【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド...35...

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36 35 財務省職員の活躍するフィールド FIELD 財務省職員の活躍するフィールド 【第3部】 平成29年4月1日現在、約200名の財務省職員(留学を除く)が世界各地の在外公館や国際機関、シンクタンク等で グローバルな 活 躍をしています。また 、国 内 各 地 の 地 方 支 分 部 局 や 地 方 自 治 体 でも多くの 職 員が 活 躍しています。 P37 P37 地方公共団体 地方公共団体 三上 裕介 [平成21年入省] 鯖江市地方創生統括監 兼鯖江市政策経営部長 山田 耕太朗 [平成18年入省] 青森県農林水産部 団体経営改善課長 P38 金融庁 大江 亨 [平成9年入省] 金融庁総務企画局 市場課市場企画室長 P39 P40 総理官邸 厚生労働省 飯田 薫 [平成18年入省] 総理大臣官邸事務所 (内閣総理大臣秘書官付) 日向寺 裕芽子 [平成19年入省] 厚生労働省年金局 年金課長補佐 P42 在外公館 有利 浩一郎 [平成8年入省] OECD(経済協力開発機構) 日本政府代表部参事官 P41 国際機関 長谷川 実 [平成20年入省] 国際通貨基金 エコノミスト アメリカ大使館 ニューヨーク総領事館 IMF 世界銀行 米州開発銀行 地球環境ファシリティ ハーバード大学 コロンビア大学 プリンストン大学 ジョンズ・ホプキンス大学 ASEAN代表部 カンボジア 経済財政省 カンボジア大使館 台北交流協会 ブータン大使館 ベトナム 国家銀行 ミャンマー大使館 ハノイ ミャンマー財務省 スリランカ大使館 ASEAN+3 マクロ経済リサーチオフィス 英国大使館 OECD BIS FATF 岐阜県庁 横浜市役所 三重県庁 奈良県庁 大阪府庁 徳島県庁 和歌山県庁 熊本県庁 静岡県庁 青森県庁 山形県庁 花巻税務署 新潟県庁 石巻市役所 名寄市役所 石川県庁 鯖江市役所 地方支分部局 地方公共団体 日本 日本

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Page 1: 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド...35 財務省職員の活躍するフィールド 36 FIELD 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド

3635 財務省職員の活躍するフィールド

FIELD

財務省職員の活躍するフィールド【第3部】平成29年4月1日現在、約200名の財務省職員(留学を除く)が世界各地の在外公館や国際機関、シンクタンク等でグローバルな活躍をしています。また、国内各地の地方支分部局や地方自治体でも多くの職員が活躍しています。

P37

P37

地方公共団体 地方公共団体

三上 裕介[平成21年入省]

鯖江市地方創生統括監兼鯖江市政策経営部長

山田 耕太朗[平成18年入省]

青森県農林水産部団体経営改善課長

P38

金融庁

大江 亨[平成9年入省]

金融庁総務企画局市場課市場企画室長

P39

P40

総理官邸 厚生労働省

飯田 薫[平成18年入省]

総理大臣官邸事務所(内閣総理大臣秘書官付)

日向寺 裕芽子[平成19年入省]

厚生労働省年金局年金課長補佐

P42

在外公館

有利 浩一郎[平成8年入省]

OECD(経済協力開発機構)日本政府代表部参事官

P41

国際機関

長谷川 実[平成20年入省]

国際通貨基金エコノミスト

アメリカ大使館ニューヨーク総領事館IMF世界銀行米州開発銀行地球環境ファシリティハーバード大学コロンビア大学プリンストン大学ジョンズ・ホプキンス大学

ASEAN代表部

カンボジア経済財政省カンボジア大使館

台北交流協会ブータン大使館

ベトナム国家銀行

ミャンマー大使館

ハノイ

ミャンマー財務省

スリランカ大使館

ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス

英国大使館

OECD

BISFATF

岐阜県庁

横浜市役所三重県庁

奈良県庁

大阪府庁徳島県庁

和歌山県庁熊本県庁

静岡県庁

青森県庁

山形県庁花巻税務署

新潟県庁

石巻市役所

名寄市役所

石川県庁

鯖江市役所

地方支分部局地方公共団体

日本

日本

Page 2: 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド...35 財務省職員の活躍するフィールド 36 FIELD 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド

通している。例えば、広くアンテナを張り情報を集めることや、タイミングが何より重要であること(失敗して初めて学ぶ)、くだらない縦割りに囚われず常に守備範囲は広めに構えておくこと、自分の立場や主張は常に国益の文脈で語れるようにすること(でないと説得力が全く無い)、などだろうか。 また、ある政策につき異なる立場から関与することで視野は圧倒的に広がる。ODAに関して言えば、予算要求の立場(国際局)、査定する立場(主計局)の経験に加え、ウィーンの日本大使館勤務時代にはマケドニアやコソボも管轄し、草の根無償資金協力の案件引渡しに日本政府代表として立ち会った。外務省や国際機関等、内外に多くの知己も得られた。 加えて、未知の分野に接することに慣れると、不安よりも「また知らない分野を学べる」というワクワク感や好奇心の方が勝るようになる。不勉強で周囲に迷惑をかけることも多々あろうが、色々な環境を与えてもらえるこの立場は意外と楽しいのではないか、という思いが、中堅と呼ばれる世代に入った今もなおある、というかむしろ強まっている。

 もし皆さんと共に仕事する機会があれば、恥ずかしげもなく「悪いけどこれ教えて」と近寄っていくかもしれない。そのときはよろしくお願いします。

戦であり、社会人としての経験の少なさを認識してばかりです。しかし、財務省で培ってきた物事を調整する力やバランス感覚は、こうした仕事に活きていると日々感じています。謙虚に全体を俯瞰し「舵を取る」という、責任者としての自覚は、国に戻った後も大事にしたいと思います。 財務省の職員は多様なフィールドで日々研鑽を積みながら活躍しています。このパンフレットを読んで、少しでも感じていただけたのならば、ぜひ一度、財務省に足を運んでみてください。

地方公共団体活躍のフィールド

大江 亨To r u O E

[平成9年入省]

平成 9年 理財局資金第一課平成11年 仙台国税局平成11年 留学(独・マンハイム大、ifo経済研究所)平成13年 主計局総務課平成15年 金融庁監督局証券課 課長補佐平成16年 内閣府大臣政務官(金融担当)秘書官平成17年 金融庁総務企画局企画課 課長補佐平成18年 在オーストリア日本大使館 一等書記官平成21年 主計局主計官補佐(公共事業係担当主査)平成22年 主計局主計官補佐(外務、経済協力係担当主査)平成24年 国際局開発政策課 開発政策調整室長平成25年 国際局開発機関課 課長補佐平成26年 金融庁総務企画局政策課政策管理官

兼 広報室長

金融庁総務企画局市場課市場企画室長

山田 耕太朗Ko t a r o YAMADA

[平成18年入省]

平成18年 大臣官房総合政策課平成19年 大臣官房政策金融課平成20年 仙台国税局平成21年 国際局国際機構課平成21年 留学(英・インペリアル・カレッジ・ロンドン、UCL)平成23年 主税局参事官付平成25年 国税庁調査査察部査察課 課長補佐平成26年 大臣官房秘書課兼文書課 課長補佐

青森県農林水産部団体経営改善課長

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 私は現在、福井県鯖江市に赴任して、「地方創生」の実現に向けて日夜汗を流しています。人口減少の克服を目標とするこの取組みは、産業振興、働き方改革、まちづくり等、そのアプローチは様々です。これは一朝一夕で成せるものでなく、また他の地域の成功例がそのまま通用するとは限りません。その中で、行政としての大きな役割は、無限のアイデアや選択肢の中から、限られた資源を前提に、課題解決までの道筋を定める「舵取り」であると感じています。ただ、この役割は簡単ではありません。携わる人々のやる気がある分、それぞれの経験やプライド、目指す目標の違いから、お互いの意見が衝突することもあります。ときには「地方の現実をわかっていない」「もっと行政がやってくれないと」など厳しいことも言われます。「舵を取る」という責任の大きさの裏返しです。

 「個々」の物事に目を向けつつも、一歩引いた立場から「全体」を俯瞰する。私が鯖江市で働く意味は、ここにあります。これは、財政を担う立場から国家の課題を俯瞰し、個々の政策課題に立ち向かうという財務省の使命に通じています。鯖江市での仕事は、地元出身でない自分にとって毎日が未知の挑

進む方向は舵取り次第

責任者としての自覚

 私は今、青森県庁で、農業政策に携わっています。青森に住むのも、農業政策に携わるのも初めての経験であり、りんごの味のように新鮮な日々を送っています。

 青森県は、「攻めの農林水産業」を掲げて生産を拡大し、日本の食を支えています。この「攻め」の姿勢を維持するには、農業分野の深刻な労働力不足を解消することが課題となります。そこで、私は県内の10農協を駆け周り、組合長さんと率直に意見交換をしました。それを踏まえ、新たな方法で求人を行う農協を県が補助する新規施策を立案しました。また、天候や価格変動のリスクに晒される農業者の収入を安定させることも課題です。国が導入する予定の「収入保険」に農業者が加入するには、青色申告(税務申告)の実績が必要です。そこで私は、農協や税務署等と連携して、セミナーを開催するなど、収入保険や青色申告に関する農業者の理解を促進するキャンペーンを展開しています。

