等吸収点と最小二乗法 - 産業技術総合研究所...等吸収点と最小二乗法 (統...

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等吸収点と最小二乗法 (統と偏微分法に関する若干の知を必要とします。) 主成分分析法の紹介文などに,「最小二乗法では横の誤差を考慮する事ができ ない」と書かれている事があるが,それは誤りである。分光学の説にも,「各成分 の濃度情報が正確でないと最小二乗法はスペクトル分に使用できない」と書かれ ている事があるが,それも誤りである。収束の点で問題がある事は確かであるが, 最小二乗法の基本に立ちれば,原理的にはこの方法がスペクトル分に使用でき る事がわかる。最小二乗法が収束する場合,分されたスペクトルの持つ化学的意 味は直感的に明らかであり,この点は寧ろ主成分分析法より優れているといえる。 このメモでは,最小二乗法がまず間違いなく収束する場合として,等吸収点を示し つつ変化するスペクトルの分について述べる。その他の場合への拡張も可能であ り,実際に析を行った二成分系では最小二乗法が収束した。 このメモでは,ある物が二化学種間を移り変わることにより等吸収点を持つ スペクトルを示す場合想定し,スペクトル分離の方法を定式化する。ここで,各化 学種の初期濃度及び濃度変化の(時間などの)制御パラメータに対する依存性を表 す関数形は知られていないものとする。また,制御パラメータと共には変化しない 第三成分の存在も考慮しなければならない。そこで,最小二乗法を用いて,線形独 立な二つのスペクトル成分を推定する。尚,この方法で得られる二成分は,各化学 種の純スペクトルではなく,その線形結合である。 1 線形独立な成分 1.1 等吸収点の化学モデル 今,ある物が,(時間などの)制御パラメータ t の変化により,化学種 A と化 学種 B との間を移り変わるものとする。この場合,それぞれの化学種のモル吸光係 数をe A (l)及びe B (l)とすれば,e A (l 0 )= e B (l 0 )となる波l 0 において,吸収スペクト ルに等吸収点が見られる。 厳密にえば,等吸収点が実験で観測されたからとって,化学的に上述のよう な状況にあるとは限らない。(逆は必ずしも真ならず。)しかし,極めて特殊な場合 を除けば,t により変化しない化学種 C が存在する可能性を考慮に入れて,全体の モル吸光係数を次式のように表わすことは,妥当であると考えられる。 e t , l ( ) = c A t () e A l ( ) + c B t () e B l ( ) + 1 - c A - c B ( ) e C l ( ) = c A t () e A l ( ) - e B l () [ ] + C e B l () - e C l () [ ] + e C l () (1) 但し, C c A + c B = const. ; 0 £ c A , c B , C £ 1

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Page 1: 等吸収点と最小二乗法 - 産業技術総合研究所...等吸収点と最小二乗法 (統 と偏微分法に関する若干の知 @を必要とします。) 主成分分析法の紹介文などに,「最小二乗法では横

等吸収点と最小二乗法

(統 と偏微分法に関する若干の知 を必要とします。)

