再び節電の夏 東日本大震災後のエネルギー問題を考 …今 月 の 特 集...

2 1 西西使西西西電力不足 関西電力 九州電力 ┙┕┙┘┛┕┠中部電力 中国電力 北海道電力 ┘┕┠電力不足 東京電力 東北電力 エアコン→扇風機:▼├┗エアコン→┙┟:▼┘┗照明→日中消灯 :▼ ├┌ 温水便座→┶┭┭ :▼ テレビ→省エネモード:▼炊飯器→まとめ炊き :▼待機電力→電源⑪②② :▼冷蔵庫→設定「中」 :▼政府版 節電メニュー 図①

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Page 1: 再び節電の夏 東日本大震災後のエネルギー問題を考 …今 月 の 特 集 東日本大震災後のエネルギー問題を考える 河原 雄三氏 コラムニスト、ジャーナリスト

今 月 

の 

特 

東日本大震災後のエネルギー問題を考える

河原 

雄三氏

コラムニスト、ジャーナリスト

2 1

この三社に西日本の四社、関西と九州に電

気を融通する中部、北陸、中国、四国の四社

を加えた七社に対し、政府が四月十八日、五

〜一五%の節電要請を行いました。

周辺の電力会社の協力で関電管内における

電力使用制限令は回避されましたが、万が一

の事態に備え、関西、四国、九州と北海道の

四社は計画停電の準備も進めることになりま

した。

東京と東北の二社は、節電目標は設定され

ず、予備率も東京が四・五%、東北が三・八

%とプラスになっていますが、油断はできま

せん。

それにしても、なぜ今頃になって夏の節電

要請が行われ、なぜこんな電力不足になって

再び節電の夏

昨日、気象庁が六月から八月までの三か月予報を発表しました。それによると、北日本

と東日本は平年並み、近畿から九州にかけての西日本は高温傾向、という予報内容でした。

この夏の電力需給、想定される最大需要に対し、供給力にどれだけ余裕があるかを示す

供給予備率をみると、関西電力がマイナス一四・九%、九州電力がマイナス二・二%、北

海道電力がマイナス一・九%と、三社の供給力に黄色信号が点滅しています(図①)。

注数値については、ご講演時の数値

電力不足

関西電力九州電力

▼ % ▼ %

中部電力 中国電力

北陸電力

四国電力

北海道電力▼ %

電力不足

東京電力 東北電力

再び節電の夏

エアコン→扇風機:▼ %

エアコン→ 度 :▼ %

照明→日中消灯 :▼

温水便座→ :▼ %

テレビ→省エネモード:▼ %

炊飯器→まとめ炊き :▼ %

待機電力→電源 :▼ %

冷蔵庫→設定「中」 :▼ %

政府版 節電メニュー

図①

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4 3

いるのでしょう。

直接の原因は、政府があてにしていた関電大飯原子力発電所三・四号機の再稼働問題が

難航していることにあります。

三・四号機が再稼働しなければ、夏場の電力需給は関西を中心に厳しい状況に追い込ま

れることは早くからわかっていたことですが、野田政権は再稼働を決断したにもかかわら

ず、その取り組みは緩慢で、需給対策の具体化も後回しにされてしまったわけです。

ところで朝日新聞の今日の朝刊は、一面の四本の記事のうちトップを含め三本が、二面

と三面に至ってはすべての記事がエネルギーに関するニュースで埋め尽くされています。

このようにエネルギー問題はいまや百家争鳴の感がありますが、本日は東日本大震災後

のエネルギー問題について、少し角度を変えてお話を進めてまいります。

東日本大震災

昨年の三月十一日。新聞の朝刊には、菅直人首相の外国人献金疑惑に関する記事が掲載

されていました。

①菅首相の資金管理団体が、過去に、在日韓国人系金融機関の元理事から合わせて百四

万円の献金を受けていた、②政治資金規正法は外国人からの寄付を禁じており、在日韓国

人から菅首相への献金は法律違反の疑いがある

―という内容で、その日の参議院決算委

員会で菅首相は野党委員から集中砲火を浴びることになりました。

この日私は、東京の八丁堀にある事務所で午前中から決算委員会の模様をN

HK

の国会

中継で見ていまして、午後三時五十六分発の「はやて」で仙台に戻ろうと、帰り支度を始

めた時に激しい揺れに見舞われました。

揺れが続いている間は、いったい何が起きているのか判断できずにおりましたが、テレ

ビ画面に映った、「宮城県北部で震度七」のテロップと、不安そうに天井を見上げる菅首

相の姿から、ようやく事の重大さが理解できました。

二〇一一年三月十一日午後二時四十六分。三陸沖を震源とするマグニチュード九・〇の

巨大地震「東日本大震災」が発生、国会での菅総理への追及は中断され、路上はオフィス

ビルなどからの退避を余儀なくされた人たちで溢れていました。

交通機関も全てストップしたために、私も東北新幹線で仙台に戻ることができなくなり

ました。

