大学生の日常的空間内における外出型レジャーの...

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目本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 No.31 (1996〉PP.93-104 大学生の日常的空間内における外出型レジャーの 行動パターン 落合康浩 Spatial Pattem of Student’s Outside Leisure Be in the Sphere of Daily Living Yasuhiro OCHIAI (Received October 31,1995) Spatial Pattem of leisure Behaviour has grown into an important re geography,although few studies have appeared by now!This study inve of outside leisure behaviour of the student living in Tokyo Metropoh on the results of questionnaire surveys researched in Nihon Univer The results are summarized as follows: Two types of leis皿e behaviour can be estimated in frequency of acti and another infrequent.Destinations of frequent leisure behaviour are of daily living。 The sphere of daily living are composed with three areas,namely a round university,and commuting route, The destinations of“Working in librarゾ’are selected in area round and ones of“Eating-out with friends”and“Drinking in bar or pub”ar university. The destinations of“Visiting to central place”are selec and commuting route,and these are often selected in the area without t 1.はじめに 日本人の余暇意識や余暇活動の実態を,毎年継続的 に調査,報告している余暇開発センター1)は,長期化す る不況の影響が余暇にもおよんでいるとしてつぎのよ うな例をあげている。たとえば,前年に比べ余暇支出 を「増加」させた者の割合が減少していること,余暇 よりも仕事を重視する者の割合が増加していること, スポーツや娯楽といった余暇活動への参加人口が横ば いもしくは減少傾向にあることなどである。 たしかに短期的にはこれらの変化は顕著な傾向では あるが,少なくともここ十数年来,全体に占めるそれ ぞれの割合に大きな変動はみられない。実際に参加人 口の多い種目として,「外食」「国内観光旅行」「ドライ ブ」「カラオケ」「動物園,植物園,水族館,博物館」「バー, スナック,パブ,飲み屋」などが毎年同じように上位 にランクされ,参加希望の種目にもこれらに「海外旅 行」が加わるだけでやはり毎年同様の傾向がみられる こともまた,同センターの指摘するところであり,日 本人の余暇には構造的な変化はないものと思われる。 すなわち,日常的には飲み屋やカラオケに行ったり家 族との外食を楽しみ,休日などには観光旅行やドライ ブを楽しむといったパターンが日本人の平均的な余暇 活動の形態ということになる。 「観光レクリエーション」の概念にまとめられるこう した余暇活動については,日本観光協会2)3)や総理府4) が隔年もしくは5年毎にその実態を調査し,集計結果 を報告している。これらは,各種余暇活動への参加の 状況やそれらに係る費用を明らかにする点に主眼をお いており,経済学あるいは社会学的な分析の資料とし 目本大学文理学部地理学科: 〒156世田谷区桜上水3-25-40 Department of Geography,College of Humanities Nihon University l3-25-40Sakurajousui,Set 156,Japan. 93 (93)

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  • 目本大学文理学部自然科学研究所研究紀要No.31 (1996〉PP.93-104

    大学生の日常的空間内における外出型レジャーの

    行動パターン

    落合康浩Spatial Pattem of Student’s Outside Leisure Behaviour

           in the Sphere of Daily Living

     Yasuhiro OCHIAI(Received October 31,1995)

      Spatial Pattem of leisure Behaviour has grown into an important research theme in behavioural

    geography,although few studies have appeared by now!This study investigates the spatial pattem

    of outside leisure behaviour of the student living in Tokyo Metropohtan area.The study is based

    on the results of questionnaire surveys researched in Nihon University,

      The results are summarized as follows:

      Two types of leis皿e behaviour can be estimated in frequency of activities l one is frequent

    and another infrequent.Destinations of frequent leisure behaviour are mostly selected in the sphere

    of daily living。

      The sphere of daily living are composed with three areas,namely area round residence,area

    round university,and commuting route,

      The destinations of“Working in librarゾ’are selected in area round residence or university,

    and ones of“Eating-out with friends”and“Drinking in bar or pub”are selected in area round

    university. The destinations of“Visiting to central place”are selected in area round residence

    and commuting route,and these are often selected in the area without the sphere of d且ily living,

    1.はじめに

     日本人の余暇意識や余暇活動の実態を,毎年継続的

    に調査,報告している余暇開発センター1)は,長期化す

    る不況の影響が余暇にもおよんでいるとしてつぎのよ

    うな例をあげている。たとえば,前年に比べ余暇支出

    を「増加」させた者の割合が減少していること,余暇

    よりも仕事を重視する者の割合が増加していること,

    スポーツや娯楽といった余暇活動への参加人口が横ば

    いもしくは減少傾向にあることなどである。

     たしかに短期的にはこれらの変化は顕著な傾向では

    あるが,少なくともここ十数年来,全体に占めるそれ

    ぞれの割合に大きな変動はみられない。実際に参加人

    口の多い種目として,「外食」「国内観光旅行」「ドライ

    ブ」「カラオケ」「動物園,植物園,水族館,博物館」「バー,

    スナック,パブ,飲み屋」などが毎年同じように上位

    にランクされ,参加希望の種目にもこれらに「海外旅

    行」が加わるだけでやはり毎年同様の傾向がみられる

    こともまた,同センターの指摘するところであり,日

    本人の余暇には構造的な変化はないものと思われる。

    すなわち,日常的には飲み屋やカラオケに行ったり家

    族との外食を楽しみ,休日などには観光旅行やドライ

    ブを楽しむといったパターンが日本人の平均的な余暇

    活動の形態ということになる。

     「観光レクリエーション」の概念にまとめられるこう

    した余暇活動については,日本観光協会2)3)や総理府4)

    が隔年もしくは5年毎にその実態を調査し,集計結果

    を報告している。これらは,各種余暇活動への参加の

    状況やそれらに係る費用を明らかにする点に主眼をお

    いており,経済学あるいは社会学的な分析の資料とし

    目本大学文理学部地理学科:

    〒156世田谷区桜上水3-25-40

    Department of Geography,College of Humanities and Sciences,

    Nihon University l3-25-40Sakurajousui,Setagaya-ku,Tokyo

     156,Japan.

