特別企画 目次 - nurse.or.jp ·...

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― 20 ― 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 特別企画 目次 記念講演 7月18日(木)10:10~10:55 ··························· 43 第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール 第 50 回記念講演 日本看護学会学術集会のこれまでとこれから 講 師:福井 トシ子 公益社団法人日本看護協会会長 座 長:上田 順子 公益社団法人北海道看護協会会長 基調講演 7月18日(木)11:00~12:00 ··························· 45 第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール 社会の変化をとらえ、未来へつなぐ急性期看護 講 師:明石 惠子 名古屋市立大学大学院看護学研究科・看護学部教授 座 長:及川 吏智子 公益社団法人岩手県看護協会会長 特別講演1 7月19日(金)9:30~10:30 ···························· 46 第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール 東日本大震災を経験し 「災害時地域医療支援教育センター」から次世代への提言 講 師:眞瀬 智彦 岩手医科大学医学部救急・災害・総合医学講座災害医学分野教授、 災害時地域医療支援教育センター長 座 長 安保 弘子 岩手医科大学附属病院副看護部長、岩手県看護協会副会長 特別講演2 7月19日(金)13:10~14:10 ··························· 47 第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール 「医療事故の再発防止に向けた提言」から学ぶ 講 師:畑 涼子 日本医療安全調査機構医療事故調査・支援事業部参事 座 長:川本 利恵子 公益社団法人日本看護協会常任理事

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Page 1: 特別企画 目次 - nurse.or.jp · -高齢患者に対し内服管理アセスメントシートの導入を図って- ············ 80 山崎 裕美 広島県 広島県立障害者リハビリテーションセンター

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

特別企画 目次

記念講演 7月18日(木)10:10~10:55 ··························· 43

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

第 50 回記念講演 日本看護学会学術集会のこれまでとこれから

講 師:福井 トシ子 公益社団法人日本看護協会会長

座 長:上田 順子 公益社団法人北海道看護協会会長

基調講演 7月18日(木)11:00~12:00 ··························· 45

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

社会の変化をとらえ、未来へつなぐ急性期看護

講 師:明石 惠子 名古屋市立大学大学院看護学研究科・看護学部教授

座 長:及川 吏智子 公益社団法人岩手県看護協会会長

特別講演1 7月19日(金)9:30~10:30 ···························· 46

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

東日本大震災を経験し

「災害時地域医療支援教育センター」から次世代への提言

講 師:眞瀬 智彦 岩手医科大学医学部救急・災害・総合医学講座災害医学分野教授、

災害時地域医療支援教育センター長

座 長 安保 弘子 岩手医科大学附属病院副看護部長、岩手県看護協会副会長

特別講演2 7月19日(金)13:10~14:10 ··························· 47

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

「医療事故の再発防止に向けた提言」から学ぶ

講 師:畑 涼子 日本医療安全調査機構医療事故調査・支援事業部参事

座 長:川本 利恵子 公益社団法人日本看護協会常任理事

Page 2: 特別企画 目次 - nurse.or.jp · -高齢患者に対し内服管理アセスメントシートの導入を図って- ············ 80 山崎 裕美 広島県 広島県立障害者リハビリテーションセンター

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

シンポジウム1 7月18日(木)14:45~16:00 ··························· 48

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

急性期における意思決定支援

講 師:高橋 浩 岩手県立二戸病院内科長・副院長

冨岡 小百合 大阪府立中河内救命救急センター看護部主査、

急性・重症患者看護専門看護師、救急看護認定看護師

奥山 広也 山形県立中央病院集中治療部 ICU 主任看護師、集中ケア認定看護師

座 長:清水 哲郎 岩手保健医療大学学長

シンポジウム2 7月19日(金)10:35~11:50 ··························· 52

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

急性期からの退院支援

~暮らしを支える看看連携~

講 師:野村 陽子 岩手医科大学看護学部地域包括ケア講座教授

久保田 桜 岩手医科大学附属病院副看護部長

山崎 和子 岩手県立宮古病院主任看護師

座 長:野村 陽子 岩手医科大学看護学部地域包括ケア講座教授

特別レポート 7月19日(金)10:35~11:35 ··························· 55

第 2 会場 盛岡市民文化ホール 小ホール

クリティカルケア領域で期待される特定行為研修を活用した実践

講 師:田邉 愛 湘南藤沢徳洲会病院診療看護部 NP 教育課程修了者

道又 元裕 国際医療福祉大学・成田病院準備事務局

座 長:荒木 暁子 公益社団法人日本看護協会常任理事

交流集会(指定)1 7月19日(金)14:15~15:15 ··························· 58

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

急性期における高齢者の看護

~どうしていますか?せん妄への対応~

講 師:松村 千秋 岩手県立中央病院看護師長、集中ケア認定看護師

桑田 美代子 青梅慶友病院看護介護開発室長、老人看護専門看護師

座 長:秋山 智弥 岩手医科大学看護学部特任教授、公益社団法人日本看護協会副会長

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

交流集会(指定)2 7月19日(金)14:15~15:15 ··························· 61

第 2 会場 盛岡市民文化ホール 小ホール

急性期の新生児看護

~命を支える、つなぐ~

講 師:大江 徳子 岩手医科大学附属病院総合周産期母子医療センターNICU 主任看護師、

新生児集中ケア認定看護師

田中 陽子 盛岡赤十字病院看護係長、アドバンス助産師

座 長:福島 裕子 岩手県立大学看護学部母性看護学講座母性看護学・助産学分野教授

交流集会1 7月18日(木)14:35~15:35 ··························· 64

第 2 会場 盛岡市民文化ホール 小ホール

看護実践の質の可視化を目指して

企画代表者:佐々木 謙一 岩手県立中央病院

交流集会2 7月18日(木)15:40~16:40 ··························· 65

第 2 会場 盛岡市民文化ホール 小ホール

看護師の役割拡大に関するリアルタイム意識調査

~周術期における Care と Cure の融合~

企画代表者:赤沼 裕子 聖路加国際病院

交流集会3 7月19日(金)10:40~11:40 ··························· 66

第 7 会場 アイーナ 8F 研修室 812

クリティカルケアにおいて身体拘束をしない看護を考える

企画代表者:田村 ヤス子 岩手医科大学附属病院

交流集会4 7月19日(金)13:10~14:10 ··························· 67

第 2 会場 盛岡市民文化ホール 小ホール

クリティカル領域だからこそ知っておきたいデスカンファレンス

企画代表者:横田 眞理子 岩手医科大学看護学部

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

地域・伝統文化教育関連企画 7月18日(木)13:30~14:30 ··························· 68

第 1 会場 盛岡市民文化ホール 大ホール

宮沢賢治の世界観

講 師:宮澤 和樹

宮澤 やよい(ピアノ・朗読)

宮澤 香帆 (バイオリン)

座 長:奥寺 三枝子 岩手県看護協会副会長

ランチョンセミナー1 7月18日(木)12:20~13:20 ··························· 69

第 5 会場 アイーナ 8F 会議室 803

急性期病院だからこそ実践を通じて実感できるやりがい

講 師:森田 徹 ユニ・チャームメンリッケ株式会社代表取締役社長

小野寺 喜代 岩手県立中央病院、皮膚・排泄ケア認定看護師

座 長:荻原 正光 ユニ・チャームメンリッケ株式会社

共催企業:ユニ・チャームメンリッケ株式会社

ランチョンセミナー2 7月18日(木)12:20~13:20 ··························· 70

第 6 会場 アイーナ 8F 会議室 804

健康で安全な職場環境を目指して

~がん薬物療法における職業性曝露対策~

講 師:垣添 忠生 国立がんセンター名誉総長、公益財団法人日本対がん協会会長、

NPO 法人抗がん剤曝露対策協議会理事長

平井 和恵 東京医科大学医学部看護学科教授、NPO 法人抗がん剤曝露対策協議会理事

座 長:佐藤 悦子 岩手医科大学附属病院看護部長

共催企業:テルモ株式会社

ランチョンセミナー3 7月18日(木)12:20~13:20 ··························· 71

第 7 会場 アイーナ 8F 研修室 812

急性期病棟における排泄ケアの標準化と自立に向けた取組み

演 者:山元ひろみ ユニ・チャーム株式会社排泄ケア研究所研究員

座 長:伊藤 潔 ユニ・チャーム株式会社東北支社長

共催企業:ユニ・チャーム株式会社

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

ランチョンセミナー4 7月19日(金)12:00~13:00 ··························· 72

第 5 会場 アイーナ 8F 会議室 803

Rapid Response System

~急変を防ぐ医療安全の新たなとりくみ~

講 師:森安 恵実 北里大学病院集中治療センターRST/RRT 室 集中ケア認定看護師

座 長:松村 千秋 岩手県立中央病院 看護師長 集中ケア認定看護師

共催企業:日本光電工業株式会社

ランチョンセミナー5 7月19日(金)12:00~13:00 ··························· 73

第 6 会場 アイーナ 8F 会議室 804

重症患者の皮膚を護るスキンケア

〜医療関連機器圧迫創傷とスキン-テアの予防に向けて~

講 師:志村 知子 日本医科大学付属病院高度救命救急センター主任看護師

座 長:真田 弘美 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻

老年看護学創傷看護学分野教授

共催企業:ニプロ株式会社

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

一般演題 第1日 第1群�口演� 7 � 18 日�木� 13�30�14�30 第 4 ����田島組���る�

せん妄ケア��知症ケア� ����藤 �一��岩手県立中央病院�

口演 1-1 急性期病院におけるせん妄予防対策フローシートの妥当性 ·················· 77

角田 恵子 大阪府 独立行政法人労働者健康安全機構大阪労災病院

口演 1-2 心臓血管外科領域におけるせん妄発症要因の実態調査とリスク因子の検討 ···· 77

田中 忍 岩手県 岩手医科大学附属病院

口演 1-3 A 急性期病院における高齢入院患者の睡眠を妨げる因子 ····················· 78

下田 零 京都府 三菱京都病院

口演 1-4 挿管患者のせん妄発症率の低下を目指した取り組み -客観的鎮痛スケールを導入して- ······································ 78

堀内 駿 埼玉県 上尾中央総合病院

口演 1-5 ICU 入室患者のせん妄管理における睡眠に関する ICU 看護師の主観的な判断 ··· 79

鈴木 優子 神奈川県 横浜市立大学附属病院

第�群�口演� 7 � 18 日�木� 14�35�15�25 第 4 ����田島組���る�

医�安全���管理� ����田 �子�岩手�健医�大学�

口演 2-1 造影剤を使用した断層撮影の副作用発現とリスクファクターの関連性 -造影剤副作用発現の報告書に基づいた調査- ···························· 79

川島 真希 栃木県 獨協医科大学病院

口演 2-2 術前患者に対する外来でのアレルギー情報収集の取り組み ·················· 80

髙畑 まゆみ 愛知県 日進おりど病院

口演 2-3 内服管理方法の判断基準の統一による効果 -高齢患者に対し内服管理アセスメントシートの導入を図って- ············ 80

山崎 裕美 広島県 広島県立障害者リハビリテーションセンター

口演 2-4 眼科病棟で発生した衝突における患者の特徴 -衝突と転倒転落の比較- ·············································· 81

青柳 香奈枝 岩手県 岩手医科大学附属病院

第�群�口演� 7 � 18 日�木� 15�30�1��20 第 4 ����田島組���る�

医�安全���管理� ����� �子�岩手県立��病院�

口演 3-1 急性期病棟における複数回転倒する患者の特徴 -アセスメントスコアシートから- ······································ 81

藤岡 哉江 広島県 JR 広島病院

口演 3-2 急性期病棟における転倒転落予防の取り組み -高齢者排尿管理アルゴリズムを使用して- ······························ 82

古澤 悟 群馬県 桐生厚生総合病院

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演 3-3 クロストリジウムディフィシル感染症の アウトブレイク終息に向けた取り組み ···································· 82

森 藍 千葉県 社会医療法人社団さつき会袖ケ浦さつき台病院

口演 3-4 N95 マスク装着の現状と今後の課題 ······································· 83

長谷 祐里 兵庫県 神戸大学医学部附属病院

���(口演) 7 � 18 日(木) 13�3��14�3� � 5 会�(会�室 8�3)

救急看護� �長��上 和子(中�川病院)

口演 4-1 救急外来看護師の看護ケアに対する意識向上を目指した 入院後病室訪問の効果 ·················································· 83

今橋 睦美 山口県 山口県済生会下関総合病院

口演 4-2 救急室看護師の褥瘡予防対策に関する意識調査 ···························· 84

長野 友紀 栃木県 とちぎメディカルセンターしもつが

口演 4-3 電話トリアージ時における看護師のストレス調査 -緊急度判定プロトコルを使用して- ···································· 84

秋山 正和 富山県 厚生連高岡病院

口演 4-4 救急外来到着時の院内トリアージにおける qSOFA と入院率の関連性の検証 ···· 85

桒久保 洋子 岩手県 岩手県立中央病院

口演 4-5 救急外来においてリーダー制を導入した効果 -STEMI 患者の Door-to-Door 時間からの検証- ···························· 85

菊谷 亜矢子 奈良県 奈良県立医科大学附属病院

���(口演) 7 � 18 日(木) 14�35�15�25 � 5 会�(会�室 8�3)

退院支援・外来看護� �長�目時 のり(�岡赤��病院)

口演 5-1 緊急入院となった患者・家族の退院に対する(不安と)思い ················ 86

築城 円 福岡県 飯塚市立病院

口演 5-2 緊急入院した高齢患者の退院支援に影響を与えた要因 ······················ 86

辻 文香 島根県 島根県立中央病院

口演 5-3 急性期内科病棟における退院支援アセスメントシート導入による効果の検証 -日本語版 POMS を用いた感情の測定- ··································· 87

赤池 茉衣 埼玉県 医療法人新青会川口工業総合病院

口演 5-4 人工股関節全置換術後、脱臼した患者の看護を振り返る -オレムのセルフケア不足理論を用いて- ································ 87

浦田 征枝 青森県 八戸平和病院

���(口演) 7 � 18 日(木) 13�3��14�3� � 6 会�(会�室 8�4)

�術期看護� �長��� 美香(�岡赤��病院)

口演 6-1 開頭手術を受ける患者の体験から学ぶ看護支援 ···························· 88

栗田 茂子 静岡県 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

優秀推薦

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演 6-2 術前看護外来による不安軽減の効果 -新版 STAI を用いた性別での評価- ····································· 88

宗和 守 大阪府 大阪府済生会富田林病院

口演 6-3 周術期管理チームの介入による術前不安の変化 ···························· 89

近藤 寛 神奈川県 社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院

口演 6-4 消化器外科における術前臍処置の現状に関する調査 ························ 89

久保 健太郎 大阪府 大阪市立総合医療センター

口演 6-5 経皮的心筋焼灼を受ける患者の不安内容とその関連要因 ···················· 90

齋藤 綾 東京都 東京都立広尾病院

第��(口演� 7 � 18 �(�� 14�35�15�25 第 6 会�(会�室 804�

�リティカルケア� ����藤 奈美�(��医科大学�

口演 7-1 ICU における末梢静脈カテーテルの静脈炎発生率の調査と、留置期間の検討 ··· 90

橋本 尭之 兵庫県 神戸大学医学部附属病院

口演 7-2 人工呼吸管理中の患者の声にならないニーズを捉えた看護 -せん妄状態から離脱できた一事例のケアリング理論を用いての検討- ······ 91

大西 美千代 石川県 金沢大学附属病院

口演 7-3 ICU・CCU へ再入室となった患者要因の分析 ································ 91

西山 久美江 東京都 東海大学医学部付属八王子病院

口演 7-4 若年補助人工心臓(VAD)装着患者のセルフケア獲得に対する看護実践 ········ 92

栗林 光莉 秋田県 秋田大学医学部附属病院

第��(口演� 7 � 18 �(�� 15�30�16�20 第 6 会�(会�室 804�

患者��� ����藤 久美子(総合��病院�

口演 8-1 外来通院中の虚血性心疾患患者における認知的要因とセルフケア能力の検討 -心臓リハビリテーション参加の有無による比較- 第 1報 ················ 92

富田 絢香 静岡県 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

口演 8-2 外来通院中の虚血性心疾患患者における認知的要因とセルフケア能力の検討 -心臓リハビリテーションの参加・不参加別にみた 患者の自己効力感の影響要因- 第 2報 ·································· 93

増田 誠一郎 静岡県 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

口演 8-3 在宅における術前呼吸練習の実態から見えた課題 -新たにティッシュペーパー呼吸練習を導入して- ························ 93

飯島 彩夏 茨城県 水戸赤十字病院

口演 8-4 術後疼痛管理に PCEA 装置の自己選択法を導入した患者の感情 ··············· 94

中村 瑛保 北海道 自衛隊札幌病院

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

����口演� 7 � 18 ��木� 13�30�14�30 � 7 会����室 812�

倫理� �長��田 �美�岩手県立大学�

口演 9-1 集中治療室で身体拘束を行わない看護を目指すための取り組み ·············· 94

高松 香澄 静岡県 静岡市立静岡病院

口演 9-2 長期臥床、長期入院を強いられた壮年期患者の事例から 自己効力感の回復につなげる援助を考える ································ 95

堺 亜香 兵庫県 神戸大学医学部附属病院

口演 9-3 A 病院救急 ICU 看護師が感じる倫理的ジレンマ ····························· 95

東 弘子 神奈川県 藤沢市民病院

口演 9-4 クリティカル期における家族の代理意思決定を支える看護の振り返り -代理意思決定に悩む家族との関わりを通して- ·························· 96

三輪 哲也 富山県 厚生連高岡病院

口演 9-5 めざせ!身体抑制ゼロ! -客観的指標に現れない判断要因を探る- ································ 96

上地 美奈子 大阪府 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田病院

� 10 ��口演� 7 � 18 ��木� 14�35�15�45 � 7 会����室 812�

看護師�� �長���� �子���赤十字�田看護大学�

口演 10-1 急変対応時における看護師の不安 -一般病棟勤務の看護師と特殊科勤務の看護師の比較- ···················· 97

鈴木 優衣 埼玉県 川口市立医療センター

口演 10-2 発熱患者のトリアージにおける SIRS と quickSOFA の比較 -オーバートリアージ減少への取り組み- ································ 97

中村 百子 石川県 白山石川医療企業団 公立松任石川中央病院

口演 10-3 急性期病棟における患者・看護師間の「ちょっと」の認識の違い ············ 98

大石 茉鈴 広島県 医療法人社団おると会浜脇整形外科病院

口演 10-4 新人看護師に急変対応シミュレーションを実施した効果 -デブリーフィングに焦点をあてて- ···································· 98

伊藤 加依子 大阪府 大阪赤十字病院

口演 10-5 A病院 ICU に勤務する看護師の職業性ストレスと ストレスコーピングについての実態調査 ·································· 99

宮平 麻衣子 宮城県 仙台市立病院

口演 10-6 白内障手術におけるシミュレーション方法の再検討 -臨床実践後の思いを調査して- ········································ 99

天野 愛 岡山県 岡山済生会総合病院

� 11 ��示説� 7 � 18 ��木� 13�30�14�30 � 3 会���示室�

示説 11-1 先天性心疾患術後の High-flow nasal cannula で呼吸管理を実施した 新生児・乳児の困難要因の検討 ········································· 100

阿部 理 岩手県 岩手医科大学附属病院

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説 11-2 手術目的で入院している乳幼児に付き添う母親のストレスと コーピングの実態調査 ················································· 100

三品 宏喜 京都府 京都府立医科大学附属病院

示説 11-3 入院した患児に付き添う母親の日常生活体験 ····························· 101

荒井 由紀 山梨県 富士吉田市立病院

示説 11-4 NICU/GCU 退院児の在宅移行期における育児支援に関する看護師の意識調査 ··· 101

松井 智子 長崎県 佐世保市総合医療センター

示説 11-5 トリクロリールⓇシロップの服用方法に関する工夫の効果 ·················· 102

小出水 和恵 埼玉県 草加市立病院

示説 11-6 思春期に小児 ICU へ入室した子どもの体験と思い ························· 102

梅津 友里 宮城県 宮城県立こども病院

示説 11-7 NICU 入院児への療育支援における課題 -未熟児出生連絡票の活用と地域保健師との連携- ······················· 103

阿左美 まゆ美 群馬県 桐生厚生総合病院

� 12 群�示説� 7 � 1� 日�木� 13�30�14�30 � 3 会���示室�

示説 12-1 胸骨正中切開による開胸術後患者の痛みへの介入 -疼痛管理による早期離床- ··········································· 103

四家 直美 福島県 いわき市医療センター

示説 12-2 急性期病棟、回復期病棟における転倒・転落の現状の把握 -転倒・転落の要因からの予防・改善策を見出し転倒・ 転落の減少を目指して- ············································· 104

岡崎 恭恵 福岡県 社会医療法人陽明会小波瀬病院

示説 12-3 転倒転落に対する看護師の意識と課題 -外科病棟看護師のアンケート調査から- ······························· 104

松村 友理 富山県 富山市立富山市民病院

示説 12-4 ICU 医師・看護師カンファレンス開始後の評価 -医師・看護師の認識調査からの一考察- ······························· 105

吉田 友和 北海道 医療法人王子総合病院

示説 12-5 脳神経センターにおける医師と看護師の情報共有のための役割期待 ········· 105

長尾 美沙子 福岡県 福岡大学病院

示説 12-6 手術に関わる医師・看護師のアイガード着用率向上へ向けての取り組み ····· 106

岩下 哲也 福岡県 田川市立病院

示説 12-7 急性期病棟看護師の手指衛生に対する意識向上に向けた取り組み ··········· 106

末木 佑委 山梨県 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院

� 13 群�示説� 7 � 1� 日�木� 14�35�15�35 � 3 会���示室�

示説 13-1 整形外科術後患者に対する段階的離床プログラムの効果 -初回離床時の起立性低血圧症状減少に向けた取り組み- ················· 107

青木 里沙子 静岡県 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

優秀推薦

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説 13-2 局所麻酔で白内障手術を受けた高齢患者の手術中の思い ··················· 107

川村 麻美 東京都 順天堂東京江東高齢者医療センター

示説 13-3 開心術クリニカルパスのバリアンス分析と今後の課題 ····················· 108

光成 夏海 長崎県 社会医療法人財団白十字会佐世保中央病院

示説 13-4 胸腔鏡下手術を受けた患者の離床に対する思いの分析 ····················· 108

田村 悟志 埼玉県 春日部市立医療センター

示説 13-5 心臓血管外科手術を受ける患者の思い -術前から退院までを通して- ········································· 109

矢島 加奈子 埼玉県 埼玉石心会病院

示説 13-6 タブレット型端末を使用した術前オリエンテーション導入の効果 ··········· 109

小野寺 大地 山梨県 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院

第 14 �(示説) 7 月 18 日(�) 14:35�15:35 第 3 会�(�示室)

示説 14-1 MICS(Minimally invasive cardiac surgery:低侵襲心臓外科手術)の 術後経過を明らかにすることを目的とした事例研究 ······················· 110

近藤 海帆 徳島県 徳島赤十字病院

示説 14-2 入院支援センターで指導を受けた消化器および泌尿器疾患患者の 手術前禁煙時の思い、行動 ············································· 110

福田 奈津子 奈良県 公益財団法人天理よろづ相談所病院

示説 14-3 術前オリエンテーションで表出されなかった患者が抱える不安 -手術室看護師によるインタビューでわかったこと- ····················· 111

藤倉 美和 埼玉県 春日部市立医療センター

示説 14-4 変形性膝関節症による人工膝関節全置換術後の病棟リハビリ導入による効果 -膝関節の可動域拡大に向けて- ······································· 111

樋山 恵美 東京都 公立福生病院

示説 14-5 婦人科疾患開腹手術を受けた患者の術後創について -術後 1ヵ月・3ヵ月後に調査してわかったこと- ························ 112

下田 瞳 岩手県 盛岡赤十字病院

第 15 �(示説) 7 月 18 日(�) 15:40�16:40 第 3 会�(�示室)

示説 15-1 急性期病院で身体拘束に頼らない看護の実現をめざして -病棟看護師の身体拘束に関する悩みや困難感に焦点を当てて- ··········· 112

長島 幸子 宮城県 石巻赤十字病院

示説 15-2 急性期病棟における予後予測スコア導入前後の看護師の認識の変化 ········· 113

依田 朋加 山梨県 山梨県立中央病院

示説 15-3 A 病院 ICU の終末期ケアにおける看護師の困難感 ·························· 113

大塚 瑠依 長野県 長野赤十字病院

示説 15-4 身体抑制に関する倫理カンファレンスの定着 -A 病院における身体抑制の削減に向けた取り組み- 第 1報 ·············· 114

布谷 喜代美 福井県 福井赤十字病院

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説 15-5 身体抑制に関する倫理カンファレンス導入前後の看護職の意識変化 ········· 114

西川 順子 福井県 福井赤十字病院

示説 15-6 重症系ユニットにおける身体抑制時間短縮に向けた フローチャート作成の効果 ············································· 115

矢吹 小百合 東京都 東京都立多摩総合医療センター

� 16 ��示説� 7 � 18 ���� 15�4��16�4� � 3 会���示室�

示説 16-1 ICU 入室患者の記憶のゆがみへの ICU ダイアリーを活用した看護支援 ········ 115

矢部 友香 鳥取県 鳥取市立病院

示説 16-2 脳血管内治療を受ける治療前の患者の思い ······························· 116

谷口 志保 富山県 富山赤十字病院

示説 16-3 看護師の患者観察項目の現状と院内急変率の相関を知る ··················· 116

前田 理恵 長崎県 医療法人伴帥会愛野記念病院

示説 16-4 A 病院での人工呼吸器装着患者とのコミュニケーションにおける 困難さと実際 ························································· 117

小池 亜実 山梨県 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院

示説 16-5 手の外傷患者への関わりに対する看護師の思い -フォーカス・グループ・インタビューからの分析- ····················· 117

森 みどり 長野県 長野赤十字病院

示説 16-6 rt-PA 静注療法を迅速に行うための医療従事者の取り組みの現状と 課題に関する文献検討 -看護師と多職種連携の役割- ········································· 118

竹田 瑠美 広島県 市立三次中央病院

示説 16-7 急変時初期対応の研修効果 ············································· 118

齊藤 有美 香川県 香川県済生会病院

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特別企画

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

第1日

記念講演 日本看護学会学術集会のこれまでとこれから

日本看護学会学術集会のこれまでとこれから

福井 トシ子 公益社団法人日本看護協会 会長

日本看護協会は、2017 年に創立 70 周年を迎え、現在では、保健師・助産師・看護師・

准看護師あわせて約 74 万人の会員を有する職能団体となりました。 70 年の歴史の中で、日本の社会保障制度は大きく変化し、「治す医療」から「治し支える

医療」への転換が図られています。そして、今、地域包括ケアシステムの構築が進められ

る中、医療と生活の両方の視点を持つ看護職への期待はさらに高まっています。超高齢多

死社会の中、看取りへの対応も含め、人々の尊厳を守るために、看護職が役割を発揮し、

対応していくことが求められています。また、このような社会の期待に応えることができ

るように、必要な能力を高めていくことも必要です。 日本看護学会は、1967(昭和 42)年の発足以来、実践にねざした看護研究の推進と看護

実践の質の向上を目的に、将来を見据えた看護職に求められる能力や、役割拡大などに関

連する情報を発信するとともに、職能、専門、看護実践の場の枠をこえた看護職との相互

交流の重要な場として学術集会を開催しています。 日本看護学会は、非会員を含む看護職の実践にねざした学術研究の振興を通して、看護

の質の向上を図り、人々の健康と福祉に貢献することを目的(公益社団法人日本看護協会

日本看護学会規程第 2 条)とし、2011 年に本会が公益法人へ移行し日本看護学会は公益目

的事業となり、2013 年からは、都道府県看護協会と協定書に基づく共同開催に変更、2014年からはライフサイクルを軸にした 10 領域から、病態、経過、実践の場の特徴等を捉えた

7 領域に変更するなど、時代に合わせて変革を遂げてきました。 我が国における医療・ケアと生活が一体化した地域完結型の新たな体制への転換期にお

ける本学会のあり方について、看護の将来ビジョンを踏まえ 2017 年度より検討を開始しま

した。2018 年度日本看護学会参加者アンケートによると、本学会は発表経験の少ない看護

職が全体の 7 割強を占めていることから、研究者および発表者に向けた支援強化が必要で

あることや、地域包括ケア推進時代における領域ごとの開催の適切性などが課題として抽

出されました。 また、本学会の目的を達成するためには、研究倫理を遵守しつつ、研究手法に基づく看

護実践の問題解決を図る研究を推進すること、看護の質向上に資する医療及び看護政策に

関する情報共有の場となること、社会のニーズに積極的に応えていくために地域包括ケア

システムの推進に資する情報共有および連携の場とすることを目指す場であることを確認

しました。 約 2 年間の検討により、2021 年度から日本看護学会は、3 職能が連携し、地域包括ケア

を推進するための課題や解決策を共有し実現するために、本会主催で領域を一元化し、年 2回開催とすることを、2019 年 5 月の本会理事会にて決定しました。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

第1日

2019 年度に、日本看護学会は第 50 回を迎え、記念すべき年となります。 地域で看護職が役割を果たし活躍できるために、本学会は、看護実践の問題解決を図る

研究の推進と地域包括ケアシステムの推進に資する情報共有および連携の場へと転換を図

ってまいります。 さて、世界に目を向けてみると、2020 年はナイチンゲール生誕 200 年を迎えます。英国

の議員連盟がスタートさせた Nursing Now は、2020 年に向けて、看護職がもつ可能性を

最大限に発揮し、看護職が健康課題に積極的に取組み、人々の健康の向上に貢献するため

に行動する世界的なキャンペーンで、WHO(世界保健機関)と ICN(国際看護師協会)が

賛同して、いま世界的に広がっています。 保健医療制度や人々のニーズが大きく変化する中、看護職がこの変化に対応し、一層活

躍するには、看護職が適切に評価され、保健医療政策に影響を及ぼすことが重要であり、

そのための様々な条件や環境を整える必要があります。 そこで、私たち公益社団法人日本看護協会と日本看護連盟は、このたび、この趣旨に賛

同して 2020 年までの 2 年間、Nursing Now キャンペーンに取組むことになりました。 看護職がもつ可能性を最大限に活用し、社会が求める役割を果たし、人々の健康な暮ら

しに貢献できるよう、一人でも多くの看護職、そして国民の皆様の本キャンペーンへのご

賛同、ご協力とご支援をお願いいたします。詳細は下記 URL をご参照ください。 https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/nursing_now/index.html

日本看護学会が保健医療政策に影響を及ぼす一助となり、看護職がさらに社会的な役割

を果たすことができるような場となることを視野に入れ、日本看護学会学術集会のこれま

でとこれからについて述べます。

プロフィール

公益社団法人日本看護協会 会長 1983 年より東京女子医科大学病院母子総合医療センター、糖尿病センター勤務。

1991 年杏林大学医学部付属病院入職、2003 年から看護部長。この間、経営情報学

修士、保健医療学博士を取得。2010 年から日本看護協会常任理事。2017 年 6 月よ

り現職。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

第1日

調

基調講演 社会の変化をとらえ、未来へつなぐ急性期看護

社会の変化をとらえ、未来へつなぐ急性期看護

講師 明石 惠子 名古屋市立大学大学院看護学研究科・看護学部 教授

社会の変化をとらえるキーワードとして、少子高齢化、グローバル化、情報通信技術

(Information and Communication Technology:ICT)、人工知能(Artificial Intelligence:AI)、働き方改革などが浮かびます。 そのような変化のなかで、未来へつなぐ急性期看護とは、どのような看護なのでしょう

か? 未来へつなぐために、急性期看護に何が期待されているのでしょうか? 「いのち」「ひと」「とき」の三つの視点で「未来へつなぐ急性期看護」を考えてみまし

た。 「いのち」をつなぐ― ―言うまでもなく急性期看護は、生命の危機状態にある重症患者

の「いのち」を未来につなぎます。さまざまな医療機器や薬剤によって患者の生命が維持

されている状況では、病態や治療の理解に基づく全身管理とともに、その人の尊厳を護り、

日常性の回復を目指す看護が重要であると考えます。これは、進化した AI でも代替できま

せん。 「ひと」をつなぐ― ―超高齢社会・多死社会到来のなかで要求される急性期医療と地域

医療の連携は、未来医療の一側面です。救急外来や集中治療室、急性期病棟における看護

だけでなく、その後の療養生活や社会復帰を見据えた看護を展開する必要があり、多職種

の協働や連携が不可欠です。そのなかで看護師に期待される高い調整力は、「ひと」をつな

ぐことだと考えます。 「とき」をつなぐ― ―急性期看護の発展には、質の高い教育と研究が必要です。これら

は過去と現在を見つめ、未来を創造するというプロセスであり、「とき」を越えて看護の本

質に迫ることを可能にすると考えます。しかし、急性期看護の現場では修得すべき知識や

技術が膨大であり、教育に時間を要します。生命の危機状態にある人を対象とする研究で

は最大限の倫理的配慮を含む綿密な計画が必要です。何をどのように教育するのか、研究

で何を明らかにすべきなのか、働き方改革が叫ばれているなかで教育や研究の時間をどう

捻出するのか、未来へつなぐ急性期看護の課題だと思います。

プロフィール

1981 年~ 三重大学医学部附属病院 看護師 1991 年~ 三重大学医療技術短期大学部看護学科 講師 1995 年~ 三重大学医療技術短期大学部看護学科 助教授 1997 年~ 三重大学医学部看護学科 助教授 2005 年~ 名古屋市立大学看護学部看護学科 教授

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

シンポジウム1

シンポジウム1 急性期における意思決定支援

急性期における意思決定支援

座長 清水 哲郎 岩手保健医療大学 学長

現在、本人・家族の意志決定支援といえば、「人生の最終段階における医療・ケア」、そ

して「将来についての予めの選択」に関するものだというイメージが強い。これは、意思

決定支援が ACP(アドバンス・ケア・プランニング)をモデルにして考えられてきたこと

による。「ACP」は、本来は人生の最終段階において本人が意思決定に参加できなくなる状

況にやがて到ることを見越して、その時にどのような医療・ケアを選択するかについて、

本人が意思決定に参加できるうちに予め行う、関係者間の合意形成を目指すコミュニケー

ションのプロセスを指す語であった。これが意思決定支援のモデルになるのは、ACP に先

立つ AD(事前指示)が「本人が自律を発揮して予め選ぶ」ことに意義を見出したのに対し

て、ACP は、本人を中心としつつ関係者が「本人らしい選択ができるように本人の人生や

価値観を理解し、それに相応しい最善の道を共に考える」という支援をするプロセスであ

ることによる。 急性期医療においても、ACP をモデルとする意志決定支援が望まれる。ただし、ここで

中心になるのは、予めの暫定的選択(「もし、かくかくの状態になったら、しかじかの医療・

ケアを行う」といった条件付きの選択)ではなく、直近の選択(今選択したら、間をおか

ず選択内容を実行するような選択)であろう。直近の選択をしながら、「プラン A がうまく

行かなくなったら、プラン B をしよう」という予めの暫定的選択が伴うことも多い。 こうした直近の選択をする際に、本人は一時的に意思決定に参加できない、本人が希望

する治療・ケアに家族が反対している、医学的妥当性・適切性という観点による最善につ

いての判断と本人の希望が食い違う、といったことが時に起きる。そのような状況で、ど

のように意思決定支援を行いながら、意思決定プロセスを進めていくかということは、主

治医をはじめとする医師のみならず、担当する看護師にとっても臨床倫理の重要問題とな

る。 本シンポジウムにおいては、こうした全体を視野においた上で、現場で重要な役割を担っ

ておられるシンポジストからそれぞれのお立場から見えること、お考えになっていること

をうかがい、急性期医療における意思決定支援において看護職にできること、期待される

ことについて共同検討をしたい。

プロフィール

東京大学理学部天文学科卒業後、東京都立大学学部・大学院で哲学を専攻する。北

海道大学助教授、東北大学助教授、教授、東京大学特任教授等を経て、2017 年度よ

り現職。専門は、哲学・臨床倫理学・臨床死生学。

第1日

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

シンポジウム1

シンポジウム1 急性期における意思決定支援

情報を繋ぐ、想いを繋ぐ、生き方(逝き方)を繋ぐ。

講師 高橋 浩 岩手県立二戸病院 内科長・副院長

急性期医療の現場で本人や家族の納得する意思決定支援を行うことは容易なことではな

い。それは、本人の意向を確認する前に治療を開始せざるを得ない、あるいは、医療者が

患者と最初に接触したときには意思の疎通ができないなどの理由が挙げられる。 現在、急性期はもとより、慢性期の患者への意思決定支援も十分にできていないのが

現状ではないかと考える。しかし、どのような状況でも医療者は常に患者の意向を確認す

るべきであり、本人が意思表示できない時は周囲から情報を得て、伝わらない、途絶えそ

うな想いがあることを前提として、拾い上げる努力をするべきであろうと考える。 カシオペア地域(岩手の県北)の高齢者入所施設で調査したところ半数以上で入居時に

延命療法の希望などを含む、事前指示書の様な意思確認が行われていた、しかし、それが

十分には活用されていないことも明らかとなった。自身の終末期の治療について考えるこ

とは抵抗があると思われるが、避けては通れないと多くの人が感じはじめ、その思いを医

療者に発信し始めている。急性期医療において、患者の意向を拾い上げることは困難では

あるが、それが、唯一の機会である可能性もあり、その重要性は大きい。医療者は己の感

性を研かないとそれに気づかないことも多い。また、患者より託された情報は次の医療者

に確実に伝えられ、患者の療養生活や人生に活かされねばならない。 昨年、11 月 30 日が「いい看取りの日」と制定された。今後、リビングウィルの作成や終

末期における治療の希望などが増えることが予測される。手始めに施設など情報を共有し

やすい環境において、救急隊や急性期医療を担う医療機関やかかりつけ医とこのような情

報を共有することにより本人や家族の望まない延命療法を回避できる可能性がある。この

ような活動が急性期医療における意思決定支援を始めるきっかけとなることを期待してい

る。

プロフィール

現職 岩手県立二戸病院副院長兼内科長兼地域医療福祉連携室々長 略歴 1991 年 岩手医科大学医学部卒、岩手医科大学附属病院第 1 内科入局 2001 年 岩手県立二戸病院消化器科長 2011 年 副院長兼内科長兼地域医療福祉連携室長 2016 年 日本アドバンス・ケア・プランニング研究会世話人 2018 年 第3回日本アドバンス・ケア・プランニング研究会年次大会大会長

