国内の現状について dosirisについて...
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株式会社 千代田テクノル大洗研究所
主席研究員大 口 裕 之
保物セミナー20172017年11月1日~2日
目次
国内の現状について
ORAMEDプロジェクトについて
DOSIRISについて
EURADOS第1回水晶体被ばく線量計の相互比較
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国内の現状眼の水晶体等価線量は、Hp(10)とHp(0.07)の何れか相応しい方を採用。
国*放射線審議会では、第135回総会において、新しい線量限度を取り入れを実現するための検討が必要。*眼の水晶体の放射線防護検討部会を設置。
眼の水晶体の放射線防護検討部会*現在、検討部会において、協議を行っている。
学会*日本保健物理学会:眼の水晶体の専門委員会発足し、現状調査を行なっている。
*日本放射線技術学会:専門委員会において調査開始。*各大学、病院関係者で独自調査。(線量計:ナノドット、ドジリス)
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国際原子力機関(IAEA)での動き国際原子力機関(IAEA)においては2011年5月に開催された第29回安全基準委員会(CSS会合)において、国際基本安全基準(BSS)の改訂が審議事項で眼の水晶体の線量限度の値の改訂について提案された。同年 11 月に発表された GSR Part 3: Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards の ICRPの新しい眼の水晶体の線量限度に関する記載が追加された。
2014年 1月にTECDOC1731として公刊された。
TECDOC には、・科学的知見に関する基本的事項、医療、産業、原子力分野における水晶体被ばく・水晶体の線量評価法等
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ISO(国際標準化機構)ISO15387:2015光子・電子における皮膚、末端部、水晶体の被ばく線量測定に関する個人線量モニタリング手順書である。
内容*3mm線量計の技術要件は、IEC62387を参照。*実際の運用における線量計の取り扱いとその方法について*3mm線量計は、眼の近傍に装着することが望ましい。*眼の近傍に装着できない場合の線量計に対する運用法と注意事項。*TECDOC1731に記載されているフローを掲載。光子、β、中性子に対して、均等被ばく、不均等被ばく状況
での運用。(防護エプロン等の装着、3mm線量計装着の必要性)
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ISO/IEC/JISISO4037シリーズ放射線測定器の性能試験に用いるX線照射場、校正方法、線量当量換算係数が規格されている。現在改訂作業中→来年発行される予定。*3mm線量当量換算係数に関しては、これまでのスラブファントムに新しく提案されているシリンダーファントムに対する換算係数が掲載される。
IEC(国際電気標準会議)IEC62387:2012積算線量計の3mm線量計は、この規格で性能要件が規定されている。
JIS(日本工業規格)IEC62387:2012を基本に、積算線量計のJISが、近日中に発行される。
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平成28年度業種別水晶体の等価線量の分布
(H28.4.1~H29.3.31)
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79.01
95.07
96.24
92.04
72.18
4.06
1.50
1.52
2.00
5.11
8.50
2.65
1.41
3.73
11.17
6.30
0.70
0.71
1.89
8.56
1.22
1.68
0.57
0.82
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
全体
獣医療
研究教育
工業
医療
X ~0.10 mSv 0.11~1.00 mSv 1.01~5.00 mSv
5.01~10.00 mSv 10.01~20.00 mSv 20.01~30.00 mSv 30.01~50.00 mSv
50.01~100.00 mSv 100.01~150.00 mSv 150.00 mSv~
(0.65mSv)
(0.09mSv)
(0.04mSv)
(0.03mSv)
(0.47mSv)
業態(年平均等価線量)
150mSv超0人
150mSv超0人
150mSv超0人
150mSv超0人
