紀要 vol 688 関西医療大学紀要, vol. 6, 2012...

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87 ALPS 疾患モデル MRL/lpr マウスに及ぼす灸刺激の影響 原  著 ALPS 疾患モデル MRL/lpr マウスに及ぼす灸刺激の影響 本多 栄洋 関西医療大学 基礎医学ユニット 要 旨 【目的】Fas 遺伝子にレトロトランスポゾンが挿入された ALPS 疾患モデル動物 MRL/lpr マウスに灸刺激を行い、リンパ 器官におけるサイトカイン環境および正常 Fas 遺伝子の発現へ及ぼす影響を検索した。 【方法と対象】雌性 MRL/lpr マウス(n=12)の腎兪穴相当部位(BL23)へ週2回の灸刺激を合計9回行った。施灸およ び非施灸マウスの胸腺と頸部リンパ節を対象としてサイトカインや Fas の mRNA 発現を RT-PCR により解析した。 【結果】施灸マウスの胸腺ではIFN-βの有意な増加、IL-17の有意な減少がみられた。さらに、頸部リンパ節では nucleobindin、正常 Fas 遺伝子、Foxp3 の有意な増加が示された。 【考察】MRL/lpr マウス腎兪への灸刺激は、制御性 T 細胞やサイトカインの遺伝子発現に影響を与え、また、レトロトラ ンスポゾンによるアポトーシス異常にも影響を及ぼす可能性が示された。 キーワード:レトロトランスポゾン、Fas 遺伝子、MRL/lpr マウス、灸刺激、ALPS .緒 言 近年、自己免疫疾患など多くの疾患の発症病因と遺伝 素因の関係 1- 4) が報告されており、医療における遺伝 子治療の重要性 5, 6) が高まっている。自己免疫疾患と は、免疫系が自己成分に対する免疫学的寛容を失った結 果、自己に対する過剰な免疫反応が起こり自己を構成す る細胞や組織、臓器が炎症性に破壊されることが原因で 発症すると考えられている。 現在、この疾患の治療は、免疫抑制剤や消炎剤、生物 製剤などを用いた薬物療法が中心となっているが、患者 のQOL(quality of life)を改善するために漢方薬の処 7- 9) や鍼灸治療などの東洋医学的治療法が併用され ることがあり、関節リウマチやシェーグレン症候群の患 者に対する鍼灸治療の有効性が報告されている 10, 11) また、鍼灸刺激は生体の免疫系に影響を及ぼす作用を もつと考えられており、特に、灸と免疫系の関係につい ては鍼灸施術者の意識や関心が高く、臨床現場では免疫 系への効果を期待する灸治療が実施されている 12) 。こ の点に関して、過去に笠原らは健常人を対象にして研究 を行い、施灸が免疫細胞のサイトカイン産生能に影響を 与え、抗原への応答に必要な免疫能を高める可能性を もつことを報告した 13) 。さらに、基礎研究では、小型 実験動物を対象にしてリンパ球芽球化反応 14) 、ナチュ ラルキラー活性 15) 、抗体産生能 16) 、サイトカイン産生 17) などへの灸刺激の影響が検索され、施灸が免疫系 の活性化やサイトカインバランスの調節に作用すること が報告されている。しかしながら、自己免疫疾患に関し て、実験動物を対象に灸の影響を探る基礎実験について は過去の報告例が極めて少なく、同疾患に対する灸の作 用には不明な点が多い。 一方、1978 年に系統が確立された MRL/MpJ-lpr/lpr マウス(以下、MRL/lpr マウス)は、細胞のアポトー シス誘導に関与するFas抗原の遺伝子に突然変異が起 きた lpr(lymphoproliferation)遺伝子を有するため、 Fas 抗原の機能欠損が起こり、同一個体内で種々の自己 免疫現象が多発的に起こる膠原病の疾患モデル動物とし て知られている 18, 19) さらに、このマウスは生後8週齢以降になると脾臓 や全身のリンパ節で自己反応性のCD3 CD4 CD8 T 細 胞(double negative T 細 胞、 以 下、DN-T) の 異 常 蓄積が起こり著しい腫脹を自然発症することから、ヒ トで同様の表現型を示す自己免疫性リンパ増殖症候群 (autoimmune lymphoproliferative syndrome、 以 下、

