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4農業経済学II生産者行動の理論 1025有賀健高

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第4回 農業経済学II:生産者行動の理論

10月25日 有賀健高

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今回の内容

•生産者行動の経済理論①農業の生産に関わる経済理論

• 生産要素に制約がある中で、最適な生産量をどう決めれば良いか?

②生産費用に関する経済理論• 農産物を生産するのに必要な費用に関する理論

•農業生産者は農業で利潤を上げるためにどうしていけば良いのか?

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生産者行動の経済理論

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生産者の目的

•保有する資源を利用して生産物を生産し、そこから得られる利益を最大化すること。

• 農業における生産では、生産者が利用できる労働者の数、農地、農業機械など様々な資源の制約を受けるため、こういった制約下でどう利益を最大化するかが求められる。

•「利益=総収入-総費用」のため総収入の最大化と、総費用の最小化が利益を最大化するための条件である。

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経済学における生産活動とは?

• 資源を使ってモノやサービスを生み出す活動を言う。

• 生産のために投入される資源を生産要素という。

• 生産要素を使って生み出されたモノやサービスを生産物という。

• 生産要素と生産物の関係は図のように表せる。

生産要素

• 種子、肥料、機械など

生産過程生産物

• 米、レタス、スイカなど

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生産者の意思決定

•生産要素を使って生産物をどれだけ生産するかを決定している。

•生産者は、生産要素の量をz、生産物の量をyとするとき、以下のような様々な生産要素と生産物の組み合わせの中から選択肢を選んで意思決定している。

𝑧𝑧,𝑦𝑦 = 0,0 , 2,4 , 5,5 , (10,8)• このような、生産要素の投入量と生産物の量の組み合わせの集合を生産集合という。

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農業における主な生産要素

• 労働• 労働時間、労働者の人数など労働に関する要素。

• 土地• 農地の面積、肥沃な土地の割合など土地に関する要素。

• 資本• 生産者が使用可能な資金、種苗・肥料・農薬・農業機械・施設などの費用といった資本に関係する要素。土地も資本に含める場合もある。

• 知識• 技術開発に必要な知識、経営方法、情報など生産者の知識に関係する要素。

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生産関数

• 生産に必要な生産要素と生産された生産物の量関係を表した関数。

• 仮に、生産物の量をY、この生産物に投入された生産要素が労働Lと資本Kであるなら、生産関数は次のように表せる。

Y = 𝐹𝐹(𝐿𝐿,𝐾𝐾)• 同様に、𝑋𝑋1,𝑋𝑋2,⋯ ,𝑋𝑋𝑛𝑛とn種類の生産要素を使って生産物が生産されている場合の生産関数は次のように表せる。

Y = 𝐹𝐹(𝑋𝑋1,𝑋𝑋2,⋯ ,𝑋𝑋𝑛𝑛)

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規模に関する収穫(returns to scale)

① 規模に関する収穫一定(constant returns to scale)𝐹𝐹(𝜆𝜆𝑋𝑋1, 𝜆𝜆𝑋𝑋2,⋯ , 𝜆𝜆𝑋𝑋𝑛𝑛) = 𝜆𝜆𝐹𝐹(𝑋𝑋1,𝑋𝑋2,⋯ ,𝑋𝑋𝑛𝑛)

• 投入量をλ(>1)倍したときの産出量もλ倍となる。

• 生産に投入される要素の規模を全て2倍にすれば、生産量も2倍になる。

② 規模に関する収穫逓増(increasing returns to scale)𝐹𝐹(𝜆𝜆𝑋𝑋1, 𝜆𝜆𝑋𝑋2,⋯ , 𝜆𝜆𝑋𝑋𝑛𝑛) > 𝜆𝜆𝐹𝐹(𝑋𝑋1,𝑋𝑋2,⋯ ,𝑋𝑋𝑛𝑛)

• 投入量をλ(>1)倍したときの産出量もλ倍より大きくなる。

• 生産に投入される要素の規模を全て2倍にすれば、生産量が2倍よりも増える。

② 規模に関する収穫逓減(decreasing returns to scale)𝐹𝐹(𝜆𝜆𝑋𝑋1, 𝜆𝜆𝑋𝑋2,⋯ , 𝜆𝜆𝑋𝑋𝑛𝑛) < 𝜆𝜆𝐹𝐹(𝑋𝑋1,𝑋𝑋2,⋯ ,𝑋𝑋𝑛𝑛)