150mSv超0人
50mSv超150mSv以下124人
50mSv超150mSv以下2人
50mSv超150mSv以下2人
50mSv超150mSv以下0人
50mSv超150mSv以下128人
20mSv超50mSv以下950人
20mSv超50mSv以下4人
20mSv超50mSv以下4人
20mSv超50mSv以下0人
20mSv超50mSv以下958人
目次
国内の現状について
ORAMEDプロジェクトについて
DOSIRISについて
EURADOS第1回水晶体被ばく線量計の相互比較
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ORAMEDプロジェクトとは?EU-EURATOMの第7次研究・技術開発枠組計画(FP7)における
“Optimization of RAdiation protection of MEDical staff ”プロジェクト。
Interventional Radiology(IVR)、核医学検査に携わる医療従事者を対象とした詳細な線量評価手法の開発と線量低減が目的。・実効的なガイドラインの策定・線量計の開発・教育訓練方法の確立欧州9カ国12団体が参加期間:2008年1月~ 2011年2月
WP1: IVR/ICの四肢及び眼の水晶体の被ばく線量評価◎WP2: 実用的な眼の水晶体の被ばく線量評価法の開発
WP3: IVR/IC用アクティブ個人線量計の利用の最適化WP4: 核医学検査における四肢(手指)の線量評価WP5: 教育訓練と普及(IVR: Interventional Radiology, IC: Interventional Cardiology)
眼の水晶体被ばく
IVRに携わる医療従事者の被ばく線量が増加している。
X線
患者
術者
その一方で、医療従事者の被ばくデータ(四肢末端部と眼の水晶体)
とその分析が不十分である。
→ ORAMEDプロジェクトでは、眼の水晶体等価線量を適切にモニタリングするための議論や専用の線量計の開発に取り組んだ。
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[WP2] Hp(3)の定義
頭部に装着する個人線量計の校正ファントム選定のために考慮すべき事項
・線量計を装着する部位の後方散乱を適切に再現すること(校正の観点)・Hp(3)が眼の水晶体等価線量に対して安全側の良い近似であること(Hp(3)の定義の観点)・単純な形状であること(校正の一意性、入手のし易さ)
-スラブファントム
(30cmx30cmx15cm=13,500cm3)
-人間の頭部(約6,300cm3)
-円筒ファントム(直径20cmx高さ20cm→6,283cm3)
現行規格の推奨 ORAMEDの提案
[WP2]円筒ファントムにおけるHp(3)とHlensの比較
・Behrens et al.による詳細な眼の数学モデルの3次元図[1] 。赤い部分(増殖帯部位)を放射線感受性が高い部位としている。(眼の表面からの深さ2.71~3.70mm (平均3.36mm)、厚さ0~0.595mm (平均0.495mm))
[1] Behrens, R. et. al.,, Phys. Med. Biol. 54 4069 (2009), Behrens, R. and Dietze, Phys. Med. Biol. 56 415 (2011)※文献[1]による単位フルエンスあたりのHlensはICRP Publication 116 (2010)の付録Fにも記載されている。
放射線感受性が高い部位
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[WP2] 円筒ファントムにおけるHp(3)とHlensの比較
・詳細な眼の数学モデルをアダムファントム、イヴファントムの平均サイズのファントムの頭部に埋め込み、単一エネルギー光子照射に対して放射線感受性が高いとした部位の吸収線量から水晶体等価線量Hlensを計算。
詳細に再現した眼をADAM&EVAの平均ファントムに埋め込み
ADAM and EVE phantom
As used in ICRP 74 and ICRU 57
[WP2] 円筒ファントムにおけるHp(3)とHlensの比較
・30keV以上では、円筒ファントムにおけるHp(3)はHlensの良い近似となっている。
・スラブファントムにおけるHp(3)はHlensのと比べて広い領域で約20%大きい。
◇ スラブファントム(カーマ近似)[1]
□ 円筒ファントム (カーマ近似)
● 円筒ファントム (吸収線量計算)
スラブ
円筒
[1] Till, E., Zankl, M., GSF-National Research Centre for the Environment and Health; GSF-bericht
27/95.
