半導体物理 講義ノート - muroran-it.ac.jp · 3 ため、自由電子を表すとして、...
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半導体物理 講義ノート
目次
バンド構造概論------1
金属の自由電子模型-------2
電子の状態密度-----4
フェルミ(Fermi)エネルギー・フェルミ球-----5
確率の保存則-------5
バンド理論------7
結晶の格子ベクトル-----7
逆格子ベクトル------7
結晶中の 1 電子のハミルトニアンの空間的構造-------8
Bloch の定理-----8
波数kに関する周期性と波数kのとりうる範囲-------10 固体電子のエネルギーバンド-----15
弱い束縛近似----15
平面波展開による固有値、固有関数の求め方-------18
強い束縛近似-------23
有効質量------26
グリーンの定理-------34
1 次元の結晶における電子の運動-------36
正孔-------37
固体の電気伝導------38
フェルミ分布------40
ボルツマン方程式-------40
半導体内のキャリアーの定性的な説明-------43
不純物準位------43
熱平衡における不純物準位の占有密度-------46
半導体電子の熱平衡分布------48
真性半導体-------48
不純物半導体-------50
キャリアーの濃度積-------52
電気的中性条件-------52
少数キャリアーの拡散と再結合-------55
p-n 接合 --------57
拡散方程式による拡散電流の扱い-------62
空乏層の幅-------62
p-n 接合部での電流-------63
ボルツマン分布-----65
光検出器-------67
-
1
バンド構造概論
結晶中では電子が占有するエネルギー状態はほぼ連続となり、エネルギーバンドを形成する。そして結晶の
周期性によってエネルギーバンド間にエネルギーギャップが形成される。 この章ではこれらのエネルギー
バンドとエネルギーギャップについて説明する。
エネルギーバンド
結晶中では結晶間の距離がオングストローム(Å)程度と近いため、原子の電子分布が隣接する原子の電子
分布と重なる。電子はフェルミ粒子であり、2個の電子が同じ状態を占有することはできない。この原理をパ
ウリの排他律(Pauli exclusion principle)という。
電子が占有可能な状態を作るために、電子のエネルギー準位は分裂し、新たなエネルギー準位が生成する。
このエネルギー準位の間隔は 10-18eV程度と極めて小さいため、ほぼ連続と見なされる。このように、ほぼ連
続したエネルギー準位の一群をエネルギーバンド(energy band)という。
電子が詰まっているエネルギーバンドを充満帯(filled band)という。共有結合結晶では、充満帯を占有してい
る電子は結合に寄与しており、価電子と呼ばれている。そこで、共有結晶では、充満帯の事を価電子帯(valence
band)ともいう。
一方、充満帯よりもエネルギーが高く、電気伝導に寄与するエネルギーバンドを伝導帯(conduction band)
という。ただし、伝導帯を占有している電子が電気伝導に寄与するためには、伝導帯がすべて占有されていな
い事、つまり伝導帯に空席がある事が必要である。結晶の周期性によって電子が占有する事の出来ないエネル
ギー領域がエネルギーバンド間に形成される。この領域を禁制帯(forbidden band)、エネルギーギャップ
(energy gap)、またはバンドギャップ(band gap)という。禁制帯の大きさは電子エレクトロンボルト(eV)ある
いはそれ以上の大きさである。
右図に絶縁体、半導体、金属のエネルギーバンドを示す。この図
において、曲線がエネルギーバンドを表し、灰色部分が電子を占有
している領域を示す。横軸は、後で述べるが、電子のもつ波数を表
わす。また、電子のエネルギーは上方ほど高い。
図(a)のように、伝導帯が完全に空の場合、あるいは伝導帯に電
子が充満している場合、電子は動くことができず、この個体は絶縁
体(insulator)になる。図(b)のように伝導帯が部分的に(10%から 90%程度)電子で占有されている場合、この固
体は金属(metal)になる。また、図(c)のように伝導帯がわずかの電子で占有されているかまたは価電子帯にわ
ずかに空の部分(電子が入っていない部分)をもっている場合、この固体は半導体(semiconductor)となる。
この時、電気伝導に寄与する電子、即ち伝導電子の濃度は原子濃度のせいぜい 10-2以下である。
多くの場合、半導体は、絶対零度において電子の満ちたバンド(価電子帯)と空のバンド(伝導帯)との間
のエネルギーギャップが小さい結晶である。しかしこの数十年で、GaN、AlN のようなバンドギャップの極
めて大きな窒化物半導体の研究(青色LEDなど)の進展があった。
-
2
金属の自由電子模型
アルカリ金属(Li, Na, K, Rbなど)や貴金属(Au,Cu,Ag)などの金属では、最外殻の電子が特定の電子か
ら離れて、結晶中を自由に動く事ができる。この動く電子を、伝導電子という。1つの伝導電子に着目すると、
この電子に働くポテンシャルは、周期的に並んだ正電荷のイオンによる周
期的ポテンシャル(右図)と着目している伝導電子以外の電子が作るクー
ロンポテンシャルである。また、伝導電子が金属表面から外へ出るには大
きなエネルギーを必要とするため、伝導電子は無限大の高さの障壁により
金属内に閉じ込められている。
この様子を記述する一番簡単なモデルは、正電荷のイオンおよびその多数の伝
導電子によるポテンシャルの寄与を空間的に一様なポテンシャル(金属内では一
様:ポテンシャル 0)( =rU とする)で置き換え、金属表面でポテンシャルが急激に大きくなる(無限大になる)モデルである。これを金属の自由電子模型という。
一辺の長さ L の直方体で出来た無限大のポテンシャルに囲まれた自由電子のシ
ュレディンガー方程式は、 Lzyx
-
3
ため、自由電子を表すとして、係数を(-)にとった。 zy, に関しても、同様の扱いを後で行う。
)()(2)(2)(
)(
1 222
2
22
2
xkxmE
x
xmE
x
x
x xxxxxxx
x
φφφφφ
−=−=∂
∂→−=∂
∂hh
周期的境界条件から、 xk に対して、以下のような表式を得る。ここで xn は整数である。
L
nknLkL
xikx
xxxxxx
xxx
ππφφ
φφ2
2)()0(
)exp()0()(
=→=→=
=
)(),( zy zy φφ に関しても、以下に示すように、同様の方程式を得る。
)()(2)(2)(
)(
1
2}
)(2)(
)(
1{
)(
)(
1
22)(
)(
1)(
)(
1
222
2
22
2
222
2
2
2
222
2
2
2
ykymE
y
ymE
y
y
y
mEEEm
z
z
zy
y
y
mEmE
z
z
zy
y
y
yyyyyyy
y
yxz
z
y
y
xz
z
y
y
φφφφ
φ
φφ
φφ
φφ
φφ
−=−=∂
∂→−=
∂∂
−=−+∂
∂−=∂
∂
+=+∂
∂+∂
∂
hh
hh
hh
)()(2)(
,2)(2)(
)(
1
222
2
222
2
zkzmE
z
z
EEEEmEEEEm
z
z
z
zzzzz
yxzzyxz
z
φφφ
φφ
−=−=∂
∂→
−−==−−
+=∂
∂−
h
hh
周期的境界条件を課すと、次のような波数が求まる。ここで jn は整数である。
L
nknLkL
zxyxxxxikx
jjjjjj
jjj
ππφφ
φφ2
2)()0(
,,),exp()0()( 321
=→=→=
====
以上より、以下に示す波動関数および固有エネルギーを得る。
)(2
)(
)0,0,0(),,(,,2,1,0,,),,,(2
)exp()(
2222
22
zyx
zyxzyxzyx
nnnmL
E
nnnnnnnnnL
iC
++=
≠⋅⋅⋅⋅±±==
⋅=
hπ
πφ
k
k
rkr
ただし
これより、エネルギーが 0)( EE
-
4
電子の状態密度
zyx nnn ,, が不連続な整数の値をとるので、波数およびエネルギーも不連
続な値をとる。波数は ),,)(/2( zyx nnnLπ=k で与えられるので、ある整数の組 zyx nnn ,, が占拠する大きさは、 )1,1,1)(/2( Ld π=k より
33 /)2( Lπ である。よって、波数の大きさが dkkk +~ の間にある状態数 dkkk )(ρ は、半径 k厚さ dk の殻の体積 dkk 24π を 33 /)2( Lπ で割ることで与えられる。右図で、半径 k の球の殻(殻の厚さ dk )を考えると、
dkkL
dkkL
Ldkkdkkk2
2
32
3
3332
24
)2(]/)2/[(4)(
ππ
πππρ ===
単位体積あたりでは、 1=L とおけばよい。エネルギー E と波数 k との関係は、
=
=
=→=→=
−−
kdkdEm
dEEm
dEEm
dkmE
kk
mE
22
221
2122
2
2
2/12/1
22/1
2/1
222
2
h
hhh
h
で与えられるので、 dEEE +~ の間になる状態数 dEEE )(ρ は、
2/13
2/3
2
3
2/13
2/3
2
32/1
2/1
222
32
2
3
)2(4
)(
)()2(
42
212
22)(
)()(
EmL
E
dEEdEEmL
dEEmmEL
dkkL
dkk
dkkdEE
E
Ek
kE
h
hhh
πρ
ρπππ
ρ
ρρ
=
==
==
=
−
で与えられる。スピンのアップダウンの因子 2を考慮すると、それぞれ、
dkkL
dkkdEEmL
dEE kE2
2
32/1
3
2/3
2
3
)(,)2(
2)(
πρ
πρ ==
h
別の考え方:
波数の大きさ k を半径とする球の体積は 3)3/4( kπ である。ある整数の組 zyx nnn ,, が占拠する大きさは33 /)2( Lπ であるので、この球の中に含まれる状態数は、
333 /)2(34
