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前立腺癌の過剰診断を克服する 診断マ-カ-の開発 研究責任者 大山 (弘前大学 大学院医学研究科 泌尿器科学講座 教授) 説明者: 米山 (弘前大学 大学院医学研究科 先進移植再生医学講座 助教) コーディネータ: 重光 (弘前大学 地域共同研究センター

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Page 1: 前立腺癌の過剰診断を克服する 診断マ-カ-の開発 - JST...S2,3PSA の蛍光強度 を測定する。: Siaα2,3Ga l : Siaα2,6Ga l 抗 free PSA 抗体 PE 標識

前立腺癌の過剰診断を克服する診断マ-カ-の開発

研究責任者 : 大山 力 (弘前大学 大学院医学研究科 泌尿器科学講座 教授) 説明者: 米山 徹 (弘前大学 大学院医学研究科 先進移植再生医学講座 助教) コーディネータ: 工藤 重光 (弘前大学 地域共同研究センター)

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前立腺癌の特徴

早期がん 転移癌

無症状

*排尿困難・残尿感 *排尿時痛 *血尿 血精液症

前立腺肥大症と同じ ような症状が出現

骨転移に伴い 腰痛・四肢痛が出現

• 高齢男性に多い

• 進行が比較的ゆっくりである

• 内分泌療法が有効である

がん・統計白書2012より

将来の前立腺がん罹患数は、2020年には、胃がんについで、男性の癌の2番目になると予測されている。

前立腺癌罹患率の増加に伴い、早期発見のための腫瘍マーカーが重要となる。 前立腺特異抗原 (Prostate specific antigen,PSA)は、現在 使用されている前立腺癌マーカーであり、前立腺癌の早期発見に寄与しているが、診断特異性が低いという問題点がある。

癌特有の症状はない 早期であれば根治が可能

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前立腺癌検診手順とその問題点 血清PSA濃度の測定

PSA 4.0ng/mL以上

直腸診+PSA再検査

前立腺針生検 (侵襲を伴う検

査)

PSA 4.0ng/mL未満

前立腺癌疑い

がん細胞検出

治療 (手術、放射線療法、内分泌療法など)

がん細胞なし (結果として癌ではないのに針をさされた)

他の前立腺疾患の疑い(前立腺肥大症などの良性疾患でもPSAが高値を

示す場合がある)

PSAの定期的検査

経過観察・適切な治療

PSA値4-10 ng/mLの範囲では、良性疾患と癌の区別がつかない、診断特異性の低さが問題となっている

過剰診断

直腸より針を刺すことによる感染症のリスクが生じる

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PSA糖鎖の癌性変異

PSAは、分子量3万の糖タンパク質でアスパラギン結合型(N型)糖鎖を有する。我々は、PSAの糖鎖が癌性変異することを発見し、その構造について報告してきた。

前立腺癌患者の血清PSAは、末端シアル

酸がα2,6結合からα2,3結合した癌関連

PSA(S2,3PSA)が増加する。本技術は、

血清S2,3PSAを特異的に検出する

Siaα2,6Gal-GlcNAc-Man Man-GlcNAc-GlcNAc-N

PSA

PSA糖鎖の癌性変異

Siaα2,6Gal-GlcNAc-Man

Man-GlcNAc-GlcNAc-N Siaα2,3Gal-GlcNAc-Man

Siaα2,3Gal-GlcNAc-Man PSA

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研究開発成果

ルミネックスによりフローメトリーの原理でビーズをカウントし、S2,3PSAの蛍光強度を測定する。

:Siaα2,3Ga

l

:Siaα2,6Ga

l

抗free PSA抗体

PE標識IgG3とHYB4を反応させる

抗シアル酸α2,3結合特異的抗体 (HYB4)が癌関連free PSA (S2,3PSA)と反応する

20 μL血清とビーズを混合し、 血清中のfree PSAがビーズに結合

抗free PSAモノクローナル抗体 (8A6)固定化MagPlexビーズ

PE-IgG3

HYB4

癌関連PSA (S2,3PSA)の測定法概要

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前立腺肥大症 前立腺癌

蛍光

強度

(M

FI)

ROC曲線 S2,3PSA 小規模バリデーション (315検体)

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新技術の特徴、従来技術・競合技術との比較 • 前立腺癌診断の問題点であった、PSA値4-10 ng/mLの患者にお

ける診断特異度の低さを改善し、本技術では、感度、特異度ともにを従来法を遥かに凌駕した。

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想定される用途

• 本技術の特徴を生かすためには、前立腺癌早期発見のための血清マーカーとして適用することで従来法より正確な診断を可能にする。

• PSA検査陽性患者に対する2次検診として適用すること

で不要な針生検を減らす効果が得られることも期待される。

• また、本測定系の特徴から糖鎖構造の変異を原因とする他の疾患の診断への応用が可能である。

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実用化に向けた課題

• 本測定系は、蛍光強度で前立腺肥大症と癌を判別するが、機器間あるいは、測定施設間の差がある場合、カットオフ値を設定するのが困難であると考えられる。

• このため、得られた蛍光強度値をS2,3PSA標準品を用いて血中S2,3PSA濃度に換算する必要がある。

• 今後、S2,3PSAを産生する培養細胞を用いて、大量生産および精製法の検討を行っていく。

• ルミネックスだけでなく、臨床検査で使用されている機器に適合したprotocol、キットの開発が必要である。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :「前立腺癌と前立腺肥大を識別 するための方法およびキット」 • 出願番号 :特願2012-226489 • 出願人 :国立大学法人弘前大学 静岡県公立大学法人 • 発明者 :大山 力、米山 徹、飛澤悠葵、

畠山真吾、鈴木 隆、左 一八、

山口真帆

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想定される技術移転 •本技術は、従来PSA検査の問題点である特異

性の低さを解決したもので、前立腺癌スクリーニングの1次検査およびPSA検査後の2次検査としての利用が見込まれる。

•臨床現場では、より診断精度が高い血清マーカーを必要としていることから、現場ニーズとも合致しており、前立腺癌診断用ツールとしての企業化が可能であると考えられる。

•今後、前立腺癌診断用にキット化することも考えており、糖鎖構造解析や臨床検査関連企業との連携により早期の実用化を目指したい。

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お問い合わせ先 研究責任者:大山 力 弘前大学 大学院医学研究科 泌尿器科学講座 教授 TEL:0172-39-5091, FAX:0172-39-5092 E-mail:[email protected] 説明者:米山 徹 弘前大学 大学院医学研究科 先進移植再生医学講座 助教 TEL:0172-39-5091, FAX:0172-39-5092 E-mail:[email protected] コーディネータ:工藤重光(弘前大学 地域共同研究センター ) TEL:0172-39-3989, FAX:0172-36-2105 E-mail: [email protected]