 ○ ○ ○ × ○ 4 3

オール電化 オール電化 電気給湯1 × ○ ○ ○ × 0 0

オール電化 オール電化 電気給湯2 × ○ ○ × × 2 2

電気給湯 電気給湯+IH 電気給湯3 × ○ ○ × ○ 1 1

オール電化 IH以外オール電化 電気給湯4 × ○ × ○ × 0 0

オール電化 IH以外オール電化 電気給湯5 × ○ × × × 3 2

電気給湯 電気給湯 電気給湯6 × ○ × × ○ 11 6

一般(暖房電化) 一般暖房電化 その他1 × × - ○ × 17 12

一般(暖房電化) 一般暖房電化 その他2 × × - × × 50 29

一般(その他) 一般 その他3 × × - × ○ 90 58

合計 194 121

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低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書

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表 3 大分類に基づく各説明変数の係数一覧

(*** は 1%有意、* は 5% 有意となったことを示す。) 

オール電化 電気給湯一般

(暖房電化)一般

(その他)(備考)

サンプル数 12 10 41 58

重決定 R2 0.81 0.66 0.30 0.32

切片 -1533.53 -1136.37 1987.98 2047.99

世帯人数 776.85 1837.51* 554.36*** 600.17*** (人)

住宅の種類 - - -721.70 - 0: 戸建 1: 集合

延床面積 39.13*** - 4.89 - (平米)

建築時期 - - - - 10 段階(1950 年~)

乳幼児有無 - - - - 0: 無 1: 有

高齢者有無 - - - - 0: 無 1: 有

乾燥機能 955.82 - - 872.41* 0: 利用回数が 1 回 / 日未満 1: 1 回 / 日以上

平日在宅状況 -349.12 - - - 0: 在 1: 不在

節電対策数 - -53.86 - - (個)

特殊要因有無 - - - - 0: 無 1: 有

 以上の結果から、大分類の全グループに共通して世帯人数が電力使用量に影響を及ぼすことが

確認されたため、他の家庭と電力使用量を比較する際には、大分類に基づいて対象家庭と同じグ

ループに属している家庭の「1 人あたりの電力使用量」で比較することとした。

 「オール電化」「電気給湯」家庭では給湯用エネルギーを電気で賄う分だけ電力使用量が顕著に

大きいと予想していたが、他よりも 1 人あたりの年間電力使用量は大きい傾向が見られたものの、

顕著ではなかった(図 7)。

図 7 大分類に基づく 1 人あたりの年間電力使用量(2015 年)

0500

1,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,5005,000

1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111

1人あたり年間電力消費量

(kW

h/人

/201

5年)

家庭番号(n=121)

オール電化

電気給湯一般(その他) 一般(暖房電化)

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 世帯人数が多い家庭ほど 1 人あたりの電力使用量は小さくなる効果の影響が、上記の原因とし

て考えられたが、図 8 に示すように、世帯人数別に見ても「オール電化」「電気給湯」家庭とそ

の他の家庭との顕著な差は確認できなかった。

 以上の結果から、表 1 に示した節電アドバイスにおいて「他世帯と比較」する際には、大分類

に基づいて家庭をグループ化し、同じグループに属する家庭を比較対象として表示することとし

たが(ただし、冷蔵庫は分類条件に影響しないことから、全家庭を比較対象とした)、月別電力

使用量や年間電力使用量を比較する場合には、今回の実験対象家庭では分類の効果は期待できな

いと考えられた。

 一方、1 日の電力使用パターン(1 人あたりの時刻別電力消費量)を大分類に基づいて比較し

た結果、「オール電化」「電気給湯」家庭においては夜間に給湯用と思われる電力消費量が計測さ

れているなど、大きな違いが見られたことから(図 9)、似た世帯との比較において時刻別の電力

使用パターンを表示する際には分類の効果が期待できると考えられた。

 

 

図 8 世帯人数別 1 人あたりの年間電力使用量(2015 年)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8

1人あたりの年間電力消費量

(kW

h/人

/201

5年)

世帯人数

一般(その他) 一般暖房電化 オール電化 電気給湯一般暖房電化

前年の電力使用量

夏は冷房用家電や冷蔵庫の消費電力量が増える傾向にあります。次の図で他の家庭と夏の電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

2014年の夏(6~9月)、あなたは省エネ世帯の約1.6倍使用していました。

次の図で、何時ごろ電力消費量が多くなっているか、確認してみましょう。

あなた

似た世帯の平均

似た世帯の最小値

夏の合計電力消費量(kWh/人)

1日の使い方を比べてみましょう

他の家庭と電気の使い方に違いはありましたか?

どんなことに電気を使っていたか思い出してみましょう。

冷房の節電アドバイス

(対象家庭が未実施の対策のみコメントで表示)

2014年のあなたの月別電力消費量 夏の時刻別電力消費量(Wh/h/人)

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平成 28 年 3 月

図 9 大分類に基づく 1 人あたりの月別時刻別平均電力使用量

図 9 大分類に基づく 1 人あたりの月別時告別平均電力使用量

0

50

100

150

200

250

300

0:30

1:30

2:30

3:30

4:30

5:30

6:30

7:30

8:30

9:30

10:30

11:30

12:30

13:30

14:30

15:30

16:30

17:30

18:30

19:30

20:30

21:30

22:30

23:30

1人あたり平均電力消費

(Wh/人

/30分

オール電化 電気給湯 一般暖房電化 一般

2015年1月

0

20

40

60

80

100

120

0:30

1:30

2:30

3:30

4:30

5:30

6:30

7:30

8:30

9:30

10:30

11:30

12:30

13:30

14:30

15:30

16:30

17:30

18:30

19:30

20:30

21:30

22:30

23:30

1人あたり平

均電力消費量

(Wh/人

/30分

オール電化 電気給湯 一般暖房電化 一般

2015年5月

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0:30

1:30

2:30

3:30

4:30

5:30

6:30

7:30

8:30

9:30

10:30

11:30

12:30

13:30

14:30

15:30

16:30

17:30

18:30

19:30

20:30

21:30

22:30

23:30

1人あたり平均電力消費量

(Wh/人

/30分

オール電化 電気給湯 一般暖房電化 一般

2015年8月

一般暖房電化

一般暖房電化

一般暖房電化

120

100

80

60

40

20

0

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2.2 各種節電アドバイスの検討

 表 1 に示した節電アドバイスにおいて、i-cosmos で取得したデータを用いて示すことが可能な

アドバイスについては、i-cosmos データ(2014 年データを使用)に基づき作成した。

 

(1)冷房の節電アドバイス

 冷房の節電アドバイスとして、①室外の方が涼しければ冷房を入れる前に換気して、部屋にた

まった暑い空気を外に逃がす ②エアコンの設定温度は 28 度以上にする ③日中の日差しを緑

のカーテンやよしず等で遮る ④エアコンのフィルターを掃除する ⑤エアコンの室外機を涼し

い環境にする(直射日光を遮るなど) ⑥窓を複層ガラスにして断熱性を高める などが挙げら

れるが、冷房負荷は住宅性能や周辺環境などに影響をうけるため、対策実施による定量的な節電

効果の算定は困難である。そのため i-cosmosでは別途実施した家庭へのアンケート調査に基づき、

①~⑥の中で対象家庭が未実施の対策のみを表示することとした。具体的には、図 10 に示す 4コマストーリーを i-cosmos 上に表示した。

(2)暖房の節電アドバイス

 暖房の節電アドバイスとして、①熱を逃がさない工夫をする(日が落ちたら窓にはカーテンを

する等) ②エアコンの設定温度は 20 度以下にする ③窓を複層ガラスにして断熱性を高める 

などが挙げられるが、冷房同様、暖房負荷も住宅性能や周辺環境などに影響をうけるため、対策

実施による定量的な節電効果の算定は困難である。そのため i-cosmos では別途実施した家庭への

アンケート調査に基づき、①~③の中で対象家庭が未実施の対策のみを表示することとした。具

体的には、図 11 に示す 4 コマストーリーを i-cosmos 上に表示した。

図 10 冷房の節電アドバイスストーリー例

図 11 暖房の節電アドバイスストーリー例

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

0 1 2 3 4 5 6 7 8

1人あたりの年間電力消費量

(kW

h/人

/201

5年)

世帯人数

一般(その他) 一般暖房電化 オール電化 電気給湯一般暖房電化

前年の電力使用量

夏は冷房用家電や冷蔵庫の消費電力量が増える傾向にあります。次の図で他の家庭と夏の電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

2014年の夏(6~9月)、あなたは省エネ世帯の約1.6倍使用していました。

次の図で、何時ごろ電力消費量が多くなっているか、確認してみましょう。

あなた

似た世帯の平均

似た世帯の最小値

夏の合計電力消費量(kWh/人)

1日の使い方を比べてみましょう

他の家庭と電気の使い方に違いはありましたか?

どんなことに電気を使っていたか思い出してみましょう。

冷房の節電アドバイス

(対象家庭が未実施の対策のみコメントで表示)

2014年のあなたの月別電力消費量 夏の時刻別電力消費量(Wh/h/人)

前年の電力使用量

あなたの家では他の季節に比べて冬の電力消費量が多いようですね。冬は暖房用家電によって電力消費量が増える傾向にあります。次の図で他の家庭と夏の電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

2014年度の冬(12~3月)、あなたは省エネ世帯の約1.6倍使用していました。

次の図で、何時ごろ電力消費量が多くなっているか、確認してみましょう。

あなた

似た世帯の平均

似た世帯の最小値

冬の合計電力消費量(kWh/人)

1日の使い方を比べてみましょう

他の家庭と電気の使い方に違いはありましたか?

どんなことに電気を使っていたか思い出してみましょう。

暖房の節電アドバイス

(対象家庭が未実施の対策のみコメントで表示)

2014年のあなたの月別電力消費量

冬の時刻別電力消費量(Wh/h/人)

前月の電力使用量の内訳

27%

5%15%

53%

冷蔵庫

エアコン

テレビ

その他

平均的な家庭では、冷蔵庫の割合は約14%とされています(ECCJ家庭の省エネ大辞典より)。あなたの家ではいかがでしたか?