• 投入量をλ(>1)倍しても産出量がλ倍未満となる。

• 土地のような同質でない生産要素を使う場合は、生産要素を全て2倍にしても、生産量は2倍よりも増えない。

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生産関数のグラフ(生産要素が労働の1要素である場合)

Y(生産量)

Y = 𝐹𝐹(𝐿𝐿)

L(労働)

生産集合 𝒀𝒀,𝑳𝑳

A (生産可能)

B (生産可能)

C (生産不可能)

点Aと点Bは生産集合の

内側なので生産可能な点である。一方、点Cは集合の外側なので生産不可能な点である。

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平均生産力と限界生産力

Y(生産量)

L

Y = 𝐹𝐹(𝐿𝐿)

𝐿𝐿1

Y(𝐿𝐿1)

𝐴𝐴𝐴𝐴 =Y(𝐿𝐿1)𝐿𝐿1

平均生産力(AP: average product)

∆𝐿𝐿

∆Y

𝑀𝑀𝐴𝐴 =∆𝑌𝑌∆𝐿𝐿

限界生産力(MP: marginal product)

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生産の三つの段階

Y

LAP, MP

L𝐿𝐿1 𝐿𝐿2

第三段階

MP < 0

生産要素を投入すればするほど生産量が減少

MP

AP

第一段階

MP > AP

生産要素を投入すればするほど生産量が増加

第二段階

MP < AP

生産要素を投入すれば生産量は増えるが、その増加率は逓減

Y = 𝐹𝐹(𝐿𝐿)

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生産の第一段階

•限界生産力(MP) > 平均生産力(AP)の段階• MP: marginal product• AP: average product

•平均生産力(AP)が上昇している段階• 限界的な生産力が上昇しているために、生産要素の投入量が増えれば増えるほど、生産量も増加している。

• 生産者は、生産要素の投入量を増やせば生産量を増やせるので、非効率的な生産段階である。

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生産の第二段階

•限界生産力(MP) < 平均生産力(AP)の段階

•平均生産力(AP)が減少し始める段階• 限界生産力は正のため、生産要素の投入量が増えれば総生産量も増えるが、平均生産力と限界生産力が共に減少しており、生産量の増加率は低下している。

• 生産要素を増やしてもこれ以上生産効率を上げることができない状況(生産要素を最大限活用している)なので、効率的な生産段階であると言える。

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生産の第三段階

•限界生産力(MP) < 0

•限界生産力(MP)が負になり始める段階• 限界的な生産力が負のため、生産要素の投入量を追加すると生産量が減ってしまう。

•生産者は、生産要素の投入量を減らすことで生産量を増やすことができるので、非効率的な生産段階である。

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生産関数と技術進歩

Y(生産量)

L

𝐹𝐹2(𝐿𝐿)

𝐹𝐹1(𝐿𝐿)

𝐿𝐿∗

𝐹𝐹1(𝐿𝐿∗)

𝐹𝐹2(𝐿𝐿∗)

0

技術進歩:技術の向上による𝐹𝐹1(𝐿𝐿)から𝐹𝐹2(𝐿𝐿)へのシフト

技術進歩率:𝐹𝐹1(𝐿𝐿)から𝐹𝐹2(𝐿𝐿)へのシフトの割合(𝐹𝐹2(𝐿𝐿∗)/𝐹𝐹1(𝐿𝐿∗))

同じ生産要素の投入量で、従来より生産量が増えるため、生産関数がシフトする。

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生産要素が2要素(労働Lと資本Kと労働)の場合の生産関数

𝐿𝐿

𝐾𝐾

𝑌𝑌 = 𝐹𝐹(𝐿𝐿,𝐾𝐾)𝑌𝑌

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生産可能性フロンティア(PPF:production possibility frontier)

