総説 隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変...

25
731. はじめに 宇宙空間に存在する星間物質(恒星間に存在す るガスや塵)の主成分は水素(H),次いでヘリウ ム(He),その次に豊富な元素は炭素(C),窒素 N),酸素(O)である。星間物質の中でも密度が 濃く低温(10–30K)である領域は星間分子雲と呼 ばれ,気相反応による単純な分子の生成,続く氷 微粒子表面での化学反応や紫外・宇宙線によるエ ネルギー照射により,複雑な分子の生成が促進さ れる場となった(Ehrenfreund and Charnley, 2000)。 これら星間分子雲の一部は収縮して原始太陽系星 雲を生じ,中心に生まれた原始星の周りを回転す る原始惑星系円盤となり,円盤内のガスと塵が集 積して微惑星から惑星が作られ,その結果,太陽 系が誕生した。 46 億年前に太陽系が誕生する過程で形成さ れた地球外有機物は,惑星に成長できなかった微 惑星(小惑星)=隕石,の成分として保存された Anders, 1991)。他の一部の有機物は彗星や惑星 間塵中にも含まれているが,研究対象として我々 が最も入手可能な地球外試料は隕石である。隕石 中の有機物の研究が始まったきっかけは,アミノ 酸に代表される生体関連分子が宇宙でどのように 形成されたのかという,生命の起源と化学進化に 纏わる研究興味であったことは多くの人々の知る ところであろう。1969 年に落下した Murchison 石から,試料に固有であると判断され検出された Res. Org. Geochem. 23/24, 73-97 (2008) 2007 年度田口賞受賞〕 総説 隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明 薮田ひかる ** 2008 4 1 日受付,2008 7 22 日受理) Abstract Organic compounds in chondritic meteorites are the products of a complex history that began in dense molecular clouds and the diffuse interstellar medium. This primordial materials were subsequently modified during the formation of the protoplanetary disk, and during the formation and alteration of the meteorite parent bodies. Insoluble organic matter is a complex and heterogeneous macromolecular material that accounts for a major portion of the organic carbon in chondrites. Recent analyses of the insoluble organic matter from a range of chondrites spanning the major groups (CM, CI, CR, CV, CO, ungrouped C2, ordinary, enstatite) and petrologic types 1 – 3+ have revealed that the organic matter clearly records the history of chemical processing on the meteorite parent bodies. This review first introduces the chemical characteristics of the insoluble organic matter from the well-studied CM2 chondrites, and then highlights the molecular and isotopic variations of the insoluble organic matter in different meteorite groups which could be indicators of aqueous alteration and/or thermal metamorphism on the meteorite parent bodies. Determining the chemical history of parent body alteration through molecular and isotopic analyses of meteoritic organics ** カーネギー研究所・アメリカ合衆国 5251 Broad Branch Rd., N.W., Washington DC, 20015 USA現所属:大阪 大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町 1-1 e-mail: [email protected] Hikaru Yabuta : Geophysical Laboratory, Carnegie Institution of Washington 5251 Broad Branch Rd., N.W., Washington DC, 20015 USA; Present address: Department of Earth and Space Science, Osaka University 1-1 Machikaneyama, Toyonaka, Osaka, 560-0043 JAPAN

Upload: others

Post on 01-Feb-2020

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

-73-

1. はじめに

 宇宙空間に存在する星間物質(恒星間に存在するガスや塵)の主成分は水素(H),次いでヘリウム(He),その次に豊富な元素は炭素(C),窒素(N),酸素(O)である。星間物質の中でも密度が濃く低温(10–30K)である領域は星間分子雲と呼ばれ,気相反応による単純な分子の生成,続く氷微粒子表面での化学反応や紫外・宇宙線によるエネルギー照射により,複雑な分子の生成が促進される場となった(Ehrenfreund and Charnley, 2000)。これら星間分子雲の一部は収縮して原始太陽系星雲を生じ,中心に生まれた原始星の周りを回転する原始惑星系円盤となり,円盤内のガスと塵が集

積して微惑星から惑星が作られ,その結果,太陽系が誕生した。 約 46億年前に太陽系が誕生する過程で形成された地球外有機物は,惑星に成長できなかった微惑星(小惑星)=隕石,の成分として保存された(Anders, 1991)。他の一部の有機物は彗星や惑星間塵中にも含まれているが,研究対象として我々が最も入手可能な地球外試料は隕石である。隕石中の有機物の研究が始まったきっかけは,アミノ酸に代表される生体関連分子が宇宙でどのように形成されたのかという,生命の起源と化学進化に纏わる研究興味であったことは多くの人々の知るところであろう。1969年に落下したMurchison隕石から,試料に固有であると判断され検出された

Res. Org. Geochem. 23/24, 73-97 (2008) 〔2007年度田口賞受賞〕

総説隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明*

薮田ひかる**

(2008 年 4月 1日受付,2008 年 7月 22日受理)

Abstract

 Organic compounds in chondritic meteorites are the products of a complex history that began in dense molecular

clouds and the diffuse interstellar medium. This primordial materials were subsequently modified during the formation

of the protoplanetary disk, and during the formation and alteration of the meteorite parent bodies. Insoluble organic

matter is a complex and heterogeneous macromolecular material that accounts for a major portion of the organic

carbon in chondrites. Recent analyses of the insoluble organic matter from a range of chondrites spanning the major

groups (CM, CI, CR, CV, CO, ungrouped C2, ordinary, enstatite) and petrologic types 1 – 3+ have revealed that the

organic matter clearly records the history of chemical processing on the meteorite parent bodies. This review first

introduces the chemical characteristics of the insoluble organic matter from the well-studied CM2 chondrites, and

then highlights the molecular and isotopic variations of the insoluble organic matter in different meteorite groups

which could be indicators of aqueous alteration and/or thermal metamorphism on the meteorite parent bodies.

* Determining the chemical history of parent body alteration through molecular and isotopic analyses of meteoritic organics** カーネギー研究所・アメリカ合衆国 5251 Broad Branch Rd., N.W., Washington DC, 20015 USA, 現所属:大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町 1-1

e-mail: [email protected]

Hikaru Yabuta : Geophysical Laboratory, Carnegie Institution of Washington 5251 Broad Branch Rd., N.W., Washington

DC, 20015 USA; Present address: Department of Earth and Space Science, Osaka University 1-1 Machikaneyama,

Toyonaka, Osaka, 560-0043 JAPAN

-74-

薮田ひかる

有機分子は今日 400種を優に超え,それらの存在量と成分比および個別分子同位体組成が明らかとなった。また,アミノ酸光学異性体比の偏りが発見されるなど,不斉の起源の解明につながる結果も報告された。これらの成果の詳細については既に発表されている諸総説を参照されたい(Cronin

and Chang, 1993; Sephton, 2002; Gilmour, 2003;

Pizzarello, 2004; Pizzarello et al., 2006)。本分野の発展に伴い,生命を構成する材料は,隕石と共に原始地球に供給された地球外有機物であると指摘する科学者も多い(例えば Chyba and Sagan, 1992)。 21世紀に入り,隕石をはじめとする地球外物質中の有機物は,生命の起源研究の対象から発展し「惑星系の起源と進化に重要な役割を担った物質の一つ」としても飛躍的に注目を集めるようになった。つまり,原始太陽系形成初期で起こった様々な化学史を解明するのに,それらを記録している有機物を研究する価値が一層見出されてきたのである。 有機物を含む隕石は,コンドライトという,溶融や化学的な分別を受けていない始原的な隕石である。コンドライトは,隕石母天体の形成後に様々な化学・物理的プロセスを受けた。このプロセスを母天体変成といい,主な変成過程には,水質変成と熱変成が含まれる。水質変成は,母天体中の氷や鉱物の結合水が,短寿命核種による母天体内部の熱により溶けて液体の水になり,母天体表面に向かって移動する間に起こる種々の反応であると考えられている(DuFresne and Anders,

1962)。熱変成は,短寿命核種からの熱(Lee et al.

1976)あるいは外部からの衝突熱(例えば Stöffler

et al. 1991; Scott et al. 1992)などによる変成作用で

あると考えられている。これらの変成過程が起こった環境,期間,年代などは隕石によって異なり,その結果,隕石を構成する諸成分が有していたもともとの組成はきわめて多様に変化する。 母天体で受けた水質変成および熱変成の度合いを反映する隕石の化学組成や同位体組成の違いに基づき,コンドライトは隕石クラス,グループ,岩石学的タイプに分類される(Fig. 1)。Murchison

隕石は,中でも最も始原的なコンドライトの一つであるCM2という分類に属する。CM2は,隕石クラスが炭素質コンドライト,隕石グループが CM,

岩石学類分類がタイプ 2という意味である。CM2

コンドライトは一般に,有機炭素を約 2 wt%含むことが知られる。従来の隕石有機物研究では,有機地球化学研究の多くと同様,試料から有機物を分離して調べる手法をとってきたため,分離法により「可溶性」と「酸不溶性」の 2成分に区別される。前者はアミノ酸や炭化水素など水または有機溶媒で抽出可能な有機化合物を含み,全有機炭素の 3割弱を占める。後者はいわゆる“ケロジェン”様の構造未知な高分子量有機物で,有機炭素の残りの大部分を占める。勿論,両者共に重要な成分であるが,隕石有機物の主要部分に相当する不溶性有機物の化学特徴について明らかにすることは,原始太陽系で起こった諸過程と有機物の化学進化の関係を大局的に理解するための第一歩に値すると考える。したがって,本論文では始めに,初期より研究が最も行われてきた CM2コンドライト中の不溶性有機物の構造的,同位体的特徴について述べる。続いて,CM2コンドライト中の不溶性有機物と比較しつつ,様々な分類に属するコンドライト中の不溶性有機物の構造的,同位体的

Chondrites

Carbonaceous Ordinary Enstatite

R KCI CM CR CO CV CK CB CH H L LL EH EL

Class →

Group →

Petrologictype → Type 1 or 2 Type 3+

Fig. 1. Classification of chondrites (Krot et al. 2005),The meteorite groups (CI, CM, CR, CO, CV, Ordinary, Enstatite) and petrologic types 1 – 3+ (in black) are discussed in this review paper. Ungrouped C2 Tagish Lake meteorite is also discussed. The others in gray are not discussed. Reproduced by permission from Elsevier.

-75-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

バリエーションを説明し,母天体上の水質変成や熱変成が隕石有機物の化学進化にどのような役割を果たしたかを議論する。

2. 隕石中の不溶性有機物の精製・分離

 隕石中から不溶性有機物を精製,分離するには,隕石粉末に HCl/HF溶液を加え,室温から70℃程度の条件下で 12- 24時間攪拌する操作を数度繰り返すことによって全ての鉱物成分を溶かし,残った炭素質残渣を超純水,有機溶媒,CS2の順ですすぎ,乾燥させる。本法は堆積岩中のケロジェンを得るために有機地球化学的に確立された方法に基づいており,信頼性が高い。ただし,本法では,不溶性の硫化物(CrS, NiSなど)が残ったり,不溶性のフッ化物がしばしば二次的に生じることが問題点である。これら不溶性の無機物は,不溶性有機物の元素組成の誤差の原因となり,実験の種類によっては結果に支障をきたす場合もある。そこでこの問題を克服するために,Cody et

al.(2002)により開発された方法では,CsF/HF溶液が用いられた。フッ化物塩由来の F-は,広い温度・pH条件でケイ酸塩鉱物を溶かすことができる。処理には,有機物の加水分解等による変性を防ぐために室温および穏やかな pH条件下で行う配慮がなされ,強塩基性の CsF溶液に水と HFを加えて溶液の pHが 5 – 6程度に調整された。これにジオキサンを加えた混合溶液(2層の非混和液)を隕石粉末に加え,良く振ってからしばらく静置し,その後遠心分離する。すると,ケイ酸塩鉱物の溶解後,他の大部分の未反応無機物は溶液の底部に残るが,CsF/HF溶液より比重が軽く疎水性を持つ有機物は,CsF/HF溶液とジオキサンの境界面に浮き上がってくる。本法ではフッ化物が 2次的に生じることなく不溶性有機物を取り出すことができるので,非常に高純度の不溶性有機物を精製できる。固体 13C NMRで検出できる感度では,精製法の違いが不溶性有機物の化学構造の変化に影響を及ぼす恐れはないことが確認されている(Cody et al., 2002)。しかしながら,2つの精製法すなわち HCl/HF法と CsF/HF法では,同じMurchison隕石の不溶性有機物の炭素・窒素同位体比に誤差が見出されている(例えば Yang and