次の図で、他の家庭と冷蔵庫の消費電力を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

16

50

44

0 50 100

最小値

全世帯…

あなた

電力消費量(kWh)

平均世帯

あなたは省エネ世帯の約3倍使用していました。

電気代に換算すると、省エネ世帯よりも約700円多く支払っています(1kWhあたり25円として試算)。

前年の冷蔵庫電力使用量 冷蔵庫は新しいほど省エネ!

21 19 2125 26 29 30 32 30 27 24 23

0

10

20

30

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月

電力消費量

(kW

h)

夏は冬よりも冷蔵庫の消費電力が高くなる傾向にあることが確認できます。

このように、冷蔵庫の消費電力は周辺温度が高いほど、多くなります。

冷蔵強度の調整で省エネ!

冷蔵強度の設定を調整するだけで、電気代の削減につながります。

冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫を買い替えて、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫の節電アドバイス 冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。夏期は「中」、秋・冬・春は「弱」にするなど、季節に合わせて設定温度を調整して、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫が風通しの良い涼しい環境にあるか、確認してみましょう。

2,129

1,561 1,140

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

冷蔵強度:強

(n=2)冷蔵強度:標準

(n=123)冷蔵強度:弱

(n=54)

容量1リットルあたりの

冷蔵庫年間消費電力量(Wh/L/年) ※エラーバーは標準誤差を示す。

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(3)冷蔵庫の節電アドバイス

 冷蔵庫の節電アドバイスとして、①古い冷蔵庫の買い替え ②冷蔵強度の設定変更 ③放熱面

の確保 の 3 種類を想定した。このうち、①と②については i-cosmos データに基づく定量的な節

電効果の算定が可能と判断した(③については冷蔵庫周辺状況のヒアリング調査が必要)。

 

①古い冷蔵庫の買い替え

 i-cosmos 世帯が所有する冷蔵庫の平均製造年は 2006 年、平均容量は 418 リットル、平均消費

電力は年間 578kWh であり、消費電力は容量によらず製造年が新しい程小さかった(図 12)。ま

た、約半数の家庭で 10 年以上前に製造された冷蔵庫を所有・利用していることが明らかとなっ

た。電力単価を 1kWh あたり 25 円と仮定すると、10 年以上前に製造された冷蔵庫(つまり製

造年が 2005 年以前)の消費電力が年間 600kWh 以上であれば、最新の冷蔵庫(年間消費電力は

約 200kWh で、販売価格は 10 万円と想定)に買い換えても、約 10 年で投資回収が可能である。

i-cosmos 世帯においてこの買い換え条件(消費電力≧ 600kWh/ 年かつ 製造年≦ 2005 の冷蔵庫

を所有)を満たす世帯数は、分析対象とした 183 世帯中 49 世帯(約 27%)であり、その冷蔵庫

の平均消費電力は年間 804kWh であった。最新の冷蔵庫へ買換えた場合、冷蔵庫の年間の電気代

が 1/4 になり、約 7 年で投資回収が可能であると試算された。

 

 

 

②冷蔵強度の設定変更

 冷蔵強度の設定に関するアンケート調査に回答した179世帯の冷蔵庫消費電力を分析した結果、

冷蔵強度を“強”から“標準”に、“標準”から“弱”に変更すると、それぞれ平均約 27% の節

電効果があると試算された(消費電力を容量 1 リットルあたりに換算して算出)ことから、冷蔵

強度の調整は節電に有効であることが示唆された(図 13)。冷蔵強度設定が“弱”でない家庭は

125 世帯(全体の約 70%)にのぼることから、多くの家庭で強度設定の変更による節電の余地が

残されていることが明らかとなった。

 

 

図 12 i-cosmos 世帯が保有する冷蔵庫の製造年別消費電力量(n=183)

(3)冷蔵庫の節電アドバイス 冷蔵庫の節電アドバイスとして、①古い冷蔵庫の買い替え ②冷蔵強度の設定変更 ③放熱面

の確保 の 3 種類を想定した。このうち、①と②については i-cosmos データに基づく定量的な節

電効果の算定が可能と判断した(③については冷蔵庫周辺状況のヒアリング調査が必要)。

①古い冷蔵庫の買い替え i-cosmos 世帯が所有する冷蔵庫の平均製造年は 2006 年、平均容量は 418 リットル、平均消費電

力は年間 578kWh であり、消費電力は容量によらず製造年が新しい程小さかった(図 12)。また、

約半数の家庭で 10 年以上前に製造された冷蔵庫を所有・利用していることが明らかとなった。電

力単価を 1kWh あたり 25 円と仮定すると、10 年以上前に製造された冷蔵庫(つまり製造年が 2005年以前)の消費電力が年間 600kWh 以上であれば、最新の冷蔵庫(年間消費電力は約 200kWh で、

販売価格は 10 万円と想定)に買い換えても、約 10 年で投資回収が可能である。i-cosmos 世帯に

おいてこの買い換え条件(消費電力≧600kWh/年かつ 製造年≦2005 の冷蔵庫を所有)を満たす

世帯数は、分析対象とした 183 世帯中 49 世帯(約 27%)であり、その冷蔵庫の平均消費電力は

年間 804kWh であった。最新の冷蔵庫へ買換えた場合、冷蔵庫の年間の電気代が 1/4 になり、約 7年で投資回収が可能であると試算された。

図 12 i-cosmos 世帯が保有する冷蔵庫の製造年別消費電力量(n=183)

②冷蔵強度の設定変更 冷蔵強度の設定に関するアンケート調査に回答した 179 世帯の冷蔵庫消費電力を分析した結果、

冷蔵強度を“強”から“標準”に、“標準”から“弱”に変更すると、それぞれ平均約 27%の節

電効果があると試算された(消費電力を容量 1L あたりに換算して算出)ことから、冷蔵強度の

調整は節電に有効であることが示唆された(図 13)。冷蔵強度設定が“弱”でない家庭は 125 世

帯(全体の約 70%)にのぼることから、多くの家庭で強度設定の変更による節電の余地が残され

ていることが明らかとなった。

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

冷蔵

庫消

費電

力(kW

h/年

製造年

300L以下

301‐400L

401‐500L

501L以上

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平成 28 年 3 月

 以上の結果に基づき、図 14 に示すアルゴリズムに基づいて、対象家庭において最も節電効果

の高いアドバイスを自動選択し、図 15 に示す 8 つのモジュールの中から 4 つを選択して(選択

内容は表 1 参照)4 コマストーリーとして i-cosmos 上に表示した。モジュールの中には、社会規

範評価の刺激を目的とした他者との比較を示した図や、費用便益評価の刺激を目的とした買い換

えによる電気代削減額を示した図を含めた。

図 13 i-cosmos 世帯が保有する冷蔵庫の冷蔵強度別平均消費電力量

図 14 冷蔵庫の節電アドバイス設定アルゴリズム

図 13 i-cosmos 世帯が保有する冷蔵庫の冷蔵強度別平均消費電力量

以上の結果に基づき、図 14 に示すアルゴリズムに基づいて、対象家庭において最も節電効果

の高いアドバイスを自動選択し、図 15 に示す 8 つのモジュールの中から 4 つを選択して(選択内

容は表 1 参照)4 コマストーリーとして i-cosmos 上に表示した。モジュールの中には、社会規範

評価の刺激を目的とした他者との比較を示した図や、費用便益評価の刺激を目的とした買い換え

による電気代削減額を示した図を含めた。

図 14 冷蔵庫の節電アドバイス設定アルゴリズム

2,129 

1,561 

1,140 

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

冷蔵強度:強

(n=2)冷蔵強度:標準

(n=123)冷蔵強度:弱

(n=54)

容量

1リットル

あたりの

冷蔵庫

年間消費電

力量(Wh/L/年) ※エラーバーは標準誤差を示す。

データ取得率≧70% または

月消費電力≧4.2kWh

前年消費電力≧600kWh/年 かつ 製造年≦2005

N

Y

エラー

メッセージ

①買い替えアドバイス

N

冷蔵強度設定≠弱

Y N

③放熱面の確保アドバイス②冷蔵強度設定アドバイス

Y

前年の電力使用量

あなたの家では他の季節に比べて冬の電力消費量が多いようですね。冬は暖房用家電によって電力消費量が増える傾向にあります。次の図で他の家庭と夏の電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

2014年度の冬(12~3月)、あなたは省エネ世帯の約1.6倍使用していました。

次の図で、何時ごろ電力消費量が多くなっているか、確認してみましょう。

あなた

似た世帯の平均

似た世帯の最小値

冬の合計電力消費量(kWh/人)

1日の使い方を比べてみましょう

他の家庭と電気の使い方に違いはありましたか?

どんなことに電気を使っていたか思い出してみましょう。

暖房の節電アドバイス

(対象家庭が未実施の対策のみコメントで表示)

2014年のあなたの月別電力消費量

冬の時刻別電力消費量(Wh/h/人)

前月の電力使用量の内訳

27%

5%15%

53%

冷蔵庫

エアコン

テレビ

その他

平均的な家庭では、冷蔵庫の割合は約14%とされています(ECCJ家庭の省エネ大辞典より)。あなたの家ではいかがでしたか?

次の図で、他の家庭と冷蔵庫の消費電力を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

16

50

44

0 50 100

最小値

全世帯…

あなた

電力消費量(kWh)

平均世帯

あなたは省エネ世帯の約3倍使用していました。

電気代に換算すると、省エネ世帯よりも約700円多く支払っています(1kWhあたり25円として試算)。

前年の冷蔵庫電力使用量 冷蔵庫は新しいほど省エネ!

21 19 2125 26 29 30 32 30 27 24 23

0

10

20

30

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月

電力消費量

(kW

h)

夏は冬よりも冷蔵庫の消費電力が高くなる傾向にあることが確認できます。

このように、冷蔵庫の消費電力は周辺温度が高いほど、多くなります。

冷蔵強度の調整で省エネ!