Lk ππ
である。これを k で微分する事で、
22
32
3
333
3
24
)2(/)2(
])3/4[()( k
Lk
LL
dk
kdkk π
ππ
ππρ ===
を得る。さらに、スピンの自由度を考慮し、2倍する。
-
5
フェルミ(Fermi)エネルギー・フェルミ球
金属の自由電子模型(p.2)では、絶対零度において、電子はエネルギーの低い準位から上の準位へと、
パウリの原理に従って、詰まっていく。電子を充填した時、電子が持つ最も高いエネルギーを Fermi エネル
ギーという。
先に求めた電子の持つエネルギーが dEEE +~ の間になる状態数 dEEE )(ρ を用い、単位体積あたりの電子数(電子密度) n を求める。 )(EEρ において 1→L とおいて
3/232
3/2
3/232
3/2
00
)(3
)2(:1
)(3
)2()(
32)2(
2)2(
2)(
32/3
3
2/3
2
32/1
3
2/3
2
3
F
FFE
mnL
mLmLdEE
mLdEEn FF
επ
επ
εππ
ρεε
h
hhh
=→
==== ∫∫
絶対零度における Fermi エネルギー Fε は、上で求めた関係式を逆に解き、電子数密度 n を用い、
3/222
)3(2
)3()2()2(
3)()(
3)2(
)1( 22/33
2/3
322/32/3
32
2/3
nm
nm
nm
mnL FFF πεπ
πεεπ
hhh
h=→==→=→
となる。絶対零度では、電子は波数 k 空間で、 2/2 hFF mk ε= を半径とする球の内部に充満している。この球をフェルミ(Fermi)球と呼ぶ。また、 Fk をフェルミ波数という。
確率の保存則
確率密度 ),(*),(),( ttt rrr φφρ = に関する保存則の導出をする。
*),()](2
[)*,()*](2
[*),(
),()](2
[),(
:)(,,,,),(2
)(),,()(),(
22
2
321
3
12
22
tUm
tUmt
ti
tUmt
ti
realUzxyxxxx
Um
HtHt
ti
j j
rrrrr
rrr
rrrrrr
φφφ
φφ
∆ φφ
+−=+−=∂
∂−→
+−=∂
∂
===∂∂=+−==
∂∂
∑=
∆∆
∆
∆
hhh
hh
hh
),( trρ の時間微分をすると、
)],()*),(()),((*),([2
))],((*),(),()*),([(2
)],()(),(2
[1
*),(),()*],()(*),(2
[1
),(*),(),(
*),()],(*),([),(
22
ttttim
ttttim
tUtmi
tttUtmi
t
ttt
t
t
t
tt
t
t
rrrr
rrrr
rrrrrrrr
rrr
rrrr
φφφφ
φφφφ
φφφφφφ
φφφφφφρ
∆∆
∆∆
∆∆
−−=
−=
+−++−−=
∂∂+
∂∂=
∂∂=
∂∂
h
h
h
h
h
h
ここで、
)],()*),(()),((*),([2
),( ttttim
t rrrrrj φφφφ ∇−∇= h
∂∂
∂∂
∂∂=∇=
zyx,,div
を定義すると、
-
6
x
t
x
tt
x
tt
x
t
xtt
x
z
tt
z
t
z
ttt
z
y
tt
y
t
y
ttt
y
x
tt
x
t
x
t
x
tt
xtt
x
ttttim
t
x
z
y
x
∂∂
∂∂+
∂∂=
∂∂
∂∂=∇
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂=∇
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂=∇
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂=
∂∂
∂∂=∇
∂∂
∇−∇=
),(*),(),(
*),()],(
*),([)],()*),([(
),(*),(
),(*),())],((*),([
),(*),(
),(*),())],((*),([
),(*),(
),(*),(]
),(*),([))],((*),([
)],()*),(()),((*),([div2
),(div
2
2
2
2
2
2
2
2
rrr
rr
rrr
rr
rrrr
rr
rrrr
rr
rrrrrr
rrrrrj
φφφφφφφφ
φφφφφφ
φφφφφφ
φφφφφφφφ
φφφφ
h
[ ]),()*],([)],([*),(2
),(div
),()*],([)],([*),(
}),(*),(
),()*],({[)],([*),(),(*),(
),(div2
3
1
3
1
-1
ttttim
t
tttt
x
t
x
ttttt
x
t
x
tt
im j jjj jj
rrrrrj
rrrr
rrrrrr
rrrj
φφφφ
φφφφ
φφφφφφφφ
∆−∆=
∆−∆=
∂∂
∂∂+∆−∆+
∂∂
∂∂=
∑∑
==
h
h
これより、
0),(div),( =+
∂∂
tt
trj
rρ
をえる。この式から、 ),( trj は確率密度の流れと解釈できる。
さて、電荷密度の流れ(電流密度)は、電子の確率密度の流れ ),( trj に e− をかけたもので与えられる。
)],()*)(()),((*),([2
)],()*)(())((*),([2
),()(),(
tttm
ei
ttim
etet
rrrr
rrrrrjri
φφφφ
φφφφ
∇−∇=
∇−∇−=−=
h
h
-
7
バンド理論
結晶の格子ベクトル
結晶の単位構造は、どれをとっても全ての原子の組成、配列が等しい。それらが多数規則的に配列する事で、
大きな結晶を作る。右図は、2種類の原子で作られた結晶の最小単位である単位構造を示す。このような単位
構造は、単位胞とも呼ばれる。
結晶において、ある原子を原点に取り、原点にとった原子(例えば、図で、真ん中の灰色原子を原点にとっ
て見よう。)から見た他の原子の配列を考えよう。原点にとった原子から図に示したベクトル 21, aa または 3a
の適当な整数倍の移動で、原点にとった原子と同等の原子(灰色の大きな原子)に移る。その原子から見た周
辺の原子の配列は、原点にとった原子から見た配列と同
じである。この時、単位胞の体積は、3 つのベクトル
321 ,, aaa で囲まれる体積である。
以上の考察からわかるように、単位胞の位置 R は、このような 3 つベクトル 321 ,, aaa と適当な整数
321, nnn , を用いて、
332211 aaaR nnn ++=
で表わされる。このようにして作られるベクトル R の終点は、規則正しい点の配列を作る。この配列を格子と
いい、これらの点を格子点と呼ぶ。 321 ,, aaa をこの結晶の基本ベクトルという。このようにして、単位胞の
結晶内での位置は決める事が出来るが、単位胞の中の原子の配置までは決まらない。
逆格子ベクトル
上で定義された 321 ,, aaa の格子ベクトルに対して、
≠
===⋅
×⋅×=
×⋅×=
×⋅×=
)(0
)(1,2,
)(
)(2,
)(
)(2,
)(
)(2 ,,
321
213
321
132
321
321 ji
jijijiji δπδπππ abaaa
aab
aaaaa
baaa
aab
で定義されるベクトル 321 ,, bbb を逆格子における基本ベクトルと呼ぶ。ここで“ ⋅”および“×”はそれぞれベクトルの内積と外積を表わす。これら 321 ,, bbb と適当な整数 321, hhh , を用いてできるベクトル
332211 bbbK hhh ++=
を逆格子ベクトルという。格子ベクトルと逆格子ベクトルの間には、
)(2 332211,
nhnhnhnhji
jiji ++=⋅=⋅ ∑ πabRK
の関係がある。
-
8
結晶中の 1 電子のハミルトニアンの空間的構造
空間的な周期性のある結晶における 1電子のハミルトニアンの空間的な構造を考える。3次元の周期的なポ
テンシャル )(rU 中の 1電子のシュレディンガー方程式は、
∑= ∂
∂=+−==3
12
22
),(2
)(),()()(j jx
Um
HEH ∆ ∆ψψ rrrrr h
で与えられる。結晶は、それを構成する最小単位である単位胞が規則正しく配列したものである。よって、結
晶の中の電子が感じるポテンシャルは、どの単位胞であっても、単位胞の同じ場所にあれば、同じポテンシャ
ルになる。すなわち、結晶の任意の格子ベクトル R に対して、ポテンシャルは )()( rRr UU =+ が成り立つ。
よってハミルトニアン )(rH は、結晶の格子での併進操作に対して不変である: )()( rRr HH =+ 。
これより、
)()()()()()( RrRrrRrRrRr +=+→+=++ ψψψψ EHEH
となる。よって )(rψ (一般に複素数の解)がシュレディンガー方程式のエネルギー固有値 E の解なら、)( Rr +ψ も同じエネルギー固有値 E の解である。
Bloch の定理
結晶のような周期的なポテンシャル中の1電子の波動関数 )(rψ において、格子ベクトル R で与えられる併進演算子 RT で、
)()exp()()( rRkRrrR ψψψ ⋅=+= iT が成り立つ。これを、Bloch(ブロッホ)の定理という。
以下では、そのいくつかの証明を示す。
Blochの定理/ 証明その1
空間的な周期性のある結晶において、その結晶の任意の格子ベクトル R に対して併進演算子 RT を定義し、1電子の波動関数 )( rφ を R だけ位置をずらすものとする。
)()( RrrR += φφT
結晶中の電子のハミルトニアンは、格子ベクトル R に対して周期的な演算子であるので、
0)()()([
)()()()()()()()(
] =−→=+=++=
rrr
rrRrrRrRrrr
RR
RR
φφφφφ
THHT
THHHHT
)(rφ は任意の関数なので、
RR rr THHT )()( = の交換関係が成り立つ。加えて、連続して 2つの異なる併進操作を行っても、その順番に関係なく同じ併進操
作になる:
)'()()( '' RRrrr RRRR ++== φφφ TTTT よって