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ALPS疾患モデルMRL/lprマウスに及ぼす灸刺激の影響

原  著

ALPS疾患モデルMRL/lprマウスに及ぼす灸刺激の影響

本多 栄洋

関西医療大学 基礎医学ユニット

要 旨【目的】Fas遺伝子にレトロトランスポゾンが挿入されたALPS疾患モデル動物MRL/lprマウスに灸刺激を行い、リンパ

器官におけるサイトカイン環境および正常Fas遺伝子の発現へ及ぼす影響を検索した。【方法と対象】雌性MRL/lprマウス(n=12)の腎兪穴相当部位(BL23)へ週2回の灸刺激を合計9回行った。施灸およ

び非施灸マウスの胸腺と頸部リンパ節を対象としてサイトカインやFasのmRNA発現をRT-PCRにより解析した。【結果】施灸マウスの胸腺ではIFN-βの有意な増加、IL-17の有意な減少がみられた。さらに、頸部リンパ節では

nucleobindin、正常Fas遺伝子、Foxp3の有意な増加が示された。【考察】MRL/lprマウス腎兪への灸刺激は、制御性T細胞やサイトカインの遺伝子発現に影響を与え、また、レトロトラ

ンスポゾンによるアポトーシス異常にも影響を及ぼす可能性が示された。

キーワード:レトロトランスポゾン、Fas遺伝子、MRL/lprマウス、灸刺激、ALPS

Ⅰ.緒 言

 近年、自己免疫疾患など多くの疾患の発症病因と遺伝素因の関係1- 4)が報告されており、医療における遺伝子治療の重要性5, 6)が高まっている。自己免疫疾患とは、免疫系が自己成分に対する免疫学的寛容を失った結果、自己に対する過剰な免疫反応が起こり自己を構成する細胞や組織、臓器が炎症性に破壊されることが原因で発症すると考えられている。 現在、この疾患の治療は、免疫抑制剤や消炎剤、生物製剤などを用いた薬物療法が中心となっているが、患者のQOL(quality of life)を改善するために漢方薬の処方7- 9)や鍼灸治療などの東洋医学的治療法が併用されることがあり、関節リウマチやシェーグレン症候群の患者に対する鍼灸治療の有効性が報告されている10, 11)。 また、鍼灸刺激は生体の免疫系に影響を及ぼす作用をもつと考えられており、特に、灸と免疫系の関係については鍼灸施術者の意識や関心が高く、臨床現場では免疫系への効果を期待する灸治療が実施されている12)。この点に関して、過去に笠原らは健常人を対象にして研究を行い、施灸が免疫細胞のサイトカイン産生能に影響を与え、抗原への応答に必要な免疫能を高める可能性を

もつことを報告した 13)。さらに、基礎研究では、小型実験動物を対象にしてリンパ球芽球化反応14)、ナチュラルキラー活性 15)、抗体産生能16)、サイトカイン産生能17)などへの灸刺激の影響が検索され、施灸が免疫系の活性化やサイトカインバランスの調節に作用することが報告されている。しかしながら、自己免疫疾患に関して、実験動物を対象に灸の影響を探る基礎実験については過去の報告例が極めて少なく、同疾患に対する灸の作用には不明な点が多い。 一方、1978年に系統が確立されたMRL/MpJ-lpr/lpr