冷蔵強度の設定を調整するだけで、電気代の削減につながります。

冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫を買い替えて、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫の節電アドバイス 冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。夏期は「中」、秋・冬・春は「弱」にするなど、季節に合わせて設定温度を調整して、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫が風通しの良い涼しい環境にあるか、確認してみましょう。

2,129

1,561 1,140

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

冷蔵強度:強

(n=2)冷蔵強度:標準

(n=123)冷蔵強度:弱

(n=54)

容量1リットルあたりの

冷蔵庫年間消費電力量(Wh/L/年) ※エラーバーは標準誤差を示す。

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16 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

低炭素社会戦略センター(LCS)

低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書

社会システム編 民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現(Vol.2)

平成 28 年 3 月

(4)テレビの節電アドバイス

 テレビの節電アドバイスとして、①画面輝度の設定変更 ②こまめな電源オフ の 2 種類を想

定した。古いテレビの買い替えについて想定しなかった理由として、i-cosmos 世帯において、製

造年の古いテレビの所有率が低かったことが挙げられる(i-cosmos 世帯保有テレビの平均製造年

は 2009 年であった)。また、製造年と消費電力の間に明確な関係性が認められなかったことから

(図 16)、テレビの買い替えは対象外とした。

 

図 15 冷蔵庫の節電アドバイスモジュール

図 16 製造年と視聴時消費電力の関係(輝度設定が“標準”のテレビのみ対象)

図 15 冷蔵庫の節電アドバイスモジュール

(4)テレビの節電アドバイス テレビの節電アドバイスとして、①画面輝度の設定変更 ②こまめな電源オフ の 2 種類を想

定した。古いテレビの買い替えについて想定しなかった理由として、i-cosmos 世帯において、製

造年の古いテレビの所有率が低かったことが挙げられる(i-cosmos 世帯保有テレビの平均製造年

は 2009 年であった)。また、製造年と消費電力の間に明確な関係性が認められなかったことから

(図 16)、テレビの買い替えは対象外とした。

図 16 製造年と視聴時消費電力の関係(輝度設定が“標準”のテレビのみ対象)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014

画面

1インチあたりの

視聴

時消費

電力

(W/イ

ンチ)

製造年

ブラウン管 液晶 プラズマ

前年の電力使用量

あなたの家では他の季節に比べて冬の電力消費量が多いようですね。冬は暖房用家電によって電力消費量が増える傾向にあります。次の図で他の家庭と夏の電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

2014年度の冬(12~3月)、あなたは省エネ世帯の約1.6倍使用していました。

次の図で、何時ごろ電力消費量が多くなっているか、確認してみましょう。

あなた

似た世帯の平均

似た世帯の最小値

冬の合計電力消費量(kWh/人)

1日の使い方を比べてみましょう

他の家庭と電気の使い方に違いはありましたか?

どんなことに電気を使っていたか思い出してみましょう。

暖房の節電アドバイス

(対象家庭が未実施の対策のみコメントで表示)

2014年のあなたの月別電力消費量

冬の時刻別電力消費量(Wh/h/人)

前月の電力使用量の内訳

27%

5%15%

53%

冷蔵庫

エアコン

テレビ

その他

平均的な家庭では、冷蔵庫の割合は約14%とされています(ECCJ家庭の省エネ大辞典より)。あなたの家ではいかがでしたか?

次の図で、他の家庭と冷蔵庫の消費電力を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

16

50

44

0 50 100

最小値

全世帯…

あなた

電力消費量(kWh)

平均世帯

あなたは省エネ世帯の約3倍使用していました。

電気代に換算すると、省エネ世帯よりも約700円多く支払っています(1kWhあたり25円として試算)。

前年の冷蔵庫電力使用量 冷蔵庫は新しいほど省エネ!

21 19 2125 26 29 30 32 30 27 24 23

0

10

20

30

40

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

11月

12月

電力消費量

(kW

h)

夏は冬よりも冷蔵庫の消費電力が高くなる傾向にあることが確認できます。

このように、冷蔵庫の消費電力は周辺温度が高いほど、多くなります。

冷蔵強度の調整で省エネ!

冷蔵強度の設定を調整するだけで、電気代の削減につながります。

冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫を買い替えて、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫の節電アドバイス 冷蔵庫の節電アドバイス

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。夏期は「中」、秋・冬・春は「弱」にするなど、季節に合わせて設定温度を調整して、電気代を節約しませんか?

冷蔵庫は24時間稼働しているため、節電対策の効果が特に大きい家電です。冷蔵庫が風通しの良い涼しい環境にあるか、確認してみましょう。

2,129

1,561 1,140

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

冷蔵強度:強

(n=2)冷蔵強度:標準

(n=123)冷蔵強度:弱

(n=54)

容量1リットルあたりの

冷蔵庫年間消費電力量(Wh/L/年) ※エラーバーは標準誤差を示す。

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平成 28 年 3 月

 テレビの消費電力への影響は、図 17 に示すように、種別や画面サイズによるものが大きかった。

i-cosmos 世帯が所有するテレビの平均画面サイズは 37 インチ、平均視聴時消費電力は 185W であ

り、プラズマテレビのほうが液晶テレビよりも視聴時消費電力は大きい傾向にあった。

 

 なお、待機電力の節電アドバイスとして、テレビの待機電力がゼロではない家庭に対して待機

電力カットを促すストーリーも用意した(表 1 参照)。テレビの待機電力は約 8 割の家庭で 0(W)

であり、節電対策としての待機電力カットによる効果が見込める家庭はあまり多くなかった(図

18)。 

図 17 i-cosmos 世帯が保有するテレビの画面サイズ別視聴時消費電力量(n=203)

図 18 i-cosmos 世帯が保有するテレビの待機電力推定結果

0

100

200

300

400

500

600

700

0 10 20 30 40 50 60 70

視聴時消費電力(W)

画面サイズ(インチ)

ブラウン管 液晶 プラズマ

0W81%

~1W5%

~5W7%

~10W3% 10W以上

4%

0W 81%

~1W 5%

~5W 7%

~10W 3% 10W以上

4%

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平成 28 年 3 月

①画面輝度の設定変更

 画面輝度の設定に関するアンケート調査に回答した 198 世帯のテレビ視聴時消費電力を分析

した結果、“明るい”から“標準”に変更すると平均約 37% の節電効果が、“標準”から“暗め”

への変更で平均約 12% の節電効果があると試算された(視聴時消費電力を画面サイズ 1 インチ

あたりに換算して算出)ことから、画面の明るさ調整は節電に有効であることが示唆された(図

19)。画面輝度設定が“暗め”でない家庭は 161 世帯(全体の約 81%)にのぼった。輝度設定の

変更により生活の快適性が失われる可能性も否定できないが、多くの家庭で輝度設定の変更によ

る節電の余地が残されていることが明らかとなった。

 

②こまめな電源オフ

 テレビの消費電力データから推計した i-cosmos 世帯の平均視聴時間は 1 日 6.7 時間であり、ア

ンケートに基づく統計値(1 日 3.8 時間)[2] よりも長く、視聴意識と実態に乖離があることから、

こまめにテレビを消す習慣や自動電源オフ機能の設定が節電に有効であることが示唆された(図

20)。 

図 19 i-cosmos 世帯が保有するテレビの輝度設定別視聴時消費電力

①画面輝度の設定変更 画面輝度の設定に関するアンケート調査に回答した 198 世帯のテレビ視聴時消費電力を分析し

た結果、“明るい”から“標準”に変更すると平均約 37%の節電効果が、“標準”から“暗め”へ

の変更で平均約 12%の節電効果があると試算された(視聴時消費電力を画面サイズ 1 インチあた

りに換算して算出)ことから、画面の明るさ調整は節電に有効であることが示唆された(図 19)。画面輝度設定が“暗め”でない家庭は 161 世帯(全体の約 81%)にのぼった。輝度設定の変更に

より生活の快適性が失われる可能性も否定できないが、多くの家庭で輝度設定の変更による節電

の余地が残されていることが明らかとなった。

図 19 i-cosmos 世帯が保有するテレビの輝度設定別視聴時消費電力

②こまめな電源オフ テレビの消費電力データから推計した i-cosmos 世帯の平均視聴時間は 1 日 6.7 時間であり、ア

ンケートに基づく統計値(1 日 3.8 時間)[2]よりも長く、視聴意識と実態に乖離があることから、

こまめにテレビを消す習慣や自動電源オフ機能の設定が節電に有効であることが示唆された(図

20)。

図 20 i-cosmos 世帯の 1 日の平均視聴時間

7.10 

4.49  3.93 

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

8.00

9.00

輝度:明るい

(n=2)輝度:標準

(n=159)輝度:暗い(省エネ)

(n=37)

画面

サイズ1イ

ンチあたりの

テレビ視

聴時消

費電

力(W/イ

ンチ) ※エラーバーは標準誤差を示す。

0 10 20 30 40 50

0~2

2~4

4~6

6~8

8~10

10~12

12~14

14~16

16~

家庭数

1日の平均

視聴時間

(○時

間以上~

○時間未満

図 20 i-cosmos 世帯の 1 日の平均視聴時間

①画面輝度の設定変更 画面輝度の設定に関するアンケート調査に回答した 198 世帯のテレビ視聴時消費電力を分析し

た結果、“明るい”から“標準”に変更すると平均約 37%の節電効果が、“標準”から“暗め”へ

の変更で平均約 12%の節電効果があると試算された(視聴時消費電力を画面サイズ 1 インチあた

りに換算して算出)ことから、画面の明るさ調整は節電に有効であることが示唆された(図 19)。画面輝度設定が“暗め”でない家庭は 161 世帯(全体の約 81%)にのぼった。輝度設定の変更に

より生活の快適性が失われる可能性も否定できないが、多くの家庭で輝度設定の変更による節電

の余地が残されていることが明らかとなった。

図 19 i-cosmos 世帯が保有するテレビの輝度設定別視聴時消費電力

②こまめな電源オフ テレビの消費電力データから推計した i-cosmos 世帯の平均視聴時間は 1 日 6.7 時間であり、ア

ンケートに基づく統計値(1 日 3.8 時間)[2]よりも長く、視聴意識と実態に乖離があることから、

こまめにテレビを消す習慣や自動電源オフ機能の設定が節電に有効であることが示唆された(図

20)。

図 20 i-cosmos 世帯の 1 日の平均視聴時間

7.10 

4.49  3.93 

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

8.00

9.00

輝度:明るい

(n=2)輝度:標準

(n=159)輝度:暗い(省エネ)

(n=37)

画面

サイズ1イ

ンチあたりの

テレビ視

聴時消

費電

力(W/イ

ンチ) ※エラーバーは標準誤差を示す。

0 10 20 30 40 50

0~2

2~4

4~6

6~8

8~10

10~12

12~14

14~16

16~

家庭数

1日の平均

視聴時間

(○時

間以上~

○時間未満

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19国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