Epstein, 1983; Alexander et al. 1998; 2007)。各法に

よる不溶性有機物構造の抽出性あるいは変性の違いを反映しているのかもしれない。

3. 隕石中の不溶性有機物 vs.堆積岩中のケロジェン

 隕石中の不溶性有機物は,堆積岩中のケロジェンを精製する操作と同様な方法で得られることから,別名を“ケロジェン”,“ケロジェン様物質”とも言う。その起源物質と形成過程が堆積岩中のケロジェンと異なるのは言うまでもないが,両者の比較を行うことによって,地球外“ケロジェン”の化学特徴を浮き彫りにしてみる。 3.1. 元素組成 元素分析から,CM2コンドライト中の不溶性有機物の元素組成は C100H70N3O12S2(Hayatsu

et al. 1977),C100H48N1.8O12S2(Zinner et al. 1988),C100H52.7N2.9O25(Cody et al. 2002),C100H58.8N3.3O18.3

(Alexander et al. 2007)と見積もられている。始原的なコンドライトの不溶性有機物は,アモルファス炭素やグラファイトとはかけ離れた,H, O, Nを比較的豊富に含む炭素化合物であることが確認できる。 読者はご存知のように,有機地球化学分野では,ケロジェンや石炭の進化段階を評価するのに,H/Cと O/Cのプロットからなるファン・クレベレン図(van Krevelen, 1961)がよく使われる。Fig. 2は,様々な分類に属するコンドライトの不溶性有機物の H/C,O/Cをファン・クレベレン図と対比させたものである。図から,隕石中の不溶性有機物の H/Cは堆積岩中のケロジェンの値に比べて相対的に低いことが分かる。H/Cの低さは不溶性有機物構造の芳香族性が高いことを示している。熱変成をほとんど受けていないものが多いタイプ 1,2コンドライトの不溶性有機物で H/C=0.6 – 0.8(Alexander, et al. 2007)であり,H/Cの比較的高い堆積岩のケロジェンとは構造的にかなり異なることが分かる。 熱作用の増加によって H/Cが減少していく点では,隕石中の不溶性有機物も堆積岩中のケロジェンも似ている。熱変成を受けたタイプ 3以上の(3+)コンドライトでは,H/C=0.1 – 0.3と一段と低くなる(Alexander, et al. 2007)。Naraoka et

al.(2004)は,数種の CM2コンドライトの不溶性

-76-

薮田ひかる

有機物を室温から 800℃まで昇温加熱した後,どの試料のH/Cも加熱後に減少し,その値は著しく熱変成を受けたコンドライトの不溶性有機物の H

/Cに近づくことを示した。 一方で,隕石中の不溶性有機物のO/Cについては,堆積岩中のケロジェンとは大きく異なるバリエーションを表している。堆積岩中のケロジェンでは,H/Cの減少よりも先に O/Cの大幅な減少が見られる。これは,続成変化初期においてケロジェン構造の脱炭酸や脱水反応が起こるからである。ところが,隕石中の不溶性有機物では,H/Cがある程度まで(~0.3)減少してもO/Cの値はさほど変わらない。この相違は,隕石母天体上の変成過程が,水質変成や酸化といった,酸素原子の付加や含酸素官能基の形成等をもたらす種々の化学作用の組み合わせを含むからである。さらに,それらの作用で生じた酸素官能基のあるものは,その後に熱作用が増加しても脱官能基あるいは熱分解を受けずに,より安定な分子構造として残存するようである。

3.2. 同位体組成 Fig. 3は,CM2コンドライトの不溶性有機物と,化合物毎に区分された可溶性有機化合物 ,および地球表層圏の有機物について,炭素・水素同位

体比(δ13C,δD)を両軸にとったプロットである(Sephton and Botta, 2005)。概観として,隕石中の有機物の δ13Cと δDは地球起源(生物起源)の有機物のものと比べて重く,明らかに区別される。特に,重水素(D)に富むという特徴を太陽系内の反応機構で説明することは難しい。Dの濃集を解釈する主要な考え方には,極低温(10K)下での気相でのイオン-分子反応(例えば Geiss and Reeves,

1981)またはダスト表面反応(例えば Nagaoka et

al. 2005)があり,このような環境に星間分子雲が考えられている。実際に ,(1)Murchison隕石中の不溶性有機物と星間物質中の難揮発性有機物の赤外スペクトルが互いに似ている(Pendleton et al.

1994),(2)星周塵がコンドライト隕石や惑星間塵から見つかり,星間物質が太陽系形成過程を生き延びた証拠が得られている(Nittler, 2003; Zinner,

2003),(3)コンドライト隕石中のプレソーラーダイヤモンドに対する不溶性有機物の相対量が複数の隕石試料についてほぼ一定である(Alexander

et al. 1998)という証拠に基づき,隕石中の有機物はおそらく星間起源である(Robert and Epstein,

1982; Yang and Epstein, 1983; Alexander et al. 1998)という考え方が優位である。 タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物と可溶性有機化合物の同位体比分布が異なるのは注

Type I kerogen

Type II kerogen

Type III kerogen

ChondriteChondrite

0.0 0.1 0.2 0.3 0.40.0

0.5

1.0

1.5

H /

C

O / C

● Type 1, 2 chondrite

□ Type 3+ chondrite

Fig. 2. The atomic O/C vs H/C ratios for the insoluble organic matter (IOM) from the various chondrites. The apparent evolution of the IOM is distinct from the evolution seen for terrestrial kerogens (van Krevelen, 1961). Oxidation appears to be an important process during parent body processing. Original data for IOM were from Alexander et al (2007). Reproduced by permission from Elsevier.

Fig. 3. The distinction between stable carbon and hydrogen isotope ratios in Murchison CM2 meteorite and terrestrial organic matter. The difference allows abiogenic extraterrestrial organic matter to be distinguished from its terrestrial biological counterpart (Sephton and Botta, 2005). Reproduced by permission from Cambridge University Press.

Insoluble organic matter

Meteoritic organic matterMeteoritic organic matter

Terrestrial organic matterTerrestrial organic matter

-1000

2500

2000

1500

1000

500

0

-500

-80 0 02 04-20-40-60

δ13C (‰)

δD(‰)

-77-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

目すべき点である(Fig. 3)。両者の前駆物質や生成過程に関係性があるのかについて,詳しいことはまだ明らかになっていない。しかし,CM2コンドライト中の不溶性有機物の含水加熱生成物として検出された,1,2環からなる芳香族炭化水素(PAHs)と,隕石粉末の溶媒抽出液から検出された対応する PAHs の個別炭素同位体比 δ13Cが非常に類似することが報告された(Sephton et al.

1998a)。彼らはこの研究から,PAHsなどの一部の可溶性有機化合物は,不溶性有機物を構成する成分と共通の前駆物質を持つ可能性があると結論づけている。また,これらの PAHsや,他の可溶性化合物の個別炭素同位体比分析では,炭素原子 1,2個の違いで大きな同位体分別を示す(Sephton,

2002, Pizzarello et al. 2006)。これは,星間分子雲などの極低温環境での反応に由来する特徴であると考えられている(Langer et al. 1984; Taylor and

Dickman, 1989, Sephton and Gilmour, 2000)。 δ15Nがとる値の範囲は,地球起源(-20 – 20‰)(Rundel et al. 1989)と同等の値から 415‰(CM2

コンドライト(Bells))(Alexander et al. 2007)までかなり幅広いため,単一の反応機構による説明は困難であるが,窒素を含む少なくとも一部の有機物は星間起源である可能性が示唆されている(Alexander et al. 1998)。近年では,2次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectroscopy, SIMS)を利用して,炭素質コンドライトのマトリックス(Nakamura-Messenger et al. 2006)および不溶性有機物(Busemann et al. 2006)をサブミクロン領域ごとに分析すると,有機物の異常に高い水素同位体比(δD=1800 – 8100‰(Nakamura-Messenger et

al. 2006),1740 – 19400‰(Busemann et al. 2006))と窒素同位体比(δ15N=200 – 1000‰(Nakamura-

Messenger et al. 2006),410 – 3200‰(Busemann et

al. 2006))が局所的に検出されたことが報告されている。これらの値から,星間分子雲などの低温環境で形成された有機物の同位体組成の一部は,後に原始太陽系星雲や隕石母天体で起こった変成過程の影響を受けることなく,そのままの組成を保持できたのではないかと考えられている。 3.3. その他の特徴 CM2コンドライト中の不溶性有機物のアルカ

リ酸化銅分解を行った研究では,ヒドロキシ安息香酸などをはじめとした芳香族酸が主な分解生成物として検出された(Hayatsu et al., 1980)。不溶性有機物の分解生成物の中には,石炭,腐植物質,リグニンなどをアルカリ酸化銅分解して得られるp-ヒドロキシベンゼン,4-ヒドロキシ-1, 2-ベンゼンジカルボン酸,4-ヒドロキシ-1, 3-ベンゼンジカルボン酸なども含まれる一方で,これらの相対量や分布は石炭などのもとのは非常に異なることが判明した。特に,メトキシ基(-OCH3)を含む化合物は一切検出されなかったという点で,地球表層圏の巨大分子有機物と明らかに区別される構造特徴である点が指摘された。 また,電子常磁性共鳴法(Electron Paramagnetic

Resonance, EPR)を使った研究では,検出されるスピン濃度の温度依存性が,タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物と石炭とでは異なることが示された(Fig. 4)(Binet et al., 2002, 2004a, b)。この結果は,石炭やケロジェンが温度に影響されないキュリー常磁性の電子構造しか持たないのに対し,タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物はキュリー常磁性の他に,熱的に 3重項励起する性質を持った反磁性の電子構造を含むことを示唆した。このような性質を持つものとして,ジラジカル性を持ったジラジカロイド構造の存在(Fig. 4)が提案されている。

4. 隕石中の不溶性有機物の構造変化と母天体変成過程との関係

4.1. CM2コンドライト中の不溶性有機物の構造特徴

 CM2コンドライト中の不溶性有機物の構造分析研究は今日まで長く行われてきた。その構造特徴は,様々な隕石グループの不溶性有機物構造を比較する際の基準としても用いられることが多い。したがって本章ではまず,CM2コンドライト中の不溶性有機物の構造についてこれまでに得られた知見を包括する。 初期の熱分解研究によると,隕石粉末または分離された不溶性有機物の熱分解生成物をガスクロマトグラフィー質量分析計(Gas chromatography

- Mass spectrometry, GC-MS)で分析した結果,主に 1 – 4環までの PAHsおよび含酸素・窒素・硫

-78-

薮田ひかる

黄芳香族化合物が同定された(例えば Levy et al.,

1973; Holzer and Oro, 1979; Shimoyama et al., 1991;

Komiya et al., 1993)。これらの結果は,CM2コンドライト中の不溶性有機物を構成する炭素の多くが芳香族環系に存在することを示している。その後,種々の応用研究が行われ,含水熱分解法による分解生成物の高収量化(Sephton et al., 1998a;

1998b),酢酸(Oba and Naraoka, 2006)およびジカルボン酸や高極性芳香族化合物(ヒドロキシキノリン,ベンゾイミダゾールなど)(Yabuta et al.

2007)といった水溶性熱分解生成物の同定,水素化熱分解法による 5,6環 PAHsの同定(Sephton et

al., 2004)が報告されている。 化学分解研究では,二クロム酸酸化でアルキル基に結合している 1 – 4環 PAHsの存在が同定されたのを始め(Hayatsu et al., 1977),先述したアルカリ酸化銅分解(Hayatsu et al., 1980)により,CM2

コンドライト中の不溶性有機物はフェノール基やアリール基などの芳香族炭素がエーテル結合をした構造単位を有することが示唆された。また,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を添加したメチル化熱分解(Remusat et al. 2005a)により,1,2環の芳香族酸や炭素数 4と 5からなるジ

カルボン酸エステル,およびメトキシ芳香族酸がGC-MSで同定され,芳香族炭素や短鎖のアルキル基がエステル結合やエーテル結合を介した構造部位が存在すると報告された。また,四酸化ルテニウム分解により,ジカルボン酸(Remusat et al.

2005b)およびモノカルボン酸(Huang et al. 2007)が GC-MSで同定され,芳香族炭素間を架橋する,あるいは芳香族炭素の側鎖として置換した,炭素数 2から 9 の直鎖・分岐鎖アルキル基の存在がそれぞれ明らかとなった。 上に挙げた熱・化学分解法による破壊分析では,高分子量有機物を構成する断片についての構造情報を分子レベルで得ることができる。一方で,非破壊分析では,高分子量有機物のほぼ全体における構造情報を平均化して観測することができる。固体核磁気共鳴(Nuclear Magnetic

Resonance, NMR)は,高分子量有機物中の官能基分布を定性・定量的に評価するのに最も効果的な非破壊分析の一つである。NMRでは,原子核の核スピンが強い磁場に置かれた時にエネルギーを吸収・放出する現象を観測する。核スピンに与えられる磁場は他の原子との化学結合のために周辺の環境によって異なるため,それが化学シフトと

Fig. 4. Temperature dependence of the spin concentration normalized to the value at 100K for the insoluble organic matter (IOM) of the Orgueil and Murchison meteorites and the terrestrial coals (A1, A2, and A3). Note that the profiles for meteorites and coals differ above 120K. The increase in spin concentration above 120K is assumed to indicate that meteoritic IOM contains diamagnetic moieties with thermally accessible triplet state (TATS), in addition to radicals with Curie type behavior. Diradicaloids could be suggested as possible molecular structures for TATS. An example of diradicaloids with benzoquinodimethane was shown (Binet et al. 2004). Reproduced by permission from Elsevier.