第1日

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

シンポジウム1 急性期における意思決定支援

急性期医療におけるさまざまな意思決定支援からの考察 ~“患者/家族の生命に寄り添う”医療・看護活動とは何か~

講師 冨岡 小百合 大阪府立中河内救命救急センター 看護部主査 急性・重症患者看護専門看護師、救急看護認定看護師

我々救急医療に携わる者は、突然として予測し得ない生命の危機的状態に陥った患者に

対して、全力で処置や治療をおこない、救命に向かう努力をする。その過程において、救

命のために治療方針の選択および再考をしなければならない状況や、救命の見込みがない

と判断されるいわゆる終末期となる状況にしばしば遭遇する。 これらの状況に対する医療活動を遂行するにあたっては、患者/家族の意思に基づいてお

こなわれることが社会の認識である。急性期医療の意思決定は、生命に対する意思決定で

あり、医療者は、患者/家族が意思決定ができるように詳細な説明をする。しかしながら患

者/家族はまったく予期せぬ状況に対して強い戸惑いを抱えた心情で意思決定を導き出して

いる。患者/家族のかかえる諸問題、価値観、社会的背景なども意思決定に大きな影響を与

えていると推察する。 一方で、患者自身の意思が得られない状況や、家族や重要他者がいないなど、医療側に

判断が求められる時、医療者は患者にとっての最善な医療の選択に苦悩する。このような

場合、医療者本位に陥っていないだろうか?生命を大切にしているだろうか?意思表示で

きない患者に本当に寄り添っているといえるのだろうか?と自問自答を重ねる。 急性期医療のさまざまな意思決定や選択に対して、看護者は人間的な配慮と尊厳をもっ

て“その人らしさ”を考えながら、アドボケーターとして“今そこにある生命”に寄り添

い護る。 今回、「急性期における意思決定支援」において、症例をふまえ“あらゆる状況の生命を

擁護する”意思決定支援のあり方について、参加されるみなさまと探求したいと考える。

プロフィール

近畿大学附属看護専門学校卒業、東洋大学文学部教育学科卒業、神戸市看護大学大

学院看護学研究科修了、臨床では堺フジタ病院、東京女子医科大学病院を経て現在

に至る。 救急看護認定看護師 急性・重症患者看護専門看護師 救急看護認定看護師特定看護師

第1日

シンポジウム1

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

シンポジウム1 急性期における意思決定支援

集中治療室における意思決定支援とは ~ACP の必要性を考える~

講師 奥山 広也 山形県立中央病院集中治療部 ICU 主任看護師 集中ケア認定看護師

急性期、特に集中治療室において患者の意思決定支援に関して難しいと感じたことがあ

る看護師は大勢いるだろう。集中治療室に入室する患者の多くは病態が重篤であり人工呼

吸器の装着、鎮静薬の投与、せん妄の発症によって自らの意思を他者に伝えることが難し

い。そのような状況の中、治療方法の選択や救命・延命処置を行うかの判断を含めた重大

な選択を強いられることがある。家族やキーパーソンの代理意思によって治療方針が決定

されるが、そこには患者本人の意思が反映されにくい現状がある。意思決定支援の基本は

自立尊重の原則である「本人の意思」が最も重要である。そのため、患者の意思がわから

ないまま代理意思決定をする家族や医療者は、倫理的葛藤を持ちながら患者と向き合わな

ければならない。 Advance Care Planning(ACP)は、年齢や病期に関わらず、患者と、価値や人生の目

標、将来の医療に関する望みを理解し共有しあうプロセスと言われている。これまで ACPは、がんの終末期で行われることが多かった。しかし集中治療室における終末期に関する

ガイドラインや循環器疾患における終末期医療に関する提言が出されたことからもわかる

ように、集中治療の場でも非がん患者の終末期への介入が重要視されるようになってきた。

ACP は意思決定困難な事態に備えて、自分の意向にそったケアが提供されるよう事前に準

備できるツールである。ACP の活用は本当の意味で患者の意思決定を支援することになる

のではないだろうか。患者の意思を尊重できるだけでなく、代理意思決定者や医療者の倫

理的葛藤の解決にもつながってくるのではないだろうか。 今回、当院の意思決定支援についての現状を振り返り、集中治療の場における意思決定

支援のあり方を考えてみたいと思う。

プロフィール

2004 年 山形県立保健医療大学 保健医療学科 看護学部卒業 同年 日本医科大学付属病院 高度救命救急センター入職 2008 年 山形県立中央病院入職 CCU/SCU 配属 2013 年 集中ケア認定看護師資格取得 同年 山形県立中央病院 HCU 配属 2018 年 日本看護協会特定行為研修 救急集中モデル受講 同年 山形県立中央病院 ICU 配属 現在、集中治療部として横断的に院内活動を行っている。ほかにも MRCC(みちの

くレスピラトリーカンファレンス)や ELNEC-JCC で活動している。

第1日

シンポジウム1

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

交流集会1 看護実践の質の可視化を目指して

看護実践の質の可視化を目指して

企画代表者 佐々木 謙一 岩手県立中央病院 ICU

医療の質は「個人や集団に対して行われる医療が、望ましい健康アウトカムをもたらす

可能性の高さ、そのときどきの専門知識に合致している度合い」と定義されている。急性

期にある患者は、不慮な疾病の発症や事故、手術などにより健康が大きく阻害されている。

看護師の役割は健康を最大限に取り戻し、QOL を高めることにある。しかし、昨今の著し

い高齢化に伴い、患者の背景は多様かつ複雑化してきており、患者とその家族が望むアウ

トカムをもたらすことを難しくさせている。 日本看護協会は 2012 年から看護の質評価事業として DiNQL に取り組んでおり、当院も

2015 年からこの事業に参加しているが、より臨床的な看護実践を評価するためには自分た

ちで評価指標を創出する必要があった。そこで、RCT(呼吸ケアチーム)では集中ケア認

定看護師、救急看護認定看護師が中心となり、各部署のリンクナースと協同し看護実践の

質の評価につながる指標の策定と活用に取り組んだ。 質の評価項目に関しては、急性期看護に必要な患者のアセスメントや重症化の回避、苦

痛の緩和を視点とし、各病棟のリンクナースからヒアリングを行い現状分析と課題抽出を

行った。具体的には獲得したい知識や技術(適切な酸素療法の選択、聴診技術など)、臨床

現場で生じている問題点(呼吸数の観察、NPPV マスクによる MDRPU など)を抽出し、

スタッフが質改善にむけて主体的に関われるようサポートを行った。各項目はベンチマー

クとなる値が存在しないものが多いが、継続していくことによって自施設のベースライン

と成り得るのではないだろうか。また、スタッフが主体的にかかわることにより、質向上

や改善を自覚でき、モチベーションアップにも貢献したと感じている。 今回の交流集会では、具体的な評価項目とその目標達成に向けた取り組み内容を紹介す

るとともに、本会のメインテーマ「いのちを支える最前線の看護」とは何か?そしてそれ

をどのように可視化し評価していくかを皆さんと意見交換する場としたい。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

交流集会2 看護師の役割拡大に関するリアルタイム意識調査~周術期における Care と Cure の融合~

看護師の役割拡大に関するリアルタイム意識調査 ~周術期における Care と Cure の融合~

企画代表者: 赤沼 裕子 聖路加国際病院 周麻酔期看護師

企画協力者: 森 一直 愛知医科大学病院 診療看護師(NP)

中田 諭 聖路加国際大学急性期看護学(周麻酔期看護学) 准教授

現在、特定行為研修やナースプラクティショナー(仮称)制度構築に向けた取り組み、

各施設内認定などで看護師の役割拡大が推進されているが、臨床現場の看護師が抱く疑問

点や不安を直接聞く機会は少ない。今回は、タスクシフトを担ううえでの疑問や課題を、

参加者との双方向のディスカッションで解決し理解を深めていきたい。そして今後の研修

等への積極的参加や、看護の専門性向上とキャリア形成へのモチベーションにつなげるこ

とを目的とする。 当日会場では、診療看護師(一般社団法人日本 NP 教育大学院協議会認定)や、施設内

認定の周麻酔期看護師として臨床実践を行っている司会者の活動を紹介し、現状や課題を

提起する。その後、リアルタイムアンケートシステム(仮称)を使用し、会場参加者の自

由意思でスマートフォンと連動させる(匿名操作)。アンケート結果をライブ集計し、参加

者の反応をリアルタイムにプロジェクターに表示させ結果を共有する。おもな質問内容は、

参加者の属性、看護師の役割拡大についての認識、医行為を行うことへの不安、特定行為

研修や大学院等での履修内容や学生生活、研修終了後の実践活動、看護の質や安全性の確

保に関する意識である。司会者らの実践活動や体験談を盛り込みながら、アンケート結果

で興味深い内容があれば、適時取り上げ進行を進めていく。そして、タスクシフトや特定

行為研修、大学院教育への疑問や不安が解消でき、看護師の役割拡大への前向きな理解が

得られるようディスカッションを展開していく。交流集会参加者の積極的参与と双方向の

コミュニケーション、集会後の参加満足度が向上することに期待したい。

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

地域・伝統文化

地域・伝統文化教育関連企画 宮沢賢治の世界観

宮沢賢治の世界観 講 師: 宮澤 和樹

宮澤 やよい(ピアノ・朗読) 宮澤 香帆 (バイオリン)

賢治さんが残した「イーハトーブ」という言葉は、よく“理想郷”という一言でまとめ

られますが、この言葉にもきちんとした意味があります。賢治さんは、“幸せに生きていくために行動する人がいる世界”のことを「イーハトーブ」と呼んでいます。“幸せに生きていくため”にしなければならないこと、そして当たり前と思っていたことに感謝する気持ちを思い出させてくれます。

賢治さんはいつも冗談を口にする面白い人で、クラシックを聞いたり、チェロやバイオリンを楽しんだりと好奇心旺盛な面を持っていました。手を後ろに組んで、少しうつむいているポーズの有名な写真は、ベートーベンを真似したもの。そんなユーモアを持ち合わせた人物だったのです。そして、とても行動的な人物で、教師時代は現地調査といって学生を連れてよく外に出ていましたし、「雨ニモマケズ」の中では「西ニツカレタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ 南ニ死ニソウナ人アレバ 行ッテコワガラナクテモイイトイイ」と残し、自ら動くことの大切さを記しています。何事に対しても“自ら動く”ということを重んじていたようです。

賢治さんの作品は、童話やファンタジーに分類されることもありますが、子ども向けに作品を書いていたわけではありません。賢治さんが作品を通して伝えたかったことは“仏教”の思想です。

「銀河鉄道の夜」は、死者を乗せた“銀河鉄道”という列車がサザンクロスへと向かいます。これは、死者は“ヘブン”へ行くという、キリスト教の教えを表しているのです。カムパネルラをここで降ろさないことで、死んでしまっても終わりではない、という日蓮の教えを伝えたかったのでしょう。賢治さんは、経典を分かりやすく伝えたいと願っていたのです。

プロフィール

宮澤和樹 *プロフィール ・1964年(昭和39年)6月12日:花巻市に生まれる ・1986年:立正大学卒業(日蓮宗) ・1986年:仙台 ㈱光原社 入社 ・1989年:渡英 博物館勤務 ・1992年:帰国 ・1994年:「林風舎」開業 代表取締役 *主な講演会の履歴 ・ひろしま美術館 「詩人達の絵画展」 ・仙台文学館 「永久の未完成 宮澤賢治展」 ・龍谷大学 「宮澤賢治 いのちへの慈愛 展」 ・福山市 銀河学園 「宮澤賢治のこころ」 ・日本橋三越 「絵で読む 宮澤賢治展」 ・福岡市 三菱アルティアムギャラリー 「宮澤賢治の贈り物展」 ・NHK主催「賢治展 雨ニモマケズの心」広島・姫路・東京 会場講演 国立科学博物館「鉱物と宮澤賢治」講演 *『宮澤賢治 魂の言葉』 宮澤和樹 監修 KKロングセラーズ 平成23年7月1日 発行 宮澤 やよい (ピアノ、朗読) *1966.7.1:千葉市に生まれる *1988:東京学芸大学書道学科卒 *1988~1992:渡英 日本人学校教師 *現在 花巻東高等学校 国語、書道 講師 宮澤 香帆 (バイオリン) *1994.4.22:花巻市に生まれる *2017 同志社大学法学部卒 *現在花巻市在住

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

ランチョンセミナー1

ランチョンセミナー1 急性期病院だからこそ実践を通じて実感できるやりがい

急性期病院だからこそ実践を通じて実感できるやりがい

講 師: 森田 徹 ユニ・チャームメンリッケ株式会社 代表取締役社長

講 師: 小野寺喜代 岩手県立中央病院 皮膚・排泄ケア認定看護師

座 長: 荻原 正光 ユニ・チャームメンリッケ株式会社

共催企業: ユニ・チャームメンリッケ株式会社

[講師:森田徹] 現在日本においては少子高齢化や社会保障制度の持続可能性の議論の中、現場が本当に

大切にしたい患者さんに寄り添う看護の力の発揮に取り組みにくい環境にあるのではない

でしょうか。しかしながら私はだからこそコンチネンスケアに取り組む事を提言したいと考えます。私達は排泄用品メーカーですが、良い品質の製品を使うことだけでは良い排泄ケアは実現できないと考え、医療・介護の現場で働く皆様による「チームで行う 心と根拠

のあるコンチネンスケア」の必要性をご提案し、これまで多くの病院様・介護施設様の皆様と共に取り組みながら具体的な成果を上げてまいりました。 専門職の皆様がチーム(CST:コンチネンスサポートチーム)となって取組む真のコン

チネンスケアは患者さんの QOL 向上はもちろんの事、スタッフの皆さんのやりがい感、経営効率向上という組織のもつ具体的テーマの同時実現が可能なのです。

モノ価値からコト価値そしてココロの価値へ、チームによるコンチネンスケアの実践か

らどのように生み出されていくのかを事例を交えてお話しさせていただきます。進化の種は日々の現場にあります。皆様と共に考える機会となりましたら幸いです。

プロフィール

【講師略歴】 1985 年 早稲田大学商学部卒業。ユニ・チャーム株式会社入社。 営業本部・営業企画部・人事部・経営企画部・国際本部を経て 2002 年より東南ア

ジアに於いて 10 年間経営職を担い 2011 年 10 月ユニ・チャームメンリッケ株式会

社代表取締役社長に就任、現在に至る 【資格・表彰】 2016 年日本衛生材料連合会特別功労賞受賞

[講師:小野寺喜代] 平成28年度診療報酬改定において排尿自立指導料が新設された。排尿自立指導の目的は、

尿道留置カテーテルを早期に抜去し、尿路感染を防ぐと共に排尿の自立を促すことである。 また、排泄ケアを行うことで ADL が拡大し、早期退院につながること、個人の QOL が

あがり、人としての尊厳を守るケアを提供できることが期待される。当院でも排尿ケアチー

ムを立ち上げ、平成 28 年度 8 月から泌尿器科病棟を主とし、活動を開始した。平成 29 年度 4 月からは全病棟に拡大し、実施している。同時期に病院提供オムツの導入も実施した。当院では整形外科、脳外科、神経内科の患者に排尿ケアを必要とされる患者が多い現状に

ある。整形外科に関しては骨折している高齢の女性患者が多い傾向にあり、排尿障害は尿失禁が多く、リハビリ目的で転院されるケースが多い。脳外科は対象患者の 100%がリハビリ目的で転院となる。その 30%が尿閉であり、定時導尿が必要となるが、手技取得困難

な場合が多く、家族のサポートも期待できない場合は尿道留置カテーテル挿入となり、後方連携病院にその後の排尿ケアをゆだねている状況である.当院の排泄ケアの取組みの現状と今後の課題ついてご紹介する。

プロフィール

1994 年 公立気仙沼高等看護学校卒業 1994 年 財団法人いわてリハビリテーションセンター 入職 1998 年 岩手県立中央病院 看護部 勤務 2010 年 日本看護協会看護研究教育センター 看護研修学校 皮膚・排泄ケア学科終了 2010 年 皮膚・排泄ケア認定看護師 取得 岩手県立中央病院 主任看護師 (現在に至る)

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

ランチョンセミナー2 健康で安全な職場環境を目指して~がん薬物療法における職業性曝露対策~

健康で安全な職場環境を目指して ~がん薬物療法における職業性曝露対策~

講 師: 垣添 忠生 国立がんセンター名誉総長 公益財団法人日本対がん協会会長 NPO法人抗がん剤曝露対策協議会理事長

講 師: 平井 和恵 東京医科大学医学部看護学科教授 NPO法人抗がん剤曝露対策協議会理事

座 長: 佐藤 悦子 岩手医科大学附属病院看護部長

共催企業: テルモ株式会社

抗がん剤は強い毒性を持つ薬物であることはよく知られている。がん細胞を殺す作用と

同時に、骨髄、消化管細胞、毛根などの正常細胞にも効果が及ぶ。これが抗がん剤の副作

用につながる。抗がん剤は皮膚に付着して吸収されたり、揮発性の薬物の場合には吸入さ

れたりして、抗がん剤の調製・投与にあたる医療従事者にも被害が及ぶことは知られてき

た。抗がん剤を日常的に扱う看護師は、扱わない看護師に比べて白血球の DNA 損傷が多く、

脱毛、頭痛、めまいなどの発生率が高いという研究もある。また妊娠中に抗がん剤を扱う

と、流産率が高まるという報告がある。欧米では 1980 年頃より、医療従事者の抗がん剤曝

露防止のための、各種の働きかけやガイドライン作りが進められてきた。我が国では抗が

ん剤調製にあたる薬剤師の間で、比較的速くからこの事実が知られており、安全キャビネッ

ト内で抗がん剤を調製し、ガウンテクニックで身を護る事などがある程度、実践されてき

た。ところが、看護師が患者に投与する際には、まだまだ十分な対策が取られていない。

このような背景から、抗がん剤の使用に関わる医師、看護師、薬剤師などを中心とした多

職種チームから成る「抗がん剤曝露対策協議会」が 2014 年 4 月 30 日に設立され、抗がん

剤曝露対策を推進している。その後、本協議会を後押しする動きも出てきた。厚労省から

の通達文書や、関連学会によるガイドラインの発刊である。このように抗がん剤曝露対策

を取り巻く環境が少しづつ変化してきた。2018 年 3 月、日本看護協会から「看護職の健康

と安全に配慮した労働安全衛生ガイドライン~ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職

場)を目指して」が刊行された。この中で、抗がん剤は看護師を取り巻く「業務上の危険

(ハザード)」の一つとして予防と対策の必要性が明記されている。2019 年 2 月、「がん薬

物療法における職業性曝露対策ガイドライン」が改定された。抗がん剤の曝露という業務

上の危険から看護師を守るためには、本ガイドラインを参考に抗がん剤の取り扱い時や投

与患者ケア時の予防対策、それらを職員に周知し教育する方法等を含む組織の指針やマ

ニュアルを多職種で整備し、現場の定着を定期的に評価していく必要がある。抗がん剤の

曝露という業務上の危険から看護師を守るため、看護師が健康で安全な職場で、安心して

働くことのできる環境づくりを共に進めていきたい。

第1日

ランチョンセミナー2

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

ランチョンセミナー3

ランチョンセミナー3 急性期病棟における排泄ケアの標準化と自立に向けた取組み

急性期病棟における排泄ケアの標準化と 自立に向けた取組み

演 者: 山元ひろみ ユニ・チャーム株式会社排泄ケア研究所 研究員

座 長: 伊藤 潔 ユニ・チャーム株式会社東北支社長

共催企業: ユニ・チャーム株式会社

日本における高齢者数の増加、特に後期高齢者の増加は急性期病院の入院患者の平均年

齢の上昇という環境変化をもたらし、それに伴い、現場では排泄ケアの需要が高まってき

ています。この傾向は団塊の世代が後期高齢者になる 2025 年に向けてさらに強まることが

予測されています。 急性期病棟の排泄ケアで使用される紙おむつは入院患者の家族が準備することが多く、

様々な種類の商品が持ち込まれています。その多種多様なものが持ち込まれることで現場

の混乱が発生しているケースが散見されています。例えば、吸収性能不足の商品が持ち込

まれた場合は夜中を含めた多頻度のおむつ交換を実施せざるを得ないこと、機能不足の商

品が持ち込まれた場合は尿モレやスキントラブルに対応するために多大な時間を要するこ

となどです。その手間が通常の業務遂行の阻害要因となっています。また、紙おむつの準

備や在庫補充を家族に連絡することも、先方の不在の場合もあり時間のかかる業務となっ

ています。これらの問題を解決する為に、使用するおむつを病院から提供する方法につい

てご提案をさせて頂きます。 加えて、高齢者は 1 週間寝たきりだと筋力の 20%が、4 週間だと実に筋力の 88%が失わ

れるというデータがあります。そのため、高齢の患者様には特に早期からの日常生活動作

への介入が重要となります。入院前に自立した生活を送っていた方でも、疾患や急性期の

安静などの影響で、フレイルの状態になることは想像に難くありません。また、疾患が亜

急性期や慢性期に入っても麻痺などが残る場合もあります。もし、適切な介入がなされな

ければ、在宅復帰は困難となるでしょう。 排泄の自立は患者様の生活意欲や尊厳の保持に繋がると共に、排泄行動は日常生活に必

要な動作がほぼ含まれているため、生活リハビリとして最適です。また、「在宅復帰ができ

るか否かは排泄介護を“自分達でできそうだ”と家族がイメージできることにかかってい

る」とも言われます。ゴール目標を患者様・ご家族と共に設定し、患者様の残存能力を引

出しながら、ご家族でも可能な支援方法を昼夜別にデザインしましょう。その際には、病

状と ADL の変化に応じて、排泄シーンをオムツからトイレへ移行すること、ケア用品を

テープおむつからリハビリパンツへと積極的に変化させることがとても重要です。具体的

な実践方法についてご説明致します。

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一般演題 第1日

【示説座長一覧】

群NO 座長 所属

第11群 四垂 真弓 岩手県立磐井病院

第12群 赤松 陽子 盛岡友愛病院

第13群 橋本 良子 岩手医科大学附属病院

第14群 門間 りえ 岩手県立磐井病院

第15群 熊谷 恵理 岩手県立大船渡病院

第16群 小野寺 真知子 岩手県立胆沢病院

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演1-1

急性期病院におけるせん妄予防対策フロー

シートの妥当性

キーワード:急性期病院 せん妄予防対策フローシート

リスク因子

○角田 恵子1),藤村 敦子1),桐本 ますみ1),松島 元子1),江神 康之1)

1) 独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪労災病院

【はじめに】A病院では、せん妄をスクリーニングするツー

ルが十分に浸透していない状況がある。そこで、A 病院で

作成したせん妄フローシートの使用方法を周知徹底した

上で、現在使用しているせん妄フローシートの妥当性を明

らかにしたいと考えた。【目的】A病院で作成したせん妄フ

ローシートについての妥当性を明らかにする。【方法】A病

院に入院した 70 歳以上の患者 399 名を対象として、せん

妄フローシート内のリスク因子 13 項目(救急入院・不動

または体動制限・看護師が気になる患者・認知症など)の

該当の有無と、せん妄発症の有無を調査した。リスク因子

の有無とせん妄発症の有無の関連性を Fisher の直接法で

分析した。リスク因子の該当項目数でローリスクとハイリ

スクに分け、Youden-index でカットオフポイントを決定し

た。【倫理的配慮】大阪労災病院看護部・看護研究倫理委

員会での承認を得て実施した。自由意思での参加、参加不

参加にかかわらず不利益がないことを明示した。患者氏名

や個人が特定される情報はデータ化せずに個人情報の保

護に努めた。データはパスワード入力が必要な USB にて管

理し、研究終了後にはすみやかに破棄した。本演題発表に

関連して開示すべき利益相反関係にあたる企業はない。

【結果】対象者 399 名のうち、せん妄発症が 26 名、未発

症が 373 名であった。せん妄発症の有無とリスク因子該当

の有無の関連性は「救急入院」「不動または体動制限」「看

護師が気になる患者」「認知症」の 4 項目で有意な関連性

がみられた。Youden-index はカットオフポイントが 2.5 で

最高値 0.502 を示した。【考察】せん妄の発症は「救急入

院」「認知症」が関連しており、急激な環境の変化がせん

妄の誘引になったと推測される。「看護師が気になる患者」

は、患者の表情などをせん妄の前駆症状として捉えている

ことが推測される。せん妄フローシートはリスク因子の該

当が、2 項目以下をローリスク、3 項目以上をハイリスク

と分類することが妥当であることが示された。【結論】せ

ん妄発症と「救急入院」「不動または体動制限」「看護師が

気になる患者」「認知症」に有意な関連性がみられた。せ

ん妄フローシートはリスク因子が 3項目以上該当する患者

をハイリスクとすることが妥当であることが明らかと

なった。

口演1-2

心臓血管外科領域におけるせん妄発症要因の

実態調査とリスク因子の検討

キーワード:心臓血管外科領域 CAM-ICU 早期離床

経口摂取

○田中 忍1),熊谷 猛1),柴田 勇樹1), 橋本 博明1),遠藤 直子1),熊谷 和也2)

1) 岩手医科大学附属病院

2) 岩手医科大学附属病院心臓血管外科

【はじめに】術後せん妄(以下せん妄)は、集中治療後症

候群(PICS)を引き起こし、患者の生命だけではなく、退

院後の QOL にも影響を及ぼすとされている。本研究では心

臓血管外科術後症例において術中経過や術後の離床状況

などから、せん妄発症のリスク因子を明らかにした。【目

的】心臓血管外科術後におけるせん妄発症のリスク因子を

明らかにする。【方法】対象は平成 29 年 4月 1日~平成 30

年 3 月 31 日に入院した患者 108 名。カルテより後方視的

に収集を行い、CAM-ICU の記入からせん妄の有無を判断し

た。せん妄発症群(A 群)とせん妄非発症群(B 群)に分

けて、マンホイットニー検定と x²検定を用い分析した。観

察は 16 項目で、在室日数、リハビリ開始時間、人工心肺

時間、経管栄養開始時間、経口摂取量などとした。【倫理

的配慮】データは個人が特定されないようコード化し管理

した。関係部署に書面にて研究の詳細を提示し研究参加は

自由意思であり拒否の機会を保障した。岩手医科大学医学

部倫理委員会の承認を得た。【結果】A 群は 17 名、B 群は

91 名で、せん妄発症率は 15.5%、発症時期は 2.7 日(±2

日)。在室日数(A群 15.3 日、B群 5.3 日)、リハビリ開始

時間(A群 4134 分、B 群 2049 分)、人工心肺時間(A群 232.4

分、B群 187.6 分)、経管栄養開始時間(A 群 7618.7 分、B

群 5323.9 分)、食事摂取量(A 群 5 割未満 7 名、B 群 5 割

以上 36 名)で有意差を認めた。【考察】在室日数では、せ

ん妄を発症したため在室が長期化したことが考えられた。

リハビリ開始時間では、B 群は早期の離床を開始し、2 日

以内の離床開始がせん妄予防の基準であることが示唆さ

れた。このことは人工心肺時間が手術侵襲として影響があ

り生体反応がせん妄発症に大きく関与していると推察さ

れる。経管栄養は循環動態を評価し開始するが、A 群の方

が遅く、経口摂取量は 5割以下の患者でせん妄を発症して

いた。早期の経腸栄養開始や食事摂取が進まない患者に対

しては、栄養士と連携を図り、栄養補助食品の使用を検討

することはせん妄予防の関わりとして重要である。【結論】

1.せん妄発症には、在室日数、リハビリ開始時間、人工心

肺時間、経管栄養開始時間、食事摂取量がリスク因子とし

て挙げられた。2.せん妄予防には 2 日以内の早期離床と

食事摂取量は 5割以上を目標にすることが示唆された。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演1-3

A急性期病院における高齢入院患者の睡眠を妨

げる因子

キーワード:急性期 睡眠障害 看護 高齢者

○下田 零1),松下 侑太1),矢野 諭美1)

1) 三菱京都病院

【はじめに】高齢者は加齢に伴う生理的変化により睡眠障

害が起こりやすく、入院生活は制限もあり睡眠が阻害され

る要因は多いと考えられる。高齢患者から不眠の訴えは多

く、対応方法を検討するため睡眠を妨げる因子を知りたい

と考えた。【目的】急性期病院における高齢患者の睡眠を

妨げる因子を明らかにし、今後の対応方法を検討する。【方

法】研究の同意を得た 115 名(平均年齢 70.4±11.8)を対

象に質問紙を使用し、アンケート調査を実施した。最初に

質問紙の理解や記入が困難な者は除外した。セントマリー

病院睡眠質問票(睡眠障害の対応と治療のガイドライ

ン,2012)を使用し不眠の有無を明らかにし、また、不眠

に関連がある要因を明確にするために早朝覚醒・疼痛・掻

痒感・発熱・発汗・動悸・呼吸苦・臭い・咳嗽・頻尿・倦

怠感・口渇感・空腹感・騒音・冷感・昼寝・温度・眩しさ・

ストレスに分類し解答できるよう質問紙を作成した。そし

て IBM.SPSS.Ver.24 を使用しχ2乗検定を実施、p値<0.05

を統計学的に有意な値とした。【倫理的配慮】研究の実施

にあたり所属施設の倫理委員会の承認を受け遵守した。

(承認番号 18-25)【結果】115 名に質問紙を配布、75 名の

回答を得た(回収率 65%)。75 名のうち 48 名が不眠ありと

回答。不眠ありの男女間で有意差はなかった。統計学的に

不眠の発症要因として早朝覚醒(p 値<0.001)、ストレス

(p値<0.05)、空腹感(p値<0.01)が有意な因子であっ

た。【考察】加齢により総睡眠時間が減少し、さらに消灯

が日常生活と違い早いため、早朝覚醒している状況であっ

た。そのため、患者本来の生活リズムを尊重する必要があ

ると考えられた。また、入院中は夕食時間が早く、疾患管

理のため飲食が自由にできない状況にあり、空腹で寝付け

ない可能性が示唆された。そこで、医師の指示の下、補食

などを付けることが有用であると考えられた。そして、疾

患を抱えることでストレスを感じやすい状況下で不眠に

なりやすく、ストレスを発散できるよう散歩や傾聴を行う

必要があると考えられた。【結論】統計学的に急性期病院

における高齢患者の睡眠を妨げる因子として早朝覚醒、ス

トレス、空腹感が有意な因子であった。そのため、患者本

来の生活リズムを尊重する事やストレスを発散できるよ

う関わる必要があると考えられ、補食なども考慮すべきで

ある。

口演1-4

挿管患者のせん妄発症率の低下を目指した取

り組み

-客観的鎮痛スケールを導入して-

キーワード:BPS ICDSC 鎮痛 疼痛コントロール

○堀内 駿1),横田 実保1),成田 寛治1), 山川 宏実1)

1) 上尾中央総合病院

【はじめに】今まで集中治療室患者への痛みに対して鎮静

薬管理が主であり痛みを訴えられない患者には「バイタル

サイン」「表情」から痛みを推測し評価していた。せん妄

に対してはせん妄評価スケール(Intensive care delirium

screening checklist、ICDSC)で評価していたが、痛みに

対しては統一された評価基準がなかった。したがって痛み

を訴えることの出来ない患者に対しては何らかの指標を

用いて客観的に評価する必要があると感じた。そこで今回、

鎮痛スケール(Behavioral Pain Scale、BPS)を導入して

評価することで適切な痛みのコントロールにつながり、せ

ん妄発症率の低下につなげることができるかに取り組ん

だ。【目的】客観的鎮痛スケールを導入することで挿管患

者のせん妄発症率の変化を明らかにする。【方法】平成 29

年の 3 か月間の挿管患者 159 名(A 群)と平成 30 年度に

BPS を使用して痛みに関する評価をしながら、適時鎮痛薬

を使用した 3 か月間の挿管患者 154 名(B 群)を抽出し、

ICDSC/鎮痛薬を使用している数と投薬内容・せん妄発症率

を洗い出し比較した。患者の重症度を判定するための

APACHEⅡスコアを調査した。【倫理的配慮】上尾中央総合

病院倫理委員会の承認を得た。また、患者データは本研究

のみで使用し個人が特定されないように配慮した。【結果】

年齢 A群平均 69.6 歳(±12.4)、B群平均 69.5 歳(±14.1)

APACHEⅡスコア A群平均 14.7(±7.5)、B群平均 19.2(±

8.3)せん妄発症率は A群が 55.3%で B群が 51.7%であっ

た。単回鎮痛剤使用人数はA群 53人、B群 81人(p=0.0002)

であった。持続鎮痛薬の使用人数は A群 88 人、B群 115 人

(p=0.0004)であった。【考察】BPS を導入したことで痛み

の評価を客観的に評価できるようになり適切な鎮痛薬の

投与とその評価が十分になされたうえで鎮静を考慮する

ことへの共通認識が培われた。その結果、B 群の鎮痛薬の

使用率が増加したことが推察される。BPS 導入により鎮痛

薬の使用量は上がったがせん妄発症率の低下にはつなが

らなかった。せん妄発症に関連する他の因子を含めての管

理がせん妄発症率の低下につながると考えられる。【結論】

BPS を導入し鎮痛薬の使用量が増えたがせん妄の発症率に

有意差はなかった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演1-5

ICU入室患者のせん妄管理における睡眠に関す

る ICU 看護師の主観的な判断

キーワード:ICU せん妄 睡眠 看護師の判断

○鈴木 優子1),吉田 友美1),上杉 真美1), 萬年 史帆1)