    93 一(93)

  • 落 合 康 浩

    目常・非目 対象地の選 対象地の選 主な活動の常の別 択される空 択頻度の傾 とき 具体的な行動例

    間 向 (所用時間)

    目常的な 平 日 習い事,酒場へ行く

    行動 目常的 恒常的 (数時間) 外食空聞内

    映画をみる,繁華街を歩く

    週末もし ショッピング,コンサート

    くは休目 (都市内部での

    非目常的 (半日ない 行動)       (郊外での行動)な行動 しは一目) ハイキング,ドライブ

    日常的 非恒常的 遊園地,目帰り行楽

    空間外

    連 休 国内旅行,海外旅行(2日以上)

    第1図 外出型レジャー行動の分類

    て十分価値のあるものではある。しかしながら活動で

    出かけて行った場所,すなわち活動の目的地(対象地)

    に関しては,調査がなされていないか,なされていて

    も簡略的なものでしかない。したがって余暇活動を人

    間の空間的行動の一形態としてとらえ,行動地理学の

    指標として取り上げようとする場合には,これらは十

    分に利用価値があるとはいえない。

     わが国において,余暇活動を取り上げその空間的行

    動としての側面に注目して分析を行った研究には,小

    池(1960)5〉や坂井(1962)6),高橋・高林(1978)7)など

    の成果がある.これらは,特定の都市域に居住する住

    民が観光レクリエーションのために行う移動について

    分析し,その地域的な拡がりを考察している。また,

    筆者(1987)8)(1990)9)(1991)10)(1993)11)(1994)12)

    は一連の研究において,中小都市の連なる地域や大都

    市圏内部の地域を取り上げ,住民の余暇活動にともな

    う空問的な移動の実態を分析しながら,居住地が異な

    ることによって生じるそれらの地域的差異についても

    比較・考察してきた。

     これらの研究では空聞移動に関する必要な資料を得

    るため,それぞれに独自のアンケート調査を実施して

    いるが,その多くは調査地域内の学校を通して配布・

    回収しており,生徒の親の世代である中年層が調査対

    象となっている。中年層の余暇活動への参加状況は,

    全種目を通じて全世代の平均に近い13)ため,この世代

    を対象とすることは調査地域における全体像をとらえ

    るに適切であるということができる。

     しかしながら余暇活動の多岐にわたる種目の中には,

    参加人口の割合が世代により大きく異なるものがある。

    たとえば,前述した「外食」「国内観光旅行」といった

    種目は,全世代に共通して参加人口の割合が高い14)が,

    (94) 94

    スポーツや娯楽の一部種目には,若年層で特に高い割

    合のめだつものがある15)。特定世代において参加人口

    の割合が高い種目は,その世代の余暇活動を特徴づけ

    るだけの重要な意味を持つものであり,余暇活動の全

    容を詳細に検討する過程においても必要不可欠な要素

    である。

     本研究は,事例地域における住民が余暇活動におい

    て示す空問移動の距離的な拡がりや地域的偏向(行動

    パターン)を分析し,比較・考察しながら,人間行動

    の空問的構造について解明することを目的としている。

    これに基づき従来は全世代の平均的代表として中年層

    を対象に分析を行ってきたが,異なる世代を対象とし

    た調査・分析の必要性に鑑み,今回は若年層の余暇活

    動の実態を分析するため,若年層の中でも特に余暇時

    間と活動の機会にめぐまれる大学生を対象として余暇

    活動の実態を調査した。

    2.外出型レジャー行動の分類

     本研究では,行動地理学的視点により余暇活動を分

    析するため,その指標を自宅から離れ空間移動をとも

    なって行われる行動,すなわち外出型レジャー行動に

    限っている.これまでに筆者は外出型レジャー行動を

    その行動のときや所用時間と,対象地の選択頻度の傾

    向に基づいて分類してきた16)が,今回はこの分類に,

    日常・非日常の概念を加えて分類した(第1図)。

     日常的なレジャー行動は,通勤・通学や目用消費財

    の購買といった行動と同様,日々繰り返される種類の

    行動であり,その多くは通勤などの行動とともに一日,

    ないしは一週の行動の時空間パターンを構成する要素

    である。たとえば,職場の同僚をともなって酒場へ行っ

    たり,趣味や技能修得などの目的で習い事の教室に通

  • 大学生の目常的空間内における外出型レジャーの行動パターン

    玉県

    ▲▲

           茨

    \』」〈\

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        \\/

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       \ザ~.▲▲▲千東㌦隅全《》襖・・ぐ欝慕II融き辮凄区・

                       ●     1

                    ●            1神奈

    0   10km

    \.ハ

    ●●

    目大学所在地

    ・男子学生  (親と同居)

    ・男子学生  (単身者)

    ▲女子学生  (親と同居)

    △女子学生  (単身者)

    第2図 回答者の居住地分布

    ※単身者には寮生活や兄弟姉妹との2人暮らしも含む

    うといった行動がこれにあたる。これらの行動には日

    常的な行動の展開する空間内において決まって選択さ

    れる,いわば恒常的な対象地の存在することが多い.

    これは平日の数時間程度の時間を割くことで行うこと

    が可能な「平日型」レジャー行動とほぼ同義である.