-79-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

いう値の違いとして表れ,物質中の化学結合の種類と分布を同定・定量することができる。Cronin

et al.(1987)は,CM2コンドライト中の不溶性有機物構造における芳香族炭素の割合を固体 13C

NMRを用いて最初に見積もった。その後,より高磁場な固体 13C NMRの利用に伴い,Gardinier

et al.(2000)と Cody et al.(2002)によって同一の分析が再試された。これらの研究には,高分子量有機物の固体 NMR分析に有効な交差分極(Cross

Polarization, CP)-マジック角回転(Magic Angle

Spinning, MAS)法が適用されている。MAS法は固体 NMRに共通の手法で,固体が磁場におかれたときに生じる様々な分子の相互作用を打ち消すためにある決まった角度(54.7°)で試料を高速回転(10 – 12 kHz)させるというものである。CP法は,炭素核は磁場に対する感度が低く水素核は磁場に対する感度が良いという違いを利用して,炭素核と結合している水素核の磁化を炭素に移すことにより炭素のシグナル強度を効率的に増大させ

るという手法である(Hartmann and Hahn, 1962)。ここで重要なのは,磁化の移動時間(接触時間)の最適値は,分子中のC–H間の距離や分子の運動性によって異なるという点である。接触時間が短すぎると磁化の移動が十分でなく,長すぎても磁化が減衰して感度が低くなる。Cody et al.(2002)は,接触時間を変えながら試料を分析して得られたシグナル変化から,CM2隕石中の不溶性有機物に最適な接触時間は 3 msであることを明示した上で,過去の研究における定量の過小評価を改善した。ちなみに堆積岩中のケロジェンや石炭に最適な接触時間は 1 msであり,この違いは隕石中の不溶性有機物がケロジェンなどよりも水素原子に乏しい構造からなることを反映している。CP

MAS法で測定を行う多くの場合,高速回転による磁化速度の低下とシグナル強度の減少を防ぐために,1H振幅の強度に変調を加える VA(various

amplitude)-CP法が適用されている(Fig. 5)。 CP法では,その原理からも分かるように,検

VACP MAS (12 kHz)13C NMR

Solid State NMR experiment

SP fast MAS (26 kHz)1H NMR

SP MAS (12 kHz)13C NMR

VACP MAS (4 kHz)13C NMR with interrupted decoupling

(Fig. 5, Yabuta)

Information Combined yields

Carbon functional groups proximal to hydrogen

All detectable carbon functional groups

Variation in average aromatic substitution

Fraction of AR-C + AR-H

Fraction of AR-H + Ali-H

Quantity of Large PAHs

Average degree of aromatic substitution

Average structure of aliphatic chain branching

= Average structure

VACP MAS (4 kHz)13C NMR with and without 1H decoupling

+

+

Fig. 5. Scheme of the solid state nuclear magnetic resonance (NMR) experiment. The five independent, complementary experiments better refine the structure picture of meteoritic insoluble organic matter. AR-C; aromatic carbon, AR-H; hydrogen atom attacked to aromatic carbon; Ali-H; hydrogen atom attacked to aliphatic carbon. Credit: Dr. George Cody, Carnegie Institution of Washington.

-80-

薮田ひかる

出する炭素核は水素核の近傍に存在する必要がある。言い換えると本法では,高度に共役した芳香族構造に存在する 4級炭素のような,水素から遠く離れた炭素の検出は難しい。Cody et al.(2002)はこの点も考慮し,CP法と併せてシングルパルス(Single Pulse, SP)法でも測定を行った。SP法は長い測定時間を費やし感度も低下するが,分子中の全ての Cを検出する。彼らは,両方法による結果がほぼ同じであることを確認し,CM2コンドライト中の不溶性有機物を構成する芳香族炭素のサイズは 1 – 6環程度であると結論づけた。本研究ではその他に,接触時間の直後に遅延時間を設け,その間にデカップリングを切ることにより,Hに結合したCに比べて緩和の遅いC–Cの信号を選択的に観測する Interrupted decoupling法(安藤,1994),また 1Hデカップリングのある場合とない場合とのスペクトル比較による芳香族炭素の結合

状態の定量評価,さらに 1H NMRによる水素の結合状態(-CH3, -CH2, -CH, 芳香族)の定量評価,を総合的に行った(Fig. 5)。その結果,CM2コンドライト中の不溶性有機物の構造は「比較的小さな芳香族炭素のユニットを約 50 – 60%と最も豊富に含み,その間を短い分岐鎖に富んだ脂肪族炭素(約 20%)と酸素を含む官能基(カルボニル,エーテル結合等)(約 20%)が多様に架橋している」との結論が得られた。本結論は,個々の熱・化学分解研究が提示していた広範な知見を平均化し,定量的に整理した形といえる。

4.2. タイプ 1,2のコンドライトに含まれる不溶性有機物の構造変化と母天体変成過程との関係

4.2.1. 水質変成度の評価 鉱物学的研究から,タイプ 1,2コンドライトの多くは低温条件下(<150℃)での水質変成を経験したことが明らかにされている(Zolensky, 1984;

Clayton and Mayeda, 1984, 1999; Leshin et al. 1997;

Brown et al. 2000; Benedix, et al. 2003; Guo and Eiler,

2007)。Fig. 6に,タイプ 1,2に属し隕石グループの異なる CR2(EET92042),CI1(Orgueil),CM2

(Murchison),および未分類(C2)コンドライトのTagish Lake隕石のそれぞれから分離した不溶性有機物の固体 13C NMRスペクトルを示した(Cody

and Alexander, 2005)。図から,脂肪族炭素の割合が CR2> CI1> CM2> Tagish Lakeとなっているのが分かる。この順位は隕石母天体上での水質変成に伴う酸化作用の増大(CR2< CI1< CM2<Tagish Lake)を反映すると考えられた。本研究では,考えられる酸化体として,母天体に存在する氷または水に紫外線が照射し生じた H2O2が,液体の水に存在するFe2+とフェントン反応を起こすことによって生じるヒドロキシラジカル(Fe2++HOOH→ Fe(OH)++• OH)であろうと議論している。この • OHは不溶性有機物中の脂肪族 CH2基のプロトンラジカルを引き抜く。その結果 • CHとなった炭素原子は,連続する • OHとの反応でアルコール→ケトン→カルボキシルへと酸化され,さらに酸化が進めば遊離のカルボン酸もしくは CO2

となって放出されるだろう。4つの隕石グループのうち,Tagish Lake隕石は著しく水質変成を受けたことが鉱物学的にも明らかにされている(例

Aqueous alteration (C

hemical oxidation)

CR2

CI1

CM2

Tagish Lake

13C Chemical Shift (ppm)400 300 200 100 0 -100 -200

Aromatic

COORC=O

CH3

CH2+CH

CHxO

Fig. 6. Variable amplitude (VP) cross polarization (CP) magic angle (MAS) 13C NMR spectra of the insoluble organic matter from CR2 (EET92042), CI1 (Orgueil), CM2 (Murchison), and Tagish Lake meteorites. The spectral regions corresponding to various carbon functional groups are noted at the top. The spinning side bands (SB) are derived from incomplete averaging of the chemical shielding anisotropy associated with aromatic carbon (Cody and Alexander, 2005). Reproduced by permission from Elsevier.

-81-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

えば Brown et al. 2000; Zolensky et al. 2002)。また,Tagish Lake隕石中の可溶性有機化合物の分析では,検出された化合物の総量におけるモノ,ジカルボン酸の割合が他の炭素質隕石よりも豊富であることが分かっている(Pizzarello et al. 2001)。これらの知見からも,Tagish Lake隕石中の不溶性有機物に含まれる脂肪族炭素の割合が最も少ない結果は上のメカニズムで説明できる可能性が示唆される。また,Cody and Alexander(2005)では酸化作用の度合いはCI1<CM2と評価されたが,含水量および含水鉱物分布から評価される水質変成の度合いは CM2< CI1であるのが従来の定義である(例えばNagy et al. 1963; Zolensky and McSween,

1988)。この,一見矛盾する順位の逆転は,フェントン反応が低温条件ほど進行しやすい(Farias et

al. 2007)ことを考慮すれば説明できるかもしれない: CI1(100 – 150℃)< CM2(0 – 25℃)(Clayton

and Mayeda, 1999)。水質変成は様々な要因(温度,圧力,酸素フガシティー,水 ⁄ 岩石比,pH, 水と有機物の化学反応,など)の組み合わせからなるプロセスであるので,得られたバリエーションはどの要因に最も反映されているかを見出す必要がある。Fig. 5の NMRスペクトルからは,脂肪族炭素の減少と共に芳香族炭素の増加も見られる。しかし,0 – 150℃で芳香族化が効果的に進行する可能性は考えにくいとして,NMRスペクトルにおいては脂肪族炭素が減少したことによる見かけ上の増加であると説明されている(Cody and

Alexander, 2005)。 著者の最近の研究では(Yabuta et al. 未公表資料,Organic molecular indicators of secondary processes:

Extensive pyrolysis survey of types 1 & 2 vs type 3

chondrite. in prep.),タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物の瞬間熱分解 GC-MSで生成する含硫黄化合物(アルキルチオフェン,ベンゾチオフェン)と含酸素化合物(フェノール,ベンズアルデヒド,安息香酸,アセトフェノンなど)の相対量がそれぞれ水質変成の指標として適用できる可能性を提示した。この研究では,水質変成の度合いは CM2(Murchison)< CM2(Cold Bokkeveld)< CI1(Ivuna)< Tagish Lakeと評価され,鉱物学的評価とほぼ一致する。Sを含む有機分子の生成には,母天体上のトロイライト(FeS)が水と反応

してマグネタイト(Fe3O4)を形成する際に共に生じる H2Sや HS- が関与する可能性を考えると,含硫黄化合物の相対量は母天体の含水量と関係している可能性が高い。Oを含む有機分子には,酸化や水の付加などによって生成したものもあれば,水質変成が起こる前に生じていたものもあるだろう。同位体的には,CI1,CM2,Tagish Lake隕石中の不溶性有機物の δ18Oの値と各コンドライトのマトリックスの δ18Oの値がそれぞれ互いに類似しており(Alexander et al. 2007),不溶性有機物を構成する含酸素官能基の多くは水質変成によって形成されたか,少なくとも一部の含酸素官能基はマトリックスと同位体交換を起こした可能性が見出されている。 最近では,タイプ 1,2のコンドライト中のアミノ酸の存在量または組成が水質変成を反映する可能性もより詳細に研究されている。アミノ酸の生成には,隕石母天体に存在した液体の水と,HCN,NH3,アルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物といった前駆物質との反応を要したと考えられている(Bunch and Chang, 1980; Peltzer,

et al. 1984; Cronin and Chang, 1993)。CI1コンドライトから検出されたアミノ酸の総量は CM2コンドライトから検出された量の 3分の 1以下で,その組成は CM2のものに比べて多様性が低いことが明らかにされている(Ehrenfreund et al. 2001)。Tagish Lake隕石中のアミノ酸はほとんど検出されなかった(Pizzarello et al. 2001)。一方で,CR2コンドライトの一つである EET92042隕石からは,これまでに報告された種々のタイプ1,2コンドライトの中で,最も豊富な量の,隕石固有のアミノ酸が検出された(Martins et al. 2007)。以上のバリエーションを総合すると,コンドライト中のアミノ酸の存在量や組成は,各隕石母天体が受けた水質変成の度合いを良く反映しているようである。不溶性・可溶性共に,隕石有機物の化学進化に水質変成のどの要因がどの程度関与しているのか,今後の解明が求められる。

4.2.2. 熱変成度の評価 タイプ 1,2のコンドライトの多くは熱変成を受けていない(Zolensky et al. 1997)。しかし中には,水質変成を受けた後,個々に特有の熱変成を

-82-

薮田ひかる

経験した CM2コンドライトがある。この種の熱変成は,穏やかな熱変成(250 – 400℃)から,タイプ 3+コンドライトが経験した温度より高温の熱変成(700 – 900℃)まで多岐にわたることが鉱物学的に明らかにされている(例えば Tomeoka et

al. 1989; Akai, 1992; Nakamura et al. 2006)。タイプ3+のコンドライトが受けたような約 1000万年スケールの長期的な熱変成とは異なり,短期的,局所的な衝撃変成を受けたものが多い。そのため,多様で独特な化学特徴を持つものが多く,個々の隕石が経験したプロセスを解釈するのは難易度が高い。熱変成を受けた CM2コンドライトは日本の調査隊が採取した南極隕石によく発見されており,これらの隕石に関する我が国の研究貢献は高い。 初期の研究では,熱変成をほとんど受けていない標準の CM2コンドライトからは種々の可溶性有機化合物が検出されているのに対し,熱変成を受けた CM2コンドライトからはほとんど検出されなかったという相違が見出された(Shimoyama

et al. 1979, 1985, 1986, 1989, 1990; Shimoyama and

Harada, 1984; Shimoyama and Shigematsu, 1994;

Naraoka et al. 1988, 1999)。また,6種の CM2コンドライトの不溶性有機物を示差熱天秤 GC-MSで分析した研究では,強度の熱変成を受けたものほど熱分解生成物量は少なかった(Shimoyama et al.