1) 横浜市立大学附属病院

【はじめに】A 病院 ICU ではせん妄に関するスクリーニン

グを行っているが、せん妄管理における ICU 入室患者の睡

眠に関する看護は看護師個々の判断で実施され、その実態

は明らかになっていない。そのため、せん妄管理における

睡眠に関する看護師の主観的判断を明らかにすることで、

看護ケアの標準化に向けた取り組みや ICU-AD の減少等に

繋がると考える。【目的】A病院 ICU 入室患者のせん妄管理

における睡眠に関する ICU 看護師の主観的な判断について

明らかにする。【方法】1.調査期間 2018 年 3 月 23 日~4月

13 日 2.調査対象者 A病院 ICU 看護師 26 名 3.調査内容・分

析方法先行研究をもとに調査票を作成し、睡眠がとれてい

ると思うか、睡眠をどのように判断しているのか、機械音

等の周囲の影響、看護ケアの実際等を選択・記述式で調査

し、単純集計、KJ 法でグループ化した。【倫理的配慮】研

究対象者へ個人が特定されないこと、不利益を回避するた

めの配慮を説明、調査票提出をもって自由意思による同意

とした。本研究は横浜市立大学倫理委員会の承認を得た。

【結果】調査票回収率は 84.6%有効回答者数は 20 名であっ

た。ICU 看護師の主観的判断は〈リアルタイム〉〈事後〉〈環

境要因〉〈その他〉の 4 つのグループに分けられた。看護

師は、ICU 入室患者の睡眠をバイタルサインや外的刺激に

対する反応等リアルタイムで判断し、日中の傾眠傾向や翌

日の活動状況等、患者本人の熟眠感等事後で判断していた。

【考察】ICU 看護師は、データに基づく分析的思考と同時

に経験に基づく非分析的思考を駆使しながら異常を判断

していると言われ、本研究においてもモニターから得られ

るデータと同時に患者の反応パターン等を観察し判断し

ていると考えられた。そして、リアルタイムにデータ・観

察等から睡眠がとれているのか判断するだけでなく、事後

の患者の反応等からも観察を行い判断していると考える。

せん妄管理における睡眠の評価をする場合、具体的な観察

項目を設け経時的に観察することで、睡眠評価の判断の標

準化や質の向上となり、ICU-AD の減少等に繋がると考える。

【結論】ICU 看護師は、せん妄管理における睡眠の評価を

リアルタイムにデータや観察等で判断しているだけでな

く、事後の患者の反応等からも観察を行い判断している。

口演2-1

造影剤を使用した断層撮影の副作用発現とリ

スクファクターの関連性

-造影剤副作用発現の報告書に基づいた調査-

キーワード:コンピューター断層撮影検査 造影剤

即時型副作用 リスクファクター 重症度分類

○川島 真希1),飯島 淳子1),酒井 美菜子1),白石 浩子1)

1) 獨協医科大学病院

【目的】A病院の造影 CT 検査での副作用発現とリスクファ

クターとの関連を明らかにし、今後の副作用発現予測の一

助にする。【方法】対象:2015 年度~2017 年度造影剤注入

時から CT 検査室を退出するまでに発現した 343 症例。方

法:造影剤副作用発現の報告書と電子カルテから、年齢/性

別/造影剤投与量/GFR 値/副作用発現時間/既往歴を収集し、

また日本放射線科医会分類に基づき重症度分類を行い、年

度別、副作用発現時間を単純集計する。【倫理的配慮】獨

協医科大学生命倫理委員会の承認を得て実施し、開示すべ

き利益相反はない。集計したデータは個人が特定されない

ようコード化し管理した。【結果】2015 年度/2016 年度/2017

年度の順に、副作用発現患者数 102 人(0.87%)/129 人

(1.13%)/112 人(0.98%)だった。喘息患者は 3 人(0.03%)/6

人(0.005%)/14 人(0.12%)、アレルギー歴あり患者は 33 人

(0.28%)/48 人(0.42%)/40 人(0.35%)だった。発現時間と重

症度分類では、造影剤注入時~撮影終了の軽症は、52 件

(0.44%)/78 件(0.68%)/75 件(0.50%)。撮影終了後 5分未満

の軽症は、35 件(0.30%)/26 件(0.23%)/10 件(0.09%)、中等

度 0 件/5 件(0.04%)/1 件(0.01%)、重症 0 件/0 件/2 件

(0.02%)だった。【考察】3 年間の調査で年度別の副作用発

現率に、大きな差はなかった。喘息患者の副作用発現率は

10 倍と報告されているため、喘息治療状況や過去の造影剤

使用歴などを医師と協議することで、副作用発現率が低い

結果になったと考える。アレルギー歴あり患者は、副作用

の大半を占める軽症とアレルギー症状が類似しており、副

作用と判別しにくいため、既往歴の中で高い発現率を示し

ていると推測する。検査前からの症状か観察・問診し、検

査後は副作用として対応するのか見極めることが重要で

ある。発現時間と重症度分類は、撮影終了後 5分未満でも

中等度/重症の副作用発現があり、血管確保を維持し副作

用発現時に薬剤投与が迅速に対応できる体制が重要であ

る。【結論】1.年度別での副作用発現率の大きな差はなかっ

た。2.アレルギー歴あり患者は軽症の副作用発現率が他の

既往歴より多かった。3.撮影終了 5分未満は、血管確保を

行い迅速に対応できる体制にする。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演2-2

術前患者に対する外来でのアレルギー情報収

集の取り組み

キーワード:アレルギー 術前患者 外来 早期介入

○髙畑 まゆみ1),内藤 繭子1),神原 洋子1),八子 恵美子1),奥村 結香1)

1) 日進おりど病院

【はじめに】A 病院では入院から手術までの期間が短く、

術前患者のアレルギー情報収集が不十分な状況があった。

A 病院外来は、手術が決定した段階での情報収集の必要性

を考え、外来で情報収集に取り組んだので結果を報告する。

【目的】術前患者に対する外来でのアレルギー情報収集へ

の取り組みとその効果を検証する。【方法】外来看護師に

対し、取り組み前後にアンケートを実施。アレルギーに対

する理解度と情報収集方法の現状を調査、術前患者に適し

た問診票への改正と対面式問診の導入。結果を単純集計し

分析、取り組み前後の変化を検証した。【倫理的配慮】疫

学・臨床研究倫理委員会の審査を受け、対象者に研究内容

を説明し同意を得て実施した。【結果】「ラテックス」「ヨー

ド」「金属」アレルギー各々の理解度は取り組み前、完璧・

概ね分かるが 16%であったが、後は 79%に上昇した。「ア

レルギー有無の確認」「既往歴の確認」「他部署との連携」

「問診の必要性の認識」4項目の実施状況は、取り組み前、

完璧・概ね出来るが平均 42%であったが、後は平均 89%

になった。「職業や生活環境の確認」「皮膚状態の観察」「予

防対策の必要性をアセスメントできる」3 項目の実施状況

は、完璧・概ね出来る 52%、少し・全く出来ない 48%と

ほぼ二分化された。「現在使用中のアレルギーの調査票は

適切な内容か」は、問診票改正、対面式問診の導入後、完

璧・概ね適切が 40%から 96%になった。問診を行った患

者の約 4 割が、何らかのアレルギーを保有していた。【考

察】知識面が向上し個々が積極的に取り組むことができた

と考える。手術室が術前患者のアレルギー情報を早期に把

握できるようになったと考える。問診票を改正し対面式問

診の導入により、術前患者に必要な項目を確実かつ詳細に

確認できるようになった。しかし、看護師間でアセスメン

ト力に差が生じているため、統一した対応が出来るように

する必要がある。また、様々なアレルギー保有者に対応で

きるよう、物品や環境の整備を検討していく必要があると

考える。【結論】1.術前患者のアレルギー情報収集の必要

性を理解し行動できた。2.外来での情報収集により適切

な手術環境を確保する連携の強化が図れた。3.継続した

知識面の強化や問診票の改正、アセスメント指針が必要で

ある。4.多種多様なアレルギー患者に対応ができる様、

病院全体でのアレルギー対策の構築が必要である。

口演2-3

内服管理方法の判断基準の統一による効果

-高齢患者に対し内服管理アセスメントシー

トの導入を図って-

キーワード:高齢者 内服管理 判断基準 アセスメント

○山崎 裕美1),長谷川 優加1)

1) 広島県立障害者リハビリテーションセンター

【はじめに】日本の高齢化は過去に類を見ない早さで進み、

A病棟の状況も同様である。A病棟では 2006 年より服薬理

解能力評価スケール(以下 RCS と略す)を導入し内服管理

方法を判断している。現在 RCS の実施が困難な事例が増加

している。また管理方法の明確な判断基準が無い為、判断

に混乱を生じている。【目的】A病棟の現状分析を行い、内

服管理アセスメントシート(以下シートと略す)を作成し

管理方法選択の判断基準を統一する。【方法】対象:A病棟

看護師 27 名。診療録・看護記録。期間:2018 年 6 月から

8月。①2017 年と 2018 年同時期の 3ヶ月間の 65 歳以上の

入院患者の年齢・性別・病名・術式・世帯構成・認知症診

断の有無等の情報をカルテより収集。②シートは先行研究

を参考に作成。③看護師へ導入前アンケートを実施。④

シートを試行。⑤導入後アンケート実施。⑥シートの改正。

【倫理的配慮】本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認

を得た。アンケート調査は個人が特定されないように配慮

し、参加・不参加により不利益が生じないことを説明し文

書にて同意を得た。カルテより収集した個人情報は研究目

的以外には使用せず、個人が特定されないように配慮した。

本研究において開示すべき利益相反関係にあたる企業等

はない。【結果】2017 年と 2018 年では 65 歳以上の入院患

者の患者像に大きな変化は無い。独居・老々世帯が約 6 割

を占めている。看護師への実施前アンケート(回収率 96%)

では「RCS を患者が理解できず、実施できない」等の項目

においてシート導入前 5割以上の看護師が困ると回答、導

入後(回収率 82%)8割以上の看護師が解消できたと回答

した。又「判断基準が明確化している」等の項目において

8 割以上の看護師がそう思うと回答した。管理方法を判断

する根拠では、シート導入前後に変化は無い。シート導入

後のアンケートより選択項目が多い等の意見を反映した

シート作成し使用している。【考察】アンケートから管理

方法を判断する時の根拠では各項目を元来意識している

割合が高いことから内服管理に対する看護師の意識が高

くシート導入もスムーズに行えた。更にシートによって判

断基準の統一を図ることができたと考えられる。患者像の

変化に応じシートの検討を行う必要があると考える。【結

論】シートの導入・改善により患者像に応じた内服管理方

法の判断基準の統一を図ることができた。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演2-4

眼科病棟で発生した衝突における患者の特徴

-衝突と転倒転落の比較-

キーワード:視覚障害 衝突 転倒転落

○青柳 香奈枝1),松島 彩香1),阿部 真奈1),佐々木 幸子1),寺田 夏子1)

1) 岩手医科大学附属病院

【はじめに】視覚障害をもつ患者には、院内共通の転倒転

落アセスメントスコアシート(以後スコア)を活用し危険

防止に努めている。ベッド柵に術眼をぶつけ再手術事例を

経験し、衝突は転倒転落と同様二次的合併症に繋がる危険

性がある。A病棟の衝突と転倒転落のインシデントがほぼ

同数発生しており、危険因子が違うのではと疑問を抱いた。

そこで、衝突を経験した患者の特徴を明らかにし、看護支

援に役立てたい。【目的】衝突と転倒転落した患者を比較

し、衝突した患者の特徴を明らかにする。【方法】過去 5

年間に発生した衝突と転倒転落した患者をインシデント

報告書から抽出。インシデント報告書と診療記録から年齢、

スコア、患者の訴えなどを収集。衝突患者を A群、転倒転

落患者を B群とし、単純集計と両群の比較をマンホイット

ニー検定した(P<0.05)。【倫理的配慮】岩手医科大学医

学部倫理委員会で承認を得た。【結果】対象は A 群 35 名、

B群 38 名。年齢は A群 67.5±13.5 歳、B 群 78.9±12.2 歳

で、A 群が低かった(P<0.0001)。発生時間は、0 時~6 時

が A 群 8.5%B 群 44.7%、6 時~18 時が A 群 48.6%B 群

28.9%であり、6 時~18 時の A 群の発生が高かった

(P=0.01)。スコアは、危険度Ⅰが A 群 65.7%B 群 15.7%、

危険度Ⅱ・Ⅲが A群 34.3%B 群 84.2%であり、危険度Ⅰの

割合は A群が高かった(P<0.0001)。A 群の衝突時の状況は

1 人での動作時の発生が 94.2%で、理由は距離感がつかめ

ない、1人でできると思ったなどであった。【考察】A群は

比較的若い年齢層で、日常生活の活動性が高く日中の発生

が多かった。視覚障害を自覚しているが、自分で動きたい

という欲求や看護師に頼まなくても自分でできるという

思いこみにより危険予知が十分にできなかったと推測さ

れる。看護師は A群のスコアの危険度が低く ADL が自立し

ていると評価し、患者への十分な説明や観察、危険性の注

意喚起が不足していたと考える。スコアが危険度Ⅰでも衝

突のリスクを評価する判断基準を明確にし、危険予測のア

セスメントができる工夫が必要である。患者教育に危険予

知を取り入れ具体的な説明や指導を行い、患者・看護師が

相互に危険予知能力を高めていきたい。【結論】衝突した

患者の特徴は、転倒転落患者に比べ年齢が低く転倒転落ア

セスメントスコア危険度Ⅰが半数以上だった。

口演3-1

急性期病棟における複数回転倒する患者の特

-アセスメントスコアシートから-

キーワード:転倒転落アセスメントスコアシート 急性期

病棟 複数回転倒

○藤岡 哉江1)

1) JR 広島病院

【はじめに】急性期病棟である A病院 A 病棟では入院時に

転倒転落アセスメントスコアシート(以下:スコアシート)

を用い、患者の転倒の危険性を評価している。しかし、複

数回転倒患者がいる現状があり、急性期病棟における複数

回転倒患者に共通する特徴を明らかにする必要があると

考えた。【目的】A病棟における、複数回転倒する患者の特

徴を明らかにする。【方法】平成 27 年 11 月~平成 30 年 10

月の間に A 病棟で複数回転倒転落された患者を対象とし、

スコアシートからの単純集計を行う。【倫理的配慮】対象

患者の選定と使用するデータは病棟師長がインシデント

レポートを確認し、JR 広島病院倫理委員会と医療安全委員

会に承認を受けて使用。対象者は匿名とし過去の入院カル

テデータを用い、ホームページに研究についての情報開示

を行い、同意を得た。【結果】入院患者のうち、転倒した

患者は 3 年間で 77 名。うち 10 名(13%)が複数回転倒し

ていた。複数回転倒した患者の特徴は、平均年齢 85.0 歳。

平均入院期間は平均 29.3 日。再転倒までの日数は平均 5.2

日。主な疾患は悪性腫瘍で、手術を行った患者は術後 2~7

日で再転倒していた。次に、スコアシートのチェック項目

別に、人数を集計した。複数回転倒時の項目で多かったも

のは、「ふらつきがある」、「病状、ADL が急に回復、悪化し

ている時期がある」「筋力低下」の項目であった。1回目転

倒時から 2 回目転倒時で「トイレまで距離がある」5 名、

「浣腸・緩下剤」3名、「何事も自分でやろうとする」3名、

「トイレ介助が必要である」2名、「筋力低下がある」2 名、

「病状、ADL が急に回復、悪化している時期がある」2 名

の増加があった。【考察】スコアシートのチェック項目と

転倒時の状況より、急性期の排泄機能の変化と同時にトイ

レ介助が必要な状況になっていることが転倒の原因と考

えた。術後の ADL 低下や病状の悪化があり、以前はトイレ

介助が不要であった患者が介助の必要な状況になってい

るときに転倒を起こしていることがわかった。また、術前

や病状が急激に悪化する前の患者は ADL が自立していたた

め、入院時同様に状態変化後も動けると考え行動した結果

転倒していると考えられた。【結論】入院時に排泄動作が

自立していた患者が一人行動となる傾向にあり、術後の

ADL 低下や病状に悪化があるときに排泄行動を取ろうとし

て複数回転倒する。

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口演3-2

急性期病棟における転倒転落予防の取り組み

-高齢者排尿管理アルゴリズムを使用して―

キーワード:急性期病棟 転倒転落予防 高齢者排尿管理

アルゴリズム

○古澤 悟1),石関 しのぶ1),井上 由子1), 下村 貴子1),須田 季己江1),田村 真希1), 竹澤 真澄1)

1) 桐生厚生総合病院

【はじめに】B 病棟は脳神経外科の急性期病棟である。患

者は脳卒中発症による神経症状により排泄障害を伴うこ

とが多く、また治療の過程で排尿回数が増える傾向がある。

平成 29 年度の B病棟での転倒事故は 35 件で、うち排泄に

伴う転倒は 15 件と要因の第一位であった。そこで排尿ケ

アを行う事により転倒転落の減少に繋がるのではないか

と考え、高齢者排尿管理アルゴリズムを使用し患者の個々

の排尿障害を知り排尿ケアを行った。その結果、転倒の減

少に繋がったのでここに報告する。【目的】高齢者排尿管

理アルゴリズムを使用した上で排尿ケアを行い、転倒転落

アセスメントシートを用い評価することで高齢者排尿管

理アルゴリズムの有用性を明らかにする。【方法】対象者

は、B 病棟入院中の患者で、転倒転落アセスメント危険度

Ⅱ以上・転倒転落アセスメントシートの排泄の項目に「尿

便失禁ある」「頻尿がある」の 2 項目のすべて、もしくは

どちらかにチェックがある・65 歳以上とした。高齢者排尿

管理アルゴリズムを使用し排尿ケアを行った患者 13 名を

実験群とし、実験群以前に入院し高齢者排尿管理アルゴリ

ズムを使用しなかった患者を対象群とし、それぞれの転倒

転落アセスメントシートの評価スコア合計点・排尿回数・

転倒件数を比較した。【倫理的配慮】A病院臨床倫理審査委

員会の承認を得た。本研究は、名古屋大学大学院医学系研

究科泌尿器科学教室、後藤百万氏に高齢者排尿管理アルゴ

リズムの使用に対し許可を得た。データは年齢、性別、転

倒転落アセスメントシートのみとし、個人は特定されない。

自由意思による承諾を得ていること、不利益を回避するた

めの配慮を実施した。【結果】ウィルコクソン検定におい

てすべての項目で有意差がみられた。転倒件数は、実験群

に至っては 0 件であった。【考察】今回高齢者排尿管理ア

ルゴリズムを使用し患者の個々の排尿障害を知り排尿ケ

アを行った。その結果、転倒の減少に繋がったことから高

齢者排尿管理アルゴリズムは高齢者の転倒予防に有用で

あると考えられる。今後も継続して使用していく必要があ

ると示唆された。【結論】1.高齢者排尿管理アルゴリズム

を使用し排尿ケアを行ったことで排尿回数が減少した。2.

高齢者排尿管理アルゴリズムを使用し排尿ケアを行った

ことで転倒転落予防に繋がる。3.高齢者排尿管理アルゴ

リズムは有用であるため今後も継続して使用していく必

要があると示唆された。

口演3-3

クロストリジウムディフィシル感染症のアウ

トブレイク終息に向けた取り組み

キーワード:クロストリジウムディフィシル アウトブレ

イク 環境清掃

○森 藍1)

1) 社会医療法人社団さつき会袖ケ浦さつき台病院

【はじめに】A 病院 B 病棟において 9 か月間にオムツ交換

を必要とする患者からクロストリジウムディフィシル感

染症(以下 CDI)が 9 例発生した。環境や物品を介した伝

播が推測されたため、感染対策を講じたところアウトブレ

イクが終息した.感染対策の評価として環境培養を実施し、

その有効性があったため報告する。【目的】CDI のアウトブ

レイク終息に向けて環境清掃の強化、オムツカート廃止や

オムツ交換手技の見直しが、感染対策として有効であるこ

とを明らかにする。【方法】2017 年 7 月~2018 年 7 月の間

に A 病院 B 病棟に入院し、入院後 48 時間後に CDI を発症

した患者を対象とした。2018 年 1 月に CDI が 4名発生しア

ウトブレイクとして感染対策を実施し、前後 6か月間の発

生率を算出し評価した。内容は、看護助手が週 3回実施し

ていた環境清掃を看護師が毎朝実施するように変更し、オ

ムツカートを廃止するため排泄ケア実施後は 1回ずつ汚物

室へ廃棄する手順へ変更した。CDI を発症した患者の病室

10 箇所(床、ベッド、マットレス、床頭台、点滴台、アウ

トレット、手洗い場、ドアノブ、電気スイッチ、ベッドコ

ントローラー)と排泄ケア物品 8箇所(オムツカート、オ

ムツ回収バケツ、陰洗ボトル、陰洗用石けん、ベッドパン

ウォッシャーの中、外、汚物室の手洗い場、床)をスワブ

で拭い取り嫌気、好気培養した。病室は退院清掃後に同様

の箇所を培養しコントロール群とした。【倫理的配慮】所

属施設の倫理委員会の承認を得た。データは匿名化し、個

人が特定できないよう配慮した。利益相反はなし。【結果】

対策実施前の感染率は 0.987 で、実施後の感染率は 0.373

だった。病室の環境培養では床頭台から CD が検出され、

退院清掃後は検出されなかった。排泄ケア物品の環境培養

から CD は検出されなかったが、多数の細菌属が検出され

た。【考察】今回、患者と環境から検出された CD の遺伝子

検査を実施していないため、伝播経路を特定することはで

きないが、毎日の環境清掃が確立してからアウトブレイク

を終息することができた。また、オムツカートの廃止やオ

ムツ交換手順の見直しは他の病原体の伝播経路を遮断す

る方法のひとつとなったのではないかと考える。【結論】

毎日の環境清掃、退院後の環境清掃、医療用具の管理は感

染対策に有効である。今後は清掃方法を確立させ、院内感

染防止に活用していきたい。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演3-4

N95 マスク装着の現状と今後の課題

キーワード:N95 マスク フィットテスト 空気感染

○長谷 祐里1),末成 真梨子1),橋本 尭之1),藤田 裕幸1),橋本 彩香1),秋山 那菜子1), 田仲 みどり1)

1) 神戸大学医学部附属病院

【はじめに】A 病院救急・集中治療センターは、結核等の

空気感染症(疑いを含む)患者を年間 10 名から 20 名程度

受け入れている。空気感染予防策の中で、N95 マスク(以

下、マスクとする)は正しい選択と装着が求められること

から、それらを客観的に評価する必要がある。【目的】マ

スクの装着の現状を把握し、今後の課題を明らかにする。

【方法】A病院では、折タタミ式、カップ式、カップ式(ス

モールサイズ)の 3種類のマスクを採用している。看護師

を対象に、労研式マスクフィッティングテスターMT-05 型

を用いて定量的フィットテスト(以下、フィットテストと

する)を行った。マスクの選択と装着は対象者自身で行い、

指導や助言等の介入は行わないこととした。1 種類のマス

クにつき測定は 2 回までとし、漏れ率 5%以上をリークあ

りと判断した。【倫理的配慮】文書を掲示し、協力は自由

意思であり協力しなくても不利益がないこと、研究発表に

匿名化したデータを使用することを説明し、拒否できる機

会を保障した。研究に際し、所属施設の倫理審査委員会相

当の機関からの承諾を得た。【結果】対象者 80 名中 62 名

(77.5%)に実施した。なお、マスクの選択は看護師自身

に委ねたため、選択順は看護師によって異なった。自分に

合ったマスクを正しく選択しリークも無かった看護師は、

1種類目の初回が 34 名(55%)、2回目が 10 名(16%)、2

種類目の初回が 5 名(8%)、2回目が2名(3%)、3 種類

目の初回が 6 名(10%)、2回目が 1名(2%)であり、す

べて適合しなかったのは 4 名(6%)であった。リークあ

りの看護師の特徴として、マスクのサイズや紐の調整の可

否等のマスクの特徴を理解できていないこと、現場で使用

した経験が少ないこと、シールチェックをしておらず鼻や

顎付近からリークしていることが挙げられた。【考察】

フィットテストを実施したことで、約 3割はマスクを適切

に使用できていないことや、自らに合ったマスクの選択が

できていないことが判明した。各個人が、正しい着用方法、

適合したマスクの選択ができるように、指導していく必要

がある。再測定でも不適合だった 4名は、着用方法の指導

やマスクの変更を行い、それでも適合しないのであれば、

その人に合った新たなマスクの導入も考慮する必要があ

る。【結論】教育として、定期的にフィットテストと着用

方法の指導を実施していく必要がある。

口演4-1

救急外来看護師の看護ケアに対する意識向上

を目指した入院後病室訪問の効果

キーワード:入院後病室訪問 看護ケア 患者のニード

○今橋 睦美1),山木 淳子1),藤枝 絵美1)

1) 山口県済生会下関総合病院

【はじめに】救急外来では検査や処置を優先する事が多く、

患者・家族のニードに添った看護ケアが十分に提供できて

いない現状があった。そこで、入院後病室訪問(以下訪問

とする)を行い、患者・家族の意見を受けニードを把握す

ることで、看護ケアに対する意識の向上に繋がるかを検証

した。【目的】訪問を実施し、患者・家族からの意見を受

け救急外来看護師の看護ケアに対する意識の向上が図れ

たか否かを明らかにする。【方法】2018 年 3 月~7 月に救

急外来看護師 13 名が、入院後 3 日以内に訪問を行い、患

者からの意見をカンファレンスで共有した。CNS-FACE を参

考に『社会的サポート』『情緒的サポート』『安楽・安寧』

『情報・保証』『接近』の項目について救急看護に関する

5段階評定尺度(5:常に出来ている~1:出来ていないこ

とが多い)の意識調査(設問数 18)を訪問導入前後に実施

した。分析は、意識調査についてウィルコクソンの符号付

順位和検定を用いた。【倫理的配慮】本研究は、研究者の

所属する施設の看護部倫理委員会の審査承認を得た。対象

者には、研究の趣旨、個人が特定されないこと、参加や辞

退は自由意思であり不利益が生じないことを説明し、書面

による同意を得た。【結果】意識調査では、導入後に『接

近』で有意(p<0.05)、他 4 項目で有意(p<0.001)に上

昇した。【考察】訪問導入前は、看護実践の振り返りは推

察で終わっており、患者・家族のニードを把握するには

至っていなかった。救急外来では対象患者の重症度に関わ

らず、看護師は治療や処置を優先している現状があった。

そこで、訪問を導入し患者・家族の意見を受ける機会を設

け、カンファレンスで情報を共有することで具体的なニー

ドが明確になった。特に『安楽・安寧』では、救急の場に

おいても医療行為のみでなく体位調整や排泄などの日常

生活援助は、患者のニードとして欠かせないものであると

再認識できた。また、『情報・保証』『接近』では「説明を

聞きたい」「患者と早期に面会したい」という患者・家族

のニードに対し看護師から積極的に声かけを行うことの

重要性を再認識した。患者・家族から意見を受けることで、

自己の看護ケアを振り返ることができ、看護師個々の意識

が変化し意識の向上に繋がったと考える。【結論】入院後

病室訪問は、救急外来看護師の看護ケアに対する意識の向

上に繋がった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演4-2

救急室看護師の褥瘡予防対策に関する意識調査

キーワード:二次救急 褥瘡予防 意識調査

○長野 友紀1),田村 志津枝1),和田 京子1),小倉 典子1)

1) とちぎメディカルセンターしもつが

【はじめに】A 病院は二次救急医療機関であり、救急室で

は救命に対する治療が優先されるため、褥瘡予防対策まで

意識が向かない現状があると考える。【目的】A病院救急室

に勤務する看護師は救急室、手術室、外来の部署で、経験

年数も様々であり、褥瘡予防対策における認識や観察にお

いて実践力に差が生じている可能性がある。A 病院救急室

勤務の看護師を対象に褥瘡予防対策への意識について調

査する。【方法】研究デザイン:質問紙調査法。独自に作

成した自記式質問紙を留め置き調査。対象:A 病院救急室

勤務する看護師 51 名。調査内容:基本属性、褥瘡に関す

る質問 15 項目、自由記述 2 項目。データ分析方法:各項

目を単純集計、基本属性と褥瘡に対する質問はクロス集計

した。【倫理的配慮】A病院倫理審査委員会(受付番号 98)

の承認を受けた。対象者には研究目的以外には使用しない

こと、アンケートの協力は自由意思であり、参加拒否・途

中辞退、回答内容によっても一切の不利益を受けないこと

を説明した。【結果】有効回答率 80.3%。救急室看護師の褥

瘡予防対策の必要性を感じている 60.9%。年齢でみると 20

代 80.0%、30 代 100%、40 代 40.4%、50 代 72.7%。所属部署

では救急室 100%、手術室 75.0%、外来 37.5%。看護師経験

年数では 15 年未満 86.9%、15 年以上 52.2%であった。褥

瘡予防対策として、褥瘡好発部位の観察 17.0%、苦痛への

声掛け 48.7%、しわ・ずれへの意識 34.1%、体圧分散マッ

トレスの選択 21.9%、体位変換の実施 21.9%、ポジショニ

ング 21.9%、背抜きの実施 19.5%、栄養に関する採血の結

果の確認 14.6%、皮膚汚染時の清拭・洗浄の実施 46.3%、

皮膚観察結果の記録 19.5%、病棟看護師への皮膚観察結果

の申し送り 53.6%、褥瘡に関する情報収集 34.1%であった。

【考察】救急室に勤務する看護師の多くは褥瘡予防対策の

必要性を感じているが、実践につながらない。しかし、病

棟看護師への申し送りは行えており、継続した褥瘡予防対

策が必要であると考えていることが明らかになった。今後、

褥瘡の知識向上を継続できる環境を整えることが重要で

あると考える。【結論】救急室に勤務する看護師は褥瘡予

防対策の必要性を感じている。救急室看護師が標準化を図

り、褥瘡予防対策を行っていくことが重要である。

口演4-3

電話トリアージ時における看護師のストレス

調査

-緊急度判定プロトコルを使用して-

キーワード:電話トリアージ 緊急度判定プロトコル ス

トレス

○秋山 正和1),塚越 豊1),吉田 ゆかり1), 上野 栄一2)

1) 厚生連高岡病院 2) 福井大学医学部看護学科基礎看護学

【はじめに】A 病院の救命救急外来は、救急外来受診者の

対応、救急搬送患者の受け入れだけでなく、受診相談の電

話を受けて、看護師による電話トリアージも行っている。

化学療法外来通院患者、小児重症患者、妊婦・褥婦患者に

関する電話対応マニュアルはあるが、その他の電話対応マ

ニュアルはない。看護師からは「自分が言っていることが

正しいのか不安」等の訴えがあった。電話トリアージの際、

緊急度判定プロトコルを使用し、標準化することで看護師

のストレス軽減を図れると考え、有効性を検討したので報

告する。【目的】緊急度判定プロトコルを使用することで、

電話トリアージの標準化が図られ、看護師のストレスの軽

減を図れるか明らかにする。【方法】対象:研究の趣旨に同

意が得られた救命救急外来勤務の看護師19名期間:2018年

8 月 31 日~9月 13 日方法:総務省消防庁が作成した緊急度

判定プロトコルを使用し、電話トリアージ方法について学

習会を行う。プロトコル使用前後に職業性ストレス簡易調

査票(一部、自由記載あり)に基づきアンケート調査を行う。

プロトコル導入前後のアンケート結果をウィルコクソン

符号付順位検定で前後比較する。【倫理的配慮】研究の実

施については A病院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得

た。【結果】アンケート回収率はプロトコル導入前 89%

(17/19 人)、プロトコル導入後 89%(17/19 人)であった。

全項目において有意差は認めなかった。アンケート自由記

載欄には「空いている時間にプロトコル表をみることで、

主訴のアセスメント方法が理解でき、何を問診すれば良い

のか参考になる。忙しい時間帯における電話対応はプロト

コルの項目を探す時間がとられるため、使用できないこと

もある。」等の意見があった。【考察】プロトコルを使用す

ることで電話トリアージの標準化を図る事ができ、また看

護師のアセスメントの参考になれば汎用性の高いツール

になりうる。一方で、プロトコルを使用することは、限ら

れた電話対応の時間で項目を探し、数多くの問診をとるこ

とが看護師の負担になったと考える。プロトコルによって

標準化を図ったが、トリアージの質という点では個人の能

力が影響する。自己省察に加え、継続的な学習が必要であ

る。【結論】電話トリアージによるストレス軽減に向け、

業務上の配慮と共に、トリアージ施行者の能力の向上及び、

事後検証による充実が今後の課題である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演4-4

救急外来到着時の院内トリアージにおける

qSOFA と入院率の関連性の検証

キーワード:qSOFA 院内トリアージ 敗血症

○桒久保 洋子1),高野 千佳1),佐藤 博文1),須原 誠1)

1) 岩手県立中央病院

【はじめに】2016 年敗血症のガイドラインが改訂され敗血

症患者の早期認知、介入の重要性が高まり、感染症が疑わ

れる患者に対して quick Sequential Failure Assessment

score (以下 qSOFA)という敗血症スクリーニングが提案さ

れた。qSOFA は呼吸回数、意識状態の変容、収縮期血圧の

3項目を評価し2項目以上が存在した場合に敗血症を疑う。

救急では walk in 患者に対し看護師が緊急度と優先順を判

断する院内トリアージを行っている。感染症を疑う患者に

対し qSOFA を活用できるか有用性について調査したので報

告する。【目的】救急外来受診時の院内トリアージ時の

qSOFA スコア毎の入院率を調査しトリアージに活用できる

か検証する。【方法】調査期間は平成 30 年 12 月~平成 31

年 2月、救急外来 Walk in 成人患者で「発熱」など感染を

疑う患者に qSOFA を実施し記録から後方的にデータ収集し

た。バイタルサインは受診初回時のものに限定し 0~3 点

各スコアの入院率を単純集計した。診断について医師の助

言を受けた。【倫理的配慮】岩手県立中央病院倫理委員会

の承認を得た。個人情報の漏洩がないように保証した。【結

果】感染症が疑われる患者でトリアージが実施されたのは

413 名。各スコアの入院率は 0点が 13.4%(17/126)1 点が

31.9%(38/119)2 点が 75%(12/16)3 点が 100%(3/3)スコ

ア 1~3 点のうち該当した項目で最も多かったものが呼吸

回数であり 93.4%(128/137)血圧が 14.5%(20/137)意識が

7%(10/137)全トリアージを調査した結果、呼吸回数計測

実施率は 63.5%だった。【考察】qSOFA のスコア別に入院率

を調査した結果、高スコアになるほど入院率が高いことが

わかった。スコア 2 点以上では 80%以上の患者が入院して

おり、院内トリアージに qSOFA を活用すること、観察トレー

ニングを行うことで重症敗血症患者の見逃し回避や早期

発見につながる可能性がある。意識変容、呼吸回数、収縮

期血圧の 3つのうち、最もスコアに関連する項目は呼吸回

数だった。重症化、急変の前兆として早期に変化しやすい

バイタルサインは呼吸回数であり計測の重要性が示唆さ

れた。今後、トリアージ質向上のために検証を継続するこ

とが課題である。【結論】qSOFA が高スコアであるほど入院

率は高い。

口演4-5

救急外来においてリーダー制を導入した効果

-STEMI 患者のDoor-to-Door時間からの検証-

キーワード:リーダー制 救急外来 DTD

○菊谷 亜矢子1),川田 智美1),高野 勝彦1),伊藤 雪絵2)

1) 奈良県立医科大学附属病院

2) 奈良県立医科大学附属病院 臨床研究センター

【目的】近年、高齢化や国民のニーズの変化等により救急

利用が増加・多様化している。A 院の救急外来は、三次救

急を提供する高度救命救急センターと初期二次救急の各

診療科の時間外診療を提供する救急他科外来(以下救外)