''' RRRRRR +== TTTTT
-
9
が成り立つ。
RR rr THHT )()( = の関係式は、 RT とハミルトニアン H が互いに可換な演算子である事を示す。よって、この結晶内の 1 電子の固有関数として、 RT と H の同時固有関数 )(rψ を選ぶことができる( RT の固有関数でもあり H の固有関数でもあるような、波動関数 )(rψ が存在するという事)。(*)すなわち、
)()()(
)()(
rRr
rr
R ψψψψ
cT
EH
==
である。よって複数の併進操作を考える事で、 )( Rc における次の関係式を得る。
)'()()'()()'()(
)()'()()(
'
' RRRRrRRr
rRRr
RR
RR ccccT
ccTT=+→
+==
+ ψψψψ
(*)注意。あるエネルギー固有値 E に対応する波動関数が複数(エネルギー縮退している)の場合は、ややこしくなる。さらなる考察が必要。さらに注意。1次元の束縛された系では、1つのエネルギーに対応する固有
状態の縮退はない。しかし、結晶中の 1 電子の運動は完全に束縛された系ではない( ∞→|| r で波動関数0)( →rφ ではない)ため、縮退している可能性がある。3次元の場合も同様である。
さて、格子ベクトルは、基本ベクトルを )3,2,1( =iia を用いて、 332211 aaaR nnn ++= で与えられる。そこで、
))1(()()()()'()()'(
3322111332211332211
aaaaaaaRaaaR
RRRRnnnccnnncc
nnn
ccc++−=++=→
++=+ =
の関係式がなりたつので、結晶の格子ベクトルを作る基本ベクトルに関する係数 )( ic a について考えよう。)( ic a )3~1( =i (一般には複素数)について、
)2exp()( ii ixc π=a
と書く事にしよう。 ix は、一般には複素数である。しかし、波動関数がその物理的内容を変えない事を要求すると、実数になる。(もし ix に虚数成分が存在すると、 |)(| ic a が 1よりも大きいまたは小さくなるため、無限回の併進操作で波動関数が発散(+∞)またはゼロになるという、不都合が生じる。よって ix は実数でなければならない。注: a が実数のとき、 1|)exp(| =ia である。)
関係式 )'()()'( RRRR ccc =+ を何度も用いると、任意の格子ベクトル 332211 aaaR nnn ++= に対して、
)](2exp[)()()()( 332211321321 xnxnxnicccc
nnn++== πaaaR
となる。これは 321 xxx 、、 (これらの係数が実数である事以上の制約は、この段階ではない。)を係数とする逆格子ベクトル
ijjixxx πδ2,332211 =⋅++= abbbbk
を用いて、
)exp()( RkR ⋅= ic
と書ける。まとめると、
)()exp()()( rRkRrrR ψψψ ⋅=+= iT ----(A) となる。
-
10
結晶中の 1電子の波動関数が )()exp()( rrkr ui ⋅=ψ の形を持つとする。 Rrr +→ の置き換えで、
)()](exp[)( RrRrkRr ++⋅=+ uiψ 。
一方、関係式(A)(前ページ)から、
)()](exp[
)]())[exp(exp()()exp()(
rRrk
rrkRkrRkRr
ui
uiii
+⋅=⋅⋅=⋅=+
ψψ
これらは等しいので、 )()( Rrr += uu の関係式を得る。これらの関係式が Blochの定理である。
1 電子の波動関数 )(, rknψ の波数kに関する周期性と波数kのとりうる範囲 結晶中を伝播する電子を記述する波動関数は、規格化定数を別にすると、 )()exp()( ,, rrkr kk nn ui ⋅=ψ の形
で記述される。ここで n は原子の場合の主量子数に相当する、バンドを指定する量子数である。一方で波数k
は、以下に示すように、一意的に決まらない。
K を結晶の逆格子ベクトル、 R を格子ベクトルとする。その時、
)exp(])(exp[ RkRKk ⋅=⋅+ ii
が成り立つ。 )(, rknu を波数kを中心として逆格子ベクトル K でフーリエ展開する。
)(
)"exp(])(exp[
"''"
])'(exp[])(exp[
)'exp()exp()(
,
'
',
""
'
'
r
rKrKk
KKKKKK
rKKrKk
rKrkr
Kk
KKKk
KKk
KKkk
+
++
+
+
=
⋅⋅+=
+=→−≡
⋅−⋅+=
⋅⋅=
∑
∑
∑
n
n,
n,
n,n
iui
iui
iui
ψ
ψ
の波数の変換
これは、結晶中の 1電子の波動関数(Bloch関数) )(, rknψ がk空間において逆格子ベクトル K の周期性を持つ事を示す。つまり )(, rKk+nψ は )(, rknψ と同じ関数である。このように、同じ波動関数を指定するのに際して、kの値は一意的に決まらず、逆格子ベクトル K だけの任意性がある。
そこで、K の差異を持たないすべての波数kの数およびその範囲について考えよう。その際、波数kは 0=kを中心とする取り方が有用である。
そこで、波数 kのとりうる範囲について考えよう。波動関数に、より厳しい周期的境界条件を課す。
321 ,, NNN を 321 aaa 、、 軸方向の単位胞(結晶を構成する最小単位の構成物のこと。これが縦・横・奥の 3
方向に積み重なって、結晶が出来る。)の数とし、以下のような厳しい条件をとる。
)()(
)()(
)(1)()exp()(
33
22
1111
rar
rar
rrakar
ψψψψ
ψψψ
=+=+
×=⋅=+
N
N
NiN
この制約(位相を含めて、関数の形が同じ)は、次のような条件( 321 ,, hhh は整数)を課すことになる。
333222
11111111
,
1)2exp()exp()( 1
hxNhxN
hxNxiNNicN
===→==⋅= πaka
-
11
これより、以下の関係式を得る。
3
33
2
22
1
11 ,, N
hx
N
hx
N
hx ===
波数kは、
ijjiN
h
N
h
N
h πδ2,33
32
2
21
1
1 =⋅++= abbbbk
で与えられる。大抵の教科書では、波数としてこのような値とする。波数kの値は一意的に決まらず、任意の
逆格子ベクトル K だけの任意性がある。このため、kの値は
21
21
,21
21
21
21
3
3
2
2
1
1 ≤
-
12
ちろん )(1 ax +φ と )(2 ax +φ も同じエネルギー固有値 E に対応するシュレディンガー方程式の解であるので、それらは既知の実数係数 2121 ,,, ββαα を用い、 )(1 xφ と )(2 xφ の線形結合で書ける:
)()()(
)()()(
22112
22111
xxax
xxax
φβφβφφαφαφ
+=++=+
また、 )(1 xφ と )(2 xφ の適当な線形結合により、シュレディンガー方程式の複素数解 )(),( 21 xx ψψ を作ることが出来る。 )(),( 21 xx ψψ は、同じエネルギー固有値Eに対応する波動関数である。係数 ijA は一般に複素数である:
)()()(
)()()(
2221212
2121111
xAxAx
xAxAx
φφψφφψ
+=+=
このようにして作った波動関数 )(),( 21 xx ψψ が、 21,λλλ = の係数を用いて、
)()(
)()(
222
111
xax
xax
ψλψψλψ
=+=+
を満足するとする。このような条件を満足する波動関数が存在する条件を求めよう。
)]()([
)(
)()()()(
)]()([)]()([)()()(
)()(
2121111
11
2212211111211
2211122211112121111
111
xAxA
x
xAAxAA
xxAxxAaxAaxAax
xax
φφλψλ
φβαφβαφβφβφαφαφφψ
ψλψ
+=
=+++=
+++=+++=+=+
よって、
)()()()()()( 2121111122122111112111 xAxAxAAxAA φλφλφβαφβα +=+++ を得る。
つづいて、
)]()([
)(
)()()()(
)]()([)]()([)()()(
:)()(
2221212
22
22222211122121
2211222211212221212
222
xAxA
x
xAAxAA
xxAxxAaxAaxAax
xax
φφλψλ
φβαφβαφβφβφαφαφφψ
ψλψ
+==
+++=+++=+++=+
=+
よって、
)()()()()()( 2222121222222211122121 xAxAxAAxAA φλφλφβαφβα +=+++ をえる。このようにして得られた 2つの等式:
)()()()()()(
)()()()()()(
2222121222222211122121
2121111122122111112111
xAxAxAAxAA
xAxAxAAxAA
φλφλφβαφβαφλφλφβαφβα
+=++++=+++
は、任意の x の値で成り立つので、それぞれの関数の係数が等しい。これらの等式を、行列で表す。
-
13
=
−−
→
=−+=+−
→
=+=+
=
−−
→
=−+=+−
→
=+=+
22
21
222
121
2222221
1222121
222222221
212122121
12
11
122
111
1212211
1121111
121212211
111112111
0)(
0)(
00)(
0)(
A
A
AA
AA
AAA
AAA
A
A
AA
AA
AAA
AAA
λβαβλα
λβαβλα
λβαλβα
λβαβλα
λβαβλα
λβαλβα
これらは、 0,022
21
12
11 ≠
≠
A
A
A
Aである解を要求(=0だと、常にゼロの値の関数。興味なし)すると、
0))((0 122122
11 =−−−↔=−
−βαλβλα
λβαβλα
の固有値方程式になる。この方程式の解が 21,λλλ = である。それらの値に対して
=
2221
