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1 大学連携新技術説明会 2010年10月29日 異方性金属微粒子による表面増強分析法 Surface Analytical Techniques Based on Anisotropic Metal Nanoparticles 東洋大学 生命科学部 生命科学科 教授 竹井弘之

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大学連携新技術説明会 2010年10月29日

異方性金属微粒子による表面増強分析法

Surface Analytical Techniques Based on Anisotropic Metal Nanoparticles

東洋大学 生命科学部 生命科学科 教授 竹井弘之

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紹介内容

目的: 光学的分析法の高感度化

原理: 固相化貴金属微粒子による励起効率の向上

手段: 量産に適した固相化貴金属微粒子の調製方法の開発

“光学的分析、測定において

*感度の向上

*サンプル量の低減

*測定装置の小型化

を望まれたことはありませんか?”

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研究背景

貴金属微粒子の光学特性を利用した分析方法が注目を集めつつあり、作製方法が色々と試みられている。サイズ、形状、材質等の制御が可能になりつつある。

*表面増強ラマン分光法*表面増強蛍光法*表面増強比色法

への適用が期待されている。

現在入手可能な素材の形態は主に懸濁液であるが、実用化においては固相化微粒子が必要である。

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ご提案内容

近い将来(ニーズがあれば)*粒径:30-300 nm*元素:真空蒸着もしくはスパッタ可能なもの

*表面積:100cm2

*調製可能数量:100枚/週

表面増強分析法に適した貴金属微粒子の評価用サンプルを提供いたします。

現時点における仕様*粒径:50-150 nm*元素:金、銀、白金、銅およびそれらの合金

*表面積:数cm2

*調製可能数量:10枚/週

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背景:貴金属製のナノスケール凹凸構造を有する基板上に検体を滴下し、光学的に分析すると信号強度が増強する効果。原理:基板を照射すると、凹凸構造近傍に「近接場光」と呼ばれる強い非伝播型電磁波が発生する。凹凸構造表面に吸着した分子は、数桁以上強い近接場光に励起されることになる。

基板

励起光

信号

基板

従来の測定 表面増強測定

表面増強法とは?

検体 近接場

vs.

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金コロイド金属蒸着

加熱

基板

吸着

アニーリング法 吸着法 電子線描画法

従来技術とその問題点

従来技術における問題点

アニーリング法:均一な微粒子ができず、光学特性の最適化が困難。

吸着法:高濃度のコロイド懸濁液が必要であり、消耗品が高価。

電子線描画法:高額な製造設備が必要で、量産に不適。

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シリカ、ポリスチレン粒子(30-300 nm)

異方状金属微粒子

金属蒸着(5-160 nm)

基板

固相化された均一な微粒子の調製が可能

SEM像2μm

1 cm

面積が数 cm2金微粒子

新規作製方法

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銀を真空蒸着

① ② ③ ④

銀微粒子

金属マスク

例:銀微粒子とシリカ粒子③

金薄膜(20 nm)

約300 μm

4種類の比較用サンプルを作製

本命

比較用サンプルの作製

表面増強ラマン

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銀薄膜(80 nm)

基板

金薄膜(20 nm)

シリカ粒子(100 nm)

銀(80 nm)

金薄膜(20 nm)

2ヵ所で測定

金属微粒子が非常に有効

ラマンシフト (cm‐1)

信号強度

コントロール実験

表面増強ラマン

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同じサンプルにおける異なる領域(4ヶ所)

信号の均一性は、銀微粒子特性および測定対象分子の吸着量の均一性に依存すると考えられる

信号強度はほぼ同等

信号強度

均一性の確認

表面増強ラマン

ラマンシフト (cm‐1)

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Ag 160 nm 10 mM

1 mM

100 μM

10 μM

信号強度

測定条件:励起波長 514. 5 nm励起光強度 500 μW対物レンズ倍率 100倍露光時間 3 x 5 秒

本条件における検出限界は100μM弱

Ag 80 nm Ag 40 nm Ag 20 nm

その他の蒸着厚

R 6 G濃度への依存性

表面増強ラマン

R 6 G: rhodamine 6 G(モデル分子)

ラマンシフト (cm‐1)

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Ag 160 nm

60,0

00

150 nm

100 nm

50 nm

粒径50 nmよりも、100 nmもしくは150 nmが望ましい

粒径への依存性

表面増強ラマン

ラマンシフト (cm‐1)

Ag 80 nm

60,0

00

ラマンシフト (cm‐1)

Ag 40 nm

60,0

00

ラマンシフト (cm‐1)

50 nm

100 nmAg 20 nm

60,0

00

ラマンシフト (cm‐1)

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100522 No02Ag40nmOnSiO2100nm(80K)

100522 No04Ag80nmOnSiO2100nm(80K)

100522 No11Ag160nmOnSiO2100nm(80K)

40 nm Ag/100 nm 粒子 80 nm Ag/100 nm 粒子 160 nm Ag/100 nm 粒子

100522 No18Ag80nmOnSiO250nmR6G10mM(80K)

100522 No20Ag80nmOnSiO2150nmR6G10mM(80K)

80 nm Ag/50 nm 粒子 80 nm Ag/150 nm 粒子

蒸着厚と微粒子の形態

表面増強ラマン

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ガラススライド

金薄膜(20 nm)

シリカ粒子(100 nm)

銀(160 nm)

ガラススライド

金薄膜(20 nm)