マウス(以下、MRL/lprマウス)は、細胞のアポトーシス誘導に関与するFas抗原の遺伝子に突然変異が起きた lpr (lymphoproliferation)遺伝子を有するため、Fas抗原の機能欠損が起こり、同一個体内で種々の自己免疫現象が多発的に起こる膠原病の疾患モデル動物として知られている18, 19)。 さらに、このマウスは生後8週齢以降になると脾臓や全身のリンパ節で自己反応性のCD3+CD4-CD8-T細胞(double negative T細胞、以下、DN-T)の異常蓄積が起こり著しい腫脹を自然発症することから、ヒトで同様の表現型を示す自己免疫性リンパ増殖症候群

(autoimmune lymphoproliferative syndrome、 以 下、

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ALPS)の疾患モデル動物とも考えられている20-23)。 そこで本研究ではALPSモデル動物としてのMRL/lprマウスを対象に用い、灸刺激が同マウスの中枢性および末梢性リンパ器官におけるサイトカイン環境に及ぼす影響について遺伝子発現を指標に検討した。また、自己免疫疾患発症への関与が示唆されているDNA結合タンパク質および抑制性T細胞の転写因子、さらに正常Fas遺伝子の発現への影響についても検討した。

Ⅱ.対象と方法

1.対 象 対象にはMRL/lprマウス(雌性、n=12、9週齢、体重30 ~ 37g、日本SLC)およびFas遺伝子に変異を持たない野生型マウス(MRL+/+、雌性、n=3、9週齢、体重29 ~ 30g、日本SLC)(wild type、以下、WTマウス)を用いた。 これらのマウスは、関西医療大学動物実験センターにおいて、室温が21±1℃で、明期・暗期ともに管理されたSPF(specific pathogen free)室内で飼育された。飼育期間中、餌および水はいずれも自由摂取とした。 なお、本研究は、関西医療大学の動物実験委員会における審査と承認を経て実施した。

2.実験群および刺激方法 MRL/lprマウスは加齢に伴う病状の進行によって図1に示すように頸部リンパ節に著しい腫脹が認められるようになる。今回はこのような変化が起こる以前の4~8週齢までの発症初期を対象として灸刺激を行い、9週齢で試料を採取した。

図1.MRL/lprマウスの頸部リンパ節の腫脹

 灸刺激は長さ5mmに切断した直径1mmの糸状灸(手指用糸もぐさ、精華鍼灸製作所、HUAM-DONG YNGSAN-GU SEOUL、韓国製)を用いて、背部を除毛したMRL/lprマウス(n=6)の左右腎兪穴相当部位(BL23)にペントバルビタール麻酔下で行った(図2)。1回の刺激量は左右5壮ずつの透熱灸とし、これを刺激期間中に週2回の割合で合計9回行っ

た。また、麻酔処置のみを行ったMRL/lprマウス(n=6)とWTマウス(n=3)を対照群として比較した。

図2.マウス腎兪相当部位(BL23)への施灸

3.検索方法(1)Spleen index 各群マウスにおける脾臓の腫脹を数値で表して比較するため、次式でマウスの単位体重当たりの脾臓の重量を求め、spleen index(以下、SI)とした24)。SI=脾臓の重量(g)÷マウスの体重(g)×1000

 (2)Reverse transcription-polymerase chain reaction

 各群マウスの胸腺および頸部リンパ節の細胞からRNA抽出用試薬(ISOGEN、ニッポンジーン)を用いてtotal RNAを抽出した。吸光度計を用いて、得られたRNAの濃度を調整した後、各サンプル2μgのRNAから逆転写酵素(RevaTra Ace、TOYOBO)を用いて37℃で1時間逆転写を行い、cDNAを合成した。次に、得られたcDNAを鋳型としてサイト カ イ ン(IFN-α, IFN-β, IFN-γ, IL-10, IL-17, TGF-β)、制御性T細胞の特異的転写因子Forkhead box protein 3(以下、Foxp3)、DNA結合型タンパク 質nucleobindin( 以 下、Nuc)、 正 常Fasお よ びglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(以下、GAPDH)遺伝子の増幅用プライマー(表1)を用いてTaq DNAポリメラーゼ(Ampli Taq、Applied Biosystems)による増幅反応を行った。サーマルサイクラー(MyCycler、BioRad)の条件は94℃で60秒間の反応の後、変性温度94℃で40秒間、アニーリング温度58℃で30秒間、そして伸長温度を72℃で60秒間となるよう設定し、各プライマーとも34サイクルの増幅をかけてPCR産物を合成した。得られたPCR産物は、マーカー色素(x6 Loading dye、TOYOBO)とよく混合し、3%アガロースゲルによ