1211][AA
AAA
の行列の成分が決まり、2つの独立な解 )(),( 21 xx ψψ が求まる。それらの解の間で、
)()(
)()(
222
111
xax
xax
ψλψψλψ
=+=+
が成り立つ。いずれも、 )()( xax λφφ =+ の形である。
次に、原点は適当にとれるので、 )()( xUxU −= のようにとる。シュレディンガー方程式で xx −→ の変換をすると、
)()(2
)()(2
)( 222
2
22
xHxUxm
xUxm
xH =+∂∂−=−+
−∂∂−=− hh
となるので、
)()()()()()( xExxHxExxH −=−→−=−− ψψψψ
をえる。これから分るように、 )(1 xψ がエネルギー固有値 E の解なら )(1 x−ψ もおなじエネルギー固有値 E の解である。
関係式 )()( 111 xax ψλψ =+ において axx −→ で置き換えた後に xx −→ の置き換えをする:
)(1
))((
))(()())(())((
)()())(())(()()(
11
1
111111
111111111
xax
axxaxx
axxaxaaxxax
−=+−→
+−=−→−−=−→−=→−=+−→=+
ψλ
ψ
ψλψψλψψλψψλψψλψ
従って、 )(1 x−ψ は 1/1 λλ = で )()( 111 xax ψλψ =+ と同じ性質を持つ。ところで、シュレディンガー方程式は2 階の微分方程式なので、2 つの独立な解を持つ。よって )(1 x−ψ が )(1 xψ と異なる独立な解であるなら、
)()( 21 xx ψψ ∝− である。すなわち、置き換え:
)(1
)()(1
))(( 21
211
1 xaxxax ψλψψ
λψ =+↔−=+−
)(2 xψ は )(1 xψ とは独立な解であるから、 )()( 222 xax ψλψ =+ が成り立つ。よって、 121 =λλ を得る。 さて、行列式=0の解λは、実数か複素数である。実数の場合はµを実数として )exp(1 aµλ = 、 )exp(2 aµλ −=とできる。一方、解が複素数の場合はkを実数として、 )exp(1 ika=λ 、 )exp(2 ika−=λ とできる。 k,µ は実数
-
14
である。先の関係式より、
)()exp()(),()exp()( 2211 xaNNaxxaNNax ψµψψµψ −=+=+
または、
)()exp()(),()exp()( 2211 xiNkaNaxxiNkaNax ψψψψ −=+=+
をえる。
)exp( aµλ ±= の場合、 xが大きくなると波動関数は指数関数的に増加または減少する解であり、結晶中を動く電子の定常状態の波動関数としては、不適切である。
0)exp(,
)()exp()(
)()2exp()()()exp()(
11
11
oramNm
xamNmNax
xaNNaNaxxaNNax
+∞→±∞→±=+→
⋅⋅⋅→±=++→±=+
µψµψ
ψµψψµψ
物理的には、 )exp( ika±=λ の値を許容する。よって定常状態を表す関数は、
)()exp()(),()exp()( 2211 xikaaxxikaax ψψψψ −=+=+
が適当である。
最初は、 )()exp()( 11 xikaax ψψ =+ で考察。さて、 )()exp()( xuikxx =ψ とおくと、
)()(
)()](exp[)]())[exp(exp()()](exp[)()exp()(
)()](exp[)(
xuaxu
xuaxikxuikxikaaxuaxikxikaax
axuaxikax
=+→
+==++→=+++=+
ψψψ
を得る。同様にして、 )()exp()( 22 xikaax ψψ −=+ で考察する。 )()exp()( xuikxx −=ψ とおくと、
)()(
)()](exp[)]())[exp(exp()()](exp[)()exp()(
)()](exp[)(
xuaxu
xuaxikxuikxikaaxuaxikxikaax
axuaxikax
=+→
+−=−−=++−→−=+++−=+
ψψψ
いずれにても、
)()( xuaxu =+ が成り立つ。以下、1電子の波動関数 )(, rknψ の波数kに関する周期性と波数kのとりうる範囲については、省略する。3次元の場合の証明も省略する。
-
15
固体電子のエネルギー・バンド
弱い束縛近似(1つの電子の波動関数を平面波で表す近似)
結晶内の 1電子の波動関数を )()exp()( rrkr ui ⋅=ψ とおくと、Blochの定理から )(ru は格子ベクトル R に関して )()( Rrr += uu を満足する周期関数である。よって、逆格子ベクトル K を用いて )(ru をフーリエ展開する。次式において、 )(KA は逆格子ベクトル K で振動する項 )exp( rK ⋅i の振幅である。
∑ ⋅=K
rKKr )exp()()( iAu
次式で与えられる電子の波動関数をシュレディンガー方程式に代入し、
∑∑ ⋅+=⋅⋅=KK
rKkKrKKrkr ])(exp[)()exp()()exp()( iAiAiψ
振幅 )(KA に関する方程式を導く。なお 22 /)( x∂∂ rψ は次のようになっている。
∑∑ ⋅++−=⋅+∂∂=
∂∂
KKrKkKKkrKkK
r])(exp[)(})({])(exp[)(
)( 22
2
2
2
iAiAxx
ψ
)(rψ をシュレディンガー方程式に代入すると、
0])(exp[)(})()(2
{
])(exp[)(])(exp[)()(])(exp[)()(2
)()()](2
[
22
22
2
=⋅+−++→
⋅+=⋅++⋅++→
=+−
∑
∑∑∑
K
KKK
rKkKrKk
rKkKrKkKrrKkKKk
rrr
iAEUm
iEAiAUiAm
EUm
h
h
h
ψψ∆
ここで、両辺に ])'(exp[ rKk ⋅+− i をかけて、結晶全体にわたって体積積分すると、
0])'(exp[)()(])'(exp[)(})(2
{ 22
=⋅−+⋅−−+ ∑ ∫∑ ∫KK
rrKKrKrrKKKKk diUAdiAEm
h
ここで、 ∫ ⋅− rrKK di ])'(exp[ の計算。
・ 0'=− KK の時は、Vを結晶の体積として、
Vdidi =⋅=⋅− ∫∫ rrrrKK ]0exp[])'(exp[r
・ 0'≠− KK の時は、以下のように考える。波数 K は 321 ,, KKK を整数として、(p.7参照)
ijjiKKK πδ2,332211 =⋅++= abbbbK
で与えられた。 ', KK は逆格子ベクトルであるので、 'KK − も逆格子ベクトルである。よって、 ","," 321 KKKを整数として、
332211 """"' bbbKKK KKK ++==−
とする。結晶格子の基底ベクトル 321 aaa 、、 方向の単位胞の数 321 ,, NNN を用いて、結晶内の位置ベクトル
-
16
を 332211 aaar xxx ++= 、 jj Nx
-
17
0
)(
)(
)(
)(2
)(2
)(2
3
2
1
22
22
22
3
2
1
321
032313
320212
312101
=
+−+
+−+
+−+
−−
−−
−−
K
K
K
Kk
Kk
Kk
K
K
K
KKK
KKKK
KKKK
KKKK
A
A
A
UEm
UU
UUEm
U
UUUEm
h
h
h
となる。この解から、固有エネルギーE が求まる。もし )33( × 行列に逆行列が存在するなら、 0)(
)(
)(
3
2
1
=
K
K
K
A
A
Aにな
る。この解には興味なしなので、除外する。行列式=0から固有エネルギーE が求まる。
0
)(2
)(2
)(2
032313
320212
312101
22
22
22
=
+−+
+−+
+−+
−−
−−
−−
UEm
UU
UUEm
U
UUUEm
Kk
Kk
Kk
KKKK
KKKK
KKKK
h
h
h
この行列式から求まったエネルギー固有値を用い、 0)'(]',[ =KKK A を ⋅⋅⋅、、、 )()()( 321 KKK AAA について解く事で、結晶中の 1電子の波動関数が求まる。
さて、 )(rU のフーリエ展開の定数項 0U は、ポテンシャル )(rU を結晶全体にわたった平均値である。
∫∫∫ =⋅−=→⋅−−=− rrrrrrrKKrKK dUVdiU
VUdiU
VU )(
1]0exp[)(
1])'(exp[)(
10'
r
さらに行列 ]',[ KK については、対角項を次のように式変形できる。
)()(2
)(2 00
22
22
UEm
UEm jj
−−+→+−+ KkKk hh
そこで、実際の計算では、実際の計算では 0UE − を求めるべき固有値(エネルギー固有値)として扱い、得られた値に 0U を足すことで、エネルギー固有値が求まる。次の行列式=0を見よ。
0
)()(2
)()(2
)()(2
02313
32012
31210
23
2
22
2
21
2
=
−−+
−−+
−−+
−−
−−
−−
UEm
UU
UUEm
U
UUUEm
Kk
Kk
Kk
KKKK
KKKK
KKKK
h
h
h
-
18
平面波展開による固有値、固有関数の求め方
自由空間(ポテンシャル 0)( =rU )での波動関数を )exp()( rkr ⋅= iψ とする。この時、ポテンシャル 0)( ≠rUを導入する事で、波動関数がどのように変わるか、またエネルギー固有値がどのように変化するかを、上で得
られた固有値方程式から求める。
ポテンシャル )(rU は、逆格子ベクトルでフーリエ展開し、その係数 KK −'U を用いる。ポテンシャル )(rU
のフーリエ係数 KK −'U は、以下のように定義されている。波動関数やエネルギー固有値を近似計算するため、
)()( rr UU λ→ とおく。ここでλは近似計算での次数を明確にするため導入したものであり、計算終了時に 1→λとおく。
∫∫ ⋅−−=→⋅−−= −− rrKKrrrKKr KKKK diUVUdiU
VU ])'(exp[)(
1])'(exp[)(
1'' λλ
