女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … ·...

26
女性研究者支援モデル育成 事後評価 「工学系イノベーションの男女共同参画モデル」 機関名:学校法人五島育英会 東京都市大学 代表者名:中村 英夫 実施期間:平成 21 年度~平成 23 年度

Upload: others

Post on 03-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

女性研究者支援モデル育成 事後評価

「工学系イノベーションの男女共同参画モデル」

機関名:学校法人五島育英会 東京都市大学

代表者名:中村 英夫

実施期間:平成 21 年度~平成 23年度

Page 2: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

目 次

Ⅰ.計画の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ.所要経費 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

Ⅲ.目標達成状況

1.機関の概要及び考慮すべき背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

2.目標達成度

(1)採択時コメント等に対する対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

(2)目標達成度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(3)所期の計画どおりに進捗しなかった場合の対処 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

Ⅳ.機関の自己評価

(1)目標達成度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(2)取組の内容(妥当性・効率性) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(3)システム改革(成果・波及効果) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

(4)実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

(5)実施期間終了後における取組の継続性・発展性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

Ⅴ.成果の詳細

1.取組の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

(1)環境整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

(2)意識改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

(3)女性研究者の裾野拡大 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

(4)プラス 1Pj・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

(5)広がれ理工系 Pj ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

2.システム改革の成果及び波及効果

(1)システム改革の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

(2)取組のモデル性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

(3)情報発信 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

3.実施体制

(1)実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

(2)機関の長のコミットメント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

Ⅵ.実施期間終了後における取組の継続性・発展性

1.平成 24 年度の継続策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

(1)支援体制(支援室体制、人員等) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

(2)取組の継続状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

2.中長期的計画(平成 25 年度以降) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

3.「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の周知と推進状況 ・・・・・・・19

Ⅶ.参考図表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

Page 3: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

1

Ⅰ.計画の概要

■プログラム名:女性研究者支援モデル育成(事後評価)

■課題名:工学系イノベーションの男女共同参画モデル

■機関名:東京都市大学

■代表者名(役職):中村 英夫(学長)

■実施期間:3年間

■科学技術人材育成費補助金による実施経費(全期間分):121.1百万円

1.課題概要

(1)機関の現状

1)女性研究者の人数及び今後の見通し

①平成20年度の東京都市大学全体の女性比率10.8%

②平成17年度 教授1名、18年度 准教授1名と講師2名、19年度 准教授2名と講師2名採用、21年

度 准教授採用予定。今後も積極的な採用予定。

③平成20年度講師1名採用、19年度准教授2名、20年度教授1名、准教授1名と講師1名が昇格、今後

も積極的な昇格。

2)女性研究者支援に関する現在の取組状況

①女性研究者の積極的採用

②H19年度 学内の女性教員・技術者のネットワーク「女性の会」を設立

③学長直轄の委員会を設置のための男女共同参画準備会を設置

(2)計画構想

1)女性研究者のための具体的な取組

①プラス1Pj:各学科で1名の女性教員採用を促進する方策として、本学独自の教育講師制度を有効に

活用し、女性教員の採用の機会を増やし、女性が理工学の場に登場する機会を増やすPj。

②広がれ!理工系大Pj:現在、行われている室蘭工大との戦略的大学連携支援事業を足がかりに本学

が中心に理工学系大学との連携を図り、女性研究者や技術者の交流やロールモデルの提示を行い、男

女共同参画を推進するPj。

③科学とともだちPj:付属女子中高校と連携し、中等教育の場に理科支援を行うPj。

④ロールモデル発掘Pj:卒業生や女性研究者・技術者の情報を集め、ネットワークを構築するPj。

2)期待される効果

①プラス1Pj:女性の採用の機会の増加および女性研究者の発掘。

②広がれ!理工系大Pj:工学系大学の連携強化、理工系全体の男女共同参画推進。

③科学とともだちPj:理工系進路選択の裾野を広げ、次世代及び次次世代の育成推進。

④ロールモデル発掘Pj:卒業生や女性研究者・技術者の発掘。

Page 4: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

2

2.ミッションステートメント

(1)計画構想の概要

①「プラス1Pj」は学科に1名の女性を採用促進するための企画であり、女性研究者・技術者による特別

講義や講演会を開催する。 ②「広がれ!理工系大Pj」は理工系大学の男女共同参画推進を東京都市

大学が中心となって、理工系大学と連携して行う。 ③「科学とともだちPj」では、付属中高校の理科教員

とが連携して、女子中高校向けの理工系の実験開発や講義の支援およびロールモデルの提示を行う。

④「ロールモデルの発掘Pj」では卒業生や理工系女性研究者・技術者のネットワークを構築する。

(2)実施期間終了時における具体的な目標

①事業終了までの3年間でプラス1Pjにより、現在女性教員が配置されていない学科に1名配置すること

を目標とする。②事業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10.8%から15%に高め、工学

系では7.9%から9%(現在の2ポイントアップ)を目標とする。

③事業終了までの3年間で工学系の首都圏の私立大学男女共同参画推進のモデル校として、首都圏の

工学系他大学の情報発信基地として機能し、女性研究者・技術者の支援を共同で行えることを目標とす

る。④学内の女性研究者支援室の設置、女性研究者・技術者や女子学生の相談体制の整備をする。⑤

事業終了までの3年間でプラス1Pjにより、現在女性教員が配置されていない学科に1名配置することを

目標とする。⑥事業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10.8%から15%に高め、工学系

では7.9%から9%(現在の2ポイントアップ)を目標とする。⑦事業終了までの3年間で工学系の首都圏

の私立大学男女共同参画推進のモデル校として、理工学系他大学に情報発信基地として機能すること

を目標とする。⑧女性研究者支援室の設置、女性研究者・女子学生の相談体制の整備⑨卒業生や理工

系女性研究者・技術者のネットワークを構築

(3)実施期間終了後の取組

最終年度以降も支援体制をさらに充実していく。また、他大学との連携を強化し、連携支援体制を整えて

いくことで、全体的な強化を行う。

(4)期待される波及効果

本事業は他大学や研究機関を視野に入れた取組であることから、波及効果は大きい。プラス1Pj の活用

は他大学への、女性研究者の採用にもつながり、大きな波及効果が期待できる。

Page 5: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

3

3.採択時コメント

理工系大学への女性研究者増加をめざした取組をすでに行っている点や、ライフイベント支援を行う計

画構想等が評価された。女性教員が尐ない理工系の大学として、モデルケースとなり得るプランであり、

有効性や波及効果についても期待できる。 今後は早急に、全学的な女性研究者支援のビジョンを実現

するための具体的な取組を明確にすることが望まれる。また、女性研究者・女子学生支援として設置する

相談員への相談内容も踏まえて、よりニーズを捉えた子育て支援、意識啓発等の施策が計画実施される

ことが望まれる。さらに、採用される女性研究者の職位について、より上位職の女性研究者を求めることや、

自主経費を計画した継続可能なプランを策定すること等、女性研究者が活躍するための有効な施策とな

るよう留意し課題を実施していただきたい。

Page 6: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

4

Ⅱ.所要経費

(単位:百万円)

21年度 22年度 23年度 備考

1.人件費

(1)特任准教授

(2)特任講師

(3)助手

(4)業務担当職員

(5)補助者

2.業務実施費

(1)消耗品費

(2)国内旅費

(3)外国旅費

(4)外国人等招へい旅費

(5)緒謝金

(6)会議開催費

(7)通信運搬費

(8)印刷製本費

(9)雑役務費

3.設備備品費

(1)パソコン等

4.間接経費

人材育成システム改革促進費

4.8

(1名)

5.2

(1名)

――

(0名)

0.8

(2名)

2.1

(7名)