がある。A 院では3年前より「土日祝 ER」が開始された。

看護体制は専従スタッフ配置、マニュアル作成、業務整理

を行いリーダー制を導入した。リーダー制の効果を検証す

る目的で ST 上昇型急性冠症候群(以下 STEMI)患者の心臓

カテーテル検査(以下 CAG)出室までの Door-to-Door 時間

(以下 DTD)を比較した。【方法】調査期間:前群 2014 年

4月1日~2016年 3月 31日後群 2016年 4月 1日~2018 年

3月31日調査期間中における施設環境やシステムの条件に

変わりはない。対象:期間中救外に受診した STEMI 患者の

うち CAG へ出室した患者。観察項目:DTD、性別、年齢、

来院方法、他院からの紹介の有無分析方法:各項目を単純

集計し、前群後群の DTD の平均時間を比較検討した【倫理

的配慮】奈良県立医科大学医の倫理審査委員会の承認を得

た。【結果】対象者数は前群 74 名、後群 76 名、平均年齢

は前群 67 歳、後群 68 歳だった。来院方法は救急搬送が前

群 91%、後群 94%だった。他院からの紹介は前群 33 件、

後群 39 件あった。DTD の平均時間は前群 39 分、後群 34 分

だった。【考察】救外における STEMI 患者への対応目標は

早期に CAG 出室することにある。そのため、救急医療チー

ムの一員である看護師は、診療を円滑に進めることができ

るよう努めなければならない。今回リーダー制を導入し、

業務マニュアルに沿って患者の割り振り、各患者の経過の

把握、物品整理等を行ってきた。CAG 出室が予測される場

合にはガイドラインに沿って診断に至るまでの検査や採

血などの補助、CAG 決定後には出室準備や家族の対応など

を円滑かつ迅速に進むように予測しながら役割分担や調

整を行った。こういったリーダーの働きや専従スタッフの

配置により機能的にチームが働き予測し行動することで、

DTD の短縮につながったと考えられる。【結論】リーダー制

導入前後でSTEMI患者のDTDを5分短縮することができた。

これはリーダー制導入の効果があったと考えられる。これ

らは救外のあらゆる急変時対応に対しても機能的かつ迅

速に対応し様々な効果をもたらすと期待できる。

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口演5-1

緊急入院となった患者・家族の退院に対する

(不安と)思い

キーワード:高齢者 急性期病棟 退院支援 不安

○築城 円1),中牟田 恵美1),吹坂 美登里1),高村 理紗1)

1) 飯塚市立病院

【はじめに】急性期病棟は治療が最優先で、早期からの退

院支援が不十分となり入院の長期化の要因となっている。

そこで、患者家族の退院に対する思いや不安を知る事が今

後の支援に繋がるのではないかと考えた。【目的】緊急入

院となった患者・家族の退院に対する不安や思いを明らか

にし看護師が支援すべき内容を検討する。【方法】調査期

間は 32 日間 12 名の緊急入院となった患者・家族へ半構成

的面接法で行い逐語録を作成、カテゴリー化し分析した。

【倫理的配慮】研究への参加、途中辞退は自由意思で対象

者に利益や不利益のない事を説明し同意を得た。また本研

究で得たデータは個人が特定しないよう配慮した。本研究

は飯塚市立病院研究倫理審査委員会の承諾を得た。【結果】

60~90歳の男女12名の患者と家族に行い、患者は9のコー

ドより 4のサブカテゴリーが抽出され 3 のカテゴリー〔病

気〕〔生活環境〕〔精神面〕で構成、家族は 26 のコードよ

り 6 のサブカテゴリーが抽出され 4 のカテゴリー〔病気〕

〔日常生活〕〔生活環境〕〔介護力〕で構成された。【考察】

〔病気〕は患者家族とも今後に対する不安が強く患者家族、

看護師間で情報を共有する事が不安の軽減及び解消に繋

がる。また医師の治療や病状などの説明は重要で、医師と

連携し退院に向けて情報を共有し支援する必要がある。

〔生活環境〕は患者は慣れ親しんだ自宅を希望するが、家

族は今後の介護困難を予測し施設入所を希望するなど、退

院先に相違が生じた為、退院に対する不安を十分に把握し

必要な情報を提供する事により両者の気持ちのすり合わ

せが必要である。〔日常生活〕は病気になった事でおこる

日常生活に対する不安で、患者家族の不安を受けとめ退院

の目標を明確化し、適切な時期に適切な情報提供を行う事

が必要である。〔介護力〕は家族の介護力の限界があり、

先行研究では「家族は自分の抱える問題を十分に認識でき

ていないため、問題解決行動がとれないことが不安に繋

がっている」と述べている。看護師は社会資源などの活用

方法について多職種と連携し知識を深め、患者家族へ情報

を提供し不安軽減に努めていく必要がある。【結論】緊急

入院となった患者・家族の退院に対する思いを知り支援す

べき事として①得た情報を患者、家族、看護師間で共有②

看護師が社会資源や制度の知識が不十分な為、多職種と早

期から連携し知識の向上に努め多角的な視点で退院支援

の実施が重要。

口演5-2

緊急入院した高齢患者の退院支援に影響を与

えた要因

キーワード:退院支援 緊急入院 高齢者

○辻 文香1)

1) 島根県立中央病院

【目的】急激な少子高齢化と医療の高度化に伴い、在院日

数の短縮化と在宅医療の充実がすすめられている。病棟の

看護師が円滑な退院支援を行うために、急性期病院に緊急

入院する高齢患者がどのような退院転機をたどったか、患

者や家族が希望する生活場所へ退院できているか、退院ま

での過程に影響した要因について明らかにした。【方法】

2017 年 7 月 1 日~2018 年 6 月 30 日の間に A病院の救命救

急科を退院した患者 259 名のうち、1 週間以内の退院や死

亡退院等を除いた 74 名を対象者として後方視的に調査し

た。調査内容は基本属性、希望の退院先と実際の退院先、

ADL、家族背景、医療処置の有無等とし、希望する退院先

に退院できたかどうかは単変量解析を行い、入院前の生活

場所に退院できたかに関する要因については多変量解析

を行った。【倫理的配慮】島根県立中央病院臨床研究・治

験審査委員会の承認を得て実施した(中臨 R18-021)。【結

果】対象者 74 名の平均年齢は 84.8±8 歳、平均在院日数

は 12.8±6 日、疾患は腎盂腎炎が 27.0%、肺炎が 16.2%

だった。希望した生活場所へ退院できた患者は 53 名

(71.6%)、希望した生活場所へ退院できなかった患者は

21 名(28.4%)だった。自宅への退院を希望していた 38

名のうち自宅へ退院できたのは 35 名(89.7%)、施設を希

望していた 34 名のうち施設への退院となったのは 25 名

(92.6%)だった。しかし、病院を希望した 2名は転院に

ならなかった。退院までの過程に影響を与えた要因として

有意差を認めたのは、在院日数、医師による病状説明の回

数、膀胱内留置カテーテル管理だった。【考察】希望した

生活場所へ退院ができない場合は、患者と家族が納得でき

るように医師が何回も病状説明の機会を設け、多職種が連

携して退院先の検討と調整を図ったため、在院日数が長く

なったと思われる。また、腎盂腎炎の入院患者は、膀胱内

留置カテーテルを留置したまま退院となるケースもある。

この場合は、膀胱内留置カテーテル管理が可能な退院先か

どうかの検討が必要となる。膀胱内留置カテーテル管理が

できないために退院支援が困難であったわけではないが、

カテーテル感染を契機に再入院となることも予測される。

今後も適切な膀胱内留置カテーテル管理が施設や自宅で

も継続して行うことができるよう、施設職員やケアマネ

ジャーと連携していく必要がある。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演5-3

急性期内科病棟における退院支援アセスメン

トシート導入による効果の検証

-日本語版 POMS を用いた感情の測定-

キーワード:急性期内科 退院調整 緊急入院 患者満足度

退院支援アセスメントシート

○赤池 茉衣1),齊藤 夕貴1),脇坂 瑛莉奈1),清水 平和1)

1) 医療法人新青会 川口工業総合病院

【はじめに】A 病院の内科急性期病棟の緊急入院患者の退

院支援遅延が問題となっていた。不安な気持ちに寄り添う

支援と患者・家族のニーズを基盤とした退院支援の質の向

上がもとめられていると考え、入院時に情報アセスメント

シートを導入し効果を検証した。【目的】緊急入院患者に

対し、退院後の生活を見据えた情報アセスメントシートを

導入することによる退院支援の効果と感情の変化を検証

する。【方法】内科急性期病棟へ緊急入院した 65 歳以上の

患者を無作為に非導入群、導入群各 20 名選出。導入群は

入院後 72 時間以内に情報アセスメントシート(退院先の

意向、在宅環境、医療行為、介護保険)を使用し初回面談

を実施。以後最低1回以上面談。各群退院時に日本語版POMS

短縮版下位尺度改良版により感情の変化の調査を行う。分

析はマンホイットニーU検定。【倫理的配慮】研究の主旨お

よび調査協力は自由意思に基づくものであること、調査結

果により治療や看護に不利益を講じないこと、公表時個人

が特定されないことを説明し同意を得た。倫理委員会の審

査・承認を得て実施。【結果】在院日数の中間値 0.5 日短

縮。感情の変化は気分の張詰 20%、緊張・落ち着かない 5%、

抑鬱・怒り 20%、疲労 30%減少。不安 5%、活気 25%増

加。男女回答内容別では、男性におけるネガティブな感情

が女性の 1/4 だった。【考察】情報アセスメントシートを

導入したことで入院後早期の説明や退院後の生活に必要

な社会資源導入や物品の準備などが事前に整える環境を

作れたことにより、退院間近に焦りが減り、疲労や緊張の

軽減に繋がることがわかった。入院直後から退院後の生活

目標が明確となり、どのようなことを考えながら治療を受

けていけば良いのかわかり『活力がある』=『生きる活力』

として改善したと考察する。しかし、不安を掻き立てる要

因にも成りかねないため個別対応も必要。内科急性期病棟

では複合的要因での入院が多く完治ではなく軽快での退

院が多い。平成 29 年度国民生活基礎調査の 65 歳以上の世

帯の女性の割合は約 8割となり女性の自立性や役割の高さ

が不安は減少されず導入による差が生じなかったものと

考える。【結論】急性期内科病棟における緊急入院患者に

対し、入院時より「情報アセスメントシート」を使用する

ことは患者・家族の意向、それに必要な調整の選択が明確

化できネガティブな感情を減少でき、在院期間の短縮が図

れる。

口演5-4

人工股関節全置換術後、脱臼した患者の看護を

振り返る

-オレムのセルフケア不足理論を用いて―

キーワード:人工股関節全置換術後の脱臼 オレムのセル

フケア不足理論 日常生活指導

○浦田 征枝1),小泉 直子1)

1) 八戸平和病院

【はじめに】人工股関節置換術(以後 THA とする)は全国

で年間10万件以上行われ、そのうち脱臼する患者は1~5%

である。A 病院でも THA 術後の日常生活指導を行っている

が、脱臼するケースが 1~2 件/年ある。そこで指導内容や

指導が妥当か振り返ることにした。【目的】事例を通して

THA 後の生活指導の妥当性について振り返る。【方法】期間

は平成 X年 1~11 月で、データ収集方法は看護記録・リハ

ビリ記録から抽出し、分析方法はオレムのセルフケア不足

理論を用いる。<事例紹介>N 氏 80 代女性、認知症なし、

シルバーカー歩行<病名>右変形性股関節症<入院期間

>平成 X 年 1 月下旬~3 月下旬<経過>1 月下旬に右 THA

を施行した。3 月上旬に靴下の着脱動作で右人工股関節を

脱臼、徒手整復しリハビリ再開、3 月下旬シルバーカー歩

行で退院となった。【倫理的配慮】患者・家族へ参加は自

由意思とし、研究の主旨、個人が特定できないように配慮

することを伝え同意を得た。また研究を始めるにあたり A

病院倫理委員会の承認を得た。【結果】各時期の N 氏の看

護を振り返った。全代償期では術後 3日目にパンフレット

を用い脱臼予防指導を行った。側臥位から一人で仰臥位に

戻る時に脱臼肢位になっている事があったため、術後 5日

目まで外転枕を装着し全介助で体位交換した。一部代償期

では、ズボンの着脱の介助や車椅子移乗の見守りをした。

2 週目から靴下の脱着が許可されたが、動作のくせなどの

情報共有や観察・指導が不十分で脱臼に至ってしまった。

指示・教育システム期では、N 氏は一度脱臼したことで生

活動作に不安を感じ看護師へ依存的になる場面があった。

そこで N氏の思いを聴いて振り返りながら指導やリハビリ

をすすめていき、前向きに取り組めた。【考察】今回 N 氏

への看護を振り返り、一部代償期で生活習慣をふまえた指

導や各時期のケアの把握が不足していたことが分かった。

オレムによれば「看護は患者のセルフケア能力の回復を妨

げず促すもの」と述べている。脱臼を機に一つ一つの動作

を改めて確認し、ケアや指導をしていったことで、退院に

むけての自信に繋げることができたと考える。【結論】1.

各時期のセルフケア不足の把握や能力向上に向けての働

きかけを明らかにできた。2.リハビリスタッフと情報交換

し、患者の能力や長年の生活習慣を把握したうえで指導を

する必要があった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演6-1

開頭手術を受ける患者の体験から学ぶ看護支援

キーワード:開頭手術 術前オリエンテーション 患者の

ニード

○栗田 茂子1),中村 祥英1)

1) 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

【はじめに】入院日数の短縮化に伴い、術前オリエンテー

ションは身体的な準備が主体であり精神的準備にまで及

んでいないのが現状である。開頭手術を受ける患者が体験

したことを明らかにすることで、開頭手術に臨む患者を支

えるための術前オリエンテーションに対する示唆を得ら

れると考える。【目的】開頭手術を受ける患者の体験を明

らかにする。【方法】質的記述的研究の分析方法を参考に、

半構造化面接法による研究参加者が発する自然な文脈を

壊さないよう帰納的に分析を行った。分析の全過程におい

て質的研究の経験のある研究者のスーパーバイズを受け、

結果の確証性の担保に努めた。【倫理的配慮】本研究は、

研究実施施設の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て

行った。臨床研究倫理委員会の承認が得られた説明文書を

用いて説明し、十分理解を得た上で、研究に参加すること

について本人の自由意思による文書同意を得た。また、研

究に参加しない場合でも不利益を受けることはないこと

を説明した。【結果】未破裂脳動脈瘤で開頭手術を受けた

30-40 代の女性 2 名が研究参加者となった。開頭手術を受

ける患者の体験に関するコードは計 177 であった。これら

のコードは 28 のサブカテゴリ―に分類され、最終的に「未

知のことに対する恐怖」「手術決断後もゆらぐ気持ち」「医

療者からの気づかいと情報提供が導く安心感」「自分の感

情とずれる家族の反応」「比較して捉える術後の身体的苦

痛」「術後に生じた曖昧な認知」「術後に変化した容姿への

許容と期待」「死への恐怖を乗り越えた安堵感」の計 8 カ

テゴリ―に集約された。【考察】患者は脳外科領域特有の

術後合併症に怯え、瘤破裂という生命が脅かされる恐怖と、

何が起こるのか想像もつかない不安のなか、看護師の細や

かな関わりと情報提供が不安を解消し手術に対して前向

きになっていた。しかし全て解消されるわけでなく、看護

師は患者の不安や恐怖の重さを忘れることなく看護を継

続していくことが重要であると考える。【結論】開頭手術

を受ける患者は侵襲の大きい手術を決断後も情報に一喜

一憂し、不安や恐怖と闘いながら看護師との関わりから安

堵感を得て手術に臨んでいることが明らかになった。今後、

明らかになった体験を踏まえて、患者を支えるための術前

オリエンテーションを検討していくことが求められる。

口演6-2

術前看護外来による不安軽減の効果

-新版 STAI を用いた性別での評価-

キーワード:術前看護外来 不安 看護 手術 性別

○宗和 守1)

1) 大阪府済生会富田林病院

【はじめに】A 病院は平成 28 年 4 月より術前看護外来(以

下看護外来)を実施しているが、これまでに看護外来の不

安軽減の研究はなく、看護外来による不安軽減の効果を新

版 STAI で調査した。【目的】看護外来受診患者の不安軽減

の効果を明らかにする。【方法】対象は看護外来実施患者

83 名(以下 A 群)と未実施患者 66 名(以下 B 群)、期間は

H29.8.1~H30.10.31 とした。A・B両群術前訪問前(以下術

前)と術後 3日目(以下術後)、A群は看護外来前(以下外来)

にも質問紙に回答してもらい、分析は性別毎に A群外来・

術前・術後の得点を一元配置分散分析、有意差があれば

Bonferroni の補正、両群背景と術前・術後の得点を対応の

ない t検定、B 群術前・術後の得点を対応のある t検定(有

意水準 5%未満)を行った。【倫理的配慮】対象者に本研究の

趣旨、公表、個人情報の保護、参加は自由意思で参加の有

無による不利益は生じないことを紙面で説明し同意を得

た。大阪府済生会富田林病院の看護倫理審査会で承認を得

た。本研究で開示すべき利益相反はない。【結果】A群回収

61名(73.5%)有効回答60名(98.4%)男 35名(58.3%)女 25名

(41.7%)。B 群回収 66 名(100%)有効回答 60 名(90.9%)男 34

名(56.7%)女 26 名(43.3%)。両群背景と特性不安に有意差

はなし。状態不安の平均得点は A群外来男 47.3 点、女 46.6

点、術前男 42.8 点、女 45.0 点、術後男 43.0 点、女 38.5

点、B 群術前男 42.4 点、女 47.6 点、術後男 41.8 点、女

40.8 点。A群女性は外来より術後で有意に低下(P=0.005)、

B 群女性は術前より術後で有意に低下(P=0.04)。【考察】A

群女性の外来-術後間と B群女性の術前-術後間に有意差が

見られ、女性の術前と術後の AB 群間に有意差がなかった

ため、女性患者では看護外来と術前訪問が術後の不安軽減

に有用と考える。また A 群女性の術前-術後間に有意差が

なかったため、看護外来が術前の不安軽減に有用と考えら

れる。山中は「女性は不安を異物として排除しようとする」

と述べており、女性患者には不安を具体的に明確にできる

ような外来での説明が必要である。【結論】女性患者は術

前看護外来受診により手術決定時に比べて術後の不安が

軽減した。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演6-3

周術期管理チームの介入による術前不安の変

キーワード:周術期管理チーム 術前不安 周術期外来

○近藤 寛1)

1) 社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院

【はじめに】周術期管理チームが患者に術前説明を行う術

前外来において不安を測定する尺度を用いた先行研究が

ない。【目的】術前説明前の患者の不安や実態を明らかに

する。その後、周術期管理チームの術前説明により患者の

不安が変化したか否かを検証し、関連要因についても検討

する。【方法】A病院周術期支援センター術前準備外来を予

約し、認知機能に問題なく自己記載ができる 18 歳以上の

患者を研究対象とした。周術期管理チームが術前説明を行

う前後に研究対象者より STAI-JYZ 記述式質問用紙の回答

を得た。参加同意を得た 50 名を分析対象とした。研究対

象者の評価項目〈性別〉〈同居家族〉〈外来付添〉〈がん〉〈手

術経験〉〈米国麻酔学会術前状態分類:以下、ASA-PS〉〈麻

酔方法〉〈術前説明時間〉〈客観的栄養指標〉〈サルコペニ

ア〉と説明前と説明後における STAI-JYZ 状態不安得点(以

下、状態不安得点とする)の平均値の差を Wilcoxon の符号

付順位検定で行い、不安の変化と関連要因について検討し

た。【倫理的配慮】済生会横浜市東部病院倫理審査委員会

の承認を得た。また対象者から研究施設ならびに発表に関

する自由意思による承諾を得て、対象者個人が特定されず、

不利益が生じないよう配慮を行った。【結果】1.対象者全

体の説明前後の状態不安の平均値は説明前 38.9(SD6.44)

説明後 39.6(SD6.51)で術前説明により不安の程度は高く

なった。状態不安段階の割合は、説明前後で変化はなく、

低不安 42 名(84%)、標準的不安 6名(12%)、高不安 2名(4%)

で研究対象者の多くは、不安の程度が低かった。2.評価項

目と不安との関連性については、〈ASA-PS〉class2 の群と

その他の評価項目についても状態不安の平均値の差に有

意差が認められた。【考察】〈ASA-PS〉以外の評価項目は、

不安との関連性について示唆されなかった。〈ASA-PS〉で

は、周術期におけるリスクが高い場合に、不安の程度が高

くなることが示唆された。不安の程度が高くなったことに

ついては、周術期管理チームが患者個々の周術期における

リスクについて情報提供と相談ごとに答えた結果、周術期

を乗り越える上での心理的備えを反映した結果であるこ

とが示唆された。【結論】術前外来での周術期管理チーム

による術前説明は、不安を抱える対象に対し、有効であっ

たのではないかと考える。

口演6-4

消化器外科における術前臍処置の現状に関す

る調査

キーワード:消化器外科 臍処置 手術部位感染

○久保 健太郎1),西口 幸雄2),日月 亜紀子1),前田 清1)

1) 大阪市立総合医療センター 2) 大阪市立十三市民病院

【はじめに】消化器外科手術では手術部位感染を予防する

目的で、術前に臍垢を取り除く臍処置を実施することが一

般的である。しかし成書には記載がなく、現状は明らかで

ない。【目的】腹腔鏡手術を実施している施設での、術前

臍処置に用いる製剤や処置方法の現状を明らかにする。

【方法】2018 年 9 月に、全国で腹腔鏡手術を実施している

100 施設の医師または看護師を対象に、無記名自記式質問

紙調査を実施した。調査内容は回答者の属性、臍処置に用

いる製剤や処置方法、評価方法などである。【倫理的配慮】

大阪市立総合医療センター臨床研究倫理委員会において

承認を得た。対象者から自由意思による承諾を得て、不利

益を回避するための配慮を実施した。【結果】64 施設(回

収率 64%)、全国 21 都道府県、施設規模 99 床以下から 1000

床以上の外科・泌尿器科から回答が得られた。臍処置を実

施しているのは 63 施設(98.4%)で、実施者は看護師が

62施設(96.9%)。マニュアルがある施設は16施設(25%)。

臍処置に使用する製剤はオリブ油が 54 施設(84.4%)で、

他にはベビーオイル、温水、石鹸水など計 7剤あった。製

剤の 1回使用量、浸す時間および実施回数については施設

間で違いがある。一方実施時期(手術前日)・使用する器

具(綿棒)は施設間で違いが少ない。臍に直接製剤を滴下

(21 施設)するか、綿棒などに塗布(23 施設)するか方

法は分かれた。手術直前に臍垢がきれいに取れておらず臍

処置を再実施している頻度は 1~50%で平均 13%である。

判定基準は無しが 56 施設(87.5%)で、有る施設は Wチェッ

ク、見た目、綿棒への付着物で判定していた。きれいの判

断基準は、臍垢が無いが 41 施設(64.1%)、あっても細か

い臍垢の場合が 18 施設(28.1%)である。現行で臍垢が

完全に除去できていると感じている施設は 9施設(14.1%)

である。【考察】術前の臍処置は施設規模関係なく全国の

病院で行われているが、マニュアルがある施設は少ない。

製剤は主にオリブ油が使われているが、方法は各施設独自

の方法で行われている。約 6割の施設で手術直前に再実施

されており、その頻度は 10 人に 1 人以上である。臍垢が

完全に除去できている施設は約 14%である。多くの施設で

臍処置の判定基準がない。【結論】有効な臍処置方法の検

証と、判定基準を含めた方法の標準化が必要であると考え

る。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演6-5

経皮的心筋焼灼を受ける患者の不安内容とそ

の関連要因

キーワード:アブレーション 不安 要因

○齋藤 綾1),山本 倫子1)

1) 東京都立広尾病院

【はじめに】経皮的心筋焼灼術(以下アブレーション)を

受ける患者が術前に感じている不安を明らかにすること

を目的に、昨年インタビューを行った。カテーテル治療や

麻酔に関する不安を感じていることが明らかになり、カ

テーテル治療や手術経験の有無によって不安の内容が異

なることが示唆された。【目的】アブレーションを受ける

患者の不安内容と、その不安に関連している要因を明らか

にすること。【方法】アブレーションを受ける 20 歳以上の

患者を対象に、作成した自記式調査表を配布。アブレー

ション前に調査表の記載をしてもらい、データを収集した。

χ²検定を行い、さらに有意水準 p<0.05 未満のものには

残差分析を行った。【倫理的配慮】広尾病院倫理委員会で

承認を受けた。対象者には同意説明書を用い、口頭で研究

への参加は自由意思であること、参加の可否によって治療

に不利益は生じないことを説明し、同意を得た。個人の特

定を防ぐため調査票は匿名式とした。【結果】調査票配布

数 85 部、回収率 100%。内訳は男性 67%、女性 31%で、

手術又はカテーテル検査の経験がある対象者は 71%で

あった。明らかになった不安内容と関連要因は、麻酔に対

する不安では、年齢(p=0.033)、手術経験の有無(p=0.036)、

脊椎麻酔の経験の有無(p=0.046)が有意差を認めた。アブ

レーションの治療結果に対する不安では、年齢(p=0.040)、

全身麻酔の経験の有無(p=0.048)が有意差を認めた。アブ

レーションの合併症に対する不安では、全身麻酔の経験の

有無(p=0.045)が有意差を認めた。【考察】社会や家庭で

様々な役割を担う成人期の患者がアブレーションを受け

ると、その役割を果たせず精神的に苦痛を感じること、そ

してカテーテルや手術の経験が少ないことが、麻酔や治療

結果の不安に影響したと考える。逆に、老年期に向かうに

つれて手術やカテーテルの経験が増え、麻酔の状況や治療

結果の想像がし易く不安軽減になる一方で、何度もアブ

レーションを経験することが、「今度こそ再発せず治るの

か」との思いに繋がり不安に影響すると考える。【結論】

アブレーションを受ける患者の不安内容とその関連要因

として、麻酔に対する不安は年齢と手術経験の有無及び脊

椎麻酔の経験の有無、治療結果に対する不安は年齢と全身

麻酔の経験の有無、合併症に対する不安は全身麻酔の経験

の有無が関連を認めた。

口演7-1

ICUにおける末梢静脈カテーテルの静脈炎発生

率の調査と、留置期間の検討

キーワード:静脈炎 末梢静脈カテーテル 留置期間

○橋本 尭之1),藤田 裕幸1),長谷 祐里1), 末成 真梨子1),秋山 那菜子1),橋本 彩香1), 田仲 みどり1)

1) 神戸大学医学部附属病院

【はじめに】A 病院 ICU では末梢静脈カテーテルの交換方

法として、留置期間 4日までの定期交換と、血管確保が困

難な場合などは留置期間を延長し、静脈炎や感染徴候の出

現など臨床的に交換が必要な時に行っている。静脈炎を起

こす一因として留置期間や投与薬剤が挙げられているが、

留置期間による静脈炎発生率の報告は一般病棟で僅かに

ある程度で明らかでないため、本研究を実施し検討試料と

した。【目的】末梢静脈カテーテルの静脈炎発生率を調査

し、留置期間を検討するため。【方法】後ろ向き観察研究

にて、2018 年 4 月~9月までの ICU 入室患者(小児は臨床

的に必要な時のみ交換とされているため、成人のみ)を対

象に、患者基本情報(年齢、性別、入室日、退室日)、カ

テーテル関連情報(挿入日、抜去日、留置期間、静脈炎ス

コア(輸液看護師協会輸液看護師基準 2006)+2以上を静

脈炎の定義、静脈炎発生日、投与薬剤内容)の情報を取得

し、次の方法で分析した。末梢静脈カテーテルの留置期間

が 4日以内とそれ以上を比較し、フィッシャーの直接確立

法にて静脈炎発生率の有意差を検定した。有意水準は P<

0.05。【倫理的配慮】神戸大学医学部付属病院倫理委員会

の承認を得た。委員会で承認の得られた情報公開文書を院

内に掲示し、研究対象者に情報公開、拒否できる機会を保

障した。また、データは個人が特定できないように暗号化

した。【結果】調査期間内の延べ留置日数は 3306 日、ライ

ン本数は 1491 本、平均留置日数は 2.21 日、静脈炎発生件

数は 19 件であった。末梢静脈カテーテルの留置期間 4 日

以内とそれ以上では、静脈炎発生率は P=0.141 であった。

静脈炎を起こした内容としては、最も多かったのはロック

ルートで、次に Ca 拮抗薬、アミノ酸輸液であった。【考察】

留置期間による静脈炎の発生率は、4 日以内とそれ以上を

比較しても有意差はなく、定期交換として 4日以上でも可

能であると考えられる。留置期間の上限としては、輸液

ルートの交換は CDC ガイドライン 2011 では「96 時間以上

の間隔を空け、7日以内の間隔で交換する」とあり、カテー

テル入れ換え時のルート交換が推奨されており、これらを

含め 7日以内の検討とする。また、静脈炎の早期発見は重

要であり、挿入部および留置されている静脈の定期的かつ

細やかな観察を行うことが大切である。【結論】定期交換

の留置期間は 7日以内での検討とする。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演7-2

人工呼吸管理中の患者の声にならないニーズ

を捉えた看護

-せん妄状態から離脱できた一事例のケアリ

ング理論を用いての検討-

キーワード:ICU 人工呼吸管理 ケアリング せん妄

○大西 美千代1),中尾 弥生1),亀井 智美1),松本 亜矢子1),八田 愛理1),辻 千芽1)

1) 金沢大学附属病院

【はじめに】人工呼吸管理中の患者は近年推奨される浅め

の鎮静管理の下、生命維持優先の環境の中で様々な苦痛を

体験している。このような患者のニーズを捉え苦痛を軽減

することは重要な課題である。側にいて根気よく関わるこ

と、患者を全人的に理解しようとすることに基づいた看護

が苦痛を軽減し、せん妄状態からの離脱に繋がったと考え

られる経験をした。これを振り返り ICU でのケアリング実

践を見出し、質の向上に寄与したいと考えた。【目的】人

工呼吸器管理中の意思疎通困難な患者がせん妄状態から

離脱し危険行動を回避できた経験を振り返り、効果的で

あった看護実践を明らかにする。【方法】デザイン:事例

研究、対象:A 氏 60 歳代男性。看護記録から A 氏の言動、

看護師のアセスメント、看護介入を抽出、状況を複数の看

護師で想起、内容整理し、ケアリングの基礎となるワトソ

ンの 10のケア因子に沿って評価・検討した。【倫理的配慮】

所属施設の医学倫理審査委員会の承認を受けた。対象者の

家族に研究主旨と同意しない場合も不利益は生じないこ

と、プライバシー厳守を説明し同意を得た。【結果】10 の

ケア因子全てが実践されていた。2 年前に肺癌に左肺全摘

術施行、今回気管支瘻からの気道出血にコイル塞栓術施行

され、右側臥位禁止・床上安静指示の下で人工呼吸管理が

続いた。入室 9 日目に気管切開術施行後、浅鎮静に移行、

ベッド柵を叩く、動脈圧ライン固定の包帯を噛み切ろうと

する、何か訴えようとする行動が出現したが、複数の医療

者が関わっても訴えがわからない状態が続いた。看護師は

じっくりと関わる中で、患者背景や「ヒロポ、麻、死」の

筆談と表情から、自身の感受性や知識を駆使し患者の気懸

りを推察しており、<人道的―利他的な価値体系の形成>

<自己と他者に対する感受性の育成>が基盤となってい

た。看護師は「死」の訴えに一瞬躊躇するが、患者の状況

に身を置き、気道出血の恐怖・先行きへの不安といったネ

ガティブな感情を感じ取り逃避せず語りかけたことで、患

者は落ち着いて過ごせるようになり、これは<肯定的感情

と否定的感情の表出の促進と受容>に該当し<信頼―希

望の教え導き>に繋がっていた。【考察】感受性を研ぎ澄

まし否定的感情にも目をそらさずに向き合ったケアリン

グ実践が患者に安心感をもたらし、せん妄状態からの離脱

に繋がったと考える。【結論】今回の事例ではケアリング

の実践が効果的であった。

口演7-3

ICU・CCU へ再入室となった患者要因の分析

キーワード:ICU・CCU 再入室 患者要因

○西山 久美江1)

1) 東海大学医学部付属八王子病院

【はじめに】ICU・CCU の退室決定は、患者の全身状態安定

後に主治医の許可のもと転棟先とも協議し決定している

が、再入室はある程度の割合で生じている。【目的】ICU・

CCU 退室後に再入室となった患者の要因について明らかに

する。【方法】2016 年 4 月 1 日~2017 年 9 月 30 日に ICU・

CCU へ再入室した 59 例に後方的診療録調査を実施。【倫理

的配慮】当院臨床研究審査委員会の承認を受け実施。【結

果】同一入院期間中の再入室は 59 例、このうち 4例は再々

入室していた。再入室患者のうち 12 例は初回入室時に手

術が決定した予定の術後入室であった。この 12 例を除い

く 47 例中、48 時間以内の再入室は 3 例、120 時間以内は

13 例であった。診療科は、脳外科、消化器外科、心臓血管

外科で 6 割以上を占め、再入室経路は、病棟 78%、HCU22%

であった。再入室理由は、予定手術後 20%、緊急手術後 40%、

特殊治療 2%、看取りでの個室利用 7%、酸素化の悪化など

呼吸に関連した理由 14%、血圧低下など循環に関連した理

由 14%、意識障害 3%であった。入室期間は、初回、再入室、

再々入室で有意差はなかった(対応のない一元配置分散分

析)。再入室中の死亡は 29%で、再入室経路と死亡との関係

は、HCU からの患者で有意に死亡が多かった(χ2乗検定)。

【考察】脳外科、消化器外科、心臓血管外科は、術侵襲の

大きさからも術後合併のリスクは高く、再入室率が高いこ

とに影響していたのではないかと推察される。再入室理由

は、術後のトラブルで緊急手術に至った症例が最多で、続

いて初回入室時に予定された手術後、喀痰の増加や酸素化

の悪化、血圧低下など呼吸や循環に関連していた。退室後

も継続して、呼吸や循環のバイタルサインに注意する共に、

患者に起こりうるリスクをアセスメントし、観察やケアを

強化していくこと、さらに、退室時には、懸念事項をしっ

かり引き継ぎ、患者管理を継続強化してもらうことが重要

である。クリティカルケア領域の CNS・CN へのコンサルテー

ション、RRT ラウンド時の患者のフォローなど、早期に対

応していくことも重要である。【結論】ICU・CCU の再入室

患者の要因は、緊急手術後が最多で、次いで初回入室時に

計画された予定手術後、呼吸や循環に変動をきたしての要

因であった。ICU・CCU への再入室低減のためには、退室後

の患者管理およびフォローが重要である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演7-4

若年補助人工心臓(VAD)装着患者のセルフケア

獲得に対する看護実践

キーワード:若年患者 補助人工心臓 セルフケア 症例研

○栗林 光莉1),小林 真央1),佐藤 杏奈1), 武田 明子1)

1) 秋田大学医学部附属病院

【はじめに】重症心不全の根治療法である心臓移植の平均

待機日数は 1174 日と長期待機が必要あり、移植待機期間

Ventricular Assist Device(VAD)装着患者は機器の管理

方法の習得、体調管理など長期にわたるセルフケアが必要

となる。今回、体外式 VAD が装着されセルフケア獲得に難

渋した症例を経験したため報告する。【目的】若年 VAD 装

着患者のセルフケア獲得への看護実践を、植込式への変更

を控える体外式 VAD 装着患者でセルフケア能力獲得に難渋

した一例から考察する。【方法】対象は拡張型心筋症によ

り心臓移植適応となり体外式 VAD 装着に至った 20 歳代前

半の患者 A氏。カルテ記載およびカンファレンス記録、患

者本人のセルフケア獲得上への思いや困難感について発

言の聞き取りと看護師の A氏との関わりについての発言か

ら看護実践の効果について検討した。【倫理的配慮】本研

究の意図、協力は自由であり研究に協力しない場合でも不

利益がないことを患者本人とキーパーソンに説明後、署名

での同意を得た。本研究は所属施設倫理審査委員会の承認

を得て行った。【結果】セルフケア獲得のため、自らバイ

タルサインや体重等に注意できるように体調管理表を作

成した。始めは看護師から声掛けをうけ記載していたが、

徐々に自分から記載するようになった。しかし記入忘れや

体重が増加し心不全が悪化した時期でも間食を希望する

など、セルフケアの重要性について理解不足あり、状態が

悪化したときの振り返りと心不全指導を行った。更に日々

の身体の状態が正常か異常か自ら考えられるよう体調管

理カードを作成し、バイタルサインや体重が正常か異常か

自身で判断できるように援助した。【考察】体外式 VAD 装

着によるボディーイメージの変容や生活の変化、入院長期

化によるストレスが大きく、セルフケア実施で看護師に依

存的になっていたと考える。移植待機期間の長期にわたる

療養生活を見据えセルフケア能力を獲得するために治療

に前向きに継続することができるように支援する必要が

あった。体外式 VAD 装着当初は日常生活を看護師に依存す

る様子があったが、患者の行動変容を促す看護実践により

セルフケアの必要性を少しずつ理解し状態を受容できた

と考える。【結論】若年 VAD 装着患者のセルフケア獲得に

ついて、患者とともに継続できる方法を考え導入したこと

は患者の自己効力感を高めることに繋がったと考える。

口演8-1

外来通院中の虚血性心疾患患者における認知

的要因とセルフケア能力の検討

-心臓リハビリテーション参加の有無による

比較- 第 1 報

キーワード:虚血性心疾患患者 心臓リハビリテーション

自己効力感 ヘルスビリーフ セルフケア能力

○富田 絢香1),増田 誠一郎1)