• 限りある生産要素(土地や労働といった資源)を使って、最大限生産できる生産物の組み合わせの集合のことを生産可能性フロンティアという。

• 図は、仮に使用可能な労働者が6人で、キュウリ(𝑌𝑌1)とトマト(𝑌𝑌2)を1単位栽培するのに必要な労働者がそれぞれ3人、2人である場合の生産可能性フロンティア(PPF)を表している。

• 図の最大限生産可能な財の組み合わせの軌跡を生産可能性曲線という。

生産可能性曲線3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 = 6

トマト(𝑌𝑌2)

キュウリ(𝑌𝑌1)

PPF

2

3

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生産要素が二つの場合の生産可能性フロンティア

• キュウリとトマトを1単位栽培するのに、労働者だけでなく、土地も必要であるとし、生産者は全部で労働者6人、土地を6区画所有しているとする。

• 今、キュウリ1単位生産するには、労働者が3人と土地が2区画必要であるとする。そして、トマト1単位の生産には労働者が2人と土地が3区画必要であるとする。

• キュウリとトマトの生産量をそれぞれ𝑌𝑌1、𝑌𝑌2とすると、生産可能性フロンティアは図の黄色の部分となる。この時PPFは以下の不等式で定義できる。

• 3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 ≤ 6・・・①• 2𝑌𝑌1 + 3𝑌𝑌2 ≤ 6・・・②• 𝑌𝑌1 ≥ 0, 𝑌𝑌2≥ 0・・・③

• ①から③はキュウリとトマトの生産に必要な制約なので

「制約条件」という。

• ①は生産者が使用可能な労働者が6人であり、トマト1単位の生産

には3人、キュウリ1単位の生産には2人必要なことから出てくる制約条件である。

• ②は生産者が使用可能な土地が6区画であり、トマト1単位の生産

には2区画、キュウリ1単位の生産には3区画必要なことから出てくる制約条件である。

• ③はトマトとキュウリの生産量は負にならないという制約条件で

ある。

生産可能性曲線

𝑌𝑌2

𝑌𝑌12

3

PPF

3

2

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最適化問題

• 前のスライドのような制約条件下で、今、生産者はキュウリ(𝑌𝑌1)とトマト(𝑌𝑌2)1単位をどちらも2万円で売ることを考えているとする。

• すると、生産者の利益は(2𝑌𝑌1+2𝑌𝑌2)万円と表現できる。

• 生産者の目的は利益を最大化することであり、2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2を最大化するのが生産者の目的となるため、 2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2を目的関数という。

• 前のスライドで示した制約条件も踏まえて、この生産者の直面している問題を式で表すと以下のようになる。

• 目的関数 Max 2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 (Maxは最大化するの意味)

• 制約条件 s. t. 3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 ≤ 6, 2𝑌𝑌1 + 3𝑌𝑌2 ≤ 6, 𝑌𝑌1 ≥ 0, 𝑌𝑌2 ≥ 0(s.t.はsubject toの略で、~の制約下という意味)

• このような与えられた制約条件下で目的関数の最適な解を求める問題を最適化問題という。

• 制約条件が線形の等式や不等式の場合は、線形計画の問題としても扱われる。

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最適化問題の解法例:グラフを使用

• 最適化問題が以下の場合

Max 2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2

s.t. 3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 ≤ 6, 2𝑌𝑌1 + 3𝑌𝑌2 ≤ 6,𝑌𝑌1 ≥ 0, 𝑌𝑌2 ≥ 0

• 制約条件は図の黄色の部分であるから、

2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 = 𝑘𝑘とおき、この直線がこの黄色の

部分と交わり、かつ𝑘𝑘が最大となるような𝑘𝑘を求めれば良い。

• すると、図の点Eで2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 = 𝑘𝑘が交わると

きに𝑘𝑘が最大となることがわかる。

• よって、生産者の利益は 𝑘𝑘 = 4.8 の時である。

• したがって、利益を最大化させる生産量は、

𝑌𝑌1,𝑌𝑌2 = (1.2,1.2)となる。

𝑌𝑌2

𝑌𝑌12

3

3

2

𝐸𝐸(1.2,1.2)

𝑌𝑌2 = −𝑌𝑌1 +𝑘𝑘2

𝑌𝑌2 = −32𝑌𝑌1 + 3

𝑌𝑌2 = −23𝑌𝑌1 + 2

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最適化問題の解法例:Excelを使用

① MS Excelで以下のような表を作成する。 最適化問題

Max 2𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2s.t. 3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 ≤ 6