1991; Komiya et al. 1993)。本結果から,熱変成を受けていない CM2コンドライト中の不溶性有機物に含まれる比較的不安定な化学結合を有した構造が,熱変成の進行に伴って減少し,不溶性有機物構造が“グラファイト化”していくと考察された。その後,Kitajima et al.(2002)は,10種のCM2コンドライトの不溶性有機物を瞬間熱分解GC-MSで分析し,トータルイオンクロマトグラム上の保持時間 5 min以降に検出される熱分解生成物の総量に対するナフタレンの割合が,不溶性有機物の“グラファイト化”の指標として適用できることを提示した。この“グラファイト化”は,標準の CM2コンドライトの不溶性有機物の H/Cと N/Cが加熱後に減少したことからも示唆された(Naraoka et al. 2004)。 書き添えておくと,“グラファイト化(graphitiza-graphitiza-

tion)”という記述は,熱変成を受けたCM2コンド

ライト中の不溶性有機物がグラファイトそのものに変化することを意味するのではなく,sp2炭素が高度に広がっていく構造変化を,グラファイトにも一部共通する構造特徴として表すために用いられたのだと思われる。また,グラファイトのCP

MAS 13C NMR測定は不可能である一方で,熱変成を受けた CM2隕石中の不溶性有機物の測定は可能である(いくつかの例外はある)(Yabuta et al.

2005)ことが分かっており,不溶性有機物中の炭素の共役度はグラファイトのものに比べればきわめて低いことが推測できる。熱変成で消失せずに残った,あるいは変成によって生じた一部の H,O,N原子が,増大した芳香族構造に結合していることも考えられる。隕石有機物のグラファイト化についてはラマン分光分析の章(4-3-2)で少し述べるが,最も激しい熱変成を受けたエンスタタイトコンドライト中の不溶性有機物構造でも,ようやくグラファイトが形成される開始点にあることが報告されている(Busemann et al. 2007)。 6種のCM2コンドライトの不溶性有機物を固体CP MAS 13C NMRで分析した研究からは ,熱変成を受けていない CM2では芳香族炭素に対する脂肪族炭素の割合が相対的に多く,熱変成を強く受けた CM2ではその割合が少ないことが明らかとなった(Yabuta et al. 2005)。また,この構造的バリエーションは,各不溶性有機物のH/Cとの間に相関があることが確認された。したがって,Naraoka

et al.(2004)が提示したように,不溶性有機物のH/Cが熱変成の指標であると考えると,脂肪族炭素は熱変成を受け,化学的に変化(消失あるいは芳香族化)した可能性が示唆される。Yabuta et

al.(2007)はさらに,隕石母天体上の水熱変成による不溶性有機物の構造変化を実験的に検証するために,熱変成を受けていない CM2コンドライト(Murray隕石)中の不溶性有機物の含水加熱実験(300℃,100 MPa,6日間)を行った。加熱前後の不溶性有機物の固体CP MAS 13C NMRスペクトルを比較した結果,加熱後に脂肪族炭素の減少,特にOやNなどのヘテロ原子が結合した脂肪族炭素の大幅な減少が見出された(Fig. 7)。 Cody and Alexander(2005)と Yabuta et al.(2005,

2007)の結果から,水質変成(酸化作用)によっても,熱変成によっても,不溶性有機物構造の脂肪

-83-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

族炭素が影響を受けることが明らかとなったが,加熱後の CM2コンドライトと Tagish Lake隕石の不溶性有機物の NMRスペクトルにおける脂肪族炭素の分布は厳密には同じではない(Fig. 7)。両者とも sp3炭素が減少している点では同じだが,Tagish Lake隕石の不溶性有機物ではヘテロ原子が結合した脂肪族炭素(CHx-(O, N))の割合が比較的優勢である。低温条件の水質変成と比較的高温条件の熱変成が不溶性有機物へもたらす反応メカニズムはそれぞれ別種であることが示唆される。

4.3. タイプ 3+のコンドライト隕石に含まれる不溶性有機物の構造変化と母天体変成過程との関係

 以上のように,コンドライトの不溶性有機物の構造分析によって,隕石母天体で起こった種々の

プロセスについて議論することができるようになったが,主に研究されてきたのは,前述したような,有機物を豊富に含むタイプ 1,2のコンドライトに限られていた。その他のコンドライト(タイプ 3+)は有機炭素含量が少ないため,十分な試料量(>20mg)を要する固体 NMRなどの構造分析法は適用困難で,研究が滞っていた。そうはいっても,原始太陽系における隕石有機物の進化を包括的に追跡するには,より多くの分類にわたるコンドライト隕石を研究する必要がある。それゆえに,有機炭素含量に乏しい試料でも測定が可能な微小分析技術が求められた。本章では,惑星物質科学分野での利用が今日めざましい 2種類の微小分析法を用いた,タイプ 3+コンドライトに含まれる不溶性有機物の熱変成度評価の研究を説明する。

Murray (Non-heated)

Tagish Lake

δD = 792‰δ13C = -15.7‰δ15N = 17.3‰

δD = -41‰δ13C = -18.6‰δ15N = -6.8‰

Murray (Heated)

Aromatic C: 0.58Aliphatic C: 0.17Aliphatic C-(O,N): 0.15Carbonyl: 0.10

Aromatic C: 0.80Aliphatic C: 0.08Aliphatic C-(O,N): 0.05Carbonyl: 0.07

Aromatic carbon(129 ppm)

C=O + COOR(200 ppm)

CHx(O, N)(60 ppm)

CHx(20 ppm)

Fig. 7. A comparative VACP MAS 13C NMR spectra of the insoluble organic matter (IOM) from non-heated Murray, heated Murray, and Tagish Lake meteorites. Fractional spectral intensities of different carbon functional groups and isotopic compositions in non-heated and heated Murray IOM are noted (Yabuta et al. 2007). Reproduced by permission from Meteoritics & Planetary Science, © 2008 by the Meteoritical Society.

-84-

薮田ひかる

 4.3.1. 走査型透過 X線顕微鏡を用いた X 線吸収端

近傍構造分光分析 走査型透過 X線顕微鏡(Scanning Transmission

X-ray Microscopy, STXM)による X 線吸収端近傍構造(X-ray Near Edge Structure, XANES)分光分析は,近年急速に発展を遂げているシンクロトロン放射光による微小分析技術の一つである(Kilcoyne et al. 2003)。STXM-XANESを実施できるビームラインは世界でまだ数少なく,日本の放射光実験施設にはまだ設置されていない分析装置で馴染みがないと思われるため,本法の原理を以下に簡潔に加える。 軟 X線領域(200–800 eV)は,C,N,O原子の1s 吸収端(C 1s:~285 eV,N 1s:~405 eV,O 1s:

~540 eV)をカバーしている。つまり,有機物中の C,N,O原子が軟 X線を吸収すると,原子の1s軌道(内殻軌道)から非占有軌道あるいはイオン化準位のすぐ上の準連続状態(例:π*軌道,σ*

軌道)へ光電子が励起する(Fig. 8)。この時にとりうる励起状態は原子間の結合すなわち分子の電子構造によって異なり,X線スペクトルの吸収端近傍領域に複雑な微細構造(XANES)として現れる。走査型透過 X線顕微鏡 STXMでは,C,N,O

原子の内殻軌道吸収端近傍のX線エネルギーで薄片試料を走査し,得られる X線透過像から微小量の有機物を識別することができる。これら 2つの

手法を併用することによって,試料のサブミクロン領域における有機物の官能基の分布を定性・定量的に評価することができる。測定時間は 1試料あたり 30 – 90 minが標準的で,NMRよりきわめて迅速で効率的である。 近年,STXM-XANESの適用によって,岩石学的分類がタイプ 2からタイプ 4までの,25種の異なるコンドライト隕石の不溶性有機物が分析された(Cody et al. 2008a)。一般に,C-XANESスペクトルでは,各官能基に由来する 1s→ π*遷移は比較的エネルギーの低い 285 – 290 eVの領域に見られ(Fig. 9),それ以上の,イオン化準位を越えた高いエネルギー領域では特徴のない幅広い吸収が見られるのが普通である。しかし,例外的に,グラファイトなどをはじめ,高度に共役した sp2炭素の直線あるいは平面構造(例えばグラフェン)の C-XANESスペクトルでは,1s→ σ*への遷移を表すフレンケル励起子(exciton)の鋭い吸収ピークが291.6 eVに現れる(Ma et al. 1993; Brühwiler et

al. 1995)。タイプ 1,2のコンドライトに含まれる不溶性有機物のC-XANESスペクトルには1s→σ*

excitonはほとんど検出されなかったが,タイプ 3

+のコンドライトの不溶性有機物の多くにおいては際立ったピーク強度で検出された(Fig. 9)。また,1s→σ*excitonのピーク強度は,鉱物学的に評価された熱変成度の順(タイプ 3.0< 3.1< 3.2<…. < 3.7< 3.8< 4.0)におよそ従い増加することが明らかとなった。さらに本研究では,Murchison

隕石(CM2)の不溶性有機物を 600℃,1000℃,1400℃で各 10秒間加熱したところ,温度の上昇に伴い 1s→ σ* excitonのピーク強度が高くなり,CV3.1コンドライトの excitonのピーク強度に近づくことが見出された。さらに時間を長くした加熱実験による exciton強度の速度論的解析が行われ,各隕石が母天体で経験した最高温度(℃)が見積もられた。本研究で得られた最高温度の値は,鉱物学的に見積もられた値の範囲内に良くおさまった。以上の結果より,軟 X線に特異な吸収特性を持つ不溶性有機物中の化学構造が,隕石母天体上の熱変成を測る新たな温度計として適用できることが提示された。 Cody et al.(2008a)では,1s→ σ* exciton以外の遷移シグナル(芳香族炭素の 1s→ π*,脂肪族炭

Fig. 8. Energy diagram of X-ray absorption process (Okajima, 2002). Reproduced by permission from The Surface Science Society of Japan.

-85-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

素の 1s→ 3p/s*,など)についても,熱変成度との相関があるかどうかを調べたが,タイプ 1,2のコンドライトとは相関があっても,タイプ 3+のコンドライトに及んで相関を与えるものはなかった。sp2炭素の共役の度合いが高くなる程,π結合(縦方向)より σ結合(横方向)の方がそれを直接反映しやすいため,1s→ π*遷移で表される芳香族炭素の定量性には限界があるのではないかと考えられる。 なお,幾つかのタイプ 3+コンドライトには,NMRで測定するのに十分な不溶性有機物量が得られたものもあるが,CP MAS法による測定は結果的に困難であった。このことは,炭素核が緩

和しにくい,C–H距離がかなり離れた分子構造を反映している。Cody et al.(2008a)はまた,タイプ 3+コンドライトの不溶性有機物に SP MAS

NMRを適用すると,芳香族炭素に起因する化学シフトが,タイプ 2コンドライトの場合に比べて低い周波数側へずれる(常磁性シフト)ことを報告している。この傾向は,π電子系を持つ電気伝導体の有機分子によく見られる(Rybaczewski et

al. 1976)。興味深いことに,この常磁性シフトとC-XANESの 1s→ σ* exciton強度との間に直線関係が見出された(Cody et al. 2008a)。本結果は,sp2

炭素が高度に共役するほど,その電子構造が絶縁性から導電性へ移行する様子を明確に示している。

Allende (CV3.6)

Isna (CO3.7)

Indarch (EH4)

Graphite

ALHA77003 (CO3.5)

Kaba (CV3.1)

Bishunpur (LL3.15)

Mokoia (CV3.2)

ALHA77307 (CO3.0)

Semarkona (LL3.0) ALHA77307 (CO3.0)

Semarkona (LL3.0)

Kaba (CV3.1)

ALHA77003 (CO3.5)

Allende (CV3.6)

Isna (CO3.7)

Indarch (EH4)

Graphite

Bishunpur (LL3.15)

Mokoia (CV3.2)

(eV) (eV)

Thermal m

etamorphism

Petrologic order

(a) (b)

Aromatic C1s→π*

Frenkel type exciton1s→σ*

Frenkel type exciton1s→σ*

Fig. 9. (a) C-XANES spectra of collection of type 3+ chondrites spanning the CO, CV, Ordinary (LL), and enstatite (EH) chondrites groups. A reference spectrum of graphite is included on top. Two peaks are highlighted. The first is at an energy of~285 eV and correspond to 1s-π* transition of carbon double bonded to carbon, e.g. olefinic and aromatic carbon. In the spectrum of graphite a sharp peak at 291.6 eV is observed that corresponds to 1s-σ* exciton. The presence of a peak at this energy is observed in many C-XANES spectra of the type 3.1+ chondrites. (b) The first derivative of the C-XANES spectra (from 289 to 300eV) highlighting the progressive development of the sharp 1s-σ* exciton across this range of type 3.0 chondrites (Cody et al. 2008a). Reproduced by permission from Meteoritics & Planetary Science, © 2008 by the Meteoritical Society.