KKKK −− → '' UU λ の置き換えになる。 0)( ≠rUλ での電子の波動関数も同様にフーリエ展開する。
∑=
⋅+∑=⋅+=⋅⋅=
∞
=
∞
=∑∑∑
0
0
)()(
])(exp[)(])(exp[)()exp()()exp()(
)(
)(
j
j
jj
jj
AA
iAiAiAi
KK
rKkKrKkKrKKrkrKKK
λ
λψ
係数 )()( KjA は、行列の積の方程式 0)'(]',[ =KKK A に代入する事で、求めるべきものである。
ここからは、具体的な計算方法について述べる。 0)( →rUλ で
)exp()(])(exp[)()exp()(0
)( rkrrKkKrkrK
⋅=→⋅+∑⋅= ∑∞
=iiAi
j
jj ψλψ
となることから、 0)( =rU での係数として、 0)0(,1)0( )0()0( =≠= KAA を得る。 )1(),()( ≥jA j K は、現時点では、決まらない。エネルギー固有値も
∑=∞
= 0
)(
j
jjEE λ
のように、λに関する級数で展開する。λの次数が近似の次数であり、λの次数が高くなるほど近似の精度が高くなる。このようにして、λの次数に関する )()( KjA の方程式を導き、近似解を求める。
λの級数展開の式
KKKK −∑=∑=∞
=
∞
=',,)()(
00
)()( UEEAAjj
jjjj λλλ
これらの級数展開を、すでに導いた式(p.16(**))に代入する。
0)'()(})(2
{'
'2
2
=+−+ ∑ −K
KK KKKk AUAEmh
代入後、λに関する級数として式を整理し、全ての )3,2,1( ⋅⋅⋅⋅=kkλ の係数=0 とおいて、 )()( ),( jj EA K を求める。計算では、次数の低い
kλ の係数の計算から始めて、1つ高次の項の計算へと進む。最後に 1=λ とおいて、近似解を得る。(λの級数で解を近似したのは、計算が混乱しないための方便である。)
-
19
0)'()(})(2
{
0)'()(})(2
{
''
''
000
)()()(22
22
=∑+∑∑−+→
=+−+
∑
∑
∞
=
∞
=
∞
=−
−
KKK
KKK
KKKk
KKKk
jjj
jjjjjj AUAEm
AUAEm
λλλλh
h
・次数 0λ (注意: 0)0(,1)0( )0()0( =≠= KAA )の項
0)(})(2
{ )0()0(22
=−+ KKk AEm
h
0=K とすれば、 1)0()0( =A より、
22
)0()0(22
20)0(
2kk
mEE
m
hh =→=−+
を得る。
・1λ :1次の項
一般の 0=K では、 )()1( KA に関する式から )1(E が求まる。
0
0
0'0'
'0'
''
)1(
)0()0()1()1(
)0()0()1()1(22
22
)0()0()1()1()0(22
22
0)0()0(}{)0(0
0)'()0(}{)0(}22
{
0)'()0(}{)0(})0(2
{
0)'()(})(2
{000
)()()(
UE
AUAEA
AUAEAmm
AUAEAEm
AUAEm jjj
jjjjjj
=→
=+−+×
=+−+−
=+−+−+→
=∑+∑∑−+
∑
∑
∑
=−
−
−
∞
=
∞
=
∞
=
KK
KK
KKK
Kkk
Kk
KKKk
hh
h
h λλλλ
よって、周期的ポテンシャルに関する 1次までの近似で、電子の持つエネルギーは、
02
2)1()0(
2U
mEEE +=+= kh
となる。
一般の 0≠K では、 )()1( KA に関する式から、 )()1( KA が求まる。
0)'()()(})(2
{'
')0()0()1()1()0(2
2
=++−+ ∑ −K
KK KKKKk AUAEAEmh
に、 0)0(,1)0( )0()0( =≠= KAA 、 mE 2/22)0( kh= を代入し、
22222
)1(
)1()1(22
22
)(,)(
2)(
010)(}2
)(2
{
kKkkKk
K
KkKk
K
K
≠+−+
−=→
=×+×+−+
−
−
但し Um
A
UEAmm
h
hh
をえる。この近似解は、 1)0(|)(| )0()1( =
-
20
)()1( KA は非常に大きな値となるため、摂動計算で近似解を求める方法は妥当ではなく、元の厳密な式に立ち
返る必要がある。
以下、その計算。 0=K と 0≠K での振幅 )0(A 、 )(KA の式は、 m2/)()( 220 KkKk +=+ hε として、
0)0()()}()({
0)0()()(})({:
0)()0()}()({
0)()0()0(})0({:0
0)'()(})(2
{
00
0
0
00
''
0
0
0
0
22
=+−−+→=++−+
=+−−→=++−+=
=+−+
−
−−
−
−∑
AUAUE
AUAUAE
AUAUE
AUAUAE
AUAEm
K
KKK
K
K
KKK
KKk
KKKkK
Kk
KkK
KKKk
εε
εε
h
0)(
)0(
)()(
)()(
0
0
0
0 =
−−+−−
− KKk
k
K
K
A
A
UEU
UUE
εε
である。
≠
0
0
)(
)0(
KA
Aの解を持つためには、行列式=0が必要。
0)()(
)()(
0
0
0
0 =−−+
−−
− UEU
UUE
Kk
k
K
K
εε
これから 0UE − を求める。
( ) 220000
2
2
00
200
2
00
2
00
20000
2
00
||)()(4
1
2
)()(
||2
)()(
||)()(2
)()(
2
)()()(
0||)()())](()([)(
0)}()()}{()({
0
0
00
00
K
K
K
K
KK
KkkKkk
Kkk
KkkKkkKkk
KkkKkk
Kkk
UUE
U
UUE
UUEUE
UUUEUE
++−±++
=−→
+
+−=
++−
++=
++−−
=−++−++−−
=−−−+−− −
εεεε
εε
εεεεεε
εεεε
εε
)()( 00 Kkk += εε すなわち22 )( Kkk += を満足する 2 つの波数
Kkk +, に対して、
||2
)()()( 000 K
KkkUUE ±++=− ±
εε
となり、エネルギーの縮退は解け、 ||2 KU だけ分離する。右図は 1
次元の場合のエネルギー図。破線は自由電子モデルにおける、実線は
周期的ポテンシャルがある場合での、エネルギーの波数依存性を示
す。自由電子モデルでは連続であったエネルギースペクトルが、周期
的ポテンシャルの影響でエネルギーギャップを生じ、エネルギーバン
ドが形成される。
1次元では、格子定数a での逆格子ベクトルは a/2π± およびその
-
21
整数倍で与えられる。エネルギー縮退が生じる波数の条件22 )( Kkk += は、1次元では 22 )( Kkk += 、すなわ
ち 02 =+ Kk である。よってバンドギャップは、 ak /π±= の波数で生じる事が分かる。 さて、エネルギーの縮退が解ける波数の点では、kと K のなす角度をθ として、
02)( 222 =+⋅→+= KKkKkk
||, K|k| == Kk とすると、
)cos(2cos2
0cos2
0cos2 2
θπθθ
θ
−=−==+
=+
kkK
Kk
KkK
が成り立つ。これは、kが逆格子ベクトル K を垂直 2等分する面上にある事を示す。
上で見たように、縮退がとけるベクトルkでは、その終点が逆格子ベクトル K を垂直 2 等分する面上にある。この手続きに従って、1つの逆格子点を中心として、これに逆格子点に到るベクトルを垂直 2等分する面
によって作られる逆格子空間の部分を、第 1ブリユアン領域という。
右図は、逆格子の 2次元正方格子(黒点)のブリユアン領域を示す。灰
色が第1ブリユアン領域(最も近い格子点 4 点との垂直 2 等分線で囲ま
れた領域)であり、縦線の箇所が第2ブリユアン領域(次に近い格子点 4
点との垂直 2 等分線で囲まれた領域から第 1 ブリユアン領域を引いたも
の)である。
さて、 )()( 00 Kkk += εε の時、 )()( 00 kKk εε →+ として、波動関数を求める。
||)(||2
)()()( 0
000 KK k
KkkUUUE ±=±++=− ± ε
εε
=+=+
→
=+±−+=+±−
−− 0)0()(||
0)()0(||
0)0()(|)}|)(()({
0)()0(|)}|)(()({
0000
00
AUAU
AUAU
AUAU
AUAU
KK
KK
KK
KK
K
K
KkKk
Kkk
m
m
εεεε
)0(||
)(0)()0(||||)()(
)0(||
)(0)()0(||||)()(
0
0
0
0
AU
UAAUAUUUE
AU
UAAUAUUUE
K
KKKK
K
KKKK
KKk
KKk
−=→=++→−=−
=→=+−→+=−
−−
++
−
+
ε
ε
となる(複合同順)。
以下では簡単のため、 KU が実数値をとり、かつ 0>KU としよう。
)0()0(||
)(||)()(
)0()0(||
)(||)()(
0
0
0
0
AAU
UAUUE
AAU
UAUUE
−=−=−→−=−
==+→+=−
−
+
K
KK
K
KK
Kk
Kk
ε
ε
22 )( Kkk += を満足する波数kを求めよう。
-
22
0)2
1(02)( 222 =⋅+→=+⋅→+= KKkKKkKkk
よって K に垂直な成分を ⊥k ( 0=⋅⊥ Kk )とすると、
⊥⊥ +−=→=+ kKkkKk 21
2
1
となる。波数 K に垂直であれば、 ⊥k はどんなベクトルでも良い。 続いて、 +− )( 0UE (高いエネルギー)に対応する波動関数を )(r+ψ とすると、
)21
cos()exp()0(2
]}2
exp[]2
){exp[exp()0(])21
(exp[)0(])21
(exp[)0(
])21
(exp[)0(])21
(exp[)0(
])(exp[)0(]exp[)0()exp()()exp()(
rKrk
rKrKrkrkKrkK
rKkKrkK
rKkrkrKKrkrK
⋅⋅=
⋅+⋅−⋅=⋅++⋅+−=
⋅++−+⋅+−=
⋅++⋅=⋅⋅=+
⊥
⊥⊥⊥