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る電気泳動にて分離した(100V、30分間)。泳動終了後、エチジウムブロマイドにて染色したゲルをUVトランスイルミネーター(NTM-10、フナコシ)に移動させ、デジタルカメラ(Canon S95)によりバンドを非圧縮RAW形式で撮影した。得られた電気泳動の画像データを画像解析ソフト(Scion Image)で処理して半定量的に解析を行い、それぞれのバンドパターンを数値化した25)。得られたデータは、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDH mRNAの発現量を内部標準として補正し、相対値を算出した。

4.統計処理  各 検 索 で 得 ら れ た 結 果 は 平 均 値 ± 標 準 偏 差 で表 し た。 有 意 差 の 検 定 に 関 し て は、One-factor ANOVA26) で 有 意 差 が 認 め ら れ た も の に 対し、Tukey-Kramer法 で 多 重 比 較 検 定 を 行 っ た

(p<0.05)。

Ⅲ.結 果

1.脾臓の腫脹とspleen index、および体重 MRL/lprマウスの脾臓は同週齢のWTマウスの脾臓に比べて著しい腫脹を示しており、その断面には白脾髄が大部分を占めていることが肉眼的に観察された

(図3)。

図3 MRL/lprマウスの脾臓の腫脹

 また、マウスの単位体重当たりの脾臓重量を示すSIは、MRL/lprマウスではWTマウスSIの約3倍の数値を示した。WTマウスに比べ、非施灸マウスのSIは有意に増加(p<0.05)し、施灸マウスにおいても同様の結果(p<0.05)が示された。非施灸マウスと施灸マウスとの比較では、両者間には有意差は認められなかった(図4)。 しかし、WTマウスに比べ、非施灸マウスの体重は有意に増加(p<0.05)しているのに対し、施灸マウスの体重に有意差は認められなかった(図4)。

表1.RT-PCRに使用したプライマーの塩基配列一覧

検索mRNA 塩基配列

IFN-α5’-primer CACAGTCCAGAGAGCCATCA3’-primer CATTCCAAGCAGCAGATGAA

IFN-β5’-primer ATAAGCAGCTCCAGCTCCAA3’-primer TCCCACGTCAATCTTTCCTC

IFN-γ5’-primer AACGCTACACACTGCATCT3’-primer GCAGCGACTCCTTTTCCGCT

IL-175’-primer TCCAGAAGGCCCTCAGACTA3’-primer ACACCCACCAGCATCTTCTC

TGF-β5’-primer CTGCTGCTTTCTCCCTCAAC3’-primer GACTGGCGAGCCTTAGTTTG

Nuc(Nuc1)5’-primer AGGTTCTGCCTCCCTCTCTC3’-primer AGTCCCAGGCAGAGCTGATA

Foxp35’-primer CCTAGCCCCTAGTTCCAACC3’-primer CCAGATGTTGTGGGTGAGTG

Fas5’-primer CGCTGTTTTCCCTTGCTGCA3’-primer ACAGGTTGGTGTACCCCCAT

GAPDH5’-primer CGGTGTGAACGGATTTGGCCGTAT3’-primer GGCCTTCTCCATGGTGGTGAAGAC

(Fasのプライマー塩基配列に関しては文献19に基づき、デザインした。)