0.9

0.5

0.5

――

0.7

0.5

0.1

1.4

3.4

0.8

6.5

――

10.7

(1名)

8.4

(1名)

――

(0名)

1.9

(2名)

3.3

(14名)

3.1

0.9

0.7

0.3

0.2

――

0.3

1.9

5.9

0.5

11.4

――

10.7

(1名)

――

(0名)

7.2

(1名)

――

(0名)

3.9

(9名)

0.8

0.3

0.7

0.7

0.5

1.1

0.3

1.5

14.4

――

――

1.5

室長

コーディネーター

コーディネーター

支援研究員

研究支援員

書籍、文具等

国際シンポジウム

講師・パネリスト

シンポジウム会場費

ロールモデルパン

フレット印刷等

主催展示企画、H

P製作

計 28.1 49.4 43.6 総計 121.1

Page 7: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

5

自己資金

(1)人件費

(女性教育講師:3名)

(2)事業実施費

9.0 ――

9.0 2.6

9.0 0.1

計 9.0 11.6 9.1 総計 29.7

注:人件費は、科学技術人材育成費補助金により人件費を支出している本人材養成業務に従事する者

を職階(教授、准教授、主任研究員、研究補助員等)に分けて、年度毎に従事人数とともに記載。

Page 8: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

6

Ⅲ.目標達成状況

1.機関の概要及び考慮すべき背景

東京都市大学は “工学教育の理想”を求める学生たちが中心となって創設された、日本においてき

わめて稀な学生の熱意が創り上げた私立武蔵工業大学が前身である。平成21年に文系学部を設置し

て総合大学となるが、学生たちが掲げた建学の精神である「公正・自由・自治」は、83年経った今も工学

技術の研究と教育において受け継がれ、55,299名の卒業生を社会に輩出し、わが国の工業技術への

人材育成に貢献してきた。この間の博士前期課程5,844名(平成24年3月現在)、博士後期課程125名

(平成24年3月現在)を輩出している。

平成9年度に長い伝統であった工学系私立単科大学の殻を破って文理統合型の環境情報学部を新

たに設置し、ひとつの分野にとらわれない「環境」と「情報」を文系・理系の枠を超えて、学際的なアプロ

ーチを試みる画期的な学部として、徹底したエコロジカル思想と先端のネットワークシステムを実現した

キャンパスで人材育成を行っている。平成10年には日本の大学で初の認定となるISO14001を取得し、

廃材や雤水の活用、証明・空調の省エネルギー対策など、人と自然の共生を強く意識して設計された

エコ・キャンパスで学ぶ環境が整っている中で、教職員、学生、構内に常駐する委託業者全員が環境

マネージメントシステムに参画し、環境問題解決に取り組んでいる。さらに平成19年には情報関連分野

はもちろんのこと、社会基盤やビジネス・産業会に至るまで、幅広い分野で情報工学をベースに未来を

拓く最先端学部として知識工学部と工学部で行われていた医療関係のさまざまな研究を、独立した学

科として統合し、医学・機械工学・電子工学の学際領域で現代医療のさまざまな問題解決に挑む複合

技術のエンジニア育成を目指し、生体医工学科を開設した。

平成20年には科学技術を基に、環境にやさしい明日のクリーンエネルギーを創出することを目指し、

エネルギー材料化学、エネルギー変換化学、エネルギーシステムの3つの視点からアプローチする本

学初の化学系学科であるエネルギー化学科を開設、また昭和35年から日本の原子力教育に貢献して

きた本学の原子力研究所の成果を基盤に、国家的要請に応える形で原子力安全工学科を開設した。

本事業が採択された平成21年4月には東横学園女子短期大学と統合し、「都市」と「人間」を考える新

しい視点の導入として文系学部である都市生活学部と人間科学部を新設し、総合大学として新たな一

歩を踏み出した。さらに、校名も新たに「東京都市大学」に変更し、人類の未来を総合的にとらえること

のできる人材の育成を目指している。本学はまさしく『改革』の波の上にあり、都市部の工学系の大学と

して、誇りを持ち、私立の新しい工学系大学の舵取りを学長の強いリーダーシップの下、推進している。

また、本学は「就職に強い」と言われ、「エンジニア」の育成には関東地区ではトップ10に入る伝統があ

り、「技能者」の技術向上を目指す教育機関がある中で、創立時から「エンジニア」育成志向が強い大学

として多くの技術系企業に優れたエンジニアを送り続けてきた。卒業生の結束も磐石である。

卒業生のほとんどが男性で占められている中、男女雇用機会均等法が成立した1985年から女子学生

が尐しずつ増え始め、年々尐ないながらも増加傾向にある。今20代・30代の女性卒業生の技術者の活

躍が見られるようになった。しかし、工学系の教員は男性社会のまま、女性の活躍の場を探る試みはな

かなか進んでいない。数名の女性教員だけでは女性がいるという意識すら薄い現状がある。

Page 9: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

7

これからは男女を問わない多様な人材を積極的に活用・開発し、研究・教育の場に新しい視点や発

想から新たな価値を創造し、社会に大きな変化をもたらすような工学分野のイノベーションが必須であり、

技術立国日本を活発化していくことにつながる。さらに近年、分野横断的な研究が増え、多方面からの

視点からの見方が重要になってきている。また、教育においても留学生、女子学生、ハンディキャップを

抱えた学生など多様な教育法が求められている。大学は学生にとって社会進出の準備期間であり、学

生のその後の考え方、生き方に影響力を及ぼす。最高学府である大学は一人の人間の社会の一員とし

ての自覚や考え方に大きな影響を及ぼすことになる。日本の大学で育成される学生の7割が私立大学

で行われている現状を考えると、私立大学の役割は大きい。ましてや男女共同参画の分野では一歩も

二歩も遅れている工学系大学がイノベーションのうねりを感じ、社会的に大きな変化をもたらすような自

発的な人材を育てる場を作ることは、3.11を経験した日本社会にとって大きな力となる。さらに、科学立

国を担う日本の工学系大学の役割は大きい。

2.目標達成度

(1)採択時コメント等に対する対応

採択時コメント:今後は早急に、全学的な女性研究者支援のビジョンを実現するための具体的な取り組み

を明確にすることが望まれる。

対応:全学的な女性研究者支援のビジョンを実現するために、以下の方法で具体的な取り組みを企画し、

周知させた。

・ 学長を委員長とする男女共同参画委員会を立ち上げ、その下に女性研究者支援室を置いた。

・ 男女共同参画委員会の構成メンバーは学長、学部長、総合研究所所長、事務局長、教務委員長、

学生部長、女性研究者支援室長、その他学長が必要と認めた者で構成され、基本的理念、方策の

企画・立案、現状分析、課題の把握及び対策、啓発活動や広報活動の在り方などを審議する。

・ 女性研究者支援室は委員会が決定した男女共同参画に関する方策を推進・実施する。

・ 女性研究者支援室は室長、プロジェクト担当責任者、室員、コーディネーター、支援員で構成され、

室員は学部長が専任教職員の中から指名され、全学の教職員への情報共有がなされる形になっ

ている。

・ 各年度終了時に次年度計画を策定し、それに従い女性研究者支援室が、具体的な企画を練り、実

施し、各学部代表の室員が各学部に持ち帰り周知した。

採択時コメント:女性研究者・女子学生支援として設置する相談員への相談内容も踏まえて、よりニーズ

を捉えた子育て支援、意識啓発等の施策が計画実施されることが望まれる。

対応:女性研究者へのニーズを捉えるために、相談室を開設する前段階として、相談体制を整備した。

・ 女子学生支援に対しては、既に設置されている学生相談室やセクハラ相談員からの情報を入手し、

情報を共有することをした。

・ 意識啓発に関しては、全学に活動を知ってもらうために、全学教職員討議での発表、学部長への

説明活動、各学部教授会での理解活動などを通して、室員からの発信がスムースに行われるよう努

めた。

Page 10: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

8

・ 意識啓発の施策は男女共同参画委員会の方針に従い、女性研究者室の室長、プロジェクト担当責

任者、コーディネーター、支援員で具体的に企画され、女性研究者支援室会議に提出にされ、実

施する形をとった。

・ それぞれの企画は、常に各学部の室員にメールで連絡、SOFERSLetter、ポスター掲示、教授会で

の連絡などを通して周知する努力をした。

採択時コメント:採用される女性研究者の職位について、より上位職の女性研究者を求めることが望まれ

る。

対応:

・ 女性研究者の採用やより上位職を即す活動として、学長・事務局長へ適時アクションを起こした。

・ 学部長への理解活動、学科長への理解活動を女性研究者支援室が担当し、理解活動を行った。

・ 各学科の現状把握のためのヒアリングを実施した。

採択時コメント:自主経費を計画した継続可能なプランを策定すること等、女性研究者が活躍するための

有効な施策となることが望まれる。

対応:自主経費を計画した継続可能なプランは以下のようなものが有効となる。

・ 本大学は女性研究者が尐なく、男性と同じ環境で活躍しているケースが多いため、継続可能なプラ

ンの中心として、女子学生を含んだ次世代の人材育成に力を入れている。

・ 女性教員採用のきっかけ作りとして、学長提案の教育講師制度の採用と継続促進

・ 女性研究者の男性と同等な評価、上位職の採用と昇格促進

・ 男性の教職員の意識改革

(2)目標達成度

①目標:事業終了までの 3 年間でプラス 1Pjにより、現在女性教員が配置されていない学科に 1 名配置

することを目標とする。

達成状況:

・ 女性教員ゼロ 7学科をプラス 1Pjにより、4学科に女性教員を配置、ゼロの学科は 3学科

・ 自主経費により 3人の女性教員を採用

・ 教育講師制度の採用

・ 3 年間で工学系学科すべてに女性教員の配置はできなかったが、女性教員の門戸を開く効果があ

り、目標を達成

②目標:事業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10.8%から15%に高め、工学系では

7.9%から9%(現在の2ポイントアップ)を目標とする。

達成状況:

・ 本学全体の女性教員数は21名であったのに対し、現在44名となり、女性研究者比率10.8%から

15.7%に大幅に増加し、目標達成。

・ 工学系では事業開始時女性教員数18名であり、事業終了の3年間で23名になり、比率は7.9%から

9.2%に到達し、目標達成。

Page 11: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

9

③目標:事業終了までの3年間で工学系の首都圏の私立大学男女共同参画推進のモデル校として、首

都圏の工学系他大学の情報発信基地として機能し、女性研究者・技術者の支援を共同で行えることを目

標とする。

達成状況:

・ 平成21年度は室蘭工業大学、日本女子大学や関東圏理工系大学である芝浦工業大学、東京電

機大学、東京農工大学との情報交換、東京医科歯科大学及び首都東京大学東京の副学長との意

見交換

・ 平成22年度は、室蘭工業大学との連携を諮り、3回の情報交換、教職員向けに「工学系の男女共

同参画の必要性」と学生向けに「男女共同参画について」の講演会の実施、弘前大学の意見交換、

国際シンポジウムでニュージーランド、韓国、米国の女性研究者との意見交換

・ 事務局の協力のもと、平成23年度は首都圏の理工系大学のネットワーク私工大懇話会課長連絡協

議会(14校参加)での連携強化の呼びかけ、首都圏の私工大の男女共同参画連絡会の立ち上げ

を検討

・ 平成24年5月芝浦工業大学の学長室への取り組みの説明と意見交換実施

・ 平成24年7月日本私立大学協会との連携強化に発展

④目標:学内の女性研究者支援室の設置、女性研究者・技術者や女子学生の相談体制の整備をする。

達成状況:

・ 平成21年度女性研究者支援室の設置、同室に女性研究者相談室を開設

・ 平成22年度女子学生の相談室開設

⑤目標:卒業生や理工系女性研究者・技術者のネットワークを構築

達成状況:

・ ロールモデル発掘 Pj として、女性卒業生へのアンケートを計画し、そこからネットワークを構築した。

・ 平成 21年度 女子学生向けに本学で働く女性研究者のロールモデル集「TCU ROLE MODEL

VOL.1」を作成

・ 平成 22年度 本学の女性卒業生として各学科推薦で、企業で活躍している卒業生のロールモデ

ル集「TCU ROLE MODEL VOL.2」作成

・ 平成 23年度 アンケート調査をきっかけにネットワークで繋がった女性卒業生を中心としたロール

モデル集「TCU ROLE MODEL VOL.3」を作成

(3)所期の計画どおりに進捗しなかった場合の対処

・ 子供たちの夢工房―学内教職員の子供対象の事業

夏期休暇期間中、本学教職員の小中学生の子どもを預かり、学内の施設を利用して工学的な要素の

学習・実験体験プログラムを予定していた。しかし、東京都心という立地条件の為、多くの教職員の通勤

時間は1時間以上かかり、ラッシュアワーの時間帯に子どもを連れての出勤は困難であるという理由から

希望者がいなかった。

・ 保育園設置

Page 12: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

10

同じく保育園設置の検討を行ったが、上記の理由とニーズがないことで、取り上げることができなかっ

た。

・ ベビーシッター補助等の導入

財団法人子ども未来財団「ベビーシッター育児支援事業」の導入なども検討したが、平成21年度から

平成22年度の期間はベビーシッターを必要とする女性研究者がいなかった。平成23年度には育児休業

から復帰した女性研究者が1名いたが、導入に当たっては大学の事務組織だけではなく、大学グループ

の上部組織の法人組織の了承も必要となり、1名だけの為にはなかなか働きかけがうまくいかなかった。

本学は中堅の研究者を採用することが多く、育児が必要な年代の女性研究者が採用されることは稀であ

る。ニーズが尐ない中で、ベビーシッター補助等の導入の希望は非常に難しいが、生み育てやすい環境

づくりの必要性から機会を見ながら要望していきたい。

Ⅳ.機関の自己評価

(1)目標達成度

本事業の申請時から、学長の主導のもとこの事業計画が進められた。それぞれの目標はほぼ達成した

が、工学系の風土はトップダウンの主導でも迅速な体制の改革は非常に難しかった。本事業を進めるに

あたって、全教職員に現在の社会状況や女性に関連する情報提供をし、この問題に対しての意識を高

めることが非常に重要であり、「意識改革」が大きな柱となることがわかった。「工学系イノベーションの男

女共同参画モデル」という課題にあるように、3年間の地道な意識改革によって、やっと本学の機軸である

工学系男性中心の学風に一石を投じたところである。また本学の取組が、同じような規模の私立工学系

大学のモデルとなりその取組が注目されている。今、まさに私立大学の工学系イノベーションのエンジン

が駆けられたところである。

工学系女性教員は、女性教育講師 3 名の採用もあり 11 名から 16 名に増加した。女性教育講師は任

期付き採用とはいえ平成 21 年度からスタートし平成 24 年度も雇用を継続している。女性の働く場を提供

するだけでなく男女が共に働けるという職場環境を整えるきっかけとなった。しかし、これはきっかけであっ

て、これからその継続維持し、さらに環境を整える継続策を今後も全学的に大きな力で講じなければなら

ない。そういった意味では、「女性研究者養成システム改革加速」プログラムが中止されたことは残念でな

らない。

本学の事業が大きな成果を挙げつつある大切な要因としては、採択時の学長の助言が大きい。それは、

このような事業を進める女性研究者支援室の専任スタッフに理工系女性研究者を採用しなかったことで

ある。室長、コーディネータとそれを補佐する者ともに、本事業に専念できることを前提に選んだことで、

学部、学科の隅々まで入り込みニーズをとらえることができ、大きな推進力となった。

日本の大学教育の場で 70%もの学生を育てている私立大学のさらに理工系が変革をしなければ、日

本の全体は何も変わらない。本大学の本事業は私立大学の理工系の「男女共同参画のイノベーションモ

デル」として大いに成果があったと評価する。

(2)取組の内容(妥当性・効率性)