1) 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

【はじめに】虚血性心疾患等の慢性疾患の管理には,患者

の健康行動に対する自己効力感やヘルスビリーフ等の認

知的要因,セルフケア能力が重要である。包括的心臓リハ

ビリテーション(以下,心リハ)は二次予防として有効で,

治療効果と同時に健康管理における行動変容の動機づけ

となり得るが,患者の認知的要因やセルフケア能力との関

連は十分に明らかになっていない。【目的】外来通院中の

虚血性心疾患患者の健康行動に対する認知的要因とセル

フケア能力について,心リハの参加との関連を明らかにす

る。【方法】調査期間:2018 年 6 月~10 月。対象者:1 基

幹病院の循環器外来に通院中の心リハ群 31 名,非心リハ

群 36 名。データ収集方法:自記式質問紙調査,診療録調

査。調査項目:年齢,性別,同居者,就業,重症度,心肺

運動負荷試験(CPX)の回数,退院からの日数,在宅での運

動継続,慢性疾患患者の健康行動に対するセルフエフィカ

シー尺度,自作のヘルスビリーフ尺度,慢性病者のセルフ

ケア能力を査定する質問紙。分析方法:χ2 検定,

Mann-WhitneyU 検定。統計解析は SPSSver.25 を使用,有意

水準は 5%とした。【倫理的配慮】対象者に研究の概要,個

人情報の保護,研究参加は自由意思であることの保証,研

究結果の公表等について説明し同意を得た。既存の尺度は

開発者に使用許可を得た。本研究は静岡県立総合病院臨床

研究倫理審査の承認を得た(SGHIRB#2018006)。開示すべき

利益相反関係はない。【結果】非心リハ群では就業者が多

く(p=0.044),CPX の回数は少なく(p<0.001),在宅での

運動継続が少なかった(p=0.013)。心リハ群では,疾患に

対する対処行動の積極性(p=0.028),疾病の重大性の認識

(p=0.014),健康に関心を向ける能力(p=0.013)が高かっ

た。【考察】心リハ群では,患者が心リハプログラムを通

して疾病の重大性を再認識したり,自己管理への関心や積

極性を高めていると考えられる。一方で,非心リハ群は日

常生活の中で運動療法を継続できずにいると考えられる。

【結論】心リハを受けることは,疾患に対する対処行動の

積極性,疾病の重大性の認識,健康に関心を向ける能力が

高いことと関連していた。患者が虚血性心疾患を管理して

いくために,心リハを受けたり,医療者を活用できるよう

支援する必要がある。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演8-2

外来通院中の虚血性心疾患患者における認知

的要因とセルフケア能力の検討

-心臓リハビリテーションの参加・不参加別に

みた患者の自己効力感の影響要因- 第 2 報

キーワード:虚血性心疾患患者 心臓リハビリテーション

自己効力感 ヘルスビリーフ セルフケア能力

○増田 誠一郎1),富田 絢香1)

1) 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院

【はじめに】虚血性心疾患の自己管理には患者の自己効力

感が重要である。二次予防や患者の自己効力感向上に包括

的心臓リハビリテーション(以下,心リハ)が有効だが,

全ての患者が受けられるわけではない。そこで心リハ参

加・不参加別に患者の健康行動に対する自己効力感の影響

要因を明らかにし,看護支援を検討した。【目的】外来通

院中の心リハ患者,非心リハ患者各々の健康行動に対する

自己効力感の影響要因を明らかにする。【方法】調査期間:

2018 年 6 月~10 月。対象者:1基幹病院の循環器外来に通

院中の心リハ群 31 名,非心リハ群 36 名。データ収集方法:

自記式質問紙調査,診療録調査。調査項目:<共変量>年

齢,性別,同居者,就業,重症度,心肺運動負荷試験(CPX)

の回数,退院からの日数,在宅での運動継続,<要因>自

作のヘルスビリーフ尺度,慢性病者のセルフケア能力を査

定する質問紙,<アウトカム>慢性疾患患者の健康行動に

対するセルフエフィカシー尺度。分析方法:重回帰分析。

統計解析は SPSSver.25 を使用,有意水準は 5%とした。【倫

理的配慮】対象者に研究の概要,個人情報の保護,研究参

加は自由意思であることの保証,研究結果の公表等につい

て説明し同意を得た。既存の尺度は開発者に使用許可を得

た。本研究は静岡県立総合病院臨床研究倫理審査の承認を

得た(SGHIRB#2018006)。開示すべき利益相反関係はない。

【結果】心リハ群の自己効力感の影響要因は,支援してく

れる人をもつ能力(β=0.81,p<0.001),年代(β=0.32,

p=0.008),就業(β=-0.24,p=0.038)であった。非心リハ

群では,生活の中で続ける能力(β=0.59,p<0.000),重

症度(β=-0.27,p=0.037)であった。【考察】心リハ患者

は通院頻度が高く,医療者の支援を得て自己効力感が高ま

ると考えられる。しかし通院と仕事の両立の困難性は自己

効力感の低下を招く。一方非心リハ患者では,自己の生活

の中で継続可能な治療・療養を見出すことで自己効力感が

高まるが,重症度が高いと再発作の不安や心不全症状の出

現等により自己効力感の低下を招く。【結論】心リハ患者

の自己効力感には支援してくれる人をもつ能力,年齢,就

業が影響する。非心リハ患者では生活の中で続ける能力,

重症度が影響する。各々の治療・療養の状況に応じた働き

かけが重要である。

口演8-3

在宅における術前呼吸練習の実態から見えた

課題

-新たにティッシュペーパー呼吸練習を導入

して-

キーワード:術前呼吸練習 ティッシュペーパー呼吸練習

呼吸予備能力

○飯島 彩夏1),多田 知世1),根本 仁見1)

1) 水戸赤十字病院

【はじめに】A 病院消化器外科では手術が決定した段階で

術前呼吸練習を指導している。在宅での患者の呼吸練習実

施状況より、従来の呼吸練習は効果が目に見えず練習実施

の動機づけとなりにくい方法ではないかと考えた。先行研

究では、術前呼吸練習が呼吸予備能力の向上に有効である

としている。そこで、術前呼吸オリエンテーションを見直

し、簡単にでき呼気が可視化できるティッシュペーパー呼

吸練習を導入することで、患者自身の主体的な呼吸練習の

実施に働きかけやすいと考え本研究に取り組んだ。【目的】

1.新たな術前呼吸オリエンテーションとティッシュペー

パー呼吸練習を導入し、在宅での呼吸練習の実施状況とそ

の要因を明らかにする。2.ティッシュペーパー呼吸練習は、

呼吸予備能力の向上と患者の主体的な練習実施の動機づ

けとなったかを明らかにする。【方法】A病院消化器外科に

おいて全身麻酔で手術を受ける患者 30 名に、新たに作成

した呼吸練習法のパンフレットを使用し術前呼吸練習を

指導する。術前呼吸オリエンテーション時と入院時の

ティッシュペーパー浮遊時間を測定し、呼吸練習日誌から

実施状況を確認、加えてアンケート調査と半構成的面接を

行う。【倫理的配慮】水戸赤十字病院看護研究倫理審査委

員会より承認を得て実施した。協力依頼に対しては、自由

意思によるものであり拒否による不利益がないことを保

障した。途中で辞退できることも説明し、研究同意書に研

究同意撤回書を添付した。【結果】新たな呼吸練習を実施

した人は、従来の呼吸練習と比較し 17%増加した。また、

ティッシュペーパーの浮遊時間の差の平均は+2.7 秒±4.2

秒で、入院時が有意に長くなった。アンケートより、呼吸

練習の必要性や方法を理解した人が 90%以上いた。さらに、

ティッシュペーパーを見て上手になっているとわかった、

面白さを感じながら行うことができたという意見があっ

た。【考察】呼吸練習の意義を視覚的に捉えることで患者

の理解に繋がったと考える。さらに、新たな呼吸練習は興

味・関心がもちやすく実施状況の記録により自らの実施状

況が可視化され、主体的な呼吸練習の実施に繋がったと考

える。【結論】1.新たな呼吸練習と術前呼吸オリエンテー

ションは、患者自身の意欲を引き出すことができ呼吸練習

実施率が 17%増加した。2.新たな呼吸練習の方法は、簡易

的で効果や上達を感じることができ呼吸予備能力の向上

に繋がった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演8-4

術後疼痛管理に PCEA 装置の自己選択法を導入

した患者の感情

キーワード:術後疼痛管理 PCEA 装置 自己選択 感情の

変化

○中村 瑛保1),伊藤 若菜1),外處 泰子1), 渡邊 詩織1),江口 祐樹1)

1) 自衛隊札幌病院

【はじめに】硬膜外自己調節鎮痛法(Patient Controlled

Epidural Analgesia 以下 PCEA とする)とは専用機器を患

者が操作する方法である。安全かつ効果的な量の鎮痛剤を

自らの判断ですぐに投与出来ることが利点であるが、一方

で自ら薬剤を投与することに不安を抱く患者もいる。患者

自身が PCEA 装置を操作するか看護師を呼んで操作するか

を患者が選択出来る方法(以下、自己選択法)を導入し、

患者の感情を明らかにすることで PCEA 装置により疼痛管

理をされている患者の関わりに活かすことが出来ると考

えた。【目的】自己選択法導入における術前及び術後の PCEA

装置の使用に関する患者の感情について明らかにする。

【方法】A病院にて自己選択法を導入した患者 11 名に対し

半構造的面接法を実施した。データ収集期間は H30 年 1 月

~H30 年 5 月とした。患者の承諾を得た上でインタビュー

データを録音し、逐語録を作成後、質的帰納的分析を行い、

1)オリエンテーション、2)術直後、3)PCEA 装置の初回使

用後の場面に区分して患者の感情を抽出した。【倫理的配

慮】自衛隊札幌病院倫理委員会の承認を得た。対象者には

研究目的、方法、個人情報保護について説明した。研究参

加は自由意思であり、不参加の場合でも不利益が生じない

ことを口頭と書面で説明し同意を得た。【結果】1)オリエ

ンテーションでは PCEA 装置の説明に対して[心配][期待]

といった感情の要素が抽出された。2)術直後の特徴は医療

者との関わりで得られた[安心]や初めて PCEA 装置を操

作することへの[心配]疼痛に伴う[切迫感]が抽出され

た。3)PCEA 装置の初回使用後については使用の経験から

PCEA 装置の効果への[期待][安心]、医療者の継続した対

応に起因する[安心]といった要素が抽出された。オリエ

ンテーション時と術直後は PCEA 装置に対する[心配]の

要素が抽出されたが、PCEA 装置を初回使用後は[心配]の

要素が消失したという感情の変化があった。【考察】医療

者は患者や場面毎に PCEA 装置の使用に対して抱く感情は

異なることを理解し、関わる必要がある。【結論】PCEA 装

置の自己選択法導入に関する患者の感情は多様であるこ

とが明らかになった。自己選択法の効果的な使用には、術

後疼痛を訴える患者の感情とその変化に応じた医療者の

対応が重要である。

口演9-1

集中治療室で身体拘束を行わない看護を目指

すための取り組み

キーワード:身体拘束 身体抑制 集中治療室 認知症

パーソンセンタードケア

○高松 香澄1),菊池 和也1),芳村 祐華1), 福田 彩子1),宮本 真衣1)

1) 静岡市立静岡病院

【はじめに】集中治療室の患者は、生命の危機状況にあり

非日常の環境下で治療を受ける。認知症や短期記憶障害の

ある患者に対し治療上の安全を最優先として、身体拘束を

行うが十分な評価を行わないまま継続していた。認知症患

者にとって身体拘束は不快な刺激となり、認知症の周辺症

状の悪化を招き、更に治療にも影響を及ぼす。身体拘束を

行わざるをえなくなり悪循環に陥ってしまうため改善の

糸口を見出したい。【目的】認知症患者に対しパーソンセ

ンタードケアを実践し、集中治療室で身体拘束を行わない

効果的な看護の方法を明らかにする。【方法】患者 A、B 氏

に対し定期的に身体拘束カンファレンスを実施し、患者の

状態を分析、検討した。【倫理的配慮】対象者の家族から

自由意思による承諾を書面で得、不利益を回避するための

配慮を実施、院内の倫理審査委員会の承認を得た。【結果】

A 氏に対し状況の説明回数を増やし、訪室する回数を増や

し患者との信頼関係を築き、ルート類が気にならないよう

に衣服の下からルートを通すなど工夫し環境を整えるこ

とで身体拘束を行わずに経過できた。B 氏は入院当初不穏

で身体拘束帯を使用したが、補助循環装置が外れた時や、

点滴類が減ってきたタイミングを逃さずにカンファレン

スを行い、身体拘束帯を外す検討をしていった。最終的に

B氏も身体拘束を行わず経過できた。【考察】集中治療室の

患者は特に、緊急入院により生活環境が急激に変わること

に適応できず、生活の場ではないと認識し帰宅願望を訴え

る。看護師はその気持ちを受け止め、治療の必要性をその

都度説明することで身体拘束を中止し、結果、解除に至っ

たと考える。パーソンセンタードケアを提唱したキット

ウッド教授が挙げる、患者のニードの一つに「結びつき」

がある。患者をありのまま受け止めようとする看護師の姿

勢は、結びつきのニードを満たすきっかけになったと考え

る。【結論】集中治療室で身体拘束を行わない看護実践の

ためには①患者生命を守るため「抑制する・しない」では

なく患者の苦痛や不快の軽減に目を向けどのようなケア

が必要か考え、環境を整える②治療や回復状況の変化に応

じた抑制解除のタイミングを逃さない③患者の結びつき

のニードを満たすために、患者のありのままを受け止めよ

うとする姿勢をもつという3つが必要である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演9-2

長期臥床、長期入院を強いられた壮年期患者の

事例から自己効力感の回復につなげる援助を

考える

キーワード:自己効力感 長期入院 退院支援

○堺 亜香1),黄 潤洪1),槌谷 綾1)

1) 神戸大学医学部附属病院

【はじめに】自己効力感とは、目標をやり遂げるための信

念であり自分はきっとできるという自己期待や有能感、物

事を成し遂げることへの自信であるとバンデューラは述

べている。当事例の患者は骨盤軟骨腫瘍広範囲摘出術の術

後、長期臥床を強いられ、回復のイメージや達成体験を認

識できず自己効力感を喪失していた。しかし達成可能な目

標を掲げ、達成することで自己効力感を回復し退院に至っ

た。この事例から自己効力感につながる援助について再考

した。【目的】自己効力感回復につなげるための援助を考

える。【方法】事例研究事例紹介患者 A(以下 Aとする)男

性 40 歳代診断名左骨盤軟骨腫瘍入院期間 X 年 8 月~X+1

年 3月現病歴 X年 8月左骨盤悪性腫瘍摘出術、膀胱壁切除

術、尿管膀胱吻合術、左総腸骨静脈人工血管置換術、人工

肛門造設術、骨盤内創外固定術施行された。9 月人工血管

感染の疑いあり病巣掻爬、人工血管抜去術施行された。10

月創外固定を抜去した。X+1年 3月ロフストランドステッ

キ歩行で退院となった。【倫理的配慮】本研究はプライバ

シーが最大限に保障されること、同意は自由であること、

不利益を生じないことを患者に書面と口頭で説明し同意

を得た。所属機関の倫理委員会の確認を経て、その指示に

より所属長の許可を得た。【結果】Aは術後離床してからも、

気分の落ち込みがありリハビリを中断することも多かっ

た。しかし Aが掲げていた目標は復職と高い目標であった。

そのため段階的なセルフケア行動目標を立て、まずは車い

すで散歩に行くことから促したが最初は消極的であった。

そこで、今までの人生の中で挫折した時どのように打開す

るきっかけを見つけたかを一緒に振り返った。その中で A

は小さな目標を立てて行動していたことを思い起こした。

そこで年末年始の外泊を目標に車椅子散歩を勧めた。その

後 Aはリハビリに積極的に取り組むようになり外泊を実現

できた。外泊後も積極的にリハビリに取り組み退院に至っ

た。【考察】Aは術後 3ヶ月に渡り臥床安静を強いられ、変

化した身体の理想と現実の乖離を感じ自己効力感が低下

していた。復職という高すぎる目標を掲げており ADL 拡大

に対するイメージがつかなかった。そのため、現時点で達

成可能な目標を揚げることで小さな成功体験を繰り返し

自己効力感の回復につながった。【結論】自己効力感の回

復には、小さな成功体験を繰り返すことができるよう援助

する必要がある。

口演9-3

A病院救急ICU看護師が感じる倫理的ジレンマ

キーワード:クリティカルケア 倫理的ジレンマ 代理意

思決定

○東 弘子1),速水 浩己1),冨永 美佳子1)

1) 藤沢市民病院

【はじめに】救急 ICU では突然の発症により生命の危機的

状況に陥った患者と家族が看護の対象者である。その対象

者に対し看護実践をする中で、患者・家族・医師・看護師

同士等の関係において、その立場や考え方の違いから困っ

たり、悩み、葛藤したりと、様々なジレンマを抱えながら

看護を行っていると考えられる。【目的】クリティカルケ

アの現場において、看護師はどのような状況でジレンマを

感じるのかを明らかにする。【方法】対象:救急 ICU 看護

師 21 名。調査期間:2018 年 11 月。アンケート前に対象者

に倫理的ジレンマの定義を統一させるため、学習会を行っ

た。その後、体験した倫理的ジレンマについてアンケート

を実施し、内容の類似性からカテゴリーを抽出した。【倫

理的配慮】アンケートは自由意思で不参加での不利益はな

いことを説明し同意を得て行った。尚、所属機関の看護部

倫理委員会の審査で承認を得た。【結果】「生命倫理に関す

る医師と看護師の意見の相違」「医師との意見の相違、治

療が患者に苦痛を与えている」「治療上安全の為の身体拘

束」「看護観の相違」「代諾者不在時の患者の意志が不明な

ままでの積極的な治療」「代理意思決定による治療」の7

カテゴリーに分類された。【考察】看護師は、生と死に医

療がどう関わるべきか生命倫理としてのジレンマを感じ

る機会が多い。医師と看護師が話し合う機会の少ない状況

で治療が進行する事にジレンマを感じていた。医師は患者

の救命を第一に、看護師は患者の背景を考えるために相違

が生じると考えられた。家族の希望で延命治療がなされた

事例では、家族の思いにも寄り添いたいが患者へ苦痛を与

えているのではないかと、代理意思決定に対するジレンマ

を感じていた。これは長期的予後に対して、家族と医療者

の捉え方に相違があること等が理由として考えられた。ま

た、治療上安全の為に身体拘束を行う事でのジレンマが挙

げられた。看護師は、医療者としてそれぞれの倫理観を持

ちながら、日々の看護において倫理的ジレンマを抱えてい

ることが明らかとなった。【結論】クリティカルケアの現

場では、生命倫理に関する医師と看護師の意見の相違、医

師との意見の違い、治療が患者に苦痛を与えている、治療

上安全の為の身体拘束、看護観の相違、代諾者不在時の患

者の意志が不明なままでの積極的な治療、代理意思決定に

よる治療といったジレンマを感じている。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演9-4

クリティカル期における家族の代理意思決定

を支える看護の振り返り

-代理意思決定に悩む家族との関わりを通し

て-

キーワード:クリティカル期 家族 代理意思決定

○三輪 哲也1),鷲北 麻美1),鈴木 ひとみ1),田畑 智子1)

1) 厚生連高岡病院

【はじめに】家族の代理意思決定時に関わった看護師より

「どのように関わってよいのかわからない」「家族への看

護介入ができていないのではないか」という言葉が聞かれ

た。そこで、代理意思決定をした家族への関わりを振り返

り、看護師の家族支援の現状を明らかにしたため報告する。

【研究目的】家族が代理意思決定をする場面における看護

師の家族支援の現状を明らかにする。【研究方法】1.研究

対象:この事例の家族対応に関わった看護師 3 名。2.研

究期間:2018 年 5 月~10 月 3.研究方法:3名でフォーカ

スグループインタビューを行う。インタビュー内容をコー

ド化、サブカテゴリー化する。サブカテゴリーの内容が、

野嶋らが提唱している 6つの「家族の意思決定を支える看

護援助」に該当するかを分析する。【倫理的配慮】所属施

設の倫理審査委員会の承諾を得た。家族からの症例検討会

使用の許可を得た。研究対象者に、研究の趣旨、研究の参

加・協力への自由意思、個人情報の保護、撤回の自由、IC

レコーダーで記録することについて説明し、同意書に署名

を得た。【結果】分析の結果、「①家族内のコミュニケーショ

ンを促す」15 コード 3サブカテゴリー「②その家族らしい

意思決定を支える」3コード 2サブカテゴリー、「③家族が

意思決定するのを待つ」6 コード 2 サブカテゴリー「④家

族の意思決定への自信を高める」5 コード1サブカテゴ

リー「⑤例の提示やイメージ化を通して意思決定を支える」

3 コード 1 サブカテゴリー「⑥家族員同士あるいは家族と

個人間の葛藤に対応する」10 コード 3サブカテゴリーが抽

出され、その他に 3コード抽出された。【考察】看護師は、

患者と家族が安心して過ごす空間の提供、妻・家族とのコ

ミュニケーションを通した情報収集(価値観、葛藤、悩み

など)、見守り、清潔援助への参加の促し、過去の例の提

示、などを行っており、6 つの「家族の意思決定を支える

看護援助」に該当する援助を行っていた。個人によって対

応が異なっており、経験不足や対応の統一を望む声も聞か

れた。【結論】1.看護師は 6 つの「家族の意思決定を支え

る看護援助」を行っていた。2.経験が少ない勤務異動者

への支援が必要である。3.多職種や看護師間のカンファ

レンスを行い、代理意思決定を行う家族に関わる個々の看

護師へのサポートを行っていく必要がある。

口演9-5

めざせ!身体抑制ゼロ!

-客観的指標に現れない判断要因を探る-

キーワード:身体抑制 集中治療室 看護師 判断要因

○上地 美奈子1),清水 れいか1), 大野 竜太朗1),小濱田 瞳1),高村 利佳1), 東山 深雪1),西村 美江1)

1) 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会吹田病院

【はじめに】近年、厚生労働省では「身体拘束ゼロ作戦」

を推進し身体抑制廃止に向けた取り組みが広まっている。

しかし、集中治療室(以下 ICU)では、ICU 症候群などの

精神障害によりライン類の自己抜去リスクが高い患者に、

やむを得ず身体抑制を行っている現状にある。A病院では、

身体抑制は客観的指標を使用し判断しているが、同じ評価

の患者でも身体抑制の判断が異なる場合がある。身体抑制

の判断要因を明らかにし、身体抑制ゼロへの取り組みを検

討したい。【目的】客観的指標に現れない身体抑制の判断

要因を明らかにする。【方法】平成 30 年 7 月~11 月に ICU

看護師 10 名に実施。インタビューガイドを作成。半構成

的面接を実施し、逐語録を作成、コード化、カテゴリー化

し分析。「身体抑制」は、体幹抑制帯、四肢抑制帯、ミト

ン手袋を対象とし定義した。【倫理的配慮】対象者に対し

不利益がないこと、目的以外には使用せず個人情報の厳守

管理を行うことを説明し同意を得、倫理審査委員会の承認

を得た。【結果】224 のコードから、32 のサブカテゴリー、

14 のカテゴリー(<>で示す)を抽出し、3つの要因に分

類した。「抑制をしない判断を強める要因」は、<抑制を

否定する思い><患者目線での思い><家族目線での思

い><身体抑制への弊害><実施しての罪悪感><成功

体験><身体抑制最小化への風潮>で構成された。「抑制

をする判断を強める要因」は、<安全、治療を守る責任感

><必要な手段だという考え><許容されている思い>

<失敗体験><保身的な考え><判断能力の不足>で構

成された。「環境要因」は、<労働環境>で構成された。【考

察】ICU の特殊環境により<安全、治療を守る責任感>が

基盤となり、ルートなどの自己抜去が治療に影響を及ぼす

<失敗体験>や、安全を確保できる<保身的な考え>から、

時にリスクが優先され身体抑制の判断に至っていた。しか

し、抑制をしたくないという<抑制を否定する思い>も語

らており、安全と倫理の狭間で葛藤があった。またリスク

回避のため、開始した身体抑制を解除することに躊躇して

いた。そのため、代替案の検討だけでなく、看護師の不安

や葛藤を共有する場が必要であることがわかった。【結論】

A 病院 ICU 看護師は、重症集中治療の場において、安全と

倫理の狭間で葛藤を抱えながら身体抑制の判断をしてい

た。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演10-1

急変対応時における看護師の不安

-一般病棟勤務の看護師と特殊科勤務の看護

師の比較-

キーワード:急変時の対応 一般病棟 特殊科病棟 看護師

の不安 経験年数

○鈴木 優衣1),浅見 麻里奈1)

1) 川口市立医療センター

【はじめに】救命救急・ICU・NICU(以下特殊科とする)勤

務の看護師と一般病棟勤務の看護師では、急変対応時に不

安と感じる内容が看護師経験年数別に異なると考えた為、

年数別に比較し、不安の内容や程度を明らかにしたいと考

えた。【目的】特殊科病棟勤務の看護師と比較し、一般病

棟勤務の看護師が急変時対応に対して特に不安と感じて

いる内容を明らかにする。【方法】1.量的研究。研究期

間:2018 年 6 月 15 日から 1 ヶ月。研究対象:病棟勤務の常

勤看護師 346 名。2.データの収集方法:BLS、ACLS のアルゴ

リズムを元に、A 病棟急変時カンファレンスで不安の声が

挙がった内容を追加し、全 36 項目の独自のアンケートを

作成。4 段階で評価した。3.データ分析方法。一般病棟・

特殊科病棟勤務の看護師の経験年数を 3 段階に分けマン・

ホイットニー検定で評価を行った。【倫理的配慮】研究対

象者へ研究目的及び研究への参加は自由意思であること、

プライバシーの保護について書面にて説明し、同意を得た。

A病院看護部倫理委員会の承認を得た。【結果】経験年数 2

~4 年目では計 24 項目、5~10 年目では計 19 項目、11 年

目以上では計 5項目で有意差があった。アンケート全体の

傾向では、経験年数の短い一般病棟勤務の看護師は、特殊

科勤務の看護師と比較し、急変対応時に感じる不安が多く

見られた。全ての年代で有意差の出た項目は、1)「救急カー

ト内の薬剤名や物品名について」2)「主治医以外の医師と

コミュニケーションをとることについて」などの 4項目で

あった。経験年数 11 年目以上では、3)「大部屋の患者が

急変した場合、患者の移動時期を判断することについて」

などの計 4 項目、特殊科勤務の看護師の不安が上回った。

【考察】1)一般病棟勤務の看護師は挿管の介助等を行う機

会が少ないことが、要因であると考える。2)関わりの少な

い医師や、入院経過を知らない医師に現状を報告すること

に不安があると考える。3)状態の不安定な患者が多い特殊

科勤務の看護師の方が不安を生じるのではないかと考え

た。【結論】全ての年代で優位差が出た項目は、「救急カー

ト内の薬剤名や物品名について」「挿管の介助について」

「人工呼吸器の初期作動について」「主治医以外の医師と

コミュニケーションをとることについて」の 4項目であっ

た。

口演10-2

発熱患者のトリアージにおける SIRS と

quickSOFA の比較

-オーバートリアージ減少への取り組み-

キーワード:院内トリアージ JTAS SIRS quickSOFA 発熱

○中村 百子1),桶成 裕佳子1),村瀬 由美1),安間 圭一1)

1) 白山石川医療企業団 公立松任石川中央病院

【はじめに】A病院は二次救急医療機関であり、2013 年よ

りトリアージを開始し、2016 年より緊急判定支援システム

(以下 JTAS)を導入した。以降、看護師が JTAS2012 を使用

しトリアージを行っている。2017 年の研究より、発熱患者

のトリアージ結果と診察結果の乖離が明らかとなり改善

方法を検討したいと考えた。【目的】2016 年に敗血症の定

義の改定に伴い、JTAS2017 に quickSOFA(以下 qSOFA)基準

が追加された。発熱患者に対し、JTAS2017 の qSOFA を使用

することでオーバートリアージが減少するのではないか

と考え本研究を行った。【方法】調査期間:平成 29 年 12

月~翌年 2月、対象:主訴が発熱である患者 104 名、トリ

アージを行った看護師 11 名、平均看護師経験年数 14.3(±

3.96)年、平均トリアージ経験年数 3.4(±1.03)年、方法:

対象患者に補足因子として SIRS と qSOFA を使用しトリ

アージを行い、SIRS 群と qSOFA 群とし、入院転帰となった

患者の把握を行った。分析方法:SIRS 群と qSOFA 群におけ

る JTAS 判定結果が、レベル 2「緊急」以上の患者数と入院

となった患者割合で検証を行った。検定にフィッシャー直

接確立法を使用し、p<0.05 の場合を有意差ありとした。

【倫理的配慮】A病院の倫理審査委員会の承認を得た。【結

果】対象患者104名のうちJTAS判定結果がレベル2「緊急」

以上となった患者は、SIRS 群 23 名、qSOFA 群 5 名であっ

た。そのうち、入院転帰となった患者はSIRS群 1名4.3%、

qSOFA 群 3 名 60.0%で、qSOFA 群が有意に高値(p=0.011)

であった。このことから、qSOFA ではオーバートリアージ

の減少を認めた。【考察】SIRS と qSOFA の比較では、レベ

ル 2「緊急」以上となった患者数と入院転帰となった割合

から、qSOFA での判定について信頼性が高いことが示唆さ

れる。また、オーバートリアージの減少を認め、再トリアー

ジが必要な患者の減少に繋がった。そのため、qSOFA によ

る判定が SIRS による判定に比べ有効であると考えられる。

【結論】発熱患者のトリアージに qSOFA を使用することで、

オーバートリアージの減少に繋がった。そのことから、

JTAS の発熱の判定指標を SIRS から qSOFA へ変更すること

を提案し改定に向け取り組みたい。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演10-3

急性期病棟における患者・看護師間の「ちょっ

と」の認識の違い

キーワード:待ち時間 曖昧表現 ちょっと

○大石 茉鈴1)

1) 医療法人社団おると会浜脇整形外科病院

【はじめに】A 病院急性期病棟で行った患者アンケートで

待ち時間への配慮の評価が他項目に比べ低い結果であっ

た。その要因の一つに、看護師が「ちょっと待って」と伝

えた際の「ちょっと」という時間感覚に患者と看護師で認

識の違いがあるのではないかと考え本研究を行った。【目

的】急性期病棟における患者・看護師間の「ちょっと」の

認識の違いを明らかにする。【方法】対象:A病院急性期病

棟所属の看護師46名、A病院急性期病棟の入院患者88名。

研究期間:2018 年 10 月~11 月。調査内容:疼痛、排泄、

更衣、食事・口腔ケアの 4 つの場面を設定し各場面で思う

「ちょっと」の時間を記載してもらった。看護師の属性は

年代、経験年数。患者の属性は年代、性別、手術部位。【倫

理的配慮】A 病院の臨床研究倫理審査委員会での承認を得

た。また、対象者には自由意思による承諾を得て不利益を

回避するための配慮を実施した。【結果】看護師:有効回

答数 38(有効回答率:82%)患者:有効回答数 64(有効

回答率:73%)。1.看護師・患者全体の、各場面別「ちょっ

と」の平均時間:看護師全体では、疼痛 4.7 分、排泄 5.0

分、更衣 7.1 分、食事・口腔ケア 7.3 分。患者全体では、

疼痛 4.8 分、排泄 4.6 分、更衣 7.1 分、食事・口腔ケア 8.3

分。2.看護師の各場面別「ちょっと」の時間:年代別では

全ての項目で 40 代が短く、経験年数別では 10~20 年で更

衣、食事・口腔ケア、20 年以上で疼痛、排泄の項目が短かっ

た。3.患者の各場面別「ちょっと」の時間:年代別では全

ての項目で 20 代が、性別では全ての項目で女性が短かっ

た。手術部位別では脊椎で疼痛、上肢で排泄、膝・下肢で

更衣と食事・口腔ケアの 2 項目が短かった。【考察】全体

比較では疼痛・排泄での時間認識が短く、場面による切迫

性や緊急性の違いによるものと推測する。年代別結果は、

患者では普段から時間をかけず自力で身の回りのことが

できる 20 代で時間認識が短く、看護師では経験年数によ

る判断力や優先順位の付け方が影響したと考える。手術部

位別では術後の状態変化が影響したと推測する。【結論】

今回、患者・看護師全体では「ちょっと」の時間認識に大

きな相違はなかった。しかし、実際には薬剤の準備や他業

務の調整などで時間を要することも多く、患者の不満や不

安に繋がる可能性がある。今後この結果を共有し患者対応

に活かすことが課題である。

口演10-4

新人看護師に急変対応シミュレーションを実

施した効果

-デブリーフィングに焦点をあてて-

キーワード:シミュレーション デブリーフィング 新人

看護師

○伊藤 加依子1)

1) 大阪赤十字病院

【はじめに】医療の急速な発展、複雑化により、医療者が

備えておく知識は膨大となり、技術は高度となった。それ

を補うために、看護の基礎教育、および臨床ではシミュ

レーションが取り入れられている。シミュレーション教育

の利点は、患者への負担がなく、繰り返しの学習が可能な

ことにある。また、シミュレーション後にデブリーフィン

グを行うことは、学習の固定化とその臨床応用により極め

て重要な作業と理解である。“振り返り”と“議論”が参

加者の行動変容に繋がるとされている。今回、新人看護師

対象の急変対応にシミュレーションを用い、どのような気

づきとなり行動変容に繋がったかを検証した。【方法】1.

対象者:看護師 1 年目 135 名 2.研修期間:2018 年 2 月、

2019 年 2 月 3.研修方法:模擬人形を使用し、「心肺停止

患者発見時の一連の流れを知り、BLS が出来る」「BLS を行

う為のスタッフの役割を説明できる」を目標に実施。4.