低炭素社会戦略センター(LCS)

低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書

社会システム編 民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現(Vol.2)

平成 28 年 3 月

 以上の結果に基づき、図 21 に示すアルゴリズムに基づいて、対象家庭において最も節電効果

の高いアドバイスを自動選択し、図 22 に示すモジュールの中から 4 つを選択して(選択内容は

表 1 参照)4 コマストーリーとして i-cosmos 上に表示した。

 

(5)その他の節電アドバイス

 その他の節電アドバイスとして、以下 4 つのストーリーを作成した(詳細は表 1 参照)。

・ピークカット(アンケート調査において平日在宅していると回答した家庭に対して夏季に表示)

・待機電力カット(テレビの待機電力が 0(W)でない家庭にはテレビの電源オフを促す表示を、

その他の家庭にはガス給湯器やトイレ保温便座などの電源オフを表示)

・過去の振り返り1(「あなたの家の電力診断」というテーマで、対象家庭における平日・休日

の時刻別電力消費量の違いや、前月と前年同月の比較や i-cosmos 家庭全体における対象家庭の

電力消費量順位を表示)

・過去の振り返り2(「他の家庭と比べてみよう」というテーマで、大分類グループ別の電力消

費量や、電力消費量と世帯人数や延床面積、日中在宅状況との関係を表示)

図 21 テレビの節電アドバイス設定アルゴリズム

図 22 テレビの節電アドバイスモジュール

以上の結果に基づき、図 21 に示すアルゴリズムに基づいて、対象家庭において最も節電効果

の高いアドバイスを自動選択し、図 22 に示すモジュールの中から 4 つを選択して(選択内容は表

1 参照)4 コマストーリーとして i-cosmos 上に表示した。

図 21 テレビの節電アドバイス設定アルゴリズム

図 22 テレビの節電アドバイスモジュール

(5)その他の節電アドバイス その他の節電アドバイスとして、以下 4 つのストーリーを作成した(詳細は表 1 参照)。

・ピークカット(アンケート調査において平日在宅していると回答した家庭に対して夏季に表示) ・待機電力カット(テレビの待機電力が 0(W)でない家庭にはテレビの電源オフを促す表示を、そ

の他の家庭にはガス給湯器やトイレ保温便座などの電源オフを表示) ・過去の振り返り1(「あなたの家の電力診断」というテーマで、対象家庭における平日・休日の

時刻別電力消費量の違いや、前月と前年同月の比較や i-cosmos 家庭全体における対象家庭の電

力消費量順位を表示) ・過去の振り返り2(「他の家庭と比べてみよう」というテーマで、大分類グループ別の電力消費

量や、電力消費量と世帯人数や延床面積、日中在宅状況との関係を表示)

データ取得率≧70%または

前月消費電力≧10Wh/月

画面輝度設定≠暗め(省エネ)

N

Y

エラー

メッセージ

使い方アドバイス

N

設定アドバイス

Y

前年のテレビ電力使用量

次の図で、他の家庭とテレビの電力消費量を比較してみましょう。

他の家庭と比べてみましょう

あなたは省エネ世帯の約3倍使用していました。電気代に換算すると、省エネ世帯よりも約700円多く支払っています。

テレビの消費電力は、視聴時間や画面の大きさ・明るさ設定等に影響されます。

次の図でその影響についてみてみましょう。

画面サイズや輝度設定の影響

この図では、テレビ画面の明るさ設定を「暗め」にしている方を青色の点で示しています。

また、あなたのテレビは赤色の点で示しています。他の家庭と比べていかがですか?

あなたと同じ画面サイズのテレビでも、家庭によって消費電力(視聴時)は異なるようですね。

テレビの節電アドバイス

他の家庭とテレビの視聴時間(先月分)を比較してみましょう。

一層の節電のために・・・テレビを見ていない時はこまめに電源を切って、電気代を節約しませんか?

テレビの節電アドバイス

テレビの明るさ設定を「暗め」にすると電気代を節約できます。

テレビの明るさを調整して電気代を節約しませんか?

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

電力量予測値 電力量目標値 実績値

電力使用量(W

h/日)

11月15日

11月14日

11月13日

11月12日

11月11日

11月10日

11月9日

電力量予測値 電力量目標値

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3.家庭による電力需要制御を目指した取り組み

 提案の背景でも述べたように、民生家庭部門に求められている低炭素化策は、「家庭自体の低

炭素化」と「社会(エネルギー変換部門、産業部門、民生業務部門、運輸部門)の低炭素化への

貢献」の 2 点に分けられる。「社会の低炭素化への貢献」の代表例として、デマンドレスポンス

が挙げられる。家庭が将来の電気の使用量を意識的に制御できれば、最適な電源運用による発電

設備稼働率の向上につながり、低炭素かつ家庭の電気料金低減も期待できる。

 LCS では家庭の生活行動による電力需要制御の可否を検討するために、i-cosmos に日々の電力

使用量目標値を表示する機能を、節電アドバイス機能の一部として実装した。本機能の開発には、

過去の電力データに基づき将来の電力需要を予測した上で、実現可能な範囲内で目標値を設定す

るための手法が求められる。将来の電力需要を予測するための研究事例は数多いが、時間刻みが

細かくなるほど不確実性が高くなるため予測は困難となり、結果として実現不可能な目標値を設

定することになるため注意が必要である。一方で、発電事業者にとっては、時間刻みが細かいほ

ど発電設備稼働率の向上を目的とした発電計画を立てやすくなる。今年度 i-cosmos 上では時間刻

みを 1 日として目標値を表示したが、時間刻みと予測精度の関係や、人間行動学の視点に基づく

目標値達成の実現可能性との関係、発電事業者にとっての時間刻みと発電設備稼働率向上の関係

などを調査し、適切な時間刻みや目標設定を検討することが求められる。

 i-cosmos に実装した目標値表示機能は、以下(式 1)に基づいて算出した電力使用量予測結果

に任意の節電率を乗じて設定した。

 

 Ed = a1 × V1d + a2 × V2d+b   ・・・・(式 1) 

     E: 予想電力使用量(Wh/ 日)

     d: 日付

     V1: 日平均気温(度)

     V2: 休祝日ダミー(0、1)     ※土日祝日と年末年始(12/28 ~ 1/3)、盆休み(8/13 ~ 8/16)を休祝日(ダミー変数= 1)      とした。

 

 係数 a1、 a2 および切片 b は、過去 8 週間の電力使用量、気温、休祝日ダミー変数から回帰計算

することで算出した。ただし、P 値が 5% 優位を満たさない説明変数が含まれた場合には、式 1から対象となる説明変数を除いて再度回帰計算を行う手法を用いた。Ed は家庭別、日別に毎週日

曜深夜に算出し、翌月曜日から日曜日まで(7 日間)の各日電力使用量目標値を i-cosmos に表示

するシステムを開発・実装した。なお、翌週の気温データには気象庁の週間天気予報を使用する

が、水曜日深夜に予想気温を最新データに更新し、Ed を再計算することで予測精度の向上を目指

した。i-cosmos における節電目標表示イメージを図 23 に示す。なお、前週の目標値および実績値

のグラフも参考データとして i-cosmos 上に表示した。

 

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平成 28 年 3 月

 具体例として、ある家庭の 2015 年 11 月 9 日(月)~ 15 日(日)の予想値および目標値(節

電率は 10%に設定)と、実際の電力使用量実績値(なお、この家庭には期間中一度も節電目標を

表示しなかった)の比較を図 24 に示す。日別に予想値と実績値を比較すると、予想誤差は -18%~ +43% と幅広かったが、1 週間の合計では -2% と小さかった。

図 23 節電目標表示例

図 23 節電目標表示例

具体例として、ある家庭の 2015 年 11 月 9 日(月)~15 日(日)の予想値および目標値(節電

率は 10%に設定)と、実際の電力使用量実績値(なお、この家庭には期間中一度も節電目標を表

示しなかった)の比較を図 24 に示す。日別に予想値と実績値を比較すると、予想誤差は-18%~

+43%と幅広かったが、1 週間の合計では-2%と小さかった。

図 24 ある家庭の電力使用量予測結果と実績値の比較

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

電力量予測値 電力量目標値 実績値

電力

使用

量(W

h/日

20151115

20151114

20151113

20151112

20151111

20151110

20151109

電力量目標値 実測値 電力量予測値

図 24 ある家庭の電力使用量予測結果と実績値の比較

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

電力量予測値 電力量目標値 実績値

電力使用量(W

h/日)

11月15日

11月14日

11月13日

11月12日

11月11日

11月10日

11月9日

電力量予測値 電力量目標値 実績値

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平成 28 年 3 月

4.家庭部門の低炭素化に向けた政策提言

 家庭自体の低炭素化を促すために実施した「家庭の電力使用量見える化実験」により、継続的

な節電行動を促すためには、単に電力使用量を表示するのではなく、他者との比較による社会規

範評価の刺激や必要最低限の情報を効果的に提供するナッジ(“Nudge”)の概念を取り入れるこ

とで低炭素化行動を支援する必要があることが明らかとなった。また、「家庭の電力使用量見え

る化実験」により平成 25 年度から収集した実データに基づき、今後の節電アドバイスに応用可

能な複数の知見が得られた。

 冷蔵庫のデータ分析では、i-cosmos 家庭の約 27%で買い替えによる節電余地があることが確認

された。これらの家庭の冷蔵庫年間消費電力は 600kWh を超えており(平均値は年間 804kWh)、最新の冷蔵庫(年間消費電力 200kWh)へ買換えた場合、年間の電気代は平均約 1/4 に削減され、

冷蔵庫耐用年数以内に初期投資を回収できることから、費用便益評価を実際の行動につなげるた

めに現在 LCS で取り組んでいる「電気代そのまま払い事業」への誘導も今後期待できると考え

られた。また、i-cosmos 家庭の約 70%で冷蔵強度の設定変更による節電余地もあることが確認さ

れた。

 テレビのデータ分析では、i-cosmos 家庭の約 81%で画面輝度の設定変更による節電余地がある

ことが確認されたほか、意識上の視聴時間よりも実際の視聴時間の方が長い傾向にあったことか

ら、こまめな電源オフも有効であることが示唆された。

 今年度実施した i-cosmos への節電アドバイス機能では、カタログ値や実験室データから導いた

節電効果ではなく、実際に計測されたデータに基づいて節電効果を算定し、社会心理学の手法に

基づいて節電アドバイスを提示することが可能となった。

 今後もデータ分析を進めて節電アドバイスに応用可能な知見を得ると同時に、節電アドバイス

や節電目標の提示による実際の節電効果を明らかにし、日本全国に本システムを広める必要があ

る。

 

 参考資料

[1]低炭素社会実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政

策立案のための提案書 社会システム編 「民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社

会実現」,独立行政法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター,2014 年 3 月.