⊥⊥
∑
iA
iiiAiAiA
iAiA
iAiAiAi
ψ
−− )( 0UE (低いエネルギー)に対応する波動関数を )(r−ψ とすると、
)2
1sin()exp()0(2
]}2
exp[]2
){exp[exp()0(
])2
1(exp[)0(])
2
1(exp[)0()(
rKrk
rKrKrk
rKkKrkKr
⋅⋅−=
⋅−⋅−⋅=
⋅++−−⋅+−=−
⊥
⊥
⊥⊥
iiA
iiiA
iAiA
ψ
)(r+ψ と )(r−ψ は、定在波になっている。なお 0
-
23
強い束縛の近似(電子が1つの原子に強く束縛されている波動関数を用いた近似)
固体はマクロな数の原子が集まった巨大分子であると考えると、分子と同じ方法で扱える。原子核は、原子
間相互作用のポテンシャルが極小になる点を中心に微小振動すると考え、エネルギー準位を検討する。問題に
よっては電子の運動と原子振動の相互作用も考慮する必要がある。
固体には結晶と非結晶(amorphous solid)の 2種類あるが、ここでは原子の配列に規則性のある結晶につ
いて考える。結晶の特徴は原子核が周期的に配列している事である。一番簡単なモデルは、N個の同種原子が
等しい間隔 a で x軸上に並んでいる一次元モデルであるが、結晶の場合周期性が必要になるから、長さ NaL =の環状に並んだ 1次元モデルで考えよう。このモデルでは、最後の原子に位置の次に最初の原子が来る、周期
的構造を仮定する。
電子は、周期性
)()( xUaxU =+
を持つポテンシャル場を互いに独立に運動する(電子同士の相互作用を無視する)とし、1電子のハミルトニ
アンが
)(2 2
22
xUxm
H +∂∂−= h
で与えられるとし、その固有値を求める。結晶中の電子のエネルギー固有値(エネルギー準位)は、エネルギ
ーバンド(energy band)と呼ばれるほぼ連続的なエネルギー準位の集合であり、バンドとバンドとの間には、
準位を全く含まないエネルギーギャップ(バンドギャップともいう)が存在する。
孤立電子のとびとびの準位が、結晶中では連続的なバンドになる事を示す。(強い束縛の近似)
1次元結晶の原子核は、 aNxaxaxx N )1(,,2,,0 321 −=⋅⋅⋅⋅=== に固定されているとする。原点に局在化している(束縛されている)電子の規格化された波動関数を )(xφ とする。この )(xφ を用いると、結晶のn番目の原子の位置 nx に束縛されている電子の波動関数 )(xnφ は、 )()( nn xxx −= φφ で表わされる。原子間隔 aが波動関数 )(xφ の広がりと同程度になると、電子は原子から原子へとトンネル効果によって動く。そのため、孤立原子ではとびとびの値に存在していた電子のエネルギー準位が、結晶中では連続的なバンドになる。
結晶での電子の運動は、波動関数 )(xnφ を用いて記述す場合、複数の波動関数 )(xnφ ( Nn ~1= )の重ね合わせで表わすのが適当だろう。そこで、電子の波動関数を、次のような
電子の波動関数の重ね合わせの形で近似しよう。係数 )( nxc
は nx に依存する。
∑=N
nn xxcx n )()()( φϕ 。
結晶を大きな輪(周期的境界条件)と見なすと、 )(xϕ は Na の周期性を持つので、 )()( xNax ϕϕ =− が成り立つ。
∑
∑∑∑
+=
−+−=−−=−=−
N
nNnn
N
nn
N
nnn
N
nnn
xxc
anNxxcNaxxxcNaxxcNax
)()(
))1(()()()()()()(
φ
φφφϕ
-
24
一方で )(xϕ の総和∑ の添え字を変えても同じ状態を示す(状態が変わらない)ので、
∑∑ ++==N
nNnNn
N
nn xxcxxcx n )()()()()( φφϕ
が成り立つ。 )()( xNax ϕϕ =− を要請したので、波動関数の係数の比較から、 )()( nNn xcxc =+ を得る。さらに、位置 x で見た波動関数は位置 ax − でみた波動関数と物理的に同等と見なせる(すべての原子は、同種である)ので、 )( ax −ϕ と )(xϕ は係数を除いて同じ関数である。そこで係数C を用いて、次の関係式を得る。
∑
∑
∑∑∑
++
+
==
=
−=−−=−=−
=−
N
nnn
N
nnn
N
nn
N
nnn
N
nnn
xxcCxC
xxc
naxxcaxxxcaxxcax
xCax
)()()(
)()(
)()()()()()()(
)()(
11
1
φϕ
φ
φφφϕ
ϕϕ
よって )()( 1 nn xCcxc =+ をえる。この式を利用し、以下のようにして係数C を求める。
)()()()( 111 xcCxcxCcxcN
Nnn =→= ++
ここで周期的境界条件 )()( xNax ϕϕ =− から得られた関係式 )()( 11 xcxc N =+ に注意すると、 l を整数として、
)exp(
,2,1,2
2)exp(1
ikaC
lNa
lklkNaikNaC N
=
⋅⋅⋅⋅±±==→=→== ππ
となる。l を N 変化させると kaは π2 変化するため、C の値は変化しない。よって )( nxc の値も不変である。よって、独立な係数C を与える l として、
,,22 N
kN
Nl
N ππ
-
25
)]()](exp[)()()exp()( axuaxikaxxuikxx kkkk ++=+→= ϕϕ
となる。そこで(1)の性質 )()exp()( xikaax kk ϕϕ =+ を用いると、
)()(
)]())[exp(exp()()](exp[
xuaxu
xuikxikaaxuaxik
kk
kk
=+→=++
が成り立つ。(1)~(2)の性質を、Blochの定理という。
次に、バンド構造を考えよう。まず、波動関数 )(xkϕ を規格化する。
NCNC
xxxamnikCxxxxxN
n
N
mnmkkkk
/1
d)(*)(])(exp[d)(*)()()(
020
1 1
20
=→≈
−== ∑∑ ∫∫= =
∞+
∞−
∞+
∞−
φφϕϕϕϕ
ここで、電子の波動関数 )(xnφ が十分局在化しているとして、異なる波動関数同士の内積を無視する次の近似を用いた。
≠
=≈∫
∞+
∞− )(0
)(1d)(*)(
nm
nmxxx nm φφ
エネルギーの期待値は、
∑∑ ∫= =
∞+
∞−
− −==N
n
N
mnmkk xxHxamnikNxHxkE
1 1
1 d)(*)(])(exp[)()()( φφϕϕ
電子の波動関数 )(xnφ の重なりは大きくないとして、積分は 1±== nmnm 、 のみを残す:
xxHxE
xxHxE
kaEEikaikaEENkE
nn
nn
N
n
d)(*)(2
d)(*)(
)cos()]}exp()[exp(21
{)(
1
0
01 01
±∫
∫
∑
∞+
∞−
∞+
∞−
=−
−=∆
=
∆−=++−∆−=
φφ
φφ
これは、 EE ∆−0 と EE ∆+0 の間に N 個のエネルギー準位がある事を示す。 E∆2 バンド幅という。原子間隔a が増加するにしたがって幅は狭まり、 ∞→a の極限で孤立原子のシャープな準位( N 重に縮退している)が得られる。スピンのアップ・ダウンのスピンの向きを考慮すれば、1つの状態に 2つの電子が入る事ができ
る。よって、N個の原子で作られる結晶の 1つのバンドの中には 2N個の状態がある。
-
26
有効質量
電子の運動を、波束の運動と見なして、その運動を考察する。周波数および波数が近い 2 つの電場(平面
波)の重ね合わせを考える。図では、赤色(破線)と青色(実線)の 2 つの波が該当する。
( ) ( )])()[(exp])()[(exp 00 xkkExkkEE ⋅−−−−+⋅+−+−= ∆ω∆ω∆ω∆ω titi
これは、
( ) ( ) ( )( ) ( )][expcos2
]][exp][[exp][exp
0
0
xkxkE
xkxkxkEE
⋅−−⋅−=⋅−++⋅−−⋅−−=
tit
tititi
ω∆ω∆∆ω∆∆ω∆ω
となる。2 つの波の重ね合わせ(緑色の波)は、包絡線(緑の曲線を囲む 2 つの黒色破線)を持つ波の伝播で
ある。なお黒色の破線は関数 ( )xk ⋅∆−∆± tωcos を表わす)。この包絡線(黒色の破線)の移動する速度は、位相速度 k/ω では進まない。簡単のため、 k∆ が z成分のみを持つとすれば、cosの中の因子が時間的に変化しない条件から、2 つの波の重ね合わせは、
ku
dt
dzzkt
dt
dg ∆
∆==→=⋅∆−∆ ωω 0)(
で進む。 gu を群速度という。この関係式を、電子の関係式に書きなおす。
gu を結晶中の電子の速度 v と読み替え、 ωh=E の関係式を用い、偏微分を 3 次元での扱いに拡張(波数 k の zyx ,, 成分での微分)すれば、電子の
速度v は、
,)(11)(1
kk
v∂
∂=→∆∆=
∆∆=
∆∆= ng
E
k
E
kku
hh
h
h
ωω
∂∂
∂∂
∂∂=
∂∂
zyx kkk,,
k
で与えられる。よって、速度の時間変化は
kkv
∂∂= )(1 nE
dt
d
dt
d
h
である。外部から加えられる力により、電子は運動をする。電子のエネルギーの時間変化は、荷電粒子に掛か
る電場F による単位時間当たりの仕事量を考えると、
Fk
kvF
k ⋅∂
∂−=⋅−= )()()( nn Eeedt
dE
h
となり、電場 F による電子のエネルギーの変化 dtdEn /)(k は、波数の変化を通じて行われる。この式を速度
ベクトルの微分 dtd /v に代入し、微分の順序を交換すると、
∑= ∂
∂∂∂−=
⋅∂
∂∂∂−=
⋅∂
∂−∂∂=
∂∂=
∂∂=
3
12
2
)(
)()(1)(1)(1
jj
j
n
nnnn
Fk
Ee
EeEe
dt
dEE
dt
d
dt
d
kk
Fk
kk
Fk
kk
kkk
kv
h
hhhhh
となる。成分で書くと、
∑∑== ∂∂
∂−=∂
∂∂∂−=
3
1
2
2
3
12
)(1)(
)(
jj
ji
n
jj
j
n
i
i Fkk
EeF
k
E
k
e
dt
dv kk
hh
質点の運動方程式:
-
27
Fv
Fv
)(1
)( emdt