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津波は一メートルでも危険だが…

この東日本大震災では、死者と行方不明者の数が約一万九千人に上り、その大半が津波

の犠牲になった方々ですが、震災から半年後、津波に関して気になるニュースが流れてい

ました。

東京大学の地震研究所が「人は、どれくらいの高さの津波を危険と認識するのか?」を

調べようと、静岡以西の太平洋側の十七府県の住民を対象にインターネットでアンケート

調査を行ったところ、震災の前年、一昨年三月の調査では七割以上の人が「一メートル以

下でも危険」と答えたそうです。

ところが、大震災からひと月後に行った調査では「一メートル以下でも危険」という回

答は五割を切り、四六%にとどまったというのです。

ご存知だと思いますが、津波は普段の海の波と違って、三十センチメートル、つまり膝

にかかる程度の水位でも足を取られるほどの威力があります。一メートルの津波で木造家

屋は半壊、二メートルならば木造家屋は全壊するといわれています。

なのに、震災からひと月後に実施したアンケートの結果、「一メートル以下の津波なら

大丈夫」と思い込んでいる人が震災前よりも増えているというのです。

これは、どういうことなのでしょう。

調査を行った研究者が、テレビのインタビューでこんなことをコメントしていました。

「『津波の高さは最高で四十メートルに達した』というニュースが繰り返し流されている

うちに、津波は十メートル、二十メートル、時には四十メートルにも達するものだという

認識が日本人の常識になってしまって、一メートルの津波が軽微なもの、危険でないもの

に思えるようになった」

巨大津波の映像を繰り返し見せられているうちに、誤った認識が日本の常識として広が

りつつあるとすれば、今のうちに手を打っておかないと、取り返しのつかないことになっ

てしまいます。

ガソリン不足が…

私の自宅は、宮城県多賀城市、仙台の北隣の市にあります。自宅に戻ることができたの

は、地震発生から二日後でした。

当時の我が家の状況を振り返りますと、電気、ガス、水道のライフラインが絶たれ、不

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自由な生活を強いられましたが、慣れというものは恐ろしいもので、水や食料を調達する

ため何時間も並ぶことが苦にならなくなっていきました。

その間、列を乱したり、割り込んで口論やつかみ合いの喧嘩になるような場面を一度も

見ずに済み、日本人も捨てたもんじゃないな、と寒い中で少しだけ暖かい気持ちになった

ことを記憶してますが、ガソリンに関してはそうじゃなかった。

東日本大震災直後のガソリン不足は、人々を狂気に駆り立てました。

水のように生命維持には直接関係ないのに、ガソリン不足のパニックが人をパニック的

な行動に走らせるのは、人間の持つ、危険から逃れようとする本能を刺激するからでしょ

うか。

被害が大きかった岩手、宮城、福島の三県だけでなく、青森、秋田、山形、首都圏でも、

ガソリンスタンドに並ぶクルマの長蛇の列は、計画停電が始まった三月十四日から一週間

程度続き、東北地方でも電気が開通し騒動がいったん収まった後、余震で再び停電すると、

いったん解消した給油待ちのクルマの行列が復活するという現象が何度も起きました。

石油の安定供給に支障を来しそうになると、世間の関心は「備蓄は何日分あるのだろう」

と原油の国家備蓄・民間備蓄の動向に向かいますが、災害時に電力が不足する場合に緊急

電源を動かすのは、原油ではなく石油製品である軽油やA重油です。

クルマもガソリンや軽油がなければ、大災害の発生時に何の役にも立ちません。

電気と石油の供給不安は、相互に増幅します。この実態は、実際に危機が訪れないと実

感されません。

東日本大震災の直後、「ガソリンが無いから食料が来ない」、「ガソリンが無いから薬が

足りない」、「ガソリンがないから瓦礫が処理できない」、「ガソリン不足は全ての復旧の足

かせ、復旧を妨げている元凶だ」との声が一気に高まり、対応に追われる資源エネルギー

庁に、首相官邸や与党からから延べ千四百件以上の個別の供給要請が優先順位もないまま

殺到、現場のオペレーションを混乱させました。

ガソリンや灯油・軽油など石油製品のオペレーションは、当初、甚大な被害を受けた岩

手、宮城、福島の三県を最優先する形で進められていたのですが、首都圏でもガソリンを

巡ってガソリンスタンドでの客と従業員のトラブルが何件も発生、暴動が起きそうになっ

たのです。

「国の中枢である首都圏、特に東京でもしもパニック、暴動が起きたら収拾がつかなく

なる」と、危機感を抱いた当局は、被災地に振り向けるべきガソリンを急遽、首都圏に重

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点的に投入、平時を上回る量の投入を一週間程度継続することで行列はようやく自然解消