2𝑌𝑌1 + 3𝑌𝑌2 ≤ 6

𝑌𝑌1 ≥ 0, 𝑌𝑌2≥ 0

セルD2には、=B2*B3+C2*C3の式を入れる。最初はB3とC3は空欄のため0と認識され、0となっている。

セルD6には、=B6*B3+C6*C3の式を入れる。最初はB3とC3は空欄のため0と認識され、0となっている。

セルD7にも同様に、=B7*B3+C7*C3の式を入れる。

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最適化問題の解法例:Excelを使用(続き)

② MS Excelのソルバーを使用して最適解を求める。

ここをクリックして「ソルバー」を立ち上げる。

Excelでソルバーが表示されていない場合は、以下のサイトを参照にソルバーを有効化して下さい。http://www2.econ.osaka-u.ac.jp/~sandoh/prof/Excel.pdf

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最適化問題の解法例:Excelのソルバー

最大化させるセルを$D$2を指定。

追加で制約条件を追加する。• $B$3:$C$3>=0が、

𝑌𝑌1 ≥ 0, 𝑌𝑌2≥ 0の条件である。

• $D$6:$D$7<= $E$6:$E$7が3𝑌𝑌1 + 2𝑌𝑌2 ≤ 6,2𝑌𝑌1 + 3𝑌𝑌2 ≤ 6の条件である。

必要な部分をいれたら解決ボタンをクリック

ここに、変化させる変数のセルを指定。ここでは$B$3:$C$3が𝑌𝑌1、𝑌𝑌2となっている。

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最適化問題の解法例:Excelのソルバー(続き)

利益の部分に、制約条件下で目的関数を最大化した時の解が表示される。

変数の部分に、制約条件下で目的関数を最大化する𝑌𝑌1と𝑌𝑌2の解が表示される。

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費用関数

• ある農産物の生産(産出)量とこの商品を生産するのに使った費用の金額との関係を表した関数である。

• 農産物の生産量を𝑄𝑄、この農産物の生産に必要な総費用を𝐶𝐶とすると、総費用(TC:total cost)は次のように表せる。

𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝐶𝐶(𝑄𝑄)・・・①

• 費用は厳密には、生産量だけでなく生産要素の価格の影響も受ける。仮に、ある農産物の生産量が労働Lと資本Kの投入量によって決まり、𝑄𝑄 = 𝐹𝐹(𝐿𝐿,𝐾𝐾)であるとする。それぞれの要素価格をwとrとすると、この農産物の総費用は以下のようになる。

𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝑤𝑤𝐿𝐿 + 𝑟𝑟𝐾𝐾・・・②

• なぜ②式が①式のように表現できるのか?

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費用最小化問題と生産量最大化問題

費用最小化問題

𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 𝑤𝑤𝐿𝐿 + 𝑟𝑟𝐾𝐾𝑠𝑠. 𝑡𝑡. 𝑄𝑄 = 𝐹𝐹 𝐿𝐿,𝐾𝐾

• 生産者は、生産要素LとKを使ってQを生産するという条件下で総費用を最小化する。

• この時の最適なLとKの使用量は以下のように表せる。

• 𝐿𝐿∗ = 𝐿𝐿 𝑤𝑤, 𝑟𝑟,𝑄𝑄 , 𝐾𝐾∗= 𝐾𝐾 𝑤𝑤, 𝑟𝑟,𝑄𝑄• 𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝑤𝑤𝐿𝐿 𝑤𝑤, 𝑟𝑟,𝑄𝑄 + 𝑟𝑟𝐾𝐾 𝑤𝑤, 𝑟𝑟,𝑄𝑄 となり、𝑤𝑤と𝑟𝑟は変数ではないと仮定すると、 𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝐶𝐶(𝑄𝑄)と表せる。

生産量最大化問題

𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀 𝑄𝑄 = 𝐹𝐹 𝐿𝐿,𝐾𝐾𝑠𝑠. 𝑡𝑡. 𝑤𝑤𝐿𝐿 + 𝑟𝑟𝐾𝐾 = 𝐶𝐶∗