     これに対し非日常的な行動は,目常生活から離れて

    行われるもので,月,年,あるいは一生を単位とした

    時間の中での不定期的な行動である。国内や海外への

    旅行はこの行動の典型的なもので,その展開する空間

    は日常的空間の外であり,恒常的に選択される対象地

    は一般に存在しない。この行動は宿泊をともなうもの

    95

    であり,2日以上にわたる休日を要するr連休型」レ

    ジャー行動である。

     非日常的な行動には,このほかに半日ないしは1日

    程度の時間を要する「週末型」レジャー行動がある。

    これには,都市内部に存在する繁華街や施設等をレジャー

    の対象とした「都市内部での行動」と,郊外の環境を

    レジャーの対象とする「郊外での行動」とがある。前

    者には繁華街を歩いたりショッピングを楽しむ行動や

    コンサー、ト・映画の鑑賞などがあり,後者にはハイキ

    ングやドライブのほか,動物園や遊園地,名所・旧跡

    などへ出かけていく日帰りの行楽があげられる。

    (95)

  • 落 合康 浩

     この週末型レジャー行動はその展開する空間が必ず

    しも目常的空間の外になるとは限らない。これまでの

    調査によれば,一般に都市地域の居住者は,郊外での

    行動よりも都市内部での行動の方を高い頻度で行うこ

    とが明らかであるが,これは,都市地域の居住者の通

    勤圏内に都市内部での行動の対象地として選択可能な

    場が多いことによる。通常,距離的にも近く,日常見

    知った空間の中にある対象地は選択に容易なことから,

    都市内部での行動は日常的空間内において行われるこ

    とが比較的多く,また,その対象地が恒常的に選択さ

    れることも多くなる.

     一方,郊外での行動においては,日常的空間の外に

    対象地を選択することが多く,また行動の性格上,恒

    常的に選択される対象地が存在することは少ない.

     ただし都市内部での行動でも,たとえば地方都市に

    居住・就業するものが日帰りで銀座や新宿に出かける

    ことがあるように,日常的空問の外に位置する対象地

    が選択されることもある。郊外での行動についても,

    たとえば通勤経路上にある自然公園に家族で出かけて

    いくときのように,日常的空間内にある対象地が選択

    されることもある。さらに,日常的空間内に選択され

    る対象地には恒常的には選択されない,いわば非恒常

    的な対象地もあり,日常的空間の外にも恒常的に選択

    される対象地の存在することはあり得る。

     このように週末型レジャー行動はほとんどが非日常

    的な行動ではあるが,対象地が選択される空問やその

    選択頻度の傾向に,異なるパターンが存在する。

     本研究では以上の分類にしたがって,外出型レジャー

    行動の分析・考察をすすめるが,本稿は,その中でも

    特に日常的空間において行われ得るレジャー行動につ

    いて取り上げたものである。

    第1表 居住地区別回答者数

    男 女 合計

    居住地区 同居 単身 計 同居 単身 計

    1地区 一 一 一 3 一 3 3

    H地区 9 4 13 16 4 20 33

    皿地区 8 18 26 5 7 12 38

    IV地区 9 1 10 14 1 15 25

    V地区 9 一 9 7 一 7 16

    合 計 35 23 58 45 !2 57 115

    (96)

    同居1親と同居しているもの単身:親元を離れ下宿・寮・アパートで生活するもの

    96

    3.アンケート調査と回答者の概要

     本稿の分析内容は,日本大学文理学部における複数

    学科の学生を対象に実施したアンケート調査の結果に

    基づくものである17).日本大学文理学部は新宿から西

    方に延びる京王線沿線の世田谷区内に位置し,新宿や

    渋谷の繁華街からも30分以内という,東京大都市圏の

    中でもその最も中心部に近い地域にある。すなわち本

    調査は,大都市圏中心部の大学に通う学生のレジャー

    行動の実態について把握することを企図している。調

    査対象者は大都市圏内に居住し,わが国最大の都市圏

    の中心地域をB常生活圏か非常に近接した空間の一部

    にしており,その意味で都市的なレジャー行動の対象

    地に最もめぐまれた環境にある学生ということになる。

     第2図は,性別,および居住形態の別に回答者の居

    住地分布を示したものである。居住地は1都4県に拡

    がり,大学所在地を中心として半径約50kmの範囲にお

    よぶ.東京の都心から西および南西方面における居住

    者の割合が高く,親元から離れて下宿や寮・アパート

    に暮らす単身者18)の大半は,大学周辺や京王線沿線な

    ど,この方面に集中して居住する。

     回答者の居住地はレジャーにおける行動パターンを

    決定する重要な要因であることから,分析に際し回答

    者の居住している地域を5地区に区分した。それぞれ

    の居住地区は第2図上に示した1地区~V地区である。

    これらはレジャー行動の対象地選択に大きく影響する

    と考えられる交通幹線,とくに山手線内の地区から放

    射状に延びる鉄道の路線に基づいて区分したものである.