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2.胸腺(中枢リンパ器官)に及ぼす影響 MRL/lprマウスでは胸腺細胞のアポトーシス不全が起きていると考えられていることから、アポトーシス誘導との関連が報告されているIFN-βの発現に関して灸刺激の影響を検討したところ、施灸マウス胸腺では非施灸マウスに比べてIFN-β mRNA発現に有意な増加(p<0.05)が示された(図5)。また、同マウスは正常Fas遺伝子の他に、同遺伝子領域に168bpのレトロトランスポゾンが挿入された変異Fas遺伝子

(lpr遺伝子)を持つことから、レトロトランスポゾン挿入領域を挟む設定でデザインされたプライマー 19)

を用いて胸腺における正常Fas mRNAの発現を検索したところ、施灸マウスと非施灸マウスの発現量には有意な差は認められなかった(データ非掲載)。 また、自己免疫疾患の発症に関与するヘルパー T細胞であるTh17が産生するIL-17は施灸マウスで有意に減少(p<0.05)することが示された(図5)が、IFN-α、IFN-γ、TGF-β、IL-10のサイトカイン発現およびNuc、Foxp3については有意な変化は認められなかった(データ非掲載)。

図4.Spleen indexおよび体重の変化WTマウス(n=3)に比べ、非施灸マウス(n=6)および施灸マウス(n=6)のspleen indexは有意に増加した。しかし、WTマウスに比べ、非施灸マウスの体重は有意に増加したが、施灸マウスの体重増加は抑えられた。

サイトカインmRNA発現量/GAPDH mRMA発現量(相対値%)

(a)

(b)

図5 胸腺のサイトカインmRNA発現(相対値)の変化(a)   およびアガロースゲル電気泳動のバンドパターン(b)非施灸マウスに比べ、施灸マウスのIFN-βは有意に増加し、IL-17は有意に減少した。

3.頸部リンパ節(末梢リンパ器官)に及ぼす影響 自己免疫疾患およびアポトーシス誘導に関与するNucの発現に関して末梢リンパ器管である頸部リンパ節を対象に検索したところ、Nuc mRNAはWTマウスに比べて非施灸マウスで有意差は認められなかったが、WTマウスに比べて施灸マウスで有意に増加(p<0.05)していることが示された(図6)。  正 常Fas mRNAの 発 現 に つ い て は、 非 施 灸 マ ウス、施灸マウスともにWTマウスに比べて有意に減少

(p<0.05)していた。しかし、施灸マウスでは非施灸マウスに比べて正常Fas mRNAが有意に増加(p<0.05)していることが示された(図6)。 また、末梢において自己免疫疾患の発症抑制への関与が考えられている制御性T細胞の特異的マーカーであるFoxp3のmRNA発現は、非施灸マウスではWTマウスに比べて有意に低かった(p<0.05)が、施灸マウスでは非施灸マウスに比べて有意に増加(p<0.05)していることが示された(図6)。  一 方、 サ イ ト カ イ ン の 発 現 に 関 し て はIL-10のmRNAがWTマウスに比べ非施灸マウスで有意に増加

(p<0.05)し、さらに、非施灸マウスに比べ施灸マウス

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の有意な増加(p<0.05)が示された(図6)。IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-17およびTGF-βについては有意な変化は認められなかった(データ非掲載)。

mRNA発現量/GAPDH mRMA発現量(相対値%)

(a)

(b)

図6.頸部リンパ節のNuc、サイトカインmRNA発現と正常Fas   遺伝子 mRNA発現(相対値)の変化(a)   およびアガロースゲル電気泳動のバンドパターン(b)WTマウス(n=3)に比べ、施灸マウス(n=6)のNucとIL-10は有意に増加した。また、非施灸マウス(n=6)に比べ、施灸マウスの正常FasとFoxp3は有意に増加した。

Ⅳ.考 察

 今回の研究では、ALPSモデル動物と考えられているMRL/lprマウスに対して腎兪への灸刺激を行い、中枢リンパ器官の胸腺と、末梢リンパ器官の頸部リンパ節を対象にその影響を検索した。 MRL/lprマウスでは、アポトーシス誘導に関連するFas遺伝子へレトロトランスポゾンが挿入されることにより生じた漏出性突然変異(leaky mutation)がFas