de
dt
dm −=→−=
との類似性から、以下で定義された有効質量テンソル ijm~ を用いて、( zyxji ,,, = )
ji
n
ijjj
ijjj
ji
ni
kk
E
mF
meF
kk
Ee
dt
dv
∂∂∂=−=
∂∂∂−= ∑∑
==
)(1~1
,~1
)()(1
)(2
2
3
1
3
1
2
2
kk
hh
となる。もし )(knE が k に関して一様であれば、有効質量テンソルはスカラーになる。その時、
2
2
2
)(1
*
1
i
n
k
E
m ∂∂= k
h
で与えられる *m を有効質量という。この式は、結晶中の電子が有効質量 *m を持つ自由電子のように電場に
より加速される事を示す。有効質量 *m は、 k 空間におけるエネルギー曲面の曲率半径に反比例する。
一方、電場 F による電子のエネルギーの増加は波数 k を通じてもたらされるので、波数 k に関する時間変化の式(運動方程式)は、以下の式で与えられる。p.26
Fkk
vk
kkk
vF
kk
v
kvF
)(1)()(
)()(1
)()(
edt
d
dt
d
dt
dE
dt
dEe
Edt
dEe
nn
n
n
−=→⋅=⋅∂
∂==⋅−→
∂∂=
=⋅−
hh
h
有効質量のより正確な導出
波動関数 ),( trφ のシュレディンガー方程式は、一般に次のとおり。ポテンシャル )(rU は実数なので、*)()( rr UU = である事に注意。
*),()](2
[)*,()*](2
[*),(
),()](2
[),(
:)(,),(2
)(),,()(),(
22
2
3
12
22
tUm
tUmt
ti
tUmt
ti
realUx
Um
HtHt
ti
j j
rrrrr
rrr
rrrrrr
φφφ
φφ
∆ φφ
+−=+−=∂
∂−→
+−=∂
∂
∂∂=+−==
∂∂
∑=
∆∆
∆
∆
hhh
hh
hh
電子の波動関数の性質
続いて、結晶中の波動関数 )()exp()( ,, rrkr kk nn uiC ⋅=ψ に対する基本的な性質を確認する。C は積分定数。定常状態の結晶中の電子のシュレディンガー方程式(固有値方程式)は、
)]()exp()[()]()exp([)(2
2,, rrkkrrkr kk nn uiCEuiCUm n
⋅=⋅
+− ∆h
である。ポテンシャルおよびエネルギーは実数なので、 *)()(*)()( rrkk UUEE nn == 、 である。 Bloch の定理では、結晶中の電子の波動関数を )()exp()( ,, rrkr kk nn ui ⋅=ψ とおいたとき、
-
28
)()(
)()(
)()exp()(
,, rr
Rrr
rRkRr
kKk nn
uu
i
ψψ
ψψ
=+=
⋅=+
+
が成立する。この関係式を用いて、結晶中の波動関数に関するい
くつかの関係式を導出する。
最初に結晶中の単位胞を番号付けする。最初の単位胞を 1 とし、最後を 321 NNNN = とする。任意の単位胞の格子点を表わす格子ベクトルを iR とすると、i 番目の単位胞での
2, |)(| rknψ の体積積分は、
∫=∫ ⋅=∫iii V
nV
nV
nduduid rrrrrkrr
kkk2
,2
,2
,|)(||)()exp(||)(|ψ
となる。積分変数を iRrr +→ に変換すると、体積積分する空間は、単位胞 i から単位胞 1 に変わる。
∫ +=∫ ++⋅=∫ +=∫111
2,
2,
2,
2,
|)(||)()](exp[||)(||)(|V
inV
iniV
inV
nduduidd
i
rRrrRrRrkrRrrrkkkk
ψψ
ここで )()( ,, Rrr kk += nn uu を利用すると、以下の関係式を得る。
∫=∫→∫=∫ +111
2,
2,
2,
2,
|)(||)(||)(||)(|V
nV
nV
nV
induddudu
i
rrrrrrrRrkkkk
ψ
つまり、2
,|)(| r
knu の体積積分をどの単位胞で行っても、同じ値になる。
続いて、異なる波数における波動関数の内積を見る。ここでV は結晶全体での体積積分である。i
V は、i 番
目の単位胞での体積積分を意味する。
∫ ⋅−=
∫ ⋅⋅−=∫
Vnn
Vnn
Vnn
duui
duiuid
rrrrkk
rrrkrrkrrr
kk
kkkk
)(*)(])'(exp[
)()exp(*)()'exp()(*)(
,',
,',,',
ψψ
この積分を、 N 個の単位胞での寄せ集めにかえる。
∑ ∫ ++⋅−⋅−=
∑ ∫ +++⋅−=
∑ ∫ ⋅−=
∫ ⋅−=∫
=
=
=
N
j
N
j
N
j
Vnn
Vnn
j
j
Vd
nu
nuii
Vd
nu
nui
Vd
nu
nui
duuid
jjj
jjjj
1
1
1
,',,',
)(,
*)(',
])'(exp[])'(exp[
)(,
*)(',
)]()'(exp[
)(,
*)(',
])'(exp[
)(*)(])'(exp[)(*)(
rRrk
Rrk
rkkRkk
rRrkRrkRrkk
rrk
rk
rkk
rrrrkkrrrkkkk
ψψ
ここで積分の中の変数ベクトルj
Rr + は、j 番目の単位胞内を動く。Blochの定理 )()( Rrr += uu を用いると、積分の変数 r は、単位胞 1 の中を動く事になる。
-
29
∑ ∫ ⋅−⋅−=
∑ ∫ ++⋅−⋅−=∫
=
=
N
j V
N
j VVnn
dn
un
uii
dn
un
uiid
j
jjjj
1
1,',
1
)(,
*)(',
])'(exp[])'(exp[
)(,
*)(',
])'(exp[])'(exp[)(*)(
rrk rkrkkRkk
rRrkRrkrkkRkkrrr kk
ψψ
積分の項はj
R に無関係な積分であるため、
∫ ⋅−×
∑ ⋅−=
∑ ∫ ⋅−⋅−=∫
=
=
1,', )(*)(])'(exp[])'(exp[
)(,
*)(',
])'(exp[])'(exp[)(*)(
1
1,',
1
Vnn duuij
i
dn
un
uiid
N
j
N
j VVnn j
rr rrkkRkk
rrk rkrkkRkkrrr
kk
kk
ψψ
続いて '" kkk −= とおいて ∑ ⋅−=
N
jji
1
])'(exp[ Rkk の評価を行う。波数ベクトル k と格子ベクトル R は、
33221133
32
2
21
1
1 ,2,"""
" aaaRabbbbk nnnN
h
N
h
N
hijji ++==⋅++= πδ
で与えられる。 321 ,, NNN は 321 aaa 、、 方向の単位胞の数である。 ),,( 321 nnnj = であり、格子ベクトル Rの 321 ,, aaa に掛かる係数(整数) 321 ,, nnn はお互いに独立に選ぶ事ができるので、総和Σでは、 321 ,, nnn を独
立に取れる。
∑∑∑=
∑=
∑ ∑ ⋅=∑ ⋅=∑ ⋅−
===
=
====
3
3
2
2
1
1 1333
1222
1111
1333222111
3
1,
)/"2exp()/"2exp()/"2exp(
)/"2exp()/"2exp()/"2exp(
)"
2exp()"exp(])'(exp[111
N
n
N
n
N
n
N
j
nmm
m
NnihNnihNnih
NnihNnihNnih
nN
hiii
N
jnn
m
N
j
N
jjj
πππ
πππ
π
abRkRkk
さて、 1)/"2exp( 11 ≠Nihπ の時、 "2 1hπ = ×π2 整数となるので、
0)/"2exp(1
)"2exp(1)/"2exp()/"2exp(
11
111
1
1 1111
=−
−=∑= Nih
ihNihNinh
N
n ππππ
一方 1)/"2exp( 11 =Nihπ の時、
1
1
1 1111)/"2exp( NNinh
N
n
=∑=
π
となる。さて、(p.11、24 参照)波数ベクトルの各成分の大きさの範囲について、
1111
11
11
11
'"
2'
2
22
2'
2
22 NhhhNN
hN
Nh
N
Nh
N
Nh
N
xxx
x
x
x
x
-
30
がなりたつ。同様にして
3322 '",'" NhhhNNhhhN zzzyyy
-
31
})(
)exp(1
)(){(
]})(
)exp(1
[)]()exp(1
[){()]}()exp(1
)[({
,,
,,,
x
xx
k
ui
VixU
k
ui
Vui
VixUui
VU
k
nn
nnn
∂∂
⋅+=
∂∂
⋅+⋅=⋅∂∂
rrkrr
rrkrrkrrrkr
kk
kkk
ψ
右辺は、
})(
)exp(1
)(){()()(
})(
)exp(1
)]()exp(1
[){()()(
)}()exp(1
{)()]()exp(1
[)(
)]}()exp(1
)[({
,,,
,,,
,,
,
xn
x
n
xn
x
n
xn
x
n
nx
k
ui
VixE
k
E
k
ui
Vui
VixE
k
E
uiVk
EuiVk
E
uiV
Ek
nnn
nnn
nn
n
∂∂
⋅++∂
∂=
∂∂
⋅+⋅+∂
∂=
⋅∂∂+⋅
∂∂=
⋅∂∂
rrkrkr
k
rrkrrkkr
k
rrkkrrkk
rrkk
kkk
kkk
kk
k
ψψ
ψ
これより、次式(2)を得る。
})(
)exp(1
)(){()()(
]})(
)exp(1
[)(){(])(
)exp(1
[)]([2
,,,
,,
,,
2
xn
x
n
xx
k
ui
VixE
k
E
k
ui
VixU
k
ui
Vix
m
nnn
nn
nn
∂
∂⋅++
∂∂
=
∂
∂⋅++
∂
∂⋅∆+∆−
rrkrkr
k
rrkrr
rrkr
kkk
kk
kk
ψψ
ψψ
h
0)()(
)()exp(
1)()(
2))(()()(
2
,
,,
22
=∂
∂−
∂
∂⋅
−+∆−+
−+∆−
rk
rrkkrrkr
k
kk
n
nn
x
n
xnn
k
E
k
ui
VEU
mixEU
m
ψ
ψ
hh
---(2)
さて、(2)式の左辺第 1 項: ))(()()(2 ,
2
rkr knixEUm nψ
−+∆− h の計算は、
)()(