しました。

いくら言葉で「不要不急の給油は止めて下さい」「少量給油のために行列を作るのはや

めましょう」と言っても人は聞く耳を持ちません。

緊急時においては、ガソリンを常に満タンにしておかないと安心できないのが人間の心

理でしょうか。

こうした人間の心理に対処するには、「言葉」でなく実態で安心させるしかありません。

二十世紀初頭の大恐慌時、銀行は札束をカウンターに積み上げて取り付け騒ぎを防ごうと

しましたが、結局のところ、パニックを防ぐには同じ事をやるのが一番なんですね。

ガソリンスタンドにタンクローリーを横付けして平時よりも多くのガソリンを投入し、

「並ばなくても大丈夫なんだ」と皮膚感を持って感じさせる。それによって行列が減る。

減った行列を見て更に安心する。そうした状況を作り出さないと「不安」は解消しません。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがあります。学習効果があるから、もう

あんなことにはならんだろうと思っても、またぞろ大災害が起きれば、ガソリン不足が消

費者を狂気に駆り立てる可能性があります。いや、必ずそうなります。

連鎖する巨大地震

地震列島の日本は、いつ襲ってくるか分か

らない首都直下型地震や東海・東南海・南海

などの大地震の脅威にさらされています(図

②)。首

都直下型地震については、東日本大震災

の前から「いつかくる」とされていましたが、

震災後は「もうすぐくるかもしれない」とい

われるようになり、年明けにはマグニチュー

ド七クラスの首都直下型地震の確率は、今後

四年以内に「七〇%」だとか「五〇%」だとか、

「五年以内に二八%、三十年以内に六四%」と

いった具合に、大学の研究機関などが次々と

首都直下型地震の可能性を示唆しています。

869年 貞観地震

878年 相模・武蔵地震887年 仁和地震

年 慶長大地震

1611年 慶長三陸地震年 慶長江戸地震

年 関東大震災1 年 昭和三陸地震

年 昭和東南海地震年 昭和南海地震

2011年 東日本大震災? 年 首都直下型地震? 年 三連動地震

南海トラフ地震)

連鎖する巨大地震

図②

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今、首都圏直下型が勃発すると、どういうことになるでしょうか。

外国から買ってきた原油を精製して、ガソリンや灯油、軽油、重油などの石油製品を生

産する施設を製油所と言います。

東日本大震災では、国内の二十七の製油所のうち六つの製油所が火災などで操業を停止、

日本全体の精製能力は一時、七割程度まで落ち込みましたが、十日後には東京湾岸の三つ

の製油所が再開し精製能力も九割程度まで回復しました。

東日本大震災直後の「危機」を振り返りますと、日本全体マクロでの生産ネックは短期

間で大幅に改善されていて、致命的な問題にはならなかった。問題はロジスティックス、

つまり販売に至るまでの物流にあったわけです。

製油所が無事だった関東以西から東北への製品輸送ルートの途絶、具体的には、東北の

海の玄関である塩釜港の閉鎖や、貨物の大量輸送機能を持つ東北本線の運行停止といった

大動脈の破断に加え、東北域内でのタンクローリーやガソリンスタンドの被災による製品

輸送の現場の混乱等々、いわば毛細血管が広範に詰まったような状態となったわけです。

仮に、いま首都直下型地震や東海・東南海・南海で大地震が起きますと、東京湾や、伊

勢湾、大阪湾、更には瀬戸内が大きく被災する公算が極めて大きく、日本全体でのマクロ

の生産能力が大きく落ち込む可能性があります。

そこで、

緊急時の供給体制、つまり東日本大震災の時のガソリン・パニックを繰り返さ

ないために緊急時の供給体制を強化しようということで、石油備蓄法等の改正を柱とする

緊急時石油製品供給法案が今国会に提出されています。

この法案では、原油中心の国家備蓄体制を見直して、ガソリンや軽油、灯油などの石油

製品を各地に分散させて国家備蓄として蓄える制度改正をスタートさせることになってい

ます。

今後、石油製品の備蓄を増やしていくと言っても、劣化しやすいガソリンなどの石油製

品を大規模に備蓄するには莫大なコストと手間が必要になります。備蓄する場所も、内陸

部も含め広い範囲に分散備蓄する必要があります。

首都直下型地震などの巨大地震が本当に発生したら対応しきれないでしょうが、指をく

わえて見ているわけにもいかず、多少なりとも準備を進めておこうということで、国会に

緊急時石油製品供給法案が提出されたわけです。

目下のエネルギー問題といえば、原子力。エネルギー論議の大半が原子力発電の「賛成・

反対」を巡る二項対立に割かれています。

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無論、原発の問題は大変に重要な問題であり、東日本大震災の反省事項の一つとして安