モデルとなるプロジェクトは、女性研究者を増やす方策のプラス 1Pj は分かりやすく、理解しやすいと学

内外の評価が高かった。

ロールモデル発掘 Pj はまさしく、工学系の長い伝統の中で尐数ながら輩出してき、今社会で活躍して

Page 13: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

11

いる女性技術者の自学のロールモデルとして、いかに活用するかというプロジェクトである。これもネットワ

ーク構築でき、今後多いに継続的に活用できる方策であった。

工学系を選択する女子が尐ないという実態を踏まえ、物理の楽しさを伝えるプロジェクトとして「科学は

ともだち Pj」を立ち上げたことは、科学の芽を育てる大事なことである。さらに、学内では科学はともだち Pj

の理解が高く、この活動を通して、女性研究者支援室の活動の広報と理解が深まった要因となっている。

広がれ理工系 Pj は、現時点で女性研究者が尐数の大学が連携しなければ女性研究者や教員を増や

していけないという実体験から、発想したプロジェクトであり、室蘭工業大学を始めとして関東の理工系大

学へと広げたことは大いに評価でき、モデルとなると考える。現在は日本私立大学協会との連携が行わ

れつつある。

それぞれの取り組みは全体として、学内の意識改革を促進することが目的である。意識改革をしない

限り取り組みは推進していかない。工学系では教職員、男性女性に関わらなく長い間培われた意識は簡

単には崩せない牙城である。そこに浸透するためには、毛細血管のように細部に入り込み、栄養を入れる

ような活動が必要である。本大学が期間中に行ったシステム改革の特徴は、多くの場合学内教職員に分

かりやすい取り組みを行い、常に情報発信をしていくという心がけである。その効果は 3年後の今大きくな

り、妥当性があり、効率性もあったと評価できる。(詳細はⅤ.成果の詳細 1.取組内容を参照)

(3)システム改革(成果・波及効果)

本大学が示したシステム改革は(2)で示したように、3年たった現在、学内外から大きな評価を得、今後

の波及効果が期待できる。

・ 学校法人五島育英会:平成 22 年次世代育成支援対策推進法に基づき、教職員が仕事と子育てを

両立させることができ教職員全員が働きやすい環境を作ることによって、全ての教職員がその方力

を十分に発揮できるようにするため、一般事業主行動計画を策定し、HP 上で公開した。計画期間

は平成 22年 12月 15日から平成 27年 12月 14日までの 5年間としている。その内容には本活動

が盛り込まれており、活動の妥当性が評価される。

・ 傘下の東京都市大学塩尻高等学校の年間計画の中にも、女性研究者支援室との協力で女子生徒

を増やす目標が示されている。

・ 室蘭工業大学の男女共同参画室の設置に貢献

・ 芝浦工業大学の男女共同参画推進のモデルとして貢献

・ 日本私立大学協会を通じて全国私立大学 390校への男女共同参画情報の発信基地として貢献

・ 関東圏の私立理工系大学の連絡会設置に向けて始動

(4)実施体制

「V. 成果の詳細、3. 実施体制、(1)実施体制」を参照

(5)実施期間終了後における取組の継続性・発展性

実施期間終了後は、理工系女性研究者支援活動を学内全体に拡張していき、男性研究者も女性研

究者を対象とした男女共同参画室が推進母体として活動を継続する。男女共同参画室の人員と経費の

確保が継続的に約束されている。本補助事業で実施したプロジェクトの継続を行い、理系、文系を問わ

ず、男女共同参画を根付かせていく施策にも積極的に取組んでいく。

Page 14: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

12

Ⅴ.成果の詳細

1.取組の内容

(1)環境整備

①支援室の整備

平成21年7月、本学学長を委員長とした男女共同参画委員会およびその下部組織として女性研究者

支援室(SOFERS)を設置した(東京都市大学男女共同参画委員会規程及び東京都市大学女性研究者

支援室内規を制定)。女性研究者支援室は、世田谷キャンパス1号館に部屋を設置し専任室員3名と学

内教職員から選ばれた室員16名で構成し、運営を行った。学内周知には、教職員が一同に集まる9月の

全学討論会で、プロジェクト担当責任者である岡田から趣旨説明を行った。また、10月にはキックオフシ

ンポジウムを開催し、学内外に向けて事業開始をアピールした。女性研究者支援室が設置されていた1

号館が建替えのため、平成24年3月同キャンパス内の2号館に専任職員のデスク及び相談スペースを移

転した。

②相談室の整備

女性研究者支援室開設の7月には相談室としてのスペースが確保できなかったが、主に執務室で女性

研究者から相談を受ける体制をとった。平成22年4月に執務室の隣に相談室を設置することができ、女性

研究者だけでなく女子学生からも相談を受ける環境を整備した。相談室は、相談対応としての利用だけ

でなく女性研究者同士の情報交換の場として活用された。しかし、特に女子学生の初年度の相談室利用

頻度は尐なかったことから、認知度と必要性が広まっていないことが原因であると判断し、SOFERS Letter

やHP、パネル展示、ポスター掲示などで相談室の周知に力を入れたことにより次第に相談数は増加し

た。

(女性研究者への相談対応) 相談延べ件数 H21:25件 H22:18件 H23:36件

平成21年度には、出産・育児中の女性研究者に研究支援員を配置し、研究をサポートするにあたり、

女性研究者から現状抱えている問題などについての相談を受けた。さらに、出産を控えた女性研究者へ

の対応として、学科主任や本人から相談を受け、安心して妊娠期間中を過ごし、産前産後休暇及び育児

休暇を取得できる環境を学科全体で調整することができた。平成22年度は引き続き女性研究者、職員向

けに常時相談室を開設するとともに、月1回程度の任意参加の学内女性教職員の交流の場‘井戸端ラン

チ’や3月の国際女性デーを中心に茶話会などを催し、意識の共有を深めた。女性研究者が相談室を利

用することは時間や仕事上制限があることからも、平成23年度はメールやランチタイムを利用し、ニーズに

応じて臨機応変に対応した。相談内容としては、普段の職場では話題にできない子育てに係る内容が多

かった。

(女子学生への相談対応) 相談延べ件数 H22:5件 H23:20件

平成22年4月に相談室を開設した。平成22年度11月に女子テニス部との交流会「リケジョはスポーツも

高みを目指す!」を開催したり、平成23年3月に「東京都市大の女子力」をテーマに女子学生と交流する

機会を積極的に設けるなど、女子学生が気軽に相談に来やすい体制を整えた。平成23年度にも引き続

き、常時相談室を開設して相談にあたったが、大学全体に学生相談室とハラスメント相談室があり、女子

学生の相談と比較的近いハラスメント相談も大学全体で尐ないことから、それほど多くの相談がないこと

Page 15: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

13

は事実である。しかし、工学系では男性教員が進路指導を行っている場合が多く、女子学生が必要とし

ている情報や相談を満たしているとは限らない。女子学生への相談体制としては、上級生や女性教員、

卒業生などを介すことで的確にアドバイスできることもあり、個々人のニーズに応じて臨機応変に対応した。

女子学生からの相談内容は、進路相談、研究室の人間関係、就職への不安など、多岐にわたるものであ

った。

③研究支援員の配置(費用:9.2百万円)