     1地区は東京の都心に隣接する山手線の内側の地区

    である.H地区は南西方面に延びる京浜急行・東急お

    よび小田急の沿線地域と,それらに挟まれた地域から

    なる.皿地区は大学のある京王線沿線と中央線の沿線

    からなる西方面の地区である。IV地区は北西および北

    方面で,西武・東武の各線や東北・高崎線の沿線を中

    心とした地区となっている。V地区は常磐および総武

    線と京成線が延びる北東および東方面の地区である。

     これらの地区別に回答者数を示したものが第1表で

    ある.大学所在地を含む皿地区は単身者が集中して居

    住することから回答者の分布が最も多く,以下H,IV,

    V,1地区の順となっている。

    4.行動の種目と行動状況

     日常的空問内で行われるレジャー行動は,日常的な

    行動はもとより非日常的な行動であっても,対象地ま

    での移動距離が一般に小さい。したがって長距離移動

    をともなうレジャー行動のように,複数の種目や対象

  • 大学生の目常的空間内における外出型レジャーの行動パターン

    第2表 レジャー種目別にみた行動回数のランク別割合

    a b C d e f 不明 行動指数

    全  体

    図書館等での学習 4.3 17.4 34.8 29.6 7.0 6.1 0.9 2241.7

    学業以外の習い事 2.6 21.7 6.1 0.0 0.9 68.7 0.0 1670.4

    ボランティア活動 0.0 0.9 0.9 0.9 7.8 88.7 0.9 64.3

    知人との外食 7.8 46.1 31.3 12.2 0.0 2.6 0.0 4243.5

    飲み屋へ行く 0.0 20.9 39.1 31.3 7.0 1.7 0.0 1598.3

    繁華街を歩く 5.2 40.0 44.3 7.8 1.7 0.0 0.9 3527.8

    スポーツ 1.7 12.2 !0.4 32.2 13.0 30.4 0.0 1234.8

    パチンコ・ゲームセンターへ行く 0.9 11.3 20.0 22.6 18.3 27.0 0.0 1070.4

    麻雀荘へ行く 0.0 0.0 2.6 10.4 7.8 79.1 0.0 86.1

    ディスコヘ行く 0.0 0.0 0.9 0.9 3.5 94.8 0.0 16.5

    カラオケヘ行く 0.0 5.2 32.2 45.2 13.0 4.3 0.0 821.7

    図書館等での学習 5.2 20.7 25.9 27.6 10.3 10.3 0.0 2475.9

    学業以外の習い事 0.0 12.1 5.2 0.0 0.0 82.8 0.0 655.2

    ボランティア活動 0.0 1.7 1.7 1.7 5.2 89.7 0.0 117.2

    知人との外食 10.3 41.4 31.0 12.1 0.0 5.2 0.0 4508.6

    飲み屋へ行く 0.0 31.0 34.5 25.9 5.2 3.4 0.0 2031.0

    繁華街を歩く 5.2 34.5 39.7 15.5 3.4 0.0 1.7 3236.2

    スポーツ 1.7 13.8 10.3 31.0 15.5 27.6 0.0 1308.6

    パチンコ・ゲームセンターヘ行く 0.0 12.1 31.0 29.3 10.3 17.2 0.0 1070.7

    麻雀荘へ行く 0.0 0.0 5.2 20.7 13.8 60.3 0.0 169.0

    ディスコヘ行く 0.0 0.0 1.7 1.7 1.7 94.8 0.0 27.6

    カラオケヘ行く 0.0 6.9 24.1 48.3 13.8 6.9 0.0 84!.4

    図書館等での学習 3.5 14.0 43.9 31.6 3.5 1.8 1.8 2003.5

    学業以外の習い事 5.3 31.6 7.0 0.0 1.8 54.4 0.0 2703.5

    ボランティア活動 0.0 0.0 0.0 0.0 10.5 87.7 1.8 10.5

    知人との外食 5.3 50.9 31.6 12.3 0.0 0.0 0.0 3973.7

    飲み屋へ行く 0.0 10.5 43.9 36.8 8.8 0.0 0.0 1157.9

    繁華街を歩く 5.3 45.6 49.1 0.0 0.0 0.0 0.0 3824.6

    スポーツ 1.8 10.5 10.5 33.3 10.5 33.3 0.0 1159.6

    パチンコ・ゲームセンターへ行く 1.8 10.5 8.8 15.8 26.3 36.8 0.0 1070.2

    麻雀荘へ行く 0.0 0.0 0.0 0.0 1.8 98.2 0.0 1.8

    ディスコヘ行く 0.0 0.0 0.0 0.0 5.3 94.7 0.0 5.3

    カラオケヘ行く 0.0 3.5 40.4 42.1 12.3 1.8 0.0 801.8

    a:「ほとんど毎日」

    d:「年に数回程度」

    b:「週1~2回程度」

    e l「年に1~2回程度」

    「月1~2回程度」

    「行動なし」

    地を連係させて行動時間を長くすることにより移動時

    間のリスクを軽減する必要がないため,短時間で単独

    目的に行われることも多い。そこでアンケートでは種

    目別に行動の実態を把握することとし,日常的空間で

    行われ得る行動として「図書館等での学習」「学業以外

    の習い事」「ボランティア活動」「知人との外食」「飲み

    屋へ行く」「繁華街を歩く」「スポーツ」「パチンコ・ゲー

    97

    ムセンターへ行く」「麻雀荘へ行く」「ディスコヘ行く」

    「カラオケヘ行く」の11種目を掲げてそれぞれの行動回

    数,対象地を調査した。

    4-1.各種目の行動回数

    行動回数については,頻度のランクに「ほとんど毎

    日」から「年1~2回程度」の5段階と「行動なし」

    (97)

