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組物技術を用いた連続繊維強化熱可塑性 樹脂複合材料製造用中間材料の開発 -東海3大学新技術説明会- 2013627岐阜大学 研究推進・社会連携機構 複合材料研究センター 大谷 章夫

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組物技術を用いた連続繊維強化熱可塑性樹脂複合材料製造用中間材料の開発

-東海3大学新技術説明会-

2013年6月27日

岐阜大学 研究推進・社会連携機構 複合材料研究センター

大谷 章夫

強化材(Reinforcements):繊維 母材(Matrix):高分子系樹脂(プラスチック) FRP用樹脂・・・熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂 FRP用繊維・・・無機系,有機系,天然

繊維強化複合材料 (FRP:Fiber Reinforced Plastics)とは

2/22

繊維強化複合材料とは

無機繊維 ガラス繊維,炭素繊維,炭化ケイ素繊維,アルミナ系繊維 有機繊維 アラミド繊維,ポリエチレン繊維 天然繊維 綿,麻,ケナフ,ジュート

3/22

強化繊維の種類

熱硬化性プラスチック

熱可塑性プラスチック

線状の3次元構造の高分子。 熱や光などで化学反応が行われ、架橋された高分子化合物となり、 再び熱を加えても溶融しないプラスチック。

線状の高分子。 加熱すれば溶融、冷却すれば固化と、 可遂的に繰り返すことができるプラスチック。

4/22

母材(プラスチック)の種類

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熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との違い

熱可塑性 プラスチック

非結晶性 プラスチック

ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリラン, ポリ酢酸ビニル,ポリブニルアルコール, ポリビニルセタール, ポリビニルブチラール、 ポリスチレン,AS樹脂,ABS樹脂, メタクリル樹脂,ポリカーボネート, ポリフェニレンオキサイド, ポリスルホン、セルロイド

結晶性 プラスチック

ポリエチレン,ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、 ポリアセタール, 飽和ポリエステル

熱硬化性 プラスチック

フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、 アルキド樹脂、 不飽和ポリエステル、ジアリンフタレート樹脂、 エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン

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各プラスチックの代表的な名前

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強化形態の種類

繊維複合

短繊維複合

一般的に熱可塑性プラスチック材料の補強(強度, 剛性、寸法精度など)のために使用. 繊維としては,ガラス繊維,カーボン繊維,ウィスカなどがある。 繊維長は3mm前後であり. 押出成形や射出成形の材料としてよく使われている.

長繊維複合(連続繊維)

金属代替などの高強度,高剛性をねらった高性能 複合材として用いられる。 強化繊維として,ガラス繊維,カーボン繊維,ボロン繊維などが用いられる. プラスチックとしては熱硬化性が一般的であるが,最近はエンプラなど熱可塑性複合材も開発されている.

背景 熱可塑性樹脂

(リサイクル性、二次加工性、量産性)

長繊維(連続繊維)熱可塑性樹脂複合材料 (c-FRTP)

長繊維(連続繊維) (高弾性、高強度)

問題点 熱可塑性樹脂の溶融粘度が高い!!!

熱可塑性樹脂 約100~10000 Pa・s

水 1 mPa・s はちみつ 3~5 Pa・s エポキシ樹脂 50~100 Pa・s

熱、圧力

フィルムスタッキングのような成形方法では 樹脂が含浸せず、複合材料化できない。

・Commingled yarn ・Pre-impregnated Tape

・Powder impregnated Yarn ・Micro-Braided Yarn

各種中間材料の開発

中間材料とは 連続した強化繊維の近傍に熱可塑性樹脂を配置し、 含浸する距離を短くした、c-FRTP成形のための予備材料

・成形時間短縮 ・連続成形が可能

・テキスタイル化が可能

長所:含浸性に優れている

短所:汎用的な熱可塑性樹脂との限定的な組み合わせしか 選べない。混成過程で強化繊維が損傷してしまう

Commingled yarn(混繊糸)

長所:材料の組み合わせの自由度が高い。

短所:樹脂パウダーの脱落や,付着の不均一性が問題。摩擦係数が高くテキスタイル加工に適していない。

Powder Impregnated Yarn

長所:あらかじめ樹脂がテープに含浸されているため,含浸に時間がかからない。

短所:繊維状ではなくテープ状で剛性が高いため,適用可能な形状が平面や単純な局面に限られる。

Pre-impregnated Tape

Advantages ・様々な樹脂と強化繊維の組み合わせが容易に可能である。 ・扱いが容易。 ・繊維の損傷が少ない。

Reinforcing fiber bundle

Matrix resin fiber

含浸距離

※含浸距離:強化繊維束の中心から外周までの距離

Micro-Braided Yarn(MBY)について

樹脂繊維の被覆

連続繊維

問題点1: 連続繊維束が円状の ため中心までの距離 (含浸距離)が長く、含浸に時間がかかる

問題点2: 連続繊維の密度が高いため、含浸がし難い。 (含浸に時間がかかる。)

含浸距離

MBYの問題点

改善点1: 樹脂繊維の被覆の締め付けが緩く連続繊維束が偏平になるため中心までの距離(含浸距離)が短く、含浸時間が短くなる

改善点2: 連続繊維の密度が低く、含浸しやすい。 (含浸時間が短くなる。)

樹脂繊維の被覆

連続繊維

含浸距離

理想的なMBY

A A A’ A’ < A l’ < l

l l l'

変形可能にするには。。。

A : 強化繊維束断面積 l : 樹脂繊維組物周長

樹脂繊維組物周長を十分長くし,締め付けを無くすことにより、変形能を付与できる!!