全性の問題をしっかりと考え、対策に取り組んでいく必要があります。

と同時に、緊急時のガソリン不足によるパニックを、首都直下型や三連動地震などの際

にどうやって回避するか、ということも今回の震災を契機として早急に考えなければなら

ないエネルギー分野の最重要課題の一つなのです。

地震の激しい揺れと停電がもたらす暗闇は、人間をガソリンスタンドに走らせる、とい

う東日本大震災の教訓は、早くも風化してしまったのでしょうか?

被災地だけじゃない。東京でも行列作って大騒ぎしたことを忘れたのでしょうか?

与野党とも「ガソリンをよこせ!」の大騒動を忘れたのでしょうか?

大震災に直面する可能性の尋常ではない高さとその時のガソリンなど石油製品への殺到

振りを「我がこと」として認識し、巨大地震への備えを急ぐべきです。

大震災で脚光

東日本大震災では、原子力発電や火力発電という大規模電源や電力会社の送電線網がダ

メージを受け、被災地などのユーザーは一時期、電気のない不自由な暮らしを強いられま

した。

そうした中、被災地で脚光を浴びたのが、太陽光発電等の再生可能エネルギーや燃料電

池のようにユーザーの近くで電気をつくりだす分散型電源、自家用の発電機、電気をため

ておいて停電の時などに使う蓄電池です。

電気自動車も、ガソリン不足の中で、自治体の連絡用車両や医師の往診用車両として活

躍しました(図③次ページ)。

再生可能エネルギー導入の意義

再生可能エネルギーについては、「石油に代わって安定的な供給が期待できるエネルギ

ー源であること」、「化石エネルギーと比べ環境負荷が相対的に低いクリーンエネルギーで

あること」などが導入のメリットとして挙げられますが、東日本大震災以降は大規模電源

や電力会社の送電ネットワークが深刻なダメージを受けた場合等の自立型エネルギーシス

テムとして利用が可能、ということで「災害に強い分散型エネルギーシステム」としての

利点が大きくクローズアップされています(図④十六ページ)。

無論、再生可能エネルギーにもデメリット、普及に向けた課題があります。

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燃料となる太陽の光や風などの自然エネル

ギーはただで手に入りますが、発電するため

の機器や設備の初期投資を含めるとどうして

も割高になりますので、普及を進めていくた

めにはコストを引き下げる努力が必要です。

技術開発を強力に進めていくことでコスト

を引き下げることは可能ですが、技術開発だ

けで短期間に、火力発電などと太刀打ちでき

る水準までコストを下げることはできませ

ん。

固定価格買取制度=FIT(Feed-in

Tariff

そこで政府は、太陽光発電の普及が急速に

進んだドイツなどの例に倣って、再生可能エ

○石油代替エネルギー・安定的にエネルギーを確保できる・石油依存度を下げる

○クリーンエネルギー・化石エネルギーと比べ環境負荷が低い

○新規産業・雇用創出・新規市場や雇用の創出に資する・企業の競争力強化にも寄与

○分散型エネルギーシステム・防災時、自立型エネルギーシステムとして活用・需要地と近接して設置が可能

4

再生可能エネルギー導入の意義

図④太陽光発電

風力発電

燃料電池

蓄電池

電気自動車

発電機

火力発電所

原子力

発電所

原子力

発電所

原子力

発電所

大震災で脚光

大規模電源

分散型電源

図③

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ネルギーを普及拡大させていくため、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達

に関する特別措置法」に基づき、大規模な太陽光発電など再生可能エネルギーの発電によ

る電力を、政府が決めた価格で長期間買い取ることを電力会社に義務づける「固定価格買

取制度」を、今年七月からスタートさせることにしています。(七月一日よりスタート)