[2]家庭の電力見える化実験 速報版,独立行政法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター,

http://www.jst.go.jp/lcs/activity/result/mieruka/result2.html, (アクセス日 2016 年 3 月 1 日).

[3]八木田克英,岩舟由美子,畑泰彦;見える化 HEMS の閲覧行動とコミュニケーション効果,

エネルギー・資源,Vol.35,No.4,2014.[4]広瀬幸雄;環境配慮行動の規定因について,社会心理学研究,Vol.10,No.1,1994.[5]小松秀徳,西尾健一郎,向井登志広,篠原靖志;電力消費量データを活用した省エネルギー

アドバイスレポートの自動作成システム,電気学会論文誌 C,Vol.134,No.9,2014.

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23国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

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平成 28 年 3 月

「家庭の電力使用量見える化実験」

平成26年版報告書(2015年 3月)

はじめに 

 自治体の皆様と、各ご家庭の皆様のご協力のもと、独立行政法人科学技術振興機構 低炭素社

会戦略センターでは、「家庭の電力使用量見える化実験」(以下、「本実験」という。)を実施して

まいりました。 各自治体にて募集いただいた、全 229 世帯のご家庭にご協力いただき、ご家庭毎

に電力使用量計測機器を設置して、主な家庭電化製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫)とご家庭全

体の電力使用量を計測しております。

 本実験に係る電力計測器は平成 25 年度中に設置を開始し、全ご協力家庭への電力計測器設置

完了(平成 26 年 2 月末)後、約 1 年が経過したところです。

 この報告書では、平成 26 年 1 月から 12 月までの 1 年間の電力計測データを整理し、解析した

結果の概要をお知らせいたします。

 なお、この報告書の一部の内容は後日、ウェブサイトにて公開する予定です。公開しましたら、

改めてご案内いたします。

謝辞

 実験を行うにあたり、スマートゲートウェイの設置とデータのご提出にご協力いただいた 229世帯のご協力家庭の皆様、および実験にご協力いただいた各自治体の皆様、関係者の皆様に厚く

お礼申し上げます。

別紙

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平成 28 年 3 月

1. 実験の概要

1.1. 実験の目的

 低炭素社会実現のためには家庭部門での節電・省エネが重要であり、国民一人ひとりにエネル

ギーを賢く利用する行動が求められている。本実験では、家族構成・地域特性、住宅・エネルギー

利用に対する個人の志向等から、個人に適した電力供給・節電省エネメニューを提供できる社会

システムの構築を目指した調査・研究を実施する。

 本実験の実施により、家庭部門のエネルギー使用状況の定量的データや個人のエネルギー利用

に対する志向等を把握することができ、それらを分析することで科学的知見に基づいた個人に適

した節電・省エネメニューを提案することができる。同時に、それらの知見を自治体と共有する

ことで、住民への節電・省エネの啓発や定量的データに基づいた低炭素化施策立案に活用され、

地域からの低炭素化が実現されると考え、実施するものである。

1.2. 電力計測器と計測データについて

 本実験で使用している計測器は、下記の通りである。

①(株)エネゲート製・スマートゲートウェイ(TWS-1M、無線式電力量収集装置):

スマートエコワットおよびスマート EL センサからの無線通信及び RS485 通信からの積算電

力などを取得。本実験では家庭に 1 台設置。

https://www.enegate.co.jp/smarteco_portal/products/smart_gateway.html②(株)エネゲート製・スマートエコワット(SMT-EW1A-01、無線式電力量計測器):

コンセントに差込み電気機器につなぐことで電力量を計測。計測されたデータはスマート

ゲートウェイで自動収集。本実験では、テレビと冷蔵庫の電力計測器として使用。

http://www.enegate.co.jp/smarteco_portal/products/smartecowatt100v.html③(株)エネゲート製・スマートELセンサ(EEM-W2S11、無線式電力量計測器):

分電盤など通過電流の大きなところや、天井照明などコンセントのないところでの計測に利

用。計測されたデータはスマートゲートウェイで自動収集。本実験では、分電盤(家庭全体

の電力量)とエアコンの電力計測器として使用。

http://www.enegate.co.jp/smarteco_portal/products/smartelsensor.html

 ※スマートエコワットとスマート EL センサで計測した電力使用量データをスマートゲート

ウェイで取得・収集し、各ご家庭からインターネット回線を通して LCS が用意するサーバ

に計測データを収集した。

1.3. データの対象期間

 今回の報告書で解析に使用するデータ対象期間:

 平成 26 年 1 月 1 日~ 12 月 31 日(1年間)

 ※計測していない期間のあるご家庭が存在するが、【別紙 1】の方法にてデータを補完し、ご協

力家庭の年間消費電力値(Wh)のデータを推計し、以下のデータをとりまとめた。

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平成 28 年 3 月

2. ご協力家庭について

2.1. ご協力家庭の自治体の内訳

 

 関東地域 22 自治体、関西地域 1 自治体の計 23 自治体にお住いのご家庭 229 世帯に実験にご参

加いただいた。

図 1 実験ご参加世帯のお住まいの自治体

3

2. ご協力家庭について

2.1. ご協力家庭の自治体の内訳

関東地域 22 自治体、関西地域 1 自治体の計 23 自治体にお住いのご家庭 229 世帯に実

験にご参加いただいた。

図 1 実験ご参加世帯のお住まいの自治体

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平成 28 年 3 月

2.2. アンケート

 

 実験期間中に、測定機器を設置しているご家庭に対し、二種のアンケートにご回答いただいた。

第一アンケート

 171 世帯の皆様にご回答を頂いた。世帯人数や住宅の種類など、属性を尋ねるものであった。

結果は図 2 に示した。

図 2 アンケートご協力世帯の居住地、住宅種類、住宅延べ床面積、世帯人数、年収の分布

4

2.2. アンケート

実験期間中に、測定機器を設置しているご家庭に対し、二種のアンケートにご回答いただ

いた。

第一アンケート

171 世帯の皆様にご回答を頂いた。世帯人数や住宅の種類など、属性を尋ねるものであっ

た。結果は図 2 に示した。

東京都, 105

神奈川県, 3

千葉県, 15

埼玉県, 13

群馬県, 3

栃木県, 12

茨城県, 13奈良県, 7

一戸建て

(持家), 113

集合住宅

(持家), 45

集合住宅

(借家・賃

貸), 10

社宅・寮, 1

~29m2, 5 30~49m2, 950~69m2, 

21

70~99m2, 50

100~149m2, 68

150m2~, 18

居住地 住宅種類 住宅延べ床面積

1人, 10

2人, 53

3人, 34

4人, 43

5人, 24

6人, 6 7人, 1

100万~300万円未

満, 18

300万~500万円未満, 30

500万~700万円

未満, 40700万~900万円未満, 30

900万~1100万

円未満, 19

1100万~1300万円

未満, 14

1300万~1500万円

未満, 8

1500万円以上, 4 回答したくない, 8

世帯人数 年収

図 2 アンケートご協力世帯の居住地、住宅種類、住宅延べ床面積、世帯人数、年収の分布

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平成 28 年 3 月

第二アンケート

 

 次に省エネに関する意識について質問し、152 世帯にご回答を頂いた(2015 年 2 月時点)。

i-cosmos で得られた情報が家庭内で話題になるかどうか、という問いに対しては 51%が「話題に

なる」とし、日頃の行動に変化があったかどうかについては 47%が「変化があった」とした。

 変化があったご家庭に対し、「電力が「見える化」されたことで、日頃の行動に変化があったか」

という問いに対し、「色々な家電の電力消費が気になるようになった」「待機電力を減らすように

なった」「使用頻度が減った、使い方が変わった」という結果が得られた(図 5)。第一に気づき

の効果があり、そして、実際の工夫を始めたことが分かった。また、家の中に限らず、「家の外

でも以前より節電・省エネを心がけるようになった」り、あるいは、「日本のエネルギー・環境

問題に対する関心が高まった」り、ご参加世帯が広い視野で省エネ・環境に向き合うきっかけに

なったと考えられる。個別の機器ではエアコンでの工夫が多く見られた。

図 3 家庭での話題性 図 4 日頃の行動の変化の有無

5

第二アンケート

次に省エネに関する意識について質問し、152 世帯にご回答を頂いた(2015 年 2 月時点)。

i-cosmos で得られた情報が家庭内で話題になるかどうか、という問に対しては 51%が「話題

になる」とし、日頃の行動に変化があったかどうかについては 47%が「変化があった」とした。

話題に

なる51%

話題に

ならな

い23%

どちらで

もない26%

変化が

あった47%

変化は

ない53%

図 3 家庭での話題性 図 4 日頃の行動の変化の有無

変化があったご家庭に対し、「電力が「見える化」されたことで、日頃の行動に変化があった

か」という問いに対し、「色々な家電の電力消費が気になるようになった」「待機電力を減らす

ようになった」「使用頻度が減った、使い方が変わった」という結果が得られた(図 5)。第一に

気づきの効果があり、そして、実際の工夫を始めたことが分かった。また、家の中に限らず、

「家の外でも以前より節電・省エネを心がけるようになった」り、あるいは、「日本のエネルギ

ー・環境問題に対する関心が高まった」り、ご参加世帯が広い視野で省エネ・環境に向き合う

きっかけになったと考えられる。個別の機器ではエアコンでの工夫が多く見られた。

0 20 40 60 80

色々な家電の電力消費量が気になるようになった。

日本のエネルギー・環境問題に対する関心が高まった。

家の外でも、以前より節電・省エネを心がけるようになった。

エアコン:設定温度を調整するようになった。

エアコン:フィルターを掃除した。

エアコン:扇風機を併用するようになった。

エアコン:あまり使わなくなった。

エアコン:省エネ型に買い換えた。

冷蔵庫:強度を調整した。

冷蔵庫:扉の開閉を短くするようになった。

冷蔵庫:節電のために、庫内を整理した。

冷蔵庫:省エネ型に買い換えた。

テレビ:画面の輝度(明るさ)を調整した。

テレビ:あまり見なくなった。

テレビ:省エネ型に買い換えた。

他の家電:使用頻度が減った。

他の家電:使い方が変わった。

他の家電:省エネ型に買い換えた。

待機電力を減らす努力をした。

その他

回答数

図 5 「電力の見える化」による日頃の行動の変化(複数回答) 図 5 「電力の見える化」による日頃の行動の変化(複数回答)