シリカ粒子(100 nm)

金(160 nm)

プロトコール:微粒子を10 mM のrhodamine 6 G メタノール液に10分間浸漬。大気中で乾燥。

測定条件:堀場製作所HR 800励起波長 514. 5 nm光強度 50 μW対物レンズ倍率 100倍露光時間 3 x 5 秒

信号強度

銀微粒子が14.7 倍有効(1644.7cm-1ピークを判定基準とする)

信号強度の比較:銀 vs.金

表面増強ラマン

ラマンシフト (cm‐1)

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100714No03R6G10mMDippAg60nmAu2-5-10nmSiO2100nm 3 MONTHS

100714No07R6G10mMDippAg60nmAu2-5-10nmSiO2100nm FRESH

信号強度

信号強度

2,00

0

2,00

0

表面増強法を広めるためには安定化が必須であるが、現状では、数日から数週間の“賞味期限”が一般的。硫化、酸化が原因とされているが、防ぐことは可能か。 →金薄膜で保護?

作製数日後 作製3ヵ月後

保護膜の効果はあり

金薄膜(2,5,10 nm)

2 nm

10 nm

5 nm

金保護膜により若干信号が下がるが、

銀粒子の安定化(3か月が目標)

表面増強ラマン

ラマンシフト (cm‐1) ラマンシフト (cm‐1)

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表面増強比色法:原理

Y YY YY YY Y YY Y YY

Y Y

Y YY YY YY Y YY Y YY

Y YALP修飾二次抗体

アッセイのイメージ

金ナノ粒子

不溶性生成物

堆積した不溶性生成物

金微粒子の色が変化

5 mm

表面増強比色法

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比色法の高感度化Time Course Change of the Spectrum(25 nm Au at x 200 Dilution)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

400 500 600 700 800 900 1000

Wavelength (nm)

O.D.

ALP Reaction on Plane Au Film

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

400 500 600 700 800 900 1000

Wavelength (nm)

O.D.

金微粒子のスペクトルが変化

金薄膜上におけるスペクトル変化(コントロール)

波長 (nm)

ΔO.D.=0.8

ΔO.D.=0.19

4倍程増大

表面増強比色法

波長 (nm)

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表面増強蛍光法:イムノアッセイ

Y YY YY YYY YY

Y YY

Y Y

Il-6に対するアッセイ

Control

Il-6 濃度(pg/ml)

蛍光信号強度(a.u.)

RPE修飾二次抗体

抗Il-6 一次抗体

Il-6

銀微粒子(粒径100 nm程度)

ガラス基板

表面増強蛍光

RPE: 蛍光性タンパク質の一種

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NUNC(1)

Au(2)

Ag(3)

PS partic

les(4)

S chip

10000

2000

400

0

Bare

Concentration of R

PE / ng/m

l

比較対象

Polymer surface (Nunc)

(1)

Polymer surface

Polymer surface

(2)

(3)

(4)

Gold (10 nm)

Silver (10 nm)

Polystyrene spheres(108 nm)

Polymer surface

Gold(10nm)

Polymer surface

Gold(10nm)

Silver (10nm)

Controls

蛍光イメージ 本方式Polystyrene spheres(108 nm)

励起波長 543 nm検出波長 570 nmPerkin Elmer Scan Array Light

Y YY YY YY Y YY Y YY

Y Y

表面増強蛍光法:比較

表面増強蛍光

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まとめ

ラマン分光法:低分子の同定(原料の品質管理、環境モニタリング)

比色法:ALP、POD等の酵素反応を用いた検査方法の高感度化・定量化(臨床検査、環境モニタリング)

蛍光測定法:蛍光物質もしくは、蛍光ラベルで標識された検体の検出(臨床検査、環境モニタリング)

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新技術の特徴・従来技術との比較

理想 アニーリング法 吸着法 電子線描画法 本方式

粒子密度 ◎ ◎ ○ ○ ◎

均一性 ◎ × ○ ◎ ◎

性能 ◎ × △ ◎ ◎

作製の手間 ◎ ◎ ○ × ◎

粒子サイズ 40-100 nm

数10nm 数10nm 数10nm 30-300 nm

“高性能、簡単、安い”の三拍子

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実用化に向けた課題

• 特定応用に対する微粒子の物性の最適化• 表面のコーティング

• 大手企業(分析関連): 環境モニタリングシステムヘの導入

• 大手企業(食品): 原料分析• 分析センター:新メニューの導入• 開発型中小企業 : 簡易分析装置の開発

企業への期待

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本技術に関する知的財産権

• 発明1の名称 :アッセイ法

(金属・誘電体多孔質膜構造による比色アッセイ法の高感度化)

• 出願番号 :特願2010-33354• 出願人 :学校法人東洋大学

• 発明者 :竹井弘之

• 発明2の名称 :分析用基板及びその製造方法(高感度分析方法のマルチ化)

• 出願番号 :特願2010-74787• 出願人 :学校法人東洋大学

• 発明者 :竹井弘之

• 発明3の名称 :フラクタル構造によるラマン増強効果用基板

• 出願番号 :出願準備中

• 出願人 :学校法人東洋大学

• 発明者 :竹井弘之

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お問い合わせ先

東洋大学

知的財産・産学連携推進センター

TEL 03-3945-7564

FAX 03-3945-7906

e-mail ml-chizai@ml.toyonet.toyo.ac.jp