  • 落 合 康 浩

    の合わせて6段階を設定して選択させた。第2表は種

    目別に頻度ランクごとの回答割合をしめしたものであ

    る.なお,行動指数19)はそれぞれの行動の総量を示す

    値である。

     「ディスコヘ行く」「ボランティア」は男女ともに「行

    動なし」が多く,「麻雀荘へ行く」もとくに女子学生が

    行動しないため全体ではr行動なし」が多い。これら

    は行動指数の値も低く,学生がほとんど行わない種類

    の行動である。

     「学業以外の習い事」は男子学生では「行動なし」が

    多いものの,女子学生では半数近くが行動しており,

    全体では前出の3種目に比ぺて行動をしたものの割合

    が高い.とくに行動した学生には週1~2回程度の頻

    度で行動しものが多く,行動指数の値が比較的高くなっ

    ている.すなわちこの種目は,一部の学生に限られる

    行動ではあるが,行動するものについては,その頻度

    の高い種目である。

     「スポーツ」「パチンコ・ゲームセンターへ行く」に

    ついては,それぞれに「行動なし」は3割程度で,行

    動をしたものの割合は高い.しかしいずれも行動頻度

    が平均して低いため,行動指数の値は「学業以外の習

    い事」よりも低くなっている。

     「図書館等での学習」「知人との外食」「飲み屋へ行く」

    「繁華街を歩く」「カラオケヘ行く」の5種目は,いず

    れも「行動なし」の割合が低く,ほとんどの学生が行

    動する種目ではあるが,行動頻度には種目による差異

    が認められる.「知人との外食」「繁華街を歩く」の2

    種目では,週1~2回程度.月1~2回程度行動する

    ものが多く,行動指数の値が高い.「図書館等での学習」

    「飲み屋へ行く」もほぼ同様の傾向がみられるが,前者

    は男子学生の,後者は女子学生の行動頻度が全体に低

    いことから,行動指数の値は前2種目ほど高くない。「カ

    ラオケヘ行く」は行動頻度を年に数回程度としたもの

    が最も多いことが示すとおり,一人あたりの行動頻度

    の低い種目である。

     以上に基づき11種目を行動頻度から分類するならば,

    行動頻度の高い日常的な行動には「図書館等での学習」

    「学業以外の習い事」「知人との外食」「飲み屋へ行く」

    「繁華街を歩く」の5種目が,また行動頻度の低い非日

    常的な行動には「スポーツ」「パチンコ・ゲームセンター

    へ行く」「カラオケヘ行く」の3種目があげられる。ま

    た「ボランティア活動」「麻雀荘へ行く」および「ディ

    スコヘ行く」の3種目については行動者の割合が極端

    に少ないため,ここでは行動頻度に基づき分類するこ

    とを控えた。

     「繁華街を歩く」は,一般に非日常的な行動と考えら

    (98) 98

    れるが,ここではとくに行動頻度の高い種目として日

    常的な行動に分類される.これは,繁華街が日常的空

    間の一部である通学のルート上にあり,しかもこれら

    を頻繁に訪れるのに十分な余暇時間を日常的に有する

    という,大都市圏内の学生のもつ特性ゆえの特殊性と

    みることもできる。

     4-2.行動における対象地の選択

     行動頻度が高く日常的な行動にあげられる5種目に

    ついては,行動において選択される対象地の多くが目

    常的空間内に存在すると考えられる・そこでここに,

    それぞれの種目について対象地選択の実態を分析した。

     「図書館等での学習」では対象地についての総回答数

    206の内,自宅に近い市立図書館など居住地に近接した

    空間に対象地を選択するケースが97で47。1%を占め,

    次いで大学図書館・研究室図書室および大学に近接し

    た区立図書館などが58(28.1%),そのほか居住地にも

    大学にも近接していない,いわば日常的空間外に対象

    地を選択するケースが51(24.8%)となっている。日

    常的空間外に対象地を選択するのは,国会図書館や都

    立図書館などの大規模な図書館や特殊な資料館を訪れ

    るケースであり,行った回数も少なく,それ自体日常

    的な行動とはいえない。またこういったケースを除外

    するまでもなく,対象地を居住地もしくは大学に近接

    した(あるいは大学内の)空間内に選択する割合が4

    分の3以上を占めている事実は,この種目が日常的空

    間の中でもきわめて狭い範囲に対象地を選択する行動

    であることを意味している。

     「学業以外の習い事」は行動者数が少なく,対象地に

    ついての総回答数も37と少ない.その中では居住地に

    も大学にも近接していないうえに通学のルートからも

    外れた空間にある対象地を選択するケースが16(43.2%)

    と最も多い。どこでするかよりも何をするかが行動の

    基準となるこの種目の性格上,対象地の選択には居住

    地や大学との近接性はとくに重視されていないとみる

    ことができる。

     「図書館等での学習」は対象地の選択が,大学もしく

    は居住地に近接する空間に集中するという傾向が明確

    である.一方「学業以外の習い事」は,回答数が少な

    いこともあり選択される対象地と大学や居住地との位

    置関係が判然としない。したがって詳細な分析はこれ

    らを除外した「知人との外食」「飲み屋へ行く」「繁華

    街を歩く」の3種目について行った。

     それぞれの種目のために選択された対象地の分布を

    示したものが第3-a~c図である。

     「知人との外食」(第3-a図)では,最も多くの回答

  • 大学生の日常的空間内における外出型レジャーの行動パターン

    』~\〈

    、へ㌔

         全回答数の居住地区別割合

       心     \城屏=246       、

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              、          \.  ’

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    東京μ都

    4レ!》池袋13

       新宿63

         大学周辺      △△△        68    △△     Q・

        、金

         v

    奈  川  県

    主要鉄道(JR線)

    裂渋谷2。ゆ

    千  葉  県

    (、

    1地区居住者の選択する対象地

    II地区居住者の選択する対象地

    III地区居住者の選択する対象地

    IV地区居住者の選択する対象地

    V地区居住者の選択する対象地

    0   10km

    回答数1~2 3~5

    ▲ ▲△ △■

    ロ ロ

     回答総数が10以上の対象地

     V地区 1地区居住者による

    _霧げ噺    III地区

    第3-a図 「知人との外食」で選択される対象地(1人上位3ケ所まで回答)

    者が大学周辺を選択しており,ほかに新宿,渋谷,池

    袋が10人以上によって選択される。このほか神田周辺

    および下北沢が6人,吉祥寺が5人によって選択され

    ている。

     1地区を居住地とする3人のうち複数が選択してい

    る対象地は新宿(3人1以下カッコ内の数字はその対

    象地を選択した人数)および大学周辺(2)である。

    以下居住地区別に選択者の多い上位の対象地を上げる

    と・H地区では大学周辺(19),新宿(18),渋谷(10),

    下北沢(4)など,皿地区では大学周辺(25),新宿(19),

    99

    渋谷(7)など,IV地区では新宿(15),大学周辺(14),

    池袋(8)など,V地区では新宿および大学周辺(と

    もに8),柏(4)などとなっている。

     この種目では大学周辺と新宿とを対象地に選択する

    ケースが多く・この傾向はいずれの地区の居住者につ

    いても同様である。渋谷,池袋も対象地として選択さ

    れるケースは多いが,渋谷の選択はHおよび皿地区居

    住者に,池袋の選択はIV地区居住者に集中しており,

    それ以外の地区では少ない。そのほかは居住地のある

    地区内,なかでも居住地に近接した自宅の最寄り駅付

    (99)

  • 落 合康浩

    噂~

         全回答数の居住地区別割合

    赴\城N・脚

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      △    大学周辺 =:i』

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    ’新宿 62

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      (、

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    ~酵口

    \.