5

第二アンケート

次に省エネに関する意識について質問し、152 世帯にご回答を頂いた(2015 年 2 月時点)。

i-cosmos で得られた情報が家庭内で話題になるかどうか、という問に対しては 51%が「話題

になる」とし、日頃の行動に変化があったかどうかについては 47%が「変化があった」とした。

話題に

なる51%

話題に

ならな

い23%

どちらで

もない26%

変化が

あった47%

変化は

ない53%

図 3 家庭での話題性 図 4 日頃の行動の変化の有無

変化があったご家庭に対し、「電力が「見える化」されたことで、日頃の行動に変化があった

か」という問いに対し、「色々な家電の電力消費が気になるようになった」「待機電力を減らす

ようになった」「使用頻度が減った、使い方が変わった」という結果が得られた(図 5)。第一に

気づきの効果があり、そして、実際の工夫を始めたことが分かった。また、家の中に限らず、

「家の外でも以前より節電・省エネを心がけるようになった」り、あるいは、「日本のエネルギ

ー・環境問題に対する関心が高まった」り、ご参加世帯が広い視野で省エネ・環境に向き合う

きっかけになったと考えられる。個別の機器ではエアコンでの工夫が多く見られた。

0 20 40 60 80

色々な家電の電力消費量が気になるようになった。

日本のエネルギー・環境問題に対する関心が高まった。

家の外でも、以前より節電・省エネを心がけるようになった。

エアコン:設定温度を調整するようになった。

エアコン:フィルターを掃除した。

エアコン:扇風機を併用するようになった。

エアコン:あまり使わなくなった。

エアコン:省エネ型に買い換えた。

冷蔵庫:強度を調整した。

冷蔵庫:扉の開閉を短くするようになった。

冷蔵庫:節電のために、庫内を整理した。

冷蔵庫:省エネ型に買い換えた。

テレビ:画面の輝度(明るさ)を調整した。

テレビ:あまり見なくなった。

テレビ:省エネ型に買い換えた。

他の家電:使用頻度が減った。

他の家電:使い方が変わった。

他の家電:省エネ型に買い換えた。

待機電力を減らす努力をした。

その他

回答数

図 5 「電力の見える化」による日頃の行動の変化(複数回答)

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平成 28 年 3 月

3. 解析結果:電力使用の状況

3.1.世帯あたり年間電力消費量

 

 図 6 は、計測可能であったご家庭 229 世帯の、2014 年1月から 12 月の電力消費量の世帯当た

り平均を、1 年、冬期、中間期、夏期に分けて示したものである。平均値は 4550(95%信頼区間

± 280)kWh/ 年・世帯であった。冬期は他の二期に比べ消費量が多く、年間の4割を占める。冬

期は暖房需要(エアコン、こたつ、電気ヒーターなど)が増加し、日照時間の減少から照明用電

力消費がやや増えるためと考えられる。中間期は冷暖房とも空調需要が減るため、やや少ない。

照明、その他家事用動力、テレビ、コンピュータなど動力が多くを占める。夏期は、本来、冷房

需要や、冷蔵庫の冷却がやや増加するなど増加傾向がみられるが、エアコンに関する参加ご家庭

の意識向上などが反映してか、中間期と大きな差がなかった。

図 6 世帯当たり年間電力消費量 全世帯平均

注)

世帯数は 229。図中のエラーバーは、95%信頼区間を示す。(母集団の値がこの間にある確率が 95%)

季節の内訳は、夏期:6 月、7 月、8 月、9 月、冬季:12 月、1 月、2 月、3 月、その他中間期:4 月、

 5 月、10 月、11 月。

6

3. 解析結果:電力使用の状況

3.1.世帯あたり年間電力消費量

図 6 は、計測可能であったご家庭 229 世帯の、2014 年1月から 12 月の電力消費量の世

帯当たり平均を、1 年、冬期、中間期、夏期に分けて示したものである。平均値は 4550(95%

信頼区間±280)kWh/年・世帯であった。冬期は他の二期に比べ消費量が多く、年間の4割

を占める。冬期は暖房需要(エアコン、こたつ、電気ヒーターなど)が増加し、日照時間の減少

から照明用電力消費がやや増えるためと考えられる。中間期は冷暖房とも空調需要が減る

ため、やや少ない。照明、その他家事用動力、テレビ、コンピュータなど動力が多くを占める。

夏期は、本来、冷房需要や、冷蔵庫の冷却がやや増加するなど増加傾向がみられるが、エ

アコンに関する参加ご家庭の意識向上などが反映してか、中間期と大きな差がなかった。

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

1年 冬期 中間期 夏期

電力

消費

量(kW

h/世

帯)

自治体

図 6 世帯当たり年間電力消費量 全世帯平均

注)

世帯数は 229。

図中のエラーバーは、95%信頼区間を示す。(母集団の値がこの間にある確率が 95%)

季節の内訳は、夏期:6月、7月、8月、9月、冬季:12月、1月、2月、3月、その他中間

期:4月、5月、10月、11月。

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平成 28 年 3 月

 図 7 には世帯当たり年間電力消費量を自治体ごとに平均し、季節毎にまとめた。自治体別の値

で 3370 ~ 6190kWh の幅がある。ただし、自治体ごとに世帯人数の構成等が異なる、かつ/ある

いは、サンプル数が少ないため、各自治体の消費量に統計上有意な差は見られない。数値は本実

験のご家庭数の場合としての参考値である。今後、自治体ごとの比較など、結果を有意なものに

するには統計的に、それぞれ 50 から 100 以上のご家庭のご参加があることが望ましい。

 

図 7 世帯当たり年間電力消費量(  :夏期、  :冬期、  :中間期)

注)

( )内は世帯数。

季節の内訳は、図 6 と同様。

西東京市については世帯数が一戸のため単一のご家庭の消費データを示してしまうことになるため、

 近隣の三鷹市と合わせて表示させていただいた。

7

図 7 には世帯当たり年間電力消費量を自治体ごとに平均し、季節毎にまとめた。自治体

別の値で3370~6190kWhの幅がある。ただし、自治体ごとに世帯人数の構成等が異なる、か

つ/あるいは、サンプル数が少ないため、各自治体の消費量に統計上有意な差は見られな

い。数値は本実験のご家庭数の場合としての参考値である。今後、自治体ごとの比較など、

結果を有意なものにするには統計的に、それぞれ 50 から 100 以上のご家庭のご参加がある

ことが望ましい。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

電力

消費

量(kW

h/年

・世

帯)

自治体

冬期 中間期 夏期

図 7 世帯当たり年間電力消費量( :夏期、 :冬期、 :中間期)

注)

( )内は世帯数。

季節の内訳は、図 6 と同様。

西東京市については世帯数が一戸のため単一のご家庭の消費データを示してしまうこと

になるため、近隣の三鷹市と合わせて表示させていただいた。

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平成 28 年 3 月

 図 8 は、全家庭の世帯当たり年間電力消費量を示した。最大値は 14220 kWh/ 年・世帯、最小

値は 950 kWh/ 年・世帯、平均値は前述のとおり 4550kWh/ 年・世帯であるのに対し、中間値は

4100kWh/ 年・世帯であり、消費量が大きい世帯が平均をやや押し上げている。

図 8 各ご家庭の年間電力消費量

注)年間消費量の大きなご家庭から順に並べたもの。

8

図 8 は、全家庭の世帯当たり年間電力消費量を示した。最大値は 14220 kWh/年・世帯、

最小値は950 kWh/年・世帯、平均値は前述のとおり4550kWh/年・世帯であるのに対し、中間

値は 4100kWh/年・世帯であり、消費量が大きい世帯が平均をやや押し上げている。

図 8 各ご家庭の年間電力消費量

注)年間消費量の大きなご家庭から順に並べたもの。

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平成 28 年 3 月

3.2.電力使用量と気温の関係

 図 9 は、2014 年の各世帯の一日当たり電力消費量と日平均外気温の相関を示している。気温が

低温と高温になるにつれ、電力消費量は上昇する。特に、日平均 24℃以上、13℃以下で傾きはし

だいに大きくなり、消費するペースが大きくなる。これは、夏場の冷房あるいは冷蔵庫電力需要、

冬期の暖房需要などが影響している。同じ気温においても約 8~ 15kWh/世帯・日ほど幅があるが、

これは、世帯によって消費量が大きく異なることを示している。その要因は、世帯人数、住居面

積のほか、ライフスタイルなど様々考えられ、今後の研究・分析で明らかにしていく。

図 9 各世帯の一日当たり電力消費量と日平均気温の相関

注)

気温は、各市役所・区役所から最短距離にある気象観測点の一日平均気温を用いた。

9

3.2.電力使用量と気温の関係

図 9 は、2014 年の各世帯の一日当たり電力消費量と日平均外気温の相関を示している。

気温が低温と高温になるにつれ、電力消費量は上昇する。特に、日平均 24℃以上、13℃以

下で傾きはしだいに大きくなり、消費するペースが大きくなる。これは、夏場の冷房あるいは

冷蔵庫電力需要、冬期の暖房需要などが影響している。同じ気温においても約 8~15kWh/

世帯・日ほど幅があるが、これは、世帯によって消費量が大きく異なることを示している。その

要因は、世帯人数、住居面積のほか、ライフスタイルなど様々考えられ、今後の研究・分析で

明らかにしていく。

0

5

10

15

20

25

30

35

‐5 0 5 10 15 20 25 30 35

電力

消費

量kW

h/世

帯・日

気温

図 9 各世帯の一日当たり電力消費量と日平均気温の相関

注)