主成分分析法の紹介文などに,「最小二乗法では横 の誤差を考慮する事ができ

ない」と書かれている事があるが,それは誤りである。分光学の 説にも,「各成分

の濃度情報が正確でないと最小二乗法はスペクトル分 に使用できない」と書かれ

ている事があるが,それも誤りである。収束の点で問題がある事は確かであるが,

最小二乗法の基本に立ち れば,原理的にはこの方法がスペクトル分 に使用でき

る事がわかる。最小二乗法が収束する場合,分 されたスペクトルの持つ化学的意

味は直感的に明らかであり,この点は寧ろ主成分分析法より優れているといえる。

このメモでは,最小二乗法がまず間違いなく収束する場合として,等吸収点を示し

つつ変化するスペクトルの分 について述べる。その他の場合への拡張も可能であ

り,実際に 析を行った二成分系では最小二乗法が収束した。

このメモでは,ある物 が二化学種間を移り変わることにより等吸収点を持つ

スペクトルを示す場合想定し,スペクトル分離の方法を定式化する。ここで,各化

学種の初期濃度及び濃度変化の(時間などの)制御パラメータに対する依存性を表

す関数形は知られていないものとする。また,制御パラメータと共には変化しない

第三成分の存在も考慮しなければならない。そこで,最小二乗法を用いて,線形独

立な二つのスペクトル成分を推定する。尚,この方法で得られる二成分は,各化学

種の純スペクトルではなく,その線形結合である。

1 線形独立な成分

1.1 等吸収点の化学モデル

今,ある物 が,(時間などの)制御パラメータ t の変化により,化学種 A と化

学種 B との間を移り変わるものとする。この場合,それぞれの化学種のモル吸光係

数をeA(l)及びeB(l)とすれば,eA(l0) = eB(l0)となる波 l0 において,吸収スペクト

ルに等吸収点が見られる。

厳密に えば,等吸収点が実験で観測されたからと って,化学的に上述のよう

な状況にあるとは限らない。(逆は必ずしも真ならず。)しかし,極めて特殊な場合

を除けば,t により変化しない化学種 C が存在する可能性を考慮に入れて,全体の

モル吸光係数を次式のように表わすことは,妥当であると考えられる。

e t,l( ) = cA t( )eA l( ) + cB t( )eB l( ) + 1-cA -cB( )eC l( )

= cA t( ) eA l( ) -eB l( )[ ] + C eB l( ) -eC l( )[ ] + eC l( )(1)

但し,

C ≡ cA + cB = const.;

0 £ cA, cB, C £1

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尚,このメモでは,cA(t)の関数形が知られていないものとして議論を進めるが,

単純緩和型などの関数形が仮定できる場合には,それに即して以下の議論を変形す

る必要がある。

1.2 測定のモデル

この 料について,t について m 点,lについて n 点の測定を行い, mn 個の測

定値

˜ e kl (k = 1, …, m; l = 1, …, n)を得たものとする。測定値は,t やlの関数

ではない誤差

eklを含んでおり,次のように表わされる。

˜ e kl = cA tk( ) eA ll( ) -eB ll( )[ ] + C eB ll( ) -eC ll( )[ ] +eC ll( ) + ekl (2)

ここで,m個の

cA tk( )の平均値を

cA と書き,

e l( ) を次のように定義する。

e l( ) = cA eA l( ) -eB l( )[ ] + C eB l( ) -eC l( )[ ] + eC l( ) (3)

これを用いて(2)式を下のように書き直せば,(実験的な意味で)線形独立な成分が

二つあることが分かる。

˜ e kl = cA tk( ) - cA[ ] eA ll( ) -eB ll( )[ ] + e ll( ) + ekl (4)

実測されたスペクトルの が く,実 的に誤差

eklの影 を無視できる場合は,二

本のスペクトルの和と差を求めることにより,この二成分を分離できる。次章は,

誤差の影 が無視できず,且つ 3 本以上のスペクトルが測定されている場合につい

ての議論である。

2 最小二乗法

2.1 準備(変数及び関数の定義)

スペクトル分離の方法としては,主成分分析や因子分析などの多変量 析の手法

が多く用いられているが,1章で述べたような明確な化学的モデルがある場合には,

そのモデルを基礎とした最小二乗法を用いる方が,結果の化学的 釈を容易にする。

この節では,最小二乗法を実行するために必要な変数及び関数を定義する。

まず,推定すべきパラメータを一つの列ベクトル

a = a i{ }に格納する。濃度に関して次のことに注意すれば,この列ベクトルの次元が 2n+m–2 になることがわかる。

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cA tm -1( ) - cA[ ]cA tm( ) - cA[ ]

= -1-cA tk( ) - cA[ ]cA tm( ) - cA[ ]k =1

m- 2

 (5)

これにより,aの定義は次のように与えられる。

ai =

e li( ) i =1,L, n( )cA tm( ) - cA[ ] eA li- n( ) -eB li-n( )[ ] i = n +1,L,2n( )cA ti- 2n( ) - cA[ ] cA tm( ) - cA[ ] i = 2n +1,L, 2n + m - 2( )

Ï

Ì Ô

Ó Ô (6)

(これらaの各成分は,それぞれ未知の真値である。データの数 mn がaの次元 2n+m–2

よりも大きくなければ最尤推定はできないので,最小二乗法を適用するためには,

少なくとも 3 本の実測スペクトルが必要であることがわかる。)そして,aの(現在

の)推定値及びそれの真値との差をそれぞれ

˜ a 及び

a = ˜ a -aとする。更に,列ベク

トルには含めないが,便宜上定数

a2n+ m = ˜ a 2n+ m =1及び従属変数

a2n+ m-1 = -1- aii= 2n +1

2n+ m- 2

 と

˜ a 2n+ m-1 = -1- ˜ a ii= 2n +1

2n+ m- 2

 をそれぞれ定義する。尚,定義から

˜ e klは真値

e tk,ll( )の推定値で

あり,

eklはそれらの間の差である。

また,真値を用いて,次の関数を定義する。

f k, l;e,a( ) =e tk,ll( ) -a 2n+ kan +l -al (7)