-86-

薮田ひかる

4.3.2. 共焦点顕微ラマン分光分析 共焦点顕微ラマン分光分析もまた,有機物が経験した熱作用を評価するのに有用な微小分析法である。本法は,試料を単色光のレーザーで走査しながら,各ピクセル毎に試料の化学結合または結晶格子の振動様式に固有なラマン散乱光のスペクトルとして検出し,サブミクロン領域の分子構造または結晶状態についての情報を得る分析法である。有機物に関しては,高度に共役した sp2炭素の平面構造に由来する G-バンド(~1580 cm-1)と,無秩序なアモルファス構造に由来する D-バンド(~1360 cm-1)がスペクトル上に現れる。両バンドの中心波数・半値幅・ピーク強度比は,試料の構造秩序性,さらには試料が受けた熱作用の度合いを反映するパラメータとして適用できることが知られる(例えばWopenka and Pasteris, 1993; Ferrari

and Robertson, 2000)。一般に,熱作用をより受けた有機物ほど芳香族環の縮合が進行するが,それに伴い G-バンドの位置(ωG)は高い波数へシフトし,G-,D-バンド幅(ΓG ,ΓD)は共に狭くなり,D-,G-bandの強度の比(ID/IG)の値は大きくなる。普通(OC)(Quirico et al. 2003),CV(Bonal et al.

2006),CO(Bonal et al. 2007)コンドライトの各隕石グループにおいて,タイプ 3.0から 3.7まで細分類された各隕石粉末の粒片を顕微ラマン分光で測定した研究では,ΓD および ID/IG と,岩石学類タイプとの間にそれぞれ相関が見出され,熱変成の進行に伴う芳香族構造の秩序性の増加を示した。Busemann et al.(2007)は上のアプローチを拡張し,鉱物・岩石学的に分類された 51種の異なるコンドライトから分離された不溶性有機物の顕微ラマン分析を行った。彼らは,母天体変成作用との相関を総合的に研究し,どのパラメータがその評価に最適であるか調べた。その結果,ΓD,ΓG,および ωG はそれぞれ互いに相関し,さらに隕石グループ,岩石学類タイプ,不溶性有機物の元素組成(H/C,N/C),同位体組成(δ13C,δ15N),C-XANESの 1s→ σ* exciton強度といった他の母天体変成指標と良く相関したことから,隕石母天体上の熱変成の度合いを反映することが示された(Fig. 10a)。また,これらのラマンパラメータには,砂漠で見つかったいくつかの隕石が著しく受けた地上での風化作用も反映された。全体的にD-

バンドの方が G-バンドよりも相関性・再現性が良かったため,2つのバンドはそれぞれ異なるプロセス(温度・環境)を反映する可能性が議論されている。一方,ID/IG は岩石学類タイプ 3 – 3.4の順に増大し,熱変成度との相関があるように見えたが,最も熱変成を受けたタイプ 3.7 – 4の隕石で急激に減少した(Fig. 10b)。Ferrari and Robertson

(2000)によると,ID/IG はアモルファス構造がグラファイト構造へ遷移する過程における“ナノグラファイト”の形成までは増大するが,ナノグラファイトからグラファイトの形成が始まる途端に減少することが報告されている。ID/IG は熱変成度指標として適用するには限界があることが分かったが,グラファイト形成の開始点を決定するには有用な指標になることが新たに判明した。 個々のタイプ 3+コンドライトは,熱変成と同様に,様々な度合いの水質変成を経験したことが鉱物学的に明らかになっている(Brearley, 2006)。しかし,不溶性有機物の XANES・ラマン分析では,水質変成を受けた明確な形跡は検出されなかった(Bonal et al. 2006, 2007; Busemann et al.

2007)。この原因としては,水質変成で形成された有機物の構造特徴が,後に続く熱変成によって消し去られた可能性が高い。あるいは,本論文で紹介した XANES・ラマン分析では主に芳香族構造を観測しているため,水質作用に影響されにくい化学結合からは明確な知見が得られなかったとも考えられる。

5. 隕石中の不溶性有機物の同位体変化と母天体変成過程との関係

 3-2で述べたように,コンドライト隕石中の有機物は Dと 15Nに富み,おそらく星間分子雲起源あるいは太陽系外縁部で形成された物質に由来すると考えられている。けれども,その元々の同位体組成は原始惑星系円盤を経て原始太陽系が誕生する過程で変化し,隕石母天体上での変成作用によってさらに変化する。Alexander et al(2007)は,隕石有機物の同位体バリエーションと母天体変成過程との関係を解明する目的で,鉱物・岩石学的に分類された 76種の異なるコンドライトから分離された不溶性有機物の炭素,水素,窒素,酸素同位体組成に関する網羅的研究を行った。

-87-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

←Increas

ing therm

al metamorphism

(a)

(b)

Fig. 10. (a) H/C atomic ratios versus G band width (ΓG). Both parameters record affects of thermal metamorphism on the insoluble organic matter (IOM) and show a linear correlation. (b) ID/IG plotted as function of D band width (ΓD). The Raman trends observed in the IOM, roughly symbolized with the arrows, include an increase of the peak height ratio of D to G bands (ID/IG) with decreasing ΓG upon thermal metamorphism, and ultimately a steep decrease ID/IG with decreasing ΓG when graphitic domains in the IOM grow. These trends resemble those described for the transitions from disordered amorphous carbon through “nanocrystalline graphite” to graphite in terrestrial carbonaceous samples (Busemann et al. 2007). Reproduced by permission from Meteoritics & Planetary Science, © 2008 by the Meteoritical Society

-88-

薮田ひかる

5.1. 水素同位体比 まず,熱変成を受けていないタイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物における同位体バリエーションに着目してみる。前述の通り,構造分析からは CR2< CI1< CM2< Tagish Lakeの順に水質変成に伴う酸化作用が増大し,それに伴い脂肪族炭素の割合が減少すると考えられている。各不溶性有機物に相当する δDは,CR2(3002‰)>CI1(972‰)>CM2(777‰)>Tagish Lake(596‰)(Alexander et al. 2007)で,ほとんど変成を受けていない CR2隕石の δDが一番高く,水質変成を最も受けた Tagish Lake隕石の δDが一番低い(Fig.

11a)。また,同じ隕石グループでは δDの値はほぼ類似していることから,コンドライトの不溶性有機物の δDの減少は母天体変成過程に影響されることが強く示唆される。ここで,構造・同位体分析の結果を併せると,脂肪族炭素の割合が減少するにつれて δDが減少するということになり,豊富なDは脂肪族炭素構造に起因するのではないかと推測された(Alexander et al. 2007)。小惑星また彗星を起源に持つと考えられている惑星間塵の研究でも,脂肪族炭素が Dの主要なキャリアーであると議論されている(Keller et al. 2004)。 しかし,実際にはそれほどシンプルに結論づけられない理由がいくつか残る。“特異な CM2”として知られる Bells隕石の不溶性有機物の δD(とδ15N)は,標準の CM2コンドライトの値より遥かに高く,むしろ CR2コンドライトの値に近いことから(Fig. 11a),最も始原的な隕石の一つであると考えられている(Alexander et al. 2007)。けれども,Bells隕石の不溶性有機物の 13C NMRスペクトルパターンは標準の CM2隕石とほとんど同じで(Cody et al. 2008b),脂肪族炭素の割合と Dの間に特別な関係性が見出されない。一方,水質変成共に熱変成を受けていることが知られる普通コンドライト(タイプ 3+)の不溶性有機物からは,非常に高い δD(1917–6181‰)が得られている(Alexander et al. 2007)。この場合,熱変成を受けた隕石有機物の Dが始原的であるとは説明し難い。Yabuta et al.(2007)は,CM2コンドライトの不溶性有機物の含水加熱実験において,加熱前後の不溶性有機物の構造分析に加えて同位体分析も行った。その結果,不溶性有機物の δDは 792‰(加熱

前)から-41‰(加熱後)に大きく減少した(Fig.

7)。この研究では,加熱後に脂肪族炭素の減少が見出されている。しかし,δD=-41‰という値は地球上の水の値にほぼ近く,脂肪族炭素と共に D

が消失したと考えるよりも,実験に用いた水と不溶性有機物の構造の水素同位体交換が起きたと考える方が自然である。つまり本結果からは,隕石中の不溶性有機物と母天体上の水の同位体交換が起こりうる可能性が示唆される。この知見を応用すれば,水だけでなく母天体に存在したと考えられる H2,NH3などの化学種とも同位体交換が起こる可能性が考えられる(Alexander et al. 2007)。さらに,実際の母天体では,単純な実験系とは必ずしも同じでない条件下で同位体交換が起こると考えられるから,同位体比の正確な値は実験結果とは異なってくるだろう。隕石母天体が開放系か閉鎖系かの違いも同位体交換に影響をおよぼす要因となる可能性がある。以上から,豊富な Dは,それが始原的であることを示す場合の他に,もしかすると隕石母天体での変成作用によって生じる可能性を考慮すべきかもしれない。この議論についてはさらなる研究を要する。 5.2. 炭素同位体比 隕石中の不溶性有機物の δ13Cは,H/Cおよびラマンパラメータの ΓGとの間に相関が得られている(Alexander et al. 2007, Busemann et al. 2007)。H/Cおよび ΓGに伴う δ13Cの変化が,タイプ 1,2よりタイプ 3+コンドライトで顕著である点は(Fig.

11b),両タイプの隕石が互いに異なる種の母天体変成過程を経験したことの表れだろう。したがって,Fig. 11bにおける相関を 2通りに分けて考えてみる。 タイプ 3+コンドライト中の不溶性有機物の構造は,熱変成を受けて芳香族環の縮合が進むが,同時に熱クラッキングも起こると考えられる。この際に結合が開裂しやすいのは 12C-13Cよりも反応性の高い 12C-12Cである(Sephton et al. 2000)ことを考慮すると,熱変成が進行した隕石中の不溶性有機物ほど 13Cに富むことを説明できる。 タイプ 1,2コンドライトでは,C-C結合の開裂が起こるほどの高い温度を経験していないので,他の反応過程を要すると思われる。不溶性

-89-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

有機物の δ13Cは,Bells(-34.2‰)<CR2(-26.5

– -20.3‰)< CM2~ CI(-18.9 – -16.9‰)<Tagish Lake(-14.1‰)の順に重い(Alexander et

al. 2007)。これまでの諸研究に基づくと,Bells隕石を除き,水質変成を大いに受けた隕石ほど 13C

に富むことになる。しかし,本傾向は,含水加熱後に不溶性有機物の δ13Cが減少した実験結果(Sephton et al. 2003; Oba and Naraoka, 2006; Yabuta

et al. 2007(Fig. 7))とは逆であった。また,タイプ 1,2コンドライト中に比較的多く含まれる炭酸塩鉱物は 13Cに富む(δ13C=23 – 68‰)ことが報告されているが(Grady et al. 1988, 2002),これらの値と不溶性有機物の δ13Cとの間には相関がなかったため,不溶性有機物と炭酸塩鉱物との間で炭素同位体交換が起こった証拠は得られてい

ない(Alexander et al. 2007)。可溶性有機化合物のδ13Cもまた,不溶性有機物の δ13Cより高い値を示すものが多いが(Fig. 2),隕石母天体の水を介して可溶性有機化合物と不溶性有機物が相互作用した構造・同位体的根拠は十分に研究されておらず,両者の関係はよく分かっていない。以上の点を考慮すると,水質作用が 13Cの変化に直接影響を及ぼしている可能性は今のところ見出されていない。一方,有機分子に放射線や紫外線などのエネルギー照射を施すと δ13Cが高くなることが実験的に報告されている(Court et al. 2006, Oba and

Naraoka, 2008)。これらの研究は,タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物における δ13Cのバリエーションの解釈を助けるかもしれない。Court et

al.(2006)は固体のビチューメンを試料とし,放

δD

(‰)

H/C H/C

δ13

C (‰

)

(a) (b)

(c)

δ15

N (‰

)

N/C δ18O (‰) Organic

δ18

O (‰

) Mat

rix

Bells

Bells

Bells

CR(type 2)

OC (type 3) type 2

type 3

type 3

type 2 Bells

Tagish Lake

Tagish

(d)

Fig. 11. The elemental ratios vs. the isotopic compositions of H, C, N, and O (Alexander et al. 2007). There do not appear to be any simple systematic trends between elemental ratio and isotopic composition, except perhaps a rough inverse correlation between 13C and H/C, and a weak correlation between 15N and N/C in type 3 chondrites. Reproduced by permission from Elsevier.