・被支援女性研究者:4名

・研究支援員の総人数:21名

・支援期間の延べ月数:33ヶ月

平成21年度は義務教育期間中(中学生まで)の子供を持つ女性研究者(2名)を対象に、研究支援員

の配置についてニーズを聞きとりながら、基本、子供1名につき週16時間の研究支援員を配置した。Aは

小学6年生1名、B氏は5歳、小学2年生、小学5年生の3名であった。また、年度末には出産を控えた女性

理工系教員C氏と所属する学科主任からの相談を受け、安心して妊娠期間中を過ごし、産前産後休暇及

び育児休暇を取得できる環境を調整し、研究支援員を配置した。

平成22年度は4名の女性研究者を対象に支援した。A氏(中学1年生1名)、B氏(6歳、小学3年生、小

学6年生3名)、C氏(育児休暇中)、D氏(小学校2年生1名)に子供1名につき基本、週16時間の研究支援

員を配置した。

平成23年度は育児期間(小学生以下の子供をもつ)中の女性研究者3名に、子供1名につき基本、週

16時間の研究支援員を配置した。また、女性研究者の育児休業復帰支援活動および女性研究者の状

況聞き取り調査を行い、復職後のサポート体制についても整備した。

(2)意識改革

①展示(費用:2.0百万円)

平成23年6月には、「ひらめきキラメキ輝き都市大テクノレディ~共に学び・に共に働き・共に築く」をテ

ーマとし、ロールモデルとして学内の女性研究者及び大学院生の紹介を中心とした自主企画展を世田谷

キャンパス図書館ギャラリーにて1ヶ月間開催した。研究内容以外にも人柄の紹介など、女性研究者の多

面的な魅力を打ち出す内容となった。こうした展示は学内での評判も良く、PR効果が高いことから、平成

24年3月には、「これからの男女共同参画の取り組みに向けて」をテーマとしたSOFERS展も開催した。

平成23年11月には、学祭兼オープンキャンパスにおいて、LIPS(Ladies In Presentation of Science)展

を開催した。工学系を目指す女子中・高校生を中心に学内外に向けて、本学の工学系女子学生がどの

ような勉強・研究をしているかについてポスター展示であった。

②セミナー・講演会(費用:0.1百万円)

平成21年度から平成22年度にかけて計5回、本学の女性研究者がどのような研究に取り組んでいるか

を教職員に周知することを目的とし「女性研究者紹介セミナー」を開催した。また、学内の教職員を対象と

し、男女共同参画事業の取り組みに必要な基礎知識を学ぶ勉強会として「ステップアップ・セミナー」を計

2回開催した。平成22年11月には学生のキャリア教育の一環として、知識工学部からの依頼により、学生

約180名を対象に男女共同参画についての講演を行った。

Page 16: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

14

③学内教職員アンケート調査(費用:4.0百万円)

平成22年1月には、本学全教職員を対象に男女共同参画に関するWebアンケート調査を実施した。平

成23年2月には工学部・知識工学部合同教授会でクリッカーを用いたアンケート調査を実施した。調査結

果は、2009年度活動報告リーフレットおよびANNUAL REPORT 2010に掲載した。

④キックオフシンポジウム・国際シンポジウム(費用:5.9百万円)

平成21年10月に、キックオフシンポジウムを開催した。学内外から214名(学内177名、学外37名)の参

加者があり、本事業の開始を学内外にアピールすることができた。平成22年10月には本学で初めての国

際シンポジウム「男女共同参画社会における女性研究者のエンパワーメント~国内外の研究環境の比較

~」を等々力キャンパス教員との共催で行った。学内外から140名(学内110名、学外30名)の参加者があ

り、海外と日本との男女共同参画の意識の違いなど多様な議論を交わすことができた。また、平成24年2

月に成果報告国際シンポジウムを開催した。学内外から111名(学内44名、学外67名)の参加者があり、3

年間の事業成果報告とともに次年度への方向性を見出す意義のある内容であった。

⑤ニュースレター(費用:0.3百万円)

平成22年度にニュースレター(SOFERS Letter)を創刊し、平成22年度にNo.1~No.5、平成23年度に

No.6~No.12を発行し、全教職員がSOFERSの活動を身近に感じることのできる情報発信に努めた。

⑥HP(費用:2.4百万円)

平成22年2月に女性研究者支援室HPを開設し、更新頻度と内容品質の向上に努め、情報発信や情

報収集の場として積極的に活用した。

⑦パンフレット・報告書による広報(費用:0.7百万円)

平成21年11月には「女性研究者支援室事業内容紹介パンフレット」を作成し、SOFERSの活動周知に

努めた。また、平成21年度の活動報告として、「2009年度活動報告」のリーフレットを作成し、平成22年度

の活動報告として、「SOFERS ANNUAL REPORT 2010」のリーフレットを作成した。学内全教職員へ配布

し、SOFERSの活動を周知した。

⑧その他

平成23年12月には、男性教職員のイクメン交流会を開催し、男性との意識共有にも力を入れた。また、

SOFERS Letterでも、育メンリポートとして学内のイクメンを取り上げることで、男性教職員の間にも理解者

を増やすことができた。

(3)女性研究者の裾野拡大

①ロールモデル発掘 Pj(費用:8.9百万円)

(ロールモデル集の作成、企画展の実施)

現役女子学生、女性卒業生、女性研究者のネットワーク構築に向けた取り組みの一環として、ロールモ

デル発掘Pjに取り組んだ。平成21年度には、本学で働く女性研究者のロールモデル集「TCU ROLE

MODEL VOL.1」を作成した。平成22年度には、ロールモデル発掘対象を特に本学の女性卒業生とし、

Page 17: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

15

各教授からの推薦で、企業で活躍している卒業生のロールモデル集「TCU ROLE MODEL VOL.2」を作

成した。さらに、平成23年度は、当年に実施したアンケート調査をきっかけにネットワークで繋がった女性

卒業生を中心としたロールモデル集「TCU ROLE MODEL VOL.3」を作成した。これらのロールモデル集

は、HPや国際シンポジウムの機会などを活用して、配付した。また、ロールモデルとして学内の女性研究

者及び大学院生の紹介を中心とした自主企画展の開催などを通して、研究内容など、女性研究者の多

面的な魅力を打ち出した。こういった紹介により、在学生により分かりやすいロールモデルを提示できるこ

とや、在学生や高校生へのより身近な将来像をイメージしてもらう効果につながると考える。

(女性卒業生アンケート調査)

平成23年に、本学の同窓会組織の協力を得て、住所が判明している女性卒業生を対象に郵送による

アンケート調査を行った。郵送数2,233名のうち、525名から回収ができ高い回答率を得た。注目すべき内

容として、本学の卒業生は、卒業時82%という高い就職率であり、現在平均15年経過した時点でも76%

の就業率を維持している。さらに就業形態としては、正規フルタイムが80%と抜群の安定度を誇っている

ことが判り、理工系女子の職業意識と使命感の高さを浮き彫りにした。この結果報告書をパンフレットにし、

大規模アンケート報告会を開催し、関係7大学および20社のメディアの参加により、理工系女性研究者等

のデータを広く共有することができた。学内では全教職員に配布し、本学女性学生への今後のキャリア指

導に繋がるものとなった。

(女性研究者のネットワーク作り)