2.2 拘束条件と残差平方和

(7)式の関数は真値で定義されており,mn 個の場合それぞれについて,その値は

ゼロとなる筈である。このことがこの問題における拘束条件を与える。しかし,真

値は知られていないので,このままではこの関数の値を評価することができない。

そこで,以下のように,(7)式を推定値のまわりで誤差について一次の範囲で展開す

る。

fkl ≡ f k,l;e,a( ) = ˜ f kl - fkl ;eekl - fkl;iaii=1

2n+ m- 2

 (8)

˜ f kl = ˜ e kl - ˜ a 2n+k ˜ a n+ l - ˜ a l (9)

fkl;e =∂f∂e e =˜ e kl ,a= ˜ a

=1 (10)

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fkl;i =∂f∂ai e = ˜ e kl ,a = ˜ a

= -di,l - ˜ a 2n +kdi,n +l - ˜ a n +ldi,2n +k + ˜ a n+ ldk,m -1 di,2n + ¢ k ¢ k =1

m- 2

 (11)

ここで,dはクロネッカのデルタである。結局,mn 個の fkl をゼロとするのが,この

問題における拘束条件である。

一方,残差平方和は,変更できない推定値(実測値)と真値の差,即ち

eklの平方

和である。但し,一般的には各測定点においてデータの が異なるので,それを反

映するために重み wkl (> 0)を導入する。

S = wkl ekl( )2

k ,l (12)

尤も,特定波 領域でバックグラウンドが大きいなどの特別な事情がなければ,通

常は wkl = 1 として差し支えないと考えられる。

2.3 ラグランジェの未定係数法

(6)式の fkl をゼロとする拘束条件の下で S の極小を得るには,lkl をラグランジ

ェの未定係数として評価関数 g を次式のように定義し,その無条件極小を探せばよ

い。その結果 a が決定できるので,この章の目的を達成できる。

g = 12 S - lkl fkl

k,lÂ

=wkl

2ekl( )2

- lkl˜ f kl -ekl - fkl;iai

i=1

2n+ m- 2

ÂÊ

Ë Á

ˆ

¯ ˜

È

Î Í

˘

˚ ˙

k,lÂ

(13)

(9)̃(11)式で表されている量は定数であるので,評価関数 g の極値条件は,次の 3

種 の微分をゼロと置くことで得られる。

∂g∂ekl

= wklekl + lkl = 0 (14)

∂g∂lkl

= ˜ f kl - ekl - fkl;iaii=1

2n+ m- 2

 = 0 (15)

∂g∂ai

= lkl fkl;ik ,l = 0 (16)

但し,(16)式で i は 1 から(2n+m までではなく)2n+m–2 までであることに注意

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しなければならない。丁度未知数の数だけ式があるので,これを連立方程式として

けばよい。拘束条件そのものである(15)式を(14)式に代入して,次式を得る。

lkl = -w klekl = wkl fkl;iaii=1

2n+ m- 2

 - ˜ f kl

Ê

Ë Á

ˆ

¯ ˜ (17)

これを(16)式に代入する。但し,(16)の i はそのままにし,(17)の i を j に換える。

wkl fkl; ja jj =1

2n+ m- 2

 - ˜ f kl

Ê

Ë Á

ˆ

¯ ˜ fkl;i

kl = 0 (18)

和の順序を入れ替え,ajを含まない項を右辺へ出す。

wkl fkl;i fkl; jklÂÊ

Ë Á ˆ

¯ a j

j=1

2n +m -2

 = wkl˜ f kl fkl ;i

kl (19)

これは,行列を用いて次式のようにまとめることができる。

Ha = Z

Hij = wkl fkl ;i fkl ; jklÂ

Zi = wkl˜ f kl fkl;i

klÂ

(20)

これを く事によりaの新しい推定値

ˆ a が得られる。

a = H-1Z (21)

ˆ a = ˜ a - a (22)

(21)式と(22)式で表される操作を a が充分小さくなるまで繰り せば,濃度変化の

相対値,スペクトルの変化する成分,及び変化しない成分を推定したことになる。

2.4 多成分系への拡張(コメント)

等吸収点を示すスペクトル変化においては,線形独立なスペクトル成分は二つ(実

測において変化が見られた 分と変化がみられなかった 分)しかないと推定でき

るので,上のような議論になる。一方,等吸収点が見られない場合は,線形独立な

成分が幾つあるのか分からないと,最小二乗法を適用することができない。そのよ

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うな場合は,(独立な成分の数を仮定しない)主成分分析法など多変量 析の手法を