Hp(3)/Hlens (α = 0°)
0.8
0.9
1.0
1.1
1.2
1.3
1.4
0.01 0.1 1
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[WP2] 円筒ファントムにおけるHp(3)とHlensの比較
・70keV以上では円筒ファントムにおけるHp(3)はHlensの良い近似となっている。
・スラブファントムは広い領域でHlensよりかなり小さい値となっている。
Hp(3)/Hlens (α = 90°)
◇ スラブファントム(カーマ近似)[1]
□ 円筒ファントム (カーマ近似)
● 円筒ファントム (吸収線量計算)
スラブ
円筒[1] Till, E., Zankl, M., GSF-National Research Centre for the Environment and Health; GSF-bericht
27/95.
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
0.01 0.1 1 1
0
[WP2]医療現場の放射線場
CONRAD Scattered beam spectra
(primary beam: (70kVp, Fitration: 4.5mmAl + 0.2mmCu))
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CONRAD Scattered beam spectraF
lue
nc
e/ A
.U.
0 0.10 0.120.06 0.080.02 0.04
Energy / MeV
IEC 61267ー RQR-4
ー RQR-7
ー RQR-9
Flu
en
ce
/ A
.U.
0 0.10 0.120.06 0.080.02 0.04
Energy / MeV
ISO 4037ー N-20
ー N-30
ー N-60
ー N-100
ー N-120Flu
en
ce
/ A
.U.
医療現場の放射線場により近いIEC 61267 RQRシリーズを用いて校正するのが良い→ これらの線質の換算係数も計算した
型式試験の試験基準、校正方法
線量計素子
カプセルホルダー
[WP2] 眼の水晶体に対する個人線量計開発
・Hp(3)への応答を最適化した個人線量計の開発
- 眼の周辺に快適に装着可能
- 測定部(カプセル内に線量計素子) + 装着部から成るモジュール形式
- 医療現場での使用を念頭に置くと、光子エネルギー20~100keVにおけるエネルギー特性,
広い範囲での角度特性の一様性が要求される
→ 設計可能なパラメータ(1) 線量計素子の種類、(2) カプセルの材質、(3) 線量計素子のサイズ、(4) カプセルのサイズ。
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EYE-D™ dosemeter
FINAL VERSION: COMMERCIALLY AVAILABLE
TLD線量計:MCP-N(LiF:Mg,Cu,P)を開発。サイズ:(直径4.5mm または3.2X3.2mm ,0.9mm厚さ)
Results of measurements compared to simulations
0.01 0.1 1
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
Calculated response:
ISO narrow N-series spectra
IEC RQR-4, RQR-7, RQR-9 spectra
Measured response:
IEC RQR-4, RQR-7, RQR-9 spectra
ISO N-30, N-80, N-120 spectra
Cs-137
Hp
(3)
rela
tive
re
sp
on
se
Photon energy [MeV]
*EYE-Dは、防護メガネ
を装着しない際に使用する線量計。
*防護メガネの中に装着できる線量計の開発が必要。
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相対応答
𝑅𝐸𝑝ℎ
𝐻p(3)
入射角度 / °
[WP2]最終試作品の特性
・角度特性
→ RQRシリーズで±20%に収まる。
(校正定数に補正することで±12%に収めることが可能)
1.05
0.81■ RQR-4 (実効エネルギー37 keV)
● RQR-7 (実効エネルギー48 keV)
▲ RQR-9 (実効エネルギー57 keV)
目次
国内の現状について
ORAMEDプロジェクトについて
DOSIRISについて
EURADOS第1回水晶体被ばく線量計の相互比較
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3mm線量計:DOSIRIS(ドジリス)
*IRSNで開発された防護メガネの内側に装着できる3mm線量計*検出器は、TLD
*ガラス線量計と異なり、この線量計で光子とβ線を測定することができる。*方向特性が他の線量計に比べて優れている。
フランス:IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)
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装着方法