この制度の対象となる再生可能エネルギーは規模の大きな太陽光のほか、風力、中小水

力、バイオマス、地熱の、全部で四種類の再生可能エネルギーによってつくり出された電

力です(図⑤)。

買取価格

買取の価格と期間は、第三者委員会の意見を聴いた上で経済産業大臣が決定することに

なっており、これが第三者委員会が枝野経産相に提出した価格案です。

おおむね、再生可能エネルギーの発電事業者の要望に沿った内容ですので、この案通り

の買取価格が経産相から示されることになる見通しです。

ところで、第三者委員会が価格案をまとめた日の翌朝の東京新聞と産経新聞の論調が異

なっていました。

5

出典:経済産業省

全量買い取り制度(

再生可能エネルギーの

図⑤

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20 19

東京が、業界の要望通りの「大盤振る舞い」

の価格案、家計への負担増加分も月々百円未

満にとどまる、と全面的に評価しているのに

対し、産経は、買取価格が高めに設定された

上に、送電ネットワークの強化や蓄電池設置

のコストを考えると家庭や企業の負担が膨ら

む恐れがある、とやや慎重な論調でした。

新制度では、電力会社が自分でつくってい

る電力のコストを上回って買い取る分につい

てはサーチャージ、つまり家庭や企業の電気

料金にそっくり上乗せしても良いことになっ

ています。月額七千円程度の電気料金を支払

っている標準家庭の場合で月七十円から百円

程度負担が増える見通しで、買い取る量が増

えれば、家庭だけでなく、経営の厳しい中小

零細企業などへの影響も心配になってきます(図⑥)。

買取価格を高めに設定すれば、発電した分だけ儲かるわけですから再生可能エネルギー

の普及が急速に進む可能性がありますが、その分だけ家庭や企業の負担が重くなります。

送電ネットワークを強化するための費用や蓄電池の設置コストも電気料金に跳ね返る恐れ

があります。

この制度を既に導入しているドイツやスペインなどでは家庭の負担が重くなり、制度を

見直す動きも出ています。

再生可能エネルギーの課題

再生可能エネルギーの二つ目の課題は、稼働率です。

太陽光で発電できるのはお日様が出ている日中だけで、雨や曇りの時はほとんど使えま

せん。風力発電も、風が吹いてないときは回らない風車です。

このように再生可能エネルギーには、火力発電などの大規模電源と比べ稼働率が低いと

いう難点があります。

もう一つ、系統連系の問題も克服しなければなりません。

発電方式 買取価格( 、税込)

事業者の要望価格

大規模太陽光 円 円

風 力 円 円

小型風力 円 ~ 円

地 熱 ~ 円 円(出力 万 級)

中小水力 ~ 円 ~ 円

バイオマス 16.35~ 円 ~ 円

買い取り価格 全量買い取り制度

家庭の負担増

+ ~ 円 月 → 月額 円の家庭で+ ~ 円 月( 月)