用いるべきである。

しかし,等吸収点が見られない場合でも,線形独立な成分の数が既知であれば,

最小二乗法を適用できる可能性がある。(例えば,ピークの数が明らかに 2 個しかな

い場合,2 成分系であると考えることができる。)成分数が多くなると最小二乗法の

収束が問題となるが,もし各化学種の濃度の制御パラメータに対する依存性の関数

形が既知であれば,推定が成功する確率は くなる。

3 付

3.1 行列 H の要素の 算

行列 H は対称行列なので,i ≤ j について 算すればよい。以下,i 及び j につ

いて場合分けして考える。

! 1 ≤ i ≤ n, 1 ≤ j ≤ n(対 要素のみ ゼロ)

Hij = fkl;i fkl ; jkl = di,ld j,l

kl = d i,ld i, j

kl = di, j

k = mdi, j

! 1 ≤ i ≤ n, n ≤ j ≤ 2n( 対 要素,全てゼロ)

Hij = ˜ a 2n +kd i,ld j ,n+ lkl = ˜ a 2n +kdi,ld j,n +i

kl =d j ,n+ i ˜ a 2n+ k

k = 0

! 1 ≤ i ≤ n, 2n+1 ≤ j ≤ 2n+m–2( 対 要素,全てゼロ)

Hij = ˜ a n +ld i,l d j ,2n+ k -dk ,m-1( )kl = ˜ a n +i d j,2n +k -dk,m -1( )

k = ˜ a n+ i 1-1( ) = 0

! n ≤ i ≤ 2n, n ≤ j ≤ 2n(対 要素のみ ゼロ)

Hij = ˜ a 2n +k( )2di,n +ld j ,n+ l

kl = ˜ a 2n+ k( )2

di,n+ ldi, jkl = ˜ a 2n+ k( )2

di, jk = di, j ˜ a 2n +k( )2

! n ≤ i ≤ 2n, 2n+1 ≤ j ≤ 2n+m–2( 対 要素, ゼロ成分)

Hij = ˜ a 2n +k ˜ a n+ ldi,n +l d j,2n +k -dk,m -1( )kl = ˜ a i ˜ a 2n+ k d j,2n+ k -d k,m -1( )

k = ˜ a i ˜ a j - ˜ a 2n+ m-1( )

! 2n+1 ≤ i ≤ 2n+m–2, 2n+1 ≤ j ≤ 2n+m–2(対 要素, 対 要素共に ゼロ)

Hij = ˜ a n +l( )2di,2n +k -dk,m -1( ) d j ,2n+ k -d k,m -1( )

klÂ

= ˜ a n +l( )2

l di,2n+ kd j,2n+ k -d i,2n +kd k,m -1 -d j,2n +kdk ,m-1 +d k,m -1dk,m -1( )

= ˜ a n +l( )2

l di,2n+ kdi, j +d k,m -1( )

k = di, j +1( ) ˜ a n +l( )2

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3.2 ベクトル Z の要素の 算

やはり,i及び j について場合分けして考える。

! 1 ≤ i ≤ n

Zi = ˜ f kl fkl ;ikl = - ˜ f kldi,l

kl = - ˜ f ki

! n+1 ≤ i ≤ 2n

Zi = - ˜ f kl ˜ a 2n+ kdi,n +l( )kl = - ˜ f kl ˜ a 2n+ kdi- n,l

kl = - ˜ a 2n +k

˜ f k i-n( )k

Â

! 2n+1 ≤ i ≤ 2n+m–2

Zi = - ˜ f kl ˜ a n+ ldi,2n +k - ˜ a n +ldk ,m-1( )kl = ˜ f kl ˜ a n+ l dk,m -1 -di,2n +k( )

klÂ

= ˜ a n+ l˜ f kl dk ,m-1 -di,2n+ k( )

kÂÈ

Î Í ˘

˚ ˙ l

 = ˜ a n+ l˜ f m -1( ) l - ˜ f i- 2n( ) l( )

3.3 H-1Z の 分 算

行列は iと j が共に 1 から n までの範囲にあるときは対 要素しかないので,下

式のように 分行列に分けて考える。

H=

m 0 0 00 O 0 00 0 m 00 0 0 h

È

Î

Í Í Í

˘

˚

˙ ˙ ˙

,

H-1 =

m-1 0 0 00 O 0 00 0 m-1 00 0 0 h-1

È

Î

Í Í Í

˘

˚

˙ ˙ ˙

同様に,Z も 分ベクトルに分けておく。但し,肩文字 Tは転置を表す。

Z = - ˜ f k1k

 L - ˜ f knk

 zTÈ

Î Í ˘

˚ ˙

T

これらを用いれば,(21)式は,次のようになる。

a = -m-1 ˜ f k1k

 L -m-1 ˜ f knk

 h-1z( )TÈ

Î Í ˘

˚ ˙

T