遺伝子の機能欠損を引き起こし、胸腺のT細胞セレクションが正常に行われない。そのため、末梢に異常な形質を持つ自己反応性のDN-Tが蓄積し種々の自己免疫疾患の発症に関連すると報告されている20-23)。MRL/lpr

マウスに発現する正常Fasと変異Fasの比率は、T細胞

セレクションが行われる胸腺で最重要と思われてきた。 しかし、今回、灸刺激が頸部リンパ節の正常Fas mRNAを 増 加 さ せ た 結 果 は、 末 梢 リ ン パ 器 官 へ のDN-T蓄積に対して灸刺激が影響を及ぼす可能性を示唆するものである。 一方、胸腺では頸部リンパ節のように正常Fasの発現増加はみられなかったが、アポトーシスへの関与が推察される興味深い所見が得られた。まず、IFN-β mRNA発現が灸刺激によって胸腺で有意に増加した。IFN-βは抗ウイルス作用、腫瘍細胞の増殖抑制作用を示すほか、p53遺伝子の発現を誘導することが報告がされている27)。灸刺激によりIFN-βが有意に増加したことでp53遺伝子の発現が誘導され、胸腺内でアポトーシスが促進された可能性が考えられる。しかし、IFN-β と 同 じ Ⅰ 型IFNに 属 しSLE(systemic lupus erythematosus)発症に伴う増加が報告されているIFN-α28, 29)については変化はみられなかった。 また、頸部リンパ節では、灸刺激によりNuc mRNA発現が有意に増加した。NucはMRL/lprマウス細胞のアポトーシスから発見されたDNA結合型の分泌タンパクで30, 31)、正常なリンパ節細胞や肝臓、腎臓などの細胞で発現している30)。MRL/lprマウスではリコンビナントNucの投与で自己免疫応答と胸腺のアポトーシスが誘導されることから、Nucは自己免疫疾患とアポトーシスの制御に対して重要な役割を持つと考えられている32, 33)。 また、BALB/cマウスとMRL/lprマウスへのNuc投与では、BALB/cマウスではDN-Tが増加したがMRL/lprマウスでは逆にDN-Tが減少したことも報告されている31)。 これらのことから、今回得られたNucの発現増加は、灸刺激MRL/lprマウスで末梢に蓄積する異常な形質のDN-Tを減少させてALPS様の症状の進行を軽減させる可能性があると考えられる。同時に、正常Fas遺伝子mRNAの発現が増加した頸部リンパ節内でアポトーシス誘導を促進した可能性が考えられる。 上述の如く、MRL/lprマウスではFas遺伝子へレトロトランスポゾンが挿入されてアポトーシスの機能不全が生じている。レトロトランスポゾン遺伝子にはLTR、PBS、PR、RT、RH、H/C、INの 配 列 が あ り、 レ トロウイルスと相同性の高い構造を持っている34)。そのため、多発性硬化症関連レトロウイルスに対する治療として使われているIFN-β35)が灸刺激で増加したことは、レトロトランスポゾンに対しても影響を及ぼした可能性がある。さらに、IFN-βは外在性レトロウイ

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ルス(HIV、HTLV-1)および内在性レトロウイルスに対して抗レトロウイルス作用があると報告され36,37)、HTLV-1トランスジェニックマウスは、加齢に伴いヒトリウマチ様関節炎を自然発症すると報告されている38)。 さらに、ヒトの脳内でレトロトランスポゾンが可動しタンパクをコードする報告39)や、MRL/lprマウスとWTマウスのF1の胸腺ではFas遺伝子内部にレトロトランスポゾンが挿入されている報告40)もある。これらのことから、MRL/lprマウスのFas遺伝子に挿入されたレトロトランスポゾンに対してIFN-βが作用し、結果的に正常Fas mRNAの発現が増加した可能性が考えられる。 近年、新たに発見されたTh17は、ナイーブT細胞がIL-6、IL-23、TGF-βの共存下で分化するヘルパー T細胞のサブセットであり、そのTh17が産生するサイトカインであるIL-17は、自己免疫疾患をはじめとする種々の炎症性疾患の原因になることが報告されている 41) 