気温は、各市役所・区役所から最短距離にある気象観測点の一日平均気温を用いた。

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平成 28 年 3 月

3.3. 冷蔵庫の年間電力消費量

 冷蔵庫の容量ごとの平均年間電力消費量を図 10 に示した。300 リットル以下の冷蔵庫は消費量

が一番少なかったが、301 リットル以上の容量の場合は、大きくなるにつれ消費量が少なくなった。

冷蔵庫の省エネ性能はコンプレッサーなど機械的な性能のほかは、断熱の度合による。冷やすた

めのエネルギーは、当然大きい容量の方が必要となる。一方、大きくなるにつれ、容量当たりの

表面積が減り、表面からの熱の出入りが減るため、大きくなると効率がよくなるという側面もあ

る。また、大容量の冷蔵庫は、製造年が新しいものが多く効率が改善されているものが多く(後

述の図 11 参照)、このことも消費量に反映されている。今回の結果はこれらの要因が複合的に影

響していると考えられる。

図 10 冷蔵庫の容量ごとの平均年間電力消費量

注)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートで容量、製造年などが判明した世帯。

冷蔵庫容量毎の世帯数はそれぞれ、300 リットル以下:9 戸、301 ~ 400 リットル:34 戸、401 ~ 500 リッ

 トル:100 戸、501 リットル以上:33 戸。

10

3.3. 冷蔵庫の年間電力消費量

冷蔵庫の容量ごとの平均年間電力消費量を図 10 に示した。300 リットル以下の冷蔵庫は

消費量が一番少なかったが、301 リットル以上の容量の場合は、大きくなるにつれ消費量が

少なくなった。冷蔵庫の省エネ性能はコンプレッサーなど機械的な性能のほかは、断熱の度

合による。冷やすためのエネルギーは、当然大きい容量の方が必要となる。一方、大きくなる

につれ、容量当たりの表面積が減り、表面からの熱の出入りが減るため、大きくなると効率が

よくなるという側面もある。また、大容量の冷蔵庫は、製造年が新しいものが多く効率が改善

されているものが多く(後述の図 11 参照)、このことも消費量に反映されている。今回の結果

はこれらの要因が複合的に影響していると考えられる。

0

100

200

300

400

500

600

700

300ℓ以下 301~400ℓ 401~500ℓ 501ℓ以上

年間

電力

消費

量kW

h/年

冷蔵庫容量

図 10 冷蔵庫の容量ごとの平均年間電力消費量

注)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートで容量、製造年などが判明した世帯。

冷蔵庫容量毎の世帯数はそれぞれ、300 リットル以下:9 戸、301~400 リットル:34 戸、

401~500 リットル:100 戸、500 リットル以上:33 戸。

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平成 28 年 3 月

 図 11 に、冷蔵庫の製造年と電力消費量の関係を、容量ごとに分けて示した。全体として右下

がり、つまり、製造年が新しいほど電力消費量は少ない。製造年が新しいほど(2011 年以降)、

容量によるバラつきは減り、差は 200 ~ 300 k Wh/ 年に収まっているが、古いもの(特に 2007年以前)は、容量 301 ~ 500 リットルのもので、バラつきが大きい。前述のとおり、501 リット

ル以上の大容量は最近のものが多く、消費量は他の容量のものと大きく変わらない。

 今後、古いものを新しく買い替えるときに、大きさは各家庭のニーズに合わせて選ぶようにす

る方がよい。消費量を気にして、小さいものを選び、利用時に詰め込みすぎなどにより効率が低

下する方が問題になるかもしれない。

図 11 冷蔵庫の年間電力消費量と製造年の相関

注)

対象とした世帯とその内訳は図 10 と同じ。

図中の実線は全分布に対する回帰直線。

11

図 11 に、冷蔵庫の製造年と電力消費量の関係を、容量ごとに分けて示した。全体として

右下がり、つまり、製造年が新しいほど電力消費量は少ない。製造年が新しいほど(2011 年

以降)、容量によるバラつきは減り、差は 200~300kWh/年に収まっているが、古いもの(特に

2007 年以前)は、容量 301~500 リットルのもので、バラつきが大きい。前述のとおり、501 リッ

トル以上の大容量は最近のものが多く、消費量は他の容量のものと大きく変わらない。

今後、古いものを新しく買い替えるときに、大きさは各家庭のニーズに合わせて選ぶように

する方がよい。消費量を気にして、小さいものを選び、利用時に詰め込みすぎなどにより効率

が低下する方が問題になるかもしれない。

R² = 0.3432

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013

年間

電力

消費

量(kWh/

年)

製造年

300ℓ以下

301~400ℓ

401~500ℓ

501ℓ以上

図 11 冷蔵庫の年間電力消費量と製造年の相関

注)

対象とした世帯とその内訳は図 10 と同じ。

図中の実線は全分布に対する回帰直線。

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平成 28 年 3 月

3.4. テレビの年間消費量

 図 12 は、テレビの年間視聴時間当たり消費量をプラズマ、液晶、ブラウン管毎に示したもの

である。ややプラズマよりも液晶が省エネであることが分かるが、サンプル数が極端に異なるた

め統計的に有意な差にはなっていない。図 13 左図より、製造年が最近になるほど、消費量が少

ない機種が多くなり、買い替えの効果はあることが分かるが、その傾向は、プラズマで顕著である。

また、バラつきも少なくなる。一方、一般的に言われる「大きくなるほど消費量が大きい」とい

う傾向は本実験で得られたデータからは見られなかった(図 13 右)。この点はより詳細な分析が

必要である。

図 12 液晶、プラズマ、ブラウン管型テレビの視聴時間当たり電力消費量

図 13 製造年(左)、テレビサイズ(右)とテレビの視聴時間当たり電力消費量

注)(図 12、図 13 とも)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートでサイズ、種類などが判明した世帯。

対象としたテレビは、液晶 107 台、プラズマ 20 台、ブラウン管 3 台。

視聴時間は、1 分データで 10 W以上使っている時間をカウントした。

12

3.4. テレビの年間消費量

図 12 は、テレビの年間視聴時間当たり消費量をプラズマ、液晶、ブラウン管毎に示したも

のである。ややプラズマよりも液晶が省エネであることが分かるが、サンプル数が極端に異な

るため統計的に有意な差にはなっていない。図 13 左図より、製造年が最近になるほど、消

費量が少ない機種が多くなり、買い替えの効果はあることが分かるが、その傾向は、プラズマ

で顕著である。また、バラつきも少なくなる。一方、一般的に言われる「大きくなるほど消費量

が大きい」という傾向は本実験で得られたデータからは見られなかった(図 13 右)。この点は

より詳細な分析が必要である。

0.000.020.040.060.080.100.120.140.160.18

液晶 プラズマ ブラウン管

視聴

時間

当た

り消

費量

(kW

h/h)

図 12 液晶、プラズマ、ブラウン管型テレビの視聴時間当たり電力消費量

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1995 2000 2005 2010 2015

視聴

時間

当た

り消

費量

(kWh/h)

製造年

液晶

プラズマ

ブラウン管

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

0 20 40 60 80

視聴

時間

当た

り消

費量

(kWh/h)

テレビサイズ(インチ)

液晶プラズマブラウン管

図 13 製造年(左)、テレビサイズ(右)とテレビの視聴時間当たり電力消費量

注)(図 12,図 13 とも)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートでサイズ、種類などが判明した世帯。

対象としたテレビは、液晶 107 台、プラズマ 20 台、ブラウン管 3 台。

視聴時間は、1 分データで 10W以上使っている時間をカウントした。

12

3.4. テレビの年間消費量

図 12 は、テレビの年間視聴時間当たり消費量をプラズマ、液晶、ブラウン管毎に示したも

のである。ややプラズマよりも液晶が省エネであることが分かるが、サンプル数が極端に異な

るため統計的に有意な差にはなっていない。図 13 左図より、製造年が最近になるほど、消

費量が少ない機種が多くなり、買い替えの効果はあることが分かるが、その傾向は、プラズマ

で顕著である。また、バラつきも少なくなる。一方、一般的に言われる「大きくなるほど消費量

が大きい」という傾向は本実験で得られたデータからは見られなかった(図 13 右)。この点は

より詳細な分析が必要である。

0.000.020.040.060.080.100.120.140.160.18

液晶 プラズマ ブラウン管

視聴

時間

当た

り消

費量

(kW

h/h)

図 12 液晶、プラズマ、ブラウン管型テレビの視聴時間当たり電力消費量

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1995 2000 2005 2010 2015

視聴

時間

当た

り消

費量

(kWh/h)

製造年

液晶

プラズマ

ブラウン管

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

0 20 40 60 80

視聴

時間

当た

り消

費量

(kWh/h)

テレビサイズ(インチ)

液晶プラズマブラウン管

図 13 製造年(左)、テレビサイズ(右)とテレビの視聴時間当たり電力消費量

注)(図 12,図 13 とも)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートでサイズ、種類などが判明した世帯。

対象としたテレビは、液晶 107 台、プラズマ 20 台、ブラウン管 3 台。

視聴時間は、1 分データで 10W以上使っている時間をカウントした。

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平成 28 年 3 月

3.5. エアコンの年間消費量

 