-90-

薮田ひかる

射線照射後に δ13C の増加を見出した他,試料構造中の PAHsの環数の減少,PAHsに置換したアルキル基の減少,酸化度の増加を確認している。Oba

and Naraoka(2008)は,様々な化学結合の同位体分別を想定し,種々の低分子量有機化合物に紫外線照射を行い,どの化合物についても δ13Cが増加することを示した。彼らの研究で用いられた試料・照射条件は必ずしも地球外の条件に沿うものではないが,氷や水の存在下では照射による有機物の変成が進みやすい可能性を併せて考慮すると(4-2-1章),エネルギー照射による δ13Cの増加は,母天体上の水質変成の場においてもおそらく有利に起こったであろうと考えられる。 Bells隕石と他の CM2コンドライトの不溶性有機物の δ13Cが非常に異なる点を説明するのはチャレンジングである。Bells隕石の不溶性有機物はD

と 15Nに著しく富むことから最も始原的な隕石であると解釈されていることは述べたが,鉱物学的には,Bells隕石の水質変成度は他のCM2,CIコンドライトと変わらない(例えば Browning, 1996)。また,Bells隕石は強度の“brecciation(母天体が破砕される作用)”を経験しているが(Brearley,

1995),この作用が有機物の同位体異常に関与したかどうかは分かっていない。母天体あるいは太陽系星雲において他にも異例の変成過程を経た隕石ではないかと推測されている。 また,熱変成を受けた CM2コンドライトの不溶性有機物の δ13Cは,試料によって非常にばらつきが大きい(Alexander et al. 2007)。これらの不規則な同位体分布は,各隕石によって有機物の前駆物質が異なるのではないかとの印象を与えがちである。しかし,Alexander et al(1998)が提唱するように,異なる分類のコンドライトについてプレソーラーダイヤモンド ⁄ 不溶性有機物比がほぼ一定であることに基づき,コンドライトの起源は全て同じである,つまり変成を受けた隕石は始原的な隕石から進化した,という説を前提とすると,不規則な同位体組成は前駆物質の違いを示すというよりも,個々の隕石が独立したプロセスを経験したことを反映している,という解釈の方が適切であろう。

5.3. 窒素同位体比 コンドライト中の不溶性有機物の δ15Nの値は,基本的には,母天体変成の進行に伴い減少する傾向が見られた(Fig. 11c)(Alexander et al. 2007;

Busemann et al. 2007)。タイプ 3+コンドライトの多くでは,δ15Nの減少と共にN/Cも減少する傾向が見られ,熱変成の進行に伴い Nを失うと共に同位体比も減少すると解釈できる。一方,タイプ 1,

2コンドライトでは,隕石グループごとに δ15Nが大きく減少しても,N/Cはほとんど変化していない。 CM2グループ内では,不溶性有機物の H/Cにバリエーションがあるのに対して,N/Cはほぼ一定である(Naraoka et al. 2004)。それらの試料を加熱すると,H/C は大きく減少するのに対して N/Cはわずかしか減少しなかった(Naraoka et

al. 2004)。Alexander et al.(1998)と Sephton et al

(2003)は,隕石中の不溶性有機物は 2つ以上の成分に大別できると考えている:水熱作用で分解されやすい化学結合からなる 15Nと 13Cに富んだ成分と,分解後も残渣として残る 15Nと 13Cに乏しい成分である。CM2コンドライトの不溶性有機物の含水熱分解実験では,13Cよりも 15Nの遊離(放出)が早いことが明らかとなったことから(Sephton et

al. 2003; Yabuta et al. 2007),タイプ 1,2コンドライトの不溶性有機物の 15Nの大部分は,母天体上の水質変成で加水分解されやすいか,酸化されやすい結合で存在している可能性がある(Sephton et

al. 2003)。一方,15Nに富んだ成分のほとんどが含水熱分解で遊離しても,その割合は始めの窒素量の約 15%にすぎないことが明らかとなっている(Fig. 7, Yabuta et al. 2007)。 タイプ 1,2コンドライト中の不溶性有機物のδ15Nを大きい順に並べると,Bells(415‰)> CR2

(161 – 309‰)> Tagish Lake(73‰)> CI1(30.7 –

31.9‰)> CM2(-8.5 – 7.5‰)となる。Bells およびCR2コンドライトが始原的である可能性はδ15N

からも示唆される。しかしながら,それ以外の隕石グループについては,水質変成を反映した構造的・同位体的(δD,δ13C)変化の順とは一致しない。ここで考慮すべき点は,15Nの異常濃集領域の存在である(Nakamura-Messenger et al. 2006;

Busemann et al. 2006)。局所的な 15Nの異常濃集

-91-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

が,δ15Nのバリエーションを一部特殊なものにしている可能性がある。特に,Tagish Lake隕石のマトリックスからは有機質のナノグロビュールが発見され(Nakamura et al. 2002),その窒素同位体比は非常に高い(δ15N=200 – 1000‰)ことが報告されている(Nakamura-Messenger et al. 2006)。ナノグロビュールは親水性と疎水性の結合を両方有する小胞構造であると推測されていることから,その他の有機物構造に比べて水質変成を被りにくかった可能性もある(Busemann et al. 2006)。最近では,Bells隕石のマトリックス中の有機質ナノグロビュールから,より高い 15Nの異常濃集(δ15N

=500 – 2000‰)が検出された(Messenger et al.

2008)。

5.4. 酸素同位体比 各隕石中の不溶性有機物の δ18Oは,不溶性有機物の O/Cとも隕石のバルク δ18Oとも相関は得られなかった(Alexander et al. 2007)。酸素同位体には 16O,17O,18Oの 3種類が存在するので,δ17Oが得られないと正確な考察は難しいと思われる。しかし,それでも,CI1,CM2,Tagish Lake隕石中の不溶性有機物の δ18Oと各隕石のマトリックスの δ18Oとの間に 1:1の相関関係が得られていることから(Fig. 11d),水質変成との関連性を示唆する知見が得られている。Bells,CR2, 幾つかの CV

および OC隕石中の不溶性有機物の δ18Oは 1:1の直線上には乗らず,各隕石のマトリックスの δ18O

よりも高い値を与えた。このことは,水質変成過程における水 ⁄ 岩石比の違いを反映しているのかもしれない。

6. まとめ

 本論文では,コンドライト隕石中の有機物のうち主要な割合を占める不溶性有機物について,隕石の分類ごとの構造的,同位体的特徴を説明し,隕石有機物の化学進化が母天体上の水質変成や熱変成に大きく影響されることを述べた。構造分析研究においては,破壊,非破壊,微小分析といった種々の手法が適用されていることを紹介した。原理の異なる分析法を複数用いるアプローチは,試料の分子構造に関する共通の知見が得られるだけでなく,各方法が独自に検出できる構造情

報を組み合わせることによって母天体変成過程をより詳細に評価できるという利点があり,同位体組成のバリエーションを解釈する際にも非常に有効である。最近では,既知の隕石グループへの分類が難しい,ユニークな化学特徴を記録する未分類コンドライト(WIS91600隕石)が経験した歴史を評価する試みもなされている(Yabuta et al. 未公表資料,The mildly-heated C2 WIS91600 evaluated

through complementary analyses of the insoluble

organic matter. in prep.)。 そして微小分析法の利用によって,鉱物・岩石学的に異なる,より多くの分類に属する隕石の有機物研究が可能となり,隕石有機物の化学進化を総合的に議論することができるようになった。本論文で紹介した STXM-XANESや顕微ラマン分光は,隕石の他に,ミクロンサイズの惑星間塵の有機物分析(Flynn et al. 2003; Muñoz Caro et al. 2006)にも既に用いられている。また最近では,NASA

による彗星の塵のサンプルリターンミッション“STARDUST”における有機物分析でも適用された(Sandford et al., 2006; Cody et al., 2008c; 薮 田

2007, 2008)。日本でも,今日,太陽系小天体探査が続々と進行・計画されている。小惑星,彗星,宇宙塵といった貴重な地球外試料の有機物分析の実現に,これらの微小分析法が貢献できる日が待たれる。 今後は,隕石有機物の化学進化に密接に関与していると考えられる無機元素の役割を考慮し,原始太陽系における有機-無機共進化を研究することが,本研究分野にとっての次段階と思われる。また,本論文で挙げた分析法あるいは新たな手法を効果的に用いることで,隕石有機物の構造的,同位体的不均一性をこれまで以上に詳しく解析し,原始太陽系で起こった多様な化学プロセスを解明していくことが必要とされる。隕石をはじめとする太陽系小天体は,原始太陽系が誕生する前の化学進化と,小天体が原始地球に降り注いだ後の化学進化を長いスケールでつなぐ,重要な物質進化の場である。さらなる理解と発展を目指して,これからもじっくり取り組んで行きたい。

謝  辞

 本論文の執筆にあたり,カーネギー研究所(ワ

-92-

薮田ひかる

シントン DC, アメリカ合衆国)の George D. Cody

博士と Conel M. O’D. Alexander博士には,充実した議論と有益な助言を頂きました。深く感謝申し上げます。本論文を査読くださり ,有益なコメントをくださいました名古屋大学の三村耕一先生と匿名査読者の先生に御礼申し上げます。本総説の執筆の機会を与えてくださいました,本誌編集委員長である島根大学の三瓶良和先生に御礼申し上げます。

引用文献

Akai J. (1992) T-T-T diagram of serpentine and

saponite, and estimation of metamorphic heating

degree of Antarctic carbonaceous chondrites. Proc.

NIPR Symp. Antarc. Meteorites 5, 120-135.

Alexander C. M. O’D., Russell S. S., Arden J. W., Ash

R. D., Grady M. M. and Pillinger C. T. (1998) The

origin of chondritic macromolecular organic matter:

a carbon and nitrogen isotope study. Meteor. Planet.

Sci. 33, 603-622.

Alexander C. M. O’D., Fogel M. L., Yabuta H. and Cody

G. D. (2007) The origin and evolution of chondrites

recorded in the elemental and isotopic compositions

of their macromolecular organic matter. Geochim.

Cosmochim. Acta 71, 4380-4403.

Anders E. (1991) Organic matter in meteorites and

comets: Possible origins. Space sci. rev. 56, 157-

166.

安藤勲(1994)高分子の固体 NMR, 講談社 .

Benedix G. K., Leshin L. A., Farquhar J., Jackson T.

and Thiemens M. H. (2003) Carbonates in CM2

chondrites: constraints on alteration conditions from

oxygen isotopic compositions and petrographic

observations. Geochim. Cosmochim. Acta 67, 1577-

1588.

Binet L., Gourier D., Derenne S. and Robert F. (2002)

Heterogeneous distribution of paramagnetic radicals

in insoluble organic matter from the Orgueil and

Murchison meteorites. Geochim. Cosmochim. Acta

66, 4177-4186.

Binet L., Gourier D., Derenne S., Robert F. and Ciofini

I. (2004a) Occurrence of abundant diradicaloid

moieties in the insoluble organic matter from the

Orgueil and Murchison meteorites: A fingerprint of

extraterrestrial origin? Geochim. Cosmochim. Acta

68, 881-891.

Binet L., Gourier D., Derenne S., Pizzarello S. and

Becker L. (2004b) Diradicaloids in the insoluble

organic matter from the Tagish Lake meteorite:

Comparison with the Orgueil and Murchison

meteorites. Meteor. Planet. Sci. 39, 1649-1654.

Bonal L., Quirico E., Bourot-Denise M. and Montagnac

G. (2006) Determination of the petrologic type of

CV3 chondrites by Raman spectroscopy of included

organic matter. Geochim. Cosmochim. Acta 70,

1849-1863.

Bonal L., Bourot-Denise M., Quirico E., Montagnac G.

and Lewin E. (2007) Organic matter and metamorphic

history of CO chondrites. Geochim. Cosmochim.

Acta 71, 1605-1623.