    1地区居住者の選択する対象地

    H地区居住者の選択する対象地

    III地区居住者の選択する対象地

    IV地区居住者の選択する対象地

    V地区居住者の選択する対象地

    回答数1~2 3~5

    ▲ ▲△

    ロ ロ

    0

    主要鉄道(JR線)

    10k皿

    ▲ 回答総数が10以上の対象地

        1地区居住者による

    綴輪諾粥    lII地区

    第3-b図 「飲み屋へ行く」で選択される対象地(1人上位3ケ所まで回答)

    近などを対象地に選択しているケースが多くなっている.

     「飲み屋へ行く」(第3-b図)では,最も多くの回答

    者が大学周辺を選択しており,ほか新宿,渋谷が10人

    以上により選択される。このほか池袋および下北沢が

    ともに5人によって選択されている。

     1地区の居住者のうち複数が選択している対象地は

    新宿,大学周辺(ともに2)である.以下居住地区別

    に選択者の多い上位の対象地を上げると,H地区では,

    大学周辺(19),新宿(15),渋谷(8),下北沢(3)

    など,皿地区では,大学周辺(29),新宿(23),渋谷

    (100) 100

    (6),吉祥寺(3)など,IV地区では,大学周辺(20),

    新宿(!4),池袋(2)など,V地区では,大学周辺

    (9),新宿(8),柏(4)などとなっている。

     この種目でも大学周辺と新宿が対象地に選択される

    ケースは多く,全回答数に占める割合は「知人との外

    食」以上で,この2地点への集中の度合いがとくに高

    い。渋谷の選択は2地点に比べてはるかに少なく,し

    かもHおよび皿地区の居住者に集中している.また,

    居住地の近くや通学ルート上の盛り場が選択されるケー

    スもみられるが,これは「知人との外食」の場合に比

  • 大学生の日常的空間内における外出型レジャーの行動パターン

    1地区居住者の選択する対象地

    II地区居住者の選択する対象地

    III地区居住者の選択する対象地

    IV地区居住者の選択する対象地

    V地区居住者の選択する対象地

     回答数1~2  3~5  6~9

    ・▲▲△ △

    6 ■ロ ロ

    回答総数が10以上の対象地

        III地区

          東 ~い,身

    京△

         全回答数の居住地区別割合

       心     ・     N=266     \城       、

    玉県\、県           \、大宮 き,、

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    吉祥寺11・

    ’1し、

    宿88

    神田周潰

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    奈  川  県

       ムム~、  謹

    横浜

    関内周辺

       ②渋谷41

    (、

    千葉

    主要鉄道(JR線)▲

    0   10㎞

    第3-c図 「繁華街を歩く」で選択される対象地(1人上位3ケ所まで回答)

    べて少なくなっている。

     「繁華街を歩く」(第3-c図)では,最も多くの回答

    者が新宿を選択しており,ほか渋谷,池袋,神田周辺,

    吉祥寺が10人以上によって選択される。このほか下北

    沢および横浜がともに9人に,銀座・日本橋が7人に,

    上野および関内・伊勢佐木町がともに5人によって選

    択されている。

     1地区の居住者のうち複数が選択している対象地は

    新宿(3)と渋谷(2)である。以下居住地区別に選

    択者の多い上位の対象地を上げると,H地区では,新

    10!

    宿(22),渋谷(19),横浜(9),関内・伊勢佐木町

    (5),池袋および下北沢(ともに4)など・皿地区で

    は,新宿(33),渋谷(16),吉祥寺(6),下北沢(4)

    など,IV地区では,新宿(19),池袋(15),吉祥寺お

    よび大宮(ともに3)など,V地区では,新宿(11),

    神田周辺(6),千葉および柏(ともに3)などとなっ

    ている。

     この種目では,全回答者の実に76.5%がその対象地

    の一つに新宿を選択しており,各居住地区別にみても

    新宿が最も多く選択されている点は共通している。渋

    (101)

  • 落 合 康 浩

    第3表 日常的なレジャー3種目の対象地別選択者数

       (5人以上の対象地)