ネットワーク構築に向けての取り組みとして、学内の意識が高まらない状況であった初年度はいかに学

内の教職員の協力を得るかの取り組みが必要となった。初年度のロールモデル集「TCU ROLE MODEL

VOL.1」は学内女性研究者への理解を得る活動として、学内の女性研究者のインタビューを中心としたロ

ールモデル集VOL.1の作成は大いに意味があった。さらに、2年目のロールモデル集「TCU ROLE

MODEL VOL.2」は学科教員の推薦による卒業生が中心で構成され、学科教員の理解活動に役立ち、

結果として、卒業生の会である武蔵工業会への協力に繋がった。このことにより、3年目の2,233名の女性

卒業生へのアンケート調査を実施でき、上記のような成果を得ることができた。「TCU ROLE MODEL

VOL.3」は卒業生中心の構成となり、ネットワークの構築ができた。

さらに、海外でも本学の男女共同参画の取り組みを積極的に発表し、世界の科学技術領域で活躍す

るロールモデルとの交流を深め情報交換を行った。海外のネットワークを利用し、2年目の国際シンポジウ

ム、3年目の成果報告国際シンポジウムの講演者として国際的に活躍している理工系の女性研究者を招

へいし、海外の女性研究者の環境や意識を学内の教職員や学生に提示することができた。

②科学とともだちPj(費用:2.7百万円)