図 14 は、エアコンの一か月の電力消費量を、測定できたご家庭数で平均した値である。夏期

は冷房、冬期は暖房に用いられていると考えられる。年間平均消費量は 383kWh/ 年であり、家庭

全体の消費量の 8%である。8 月一か月は年間で一番消費量が大きいが、期間で見ると、冬期は

使用期間が長く年間消費量の 53%を占める。ただし、今回の結果がすなわち、家庭の冷暖房需要

であるとは言えない。その理由は以下に挙げるものである。

・暖房は、エアコンのほか、こたつや電気ヒーターなど多様な器具が用いられる。冷房は、扇

風機などがあるが、暖房に比べると大きな影響はない。

・今回測定したのはリビングなど主に人が集まるところ一か所のみ。家庭に複数エアコンが設

置されて使用されている場合もある。

 (社)日本冷凍空調工業会規格が定める期間消費電力量を、製品購入時等参考にすることが多

いが、その数値は、例えば、2.2 kW サイズ(6 畳用)で 600 ~ 900 kWh などである(6 時から

0 時まで 18 時間利用する前提)。本研究の参加ご家庭の消費量(383 kWh)はこれよりも低く、

使用時間の短縮等省エネ行動をとられているご家庭が多いことが予想される。

図 14 エアコンの一か月の電力消費量の平均

注)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートでサイズ、種類などが判明した世帯。

13

3.5. エアコンの年間消費量

図 14 は、エアコンの一か月の電力消費量を、測定できたご家庭数で平均した値である。

夏期は冷房、冬期は暖房に用いられていると考えられる。年間平均消費量は 383kWh/年で

あり、家庭全体の消費量の8%である。8月一か月は年間で一番消費量が大きいが、期間で

見ると、冬期は使用期間が長く年間消費量の53%を占める。ただし、今回の結果がすなわち、

家庭の冷暖房需要であるとは言えない。その理由は以下に挙げるものである。

暖房は、エアコンのほか、こたつや電気ヒーターなど多様な器具が用いられる。冷房

は、扇風機などあるが、暖房に比べると大きな影響はない。

今回測定したのはリビングなど主に人が集まるところ一か所のみ。家庭に複数エアコ

ンが設置されて使用されている場合もある。

(社)日本冷凍空調工業会規格が定める期間消費電力量を、製品購入時等参考にするこ

とが多いが、その数値は、例えば、2.2kW サイズ(6畳用)で 600~900kWh などである(6時か

ら0時まで18時間利用する前提)。本研究の参加ご家庭の消費量(383kWh)はこれよりも低

く、使用時間の短縮等省エネ行動をとられているご家庭が多いことが予想される。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

エア

コン

1台

あた

り月

電力

消費

(kW

h/mon

th・台

)

図 14 エアコンの一か月の電力消費量の平均

注)

対象としたのはデータが取得でき、事前アンケートでサイズ、種類などが判明した世帯。

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平成 28 年 3 月

終わりに

 現在 LCS では皆様からご提供頂いたデータをもとに、効率的・効果的な省エネ・節電の実現

に向けた調査研究を引き続き行っております。今回お示しした以上に詳細で統計的に意味のある

分析を行うにあたっては、比較対象毎により多くのデータが必要になりますし、現在実験にご参

加いただいているご家庭にご継続いただくことも大事です。今後も、ご協力いただけますと幸甚

です。今後の調査研究の結果につきましては、改めて報告書等を通して、皆さまにご提供する予

定です。

 本報告書をご覧いただきまして、お気づきの点やご希望などございましたら、LCS までご一報

くださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 なお、本報告内の成果は、居住する住民の方への節電・省エネの啓発、定量的データに基づい

た低炭素化施策の立案等にご活用いただければと思います。引用を行う際は出典(JST 低炭素社

会戦略センター「家庭の電力使用量見える化実験 平成 26 年版報告書」)の記述をお願いします。

また、本報告から引用し、外部へ発信される際は、LCS までご一報いただきますよう、何卒よろ

しくお願い申し上げます。

本実験に関するお問い合わせ先

 独立行政法人科学技術振興機構(JST) 低炭素社会戦略センター(LCS) 〒 102-8666 東京都千代田区四番町 5-3 サイエンスプラザ 4 階

 TEL: 03-6272-9271 E-mail: [email protected] 担当:中島、原、田中、植木

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37国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

低炭素社会戦略センター(LCS)

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社会システム編 民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現(Vol.2)

平成 28 年 3 月

参考:電力供給量の変化

 参考までに日本全体の電力供給量の推移を載せた。表 1 は全国の各年度のピーク電力と発受電

電力量である。震災が起きた 2011 年の影響で、日本全体で節電に向かい(意識向上や技術開発

など)、2010 年の電力量から 2011 年で 5%、2012 年で 7%減少した。ピーク電力は、夏期で 2012年で 2010 年比 12%減であった。2013 年にかけて、節電度合は鈍化したようだったが、2014 年に

再度 4%減少した。背景には、2013 年から 2014 年にかけて進んだ太陽光発電の導入があったと

考えられる。

表 1 各年度のピーク電力と発受電電力量

年度ピーク電力 [GW]

発受電電力量 [TWh]夏季最大 冬季最大 年間最小

2010 176(8/23) 156(1/31) 115(5/13) 9792011 155(8/10) 154(2/2) 107(5/31) 9272012 154(7/27) 144(1/18) 107(5/11) 9132013 158(8/9) 148(2/14) 106(5/17) 912(909)2014 151(7/25) 104(5/23) (889)

2013/2010 89% 95% 92% 93%

※電力量の( )内は 1 ~ 12 月計。ピーク電力の( )内は、該当する値を示した月日。

 図 15 は、九州電力管内の 2014 年 7 月 30 日の消費電力の一日の推移を表している。赤い部分は、

LCS が推定した太陽光発電量である。ピーク電力のうち、1 割強が太陽光発電で賄われている可

能性がある。節電とともに、太陽光発電の利用促進も重要である。

図 15 九州電力管内消費電力量と太陽光発電量推定値

15

参考:電力供給量の変化

参考までに日本全体の電力供給量の推移を載せた。表 1 は全国の各年度のピーク電力

と発受電電力量である。震災が起きた 2011 年の影響で、日本全体で節電に向かい(意識向

上や技術開発など)、2010 年の電力量から 2011 年で 5%、2012 年で7%減少した。ピーク電

力は、夏期で 2012 年で 2010 年比 12%減であった。2013 年にかけて、節電度合は鈍化した

ようだったが、2014 年に再度 4%減少した。背景には、2013 年から 2014 年にかけて進んだ太

陽光発電の導入があったと考えられる。

表 1 各年度のピーク電力と発受電電力量

年度 ピーク電⼒[GW]

発受電電⼒量[TWh] 夏季最⼤ 冬季最⼤ 年間最⼩

2010 176(8/23) 156(1/31) 115(5/13) 979

2011 155(8/10) 154(2/2) 107(5/31) 927

2012 154(7/27) 144(1/18) 107(5/11) 913

2013 158(8/9) 148(2/14) 106(5/17) 912(909)

2014 151(7/25) 104(5/23) (889)

2013/2010 89% 95% 92% 93%

※電力量の( )内は1~12月計。ピーク電力の( )内は、該当する値を示した月日。

図 15 は、九州電力管内の 2014 年 7 月 30 日の消費電力の一日の推移を表している。赤

い部分は、LCS が推定した太陽光発電量である。ピーク電力のうち、1 割強が太陽光発電で

賄われている可能性がある。節電とともに、太陽光発電の利用促進も重要である。

0

5

10

15

20

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

消費

電力

[GW

]

時刻[時]

九州電力管内消費電力 2014/7/30 (Wed)太陽光発電量推定値

消費電力

図 15 九州電力管内消費電力量と太陽光発電量推定値

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低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書

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平成 28 年 3 月

データ欠損の補完方法

今回の報告にあたり対象とした計測データは、1.3. の記載通り、各ご協力家庭の平成 26 年 1 月

1日から 12月 31日までの消費電力値データである。家庭全体と、家庭電化製品(テレビ、エアコン、

冷蔵庫)の 4 種の 30 分毎の消費電力値データ(以下、「30 分値」という)を使用した。

ただし、対象期間中、常に全 229 世帯のデータが得られたわけではなく、ご協力世帯ごとの通

信エラー等の状況により、日時によっては計測できていない(以下、「データ欠損」という)期

間が存在し、世帯毎にデータ取得状況は異なっている。

したがって、下記の方法を用いて補完することでご協力家庭の年間消費電力値(Wh)のデー

タを推計し、解析に使用した。

① 60 分積算値(60 分毎の消費電力量)の算出

まず初めに 60 分積算(消費電力)値を算出する。ここで、60 分積算値を算出するために使用

する 2 つの 30 分値の内、データ欠損により片方のデータが存在しない場合、該当する 60 分積算

値のデータは、データ欠損とし分析対象から外すことにした。

②月積算値(月毎の消費電力量)の算出

次に、①で得られた 60 分積算値の和から 1 月~ 12 月の月毎に月積算(消費電力)値を算出する。

ここで下記式(1)より、データ欠損を補完した各月の推定月消費電力値を求めた。

 (推定月消費電力値)=(月積算消費電力値)× (1) 

※「該当月の総時間数」の例: 1 月の場合、24(時間)× 31(日)= 744(時間)

※ 60 分データポイント数:①の 60 分積算値が算出できた時間数

③年積算値(年間電力消費量)の算出

②の 1 月~ 12 月の推定月消費電力値の和から年積算(消費電力)値を算出する。

ただし、ご協力家庭の計測状況は 1 年間で変動しており、対象期間の 1 年間を通じて値が得ら

れた家庭は多くなく、1 月分以上データ欠損が生じたことで、②の方法では推定月消費電力値が

求められない場合がある。

そこで、例えば 6 か月分しかデータが得られていない場合でも、年間消費電力量を推定するこ

とを考える。今回は、消費電力量の季節性を考慮せず、式(2)により推定年間消費電力値を求めた。

 (推定年間消費電力値)=(推定月消費電力値の和)× (2) 

 以上、①~③の方法に従って、各ご家庭の推定年間消費電力量を求め、解析に使用した。

以上

【別紙1】

(該当月の総時間数)

(積算した 60 分データポイント数)

(12(全月数))

(データが存在する月数)

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低炭素社会の実現に向けた

技術および経済・社会の定量的シナリオに基づく

イノベーション政策立案のための提案書

社会システム編

民生家庭部門の省エネルギー促進からの低炭素社会実現 (Vol.2)

平成 28 年 3 月

Policy Recommendation toward Low Carbon Societyon Promotion of Energy Saving in Household Sector (vol.2)

Strategy for Social System,Proposal Paper for Policy Making and Governmental Action

toward Low Carbon Societies,Center for Low Carbon Society Strategy,Japan Science and Technology Agency,

2016.3

国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター

本提案書に関するお問い合わせ先

●提案内容について ・ ・ ・ 低炭素社会戦略センター 研究員 磐田 朋子 (Tomoko IWATA)  

主任研究員 田中 加奈子 (Kanako TANAKA)

●低炭素社会戦略センターの取り組みについて ・ ・ ・ 低炭素社会戦略センター 企画運営室

〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3 サイエンスプラザ4 階

TEL :03-6272-9270 FAX :03-6272-9273 E-mail :

https://www.jst.go.jp/lcs/

© 2016 JST/LCS

許可無く複写 ・複製することを禁じます。

引用を行う際は、必ず出典を記述願います。