MBYの変形能

①樹脂繊維の被覆の形状を安定させる ②樹脂繊維の被覆が強化繊維束を締め

付けない様にする

MBYの改良

組物の構造

中央糸 組糸

1.多数本の繊維束(組糸)が互いに交差しながら連続して配向 2.組物の長手方向に繊維束(中央糸)を挿入できる。 3.組角度を自由に設定できる。

①組物被覆の形状安定化 中央糸無し 中央糸有り

中央糸の挿入により変形性が拘束され、形状が安定する

一回り大きい被覆で覆うことにより締め付けが無くなる

②締め付けを無くす

どのように量産するか??

パイプ状マンドレル

一回り大きなパイプ状マンドレルの上に被覆を形成し、組物を滑らせながら強化繊維束と一緒に引き上げることにより、締め付けの無い被覆が可能となる!!

量産化方法の特許

外観写真

A-MBY

1mm

断面写真

A-MBY MBY

予測式

含浸

樹脂

炭素繊維

24

含浸時間の予測

�A − MBY 𝑙𝑙𝑑𝑑 = 0.14 (mm)MBY 𝑙𝑙𝑑𝑑 = 0.27 (mm)

∆P = 5.0 (MPa) 𝑉𝑉𝑎𝑎 = 0.83 (-)

𝑉𝑉𝑓𝑓 = 0.72 (-) η= 1392 (Pa/s) k = 0.2 (-) 𝑟𝑟𝑓𝑓 = 3.5 μm

含浸時間の予測

0

20

40

60

80

100

120

MBY A-MBY

含浸

時間

(min

) 103

33

A-MBYはMBYと比較して含浸時間が大幅に短縮されている。 →強化繊維束の密度の低下,短い含浸距離に起因

予測含浸時間

Molding press:5MPa Molding temperature : 290℃ Molding time : 3,5,10,20 min

20mm

約1.3mm

一方向強化材の成形

成形前 成形後

外観写真

一方向強化材

A-MBY

MBY

3min 5min 10min 20min

断面観察

繊維束

未含浸領域

樹脂

未含浸率の測定

0

20

40

60

80

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

A-MBY

MBY

Modeling time(min)

Un-

impr

egna

tion

rate

(%)

・A-MBYはMBYと比較して同じ成形時間において未含浸率が低い。 →A-MBYはMBYと比較すると含浸時間が短い →含浸特性の向上

未含浸率測定結果

50m

m

200m

m

100m

m

50m

m

・万能試験機を用いて試験を行った。 ・クロスヘッドスピード:1.0mm/min

引張試験

0

300

600

900

1200

1500

1800

2100

0 10 20 30 40 50 60 70 80

A-MBYMBY

Tens

ile st

reng

th (M

Pa)

Un-impregnation rate (%)

・未含浸率の減少とともに引張強度は上昇する。 ・引張特性は未含浸率に依存し,A-MBYとMBYの 断面形状に依存しない。

引張強度と未含浸率との比較

荷重 ・インストロン万能試験機を用いて試験を行った。 ・支点間距離:18mm ・クロスヘッドスピード: 1.0mm/min ・繊維方向に対して平行に90°曲げ試験をおこなった。

1.3mm

1.5mm

90°曲げ試験

0

5

10

15

20

25

0 20 40 60 80

Bend

ing

stre

ngth

(MPa

)

Um-impregnation rate(%)

A-MBYMBY

・未含浸率の減少に伴い曲げ強度が上昇している。 ・A-MBYはMBYよりも曲げ強度が高い。 ・引張試験結果とは異なり、A-MBYとMBYの結果が同じライン上に乗らない事から、繊維束断面形状に起因している可能性が示唆された。

曲げ強度と未含浸率との関係

まとめ • 組物の特徴・性質を活かすことにより、被覆の

形状安定化を達成することができた。

• 「マンドレルから組物を連続的に引き抜く」アイデアにより、量産化のメドが立った。

• 構想とアイデアにより、優れた性能を有する新しい中間材料の開発が実現できた。

• 日本の伝統技術を利用することにより、自動車を中心とするマスプロダクトに適用できるc-FRTP製造のための基礎技術を開発できた。

本技術に関する知的財産権

発明の名称 :連続繊維強化熱可塑性樹脂 複合材料製造用の強化繊維 /樹脂繊維複合体、 およびその製造方法 出願番号 :特願2012-229891 出願人 :岐阜大学 発明者 :大谷章夫、仲井朝美

問合せ先

国立大学法人 岐阜大学 研究推進・社会連携機構 特任助教/リサーチ・アドミニストレーター 馬 場 大 輔 TEL 058-293-3349 FAX 058-293-2022 e-mail [email protected]