図⑥

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22 21

今申し上げたように、再生可能エネルギーの発電量は、日射量や風の強さなど自然条件

に大きく左右されます。

天気任せの気まぐれな再生可能エネルギーが、電力会社の送電線のネットワークに大量

に入り込み、電力会社が出力を調整しきれなくなると、電圧が不安定になったり、最悪の

場合、停電という事態も考えられます。

再生可能エネルギーが大量に電力ネットワークに入ってきても、電力の質が落ちないよ

うにすることも、再生可能エネルギーの普及を進めていく上での大きな課題で、電力ネッ

トワークを増強するための巨額投資をどうするかという難問を解決していく必要がありま

す。

NEDO

NEDOという組織、ご存知でしょうか?経済産業省系の独立行政法人で、正式名称は

新エネルギー・産業技術総合開発機構。エネルギーや環境技術、産業技術の研究開発を後

押しする組織です。

国家的なプロジェクト(ナショナル・プロジェクト)を推進したり、民間の研究開発を

強力に支援する、日本の技術開発の中核的な

機関で、第二次石油危機直後の一九八〇年に

設立され、日本の新エネルギー、省エネルギ

ーの技術開発と普及に貢献してきました(図

⑦)。

NEDO新電力ネットワークシステム

実証研究

これ(図⑧次ページ)は、NEDOが仙台

市の東北福祉大学を支援して行われたマイク

ログリッドの実証研究プロジェクトの舞台と

なった東北福祉大学の「品質別電力供給シス

テム実証研究エネルギーセンター」です。

ここに、ごく小規模の電力ネットワークを

構築し、太陽光発電や燃料電池、ガスエンジ

7

ニューサンシャイン計画~ 年。

1974

1978

1993

2002

サンシャイン計画~ 年

ムーンライト計画~ 年

太陽電池技術開発地熱利用石炭液化

ガスタービン技術改良燃料電池技術開発ヒートポンプ効率化

太陽光発電風力発電バイオマス発電燃料電池リサイクル温暖化対策

技術開発・普及

=新エネルギー・産業技術総合開発機構

新エネ

省エネ

1980

設立

新エネ省エネ環 境

図⑦

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24 23

ン、蓄電池を使って大学の付属病院「せんだ

んホスピタル」に高い品質の電力を供給する

実証研究が、二〇〇四年度から二〇〇七年度

まで行われました。

実証研究が終了した後は「せんだんホスピ

タル」のバックアップ電源として利用され、

東日本大震災の際には、翌十二日から三百五

十キロワットのガスエンジン二機と、百キロ

ワット太陽光パネルが「せんだんホスピタル」

に電力を供給、分散型システムが災害に強い

システムであることが東北福祉大のケースで

改めて実証されたわけです。

スマート○○

東日本大震災以降、エネルギー関連のニュ

ースに「スマート○○」「スマート××」と、

「スマート」が頭に付いた言葉が頻繁に登場

します。

日本人は、このスマートという英語を、私

のような体型とは真逆の体型のことを指す言

葉として使いがちですが、ニュースに登場す

るスマートは「利口な」とか「賢い」という

意味でのスマートです。

スマートフォンは、スラッとして格好が良

いという意味ではありません。「賢い電話器」

という訳し方が正解です。

エネルギーの分野で最近、頻繁に登場する

スマートは、スマートグリッド、スマートハ

ウス、スマートビル、そしてスマートコミュ

ニティ、スマートシティです(図⑨)。

スマート○○○

スマートコミュニティ

スマートシティ

スマートグリッド

スマートビル スマートハウス

8

•ガスエンジンや太陽光発電、燃料電池、蓄電機器を設置したマイクログリッドを構築。

東北福祉大学付属病院へ高品質な電力を供給。

•東日本大震災において、宮城県内で全域停電の中、震災翌日から電力供給を継続。

宮城県仙台市での高品質マイクログリッド

太陽光発電

ガスエンジン

燃料電池

蓄電機器

「新電力ネットワークシステム実証研究」

図⑧

図⑨

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26 25

スマートグリッド

スマートグリッドは、「賢い電力ネットワーク」。エネルギーを効率的に利用できるシス

テムを構築しようというものです。

具体的に解説しますと、電力のネットワークに最先端のコンピューターや情報通信技術

を採り入れて、電力の供給サイドと需要サイドで電力の需給に関する情報を双方向でやり

取りして自動的に電力需給のバランスを図る仕組みです(図⑩)。

電力は、品質管理が重要であり、電力を供給する電力会社は品質を維持するために発電

量と使用量をうまくバランスさせる必要があります。

東京電力の管内ですと、電圧を百ボルト前後、周波数を五十ヘルツ前後に維持しなけれ

ばなりません。

一方で、雨や風などの天候条件に左右されて出力が安定しない再生可能エネルギーが大

量に電力会社のネットワークに流れ込むと、電圧の急上昇・急低下などの影響が出て、電

力の品質管理が難しくなってきます。

こうした変化に対応するには、電力を供給する側と、ビルや工場、一般家庭など需要側

26

需要サイド

燃料電池

蓄電池

情報家電

空調

給湯

照明

通信

通信

制御

大規模発電

携帯電話

熱の

相互利用

蓄熱槽

太陽熱利用

電気の

相互利用

バイオマス

供給サイド

電気自動車

住宅用PV

スマートメータ

/サーバー

制御センター

送電線

配電線

変電所

住宅用蓄電池

FACTS機器

(N

EDO)

スマートグリッド

図⑩

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28 27

の双方向で電力の需給に関する情報のやり取りを密接に行う必要があり、それを可能にす

るシステムがスマートグリッド。エネルギーを賢く、無駄なく消費するシステムです。

電気の流れも、発電所から需要家への一方通行ではなく、再生可能エネルギーが需要家

のサイドに導入されますので、電気も双方向で流れることになり、災害で停電を余儀なく

されたときや計画停電のような非常時に、再生可能エネルギーによる電気や蓄電池にため

た電気を病院などの非常用設備に供給することも可能になります。スマートグリッドは、

災害時のライフラインとしても有効なシステムです。

スマートコミュニティ

こうしたエネルギーの効率的な利用にとどまらず、上下水道や公共交通システム、医療、

防災、ゴミ処理など地域を丸ごとスマート化する、情報通信技術を活用して、安全で安心、

快適な次世代のエネルギー・社会システムを構築しようというのがスマートコミュニティ、

あるいはスマートシティです(図⑪)。

そのベースとなるのがスマートグリッド、家を丸ごとスマート化するのがスマートハウ

ス、ビルを丸ごとスマート化するのがスマートビルです。

スマートハウス

スマートグリッド

スマートコミュニティ

エネルギー

エネルギー

上下水道

ゴミ処理

交通システム

図⑪

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スマートコミュニティ実証(国内)