2)()(
2))((
)()(
2))(
)(1())(())((
))(())((
,,
,,
,
,,,
,,,
,,
3
12
2
2
2
2
2
3
12
2
rr
rr
r
rrr
rrr
rr
kk
kk
k
kkk
kkk
kk
nn
nn
n
nnn
nnn
nn
ixx
ix
ixx
iix
xix
xi
xx
xiix
xxix
x
ixx
ix
j j
j j
ψψ
ψψ
ψ
ψψψ
ψψψ
ψψ
∆+∂
∂=
∂∂+
∂∂
=∆
∂∂+
∂∂
=∂
∂+×
∂∂=
∂∂
∂∂=
∂∂
∂∂=∆
∑
∑
=
=
これを利用すると、
-
32
xi
mEU
mix
ixEUixx
im
ixEUm
nn
nnn
n
n
nn
∂∂
⋅−−+∆−=
−+
∆+
∂∂
−=
−+∆−
)(2
2)()]()(
2[
))()](()([)()(
22
))(()()(2
,,
,,,
,
22
22
rrkr
rkrrr
rkr
kk
kkk
k
ψψ
ψψψ
ψ
hh
hh
ここで、 )(, rknψ がシュレディンガー方程式 )()()()](2[ ,,
2
rkrr kk nn nEUmψψ =+∆− h の解であることから、
xmi
xmiix
xi
mEU
mixixEU
m
n
n
nnn nn
∂∂
⋅−=
∂∂
⋅−×=
∂∂
⋅−−+∆−=
−+∆−
)(0
)(0
)(2
2)()]()(
2[))(()()(
2
,
,
,,,
2
2
222
r
r
rrkrrkr
k
k
kkk
ψ
ψ
ψψψ
h
h
hhh
となる。これを利用し、(2)式は、
0)()()(
)exp(1
)()(2
)(
0)()()(
)exp(1
)()(2
))(()()(2
,,,
,,
,
22
2
2
=∂
∂−
∂
∂⋅
−+∆−+
∂
∂⋅−→
=∂
∂−
∂
∂⋅
−+∆−+
+
−+∆−
rkr
rkkrr
rkr
rkkr
rkr
kkk
kk
k
nnn
nn
n
x
n
xn
x
n
xn
n
k
E
k
ui
VEU
mxmi
k
E
k
ui
VEU
m
ixEUm
ψψ
ψ
ψ
hh
h
h
∂∂
⋅
+−∆+
∂∂
⋅+=∂
∂−→x
nx
n
k
uiEU
mVxmi
k
E nnn
)()exp()()(
2
1)()(
)( ,,,
22 rrkkr
rr
k kkk
hh ψψ ---(3)
となる。x
n
k
E
∂∂ )(k
は k の関数であり r の関数ではないため、空間積分では定数。(3)の左辺から *)(, rknψ をか
けて空間積分を行うと、
∫∫
∫
ΩΩ
Ω
∂∂
⋅
+−∆+
∂
∂=
∂∂
−
rr
rkkrrrr
r
rrrk
kk
kk
kk
dk
uiEU
mVd
xmi
dk
E
x
nnn
x
n
nn
nn
)()exp()()(
2*)(
1)(*)(
)(*)()(
,2
,
2,
,
,,
hh ψψ
ψ
ψψ
すぐ上の式の右辺第 2 項=0 となる事の計算方法
ここで、演算子のエルミート性と )(, rknψ がハミルトニアンの固有関数である事を用いて、右辺第 2 項を計算する。 ∫∫ = rrrrrr dAdA )(*)}({)(*)( 2121 φφφφ が成り立てば、演算子 Aはエルミート演算子である。
0)(
)exp(0)(
)exp(*)()()(2
)()exp()()(
2*)(
,,,
2
,2
,
=
∂∂
⋅×=
∂∂
⋅
+−∆=
∂∂
⋅
+−∆
∫∫
∫
ΩΩ
Ω
rr
rkrr
rkrkr
rr
rkkrr
kkk
kk
dk
uid
k
uiEU
m
dk
uiEU
m
x
n
x
nnn
x
nnn
ψ
ψ
h
h
または後ほど示すグリーンの定理を利用すると、
-
33
0*)()(
)exp()(
)exp(*)(
)*)(()(
)exp()(
)exp(*)(
,,,,
,,,
,
=
∂∂
∂∂
⋅−
∂∂
⋅∂∂=
∆
∂∂
⋅−
∂∂
⋅∆
∫
∫Ω
Sx
n
x
n
nx
n
x
nn
dSnk
ui
k
ui
n
dk
ui
k
ui
nn rr
rkr
rkr
rrr
rkr
rkr
kkkk
kkk
k
ψψ
ψψ
が成り立つ。最初の等式はグリーンの定理である。次の等式(=0)は、波動関数に対して周期的境界条件を
とっているため、表面積分において波動関数などの外向き方向の微分の面積分は、相対する面同士で打ち消し
あうからである。これから、
∫
∫
Ω
Ω
∆∂
∂⋅=
∂∂
⋅∆
rrr
rk
rr
rkr
kk
kk
dk
ui
dk
ui
nx
n
x
nn
)*)(()(
)exp(
)()exp(*)(
,,
,,
ψ
ψ
を得る。この結果と )(, rknψ がハミルトニアンの固有値 )(knE である固有関数である事を用いると、
0)(
)exp()()(2
*)(1 ,
2
, =
∂∂
⋅
+−∆∫Ω r
rrkkrr kk dk
uiEU
mV x
nnn
hψ
となる。右辺第 2 項=0 の証明の仕方は上で示したように複数あるが、いずれにせよ
0)(
*)()( ,
,
2
+∂
∂=
∂∂− ∫Ω r
rr
k kk dxm
ik
E nn
x
nψ
ψh
を得る。x
n
k
E
∂∂− )(k は実数であるから、その複素共役との和をとって 2 で割ったものとも等しい。
∫
∫
∫∫
Ω
Ω
ΩΩ
∂∂
−∂
∂=
∂∂−
∂∂
−∂
∂=
∂∂
−×+∂
∂×=
∂∂−
rr
rr
rk
rr
rr
r
rr
rrr
rk
kk
kk
kk
kk
kk
kk
dxxm
ei
k
Ee
dxxm
i
dxm
idxm
ik
E
nn
nn
nn
nn
nn
nn
x
n
x
n
*)()(
)(*)(
2)(
)(*)(
)(*)(
2
*)()()(
21)(
*)(21)(
,,
,,
,,
,,
,,
,,
2
22
ψψ
ψψ
ψψ
ψψ
ψψ
ψψ
h
h
h
hh
-
34
グリーンの定理
ガウスの定理
∫∫ =⋅ VS xS3d)(divd)( xAnxA
において、 )(grad)()( xxxA φϕ= とおく。 )()( xx φϕ 、 は任意のスカラー関数である。
∫∫ =⋅ VS xS3d)](grad)([divd)(grad)( xxnxx φϕφϕ
)(grad)(grad)]()[(
)()()()()()()()(
)()()()()()()()()()(
)()(
)()(
)()()](grad)([div
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
xxxx
xxxxxxxx
xxxxxxxxxx
xx
xx
xxxx
φϕφϕ
φϕφϕφϕφϕ
φϕφϕφϕφφφϕ
φϕφϕφϕφϕ
⋅+∆=∂
∂∂
∂+∂
∂∂
∂+∂
∂∂
∂+
∂∂+
∂∂+
∂∂=
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂+
∂∂+
∂∂+
∂∂=
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂+
∂∂
∂∂=
zxyyxxzyx
zxyyxxzyx
zzyyxx
よって、
∫∫ ⋅+∆=⋅ VS xS3}d)(grad)(grad)]()[({d)(grad)( xxxxnxx φϕφϕφϕ
)(xϕ と )(xφ を交換して、以下の式を得る。
∫∫ ⋅+∆=⋅ VS xS3}d)(grad)(grad)]()[({d)(grad)( xxxxnxx ϕφϕφϕφ
これら 2 つの式を引き算すると、
∫∫ ∆−∆=⋅− VS xS3}d)]()[()]()[({d)](grad)()(grad)([ xxxxnxxxx ϕφφϕϕφφϕ
この関係式を、グリーンの定理という。
電流密度は、すでに求めたように、p.6
)],()*)(()),((*),([2
),( tttm
eit rrrrri φφφφ ∇−∇= h
である。これと、すでに求めた次の式
∫Ω
∂∂
−∂
∂=
∂∂− r
rr
rr
k kk
kk dxxm
ei
k
Ee nn
nn
x
n*)(
)()(
*)(2
)( ,,
,,
ψψ
ψψh
h
とを比較し、さらに zy kk , の微分も行うと、電流 i は、
∂∂
∂∂
∂∂−=
∂∂−=
z
n
y
n
x
nn
k
E
k
E
k
EeEe )(,
)(,
)()( kkk
k
ki
hh
で与えられる。これを e− で割ると、電子の速度v として、
-
35
p
k
k
kv
∂∂=
∂∂= )()(1 nn EE
h
を得る。ここで、ド・ブロイの関係式 kp h= を用いて、結晶運動量 p を定義した。 外部から電子に加えられる電場F(電子のエネルギーとの混乱を避けるため、E の代わりにF を用いた。)
と電子の単位時間あたり移動したベクトル量(速度 v )との内積、即ち電子が受けた単位時間当たりの仕事量
の分だけ、電子のエネルギーが変化するので、エネルギーの時間変化は次式(p.26)で与えられる。
kk
vFk
kvF
k∂
∂=→⋅∂
∂−=⋅−= )(1)()()( nnn EEeedt
dE
hh
速度ベクトルの微分は、上の式を利用して、微分の順序を交換し、
∑= ∂
∂∂∂−=
⋅∂
∂∂∂−=
⋅∂
∂−
∂∂=
∂∂=
∂∂
=
3
12
2
)(
)()(1)(1)(1
jj
j
n
nnnn
Fk
Ee
EeEe
dt
dEE
dt
d
dt
d
k
k
Fk
k
kF
k
k
k
k
kk
kv
h
hhhhh
である。成分で書くと、
∑∑== ∂∂
∂−=∂
∂∂∂−=
3
1
2
2
3
12
)(1)(
)(
jj
ji
n
jj
j
n
i
i Fkk
EeF
k
E
k
e
dt
dv kk
hh
質点の運動方程式との比較
Fv
Fv
)(1
)( emdt
de
dt
dm −=→−=
から、以下で定義される有効質量テンソル ijm~ を用いて、( zyxji ,,, = )
ji
n
ijjj
ijjj
ji
ni
kk
E
mF
meF
kk
Ee
dt
dv
∂∂∂=−=
∂∂∂−= ∑∑
==
)(1~1
,~1
)()(1
)(2
2
3
1
3