分析方法:提出された 135 人分のアンケートから、無作為

に 30 名を抽出しクラウス・クリッペンドルフを実施。【倫

理的配慮】この研究は A病院の看護部倫理審査委員会にて

承認を得て実施した。【結果】分析の結果、成長に与えら

れる 7つのカテゴリ-に分けられた。その中で《自己への

気づき》が、最も多く全体の 23%がであった。【考察】サ

ラバーンズが「自己への気づきはリフレクションの過程全

体を支えるものである」と述べているように、《自己ヘの

気づき》が出来たことは、《エンパワメントする力》、また

《行動変容》《わだかまり》デブリーフィングを経て《次

に活かすための力》へ統合するに至ったと考える。《自己

への気づき》は新人看護師がデブリーフィングを行う際の

重要な概念となったことは明らかである。この事は、新人

看護師にとって急変時対応の経験が少ないことから、自己

の強みと弱みが明らかになりやすいと考える。他者からも

フィードバックすることにより、自己を肯定し、自己を他

者に開放することで、弱みを克服するような行動や自己を

振り返ることが出来る。自己の成長を感じ、承認や役割期

待を促したことで新人看護師の成長・自信となり、行動変

容に繋がったと考える。今後は、学習したことを継続する

ための教育支援が必要であると考える。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

口演10-5

A病院 ICU に勤務する看護師の職業性ストレ

スとストレスコーピングについての実態調査

キーワード:ICU 看護師 ストレス ストレスコーピング

○宮平 麻衣子1)

1) 仙台市立病院

【はじめに】ICU の看護師には専門的で高度な知識や技術

が求められ多大なストレスがかかるため A-ICU 看護師が抱

えるストレスを明らかにする必要性があると考えた。【目

的】A-ICU で勤務する看護師が抱えるストレスとストレス

コーピングの実態調査を行い、ストレスと向き合い対処し

ているかを明らかにする。【方法】A-ICU に勤務する男女看

護師 50 名に Nursing Job Stressor Scale、Worker’s Coping

Behavior Scale の測定尺度を使用し無記名式アンケートを

実施。収集したデータは経験・部署年数 5年未満と 6年以

上、婚姻・子供・喫煙・飲酒の有無に分類し Excel 及び SPSS

の Mann-Whitney の U 検定を行った。【倫理的配慮】研究の

協力は自由意思とし協力が得られなくても不利益を受け

る事はなくアンケートの返信をもって同意を得た事とす

る。得られた情報は研究以外に使用せず個人名は出さずセ

キュリティをかけ保管する。本研究は A病院看護部により

承認されたものである。【結果】ストレス要因調査では「職

場の人的環境」が 16.34 点/35 点と最も高かった。経験・

部署年数毎の差はなかったが婚姻・子供の有無で有意差が

みられた。ストレスコーピング調査では「症状対処コーピ

ング」において経験・部署年数、婚姻・子供の有無で有意

差がみられた。【考察】「職場の人的環境」が高い要因とし

て看護師の人数が一般病棟に比べ多いので生じる軋轢や、

意見の相違がより質の高い看護を提供しようとする上で

のストレスとなりうることがある。また診療科も多岐に渡

り医師や他職種との連携をしなくてはいけない環境や重

症患者の家族対応も ICU 看護師の重要な役割であるためス

トレスが高い要因として考えられた。ストレス調査、スト

レスコーピング調査にて婚姻・子供ありが有意に低かった。

要因として仕事での役割遂行だけではなく家庭での役割

もあり自分の時間が確保出来ない事、夜勤や時間外勤務も

あり仕事と家庭のバランスが取りにくい事、また、専門的

で高度な知識・技術の習得のために家庭での学習も余儀な

くされる場合もあり負担が大きい事が考えられた。【結論】

ストレス調査にて「職場の人的環境」が最も高く、経験・

部署年数でのストレスの有意差はなかった。ストレス、ス

トレスコーピング調査にて婚姻・子供ありは家庭での役割

遂行もありストレス度合いが高い。

口演10-6

白内障手術におけるシミュレーション方法の

再検討

-臨床実践後の思いを調査して-

キーワード:白内障手術 新人看護師 シミュレーション

タスクトレーニング 器械出し

○天野 愛1),小泉 匡司1)

1) 岡山済生会総合病院

【はじめに】A 病院手術部では、白内障器械出し教育を OJT

で行っていた。しかし、早い手術展開についていけず、手

技習得に不安の声が聞かれていた。そこで平成 28 年度よ

りシミュレーション教育を開始し、導入前後にアンケート

調査を行った。結果、手技習得への不安は軽減したが、器

械出し業務に対する漠然とした不安への効果は低かった。

導入後 2年が経過し、効果を再検討することで更に有効な

教育に繋げたいと考えた。【目的】受講者の思いを分析し

不安内容を明確化することで、効果的な学習方法の示唆を

得る。【方法】1.対象:受講後の看護師 9 名 2.調査期間:

平成 30 年 8 月~9 月 3.収集方法:半構成面接【倫理的配

慮】本研究は岡山済生会総合病院倫理審査委員会の承認を

得た。対象者に参加は自由意思であり参加しなくても不利

益は生じないこと、得られたデータは本研究以外で使用し

ないことを説明し同意を得た。本演題に関連して、開示す

べき COI はない。【結果】逐語録に起こし、カテゴリー化

した。以下カテゴリー〔〕、サブカテゴリー≪≫、コード

〈〉で示す。〔事前学習〕は《事前課題》《事前学習の確認

による効果》を含み、〈復習できていなかった〉〈項目が絞

られて勉強できた〉などより生成した。〔シミュレーショ

ン効果〕は《範囲は十分である》《手術のイメージがつい

た》などを含み、〈網羅されている〉〈自分の苦手な箇所が

分かった〉などより生成した。〔手術での課題と対策〕は

《医師別による手技の課題と基準手技の獲得》《相違》な

どを含み、〈医師別の手技や物品が多く難しかった〉〈考え

ていたよりも展開が早い〉などより生成した。【考察】事

前に学習理解度を指導者が評価することで、学習者はシ

ミュレーションまでに達成すべき課題が明確になり、指導

者は個々のレディネスに沿った指導法を考慮できる。これ

によりタスクトレーニングの質を高めることが、スムーズ

な手技習得と看護の均一化に繋がると考える。新人看護師

は知識や経験が未熟であり、変則的手技への対応が困難で

あった。タスクトレーニングをクリアーし、臨床での状況

変化を想定したアルゴリズムベースドトレーニングを追

加することが、器械出し業務に対する漠然とした不安を軽

減し、看護の質を向上させると考える。【結論】現在行わ

れているシミュレーションは有効であるが、学習理解度を

評価する時期と段階に応じたパターンの追加が検討課題

である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説11-1

先天性心疾患術後の High-flow nasal cannula

で呼吸管理を実施した新生児・乳児の困難要因

の検討 キーワード:先天性心疾患 High-flow nasal cannula 酸

素療法

○阿部 理1),稲垣 龍太1),藤村 亜佑子1), 中村 祐美子1),千田 真太郎1),橋本 博明1), 遠藤 直子1),岩瀬 友幸1)

1) 岩手医科大学附属病院

【はじめに】先天性心疾患術後の新生児・乳児は,呼吸器

離脱(離脱)時に重度な拡散障害や肺胞低換気となる。その

ような場合は,High-flow nasal cannula(HFNC)で酸素療法

を行っているが,HFNC の導入・中止基準は明確でない現状

があり,呼吸不全に陥る患児も少なからずいる。そこで,

HFNC の使用が困難となった要因を明らかにし,呼吸不全の

悪化を予防する看護援助の示唆を得た。【目的】先天性心

疾患術後に HFNC による酸素療法が困難となった要因を明

らかにする。【方法】対象:2016 年 8 月~2018 年 12 月の

期間に離脱後に HFNC で呼吸管理を行った患児 34 名。デー

タ収集方法:離脱後の状況を後方視的に電子カルテから抽

出した。A 群(HFNC での呼吸管理が可能であった群)と B

群(HFNC での呼吸管理が困難となり再挿管となった群)に

分け,抽出項目は 42 項目とした。分析方法:得られた数

値をマンホイットニーで統計処理し,P<0.05 を有意差あ

りとした。【倫理的配慮】収集したデータは個人が特定さ

れないようにコード化して管理した。本研究は A大学医学

部倫理委員会の承認を得、開示すべき利益相反はない。【結

果】A 群は 29 名で生後 75.1 日,B 群は 5 名で生後 136.3

日。レントゲン評価で,術後呼吸器合併症は,両群とも無

気肺が多かった。手術時間,離脱時間,離脱直前の採血デー

タ(BUN,Cre),特に離脱後の心胸郭比(CTR),離脱前後の

両群間で有意差を認めた。B 群で呼吸状態の変調を起こし

た際に,短時間で陥没呼吸が出現していた。【考察】B群の

呼吸状態の変調を来した要因分析では,術後 CTR は拡大し,

術前・術後 CTR 変化率は有意差を認めた。手術手技により

心臓容量が拡大し,肺野が圧迫を受け無気肺を形成したた

めと考える。血液データで Cre 値が B 群で有意に低値で

あった。B 群は筋肉量・呼吸予備力が少ないと言える。ま

た,短時間で陥没呼吸が出現した原因には,HFNC では気道

確保が困難となったことが推察される。気道確保と呼吸仕

事量軽減を目的とした適切な Peep の保持が必要と考える。

上気道確保,酸素化能,換気,呼吸仕事量を適切に評価し

て効果的な呼吸管理を実施する必要がある。【結論】1.術

後 CTR が大きく,合併症は無気肺が多かった。2.Cre 値が

低値の場合は,筋肉量,呼吸予備力が少ない可能性が示唆

された。

示説11-2

手術目的で入院している乳幼児に付き添う母

親のストレスとコーピングの実態調査

キーワード:付き添い ストレス コーピング

○三品 宏喜1),阪本 佑二1),三原 真梨1), 田中 美奈子1)

1) 京都府立医科大学附属病院

【はじめに】手術目的で入院している母親が児に付き添う

過程で、児から離れたい、家に帰りたいと訴える場面に直

面した。児が病気によって入院するということは、児なら

びに母親にとってストレスを増強させる要因(以下スト

レッサーとする)であり、ストレスが蓄積した母親への看

護介入の検討は重要課題だと考えた。【目的】手術目的で

入院している乳幼児に付き添う母親の入院生活に対する

ストレスを調査するとともに、母親のストレスと入院中に

考えられるストレッサーおよびコーピングスタイルとの

関連を分析し今後の看護介入の一助とすることを目的と

した。【方法】自記式無記名調査、関係探索研究。対象者:

手術目的で入院している 0~3歳児に 24 時間付きそってい

る母親 113 名。【倫理的配慮】京都府立医科大学倫理審査

委員会の承認(ERB-E-369)を得た。対象者に目的、方法、

プライバシーの保護について口頭と紙面で説明し同意を

得た。【結果】分析対象者は 102 名(有効回答率 98.1%)。

基本情報による SRS-18 の合計得点の比較において有意差

は認めなかったが、付添交代者がある方がストレスは低い

傾向がみられた。SRS-18 の合計得点とストレッサーとの関

連においては、環境要因(r=0.382,ρ<0.001)と身体要因

(r=0.362,ρ<0.001)は弱い正の相関、行動要因(r=0.430,

ρ<0.001)と精神要因(r=0.620,ρ<0.001)、医療要因

(r=0.468,ρ<0.001)は中程度の正の相関がみられた。家

族要因には有意な相関がみられなかった。SRS-18 の合計得

点とコーピングスタイルとの関連においては、何とかなる

と考えることを示す楽観思考(r=-0.284,ρ=0.004)は弱い

負の相関がみられたが、問題焦点、情動安定は有意な相関

はみられなかった。【考察】楽観思考である母親はストレ

スが低い有意な相関がみられたが、母親のコーピングに関

わらず入院は母親にとってストレスを増強させ危機的な

状況になるということが予測された。【まとめ】児に付き

添う母のストレス要因とコーピングについて調査した結

果、入院における環境や母親の行動が制限されること、周

囲を気にするなどの精神要因、医療者の行動要因、家族要

因がストレッサーになっていた。母親への看護介入はスト

レッサーの要因をふまえて検討することが必要であるこ

とを示唆された。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説11-3

入院した患児に付き添う母親の日常生活体験

キーワード:付き添い 母親の体験 小児病棟

○荒井 由紀1),神山 とき江1)

1) 富士吉田市立病院

【はじめに】小児看護をする上で付き添いを行う家族への

看護が求められている。入院により、母親は病院での生活

が強いられているが、患児に付き添う母親の視点から付き

添い生活について見直すことがなかった。今回、入院した

患児に付き添う母親からの聞き取り調査により、母の体験

や思いを知る機会が得られたので報告する。【目的】入院

した患児に付き添う母親の日常生活体験を基本的欲求で

ある「食事・休息・清潔」に視点をあて明らかにする。【方

法】平成 29 年 9 月~10 月まで、同意が得られた 5 例に対

して、入院時・入院 2~3 日目・退院時に行った聞き取り

調査と日々の看護記録の内容から、母親が体験したこと・

思いについて語られた言葉をコード化し、サブカテゴリー、

カテゴリーを抽出した。【倫理的配慮】富士吉田市立病院

の倫理委員会で承認を得て研究について説明し、本研究へ

の協力の有無によって不利益が被ることがないことを同

意書の署名にて同意を得た。【結果】入院した患児に付き

そう母親の日常生活体験から 26 のコードから 14 のサブカ

テゴリー、7 のカテゴリーが抽出された。入院した患児に

付き添う母親は「患児の病状の心配」をしており、病状の

早期情報提供の要望があった。母子分離不安の増強や点滴

の実施などにより「入院による患児の変化による対応の困

難感」を感じていた。「環境、病院規則による負担感・仕

方のなさ」を感じながら、家族や看護師の協力を得て様々

な工夫をして「母親の付き添い生活に対する自己対処とそ

の実感」を得ていた。しかし、母親自身の食事や清潔、休

息に対して我慢し諦めており「日常生活が送れないことに

よる不満感」を感じていた。「患児の特徴や回復過程を見

込んだ看護師および施設環境への要望」では回復期の児の

遊びや患児から離れないための施設改善が聞かれた。「患

児の回復や看護師の励ましによる安心感の実感」では児の

回復や看護師の気遣いにより安心感を得ていた。【考察】

患児に付き添う母親は患児のことを一番に考えており、母

親の自身の生活や施設のへの要望などを我慢している。看

護師は母親へ声を掛け続けていくことで、母親の思いや体

験していることを知ることが重要である。また、入院生活

が快適になるように病棟規則や病院施設の改善、患児や母

親への柔軟な対応の検討が求められる。【結論】入院した

患児に付きそう母親の日常生活体験より 7のカテゴリーが

抽出された。

示説11-4

NICU/GCU 退院児の在宅移行期における育児支

援に関する看護師の意識調査

キーワード:在宅移行期 育児支援 看護師の意識

○松井 智子1),中村 カンナ1)

1) 佐世保市総合医療センター

【はじめに】低出生体重児は養育上の問題が生じやすく、

退院後の母親への育児支援は重要な課題である。母親の思

いに関する研究が多くなされている一方で、看護師の意識

に関する研究はほとんどなく、今回取り組んだ。【目的】

在宅移行期の育児支援に関する現状や看護師の意識を明

らかにし、教育的介入やシステム構築に反映する。【方法】

Ⅰ)対象:A病院 GCU 経験 3 年以上の看護師 3名。Ⅱ)デー

タ収集・分析方法:半構成的インタビューを行い、逐語録

を作成。内容の類似性・相違性を検討し、分類・カテゴリー

化した。【倫理的配慮】本研究は A 病院倫理委員会の承認

を得て開始した。対象者に個人が特定されないこと、自由

意思による参加・途中撤回の自由を文書で説明し同意を得

た。インタビューは同意を得て録音し、論文作成後にデー

タは消去した。本演題発表に関して、開示すべき利益相反

関係にある企業等はない。【結果】インタビューで語られ

た内容から 4 つのカテゴリーと 12 のサブカテゴリーに分

類された。以下カテゴリーを<>、サブカテゴリーは「」

で示す。<児の家族を知る>では、「母親の背景」「育児協

力者」を中心に情報収集が行われていた。<在宅での生活

を意識した関わり>では「退院後のイメージトレーニング」

「両親への言葉でのサポート」「退院後の支援に向けた他

部門との情報共有」に分類された。<退院後の継続した関

わり>では「母児の様子の聞き取り(電話訪問)」「小児科

外来との情報共有」「小児科外来受診時のサポート」に分

類された。<退院後の継続支援の必要性と充実感>では

「電話訪問に対する意識」「電話訪問の困難さ」「小児科外

来へ立ち会うことによる充実感」「今後の継続看護に対す

る意識」に分類された。【考察】退院後の関わりは、入院

中の退院を見据えた支援の評価の場であると共に、在宅で

の変化に母親が対応できるよう支援する場でもある。児や

母親の特徴、入院中の指導内容を知っていることは、即座

に退院後の変化に合わせて母親への支援ができることに

繋がる。入院中の支援が有効だったと評価できたり、変化

に即した支援ができるという事実が、NICU/GCU 看護師が退

院後早期の支援者に適していることを認識させ、充実感に

繋がったと考える。【結論】今後は、経験の有無に関わら

ず継続的に育児支援ができるような教育と電話訪問の困

難さの改善や小児外来・病棟との連携の強化を図っていき

たい。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説11-5

トリクロリールⓇシロップの服用方法に関する

工夫の効果

キーワード:トリクロリールⓇシロップ 催眠剤 与薬

内服形態の工夫

○小出水 和恵1),瀬谷 愛里1),尾﨑 弘美1)

1) 草加市立病院

【はじめに】A 病院小児科外来において,MRI や脳波検査

では,児の年齢や発達段階によって安静への協力や理解が

得られない場合,前処置で安全性の高いトリクロリールⓇ

シロップを,薬杯やスポイトを用いて与薬しているが,内

服に時間がかかり,また内服できないこともあり,内服方

法の工夫が必要と感じた。そこで,本研究は内服形態を砕

氷状にすることによる効果を明らかにすることを目的と

した。【方法】研究対象者は,小児科外来に通院しトリク

ロリールⓇシロップを内服する3歳以上10歳以下の児とそ

の家族とした。内服方法は,薬杯にトリクロリールⓇシロッ

プと砕氷を入れた。内服後,小児科外来看護師が対象者に

口頭で内服状況について,聞き取り調査を実施した。回答

は単純集計した。【倫理的配慮】本研究は,A病院看護研究

倫理審査委員会相当の機関の承諾を得て実施した。対象児

の保護者に対し,本研究の趣旨および研究参加は自由意思

であり,不参加により不利益を被ることはないこと,内服

前であれば同意を撤回できること,内服後は撤回できない

ことも説明し,書面にて承諾同意を得た。また,トリクロ

リールⓇシロップを冷やしても薬剤変化がないことを,製

薬会社に確認した。【結果】対象児は,3歳 5名,4歳 3名,

5歳 2名,6歳 1名,7歳 1名,8歳 2名,9 歳 1名の 15 名

であった。15 名中「嫌がらずに飲めた」11 名(73%),「嫌

がったが内服出来た」4 名(27%)であった。そして「氷

があったほうがよかった」60%,「氷が嫌い」13%,「どち

らでもよい」27%であった。さらに,本研究の内服方法で

は,従来のように強制的にスポイトで内服したり,ジュー

スと交互に飲んだりする児はいなかった。【考察】トリク

ロリールⓇシロップは,独特な匂いや苦味,甘味が強いた

め,そのまま内服することは児にとって苦痛なことである。

したがって,砕氷を使用したことで口腔内の温度が下がり,

味覚が一時的に鈍くなり内服しやすくなったことや,薬独

特の匂いが抑えられ,強い甘味も抑えることができたこと

が効果的であったのではないかと考える。さらに,今まで

のジュース,お茶などに加えて砕氷という選択肢が増えた

ことは,児や家族にとって検査導入をするうえでよい援助

につながったと考える。【結論】トリクロリールⓇシロップ

は,砕氷に浸透させることで内服しやすくなり効果的で

あった。

示説11-6

思春期に小児 ICU へ入室した子どもの体験と

思い

キーワード:小児 ICU 集中治療 思春期 体験 思い

○梅津 友里1),菖蒲 裕香1),七尾 眞季1), 入江 千恵1),大村 佳祐1),阿部 慶佑1), 小島 マユミ1)

1) 宮城県立こども病院

【はじめに】入院は思春期の子どもの心身に様々な影響を

及ぼすが、思春期の子どもの ICU 入室に焦点を当てた研究

は見当たらない。【目的】思春期に小児 ICU へ入室する子

どもへの看護の質向上のため、思春期に小児 ICU へ入室し

た子どもの体験と思いを明らかにする。【方法】思春期に

小児 ICU へ入室した子ども 7 名に半構成的面接を行い、質

的記述的に分析した。【倫理的配慮】宮城県立こども病院

倫理委員会の承認を得た。対象者と保護者に研究目的や方

法、参加の自由や参加有無による不利益が生じないことな

どを口頭・書面で説明し同意を得た。【結果】思春期に小

児 ICU へ入室した子どもの体験は、≪治療や症状による身

体的苦痛とのたたかい≫≪時間・場所・記憶の曖昧さ≫≪

治療の必要性を理解しての我慢≫≪上手くいかなかった

医療者との意思疎通≫≪自分なりの対処方法の見出し≫

の 5カテゴリ、思いは、≪できることが限られた中で過ご

すことが辛かった≫≪生命の危機を感じた≫≪これまで

の自分に戻れるのか不安だった≫≪緊急入室になり家族

や友人への影響が心配だった≫≪環境や家族との分離の

影響で寂しかった≫≪環境や医療者の関わりにより安心

した≫≪ICU 入室によりプラスの気づきがあった≫の 7 カ

テゴリが抽出された。【考察】思春期の子どもは、ICU で身

体的苦痛を体験するとともに、現在の状況や将来に不安を

抱いていた。加えて、医療者と意思疎通が上手くできない

体験をしており、コミュニケーションの不足が不安解消を

妨げている可能性が示唆された。一方で、治療の必要性を

理解し、自分なりに対処をしていることも明らかになった。

思春期は理解力や問題解決能力が発達する時期であり、子

どもが思いを表出し、正しい情報が得られるよう支援を行

い、理解や対処行動を促すなどの自己効力感を高める援助

が必要と考えられる。また環境や周囲の関わりに安心感を

抱いており、子どもの個別性に配慮しながら病室環境や面

会時間の調整を行うことが重要と考えられる。さらに、ICU

入室により家族や友人を気遣う、プラスの気づきができる

など精神的・社会的発達の一面がうかがえ、成長の機会に

もなりうることが示唆された。【結論】思春期に小児 ICU

へ入室する子どもには精神的・身体的苦痛が存在し、苦痛

緩和のために子どもとコミュニケーションをとりながら

子どもの思いの表出や情報提供、対処行動を促す支援が重

要である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説11-7

NICU 入院児への療育支援における課題

-未熟児出生連絡票の活用と地域保健師との

連携-

キーワード:療育支援 未熟児出生連絡票 地域保健師と

の連携 産後特定妊婦母児

○阿左美 まゆ美1),山﨑 美保子1),清水 瞳1),井上 理恵1)

1) 桐生厚生総合病院

【はじめに】A 病院は地域周産期センターの役割を担って

いる。先行研究で「行政機関保健師は医療機関からの情報

は早い方が良い。」と明らかである。しかし、保健師と看

護職の特定妊婦母児に対する意識差を調査した先行研究

はない。NICU 入院児への療育支援において、NICU 看護職

が伝えたい事、保健師が医療機関から得たい情報、時期に

ついて調査し、早期からの療育支援に繋げたいと考えた。

【目的】保健師と看護職の特定妊婦母児に対する意識差を

調査し、NICU 入院児への療育支援時の連絡票による連携の

課題を明らかにする。【方法】対象 B 県市町村母子保健担

当窓口 51 カ所の保健師と A 病院新生児未熟児センター看

護職 41 名。厚労省の特定妊婦の様子や状況例等を基に作

成した質問紙。分析方法は単純集計とマンホイットニー検

定、クラスカルウォリス検定。自由記載は意味内容毎にカ

テゴリー化。【倫理的配慮】調査対象者へは調査の目的、

内容及び匿名性確保と個人情報の保護、研究に同意を得な

い場合も不利益を被らない事を文書にて説明し、質問紙調

査の回答をもって同意を得た。自施設の臨床倫理審査委員

会の承認を得た。【結果】質問紙の回収率は、保健師 47.1%、

看護職 100%。連絡票を受け取る適切な時期は退院間近

58.3%。送付の適切な時期は NICU42.3%GCU80.0%、共に退

院間近が最多。特定妊婦母児の捉え方は、4項目の有意差。

妊娠・出産、妊婦の行動・態度等、家族・家庭の状況の各

群内における所属別のハイリスクの捉え方は、項目データ

間に有意差。保健師は地域で生活していく上でのリスクを

より重要とし、NICU は身体的危害をより重要とした。自由

記載は連携システムの課題とするコード数が最多で、連携

担当者の有無、情報提供の統一性の問題、情報提供後の連

携の問題、事例検討会の課題、介入の困難差、病院内の連

携の 6 つのサブカテゴリーが挙がった。【考察】先行研究

で「保健師と医療機関の助産師や看護師では支援の時期や

方法も異なる。」と述べているように、ハイリスクの捉え

方で保健師と NICU の意識に差があった。今後はハイリス

クをアセスメントする力の育成と連絡票の活用、他機関の

役割を理解し、相互強化が重要。【結論】1.退院間近には

保健師、医療機関で情報共有が必要。2.産後特定妊婦母児

の捉え方は保健師、医療機関に意識差がある。3.認識や情

報共有、連携の方法が課題。

示説12-1

胸骨正中切開による開胸術後患者の痛みへの

介入

-疼痛管理による早期離床-

キーワード:ICU 開胸術後 痛みへの介入 早期離床

○四家 直美1),野口 訓彦1),木田 あゆみ1)

1) いわき市医療センター

【はじめに】A病院 ICU では胸骨正中切開による開胸術(以

下開胸術)を受けた患者の 60%が、挿管チューブ抜去(以

下抜管)から翌日までに端座位になることができなかった。

鎮痛剤投与の基準がなく適切な鎮痛を図れないことが、積

極的に離床を進められない要因として挙げられた。そこで、

鎮痛剤投与方法を統一し、痛みへの介入を行うことで早期

離床ができるか検討した。【目的】開胸術後患者に痛みへ

の介入を行うことで、抜管後 24 時間以内に端座位になる

こと(以下早期離床)ができるか明らかにする。【方法】

期間:平成 30 年 6 月~11 月。対象:定期開胸術を受け、

抜管後に痛みを自己申告できる患者。対照群:平成 29 年

12 月~平成 30 年 4 月の 37 名、介入群:平成 30 年 6 月~

11 月の 37 名。方法:痛みの評価スケールを NRS とし、NRS4

以上で鎮痛剤投与とした。痛みと鎮痛剤に関する患者用

リーフレットを作成し、術前オリエンテーションを行った。

抜管直後はヘッドアップ 60 度にし、端座位訓練前に痛み

を評価した。NRS4 以上の場合は鎮痛剤投与を行い、NRS4

未満で端座位訓練を行った。訓練時には担当看護師が、患

者の身体に手を添え声掛けを行った。分析方法:早期離床

ができた人数を Fisher 直接確率法で比較した(p<0.05)。

【倫理的配慮】総合磐城共立病院倫理委員会の承認を得た。

研究参加は自由意思、不参加でも不利益は生じない、結果

を公表することを説明し同意を得た。【結果】早期離床で

きた患者は、対照群 3名(8%)、介入群 15 名(41%)で、

介入群で有意に増加した(p=0.001)。介入群全員が NRS

で評価し、適切な鎮痛管理ができた。早期離床ができた 15

名のうち 6 名は鎮痛剤投与後 NRS4 以下、また 9 名は NRS4

未満で端座位訓練を開始した。看護師が患者に手を添え声

掛けたことで、患者より「安心して訓練ができた」との意

見があった。【考察】端座位訓練開始前に痛みを NRS で正

しく評価し、適切な時期に鎮痛剤投与を行うことで離床時

の痛みが軽減され、早期離床できたと考える。薬理学的介

入だけでなく、タッチングなどの非薬理学的介入を合わせ

ることで患者に安心感を与え、離床を進めることができた。

患者個々の状態に応じた看護ケアを提供し、早期離床につ

なげていきたい。【結論】鎮痛剤投与方法を統一した痛み

への介入により、開胸術後患者の早期離床が有意に増加し

た。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説12-2

急性期病棟、回復期病棟における転倒・転落の

現状の把握

-転倒・転落の要因からの予防・改善策を見出

し転倒・転落の減少を目指して-

キーワード:転倒 転落 医療事故

○岡崎 恭恵1),村上 怜奈1),野田 菜月1), 平野 良展1),中園 美和1)

1) 社会医療法人陽明会小波瀬病院

【はじめに】入院中の転倒・転落による後遺症や死亡は、

医療紛争や、医療訴訟に訴えるという訴訟問題まで発展し

ており、A 病院においても転倒・転落の事故件数が上位を

占めている。今回、転倒、転落の現状把握と今後の対策に

ついて検討したいと考えた。【目的】転倒転落の要因を明

らかにし、転倒転落の予防対策を検討する。【方法】2015

年 4月~2018年 3月の 3年間に入院した患者の転倒転落に

ついてデータを数値化し、単純集計した。【倫理的配慮】

社会医療法人陽明会小波瀬病院倫理委員会の承認後、対象

者に対して本研究の趣旨と研究の協力は自由意思である

こと、不参加であっても不利益にならない事、得られた

データは研究以外には使用しない事を院内掲示及び HP で

説明。利用不可の申し出がなかった患者のデータを使用し

た。【結果】対象者は 299 名、男性 125 名(42%)、女性患

者 174 名(58%)。平均年齢は 82.41±11.2 歳で 80 歳代が

143 件(48%)と多かった。入院後 17 日以内、術後7日目

以降で車椅子利用、整形外科病棟の病室での転倒が最も多

く、18 時、24 時の転倒が多かった。トイレを使用し、転

倒・転落評価シートでは危険度Ⅱで離床センサーを使用し

ていない方の転倒が多かった。【考察】転倒の要因として、

離床が拡大、動けるとういう過信から転倒が発生したと考

えられる。一般的な原因である、認知症、麻薬や睡眠薬の

使用、点滴の有無などは今回の転倒には関係性がなかった。

センサー使用時の状況でも転倒しているのは使用してい

る事で安心感があったのではないかと考える。転倒の発生

時間帯では 18 時と 24 時が多かった。これは、夜勤帯でナー

スコールの対応がすぐにできない事、遠慮がちな方は自身

の身体能力を理解できず、自ら行動する事も原因ではない

かと考えられる。また、転倒スコアで危険度がⅡの方の転

倒が最も多かった。これは転倒・転落アセスメントスコア

用紙があるが、評価のみで終わっており、アセスメント結

果が看護に反映されていなかったと考える。【結論】1.A 病

院における転倒、転落は入院して 17 日以内、術後 7 日目

以降が多かった。2.離床センサーを使用してない状況で病

室での転倒が多かった。3.転倒の発生時間帯は 18 時と 24

時が多かった。4.認知症、麻薬や睡眠薬の使用との関連性

はなかった。5.転倒スコアで危険度Ⅱの方の転倒・転落が

最も多かった。

示説12-3

転倒転落に対する看護師の意識と課題

-外科病棟看護師のアンケート調査から-

キーワード:転倒転落 安全 意識 認識

○松村 友理1),荒江 陽子1),東 由香里1), 大江 美由紀1)

1) 富山市立富山市民病院

【はじめに】医療者は患者が安心して医療を受ける環境を

整え、提供する使命を担っている。看護師の経験年数によ

り対策や認識に差が生じている印象があり、今後の具体策

を見出すために研究を行った。【目的】看護師の転倒転落

への意識を明らかにする。【方法】A病院の外科病棟勤務看

護師 100 名に過去の文献を参考に看護師の行動やマニュア

ルについて 31 項目の内容のアンケートを配布して一元配

置分散分析で比較した。【倫理的配慮】アンケート用紙に

目的及び方法、意義、協力の任意性、研究参加により不利

益がない事を文書で提示した。研究の協力は自由意思であ

り、回答をもって同意を得られたものとした。個人が特定

されないよう番号化して集計し、病院倫理委員会の承認を

得て行った。【結果】有効回答率 81%。7 つの項目に有意

差を認め、「転倒転落は仕方がない」は経験が浅い看護師

の方が予防出来ないと感じていた。「ドレーン類の位置の

確認」「不要ルート類抜去の確認」「他の看護師へ声かけ」

「病室考慮」「マットレス選択」は、経験が長い看護師の

方が確認をしていた。「マニュアル」は経験が浅い看護師

が読んでいた。【考察】経験が浅い看護師の方が転倒転落

は予防出来ないと感じていた。経験が長い看護師の方がド

レーン類の確認、危険について他の看護師への声かけを行

い、病室考慮やマットレス選択をしていた。経験の長い看

護師が転倒転落の危険がある事を認識していると考えら

れる。これは、経験を重ねることで転倒転落の危険性に気

付く力と実践での判断力に差が生じていると考えられる。

「マニュアル」は経験の浅い看護師は転倒転落への不安が

あるため、マニュアルを読んでいると考えられる。経験の

長い看護師は経験に基づく直観能力が養われているが、マ

ニュアルに沿った対応も必要となるため、マニュアルを再

読する必要がある。【結論】経験を重ねるにつれて転倒転

落の危険性を認識していると考えられるが、患者の状態把

握とアセスメント能力を高めるために経験年数に合わせ

た教育や働きかけが必要である。看護師は安全な療養環境

やケアを選択し、事故防止策を実施する責任があり、転倒

転落の危険のある患者に対して経験年数を問わず共通の

認識を持って対応する必要がある。更に多職種でのチーム

カンファレンスの実施で意識を高め、医療安全マニュアル

の再読を促すことで患者により安全な療養環境とケアを

提供していきたい。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説12-4

ICU 医師・看護師カンファレンス開始後の評価

-医師・看護師の認識調査からの一考察-

キーワード:ICU カンファレンス 調査 チーム医療

○吉田 友和1)

1) 医療法人王子総合病院

【はじめに】A 病院 ICU では医師と看護師の目的共有を強

化するための医師・看護師カンファレンス(以下カンファ

レンス)を開始した。開始後 3か月間のカンファレンス実

施率は 38~43%であった。今回、医師と看護師のカンファ

レンスに関する認識を調査し、カンファレンスの現状と今

後の課題が示唆されたので報告する。【目的】医師・看護

師それぞれのカンファレンスに関する認識を調査し、現状

を明らかにする。【方法】ICU の担当科医師 11 名・看護師

17 名を対象に対し、独自に作成した調査票を配布する。調

査票の項目は①カンファレンスは必要と思うか、②カン

ファレンス内容は期待するものか、2 つのカテゴリーに分

け質問し、選択形式で回答を得た。【倫理的配慮】調査へ

の参加は自由意思であること、調査票は無記名とし不参加

によって本人に不利益はないことを十分に説明した。本研

究は王子総合病院看護部倫理検討委員会にて承認を得た。

【結果】(項目①)では「そう思う」が医師:72.8%、看護

師:100%。(①の理由)では「治療方針の共有が強化される」

が医師:50%、看護師:64.7%。(項目②)では「そう思う」

が医師:45.5%、看護師:76.5%。(②の理由)では「指示変

更などの確認が行いやすくなった」が医師 40%、看護

師:38.5%、「治療方針が共有されるようになった」が医

師:20%、看護師:61.5%であった。【考察】チーム全体がカ

ンファレンスは目的を共有するために必要なものと認識

しており、それがカンファレンス実施に繋がっているもの

と考える。しかし現状において、カンファレンスの内容が

期待するものであり、目的が共有されるようになったとい

う実感には職種間に差があり、とくに医師は実感できてい

ないことが明らかになった。看護師にとってカンファレン

スは目的を共有するために有用なものとなっており、全員

がその必要性を感じていると考える。以上のことから、医

師・看護師ともにさらに目的が共有できる効果的なカン

ファレンスに発展させていくことが、今後の課題であると

示唆された。【結論】1.全体が目的の共有の必要性を感じ

カンファレンスの実施に繋がっている。2.現状ではカン

ファレンスに対する認識に差があり、医師よりも看護師の

ほうが目的が共有されていると実感している。

示説12-5

脳神経センターにおける医師と看護師の情報

共有のための役割期待

キーワード:情報共有 役割期待 状態変化

○長尾 美沙子1),徳本 祐子1),山田 由李子1), 本多 里美1)

1) 福岡大学病院

【はじめに】チーム医療の提供には,各職種間の良好なコ

ミュニケーションによる情報共有が重要である。しかし,

患者の状態変化時に看護師が医師へ報告し,医師の言動か

ら看護師が伝えたい緊急性が十分伝わっているか疑問に

感じる場面や,医師から看護師の情報共有のタイミングに

ついて指摘を受ける場面がある。医師と看護師互いの役割

期待を明確にし,認知することが役割遂行を可能にしより

よい連携を図るためには重要であり,本研究に取り組むこ

とにした。【目的】患者の状態変化時の医師-看護師の情報

共有のための役割期待を明らかにする。【方法】対象は A

病院脳神経センターに勤務する医師 4 名,看護師 4 名。研

究デザインは質的記述的研究で,情報共有における看護師

への役割期待についてインタビューガイドに沿ってイン

タビューを行い,得られたデータを質的帰納的に分析した。

【倫理的配慮】所属施設の看護部倫理審査委員会の承認を

得た。【結果】医師・看護師が考える看護師への役割期待

は「患者の状態や情報についての十分な把握」「看護師と

してのアセスメントと提案」「端的で的確な医師への情報

提供」「医師の都合への配慮」「情報共有を誰にいつすべき

かの選択」「経験年数問わず一定の知識・技術の習得」「報

告すべき内容かどうかの判定」「日頃からコミュニケー

ションを図り治療方針を共有」「緊急時,迅速な医師への診

察依頼」「予測される経過や処置への迅速な準備」「看護師

同士での情報共有・連携」「患者・家族の思いを引き出し

医師と共有」「可能な限り対面での情報共有」の 13 カテゴ

リー,32 サブカテゴリー,197 コードから構成されていた。

【考察】看護師への役割期待には,情報の明示性,医師へ

の配慮と勤務体制の把握があることが示唆された。また,

「経験年数問わず一定の知識・技術の習得」「日頃からコ

ミュニケーションを図り治療方針を共有」「患者・家族の

思いを引き出し医師と共有」は,看護師からは抽出されな

かったカテゴリーであり,医師は看護師が認識している以

上に,知識・技術,治療方針の把握,意思決定支援といった

高い専門性を求めていることが示唆された。看護師は他職

種と連携し,チームの構成要因としての期待を果たすため

にも,自己研鑽し能力の維持・開発を続けていくことが重

要である。【結論】看護師への役割期待は,情報の明示性,

医師への配慮と勤務体制の把握,専門性の向上であった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説12-6

手術に関わる医師・看護師のアイガード着用率

向上へ向けての取り組み

キーワード:眼に対する粘膜暴露 アイガード 粘膜暴露

対策意識

○岩下 哲也1)

1) 田川市立病院

【はじめに】A 病院手術室では、アイガードの着用を推進

している、しかし未着用の症例で粘膜暴露が発生した事例

があった。そこで A病院のアイガードの着用に至らない要

因を明らかにし、アイガードの着用率向上に向けた取り組

みを行った【目的】手術に関わる医師・看護師のアイガー

ド着用率の向上【方法】1.期間:平成 30 年 4 月から 9 月

まで 2.対象:手術に関わる医師23名・看護師14名3.