<DOSIRIS各部名称>
検出部
ヘッドバンド
端部
【装着時の横から見た図】 【防護眼鏡(PT-99AL)使用時の例】
端部の位置を調整し検出部が目尻に合うようにしてください。
検出部が防護眼鏡の内側になるように装着してください。
ヘッドバンドで後頭部をはさむように装着してください。
ポリプロピレン製ケース肉厚は、3mm
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DOSIRISのエネルギー特性
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国内の現状について
ORAMEDプロジェクトについて
DOSIRISについて
EURADOS第1回水晶体被ばく線量計の相互比較
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EURADOS第1回水晶体被ばく線量計の相互比較
・2014年に欧州線量評価委員会(EURADOS)が医療現場で利用する眼の水晶体の線量計に関する第一回相互比較会を実施している[1]。
- 欧州15カ国、20の個人線量モニタリングサービスが参加。
- 使用された線量計はいずれもTLDを用いており、9サービスがEYE-DTMを使用。
○ 照射条件
・直径20cm、高さ20cmの円筒ファントムに線量計を装着。
・線質、入射角度を右表に示す。→ 換算係数はISO 4037-1で定義される線質はBehrens[2]、
IEC 61267で定義される線質はPrincipi et al.[3] 、Realistic field(CONRAD提案の散乱線場)に関してはORAMEDの手法で計算した換算係数を用いた。
[1] Clairand I. et. al., Rad. Pro. Dos. 170 21 (2016)
[2] Behrens, R., Rad. Pro. Dos. 151 450 (2012), [3] Principi, S. et. al., Rad. Pro. Dos. 170 45 (2016)
線質と入射角度実効エネルギー
keV
線量範囲
Hp(3)/mSv
S-Cs; 0° 667 0.4-0.5
S-Cs; 0° 667 2.0-2.2
S-Cs; 60° 667 2.0-2.1
N-40; 0° 33 3.0-3.1
N-60; 0° 48 3.0-3.1
N-80; 0° 65 3.0-3.1
RQR6; 0° 44 2.6-2.7
RQR6; 45° 44 2.5-2.6
RQR6; 75° 44 2.1-2.2
Realistic field 45 0.9-1.0
相互比較会で使用された個人線量計
EYE-DTM
SCK- CEN ベルギー
SURO チェコ
GAEC ギリシア
U.O.Fisica e
Tecnologie Biomediche
イタリア
Lithuanian
Radiation Protection
Center
ルーマニア
IFJ ポーランド
NIOM ポーランド
SMU スロバキア
RPI ウクライナ
8カ国、9サービスが使用
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相互比較会で使用された個人線量計
相互比較会の結果
HC / mSv
応答
R=
HS/H
C S-Cs;0°
Realistic
field
RQR6;75°
S-Cs;60°
S-Cs;0°
RQR6;45°
RQR6;0°
N Series;0°・93%がトランペットカーブに収まった。
・S-Cs、N-80は100%がトランペットカーブに収まった。
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現状まとめ現在、放射線審議会の眼の水晶体の放射線防護検討部会において、水晶体線量に関する協議を行っている。
各学会においては、眼の水晶体に関して、調査がおこなわれている。
IAEAでは、技術的要件を TECDOC1731 に取りまとめて、2014年 1月に公刊した。
ISOでは、ISO15382に3mm線量に関する手順書をまとめ、ISO4037で、3mm線量当量換算係数が掲載される方向で、現在協議している。
JISでは、IEC62387:2012の内容を基に近日中に発行される。
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水晶体被ばく関連のORAMEDプロジェクトまとめ
WP2:実用的な眼の水晶体の被ばく線量評価法の開発・円筒ファントムにおけるHp(3)の定義が提案され、水晶体等価線量の安全側でよい近似であることが示された。
→ 円筒ファントムに関しては、ICRP、ISOでも導入が進められている。
・円筒ファントムにおける換算係数Hp(3)/Kairを計算した。
・水晶体被ばく線量測定に最適化したHp(3)個人線量計を開発した。
→ 開発した線量計EYE-DTMは欧州の多くの線量管理サービスに使用されている。
・型式試験の試験基準、校正方法を提案した。
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ご清聴ありがとうございました。
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