Brearley A. J. (1995) Aqueous alteration and brecciation

in Bells, an unusual, saponite-bearing, CM chondrite.

Geochim. Cosmochim. Acta 59, 2291-2317.

Brearley A. J. (2006) The action of water. In: Meteorites

and the Early Solar System II. (eds. Lauretta D. S.

and McSween, H. Y., Jr.) Univ. of Arizona, USA, pp.

587-622.

Brown P. G., Hildebrand, A. R., Zolensky M. E.,

Grady M., Clayton R. N., Mayeda T. K., Tagliaferri

E., Spalding R., MacRae N. D., Hoffman E. L.,

Mittlefehldt D. W., Wacker J. F., Bird J. A., Campbell

M. D., Carpenter R., Gingerich H., Glatiotis M.,

Greiner E., Mazur M. J., McCausland P. JA., Plotkin

H., Rubak Mazur T. (2000) The fall, recovery, orbit,

and composition of the Tagish Lake meteorite: A

new type of carbonaceous chondrite. Science 290,

320-325.

Browning L. B., McSween H. Y. Jr. and Zolensky

M. E. (1996) Correlated alteration effects in CM

carbonaceous chondrites. Geochim. Cosmochim.

Acta 60, 2621-2633.

Brühwiler P. A., Maxwell A. J., Puglia C., Nilsson A.,

Andersson S. and Mårtensson N. (1995) π* and σ*

excitons in C 1s absorption of graphite. Phys. Rev.

Lett. 74, 614-617.

Bunch T. E. and Chang S. (1980) Carbonaceous

-93-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

chondrites-II. Carbonaceous chondrite phyllosilicates

and light element geochemistry as indicators of parent

body processes and surface conditions. Geochim.

Cosmochim. Acta 44, 1543-1577.

Busemann H., Young A. F., Alexander C. M. O'D.,

Hoppe P., Mukhopadhyay S. and Nittler L. R. (2006)

Interstellar chemistry recorded in organic matter

from primitive meteorites. Science 312, 727-730.

Busemann H., Alexander C. M. O’D. and Nittler L. R.

(2007) Characterization of insoluble organic matter in

primitive meteorites by micro-Raman spectroscopy.

Meteor. Planet. Sci., 42, 1387-1416.

Chyba C. F. and Sagan C. (1992) Endogenous

production, exogenous delivery and impact-shock

synthesis of organic molecules: An inventory for the

origin of life. Nature 355, 125-132.

Clayton R. N. and Mayeda T. K. (1984) The oxygen

isotope record in Murchison and other carbonaceous

chondrites. Earth Planet. Sci. Lett. 67, 151-161.

Clayton R. N. and Mayeda T. K. (1999) Oxygen isotope

studies of carbonaceous chondrites. Geochim.

Cosmochim. Acta 63, 2089-2104.

Cody G. D., Alexander C. M. O’D. and Tera F. (2002)

Solid-state (1H and 13C) nuclear magnetic resonance

spectroscopy of insoluble organic residue in the

Murchison meteorite: A self-consistent quantitative

analysis. Geochim. Cosmochim. Acta 66, 1851-

1865.

Cody G. D. and Alexander C. M. O’D. (2005) NMR

studies of chemical structural variation of insoluble

organic matter from different carbonaceous chondrite

groups. Geochim. Cosmochim. Acta 69, 1085-1097.

Cody G. D., Alexander C. M. O’D., Yabuta H., Kilcoyne

A. L. D., Araki T., Ade H., Dera P., Fogel M., Militzer

B. and Mysen B. O. (2008a) Organic thermometry

for chondritic parent bodies. Earth. Planet. Sci. Lett.

272, 446-455.

Cody G. D., Alexander C. M. O’D., Fogel M. and

Yabuta H. (2008b) The peculiar relationship between

meteoritic organic molecular structure and deuterium

abundance. LPSC XXXIX Abstract #1765.

Cody G. D., Ade H., Alexander C. M. O’D., Araki T.,

Butterworth A., Fleckenstein H., Flynn G. J., Gilles

M. K., Jacobsen C., Kilcoyne A. L. D., Messenger

K., Sandford S. A., Tyliszczak T., Westphal A. J.,

Wirick S. and Yabuta H. (2008c) Quantitative organic

and light element analysis of comet Wild 2 particles

using C-, N-, and O-μ-XANES. Meteor. Planet. Sci.

43, 353-365.

Court R. W., Sephton M. A., Parnell J. and Gilmour I.

(2006) The alteration of organic matter in response

to ionising irradiation: Chemical trends and

implications for extraterrestrial sample analysis.

Geochim. Cosmochim. Acta 70, 1020-1039.

Cronin J. R., Pizzarello S. and Frye J. S. (1987) 13C NMR

spectroscopy of insoluble carbon of carbonaceous

chondrites. Geochim. Cosmochim. Acta 51, 299-

303.

Cronin J. R. and Chang S. (1993) Organic matter in

meteorites: Molecular and isotopic analyses of the

Murchison meteorite. In: The Chemistry of Life’s

Origins (eds. Greenberg, J. M., Mendoza-Gomez,

C. X. and Pirronello, V.) Kluwer, Dordrecht,

Netherlands. pp.209 – 258.

DuFresne E. R. and Anders E. (1962) On the chemical

evolution of the carbonaceous chondrites. Geochim.

Cosmochim. Acta 26, 1085-1114.

Ehrenfreund P. and Charnley S. B. (2000) Organic

molecules in the interstellar medium, comets, and

meteorites: A voyage from dark clouds to the early

Earth. Annu. Rev. Astron. Astrophys. 38, 427-483.

Ehrenfreund P., Glavin D. P., Botta O., Cooper G. and

Bada J. L. (2001) Extraterrestrial amino acids in

Orgueil and Ivuna: Tracing the parent body of CI

type carbonaceous chondrites. Proc. Nat. Acad. Sci.

98, 2138- 2141.

Farias J., Rossetti G. H., Albizzati E. D. and Alfano

O. M. (2007) Solar degradation of formic acid:

Temperature effects on the photo-fenton reaction.

Ind. Eng. Chem. Res. 46, 7580-7586.

Ferrari A. C. and Robertson J. (2000) Interpretation of

Raman spectra of disordered and amorphous carbon.

Physical Review B - Condensed Matter and Materials

Physics 61, 14095-14107.

Flynn G. J., Keller L. P., Feser M., Wirick S. and

Jacobsen, C. (2003) The origin of organic matter in

-94-

薮田ひかる

the solar system: evidence from the interplanetary

dust particles. Geochim. Cosmochim. Acta 67, 4791-

4806.

Gardinier A., Derenne S., Robert F., Behar F., Largeau

C. and Maquet J. (2000) Solid state CP/MAS 13C

NMR of the insoluble organic matter of the Orgueil

and Murchison meteorites: Quantitative study. Earth

Planet. Sci. Lett. 184, 9-21.

Geiss J. and Reeves H. (1981) Deuterium in the solar

system. Astron. Astrophys. 93, 189-199.

Gilmour I. (2003) Structural and isotopic analysis

of organic matter in carbonaceous chondrites.

In: Meteorites, Comets, and Planets, Treatise on

Geochemistry, Volume 1 (eds. Davis, A. M., Holland,

H. D. and Turekian, K. K.) Elsevier. pp. 269-290.

Grady M. M., Wright I. P., Swart P. K. and Pillinger C. T.

(1988) The carbon and oxygen isotopic composition

of meteoritic carbonates. Geochim. Cosmochim. Acta

52, 2855-2866.

Grady M. M., Verchovsky A. B., Franchi I. A., Wright

I. P. and Pillinger C. T. (2002) Light element

geochemistry of the Tagish Lake CI2 chondrite:

Comparison with CI1 and CM2 meteorites. Meteor.

Planet. Sci. 37, 713-735.

Guo W. and Eiler J. M. (2007) Temperatures of aqueous

alteration and evidence for methane generation on

the parent bodies of the CM chondrites. Geochim.

Cosmochim. Acta 71, 5565-5575.

Hartmann S. R. and Hahn E. L. (1962) Nuclear double

resonance in the rotating frame. Physical Rev. 128,

2042-2053.

Hayatsu R., Matsuoka S., Scott R. G., Studier M. H.

and Anders E. (1977) Origin of organic matter in

the early solar system – VII. The organic polymer

in carbonaceous chondrites. Geochim. Cosmochim.

Acta 41, 1325-1339.

Hayatsu R., Winans R. E., Scott R. G., McBeth R. L.,

Moore L. P. and Studier M. H. (1980) Phenolic ethers

in the organic polymer of the Murchison meteorite.

Science 207, 1202-1204.

Holzer G. and Oro J. (1979) The organic composition

of the Allan Hills carbonaceous chondrite (77306) as

determined by pyrolysis-gas chromatography-mass

spectrometry and other methods. J. Mol. Evol. 13,

265-270.

Huang Y., Alexandre M. R. and Wang Y. (2007)

Structure and isotopic ratios of aliphatic side chains

in the insoluble organic matter of the Murchison

carbonaceous chondrite. Earth. Planet. Sci. Lett.

259, 517-525.

Keller L. P., Messenger S., Flynn G. J., Clemett S.,

Wirick S. and Jacobsen C. (2004) The nature of

molecular cloud material in interplanetary dust.

Geochim. Cosmochim. Acta 68, 2577-2589.

Kilcoyne A. L. D., Tyliszczak T., Steele W. F., Fakra S.,

Hitchcock P., Franck K., Anderson E., Harteneck B.,

Rightor E. G., Mitchell G. E., Hitchcock A. P., Yang

L., Warwick T. and Ade H. (2003) Interferometer-

controlled scanning transmission X-ray microscopes

at the Advanced Light Source. J. Synchrotron Rad.

10, 125-136.

Kitajima F., Nakamura T., Takaoka N., and Murae T.

(2002) Evaluating the thermal metamorphism of

CM chondrites by using the pyrolytic behavior of

carbonaceous macromolecular matter. Geochim.

Cosmochim. Acta 66, 163-172.

Komiya M., Shimoyama A., and Harada K. (1993)

Examination of organic compounds from insoluble

organic matter isolated from some Antarctic

carbonaceous chondrites by heating experiments.

Geochim. Cosmochim. Acta 57, 907-914.

Krot A. N., Keil K., Goodrich C. A. and Scott E. R. D.

(2005) Classification of meteorites. In: Meteorites,

Comets, and Planets, (eds. Davis A. M., Holland H.

D. and Turekian K. K.) Treatise on Geochemistry 1,

Elsevier-Pergamon, Oxford. pp. 83-142.

Langer W. D., Graedel T. E., Frerking M. A. and

Armentrout P. B. (1984) Carbon and oxygen isotope

fractionation in dense interstellar clouds. Astrophys.

J. 277, 581-604.

Lee, T., Papanastassiou D. A. and Wasserburg G. J.

(1976) Demonstration of 26Mg excess in Allende and

evidence for 26Al. Geophys. Res. Lett. 3, 109-112.

Leshin L. A., Rubin A. E. and McKeegan K. D. (1997)

The oxygen isotopic composition of olivine and

pyroxene from CI chondrites. Geochim. Cosmochim.

-95-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

Acta 61, 835-845.

Levy R. L., Grayson M. A. and Wolf C. J. (1973)

The organic analysis of the murchison meteorite.

Geochimica et Cosmochimica Acta 37, 467-483.

Ma Y. , Skytt P., Wassdahl N., Glans P., Mancini D. C.,

Guo J. and Nordgren J. (1993) Core excitons and

vibronic coupling in diamond and graphite. Phys.

Rev. Lett. 71, 3725-3728.

Martins Z., Alexander C. M. O'D., Orzechowska G. E.,

Fogel M. L. and Ehrenfreund, P. (2007) Indigenous

amino acids in primitive CR meteorites. Meteor.

Planet. Sci. 42, 2125-2136.

Messenger S., Nakamura-Messenger K., Keller L. P.

and Robert M. (2008) 15N-rich organic globules in

a cluster IDP and the Bells CM2 chondrite. LPSC

XXXIX, Abstract #2391.

Muñoz Caro G. M., Matrajt G., Dartois E., Nuevo

M., D'Hendecourt L., Deboffle D., Montagnac G.,

Chauvin N., Boukari C. and Le Du D. (2006) Nature

and evolution of the dominant carbonaceous matter

in interplanetary dust particles: Effects of irradiation

and identification with a type of amorphous carbon.

Astron. Astrophys. 459, 147-159.

Nagaoka A., Watanabe N. and Kouchi A. (2005) H-D

Substitution in interstellar solid methanol: A key

route for D enrichment. Astrophys. J. 624, L29-L32.

Nagy B. (1963) Investigations of the Orgueil

carbonaceous chondrite. Geol. Foren Stockholm

Fôrh. 88, 235-272.