方法:1)アンケート調査、対策前後のアイガード着用率

調査、分析方法:対策前後の着用率変化を医師・看護師で

t-検定等分散を仮定した2標本による検定の実施2)新

アイガードの選定3)看護師研修会と研修会後の意識調査

【倫理的配慮】田川市立病院倫理委員会の承認を得た後、

研究にあたり個人の特定、不利益等生じない事を説明しア

ンケートの回答をもって同意とした【結果】アンケートよ

り、アイガードの視野違和感42%、眼鏡使用の為不要3

1%、感染症症例時着用19%、着用が面倒である5%、

着用時の疼痛5%等であった。そこで新アイガードの導入

と、看護師研修会実施後の意識調査を行い、看護師全員の

アイガード着用意識の向上が判明した。医師・看護師の中

で、多者が着用している姿をみて着用に至る場面もあった。

また対策前後で着用率を比較した結果、着用率の変化では

医師9%から50%P=0.036(P<0.05)となり、

看護師30%から89%P=0.005(P<0.05)と

向上し有意差を認めた。【考察】今回の調査において、ア

イガード自体の問題と、粘膜暴露対策意識の低下が着用に

至らない要因であると考えられた。そこで新アイガードの

導入で視野と疼痛に伴う、アイガード問題については改善

を図る事ができた。また粘膜暴露対策意識の低下に対して

は、看護師のアイガード着用意識の向上により、看護師か

ら他看護師へ、看護師から医師へアイガードの着用を促し

た事で着用率が向上した。それに伴い粘膜暴露対策意識が

低い医師・看護師にも、多者のアイガード着用行動が多者

の行動を追従するという心理学における社会的証明の原

理もあり着用に至った事が考えられる。結果として石川ら

の述べる看護師の直接的な関わりが発端となり、アイガー

ド着用率が向上したと考える。【結論】アイガード自体の

問題解決と、看護師のアイガード着用意識の向上と看護師

の直接的な関わり、社会的証明の原理により着用率は向上

した。

示説12-7

急性期病棟看護師の手指衛生に対する意識向

上に向けた取り組み

キーワード:手指衛生 意識付け 行動変容

○末木 佑委1),高取 充祥2),高取 美香1), 水下 陽子1),武川 真紀1),木村 香菜1), 中野 友紀1)

1) 地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院

2) 山梨県立大学

【はじめに】医療現場において手指衛生を適切に実施する

ことは感染予防行動として重要なことである.B 病棟では

啓蒙活動中や調査者がいる場面では手指衛生遵守率は上

昇するが,取り組み期間が終了すると遵守率は低下し手指

衛生が定着しない現状があった.【目的】スタッフの手指

衛生遵守率向上に向け,手指衛生に対する意識を分析し介

入を行う.【方法】B 病棟に勤務する看護師 24 名に対して

①手指衛生についてのアンケート調査:5 つのタイミング

を基に病棟特性を踏まえた 41 場面を抽出し 5 段階自己評

価(2 回)②iPad による 5つのタイミングによる手指衛生遵

守率の調査(2 回)③日々のアルコールゲル使用量の調査

(5 ヶ月間)④手指衛生に対するインタビュー(5項目 1人 5

分程度)を 2018 年 7 月~11 月に行い分析した.また,10

月には蛍光塗料を用いた学習会を行った.【倫理的配慮】

紙面にて研究の目的・方法・参加の自由意思・辞退した場

合の不利益が生じないことを説明し同意を得た.山梨県立

中央病院倫理審査会の承認を受け実施した.【結果】手指

衛生についてのアンケート調査では 38 項目で上昇し,「輸

液ルート確認・速度調整後」と「部屋移動後」については

有意に上昇した.手指衛生遵守率の調査では,「患者に触

れる前」「患者に触れた後」「清潔/無菌操作の前」「患者周

囲の物品に触れた後」において上昇がみられた.アルコー

ルゲル使用量は最終月が最も多かった.蛍光塗料を用いた

学習会後のインタビュー調査において,「蛍光塗料を用い

た実技で菌の多さに驚き自分の手が汚いと感じ手指衛生

の必要性が分かった」「感染予防行動は看護師として倫理

的に行う当たり前の事だと感じた」などの意見がみられた.

【考察】手指衛生を行う場面を病棟独自に抽出しアンケー

トで自己評価をすることで自己の振り返りと共に知識の

修得に寄与し,遵守率上昇に繋がった.蛍光塗料を用いて

可視化し手指衛生の技術を客観視し,個別インタビューで

自身の行動を振り返ることで手指衛生という行動の内発

的要因に繋がった.その結果,手指衛生遵守において自己

評価・他者評価ともに向上したことが考えられる.【結論】

病棟特性に応じた手指衛生の場面を具体的に自身で振り

返り知識として修得できたこと,蛍光塗料を用いて可視化

し自身の手指衛生技術を客観視できたこと,インタビュー

で自身の行動を振り返ることで手指衛生の意識向上に繋

がった.

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説13-1

整形外科術後患者に対する段階的離床プログ

ラムの効果

-初回離床時の起立性低血圧症状減少に向け

た取り組み-

キーワード:整形外科術後 段階的離床 起立性低血圧

○青木 里沙子1),鈴木 かおり1), 増田 誠一郎1)

1) 地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院

【はじめに】手術後の初回離床時に生じる起立性低血圧等

の自覚症状は早期離床を阻害する要因となる。先行研究で

は段階的離床プログラムにより自覚症状が軽減し,離床を

促す事が明らかになっている。しかし,整形外科術後患者

を対象にした調査は行われていない。本研究では全身麻酔,

脊椎麻酔下で行われた整形外科手術後の初回離床時に段

階的離床プログラムを導入し,起立性低血圧の自覚症状に

対する効果を明らかにする。【目的】整形外科手術後初回

離床時の起立性低血圧症状に対する段階的離床プログラ

ムの効果を明らかにする。【方法】調査期間:2018 年 5 月

~10 月。対象者:調査期間中に急性期病院で全身麻酔・脊

椎麻酔で整形外科手術を受けた患者。5月~7月は対照群,

8月~10 月は介入群。データ収集方法:観察法及び診療録

調査。調査項目:1)背景要因:年齢,性別,術前 BMI,糖

尿病・高血圧の既往の有無,2)手術要因:手術部位,麻酔

の種類,術後の持続麻酔使用の有無,離床開始日,術前安

静の有無,離床前鎮痛剤使用の有無,術中出血量,離床前・

後の疼痛,3)アウトカム:離床後の起立性低血圧自覚症状

の有無。統計解析は SPSSver.24 を使用,有意水準は 5%。

【倫理的配慮】研究の概要と個人情報の保護,参加は自由

意思である事,同意の方法,研究者への問合せ方法,不利

益が生じない事を説明,事前に対象者から文書同意を得た。

本研究は静岡県立総合病院臨床研究倫理審査の承認を得

た(SGHIRB#2018006)。開示すべき利益相反関係はない。【結

果】分析対象は対照群 40 名(男性 57.5%,平均年齢 60.7±

17.9 歳),介入群 37 名(男性 56.8%,平均年齢 57.1±21.1

歳)。両群に背景要因及び手術要因の有意差はなかった。

離床後の起立性低血圧自覚症状があった者は対照群 9 名

(22.5%)に対し介入群 2 名(5.4%)であり,段階的離床

プログラムにより有意に低下した(リスク比 0.20,p=0.03)。

【考察】段階的離床プログラムは循環動態を安定させ,整

形外科術後患者においても起立性低血圧症状の低下に寄

与したと考えられる。離床開始基準・中断基準・アセスメ

ントの視点を組み込んだプログラムは看護師への教育的

効果もあり,日常業務に組み込み定着させる事が課題であ

る。【結論】段階的離床プログラムは整形外科術後患者の

起立性低血圧自覚症状減少に有効である。

示説13-2

局所麻酔で白内障手術を受けた高齢患者の手

術中の思い

キーワード:高齢患者 局所麻酔 手術中の思い

○川村 麻美1),濱中 愛1),小貫 信子1), 鶴田 享子1),中野 ゆかり1)

1) 順天堂東京江東高齢者医療センター

【はじめに】高齢化社会における白内障手術は、QOL の改

善のみならず転倒防止等に繋がることから手術件数は増

加している。この手術の特徴は、局所麻酔という覚醒下で

の実施であること、手術用ベッドでの同一体位の保持が必

要であること、短期入院である為に医療者と接する時間が

短いことがあげられる。そのため、不安や緊張などのスト

レスを抱えたまま手術を受けているのではないかと考え

た。今回、私達は、高齢患者の手術中の思いを明らかにし、

安心して手術を受けることができるための看護への示唆

を得たいと考えた。【目的】局所麻酔下で白内障手術を受

けた高齢患者の手術中の思いを明らかにする。【方法】対

象者は、平成 30 年 6月~9月の間に 1泊 2 日以上の入院で

本研究の趣旨に同意・協力が得られ、局所麻酔で白内障手

術を受けた 50 名に対し半構造化面接を行い、質的帰納的

に内容分析をしたのち記述統計を行った。【倫理的配慮】

順天堂東京江東高齢者医療センター倫理委員会にて承認

を得た後、対象者から自由意思による承諾を得ていること、

不利益を回避するための配慮を実施した。【結果】内容分

析の結果、22 項目のカテゴリが抽出された。〈情報が少な

い事に対しての不安〉21 人、〈手術に対して緊張〉14 人、

〈手術操作に対する苦痛〉13 人、〈看護師の対応に満足〉

10 人、などの思いが明らかとなった。〈情報が少ない事に

対しての不安〉では、具体的な手術操作や麻酔方法、手術

室での流れがわからない事で不安を感じていた。また、〈手

術に対して緊張〉〈手術操作に対する苦痛〉〈看護師の対応

に満足〉からは、手術中に医療者が声を掛けることや、手

を握るという行為が高齢患者に安心・リラックスを与えて

いるとの結果が得られた。【考察】医師、看護師が行う術

前オリエンテーションでは、高齢患者が理解しやすいよう

な写真入りパンフレットを用いるなど、外来看護師や病棟

看護師と連携して行うオリエンテーションの工夫が必要

であると考えた。医療者は意識してコミュニケーションを

図ることが安全で安心な手術の実施に重要であることが

示唆された。【結論】1)白内障手術を受けた高齢患者の手

術中の思いは、22 項目のカテゴリが抽出された。2)高齢

患者が理解できる術前オリエンテーションの工夫が必要

である。3)医療者は意識してコミュニケーションを図る

ことが、安全で安心な手術の実施に重要である。

�������

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説13-3

開心術クリニカルパスのバリアンス分析と今

後の課題 キーワード:開心術 クリニカルパス アウトカム バリア

ンス

○光成 夏海1),川田 久美子1),西 一美1), 本田 奈三子1),田中 莉奈1),吉野 和美1), 原口 佳寿美1),小川 かずみ1),石垣 恭子2)

1) 社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院

2) 兵庫県立大学 大学院 応用情報科学研究科

【はじめに】A 病院の開心術にはクリニカルパス(以下パ

スとする)を使用している。手術を受ける多くが高齢者で

あり,術後合併症等で離床が進まずバリアンスが発生し入

院期間が延長している。主なバリアンスの発生について調

査を行った。【目的】パス使用患者のバリアンス発生につ

いて調査を行い今後の課題を抽出する。【方法】対象は平

成29年 4月~平成30年 3月に開心術を受けた患者84名。

パスアウトカム項目よりバリアンスが発生した内容を抽

出。バリアンスが多かった項目について,予定入院と緊急

入院とで Excel を用いてχ²検定を行った。【倫理的配慮】

本研究は佐世保中央病院倫理委員会の承認を得たうえで

データを記号化,個人名が特定されないようにし,不利益

を回避するための配慮を実施した。【結果】術当日~7日目

迄の逸脱が多かったアウトカム項目は1.ADLが拡大する2.

経口摂取ができる 3.肺合併症を起こさない 4.循環動態が

安定する。それに対するバリアンス内容は,抜管遅延,呼

吸・循環動態不良や疼痛によるものであった。術後 8~14

日目迄は,1.内服の自己管理ができる 2.退院後の生活に対

し不安がない 3.生活の留意点がわかる 4.退院後の注意事

項について理解することができるであった。それに対する

バリアンス内容は,認知症患者や高齢者が多く内服の自己

管理に時間を要している。があげられた。予定入院と緊急

入院のバリアンスの割合に有意差があったアウトカム項

目は,経口摂取ができる(p=0.00036)。ADL が拡大できる

(p=0.00058)であった。【考察】術当日~7 日目迄のバリ

アンスに至ったアウトカム項目は身体的原因からの発生

が主であった。患者の平均年齢が 72.3 歳と高齢であり,

抜管が遅れ,離床もパスの設定より遅れたと考える。また,

予定入院患者よりも緊急入院患者の方が,経口摂取や ADL

の拡大が遅れていることが示唆された。術後 8~14 日目迄

は指導に関するものが主であり,認知力低下や術後せん妄

によりバリアンス発生につながった。A 病院のパスのアウ

トカムは評価対象が患者本人のため,家族を含めた指導へ

の内容変更を検討する必要がある。【結論】1.手術を受け

る多くが高齢者であり,既存のパスではバリアンスが発生

している 2.患者層の変化によりアウトカム内容の見直し

が必要である 3.予定か緊急入院かの違いがバリアンスの

発生の一因となっている。

示説13-4

胸腔鏡下手術を受けた患者の離床に対する思

いの分析

キーワード:呼吸器外科 早期離床 術後 患者の思い

○田村 悟志1),金子 美菜1),畠山 莉奈1), 長堀 佑士1),野中 文子1),有馬 千恵1)

1) 春日部市立医療センター

【はじめに】低侵襲といわれる鏡視下手術を行った患者に

対して、患者の思いに寄り添った離床への看護介入を行う

ことができているのか疑問を持ち患者がどのような思い

を抱きながら離床を行っていたのかを明らかにする。【目

的】胸腔鏡下手術を受けた患者の早期離床に対する思いを

明らかにする。【方法】A病棟において胸腔鏡手術で肺葉切

除を行った患者を対象に面談を行い、SCAT を用いて分析し

た。【倫理的配慮】本研究は春日部市立医療センター倫理

審査委員会の承諾を得て実施した。研究目的と研究への自

由意思による研究への参加、プライバシー保護などについ

て文章と口頭で説明を行い、同意書へ署名にて同意を得た。

【結果】(A 氏)手術後、創部痛や留置物による可動制限に

対して苦痛を感じていた。看護師に気兼ねし、苦痛な思い

を我慢していた。(B 氏)離床時の下肢脱力感により離床へ

の抵抗があった。看護師の支持的な関わりが励みになった。

(C 氏)起き上がり時に創部痛による苦痛が強かったため、

朝の体重測定の時間を考慮して欲しかった。(D 氏)留置物

による拘束感を苦痛に感じていたが、離床することで回復

を実感していた。(E 氏)離床の必要性は理解しており早く

回復したいという気持ちがあった。その一方でリハビリに

対して体調や不安への配慮が不十分であったと感じてい

た。【考察】1.離床を阻害する苦痛では、創部痛や離床の

際の脱力感があった。さらに留置物が患者に不安と恐怖を

与え離床を妨げる一因となっていた。2.患者の回復への

努力に気づき、それらを認めるような声かけや寄り添った

関わりが患者の意欲を高めることに繋がる。3.回復に向

けた意欲では、離床できたことが回復への実感となってい

る。患者の持つ力や努力に気づき、それらを認めるような

声掛けや寄り添った関わりが患者の意欲を高めることに

繋がる。4.患者が離床援助に求めることでは、苦痛の緩

和だけでなく、術後の見通しを説明することを求めていた。

【結論】低侵襲といわれる胸腔鏡手術であるが創部痛や留

置物による苦痛を強く感じており、離床に対して不安や恐

怖心を抱いていることが分かった。看護師が精神的支柱と

なったとき、患者に安心感をもたらした。離床において看

護師は患者の苦痛な思いに寄り添うことが重要である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説13-5

心臓血管外科手術を受ける患者の思い

-術前から退院までを通して-

キーワード:心臓血管外科手術 周手術期 患者の思い

○矢島 加奈子1)

1) 埼玉石心会病院

【はじめに】技術の進歩やクリティカルパスの導入により

近年心臓血管外科手術を受ける患者の在院日数は大幅に

短縮しており一人の患者に深くかかわることが困難な状

況にある。術前から退院までを通し患者がどのような思い

を抱いているのかを明らかにする。【目的】心臓血管外科

手術を受ける患者の思いを明らかにすることで看護上の

示唆を得る。【方法】研究対象者 5名に術前(入院から手術

前日まで)・術後(術後一週間以内)・退院前(退院が決定

した時点)で半構成面接法を用いインタビューを行った。

語られた会話から現在の思いを抽出しカテゴリー化した。

【倫理的配慮】研究対象者へ目的と方法、研究への協力は

自由意思であることを説明し同意を得た。所属施設の倫理

委員会の承認を得た。【結果】分析の結果①苦痛やストレ

スを感じている②不安を感じている③周囲に対する思い

がある④健康への前向きな思いがあるという 4つの最終カ

テゴリーが抽出された。【考察】患者らは術後の身体的苦

痛や精神的ストレスだけでなく日常生活の制限や度重な

る検査に対してストレスを感じていた。術後の疼痛にばか

り目を向けがちであるが、検査や処置に対する事前の説明

も苦痛やストレスの緩和に有用であると思われた。②不安

には手術や合併症だけでなく退院への不安もあることが

分かった。不安はないと語っていてもそれは防衛機制であ

り本音ではない可能性がある。そういった患者の心理を思

い計る姿勢が必要である。③手術を受ける患者らは自分自

身のコントロールの働かない状況下で医療者にすべてを

任さざるを得ず、信頼しようとする思いと感謝を抱いてい

た。また同時に家族や周囲に迷惑をかけているのではない

かとの憂慮があった。そういった思いへの配慮や医療者へ

向けられる信頼や感謝を損なうことが無いような誠実な

対応が求められる。④からは健康に対する前向きな思いが

明らかとなった。術後の回復過程で改めて健康は有り難と

いうことを実感していた。退院前には指導を守り健康を持

続させようとする思いがあり、患者指導の重要性を再認識

した。【結論】看護師は患者の身体的苦痛や心理的ストレ

スの背景にあるものを把握し、不安な心理に寄り添う姿勢

が必要である。また、患者の思いを受容し信頼や感謝を裏

切ることが無いような対応が求められる。そして、健康へ

の前向きな思いが維持されるよう正しい知識の提供と分

りやすい指導を行っていく必要がある。

示説13-6

タブレット型端末を使用した術前オリエン

テーション導入の効果 キーワード:周術期 タブレット端末 術前オリエンテー

ション

○小野寺 大地1),井川 由貴2),水上 恵人1), 三枝 杏子1),伊藤 咲那1),川合 希1), 石川 文美子1)

1) 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院

2) 公立大学法人山梨県立大学

【はじめに】周術期では術後合併症予防や早期回復のため

の術前オリエンテーションが重要である。本研究では患者

が術後の回復行動を視覚的に理解しやすく均質的な説明

が可能なタブレット型端末による術前オリエンテーショ

ン(以下、タブレット版オリ)を実施し、その効果を明ら

かにしたいと考えた。【目的】タブレット版オリ導入前後

の患者の疼痛管理、身体損傷予防、離床状況等から、その

効果と課題を明らかにする。【方法】外科系 A 病棟でタブ

レット版オリ導入前後に手術を受けた患者を対象に、術後

疼痛(10 段階 NRS)、転倒やルート自己抜去等の身体損傷

の有無、離床状況(導入前はカルテから、導入後は患者へ

の 4 段階評価)、および導入後の患者にタブレット版オリ

の感想(自由記述)を調査した。タブレット版オリ導入時

期の都合上、データ収集方法が異なるため、導入前後の状

況を記述的に比較した。【倫理的配慮】対象者の自由意思

と研究による不利益回避に十分配慮し山梨県立中央病院

看護局看護研究倫理審査委員会の承認を得た。【結果】タ

ブレット版オリ導入前の患者 30 名は、胃切除 14 名、腸切

除 16 名、平均年齢 69.5 歳。NRS 最高値の平均は 4.9、ルー

ト自己抜去が 1件、転倒が 0 件あり、術後 1日目午後まで

に 96%の患者が離床できた。タブレット版オリ導入後の患

者 11 名は、胃切除 4 名、腸切除 7 名、平均年齢 62.1 歳。

NRS 最高値の平均は 3.9、ルートの自己抜去および転倒は 0

件、術後 1 日目午後までに離床できた患者は 90%であり 9

割以上が早期離床することができている。さらに 8割以上

の患者がタブレット版オリ導入により「1 日目からの歩行

の重要性」「術後の身体イメージ」「ドレーンの位置・抜去

への注意」を理解し、「安心感があった」「想定される対処

方法が理解できた」と回答した。しかし「自分の最大の痛

みが分からない」等タブレットの説明だけでは不十分と考

えられる回答もあった。【考察】タブレット版オリ導入に

より、疼痛緩和、ルート類や術後の身体イメージ、早期離

床への理解が得られ、安全な回復行動の促進に貢献できる

可能性がある。しかし個人差がある疼痛等への対応はタブ

レット版オリのみでは不十分であるため、PCA 実物を用い

た補足説明の必要性が示唆された。【結論】タブレット版

オリは術後患者の安全な回復行動に貢献できる可能性が

あるが、患者の個別的対応への工夫が必要である。

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示説14-1

MICS(Minimally invasive cardiac surgery:

低侵襲心臓外科手術)の術後経過を明らかにす

ることを目的とした事例研究

キーワード:MICS 低侵襲心臓外科手術 疼痛コントロー

ル 離床

○近藤 海帆1),松下 美波1),澤口 真依1), 丸岡 真弓1),戸田 美夏1)

1) 徳島赤十字病院

【はじめに】A 病院では低侵襲心臓外科手術(Minimally

invasive cardiac surgery;以下 MICS)の件数が年々増加

傾向にある.低侵襲にも関わらず手術を施行した患者が,

痛みの訴えや鎮痛剤の使用頻度が多いことに疑問を感じ

た.術後経過を明らかにし,疼痛コントロールや離床の促

進などの看護ケア方法の一考とする.【目的】A病院におけ

る MICS の術後経過を明らかにする.【方法】対象:A 病院で

MICS を施行し,同意が得られた 10 例に対し,入院時にデー

タベースより患者の基本属性の情報収集を行う.術後の痛

みを11段階に表した疼痛スケール(以後NRS)を各勤務聴取

し,睡眠満足度,離床の状況をカルテよりデータ収集する.

【倫理的配慮】研究参加の説明に際して,口頭と文書にて

行い研究目的,方法,参加の自由,途中中断の保障,プラ

イバシーの順守,不参加により不利益が生じない,得られ

た情報は研究の目的以外に使用しないことを説明し同意

を得た.本研究は徳島赤十字病院倫理審査委員会の承認を

得た.【結果】対象は男性 7 名,女性 3名の計 10 名であっ

た.平均在院日数は 15.2 日,手術後は 11.4 日であった.

対象者全員が 3日以内で離床ができていた.睡眠剤内服状

況については,対象者の内 3名は睡眠剤を一度も内服せず,

その他 7名は睡眠剤を内服し,内 5名が医師の指示にて定

期内服を行っていた.術後の鎮痛剤の内服数が平均より多

かったのは 4 名で内 3 名が女性であった.NRS では,術後

1 日目では体動時と安静時が同じか,体動時の方が強かっ

た.術後 2~7 日目は体動時の NRS が,入院期間の中最も

高くなっていた.【考察】平均在院日数は開胸手術より短

く,MICS は早期に社会復帰が期待できる一手段と言える.

術後 2~7 日目に NRS が高値となったのは,術後に心臓リ

ハビリテーションが開始し,ADL が拡大するため疼痛が増

強したと考えられる.術後のアセスメントに関しては,看

護師の経験値による部分が多くあり,今後一貫した看護を

提供できるようにする必要がある.【結論】MICS は合併症

が少なく早期離床ができる.術後 7日目(抜糸する)までの

鎮痛剤定期内服導入を含めた疼痛コントロールが課題で

ある.

示説14-2

入院支援センターで指導を受けた消化器およ

び泌尿器疾患患者の手術前禁煙時の思い、行動

キーワード:術前管理 入院支援 禁煙指導 患者心理 看

護師

○福田 奈津子1),原 里美1)

1) 公益財団法人天理よろづ相談所病院

【はじめに】手術前の禁煙は必須であり、入院支援セン

ター(以下、センター)で禁煙指導は行っているが、指導

を受けた患者がその後どのように禁煙に取り組んでいる

のかは明らかになっていない。【目的】センターで指導を

受けた長期喫煙歴のある手術予定患者の手術前の禁煙時

の思いや行動を明らかにすることである。【方法】センター

で禁煙指導を受けた患者を対象に、平成 29 年 11 月から平

成 30 年 3 月に半構成的面接法でデータ収集し質的記述的

に分析を行った。【倫理的配慮】A病院看護部倫理審査委員

会の承認を得、本研究の目的や研究協力は自由意思で決

定・辞退できる保証・匿名性の保持・研究成果講評等を説

明し、同意を得た者を参加者とした。【結果】参加者は、

消化器疾患患者 2名・泌尿器科癌患者 3 名の 5名、平均 64

歳であった。データは 18 サブカテゴリー・7カテゴリーに

まとめられた。参加者は、もともと<タバコは悪いもので

はない>という考えで<禁煙を続けられたことがなく>

<タバコは手術にそれほど影響はない>と思いながら<

タバコと命を秤にかけ>、<禁煙は自分の問題>と捉えて

<自分なりの工夫と努力をする>ことで<手術が受けら

れるギリギリの期間の禁煙をする>が、手術後は喫煙を再

開すると語る人もいた。【考察】今回、参加者が最低期間

の禁煙ができた理由は、喫煙の継続での術後合併症のリス

クという重大性と自分の身にも術後合併症が起こるとい

う罹患性が高まり、生命危機を感じたことだと考えられる。

しかし、参加者はもともと<タバコは悪いものではない>

と捉えている上に、手術で<タバコと命を秤にかける>必

要がなくなったことで、必ずしも術後に禁煙継続するわけ

ではなかった。このことから、センターでは、喫煙の継続

で生じ得る術後合併症を説明して罹患性や重大性を認識

できる指導が効果的であり、看護師は、喫煙を有害とする

立場ではなく、患者の思考を理解し長年の喫煙をやめる心

理的苦痛や覚悟が伴うことに共感的姿勢で関わる必要が

あると考える。また、看護師は参加者の禁煙に伴う努力に

対して入院後に禁煙成功の労をねぎらうことで、患者の自

己効力感を高め、その後の禁煙継続に繋がる可能性もある

と考える。【結論】センターで指導を受けた消化器および

泌尿器疾患患者は、手術を受けるために仕方なく各々の方

法で禁煙し手術に望んでいる事が明らかとなった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説14-3

術前オリエンテーションで表出されなかった

患者が抱える不安

-手術室看護師によるインタビューでわかっ

たこと- キーワード:手術室 術前オリエンテーション 不安

○藤倉 美和1),小澤 友希子1),石橋 真記子1),辻本 とし子1),原 美保1),澁澤 智恵子1), 堀口 佳奈子1)

1) 春日部市立医療センター

【はじめに】手術室では患者の不安軽減や心構えの獲得を

目的とし、手術室看護師が術前オリエンテーション(以下、

術前)を行っているが、限られた時間の中で実施している

ため踏み込んだ看護介入が難しい。患者から「不安はない」

との発言が聞かれるが、本心なのか不明なまま術前が終了

している。【目的】どの位の患者が術前に不安を表出でき

ているのか、「不安はない」という言葉の裏に抱える不安

の理由、不安を抱えやすい患者の特徴を明らかにする。【方

法】術前を実施している全身麻酔、腰椎麻酔、硬膜外麻酔

で手術を受ける 20~80 歳代の患者(男女各 10 名)に、術

前終了後、談話室でインタビュー調査を行い、結果を GTA

分析法で質的分析する。患者の属性と不安との関連性をク

ロス分析する。【倫理的配慮】本研究は春日部市立医療セ

ンター倫理委員会の承諾を得た。【結果】術前で「不安は

ない」と回答した患者の 50%がインタビュー時に「不安が

ある」と回答した。最も多い不安の理由は「術後の身体の

変化」だった。「自己学習をしていない」と回答した患者

のうち、75%が不安があると回答した。【考察】50%の患者

から不安の表出があったことは「手術を控えた患者は何か

しらの不安を抱えている」という事前の予測と一致する。

患者は、看護師に話をしても不安は軽減されないという意

識を持っていた。短い時間の中で初見の看護師に素直に不

安を表出できる患者は少ない。また、最も多い不安の理由

が術後の身体の変化であり、明確に想像できる範囲内のも

のと未知のものにわけることができた。これらの不安は、

疼痛緩和の方法など具体的な対処法を提示したり、どのよ

うな術後の経過を辿るかを知ることによって軽減できる

と考える。また、自己学習をしていない患者は、手術や病

気に対する知識や心構えを獲得できていないまま手術当

時を迎えてしまうため、漠然とした不安が解消できていな

いのではないかと考える。看護師が患者に自己学習を促す

ような関わりや有効的な学習ツールを提示することで、患

者の不安が軽減できる可能性がある。【結論】1.現在の術

前では、50%の患者が不安を表出できていない。2.最も多

い不安の理由は「術後の身体の変化」だった。3.「自己学

習をしていない」患者ほど不安がある。4.患者が不安を表

出しやすい関わり方を考え、自主的に知識を獲得できる学

習方法を提示することが不安の軽減につながる。

示説14-4

変形性膝関節症による人工膝関節全置換術後

の病棟リハビリ導入による効果

-膝関節の可動域拡大に向けて-

キーワード:変形性膝関節症 人工膝関節全置換術 病棟

リハビリ CPM

○樋山 恵美1),松田 彩芳1)

1) 公立福生病院

【はじめに】膝関節の可動域制限は起立や歩行等に大きな

影響を与えることから、ADL や QOL を著しく低下させ、在

院日数の長期化に繋がる。そこで、看護師が病棟で実施で

きるリハビリテーション(以下,病棟リハビリ)を導入し、

関節可動域を早期に拡大することをねらう。そのことは、

患者の ADL 拡大と入院期間の短縮につながると考えて本研

究に取り組んだ。【目的】病棟リハビリの導入に伴う、可

動域の拡大と入院期間の違いを明らかにする。【方法】1.