• 生産者は一定の費用以下の金額で生産するという条件下で、LとKを用いて生産される農産物の生産量を最大化する。

• 費用最小化問題と同様に、生産量を最大化する場合も、最適化された時のLとKは、𝑤𝑤, 𝑟𝑟, 𝑄𝑄で表せる。

• したがって、 𝑤𝑤と𝑟𝑟は変数ではないと仮定すると、 𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝐶𝐶(𝑄𝑄)と表せる。

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固定費用と可変費用

• 総費用(TC: total cost)は、固定費用と可変費用に分けることができる。

総費用(TC)=固定費用(FC)+可変費用(VC)

• 固定費用(FC: fixed cost)• 財の生産量の増減に関わらず、生産するのに常に一定額支払う必要がある費用

• 例 地代、生産者の労働費、地代、土地改良費、農業機械の減価償却費など

• 可変費用(VC:variable cost)• 財の生産量に応じて変動する費用。変動費用ともいう。

• 例 種苗費、肥料費、農薬費、高熱動力費、水利費など

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総費用曲線のグラフ

C(費用)

Q(生産量)

𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝐶𝐶(𝑄𝑄)

FC

𝑄𝑄1

𝑇𝑇𝐶𝐶 = 𝐶𝐶(𝑄𝑄1)

𝑉𝑉𝐶𝐶 = 𝑇𝑇𝐶𝐶 − 𝐹𝐹𝐶𝐶

TC: total cost(総費用) VC: variable cost(可変費用) FC: fixed cost(固定費用)

FC

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平均費用(AC: average cost)

• 平均費用(AC: average cost):生産物を1単位生産するのに必要な費用。

AC = 𝑇𝑇𝑇𝑇𝑄𝑄

(TC: 総費用、Q: 生産量)

• 平均可変費用(AVC: average variable cost):生産物を1単位生産するのに必要な可変費用。

A𝑉𝑉𝑉 = 𝑉𝑉𝑇𝑇𝑄𝑄

(VC: 可変費用)

• 平均固定費用(AFC: average fixed cost) :生産物を1単位生産するのに必要な固定費用。

A𝐹𝐹𝑉 = 𝐹𝐹𝑇𝑇𝑄𝑄

(FC: 固定費用)

• ACとAVC、AFCの関係

AC =𝑇𝑇𝐶𝐶𝑄𝑄 =

𝐹𝐹𝐶𝐶 + 𝑉𝑉𝐶𝐶𝑄𝑄 = 𝐴𝐴𝐹𝐹𝐶𝐶 + 𝐴𝐴𝑉𝑉𝐶𝐶

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限界費用(MC: marginal cost)

• 限界費用(MC: marginal cost):生産物を1単位生産するのに必要な追加的費用。

𝑀𝑀C = 𝜕𝜕𝑇𝑇𝑇𝑇𝜕𝜕𝑄𝑄

(TC: 総費用、Q: 生産量)

• 限界固定費用(MFC:marginal fixed cost)• 固定費用は生産量に依存しないため限界固定費用はゼロである:𝑀𝑀𝐹𝐹𝐶𝐶 = 0。

• 限界可変費用(MVC: marginal variable cost)

• 𝑀𝑀𝑉𝑉C = 𝜕𝜕𝑉𝑉𝑇𝑇𝜕𝜕𝑄𝑄

(VC: 可変費用)

• 𝑀𝑀𝐹𝐹𝐶𝐶 = 0より、 𝑀𝑀𝑉 = 𝑀𝑀𝐹𝐹𝐶𝐶 +𝑀𝑀𝑉𝑉𝐶𝐶 = 𝑀𝑀𝑉𝑉𝐶𝐶

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平均費用曲線と限界費用曲線

• 右図のように平均費用(AC)は平均費用が最小となるところで限界費用(MC)と交わっている。

• 𝐴𝐴𝐶𝐶 = 𝐴𝐴𝑉𝑉𝐶𝐶 + 𝐴𝐴𝐹𝐹𝐶𝐶なので、平均可変費用(AVC)は平均固定費用(AFC)の分だけ平均費用よりも下側にある。

C(費用)

Q

AC, MC

Q

MCAC

TC

AC=MC

AVC

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損益分岐点(break-even point)