平成21年度には、東京都市大学等々力女子中学校・高等学校や付属中学校・高等学校、塩尻高等

学校と連携し、女子の理工系進路支援の基盤づくりを行った。具体的には、各学校の校長および幹部教

員に趣旨を説明し共通認識を持ってもらうとともに、プロジェクトへの協力依頼を行った。また、理科の面

白さや身近な生活での理科の知識の必要性などを実験や講義を通して周知・広報した。具体的には、子

供のためのエネルギー教室(12/13、日本科学技術館)講師や原子力・エネルギーに関する支援事業の

一環として福島県郡山市立多田野小学校への出前事業(1/26)を行い、福島民友新聞(1/28)記事で紹

Page 18: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

16

介された。また、川崎市立南菅小学校において科学体験教室を開催(2/23)し、小学生や学校関係者から

好評を得た。この様子は読売新聞(3/6神奈川版)に掲載された。さらに、理工系で活躍しているロールモ

デルの女性研究者・技術者と連携しながら、科学とともだちPjを実施する体制の構築を進めた。具体的に

は、ロールモデルの発掘Pjで作りつつあるネットワークを活かして、女子中高生夏の学校での体験発表や、

仕事についてのQ&Aなどで直接女子中高生との対話を行った。

平成22年度には、地元商店街で小学生向け「科学体験教室」を開催し、地元の父兄、次世代層と交流

した。本学付属塩尻高校にて「原子力講座」「光はエネルギー、音はエネルギー」の講演と実験教室を行った。

世田谷区教育委員会主催科学体験教室「放射線教室」や、藤沢市大庭中学校「大気圧、真空、真空放

電」に協力した。その他、東京家政大学、茨城県生子小学校、東急グループキッズプログラムへの協力など多

くの依頼への対応や、自主企画を実施した。

平成23年度は、前年度までの経験を活かし、川崎市立南菅小学校にて「科学体験教室」「放射線教

室」「原子力発電のしくみ」、はるひ野中学校で「真空から原子力発電まで」でさらに進化した実験プログラ

ムを投入した。このほか世田谷区民会館での「放射線教室」、世田谷教育委員会主催の「実験教室」、本

学世田谷キャンパスでの「ちびっ子科学者未来へのチャレンジ」、尾山台商店街フェスティバル、足立区

立生涯センターでの「親子の放射線実験教室」などを行った。また、福島県立福島高校足立区生涯セン

ターでの「親子の放射線実験教室」などを行った。福島県立福島高校のサイエンスクラブによる本学原子

力研究所訪問受け入れを行った。女子中高生夏の学校にも参加した。

(4)プラス1Pj

本事業開始時、工学系12学科中、女性教員ゼロ学科は、工学部機械工学科、機械システム科、電気

電子工学科、建築学科、都市工学科、知識工学部情報ネットワーク工学科、経営システム工学科の7学

科であった。プラス1Pjにより、平成22年度から、工学部機械工学科、電気電子工学科、知識工学部経営

システム工学科に女性教育講師が各1名採用され、建築学科は独自に女性講師を1名採用した。また、

平成22年度に原子力安全工学科の女性准教授が原子力研究所に異動になったことにより、原子力安全

工学科も女性ゼロ学科となっていたが、平成24年4月1日付けで原子力安全工学科に1名採用となった。

よって、常勤の女性教員ゼロの工学系学科は、工学部機械システム科、都市工学科、知識工学部情報

ネットワーク工学科の3学科のみとなり、3年間で4学科に女性教員を配置することができた。また、2学科

に複数の女性教員が配置された。

(5)広がれ理工系Pj

平成21年度の本学キックオフシンポジウムでは、室蘭工業大学、日本女子大学や関東圏の理工系大

学である芝浦工業大学、東京電機大学、東京農工大学のパネリストが集まり、各大学の男女共同参画進

捗状況や女性研究者などの情報を共有し、今後も連携して男女共同参画を進めることを確認した。東京

医科歯科大学及び首都東京大学東京の副学長と、男女共同参画の取り組みについての意見交換会を

行った。

平成22年度には、室蘭工業大学との連携で、3回の情報交換と、教職員向けと学生向けの講演を行っ

た。また、国際シンポジウムを開催し、ニュージーランド、韓国、米国から女性研究者を招聘し、海外の男

女共同参画の取り組みや意識の違いを共有した。

平成 23年度には、首都圏の理工系大学のネットワーク私工大懇話会課長連絡協議会(14校参加)に

Page 19: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

17

出席し、本学女性研究者支援室の取り組みを紹介し、男女共同参画の推進についての連携強化を呼び

かけた。首都圏の私工大の男女共同参画連絡会の立ち上げを検討した。

この取り組みを基礎として、女性の尐ない理工系大学へ向けて、平成 24年の成果報告国際シンポジウ

ムでは、私立大学の連携を呼びかけ、新聞などに取り上げられ、大きな成果になった。平成 24年度初頭

には芝浦工業大学の訪問および日本私立大学協会との連携が計画されている。

2.システム改革の成果及び波及効果

(1)システム改革の成果

本事業期間中に女性研究者が出産・育児・介護と研究を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究

する仕組み構築の基礎作りは充分果たした。

平成 20年が 21名(女性教員割合 10.8%)に対し平成 23年度に 44名(15.7%)と飛躍的に増加した。

また、理工農系の女性教員では平成 20年度は 11名に対し、平成 23年度は 16名に増加した(表Ⅷ-2

参照)。理工農系職階別では平成 20年に教授 2名、准教授 5名、講師 4名に対し、平成 23年度には教

授 3名、准教授 6名、講師 7名と上位職の増加傾向があり、さらにプラス 1Pjの成果として、講師数が増

加している(Ⅷ-3参照)。離職に関しては、平成 23年度末で講師 1名がより上位職を求めて他大学に移

籍した。

大学院研究科の 3年間の女性比率は、博士前期過程は約 9%で増減が見られず、博士後期過程で平

成 23年度に 1名の進学があった。また、大学院研究科博士課程前期の女子進学率も約 28%と横ばいの

推移をしているが、本事業は博士前期課程の女子の協力が得られ、意識が高まっていると考えられる。

本学の工学系の女子志願者数は平成 21年度から平成 23年度までに 1.14倍に増加している。これは

理工系女子進学が本事業の取組みによって明らかに増えていることを意味し徐々に効果が表れている。

(2)取組のモデル性

本事業は理工系大学の意識改革としてのモデル性を持った取り組みであり、特徴はすぐに取り組め、

学内外の理解が得やすい 5つのプロジェクトである。女性教員を増やす試みとしてプラス 1Pj、牽引する

女性教員の尐ない環境の大学との連携を図る目的や情報交換などとしての広がれ理工系 Pj、裾野拡大

としての科学とともだちPj、女性技術者や研究者の開拓としてのロールモデル発掘Pjはモデル性が高く、

他の大学へのモデルとなりうるものである。

(3)情報発信

機関外への情報としては、活動を SOFERS Letterにまとめ、さらに年間の活動も平成 21年度、22年

度と報告書のまとめ方を簡素化して、理解しやすい配布物を心がけた。さらに、男女共同参画推進が遅

れている大学への訪問、関東圏の理工系大学の課長会議での広報や日本私立大学協会へのアプロー

チ、学協会連絡会シンポジウム、女性研究者支援システム改革プログラム 事業合同シンポジウム、独立

行政法人国立女性教育会館主催の各種関連シンポジウム等に参加し、情報発信に務めた。

Page 20: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

18

3.実施体制

(1)実施体制

本事業の実施体制として、学長を統括責任者とした男女共同参画委員会を設置した。男女共同参画委

員会は、基本方策の決定、企画立案、現状分析・点検・評価などの役割を担った。その実務を行う体制と

して女性研究者支援室を設置し、専任の室長、コーディネーター、他補助スタッフを中心として、室員 16

名、事務局、他機関と連携をとりながら、プラス 1Pj、広がれ!理工系大 Pj、科学とともだち Pj、ロールモデ

ル発掘 Pjなど男女共同参画の取り組みを推進した。

(2)機関の長のコミットメント

機関の長である学長は、本事業の申請にあたってプロジェクト担当責任者の提案を積極的に支援した。

本事業申請の意義を説明し大学の経営母体である学校法人五島育英会に協力を仰ぎ、大学協議会に

諮って男女共同参画委員会を立ち上げ委員長に就任した。事業スタートのキックオフシンポジウムでは

学内で積極的に参加を呼びかけ、大学全体に女性研究者支援の取組への意識付けを行った。プラス 1P

jの女性教員採用にあたっては積極的に採用を求める働きかけだけでなく、大学自己資金での女性教育

講師 3 名の採用を決定し平成 24 年度も継続雇用している。任期付きの採用ではあるが女性教員増加の

気運を高め、性別にこだわらず男女共に働く環境の定着を促した。学外では 10 私立大学学長合同宣言

に参画し、学内では全学教職員討議や年頭挨拶、印刷物などで女性採用の必要性を呼びかけ続けた。

3 年間の活動から学内において活動の必要性が認識され事業終了後は、さらに学内ニーズに沿った活

動の為に男女共同参画室という体制で継続を決定した。

Ⅵ.実施期間終了後における取組の継続性・発展性

1.平成 24年度の継続策

(1)支援体制(支援室体制、人員等)

本事業終了後の平成24年4月以降は、「男女共同参画室」と名称変更し体制をそのまま引き継い

で取組を展開している。

女性研究者支援室(平成 23年度以前)

・プロジェクト担当責任者 1名

・室長 1名

・コーディネーター1名

・支援研究員 1名

・室員 16名

男女共同参画室(平成 24年度以降)

・室長 1名

・室員補佐 1名

・室員 14名

(2)取組の継続状況

本事業で行っていた ①プラス 1Pj ②広がれ!理工系大Pj ③科学とともだちPj ④ロールモデルの

発掘Pj ⑤基本的な環境整備 の 5 つのプロジェクトのうち、③科学とともだちPj は大学の各学科で次

世代向けの実験教室の取組を行うことになりそちらに引き継いだ。また⑤基本的な環境整備の出産・育

児中の女性を対象として研究支援員派遣制度は、平成 24 年度は継続しないが、今回の実例をもとに今

後も大学事務局と交渉を続けていく。それ以外の取り組みは、 ①プラス 1Pj の一環として本学独自経

費で行ってきた女性教育講師 3 名の雇用をはじめとして全て継続する。平成 24 年度の予算総額は 6.3

Page 21: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

19

百万円である。

2.中長期的計画(平成 25年度以降)

平成 24年度と同等の規模で継続予定。

3.「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の周知と推進状況

現在、平成 22 年 12 月 15 日から平成 27 年 12 月 14 日までの 5 年間の一般事業主行動計画を策定し

学校法人五島育英会ホームページにて周知している。策定した(1)関連法令の遵守及び諸制度を整備

のうえ、周知・啓蒙を行い、更に積極的な利用の促進を図る。(2)所定外勤務削減のための措置の実施。

(3)子ども・子育てに関する地域貢献活動の推進を図る。の取組については、今後男女共同参画室が中

心となって大学内への周知を行い、学校法人五島育英会担当課と情報交換をしながら推進活動を行っ

ていく。

Ⅶ.参考図表

表Ⅶ-1.取組の内容

実施状況

実施日 取組内容

実施期間以前の取組

平成 20年 5月 学内女性研究者のネットワーク「女性の会」を設立

平成 20年 6月 16日 学長直轄の委員会設置のための男女共同参画準備会を設置

平成 20年 6月 25日 女子学生と教員の意見交換会開催

平成 20年 11月 1日 7私立大学合同シンポジウム「男女共同参画の輪を拡げよう」にて白木

副学長講演

実施期間中の取組

平成 21年 7月 東京都市大学男女共同参画委員会および東京都市大学女性研究者

支援室(SOFERS)を設置(東京都市大学男女共同参画委員会規程並

びに東京都市大学女性研究者支援室内規制定)

平成 21年 7月 女性研究者相談室を設置

平成 21年 7月 育児中の女性研究者への研究支援員配置を開始

平成 21年 9月 7日 平成 21 年度本学の全学教職員討議にて「男女共同参画の現状と課

題」をテーマとして討議

平成 21年 9月 8日 つくば 6 研究機関男女共同参画合同シンポジウムにてポスターセッシ

ョン参加

平成 21年 10月 3日 工学系イノベーションの男女共同参画モデル キックオフシンポジウム

Page 22: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

20

開催(航空会館)

平成 21年 10月 6日 日本大学男女研究者共同参画国際シンポジウム参加

平成 21年 11月 女性研究者支援室事業内容紹介パンフレット発行

平成 21年 11月 25日~26日 女性研究者支援システム改革プログラム 事業合同シンポジウムにて

発表およびポスターセッション参加

平成 21年 12月 女性研究者支援室 2009年度活動報告リーフレット発行

平成 21年 12月 4日 私立大学合同シンポジウムにて 10私立大学学長共同宣言(津田ホー

ル)

平成 21年 12月 11日 プラス1プロジェクト 女性教育講師採用の公募

平成 22年 1月 7日~25日 全学教職員対象 「男女共同参画に関する意識調査」実施

平成 22年 1月 19日 平成21年度第1回女性研究者紹介セミナー開催(世田谷)

平成 22年 1月 22日 男女共同参画の取組についての意見交換会開催(谷口東京医科歯

科大学副学長、江原首都大学東京副学長、小川女性研究者支援室

長)

平成 22年 1月中 プラス1プロジェクト 女性教育講師採用公募に応募した3学科が採用

決定

平成 22年 2月 10日 女性研究者支援室HP開設

平成 22年 2月 10日 第 1回ステップアップセミナー開催(特定非営利活動法人全国女性会

館協議会常任理事青木玲子氏)

平成 22年 3月 2009年度活動報告リーフレット、TCU ROLE MODEL VOL.1(平成2

1年度ロールモデル集)発行

平成 22年 3月 学校法人五島育英会発行「東京都市大学 2009年度 事業報告書」に

て女性研究者支援室の活動報告掲載

平成 22年 3月 16日 本学環境情報学部教授会にてSOFERSの活動報告および意見交換

平成 22年 4月 女子学生相談室を設置

平成 22年 4月 1日 産休中及び育児中の女性研究者に研究支援員を配置

平成 22年 4月 1日 本学人間科学部教授会にて SOFERSの活動報告および意見交換

平成 22年 6月 4日 平成 22年度第 1回女性研究者紹介セミナー開催(世田谷)