(図7)。 また最近では、SLE患者やMRL/lprマウスのDN-TがIL-17を産生することが報告され、自己免疫の病態進行への影響が示唆されている 42, 43)。今回の実験で得られた胸腺のIL-17 mRNA発現については、施灸マウスが非施灸マウスに比べて有意に減少を示したことから、灸刺激はIL-17の分泌やTh17の活動に影響を及ぼしていることが予想された。 また、灸刺激は頸部リンパ節でTreg特異的転写因子であるFoxp3 mRNAを有意に増加させた。Foxp3は胸腺で分化し末梢で自己応答を制御するnTreg(natural Treg) 44)の分化成熟に必須な転写因子45)であり、その増加は免疫応答を能動的に収束させ自己免疫疾患を回避させる46)。 また、分化したTregはTh17に作用してその活動を 抑 制 す る47)( 図 7)。 さ ら に、Foxp3欠 損 マ ウ ス

(Scurfyマウス)では著しいリンパ増殖が起こることも

図7.末梢におけるT細胞の分化とサイトカインの作用の関係

報告されている48, 49)。 今回の結果はMRL/lprマウス末梢リンパ器官内でWTマウスに比べ低下していたMRL/lprマウスのTreg活性が灸刺激で回復しTh17の抑制に関与47)した可能性を示唆する。しかし、Treg分化に必須とされるTGF-β発現に変化が得られなかったことから、灸刺激がMRL/lprマウスのTreg減少に対して抑制的な影響を及ぼした可能性が考えられる。 MRL/lprマウスは、細胞性免疫が亢進しIFN-γの分泌が増加したTh1型の自己免疫反応を示すと考えられている50, 51)。確かに、非施灸マウスのIFN-γ mRNA発現は、WTマウスより高い傾向があり、Th1優位の傾向がみられた。Th1/Th2バランスという観点からみれば、灸刺激はTh1サイトカインであるIFN-γを増加させてサイトカインバランスの調整に作用する可能性が示唆されている13, 17)。また、IFN-γがTh17の分化に対して抑制的に作用する報告もあることから41)、その発現の変化を調べてみた。 今回は有意差は得られなかったが施灸により胸腺と頸部リンパ節のIFN-γ発現の増加傾向がみられ、灸刺激はTh1サイトカインを増加させるという過去の報告 13,

17)と一致する傾向をみた。IFN-γが腫瘍の抗増殖作用、抗ウイルス作用をもつとの報告があることから 52, 53)、IFN-β同様、レトロトランスポゾンに対して何らかの影響を及ぼす可能性も考えられる。 さらに、過去に宇都宮は、腫瘍を皮下移植したマウスの腎兪に灸刺激を行うと、移植細胞数が多い場合は隔日から4日毎間隔の灸刺激が腫瘍の増殖に対して抑制的に作用することを報告した15)。本実験で用いたMRL/lpr

マウスで増殖するDN-Tは、Fas遺伝子の変異によりアポトーシスに異常が起こった結果として蓄積された本来は排除されるべき細胞である。 したがって、この細胞は本質的に腫瘍とは異なるが、細胞の非生理的な増殖性反応に対して腎兪への灸刺激が示す抑制作用という点では、宇都宮の報告と関連する部分があると考えられる。 また、抑制性サイトカインとして知られるIL-10は、正常マウスにおいてIL-17の分泌の抑制に作用することが報告されている54, 55)。WTマウスに比べて非施灸マウスで有意に増加していることがわかった。さらに、非施灸マウスに比べて施灸マウスでは、IL-10が増加傾向を示す結果を得た。 MRL/lprマウスにおける脾臓の腫脹は早期から始まることが報告されている 56)。今回、脾臓の腫脹の指標としてSIを求めたが、施灸マウスと非施灸マウスにお