対象者実験群:人工膝関節置換術(以下,TKA)後で同意が

得られた認知機能に問題のない患者 12 名、対照群:2016

年、2017 年度に TKA を実施した患者 29 名 2.調査方法病棟

で実施可能なリハビリを医師・理学療法士と共に選定。パ

ンフレットを作成し、病棟看護師へ周知。対象患者の同意

のもとリハビリを実施。3.開始時期 TKA 後の持続的他動運

動装置(以下,CPM)開始時 4.リハビリ内容大腿四頭筋訓練、

下肢伸展挙上、毎食事の座位保持のリハビリを受け持ち看

護師が確認し記録した。5.調査内容術後の在院日数、CPM

の角度、ROM の集計を実施する。6.調査期間 2018 年 7 月 1

日~11 月 30 日 7.分析方法実験群と対照群による基本統計

量を求めた。【倫理的配慮】公立福生病院倫理委員会の承

諾を得てから開始した。対象者に対して目的と方法を説明

し、調査に非協力であっても不利益を被ることがない旨の

説明を行い、自由意思による承諾を得た。【結果】対象患

者の平均年齢は対象群は 75.8 歳、実験群は 74.9 歳であっ

た。性別は対象群は男性 5 名、女性 24 名、実験群は男性 4

名、女性 8名であった。膝関節可動域は階段昇降に必要と

される 110 度を基点とした。110 度に屈曲する日数は対照

群は 15.9 日、実験群は 7.6 日であった。術後の平均在院

日数は対照群は 18.3 日、実験群は 14.2 日であった。【考

察】本研究の病棟リハビリは膝関節可動域が拡大したこと

に関連し、歩行状態が安定し退院の目処がついたことから、

早期退院に繋がったため有効的であったと考える。本研究

の実験群の患者数が少数であり、限られた対象と内容での

研究結果であったため、TKA の術後の関わりについては、

病棟リハビリだけでなく他の介入の検討が今後必要であ

ると考える。【結論】病棟リハビリの導入は、TKA 後の関節

可動域の拡大と入院期間の短縮に有効であった。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説14-5

婦人科疾患開腹手術を受けた患者の術後創に

ついて

-術後 1 ヵ月・3ヵ月後に調査してわかったこ

と-

キーワード:術後創 縦切開 婦人科疾患開腹手術 退院指

○下田 瞳1),桂 ゆか1)

1) 盛岡赤十字病院

【はじめに】術後創について調査することで、今後の退院

指導に生かせるのではないかと考えた。【目的】婦人科疾

患開腹手術を受けた患者の退院後の術後創のケア方法、状

態を明らかにする。【方法】婦人科疾患開腹手術(縦切開)

を受け、退院指導事前アンケートの結果から術後創が気に

なると回答した 30 代~70 代の患者 11 名に、術後 1ヵ月後

にインタビュー調査ならびにアンケート調査を実施。【倫

理的配慮】盛岡赤十字病院倫理審査委員会の承認を得た。

対象者に自由意思に基づき拒否権があること、不利益を被

ることがないことを説明書を用いて同意を得た。【結果】

術後 1ヵ月後にインタビュー調査を 11 名に実施。術後 3ヵ

月後のアンケート回収率は 100%。1.術後創の状態:術後

1 ヵ月の時点では、術後創が気になる人がイメージしてい

たよりも創部は綺麗であった。しかし、術後 3ヵ月後は半

数以上の人が、創部そのものの赤み・掻痒感が気になって

いた。その他傷が出来たことによるストレスを感じている

人もいた。2.退院指導時の創部ケアについての説明:「ケ

ア方法についてもっと詳しく説明して欲しかった」と指導

方法についての意見があった。3.創部のケア:レディケアⓇ

を使用しての不満や皮膚トラブルを訴える使用者もいた。

術後創にケア用品を使用したことで半数以上の使用者が、

「傷を保護している安心感、物理的にこすれたりしなくて

安心」と回答。4.退院指導についての意見・要望:「傷に

ついて相談したくてもどこに相談して良いのかわからな

い。相談できる場所があっても良い」との意見があった。

【考察】1.術後創の状態:術後創のトラブル発生を予防し、

身体的・精神的負担を軽減できる意義は大きいと考える。

2.退院指導時の創部ケアの説明について:術後創のケア方

法の情報提供等、指導方法の検討が必要。3.創部のケア:

個々の価値感により様々な意見があるため、選択肢を与え

る環境も必要。また、使用方法等の指導・対応も必要。患

者が術後創に皮膚保護剤を使用することは、精神的負担、

保護目的にも有効。4.退院指導についての意見・要望:退

院後、相談できる場所を提供する必要性がある。【結論】

1.術後 3ヵ月経過後も、術後創に赤み・掻痒感・段差・創

部が固くなっている等の症状があった。2.ケア用品の選択

肢の提供、使用方法の指導・相談窓口を必要としていた。

3.精神的に悩んだり、試行錯誤しながらケアをしていた。

示説15-1

急性期病院で身体拘束に頼らない看護の実現

をめざして

-病棟看護師の身体拘束に関する悩みや困難

感に焦点を当てて- キーワード:急性期病院 身体拘束 頼らない看護 悩み

困難感

○長島 幸子1),藤井 和子1),三浦 瞳子1), 生井 萌子1),日向 園惠1),津田 佐都子1)

1) 石巻赤十字病院

【はじめに】急性期病院である A病院では身体拘束(以下

“拘束”)の削減に取り組んでいる。しかし、拘束に頼る

状況も見受けられ、看護師は少なからず葛藤を抱いていた。

先行研究において拘束削減に取り組む病棟看護師の悩み

や困難感に関する認識調査は見当たらなかった。【目的】A

病院の病棟看護師の拘束に関する悩みや困難感を明らか

にし、拘束に頼らない看護の実現に向けての示唆を得るこ

とである。【方法】1.調査期間:2018 年 7 月~8 月、2.対

象者:病棟看護師、3.調査内容:身体拘束について悩んで

いることや困っていることの自由記載、4.データ収集:独

自に作成した調査票を全病棟看護師に配布し回答を得た。

5.分析:記述内容をコード化し、意味内容の類似性に基づ

いてサブカテゴリー、カテゴリーと抽象度を上げて分類整

理した。【倫理的配慮】所属病院の倫理委員会の承認を得

た。情報は一切漏洩しないこと、匿名性が守られること、

得られた結果は学会で発表することを明記し、回答をもっ

て同意とした。【結果】405 名中 310 名から回答を得た(回

答率 76.5%)。182 の意見が得られ 76 件のコードが抽出さ

れた。それらを類似性に基づき分類した結果、《人権侵害

や苦痛を与えていることへの罪悪感》《身体拘束に頼らな

い方法の知識不足》《アセスメント力不足》《認識や価値観

を共有できない部署の風土》《マンパワー不足》《医師と身

体拘束に対する認識が共有できていない》《安全対策のた

めに身体拘束を選択してしまう》《生命に直結する危機回

避のため拘束は必要》の 8項目のカテゴリーに分類された。

【考察】看護師は拘束を行うことに関して罪悪感を抱きな

がら、安全対策の手段のひとつとして拘束を選択していた。

その背景には個人の知識・能力の不足、職場における認識

や価値観の違いがあげられる。個人の能力向上に対しては

研修会の内容や方法を工夫すること、認識や価値観を部署

全体や他職種と共有し共に課題に向き合う場を設けるこ

とで看護師が抱える悩みや困難感の改善に繋がると考え

る。中には拘束を肯定する意見もあったため、その背景を

明らかにし、対策を考えていく必要がある。【結論】拘束

に頼らない看護を実現するためには、個人の知識・能力の

向上と価値観の共有の場を作る必要性が示唆された。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説15-2

急性期病棟における予後予測スコア導入前後

の看護師の認識の変化

キーワード:急性期病棟 予後予測スコア 看護師の認識

○依田 朋加1),前澤 美代子2),青木 妃沙子1), 小林 愛実1),水下 陽子1)

1) 山梨県立中央病院

2) 山梨県立大学

【はじめに】急性期病棟では、急性期と終末期の患者が混

在し、患者に十分な看護が提供できていないのではないか、

今後の療養先の決定に関してどのタイミングで患者の意

思を確認するべきか戸惑いを抱えていると報告されてい

る。そこで今回、予後予測スコア導入し、看護師の認識の

変化を明らかにし、今後の急性期病棟における看護の示唆

を得たいと考えた。【目的】急性期病棟における予後予測

スコア導入前後の看護師の認識の変化を明らかにし、急性

期病棟における終末期患者の看護の示唆を得る。【方法】

対象者は、入院時の Performance Status2 レベルで予後予

測スコア導入ケース 20 例に関わった急性期病棟の看護師

15 名とし、データ収集は、予後予測スコア導入前後の看護

師の認識についてアンケート調査および看護記録の記述

とし、分析方法は、アンケートおよび看護記録から得られ

た記述内容を意味ごとにコードを作成し、類似したコード

をまとめてサブカテゴリー、さらにカテゴリーを抽出する

質的帰納的分析とした。【倫理的配慮】山梨県立中央病院

の研究倫理審査の承認を受けた。【結果】1.予後予測スコ

アを活用した看護師の認識の変化は、4つのカテゴリー([]

で示す)の[判断のよりどころ]、[状況の共有]、[早期か

らの今後についての話し合い]、[時期に応じた具体的な説

明と関わり]が抽出された。2.看護記録からは、予後予測

スコア導入前は[辛さや思いなどの感情表現]、[喪失への

傾聴]、[思いや病状の理解]、[症状コントロール不足]、[本

人の納得と家族の望み]、[退院調整]であり、予後予測ス

コア導入後は[予測を踏まえた関わり]、[変化を先取りし

た説明と悲嘆ケア]、[予測に基づいた関わり]、[治療への

望みや安楽などの価値に基づいた決定]、[家族に対する思

いの表出と支援の保証]、[安楽を目指した薬剤調整と快適

な刺激]、[ぽつりと漏らした悲嘆のキャッチ]、[ライフレ

ビュー]へと変化した。【考察】予後予測スコアを活用し

たことは、看護師が患者に残された時間や可能なケアを予

測することでポツリと漏らした悲嘆をキャッチできるゆ

とりが生まれ、ライフレビューを促進させ、患者の悲嘆ケ

アやスピリチュアルケアへと看護が深まっていたと思わ

れる。【結論】予後予測スコアの活用は患者・家族の今後

の過ごし方に対する意思決定支援や悲嘆ケアが強化され

ていたことが明らかになった。

示説15-3

A病院ICUの終末期ケアにおける看護師の困難感

キーワード:ICU 終末期ケア 看護師の困難感

○大塚 瑠依1),飯塚 弘美1),黒岩 慎吾1), 野沢 千明1)

1) 長野赤十字病院

【はじめに】集中治療領域における終末期に関する先行研

究から、A病院の集中治療室(以下 ICU とする)看護師も、

終末期ケアに困難を感じていると予測された。そこで A病

院 ICU での終末期ケアで、どのような困難を感じているか

を明らかにしたいと考えた。【目的】A病院 ICU 看護師を対

象に、ICU の終末期ケアにおける困難感を明らかにする。

【方法】独自に作成した自己式質問紙調査。非常にそう思

う~全くそう思わないの 5 段階で回答を得た。単純集計を

し、非常にそう思う、どちらかというとそう思うを「思う」。

全くそう思わない、どちらかというとそう思わないを「思

わない」。どちらとも言えないは、どちらにも含まず考察。

【倫理的配慮】研究実施や発表にあたり、目的、方法、得

られたデータは本研究のみの使用、無記名で参加は自由意

思であり、不参加によって看護業務上不利益を生じないこ

とを書面にて説明、郵送をもって同意とした。回収した質

問紙は後日シュレッダーにかけ処理。看護研究倫理審査会

で承認を受けた。(第2018-24号)【結果・考察】回収率57.1%、

有効回答率 100%〈オープンフロアでの終末期ケアは、環

境を整えるのが難しい〉〈ME 機器があり、家族が患者の近

くに行けず、終末期の環境を整えにくい〉で「思う」の割

合が多く、終末期の環境を整えることに困難を感じている

と考える。〈終末期に関して医師と看護師の考え方に相違

がある〉で「思う」の割合が多かった。医師と看護師では

立場や役割の違いもあり、ジレンマが起きやすいのではな

いか。現在の医師含む他職種カンファレンスでは情報交換

が充分できているとは言えず、困難感へとつながっている

と考える。〈終末期患者の家族は動揺が強いため、接する

のは難しい〉〈治療に集中してしまい、家族の対応が遅れ

てしまう〉で「思う」の割合が多かった。動揺も大きい家

族への対応や精神的ケアは看護師のストレスも大きい。救

命治療が優先され、充分に家族ケアができなかったことに

も困難を感じていると考える。〈終末期ケアについて振り

返りや共有する場がない〉で「思う」の割合が多く、ICU

内で看護師の意見交換や情報共有の場が少ないことも、困

難に感じていると考える。【結論】終末期の環境を整える

こと、医師と情報交換が充分できずジレンマを感じること、

充分な家族ケアをできなかったこと、情報共有の場がない

ことに困難を感じていた。

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示説15-4

身体抑制に関する倫理カンファレンスの定着

-A病院における身体抑制の削減に向けた取り

組み- 第 1 報 キーワード:身体抑制 倫理カンファレンス カンファレ

ンスシート

○布谷 喜代美1),西川 順子1),尾﨑 こはる1),松田 ゆう子1),西向 秀代1)

1) 福井赤十字病院

【はじめに】A 病院は、身体抑制に関するカンファレンス

は実施しているが、身体抑制解除など、倫理カンファレン

スが行われていない。今回、身体抑制の実施や継続、解除

を倫理的視点に基づき行うために、倫理的意思決定ができ

るカンファレンスシートを導入し、監査した。【目的】身

体抑制に関する倫理カンファレンスシートを導入し、倫理

カンファレンスをする上での課題を明らかにする。【方法】

研究期間:2018 年 4 月~12 月、倫理的意思決定のプロセ

スに基づき身体抑制に関する倫理カンファレンスシート

を作成・導入した。内容は、患者の状況や、身体抑制をす

ることの患者にとってのメリット・デメリット、患者・家

族とそこに関わる医療者の思い、今後の方向性を検討し、

身体抑制を行う場合は代替案を検討し、解除できる条件や

目標を設定する形式にした。A病院11部署(看護職341名)

でカンファレンスシートを活用後、記録の監査を行った。

【倫理的配慮】福井赤十字病院倫理審査委員会による承認

を得て、研究対象者には研究の目的、趣旨、プライバシー

保護の説明をし、同意を得た。【結果】記録監査の結果、

患者にとってのメリット・デメリット 65.9%、患者家族・

医療者の受け止め 82.9%、方向性 87.2%、解除条件 80.0%、

代替案 29.7%記載されていた。監査の結果、倫理的視点で

具体的に代替案が検討されている事例に関しては看護師

長会で情報共有し、各部署のスタッフに周知した。【考察】

監査結果より、記載率は代替案以外の項目で 60%から 80%

台であった。このことより、看護師が身体抑制による患者

のデメリットや身体抑制を受ける患者・家族の受けとめに

注目し、どうすれば抑制をしないですむかという認識を持

つことに繋がった。身体抑制を実施することに対する倫理

的ジレンマなど、各職種の判断に対する思いに注目するよ

うになったと考える。また、解除の条件や方向性の項目を

作ったことで、解除に向けての検討をするようになったと

言える。しかし、代替案のポイントが低いのは、患者個々

の背景を捉えたアセスメント能力が弱く、具体案が出てい

ないと考えられる。今後は、代替案の検討が出来るよう、

ベッドサイドケアの充実に向けた看護ができる教育を推

進する必要がある。【結論】倫理カンファレンスシートを

用いて、身体抑制を回避するための代替案の検討が今後の

課題である。

示説15-5

身体抑制に関する倫理カンファレンス導入前

後の看護職の意識変化

キーワード:身体抑制 倫理カンファレンス 意識調査

○西川 順子1),布谷 喜代美1),尾﨑 こはる1),松田 ゆう子1),西向 秀代1)

1) 福井赤十字病院

【はじめに】A病院は、身体抑制実施率が高い傾向にある。

身体抑制カンファレンスは行われていたが、倫理的な視点

での検討はなされていなかった。今回、倫理カンファレン

スを導入し、看護職の身体抑制に関する意識が導入前後で

どのように変化したかを調査した。【目的】身体抑制に関

する倫理カンファレンス導入前後の看護職の意識変化を

明らかにする。【方法】看護職 341 名を対象に、身体抑制

における「知識面」「意識面」「行動面」及び「カンファレ

ンス内容」について質問紙調査を実施。項目毎に 5段階尺

度で点数化し、t検定で分析した。統計処理には SPSS

(Ver25)を使用した。【倫理的配慮】福井赤十字病院倫理

審査委員会による承認を得た。研究対象者には、研究目的、

趣旨、プライバシー保護を説明し同意を得た。【結果】デー

タ回収率は、前 97.4%、後 96.4%。有意差があった項目は、

23 項目中 14 項目(知識面 1 項目、意識面 3 項目、行動面

4項目、カンファレンス内容 6項目)であった。「身体抑制

を実施している患者に対して出来るだけ解除するよう意

識している」「身体抑制をはずす時間を作るためにベッド

サイドにいる時間を作っている」「家族に対して身体抑制

の必要性と抑制解除の可能性を説明した上で協力を依頼

している」の項目、またカンファレンス内容の 6項目すべ

て 1%水準で有意差がみられた。その他、「身体抑制を実施

する時、倫理的ジレンマを感じる」項目は、5%水準で有

意差がみられた。【考察】倫理カンファレンスを導入し、

特に「抑制解除」に関する項目が有意に上昇した。このこ

とより、不必要な抑制はしない、出来るだけ解除したいと

いう思考が芽生え、ベッドサイドにいて抑制を外すための

具体的行動に繋がってきていると考える。今後、さらに倫

理カンファレンスを行うことを定着させ、身体抑制削減に

向けた倫理教育を推進していく必要がある。今回の調査よ

り、看護職が倫理的なジレンマを感じていることが分かっ

た。これは、倫理カンファレンスの場面で患者情報の共有

や看護職自身の思いを表出することで高くなったのでは

ないかと考える。カンファレンス内容の 6項目全てが有意

に上昇したことより、倫理カンファレンスを導入した取り

組みの効果があったと考える。【結論】倫理カンファレン

スを導入したことで、看護職の身体抑制の解除に関する意

識が上昇した。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説15-6

重症系ユニットにおける身体抑制時間短縮に

向けたフローチャート作成の効果

キーワード:身体抑制 フローチャート 判断基準 再評価

○矢吹 小百合1),栗原 英子1)

1) 東京都立多摩総合医療センター

【はじめに】重症系ユニットでは、カテーテル類の留置、

アラーム音などの騒音でストレス負荷がかかり、判断力が

低下し正常な意識状態が保てない患者に対して、患者の安

全を守る目的で、必要最小限の身体抑制用具使用による危

険回避を行っている。しかし、身体抑制に関して明確な基

準がなく職員個々の判断に委ねられていた。そこで、必要

最低限で効果的な身体抑制の実施を目的とし、フロー

チャートで共通の基準で判断できるよう取り組んだ。【目

的】身体抑制用具使用の開始・中断・終了に対するフロー

チャートを使用し身体抑制実施時間の変化を調査。【方法】

調査対象者:平成 30 年 6月 27 日から 10 月 26 日まで、身

体抑制用具を使用したフローチャート導入前(6月 27 日か

ら 8月 26 日)の身体抑制実施患者 90 名と、フローチャー

ト導入後(8月 27 日から 10 月 26 日)の身体抑制実施患者

98 名。調査方法:フローチャート導入前後の身体抑制用具

使用状況と使用期間を、A 病院 ICU および HCU 入室期間の

フローシートを後方視的に調査する。分析方法:フロー

チャート使用前後の身体抑制用具使用時間の割合を t検定

で分析。【倫理的配慮】本研究は、A病院倫理審査委員会で

承認(承認番号 1)を得ている。【結果】患者一人あたりの

入室時間に対する身体抑制使用時間の割合は、フロー

チャート導入前 30.67~90.17(SD60.42)%に対し、フロー

チャート導入後 34.33~96.91(SD65.62)%で有意差は認め

なかった。【考察】フローチャート導入前後で身体抑制実

施時間の割合に有意差がなかったのは、フローチャートの

活用で身体抑制を中断する機会が増加した一方で、今まで

個人の主観で見過ごされていた身体抑制が、統一した基準

で評価され安全に実施されたと考える。最低限の抑制で最

大限の効果を得るため、フローチャートの見直しが必要だ

が、限られた期限と限られた患者の結果であり本研究の結

果をもって全ての患者に適応できないフローチャートで

あるため研究の限界とした。フローチャートの活用で、ス

タッフが患者の状態を1時間毎に観察する意識の向上に

寄与できたと考える。【結論】フローチャート使用は、身

体抑制実施時間の短縮には繋がらなかった。身体抑制用具

使用に関するフローチャートの項目を見直しすることに

より、危険を未然に察知し身体抑制削減できる看護の提供

に努めていく。

示説16-1

ICU 入室患者の記憶のゆがみへの ICU ダイア

リーを活用した看護支援

キーワード:ICU ダイアリー 記憶 欠落 ゆがみ

○矢部 友香1),福田 江美子1),津村 朱美1)

1) 鳥取市立病院

【はじめに】ICU 入室中に激しい苦痛や鎮静管理により記

憶の消失やゆがみを引き起こした患者は、その後自力での

記憶や体験の整理に困難を感じ支援を求めており、ICU ダ

イアリーの活用が有効であると言われている。A病院では、

実際に患者が記憶のゆがみを経験しているのか把握出来

ておらず、記憶・体験の整理に対する支援を行なえていな

かった。【目的】ICU 入室患者の記憶のゆがみの実態と、ICU

ダイアリーを活用した介入が患者の対処行動への支援と

して有用であったのか検討する。【方法】緊急入室、2日以

上在室し鎮静管理を行なった患者を対象に ICU ダイアリー

を作成。退室 3~4 日後に入室中の体験と対処行動に関す

る半構造化面接を実施、得られた語りをカテゴリー化した。

また、作成した ICU ダイアリーを患者と共に振り返った。

退室 1 週間後に 2 回目の半構造化面接を実施、1 回目の語

りと比較した。【倫理的配慮】本研究は A 病院の臨床研究

倫理審査委員会の承認を得た。研究協力は自由意思である

ことや守秘義務に努めることを説明し同意を得た。【結果】

対象者は 30~80 歳代の患者 4 名。鎮静剤使用時間は 22 時

間 38 分~149 時間 18 分。ICU 入室中の体験は≪記憶の欠

落≫≪記憶のゆがみ≫≪不快な体験≫≪現実的な体験≫

の 4 カテゴリーを抽出。対象者 4 名に記憶の欠落、2 名に

ゆがみが生じていた。記憶のゆがみに対する対処行動は≪

体験の振り返り≫≪記憶の再構築を行う≫≪非現実的な

体験は自分だけに起こったのか知ろうとする≫の 3カテゴ

リーを抽出。退室後には体験の振り返りや記憶の再構築と

いった対処行動をとっていたが自分だけでは記憶を補う

ことができず支援を求めていた。ICU ダイアリーを用いて

振り返る際には、より詳細な事実を求めたり、時系列が整

理され新たに体験を思い出していた。また対象者全員が

ICU ダイアリーを読み返し「頑張ろうと思う」等前向きな

言葉が聞かれた。【考察】ICU ダイアリーを用いて一緒に振

り返ることは、よりその時の状況が想像しやすく記憶の再

構築や整理に役立っていた。また ICU での辛い体験を乗り

越えた事実、当時の家族や看護師の思いを伝えることで、

患者を勇気づけることが明らかとなった。【結論】対象者

全員に記憶の欠落やゆがみが生じていた。ICU ダイアリー

を用いた振り返りは、記憶の再構築や整理に役立ち患者の

療養生活に対する気持ちを前向きにする。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019) 第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説16-2

脳血管内治療を受ける治療前の患者の思い

キーワード:脳血管内治療 患者 思い

○谷口 志保1),多賀 未咲1),森 夕希子1), 溝口 薫1)

1) 富山赤十字病院

【はじめに】脳血管内治療を受ける治療前の患者の思いを

明らかにし、脳血管内治療へ専念できる環境を整える援助

に繋げたい。【目的】脳血管内治療を受ける治療前の患者

の思いはどのようなものかを明らかにする。【方法】1)研

究デザイン質的記述的研究 2)参加者脳血管内治療を受け

た患者 4 名 3)データ収集期間 2018 年 6 月~9 月 4)方法

研究メンバーが独自に作成したインタビューガイドに基

づき 30 分程度で半構成的面接を行った。【倫理的配慮】所

属施設の看護部看護倫理委員会の承認を得て行った。《承

認番号 18-3》。【結果】脳血管内治療前の患者の思いを分析

した結果、43 個のコードから 24 個のサブカテゴリーと 17

個のカテゴリーが抽出された。その内容は、疾患に対して

〈脳梗塞になることで麻痺や喋れなくなることが怖い〉

〈年齢相応に病気になるかもしれないと思っていた〉〈脳

梗塞になるという現実が受け止めきれない〉〈脳梗塞や治

療に対する理解がある〉という思いがあった。手術に対し

て〈手術の日が迫ってくる緊張感〉〈スタッフの対応で緊

張がほぐれた〉〈手術を覚悟したのに後回しとなり待たさ

れた時間が嫌だった〉〈手術が怖くなるので調べないとい

う方法をとった〉〈手術の不安を感じなかった〉〈治療をう

ける覚悟ができた〉〈治療するしかなく、お任せするしか

なかった〉〈症状悪化の前に早期に治療したい〉〈病状説明

に対し理解できた〉〈病状説明が理解できなかった〉〈医師

に対しての信頼感〉という思いがあった。家族に対して〈家

族に支えられた〉〈家族に心配をかけた〉という思いがあっ

た。【考察】脳血管内治療を受ける治療前の患者の思いに

は、疾患に対する思いとして病気になるのではという思い

を持ちながらも実際は受け止めきれない思いがあった。手

術に対する思いとして病状説明から手術を受けるまでの

期間がある事で、気持ちの揺らぎがあると考える。家族に

対する思いとしては、家族や周囲の人の存在が疾患や治療

への不安軽減に繋がる支えであると考えられる。【結論】

患者自身の疾患や手術に対する不安や前向きな思いだけ

でなく家族への思いや医療者への思いも多くあるとわ

かった。【おわりに】脳血管内治療を受ける治療前の患者

の揺れ動く思いを的確にとらえ治療に専念できる環境を

整える援助に繋げていきたい。

示説16-3

看護師の患者観察項目の現状と院内急変率の

相関を知る

キーワード:観察項目 呼吸数 院内急変 死亡率

○前田 理恵1) ,松尾 有紀1)

1) 医療法人伴帥会愛野記念病院

【はじめに】呼吸は生命を維持するうえで不可欠なもので

ある。A 施設で昨年度死亡事例中、大多数は現病歴の進行

であるがなかには“急変”という形で発見される。看護師

は意識レベルや血圧は測定しても異常の大半を示す「呼吸

の観察ができているのか?」と疑問が生じた。急変を防ぐ

ため観察方法・内容の現状を調査し、看護師の観察に対す

る意識改革と質の向上を図る一助とする。【目的】平成 29

年度死亡事例を基に観察方法を調査し急変患者に必要な

観察の現状を明らかにし今後の課題を見出す。【方法】1.

調査期間:平成 30 年 6 月~平成 30 年 7 月。2.研究方法:

平成 29 年度 A 病院死亡事例の看護記録より下記内容を調

査し現状の把握と分析を行う。1)予期した死亡事例である

かの有無 2)モニタ装着有無に関連した死亡事例数と関係

性 3)VS 測定記録より急変患者を予測するために必要な観

察項目:血圧、心拍数、呼吸数の観察あり群と呼吸数観察

なし群をt検定を用い急変の関係性を示す 4)疾患と呼吸

数観察の相関性【倫理的配慮】A 病院看護部倫理委員会の

承認を得、収集したデータは個人を特定せずコード化し、

研究以外に使用しないこととした。【結果】1)平成 29 年度

A病院で予期した死亡件数 161 件。2)モニタ装着あり 116

件、うち急変 15 件。モニタ未装着 47 件、うち急変 24 件、

モニタ装着と未装着群の急変の比較では p<0.0001***有

意差あり。3)血圧、心拍数観察あり 163 件、呼吸数観察

あり 91 件。呼吸数観察なし 72 件。そのうち呼吸数観察あ

りの急変 11 件、呼吸数観察なしの急変 30 件、呼吸数観察

ありとなしの比較では p=0.0004***で有意差あり。4)疾患

による呼吸数観察に相関なし。【考察】重症患者のモニタ

装着は継続的、経時的に 3 項目の観察はできる。しかし、

モニタ装着の有無に関らず急変予期時より呼吸数・呼吸パ

ターンの観察が重要と考える。数値による情報を過信せず

生命維持に必要な情報は呼吸数や呼吸パターンからアセ

スメントし、今後起こり得る状態変化を予測する力が看護

師には必要であると考える。【結論】今回の調査で死亡を

予期した患者にはモニタ装着と呼吸の観察は効果を示す。

呼吸数の観察は急変をいち早く気づき、防ぐための重要な

観察項目であった。呼吸数の観察と呼吸から得た情報をア

セスメントする力の定着を教育していくことが今後の課

題である。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

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第1日

第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説16-4

A 病院での人工呼吸器装着患者とのコミュニ

ケーションにおける困難さと実際

キーワード:人工呼吸器装着患者 コミュニケーション

ICU

○小池 亜実1),高取 充祥2)

1) 地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院

2) 山梨県立大学

【はじめに】人工呼吸器装着患者とのコミュニケーション

方法は確立されておらず,看護師が患者のニーズを読み取

り満たすことができずに悩む現状がある.【目的】看護師

が抱く人工呼吸器装着患者とのコミュニケーションにお

ける困難さ,看護の実際を明らかにする.【方法】2018 年

8 月~同年 10 月の期間に,病棟管理者がランダムに選出し

た ICU 看護師 12 名に対し,人工呼吸器装着患者とのコミュ

ニケーションにおける困難さと看護の実際の 2項目につい

てインタビューガイドを用いて半構造化面接を実施し,質

的帰納的分析をした.【倫理的配慮】紙面にて研究の目的・

方法・参加の自由意思・辞退した場合の不利益が生じない

ことを説明し同意を得た.山梨県立中央病院倫理審査会の

承認を受け実施した.【結果】看護師が抱く人工呼吸器装

着患者とのコミュニケーションにおける困難さは,43 コー

ド得られ,「患者の状態によりメッセージを読み取れない」

「看護師の経験により患者のメッセージやニーズを読み

取れない」「患者が捉えていることがわからない」「患者に

否定的な感情を抱かせてしまう」「多重業務により患者の

コミュニケーションに集中できない」の 5コアカテゴリー

が導き出された.人工呼吸器装着患者とのコミュニケー

ションの実際は,103 コード得られ,「患者に情報を提供す

る」「患者とのコミュニケーションがとれるよう身体的,

精神的な介入を行う」「患者の背景やニーズを捉えてメッ

セージを引き出す」「患者とのコミュニケーションの時間

を調整する」「様々な視点から患者のメッセージを読み取

る」「どのような状況でも患者とのコミュニケーションを

諦めない」の 6 コアカテゴリーが導き出された.【考察】

時間的,精神的余裕がない環境の中,患者が代替手段の使

用困難な場合や看護師の経験不足により,患者のメッセー

ジを読み取れず否定的感情を抱かせ,ニーズを満たせない

ことが困難さとなる.看護師は患者が使用可能な方法で

メッセージを表現できるよう身体的,精神的に支援し,患

者を全人的に捉えることでニーズを読み取り満たせるよ

う,患者とのコミュニケーションを諦めず,日々試みるこ

との重要性が示唆された.【結論】看護師が抱く人工呼吸

器装着患者とのコミュニケーションにおける困難さでは,

結果記載の 5 コアカテゴリー,人工呼吸器装着患者とのコ

ミュニケーションの実際では,6 コアカテゴリーが明らか

になった.

示説16-5

手の外傷患者への関わりに対する看護師の思い

-フォーカス・グループ・インタビューからの

分析-

キーワード:手の外傷患者 形成外科看護 看護師の思い

○森 みどり1),村澤 寿美1),大倉 友希1)

1) 長野赤十字病院

【はじめに】手の外傷は患者にボディイメージの変容をも

たらし自尊心の低下を招く。そのため身体的側面だけでな

く精神面への援助も重要である。実際に看護師がどのよう

な思いで手の外傷患者に関わっているかを明らかにし、看

護に活かしたいと考えた。【目的】手の外傷患者への関わ

りに対する看護師の思いをフォーカス・グループ・インタ

ビュー(以下 FGI)を行う事で明らかにする。【方法】半構

成的質的記述的研究。手の外傷患者への関わりに対する看

護師の思いについて FGI を行なった。データは遂語録から

文章を簡潔にまとめ、コード化、サブカテゴリー化、カテ

ゴリー化した。【倫理的配慮】研究への協力は自由意思で

あり、内容は個人が特定できないように処理すること、研

究の参加はいつでも中断出来ることを説明し同意を得た。

長野赤十字病院看護部倫理審査会の承認を受け実施した。

(承認番号第 2018-9 号)【結果】“手の外傷患者への看護

師の思い”は、52 のコードが抽出された。これらは[患者

との精神的関わりへの思い][家族との関わりへの思い]

[患者との接し方への思い][退院支援への思い]の 4 つ

のカテゴリーに分類された。【考察】看護師は手の外傷患

者に対し、ためらいや抵抗感を抱きつつも患者に寄り添い

たいという思いをもっていた。看護を実践するために、危

機段階に合った看護ケアが行えるよう教育していく必要

がある。また、家族の感情に寄り添い関わっていくことの

必要性が示唆された。患者との接し方への思いについては、

クリニカルパス(以下 CP とする)使用だけでは看護の質の

向上には繋がらず、看護師は関わりの希薄感を感じていた。

そのため、CP の特性を深く理解し、患者の個別性のある看

護を実践することが必要と考える。退院支援への思いにつ

いては、関心を抱きながらも現状では十分な情報共有行わ

れず、退院支援を困難に感じていたことが明らかになった。

入院中のカンファレンスや記録を充実させることが必要

と考える。【結論】1.患者・家族との関わりへの思いにつ

いて、危機的状況下にある患者・家族対応への抵抗感や戸

惑いを感じながら関わっていた。2.患者との接し方への思

いについては、情報の重要性を認識しつつも患者との関係

に希薄感を抱きながら接していた。3.退院支援への思いに

ついては、関心を抱きながらも現状では十分な情報共有行

われていないため、退院支援を困難に感じていた。

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第 50 回日本看護学会―急性期看護―学術集会 抄録集 (2019)

示説16-6

rt-PA静注療法を迅速に行うための医療従事者

の取り組みの現状と課題に関する文献検討

-看護師と多職種連携の役割-

キーワード:rt‐PA 看護 多職種連携 脳卒中

○竹田 瑠美1),岡田 麻里2)

1) 市立三次中央病院

2) 県立広島大学保健福祉学部看護学科

【はじめに】脳卒中ガイドライン(2015)によると、急性期

脳梗塞治療として遺伝子組み換え組織型プラスミノゲ

ン・アクチベータ(以後 rt-PA)が推進され、発症から 4.5

時間以内で、治療開始が早いほど良好な予後が期待できる。

そのため、発症から治療開始までの時間をできるだけ短縮

する体制の整備は喫緊の課題である。【目的】先行研究か

ら迅速な rt-PA 静注療法の取り組みの現状と医療従事者の

役割を明らかにし今後の課題を考察することを目的とし

た。【方法】データベースは医学中央雑誌 web 版を用い、

2005 から 2018 年までを対象とした。キーワードは「t-PA」

「看護」を用い会議録・解説を除外した 178 件を抽出した。

さらに、「関わった職種」「何を目的とした取り組みか」「取

り組みの具体的な内容は何か」が記載された 20 件を選定

した。選定基準をもとに分析ワークシートを作成し、各論

文を関わった職種の抽出、取り組みの目標・内容の記述を

類似するものでまとめた。【結果】関わった職種は看護師

20 件が最も多く、次いで医師 18 件、放射線技師 11 件、検

査技師 7件、救急隊 3件,市民 2件、薬剤部と事務が各1

件、といった 8職種であった。取り組みの目的は「看護師

の実態調査と役割」が 6 件、次いで「発症から治療」「迅

速な rt-PA にむけた実践例とモデル行動の紹介」が各 5件、

「パス等を用いた効果」が 3件、現状調査が 1件であった。

取り組み内容は「脳卒中初期対応研修」「院内システム整

備」が各 10 件、「医師と看護師の役割分担」5件、「連絡体

制」「課題抽出」が各 4 件、「市民に対する広報活動」「院

外連携」が各 2件のように院外の取り組みもみられた。特

に、看護師は救急隊から連絡を受けパスにつなぐ、多職種

への教育等の重要な役割が求められていた。【考察】「脳卒

中初期対応研修」「医師と看護師の役割分担」「連絡体制」

「院内システム整備」のように、迅速な rt-PA の体制の整

備、関わる医療従事者のスキルアップが求められているこ

とが分かった。市民や救急隊を対象とした院外への取り組

みは 10%であった。看護師の多職種連携の向上、院内だけ

でなく院外や地域と連携する取り組みが課題であると考

えられた。【結論】看護師及び多職種を含めた脳卒中初期

診療教育により全体のスキルアップと院内外のシステム

整備の充実が必要である。

示説16-7

急変時初期対応の研修効果

キーワード:急変時初期対応 シュミレ-ション 病棟看

護師

○齊藤 有美1),祖川 貞子1),石川 ミユキ1)

1) 香川県済生会病院

【はじめに】A 病棟は外科・整形外科の手術後患者の多い

病棟である。手術後に急変する事がまれにあり、看護師は

その対応が求められる。急変例の頻度は年間 1~2 例であ

り急変時に遭遇する機会が少ないため蘇生現場の対応に

自信を持って行えず救急技術習得や維持に問題があると

考え研修やシュミレ-ション研修会を開き急変時初期対

応の研修効果が図れたので報告する。【目的】急変時初期

対応を A病棟看護師全員が習得出来る様に急変時に自信を

持って行えないという問題点を解決するため。【方法】調

査期間:平成 30 年 6 月から平成 31 年 1 月調査対象:A 病

棟看護師 19 名方法:無記名自記式質問紙の調査とする。

苦手分野の急変時対応の勉強会・シュミレ-ションの実施。

勉強会前後でのアンケ-トを実施し意識の変化を調査し

た。【倫理的配慮】本研究は、香川県済生会病院の倫理審

査委員会に承諾を得て実施した。対象者に対しては本研究

への協力は自由であり協力の拒否、途中辞退しても不利益

を被ることはないことを説明し同意を得た。本演題発表に

関連して開示すべき利益相反する企業はない。【結果】A病

棟看護師の平均勤務年数は 5.7 年であった。第一発見者と

なった場合リ-ダ-として指揮できるか?の問いでは研

修前「はい」3名(16%)「いいえ」14 名(74%)「努力し

ます」2名(10%)に対し研修後「はい」3名(16%)「い

いえ」3 名(16%)「努力します」13 名(68%)急変時の

発見時心肺蘇生が行えるか?の問いでは研修前「はい」11

名(58%)「いいえ」8名(42%)に対し研修後「はい」18

名(95%)「いいえ」1 名(5%)であった。研修後は研修

前の 1.5 倍の看護師が「はい」と回答しており急変時対応

の何らかの自信がついたと思われる。だがリ-ダ-となり

発揮出来るかとの問いには、「はい」と答えた人数は変わ

らなかった。【考察】研修やシュミレ-ション勉強会を通

して看護職員の一人としての急変時対応には何らかの自

信はついたがその場を統制し、指示・行動するまでの自信

にはつながっていなかったと言える。しかし「努力する」

と答えた看護師は明らかに増加しており知識・技術の習得

がこの結果につながったと考える。【結論】急変時の研修

は一時的に効果が見られるが時間経過とともに忘れてし

まう傾向にある。習熟度・経験値を高め急変時研修を継続

していく事で急変時初期対応の研修効果が図れた。