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三菱重工技報 Vol.52 No.4 (2015) 新製品・新技術特集
製 品 紹 介 54
低温熱源を利用したコンパクト高性能排熱回収装置
“HydrocurrentTM Organic Rankine Cycle (ORC) Module 125EJW”HydrocurrentTM Organic Rankine Cycle (ORC) Module 125EJW - Compact and High-Performance Waste Heat Recovery System
that Utilizes Low Temperature Heat Source-
三 菱 重 工 舶 用 機 械 エンジン株 式 会 社
事 業 統 括 本 部 舶 用 機 械 事 業 部
舶用タービン課
舶用の排熱回収装置は,船舶の燃料消費を削減することを目的に搭載され,結果として
CO2 等の汚染物質の排出を削減することができる。今回 Calnetix Technologies,LLC(本社は米
国カリフォルニア州セリトス,以下 Calnetix 社)と共同で開発したコンパクト高性能排熱回収装置
“HydrocurrentTM(注) Organic Rankine Cycle (ORC) Module 125EJW” は,従来利用できなかった
舶用主機エンジンジャケット冷却水などの低温熱源から排熱を回収し船内で消費する電力に変
換することができる。
本装置は,陸上向けの排熱回収装置として定評のあった Calnetix 社の標準機に,三菱重工
舶用機械エンジン(株)(以下,当社)が新たに開発したラジアルタービンを搭載している。既に,
日本海事協会(NK),ロイドレジスター(LRS)船級の承認を取得しており,当社の次期戦略製品
として市場へ投入した。
(注) HydrocurrentTM は Calnetix 社のトレードマーク
|1. 製品概要
本装置の仕様を表 1,構成を図1に示す。
表1 装置仕様
型式 HydrocurrentTM
ORC 125EJW
定格出力 125kW
冷媒 R245fa
発電機 タービン直結駆動
永久磁石同期発電機
熱源温度 85℃
回転速度 約 16000rpm(可変)
出力電圧 380V/440V
周波数 50Hz/60Hz
図1 装置構成
本装置の特長を以下に示す。 (1) 高効率
新開発したラジアルタービン(図2)による漏れ損失の低減及び磁気軸受による摩擦ロスの
無い支持構造により高効率化を達成した。
(2) コンパクト ラジアルタービン及び高速永久磁石発電機の一体化によりコンパクトな発電機を実現した。
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(3) メンテナンスフリー 半永久寿命の磁気軸受、発電機とタービンを一体化したモジュール構造により、冷却・潤滑装
置、外部とのシール構造を不要とした。
(4) 低温熱源対応 エンジンジャケット冷却水等の 80~85℃の低温熱源から排熱を回収し,直接,電力(最大
125kW)に変換可能とした。
図2 新開発したラジアルタービン及びノズル
|2. HydrocurrentTM ORC 125EJW の仕組み
本装置は,低沸点の有機熱媒体(R245fa)を作動流体として,熱エネルギーを機械的な力に
変換する熱回収プロセス(図3)を採用している。
① 有機熱媒体が蒸発器内を通り,熱源(エンジンジャケット冷却水)と熱交換を行い,過熱蒸気
に変化する。
② 高温の蒸気が,インテグレーテッドパワーモジュール(IPM)(図4)を通って膨張し,電力が発
生する。
③ 温度の下がった蒸気がインテグレーテッドパワーモジュール(IPM)から排出され,復水器に
入って冷却され,液体に戻る。
④ 冷却された有機熱媒体が冷媒ポンプで蒸発器へ送られ,上述のサイクルが繰り返される。
図3 HydrocurrentTM ORC 125EJW の熱回収プロセス
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図4 インテグレーテッドパワーモジュール(IPM)の構成
図5に,HydrocurrentTM ORC 125EJW の発電機出力とエンジンジャケット冷却水量との関係を
示す。
図5 発電機出力とエンジンジャケット冷却水量との関係
|3. 船舶用に最適な熱-電気ソリューション
今日,船舶に対する経済的な運航及び環境規制対策が強く求められている中,船の運航は,
燃料消費削減及び大気汚染物質の排出削減効果の高い減速運航が主体的に行われている。
従って,減速運航によって排熱として利用出来るエネルギーは減少し,従来型の蒸気タービン
駆動の排熱回収装置が成立しない状況がある。
HydrocurrentTM ORC 125EJW は,舶用主機エンジンジャケット冷却水などの低温熱源を利用
するコンセプトで開発されてきたので,従来の蒸気タービンでは使えなくなった船内の他の熱源
(主機の排ガスエネルギー,空気冷却器のエネルギー)も熱交換によって,不足する熱源を補う
為に利用すれば,低負荷運航での本装置の成立性を更に高めることが出来る(図6)。
図6 HydrocurrentTM ORC 125EJW と熱交換器
また,これまで排熱回収装置の導入が困難であった,中・小型船舶に対しても,排熱回収のニ
ーズが増えると予想される。これらのお客様へ本装置の導入を積極的に働き掛ける等,船舶用
に最適な熱-電気ソリューションの提案を推し進めていく。