• 利潤最大化の条件より𝐴𝐴 = 𝑀𝑀𝐶𝐶を満たす必要がある ⇒ 価格はMC曲線上を動く。

• 𝜋𝜋 = 𝐴𝐴𝑄𝑄 − 𝐶𝐶 𝑄𝑄 = 𝑄𝑄 � 𝐴𝐴 − 𝑇𝑇 𝑄𝑄𝑄𝑄

= 𝑄𝑄 � 𝐴𝐴 − 𝐴𝐴𝐶𝐶 なので、① P > ACのとき、𝜋𝜋 > 0となり

利潤はプラスである。

② P = ACのとき、𝜋𝜋 = 0となり利潤はゼロである。

③ P < ACのとき、𝜋𝜋 < 0となり利潤はマイナスである。

• 損益分岐点では𝐴𝐴 = 𝐴𝐴𝐶𝐶が成立している。

P, AC,MC

Q

MC

AC

𝑄𝑄𝐵𝐵𝐵𝐵

𝐴𝐴𝐵𝐵𝐵𝐵

③ 𝜋𝜋 < 0

① 𝜋𝜋 > 0

P = AC② 𝜋𝜋 = 0

損益分岐点

AC: average cost(平均費用) MC: marginal cost(限界費用)𝜋𝜋:利潤

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操業停止点(shutdown point)

• 価格が𝐴𝐴 = 𝑀𝑀𝐶𝐶 = 𝐴𝐴𝐶𝐶の損益分岐点以下の時は利潤はマイナスとなっている。

• 損益分岐点より低い場合でも生産者が生産するのは、固定費用が回収できない場合、操業停止点より上の点なら、固定費用分のマイナス利潤を少しでもカバーした方が得だからである。

𝑄𝑄𝑆𝑆𝑆𝑆

𝐴𝐴𝑆𝑆𝑆𝑆 = 𝐴𝐴𝑉𝑉𝐶𝐶(𝑄𝑄𝑆𝑆𝑆𝑆)𝐴𝐴𝐶𝐶(𝑄𝑄𝑆𝑆𝑆𝑆)

P, AC, AVC, MC

Q

MC

AC

AVC

損益分岐点

操業停止点

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供給曲線*

P, AC, AVC, MC

Q

MC

AC

AVC

損益分岐点

操業停止点

𝑄𝑄𝐵𝐵𝐵𝐵Q

𝑄𝑄𝐵𝐵𝐵𝐵

供給曲線

𝐴𝐴𝐵𝐵𝐵𝐵𝐴𝐴𝐵𝐵𝐵𝐵

*ここでは固定費用がサンクコストではないと仮定する。

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農業生産者は農業で利潤を上げるためにどうしていけば良いのか?

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農業生産者の利益は?

•𝐴𝐴を価格、𝑄𝑄を農産物の生産量、𝐶𝐶 𝑄𝑄 を生産に必要な総費用とすると、農業生産者の総利益は以下のようになる。

𝜋𝜋 = 𝐴𝐴𝑄𝑄 − 𝐶𝐶 𝑄𝑄• したがって、利益を増やすための方法は以下の三つである。

①Pを上げる

②Qを上げる

③C Q を下げる。

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価格を上げるための戦略

• 消費者を知る。• そもそもどういった消費者が自分の農産物を買っているかを知ることが重要である。

• アメリカのように消費者の所得階層によって行くスーパーが異なる国もある。

• 消費者ニーズを把握する。• マーケティングやアンケートなどを行い、消費者ニーズを分析する。

• マーケティングとは?:「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」

• ブランド力をつける。• ブランド力の確立までいかなくとも、作った農産物を継続的に買ってくれるファンを作ることは重要である。

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価格戦略の課題

•農産物は差別化が難しいためブランド化が困難である。

•消費者の好みは不安定な場合が多く、短期的に変動するためターゲットを絞るのが難しい。

•農業は自然環境に左右されるため、生産物を安定した価格で供給するのが困難である。

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生産量を上げるための戦略

• 労働生産性の向上

労働生産性 =アウトプット(付加価値、生産量)