    知人との外食

    飲み屋へ行く

    繁華街を歩く

    大学周辺 68 79 一

    新  宿 63 62 88

    渋  谷 20 17 41

    池  袋 13 5 23

    神田周辺 6 11

    吉祥寺 5 一 11

    上  野 5銀座・目本橋 『   7

    下北沢 6 5 9横浜(駅周辺〉 一 一 9関内・伊勢佐木町 一 一 5上位3対象地への集中度(%) 61.4 69.6 57.1

    谷が対象地に選択されるケースは多いが,選択はHお

    よびm地区に集中している。また,吉祥寺の選択は皿

    地区に,池袋の選択はIV地区に,神田周辺の選択はV

    地区にそれぞれ集中している。このほかに横浜や下北

    沢,大宮,柏,千葉などは,それぞれの地区の拠点的

    な繁華街として,地区内の居住者によって選択される

    ケースが多い。

    5. 日常的空間内における行動パターン

     ここでは,前章で示した対象地選択の実態をもとに,

    目常的空間内において大学生がレジャー行動で示す対

    象地選択のパターンについて考察した。

     第3表は「知人との外食」「飲み屋へ行く」「繁華街

    を歩く」の3種目について,5人以上により選択され

    る対象地を示したものである.この対象地数は「繁華

    街を歩く」が10地点と最多であり,つぎが「知人との

    外食」の7地点で,「飲み屋へ行く」が5地点と最も少

    ない.また,それぞれの種目において選択の多い上位

    3対象地の回答数合計が全回答数に占める割合を「上

    位3対象地への集中度」で示した.この値は「飲み屋

    へ行く」が最高であり,つぎが「知人との外食」で,「繁

    華街を歩く」が最も低い。

     「繁華街を歩く」では上位3対象地への集中度が低い

    一方で,5人以上により選択される対象地数が多いこ

    とから,選択される対象地が分散する傾向にあること

    がわかる.とくに居住地が異なれば対象地選択の傾向

    (102) 102

    も異なっており,たとえばH地区居住者には渋谷を選

    択することが多く,IV地区居住者には池袋を選択する

    ことが多いといった傾向がみられる(第3-c図)。こ

    れらはいずれも大学と居住地とを結ぶ通学ルート上に

    ある繁華街で,その近接性の高さゆえに対象地に選択

    されることが多いと考えられる。またH地区における

    横浜のように居住地と同一地区内にあり,通学ルート

    とは無関係な対象地の選択されるケースは多い。これ

    らは居住地と鉄道路線によって直結する最寄りの繁華

    街であり,居住地に対し近接性が高いため,対象地に

    多く選択されると考えられる。

     これらの中にあって新宿はいずれの地区においても

    対象地に選択されることが多い.もちろん新宿が規模

    において東京でも最大級の繁華街であること20)が一っ

    の大きな要因ではあるが,それ以上に大きな要因があ

    る.新宿は,皿地区居住者にとって居住地と鉄道路線

    により直結する繁華街であり,他地区居住者の大半に

    とっても通学のルート上に位置するため,すべての地

    区の居住者にとって近接性が高いという特殊な位置に

    ある.加えて大学からも至近距離にあり,選択がきわ

    めて容易なことから対象地とされるケースが多くなっ

    ていると考えられる。

     「飲み屋へ行く」は上位3対象地への集中度が高い一

    方,5人以上により選択される対象地数は少ない.と

    くに大学周辺および新宿の2地点への集中が著しく,

    他には渋谷などがみられるものの,選択される対象地

    自体が少ない(第3-b図〉。

     大学生が飲み屋へ行く場合,サークルやゼミなど大

    学内のグループによるコンパの形態をとるケースは多

    いと考えられるが,その際対象地には,集団の構成者

    すべてにとって近接性の高い大学周辺が選択され易い。

    新宿も前述のごとく多くの学生にとって近接性の高い

    対象地であり,大学周辺と同様,選択され易いと考え

    られる.その他の対象地へは,大学内の仲間の中でも

    通学ルートを同じくするもの同士で行くか,学外の知

    人などと行くことになるが,それらは比較的特殊であ

    り,大学のグループでの行動に比ぺて少ない・したがっ

    てこの種目では他の種目以上に大学に近接した対象地

    が集中して選択されるものと推察される。

     「知人との外食」は上位3対象地への集中度と5人以

    上により選択される対象地数の双方が,前2種目の中

    間にある。この種目も大学内の仲問とともに行動する

    ことが多いと考えられ,大学周辺と新宿に選択が集中

    し他を引き離している.しかしこの種目の行動は,「飲

    み屋へ行く」ほどにグループの形態をとるケースが多

    くないとみられ,大学に近接した空間以外に対象地を

  • 大学生の日常的空間内における外出型レジャーの行動パターン

    選択するケースも多くなると考えられる.またこの行

    動のなかには,有名なレストランを訪ねて行くことが

    目的となるような近接性を度外視したケースも考えら

    れることから,大学や居住地もしくは通学ルートと無

    関係な対象地を選択することも少なくない。したがっ

    て選択の多い2つの対象地のほかにも,渋谷や池袋を

    はじめ比較的分散して対象地が選択されることになる.

    (第3-c図)