平成 22年 6月 22日 第 2回ステップアップセミナー開催(JST塩満典子氏)

平成 22年 7月 8日 平成 22年度第 2回女性研究者紹介セミナー開催(世田谷)

Page 23: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

21

平成 22年 9月 8日 本学女性教職員の交流の場「井戸端ランチ」開催

平成 22年 10月 8日 国際シンポジウム開催(東京都市大学)

平成 22年 10月 28日 平成 22年度第 3回女性研究者紹介セミナー開催(横浜)

平成 22年 11月 8日 知識工学部 キャリア支援講座双方向型授業を実施

平成 22年 11月 11日 女子テニス部との交流会「リケジョはスポーツも高みを目指す!」開催

平成 22年 11月 17日 室蘭工業大学教員対象講演

平成 22年 12月 7日 平成 22年度第 4回女性研究者紹介セミナー開催(等々力)

平成 22年 12月 11日 社団法人日本私立大学連盟 平成 22年度男女共同参画推進に関す

るシンポジウムにてポスターセッション参加

平成 22年 12月 17日 学生向け「工学系イノベーションの男女共同参画モデル 現状と課

題」講演会(室蘭工業大学)

平成 23年 2月 2日 工学部・知識工学部合同教授会 双方向型アンケート実施

平成 23年 3月 TCU ROLE MODEL VOL.2(平成 22年度ロールモデル集)、

SOFERS ANNUAL REPORT 2011発行

平成 23年 3月 学校法人五島育英会発行「東京都市大学 2010年度 事業報告書」に

て女性研究者支援室の活動報告掲載

平成 23年 3月 5日 女子学生との女子会「東京都市大の女子力」開催

平成 23年 3月 7日~11日 国際女性デー 茶話会開催

平成 23年 4月 東京都市大学理工系女性卒業生大規模実態調査開始

平成 23年 4月 1日 育児中の女性研究者に研究支援員配置

平成 23年 4月 28日 ホームぺージアドレス変更及び一部リニューアル

平成 23年 5月 1日 育児休業復帰支援活動開始

平成 23年 6月 1日~29日 女性研究者支援室企画展開催(世田谷キャンパス図書館)

平成 23年 6月 19日 本学同窓会(武蔵工業会)総会にて活動紹介

平成 23年 9月 15日 私工大懇話会部課長連絡協議会にて講演

平成 23年 10月 12日 東京都市大学理工系女性卒業生大規模実態調査結果報告会開催

(本学渋谷サテライトクラス)

平成 23年 11月 20日 女性研究者支援室企画 LIPS(Ladies In Presentation of Science)展

開催(世田谷)

Page 24: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

22

平成 23年 11月 20日 女性卒業生の座談会開催(世田谷)

平成 23年 12月 12日 大学教職員の育メン交流会開催

平成 23年 12月 13日 「女性研究者支援室の取組みとこれから」をテーマに中村学長と小川

女性研究者支援室長対談

平成 24年 2月 15日 TCU ROLE MODEL VOL.3(平成 23年度ロールモデル集)発行

平成 24年 2月 15日 成果報告国際シンポジウム開催(渋谷エクセルホテル)

平成 24年 3月 学校法人五島育英会発行「東京都市大学 2011年度 事業報告書」に

て女性研究者支援室の活動報告記事掲載

平成 24年 3月 3日~17日 女性研究者支援室企画開催 「SOFERS展」(世田谷)

Page 25: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

23

表Ⅶ-2.科学とともだち Pj一覧

            科学とともだちPj 一覧

実施日 実施場所 対象者 人数(名)

平成21年度第1回

8月13日~15日 国立女性教育会館 全国の中学3年生と女子高校生 100

第2回 12月10日~11日 東京都市大学付属塩尻高校 中学生対象 50

第3回 2月23日 川崎市立南菅小学校 小学6年生~3年生 220

平成22年度第1回

7月15日 川崎市立南菅小学校 小学6年生~3年生 223

第2回 7月29日 東急セミナーBE 小学5年生 1

第3回 8月7日 東京都市大学 世田谷近郊の小・中学生 400

第4回 8月27日 世田谷区民会館別館集会室 世田谷近郊の小学生 28

第5回 8月28日 東京都市大学附属等々力中学校 中学校のオープンキャンパス 60

第6回 10月16、17日 尾山台フェスティバル 世田谷近郊の小学生 600

第7回 11月12日 東京都市大学附属塩尻高校 高校生 80

第8回 11月13日 東京都市大学附属塩尻高校 中学生対象 60

第9回 11月25日 藤沢市立大庭中学校 SPP授業 70

第10回 11月30日 川崎市立南菅小学校 小学六年生2クラス 48

第11回 12月5日 東京都市大学 小学高学年 40

第12回 12月10日 坂東市立生子菅小学校 小学六年生1クラス 35

第13回 12月11日 東京都市大学 東急グループが集客した親子10組 20

第14回 12月14日 坂東市立長須小学校 小学六年生1クラス 30

第15回 12月14日 坂東市立七郷小学校 小学六年生1クラス 39

平成23年度第1回

7月20日 川崎市立南菅小学校 小学6年生~3年生 200

第2回 7月24日 世田谷区民会館 世田谷区 小学生と保護者 40

第3回 8月6日 東京都市大学 世田谷近郊の小中学生 500

第4回 10月4日 川崎市立南菅小学校 小学6年生 48

第5回 10月15,16日 尾山台フェスティバル 地域の子供たち 300

第6回 10月18日 川崎市立南菅小学校 小学6年生 48

第7回 11月9日 栄町立竜角寺台小学校 小学6年生 40

第8回 12月1日 坂東中川小学校 小学6年生 30

第9回 12月3日 東京都市大学 世田谷区 小学生 40

第10回 12月6日 坂東岩井第二小学校 小学6年生 30

第11回 12月13日 川崎市立はるひ野中学校 中学3年生 60

第12回 12月26-27日 東京都市大学原子力研究所 高校生 11

第13回 3月25日 足立区民会館 足立区小学生と保護者 40

Page 26: 女性研究者支援モデル育成 後 評価 「工学系イノベーションの男 … · ②業終了までの3年間で、本学全体の現在の女性比率10 .8%から15%に高め、工学

24

表Ⅶ-3.実施体制

工学系イノベーションの男女共同参画モデル実施体制

女性研究者支援室室長

コーディネーターアドバイザー事業支援員

・基本方策・企画、立案と実施・現状分析、点検、評価など

・環境整備・女性研究者採用促進・研究者育成・支援

(研究支援員の派遣など)・ライフイベント支援システムの構築・ネットワーク構築(学内外)

相談室設置

プラス1Pj

科学とともだちPj

広がれ!理工系大Pj

連携体制の構築

付属女子中高校その他

他大学、学協会

同窓会 武蔵工業会

各学部・学科

学生TA・科学体験教室WG卒業生

副学長男女共同参画委員会

学 長

ロールモデル発掘Pj

事務局

工学系イノベーションの男女共同参画モデル実施体制

女性研究者支援室室長

コーディネーターアドバイザー事業支援員

・基本方策・企画、立案と実施・現状分析、点検、評価など

・環境整備・女性研究者採用促進・研究者育成・支援

(研究支援員の派遣など)・ライフイベント支援システムの構築・ネットワーク構築(学内外)

相談室設置相談室設置

プラス1Pj

科学とともだちPj

広がれ!理工系大Pj

連携体制の構築

付属女子中高校その他

他大学、学協会

同窓会 武蔵工業会

各学部・学科

学生TA・科学体験教室WG卒業生

副学長男女共同参画委員会

学 長

ロールモデル発掘Pj

事務局