再生可能エネルギーを効率的に活用するスマートグリッド技術の確立と、これを生かし

た都市づくりをスマートコミュニティとして構築するための、経済産業省の実証プロジェ

クトが、二〇一〇年度から横浜市、愛知県豊田市、けいはんな学研都市(京都府)、北九

州市の四か所で進められています(図⑫)。

被災地に…スマートコミュニティ構想

大津波によって、インフラをズタズタにされた被災地では、復興にどう取り組んでいく

かと悩む自治体に、企業などが、再生可能エネルギー等を取り込んだ新しい町づくりのコ

ンセプトとして、スマートグリッドやスマートシティ(スマートコミュニティ)などの街

づくり構想を提案しています(図⑬次ページ)。

被災地からすれば、荒廃した街が最も先進的な街に生まれ変わるのであれば、願っても

ないことですが、構想を持ちかける企業側にも、むろん計算が働いています。

全世界が注目する東日本大震災の被災地でのスマートコミュニティの実証は、格好のシ

【神奈川県横浜市】

大都市・大規模型

(再生可能エネルギー大規模導入(

の太陽光発電導入)、

スマートハウス(

世帯)・ビル導入、次世代交通システム

(次世代自動車

台))

横浜市、アクセンチュア、東芝、日産自動車、

パナソニック、

明電舎、東京電力、東京ガス

【福岡県北九州市】

[産業都市・特区的取組型]

(産業都市特区における、太陽光発電(

や水素エネルギーを生かしたスマートグリッド

網を中核とした、住民等地域全員参加のエネル

ギーエリアマネジメント実証)

北九州市、新日本製鐵、日本

、富士電機シ

ステムズ

【京都府けいはんなエコシティ】

[学研都市・新技術型]

(学研都市を対象とした、各家庭、ビル内においてエネ

ルギーを可視化してエネルギー制御を行う「ナノ・グ

リッド」による技術の実証)

関西文化科学研究都市推進機構、エネルギー情報化ワー

キンググループ、同志社山手サスティナブルアーバンシ

ティ協議会、京都府、京田辺市、木更津川市、精華町、

関西電力、大阪ガス

【愛知県豊田市】

地方都市・暮らし密着型

低炭素交通システム(V2X、IT

)の構築(次世代自動車

台)、

電気、熱、未利用エネルギー等エネル

ギーの有効利用)

豊田市、トヨタ自動車、デンソー、中

部電力、東方ガス、シャープ、トヨタ

ホーム、富士通、東芝、

、サー

クルkサンクス、三菱重工、豊田自動

織機、ドリームインキュベータ

スマートコミュニティ実証(国内)

図⑫

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ョーウィンドウになるからで、今後、スマー

トコミュニティやスマートシティが都市づく

りの標準になっていけば、超巨大市場が生ま

れる可能性があります。

電機、通信、住宅、交通、不動産など、幅

広い業種が加わることで、新たな産業やサー

ビスが生まれる可能性が大いにあります。

スマートコミュニティ関連のビジネスは、二

〇三〇年までの累積額で三千兆円に達すると

の試算もあります。国も、被災地でのスマー

トコミュニティの事業化を後押ししています。

むすび

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発

電所の事故を境に、エネルギー問題をめぐる

景色が激変、日本列島が電力不足に陥る中、将来にわたって基幹電源として強く期待されて

いた原子力発電の、安全性の問題がエネルギー政策の最重要テーマとして浮上しました。

大震災までの民主党政権は、「ゼロエミッション電源」、つまり発電時に二酸化炭素を排

出せず、地球環境への負荷がきわめて少ない原子力発電と再生可能エネルギーを推進する

エネルギー政策を展開してきたわけですが、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故

によって「白紙からの見直し」を迫られたわけです。

今、「白紙からの見直し」と申し上げましたが、当時の菅首相は、端から「脱原発」を

唱え、冷静に進めるべき議論を、過激な言動で原子力発電に「賛成か」「反対か」のイデ

オロギー論に誘導し、議論が混迷する原因をつくってしまいました。

イデオロギー先行の議論が繰り広げられている中で現実的な判断、現実的な議論は退け

られ、そうこうしているうちに国内五十基の原子力発電所が全面ストップ、「原発ゼロ」

の状況下で、安全性の問題が夏の電力需給の問題にすり替わり、「足りる」「足りない」の

神学論争の様相を呈しております。

あれだけの事故が起きたわけですから、原子力発電の問題は徹底的に議論すべきですし、

需給がいかに厳しくとも安全性の議論をクリアできないのなら、この夏を原発ゼロで迎え

被災地に…

スマートコミュニティ(シスマートティ)構想

富士通→会津若松スマートシティ構想+会津若松市・東北電力(福島県)