     大学生の日常的空間は,居住地およびその周辺,大

    学およびその周辺,通学ルート等によって成り立って

    いるが,以上みてきたとおり,レジャー種目が異なれ

    ば対象地としてこれら個々の空間を選択するパターン

    に違いがみられる。

     「知人との外食」の対象地は,主として大学周辺の空

    間に選択されるが,通学ルート上や居住地周辺の空間

    にも選択される。さらに,日常的空間外に選択される

    ことも少なくない。

     「飲み屋へ行く」の対象地は,かなり高い割合で大学

    周辺およびそれに近接した空間に集中して選択される。

     「繁華街を歩く」の対象地は,ほとんどが居住地周辺

    の空間と通学ルート上に選択される.ただしここでい

    う居住地周辺の空間には居住地を通る鉄道の沿線も含

    まれており,なかには日常的空問の外に位置する対象

    地もある。

     「図書館等での学習」の対象地は,ほとんどが居住地

    周辺と大学内およびその周辺の限られた狭小な空間の

    中に選択されている。

     また「学業以外の習い事」については,実態の全容

    が判然としないものの・居住地周辺,大学周辺,通学

    ルートのいずれにも含まれない空間に対象地を選択す

    るケースが多いことは,一っの特徴として上げること

    ができる。

    6.おわりに

     本稿では,日本大学文理学部の学生に対して実施し

    た調査の結果をもとに,大学生が日常的空間内におい

    て行うレジャー行動の実態を分析し,対象地選択の傾

    向から行動パターンを考察した。

     日常的空間において対象地を選択する行動には,日

    常的な行動と非日常的な行動の二つがあるが,両者は

    行動頻度によって区分される.すなわち,行動頻度の

    高いものが日常的な行動であり,低いものが非日常的

    な行動である.日常的な行動では対象地の多くが目常

    的空間内において選択されるのに対し,非日常的な行

    動では,多くの対象地が日常的空間の外に選択される

    ため,日常的空間における行動パターンを分析する指

    標には前者が適当であると考えられる。そこで本稿で

    は行動頻度に基づく分析を行って,日常的な行動に分

    類される種目として「図書館等での学習」「学業以外の

    習い事」「知人との外食」「飲み屋へ行く」「繁華街を歩

    く」の5種目を特定し,それぞれについて行動パター

    ンを考察した。

     目常的な空間は居住地周辺,大学周辺,通学ルート,

    その他から成り立っているが,「図書館等での学習」で

    は,居住地周辺と大学周辺に,「学業以外の習い事」で

    はその他の空間に,「知人との外食」と「飲み屋へ行く」

    では大学周辺に,「繁華街を歩く」では居住地周辺と通

    学ルートに対象地が選択され易い傾向のあることがわ

    かった.しかしながらたとえば,同じように大学周辺

    に対象地を選択する傾向の強い「知人との外食」と「飲

    み屋へ行く」の2種目を比較しても行動パターンには

    大きな差異があり,また居住地周辺とする空間の拡が

    りにも広狭の差があって,一概に類型化することはで

    きない。

     本稿は,あくまでも大都市圏に居住する大学生とい

    う,一つの特殊な集団を対象に行った調査を基にした

    分析・考察であり,これをただちに国民全体にあては

    めて論じることはできない。しかしながら,その一部

    には,普遍的に説明し得る要素もあると思われ,その

    解明のためにさらに詳細な分析や,以前の研究との比

    較を行いたい。また,今回の調査では非日常的な行動

    についても調査しており,その行動パターンについて

    も分析を行って,レジャー行動全体によって形成され

    る行動の空間構造についても考察を進めていきたい。

    謝辞

     本稿において分析資料としたアンケート調査の実施にご

    協力いただいた史学科,英文学科,心理学科,地理学科の

    各研究室の方々と,回答を寄せてくれた学生諸氏に心より

    感謝の意を表します.

    注・参考文献

    1)最新のものには,(財)余暇開発センター編(1995):

     『レジャー白書’95』.116p.がある。

    2)最新のものには,(社)目本観光協会編(1995):『目帰

     り観光レクリエーション統計第6回・日帰りレジャー

    103

     回数調査』.78p.がある.

    3)最新のものには,(社)日本観光協会編(1994)1『大都

     市住民の観光レクリエーション第12回・平成5年度』.

     344P.がある。

    (103)

  • 落 合康浩

    4)最新のものには,総理府編(1992)1『観光レクリエー

      ションの実態 第7回全国旅行動態調査報告書一』.433p.

      がある。

    5)小池洋一(1960):都市住民のレクリエーション形態と

      その地域的関係.地理学評論,33,615-625.

    6)坂井雍子(1962):大都市市民のレクリエーション活動

      の実態とその観光慰楽圏一名古屋市の場合 .観光研

      究,69,36-54.

    7)高橋伸夫・高林清和(1978):浜松市における余暇圏の

      構造.人文地理学研究(筑波大),2,95-108.

    8)落合康浩(1987)1静岡県中部地区における週末型余暇

      活動の地域的展開.地理誌叢,29-1,31-42.

    9)落合康浩(1990〉:平日型余暇活動の空間的展開。地理

      誌叢,31-2,40-45.

    10)落合康浩(1991)1神奈川県中西部における余暇活動の

      空間的展開.経済地理学年報,37,245-265.

    11)落合康浩(1993):東京都区部地域における住民の週末

      型余暇活動パターン.地理誌叢,34-2,32-47.

    12)落合康浩(1994)1都市地域住民の週末型余暇活動にお

      ける空間構造.地理誌叢,36-1,23-33.

    13)たとえば前掲1)によれば,男女とも余暇活動各種目へ

      の参加率は30代および40代の値が全世代の平均値に最

      も近い。

    14)前掲1)によれば「外食」は男女ともに10代から60代以

      上までの全世代において参加率が50%を越えている.

      また「国内観光旅行」も10代を除き男女とも全世代に

      わたって参加率が50%を越えている.

    15)前掲1)によれば,「ゲームセンター,ゲームコーナー」

      の参加率は全体の平均が23、3%であるのに対し,男で

      は10代が67,4%,20代が58.5%となっており,女でも

      10代が41.9%,20代が48.4%となっている。また,「ス

      キー」の参加率は全体の平均が15,9%であるのに対し,

      男では20代で42.2%となっており,女では20代で25.8%

      となっている。

    16)これまでの研究では「余暇活動の分類」としてきた.

    !7)アンケートは4学科の2年生以上に約200部配布した。

      回答総数は115で,うち男が58,女が57である・

    18)また単身者の帰省先は北海道2,岩手県1,茨城県1,

      栃木県1,群馬県2,埼玉県2,千葉県3,東京都1,

      新潟県1,富山県2,福井県1,山梨県1,長野県5,  岐阜県2,静岡県4,島根県1,広島県1,香川県1,

      福岡県1,熊本県1,韓国1となっている。!9)行動指数は以下のように算出した。

             200・a十50・b十10・c十5・d十e行動指数=!00・

    ただし

    n

    a:行った回数を「ほとんど毎日」とした回答者数

    b   〃   「週1~2回程度」とした回答者数

    c    〃   r月1~2回程度」とした回答者数

    d    〃   「年に数回程度」とした回答者数

    e    〃   「年に1~2回程度」とした回答者数

    n;回答総数(=115)

    20)東京都総務局統計部(1991):『東京の商業集積地域』

      により小売業年間販売額(1988)と一般飲食店年間販

      売額(1989)の値を合計して1,000億円を越える大規模

      な繁華街(連坦する商業集積地域は一つの繁華街とし

      て合算した)をもとめると,新宿はその一つにかぞえ

      られる.(東京23区内にはほかに銀座・日本橋,池袋,

      渋谷,上野,青山・原宿,神田周辺の6地区がある.)

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