労働投入量(労働者数、労働時間など)• 労働者の農業に関する知識や技術を向上させる。

• 農業機械を導入し、農地単位当たりの労働者数を減らす。

• 資本生産性の向上

資本生産性 =アウトプット(付加価値、生産量)

資本投入量(資金、農業機械、土地など)• 機械単位当たりの収穫量をあげる:古い機械をよりハイテクで生産性の高い機械に置き換えることで生産性を向上させる。

• 土地単位当たりの収穫量をあげる:保有している農地を拡大し、様々な品種を同時に育てることで収穫時期をずらしたり、増やしたりする。

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生産戦略の課題

• 農家の収入は𝐴𝐴𝑄𝑄であるため、いくら生産量を増やしても価格が下がることで収入が増えるとは限らない。いわゆる豊作貧乏の状態に陥る可能性がある。

• 土地を拡大させることで生産量が増えても、農産物の品質が落ちれば平均価格が下がり、総収入の減少につながってしまう場合もある。

• 所有する土地の総面積が増えても、ばらばらの立地や斜面の急な土地が増えただけであれば労働時間が増えるだけで、生産性の向上にはつながらない。

• 気候変動による生産性への影響が近年大きくなってきている。• 高温対策のための品種改良、作付け品種の変更などを行う必要がある地域が増える可能性がある。

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総費用を下げるための戦略

• 総費用を下げるのは、固定費もあるので難しい場合が多いが、1ha当たりのコストというように、土地単位当たりの平均費用の削減は農地規模の拡大で可能。

• 大規模化による平均費用削減メカニズム① 農地面積一定で、農家戸数が減少⇒農家一戸当たり農地面積増大。

② 農地拡大⇒大型農業機械導入のメリットが生まれる。

③ 大型機械導入で、少ない人件費で広大な農地栽培が可能となり、土地当たりの生産効率が向上する。

④ 土地単位当たりの平均費用が削減される。

• ハイテク農業により平均費用の削減• スマートアグリ:グリーンハウス内の湿度、温度、光をIT技術で管理(全自動センサーネットワーク)し、収穫以外はほとんど人手を使わずに農産物生産を実現

• LEDレタス栽培

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総費用削減の課題

• 日本の農地は一カ所にまとまっていないため、一つのまとまった大きな土地の確保が難しい⇒大型農業機械のメリットが発揮できない場合がある。

• 農業へのIT技術の導入には初期投資が大きく、ランニングコスト(機器やシステムの保守・管理に必要な費用)が大きいといった問題がある。

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レポート課題 問題5(11月7日の講義後に提出)

今ある農家は米と麦を土地12区画と労働者8人で生産することを考えている。米1単位の生産には土地と労働者がそれぞれ3区画、4人必要であり、麦1単位の生産には土地と労働者がそれぞれ4区画、2人必要である。米1単位の価格が6万円、麦の価格が4万円であるとする。この時次の問いに答えなさい。

1.米と麦の生産量を𝑌𝑌1、𝑌𝑌2とし、この農家の生産量最大化問題を式で表しなさい。

2.この農家の米と麦の最適生産量と最大利益をMS Excelのソルバーを使って求めなさい。

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レポート課題 問題6(11月7日の講義後に提出)

今ある農家の米の生産量はQであり、その費用関数がC Q =10𝑄𝑄3 − 60𝑄𝑄2 + 180𝑄𝑄であったとする。

1.この農家の平均費用曲線と限界費用曲線を求めなさい。

2.農家は価格が限界費用と等しい点で生産する時、この農家の損益分岐点における生産量とそのときの価格を求めなさい。

3.生産量(Q)が0~6の時の平均費用曲線と限界費用曲線のグラフをMS Excelを使って描きなさい(散布図(平滑線))を使うこと)。そして、2で求めた損益分岐点で平均費用曲線と限界費用曲線が交わっていることを確認しなさい。

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参考文献

• 土屋圭造(2005)第3章「農業の生産」、第4章「農業生産の費用」『農業経済学』第5版 東洋経済新報社

• 阪本浩明(2015)「生産者理論入門」http://hsakamoto.com/docs/lecnote_mic09_2015.pdf

• 牧野真也「線形計画問題」http://www.wakayama-u.ac.jp/~makino/lectures/eip/lp

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