Nakamura K., Zolensky M. E., Tomita S., Nakashima

S. and Tomeoka, K. (2002) Hollow organic globules

in the Tagish Lake meteorite as possible products of

primitive organic reactions. Int. J. Astrobio. 1, 179-

189.

Nakamura-Messenger K., Messenger S., Keller L. P.,

Clemett S. J. and Zolensky M. E. (2006) Organic

globules in the Tagish Lake meteorite: Remnants of

the protosolar disk. Science 314, 1439-1442.

Nakamura T. (2006) Yamato 793321 CM chondrite:

Dehydrated regolith material of a hydrous asteroid.

Earth Planet. Sci. Lett. 242, 26-38.

Naraoka H., Shimoyama A., Komiya M., Yamamoto

H. and Harada K. (1988) Hydrocarbons in the

Yamato-791198 carbonaceous chondrite from

Antarctica. Chem. Lett. 17, 831–834.

Naraoka H., Shimoyama A. and Harada K. (1999)

Molecular distribution of monocarboxylic acids in

Asuka carbonaceous chondrites from Antarctica.

Orig. Life Evol. Bios. 29, 187-201.

Naraoka H., Mita H., Komiya M., Yoneda S., Kojima

H. and Shimoyama A. (2004) A chemical sequence

of macromolecular organic matter in the CM

chondrites. Meteor. Planet. Sci. 39, 401-406.

Nittler L. R. (2003) Presolar stardust in meteorites:

Recent advances and scientific frontiers. Earth

Planet. Sci. Lett. 209, 259-273.

Oba Y. and Naraoka H. (2006) Carbon isotopic

composition of acetic acid generated by hydrous

pyrolysis of macromolecular organic matter from the

Murchison meteorite. Meteor. Planet. Sci. 41, 1175-

1181.

Oba Y. and Naraoka H. (2008) Carbon and hydrogen

isotopic fractionation of low molecular weight

organic compounds during ultraviolet degradation.

Org. Geochem. 39, 501-509.

岡島敏浩.(2002)XAFSによる高分子材料表面の解析 . 表面科学 23, 359 – 366.

Peltzer E. T., Bada J. L., Schlesinger G. and Miller S. L.

(1984) The chemical conditions on the parent body

of the murchison meteorite: Some conclusions based

on amino, hydroxy and dicarboxylic acids. Adv.

Space Res. 4, 69-74.

Pendleton Y. J., Sandford S. A., Allamandola L. J.,

Tielens A. G. G. M. and Sellgren K. (1994) Near-

infrared absorption spectroscopy of interstellar

hydrocarbon grains. Astrophys J. 437, 683-696.

Pizzarello S. (2004) Chemical evolution and meteorites:

An update. Orig. Life Evol. Bios. 34, 25-34.

Pizzarello S., Cooper G. W. and Flynn G. J. (2006)

The nature and distribution of the organic material

in carbonaceous chondrites and interplanetary dust

particles. In: Meteorites and the Early Solar System

II. (eds. Lauretta D. S. and McSween, H. Y., Jr.) Univ.

of Arizona, USA, pp. 628-651.

Pizzarello S., Huang Y., Becker L. Poreda R. J., Nieman

R. A., Cooper G. and William M. (2001) The organic

-96-

薮田ひかる

content of the Tagish Lake meteorite. Science 293,

2236 – 2239.

Quirico E., Raynal P.-I. and Bourot-Denise M.

(2003) Metamorphic grade of organic matter in six

unequilibrated ordinary chondrites. Meteor. Planet.

Sci. 38, 795-811.

Remusat L., Derenne, S., Robert, F. and Knicker, H.

(2005a) New pyrolytic and spectroscopic data on

Orgueil and Murshison insoluble organic matter: A

different origin than soluble? Geochim. Cosmochim.

Acta 69, 3919-3932.

Remusat L., Derenne S. and Robert F. (2005b) New

insight on aliphatic linkages in the macromolecular

organic fraction of Orgueil and Murchison meteorites

through ruthenium tetroxide oxidation. Geochim.

Cosmochim. Acta 69, 4377-4386.

Robert F. and Epstein S. (1982) The concentration

and isotopic composition of hydrogen, carbon and

nitrogen in carbonaceous meteorites. Geochim.

Cosmochim. Acta 46, 81-95.

Rundel P. W., Ehleringer J. R. and Nagy K. A. (1989)

Stable Isotopes in Ecological Research (Ecological

Studies), Springer-Verlag, New York.

Rybaczewski E. F., Smith L. S., Garito A. F., Heeger

A. J. and Silbernagel B. G. (1976) 13C Knight shift

in TTF-TCNQ (13C): Determination of the local

susceptibility. Phys. Rev. B. 14, 2746 – 2756.

Sandford S. A., Aléon J., Alexander C. M. O'D.,

Araki T., Bajt S., Baratta G. A., Borg J., Bradley J.

P., Brownlee D. E., Burucato J. R., Burchell M. J.,

Busemann H., Butterworth A., Clemett S. J., Cody

G. D., Colangeli L., Cooper G., D'Hendecourt L.,

Djouadi Z., Dworkin J. P., Ferrini G., Fleckenstein

H., Flynn G. J., Franchi I. A., Fries M., Gilles M. K.,

Glavin D. P., Gounelle M., Grossemy F., Jacobsen

C., Keller L. P., Kilcoyne A. L. D., Leitner J.,

Matrajt G., Meibom A., Mennella V., Mostefaoui

S., Nittler L. R., Palumbo M. E., Papanastassiou D.

A., Robert F., Rotundi A., Snead C. J., Spencer M.

K., Stadermann F. J., Steele A., Stephan T., Tsou P.,

Tyliszczak T., Westphal A. J., Wirick S., Wopenka

B., Yabuta H., Zare R. N. and Zolensky M. (2006)

Organics captured from Comet 81P/Wild 2 by the

Stardust spacecraft. Science 314, 1720-1724.

Scott E. R. D., Keil, K. and Stöeffler D. (1992)

Shock metamorphism of carbonaceous chondrites.

Geochim. Cosmochim. Acta 56, 4281-4293.

Sephton M. A. (2002) Organic compounds in

carbonaceous metoerites. Nat. prod. rep. 19, 292-

311.

Sephton M. A. and Botta O. (2005) Recognizing life in

the solar system: guidance from meteoritic organic

matter, Int. J. Astrobiol. 4, 269 – 276.

Sephton M. A. and Gilmour I. (2000) Aromatic Moieties

in Meteorites: Relics of Interstellar Grain Processes?

Astrophys. J. 540, 588-591.

Sephton M. A., Pillinger C. T. and Gilmour I. (1998a)

δ13C of free and macromolecular aromatic structures

in the Murchison meteorite. Geochim. Cosmochim.

Acta 62, 1821-1828.

Sephton M. A., Pillinger C. T. and Gilmour I. (1998b)

Small-scale hydrous pyrolysis of macromolecular

material in meteorites. Planet. Space Sci. 47, 181-

187.

Sephton M. A., Pillinger C. T. and Gilmour I. (2000)

Aromatic moieties in meteoritic macromolecular

materials: analyses by hydrous pyrolysis and δ13C of

individual compounds. Geochim. Cosmochim. Acta

64, 321-328.

Sephton M. A., Verchovsky A. B., Bland, P. A., Gilmour

I., Grady M. M. and Wright I. P. (2003) Investigating

the variations in carbon and nitrogen isotopes in

carbonaceous chondrites. Geochim. Cosmochim.

Acta 67, 2093-2108.

Sephton M. A., Love G. D., Watson J. S., Verchovsky,

A. B., Wright, I. P., Snape C. E. and Gilmour I.

(2004) Hydropyrolysis of insoluble carbonaceous

matter in the Murchison meteorite: New insights into

its macromolecular structure. Geochim. Cosmochim.

Acta 68, 1385-1393.

Shimoyama A. and Harada K. (1984) Amino acid

depleted carbonaceous chondrites (C2) from

Antarctica. Geochem. J. 18, 281-286.

Shimoyama A., Ponnamperuma C. and Yanai K. (1979)

Amino acids in the Yamato carbonaceous chondrite

from Antarctica. Nature 282, 394-396.

-97-

隕石有機物の構造・同位体分析による母天体変成過程の化学的解明

Shimoyama A., Harada K. and Yanai K. (1985) Amino

acids from the Yamato-791198 carbonaceous

chondrite from Antarctica. Chem. Lett. 14, 1183-

1186.

Shimoyama A., Naraoka H., Yamamoto H. and Harada

K. (1986) Carboxylic acids in the Yamato-791198

carbonaceous chondrite from Antarctica. Chem. Lett.

15, 1561-1564.

Shimoyama A., Naraoka, H., Komiya M. and Harada

K. (1989) Analyses of carboxylic acids and

hydrocarbons in Antarctic carbonaceous chondrites,

Yamato-74662 and Yamato-793321, Geochem. J. 23,

181-193.

Shimoyama A., Hagishita S. and Harada K. (1990)

Search for nucleic acid bases in carbonaceous

chondrites from Antarctica. Geochem. J. 24, 343-

348.

Shimoyama A., Komiya M. and Harada K. (1991)

Release of organic compounds from some Antarctic

CI and CM chondrites by laboratory heating. Proc.

NIPR Symp. Ant. Meteor. 4, 247–260.

Shimoyama A. and Shigematsu R. (1994) Dicarboxylic

acids in the Murchison and Yamato-791198

carbonaceous chondrites. Chem. Lett. 23, 523-526.

Stöffler D., Keil K. and Scott E. R. D. (1991) Shock

metamorphism of ordinary chondrites. Geochim.

Cosmochim. Acta 55, 3845-3867.

Taylor D. K. and Dickman R. L. (1989) A reassessment

of the double isotope ratio (C-13)O/C(O-18) in

molecular clouds. Astrophys. J. 341, 293-298.

Tomeoka K., Kojima H. and Yanai K. (1989)

Yamato-86720: A CM carbonaceous chondrite

having experienced extensive aqueous alteration and

thermal metamorphism. Proc. NIPR Symp. 2, 55.

Van Krevelen D. W. (1961) Coal Elsevier, Amsterdam.

pp.514.

Wopenka B. and Pasteris J. D. (1993) Structural

characterization of kerogens to granulite-facies

graphite: applicability of Raman microprobe

spectroscopy. American Mineralogist 78, 533-557.

薮田ひかる.(2007)81P/Wild 2彗星粒子に含まれる有機物の化学特徴 . 日本惑星科学会誌 遊星人

16, 299 - 307.

薮田ひかる.(2008)地球外有機物と生命の起源:スターダストミッション有機物分析部門の初期結果と隕石有機物との比較 . 生命の起原および進化学会誌 Viva Origino 36, 20-43.

Yabuta H., Naraoka H., Sakanishi K. and Kawashima

H. (2005) Solid-state 13C NMR characterization

of insoluble organic matter from Antarctic CM2

chondrites: Evaluation of the meteoritic alteration

level, Meteor. Planet. Sci. 40, 779-787.

Yabuta H., Williams L. B., Cody G. D., Alexander

C. M. O'D. and Pizzarello S. (2007) The insoluble

carbonaceous material of CM chondrites: A possible

source of discrete organic compounds under

hydrothermal conditions, Meteor. Planet. Sci. 42,

37-48.

Yang J. and Epstein S. (1983) Interstellar organic

matter in meteorites. Geochim. Cosmochim. Acta 47,

2199-2216.

Zinner E. (1988) Interstellar cloud material in meteo-

rites. In: Meteorites and the Early Solar System.

(eds. Kerridge J. F. and Mathews, M. S.) Univ. of

Arizona. USA, pp. 956-983.

Zinner E. (2003) Presolar grains. In: Meteorites,

Comets, and Planets vol. 1 (eds. David, A. M.).

Elsevier-Pergamon. pp 17-40.

Zolensky M. E. (1984) Hydrothermal alternation of

CM carbonaceous chondrites: Implications of the

identification of tochilinite as one type of meteoritic

PCP. Meteoritics 19, 346 – 347.

Zolensky M. E. and McSween H. Y. Jr. (1988) Aqueous

alteration. In: Meteorites and the Early Solar System.

(eds. Kerridge, J. F. and Matthews, M. S.) Univ. of

Arizona. USA, pp. 114-143.

Zolensky M. E., Mittlefehldt D. W., Lipschutz M. E.,

Wang M-S., Clayton R. N., Mayeda T. K., Grady M.

M., Pillinger C., Barber D. (1997) CM chondrites

exhibit the complete petrologic range from type 2 to

1. Geochim. Cosmochim. Acta 61, 5099-5115.

Zolensky M. E., Nakamura K., Gounelle M., Mikouchi

T., Kasama T., Tachikawa O. and Tonui E. (2002)

Mineralogy of Tagish Lake: An ungrouped type 2

carbonaceous chondrite. Meteor. Planet. Sci. 37,

737-761.