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ALPS疾患モデルMRL/lprマウスに及ぼす灸刺激の影響

いて明確なデータを示すことができなかった。非施灸マウスに比べて施灸マウスは、体重増加が抑えられたことが関係していると思われる。

Ⅴ.結 語

1.自己免疫性リンパ増殖症候群の疾患モデル動物であるMRL/lprマウスの腎兪相当部位へ灸刺激を行った。

2. 灸 刺 激 はIFN-β とnucleobindin、 正 常FasのmRNA発現を有意に増加させ、リンパ器官内におけるアポトーシスに影響を与える可能性が示された。

3.灸刺激マウスにおけるFoxp3の有意な増加とIL-17の有意な減少から、自己免疫疾患の発症への関与が知られているTh17への影響が推測された。

4.灸刺激はMRL/lprマウスの免疫異常とレトロトランスポゾン挿入によるアポトーシス異常に影響を与え、自己免疫性のリンパ球増殖症の進行を緩和する作用をもつ可能性が示唆された。

引用文献

1)Shimane K, Kochi Y, Yamada R, et al : A single nucleotide polymorphism in the IRF5 promoter region is associated with susceptibility to rheumatoid arthritis in the Japanese population. Ann Rheum Dis. 68(3):377-83. 2009

2)Suzuki A, Yamada R, Kochi Y, et al : Functional SNPs in CD244 increase the risk of rheumatoid arthritis in a Japanese population. Nat Genet. 40(10):1224-9. 2008

3)Kochi Y, Yamada R, Kobayashi K, et al : Analysis of single-nucleotide polymorphisms in Japanese rheumatoid arthritis patients shows additional susceptibility markers besides the classic shared epitope susceptibility sequences. Arthritis Rheum. 50(1):63-71. 2004

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(4):591-601. 20015)Cao H, Molday RS, Hu J. Gene therapy: light is finally

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関西医療大学紀要, Vol. 6, 2012

Original Research

Effect of the Moxibustion to MRL/lpr Mice, an Experimental Model of Autoimmune Lymphoproliferative Syndrome Causedby the Retrotransposon-Inserted Fas Gene Mutation

Takahiro HONDA

An experimental medicine unit, Kansai University of Health Sciences

Abstract[Introduction]

MRL/lpr mice, an experimental model of autoimmune lymphoproliferative syndrome caused by retrotransposon insertion into Fas gene, were conducted by moxibustion stimulation in order to investigate the effect on the cytokine environment in the central and peripheral lymphoid organs, and an expression of apoptosis-related gene including normal Fas.

[Materials and Methods]A total of 9 times of moxibustion stimulation were performed on the both sides of back acupoints (Shenshu, BL23) of young female MRL/lpr mice (n=12) twice in a week. By using the technique of a reverse transcription-polymerase chain reaction, mRNA expression of IFN-α, -β, -γ, IL-10, -17, Foxp3, nucleobindin and normal Fas in thymus and cervical lymph nodes were analyzed in the moxa-stimulated or non-stimulated mice.

[Results and Discussion]In thymus, significant increase of IFN-β mRNA and significant decrease of IL-17 mRNA were found in the moxa-stimulated mice. And also significant increase of Foxp3, nucleobindin, and a normal Fas mRNA were confirmed in the cervical lymph nodes in the moxa-stimulated mice. Given that the pathogenesis of this autoimmune disease is resulted from the aberrant drive of Th17 and the functional disorder of Fas gene by retrotransposon, these results suggest that moxibustion stimulation could help the recovery of suppressive effect against Th17 and the normal apoptosis pathway during thymic T cell selection.

[Conclusion]Moxibustion stimulation could attenuate the disease progression of autoimmune lymphoproliferative syndrome in MRL/lpr mice.

Keyword:retrotransposon, Fas gene, MRL/lpr mice,moxibution stimulation, ALPS