NEC→ 以上の自治体(3県)

IBM→仙台市(宮城県)

日立製作所→仙台市(宮城県)

東芝→石巻市(宮城県)

三井物産→東松島市(宮城県)

トヨタ自動車→大衡村(宮城県)

「気仙広域環境未来都市構想」陸前高田市・大船渡市・住田町(岩手県)

みやぎスマートシティ連絡会議

宮城県+沿岸 市町

図⑬

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ることもやむを得ないと思います。

が、野田政権は大飯原子力発電所の三・四号機を「動かす」と決断しました。

ならば、労を惜しまず徹底的に説得の努力を尽くすべきなのですが、野田首相、枝野経済

産業相、細野原子力事故担当相の関係閣僚は、五月のゴールデンウイークを外遊と休暇に充

て、誰ひとりとして福井、京都、滋賀、大阪に足を運ばず、しっかり休養をとっていました。

話が脱線しました。エネルギー論議が原子力発電の賛否に偏り、それ以外の問題になか

なか関心が向かいませんが、東日本大震災後のエネルギー問題として論ずべきテーマはほ

かにもいろいろあります。

その一つが、最初に申し上げた、人々を狂気に駆り立てるガソリン不足の問題です。

再び危機が訪れたとき、しかもその危機の度合いは東日本大震災を上回るものである可

能性が高く、首都直下型地震や南海トラフ地震の発生がささやかれている中でその危機に

どう対処すべきかは、喫緊の課題となっていると言っても過言ではありません。

この問題は、民間の自助努力の範囲を超えており、国政をあずかる政治家が目覚めない

限り、話は前に進みません。

後半は、再生可能エネルギーについて話をさせていただきました。

原子力発電に未曾有の逆風が吹く中、再生可能エネルギーへの期待は、実力を大きく超

えるまでに高まっており、七月からスタートする全量買い取り制度の後押しもありますの

で、再生可能エネルギーの普及に弾みがつくことは間違いありません。

しかし、再生可能エネルギーには、依然として「高いコスト」、「低い稼働率」、「系統連

系」といった課題を抱えており、コストについては全量買い取り制度がカバーしてくれる

にしても、その間に政策支援なしに自立できる水準までコストを下げられるよう、技術開

発や生産コストの低減努力などを進めていく必要があります。

このように再生可能エネルギーには課題が依然残されていますが、東日本大震災を機に、

災害に強い分散型電源として脚光を浴びており、巨大地震で壊滅的な打撃を受けた沿岸部

の被災地を中心に、エネルギーの地産地消やエネルギーの効率的利用を狙ったスマートグ

リッド、さらには社会インフラの整備も一石何鳥もの効果を狙ったスマートコミュニティ

(スマートシティ)構想があちこちで浮上、具体的にどんな形のコミュニティ、あるいは

都市が出来上がっていくのか、楽しみです。

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講 師 略 歴

河原

雄三(かわはら 

ゆうぞう)

コラムニスト、ジャーナリスト

略 

1952年 

宮城県塩竈市生まれ

1975年 

慶應義塾大学法学部法律学科卒

1977年 

慶應義塾大学法学部政治学科卒、時事通信社入社(※1)

(※1)

経済記者として、大蔵省、通産省、外務省、農水省、自民党、

 

  

エネルギー産業、金融機関、ハイテク産業などを担当。

1995年 

時事通信社退職、フリーに(※2)。第一線の経済記者らで構成する

「産業問題研究会」主宰。

(※2)新聞、雑誌などに解説、論文、コラム、書評などを執筆。

2002年 

東北電力「原子力の安全と信頼に関する顧問会議」委員

2003年 

資源エネルギー庁「新エネルギー産業ビジョン検討会」委員(~2004年)

2007年 

日本ミルクコミュニティ「ミルクコミュニテニィ委員会」座長(~2008年)

政府の「バイオマス・ニッポン総合戦略推進アドバイザリーグループ」委員

(~2009年)

独立行政法人 

農畜産業振興機構「評価委員会」委員

独立行政法人 

農畜産業振興機構「補助事業に関する第三者委員会」委員

以 

36 35

以上、「東日本大震災後のエネルギー問題」ということで、埋もれている問題や、最近

の話題などを取り上げてみました。

ご清聴ありがとうございました。

(本稿は、平成二十四年五月、青森市において先生が講演された内容を要約し、一部加

筆したものです。

文責 

広報部)