 農協等の関係者との調整では、財務省で磨いてきた、人のホンネを聞き出す力、公益のための解を描く力、その解に向けて人を説得する力が活きています。また、収入保険に関しては、所得税制や保険の仕組みなど、財務・金融の知識が活きています。このように財務省での経験は汎用性があると感じています。

 私はこれまで、経済政策立案、国際交渉、脱税調査、今は自

農業の課題に取り組む

財務省での経験が活きる

多様な経験と仲間の存在

治体行政と、幅広く、やりがいのある仕事に恵まれてきました。この仕事を通じて苦労と喜びを分かち合った仲間が国内はもちろん世界中にいます。この多様な経験と仲間の存在があれば、新しく困難な課題にも「攻め」の姿勢で挑戦できると感じます。あなたも、より良い社会の実現に向け、新たな課題に挑戦する仕事を一緒にやりませんか。

どこにいても    爪は研げる

新たなフィールドでの挑戦

 私は現在、金融庁市場課に在籍し、国民の資産形成を支える金融・資本市場の実現に向けた諸施策を担当している。金融庁と言えば、規制を通じ金融機関を厳しく見張る存在、とのイメージが強いかもしれないが、金融を通じて国民生活を豊かなものとすることが金融行政の本来の目的である。日本の大きな武器とも言える1800兆円もの家計金融資産は有効に活用されているか、すなわち、今後の日本や世界を牽引し得る企業等に必要な資金が届き、またそれに由来する果実である収益が適切に国民に還元されているか、といった観点から、現状の課題や対応策を日々検討している。

 本稿をご覧の方の中には、個別具体的な分野への関心を持って公務員を志望する人もいれば、漠然と「何かの形で国や国民の役に立つ仕事をしたい」と思う人もいるかと思う。20年前、完全に後者の部類の学生として官庁の門を叩いた私の経歴を振り返ると、理財局(財政投融資)に2年、主計局に5年、国際局(開発政策)に2年、海外(ドイツ語圏)に5年、また、6年目を迎えた金融庁でも、証券監督、2度の法改正、秘書官、政策調整に対外広報等々、実にまとまりがない。不慣れな中で右往左往した経験は数知れず、「幅広い分野での豊富な知見がある」と胸を張る自信もないが、常に担当業務を学び、周囲と良好な関係を築き、与えられた場でどう国益に貢献できるか、部下から将来「大変だけど楽しかった」と言ってもらえる職場をどう作るか、それなりに取り組んできた自負は少しある。

 慣れない分野の仕事を行うのは未だに不安だし、担当分野の法令や過去の経緯等、勉強は必要である。一方で、様々な異なる分野を経験することで得られた発見も数多い。まず、仕事するうえで大事な要素は、分野に関係なくかなり共

現在の仕事

これまでの経験

国益を意識し、かつ楽しむ

おわりに

財務省職員の活躍するフィールド

金融庁活躍のフィールド

三上 裕介Yu s u k e M I KAM I[平成21年入省]平成21年 大臣官房総合政策課平成23年 主計局調査課平成26年 大臣官房文書課審査

第二係長兼大臣官房秘書課平成27年 厚生労働省社会・

援護局総務課主査

鯖江市地方創生統括監兼鯖江市政策経営部長

「攻め」の青森県

筆者は前列中央

FIELD

Page 3: 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド...35 財務省職員の活躍するフィールド 36 FIELD 【第3部】 財務省職員の活躍するフィールド

 また、外務・防衛・警察・経産の各省から来ている、同じくらいの年次・年齢の秘書官補達が、ともに戦う仲間になります。苦しい中でも笑いをとってみたり、誰かがテンパっているときには何も言わずにサポートし合ったり、縦割りなんてものはこの世に存在するのでしょうかという感じで仕事ができるのも、とても幸せなことです。 SPさんや、官邸内の案内係さん、報道室や会議係、他のいろいろな形で働く皆さんも、それぞれ違うバックグラウンドで、それぞれのプロの技を発揮しながら、総理や官邸を支えるという同じ目的の下、チームのメンバーとして互いに連携・協力しています。 その中で、財務省から来た秘書官補として、プロとしての自分が技とすべきものは何か。経済や財政・税などについての知識とともに、政策案の中の本質的なポイントや、関係者が真にこだわっている点を見抜く力であるようにも思います。

 財務省の特徴は、日本全体を見ていることだ、と表現することがあります。日本全体を、将来まで含めて、見なければならないこと、と言い換えられるかもしれません。 ただ、財務省で何年か仕事をすれば、自分も自然にそうなれる、というわけではありません。地方や海外、他省庁や内閣官房など、様々な環境で全力で仕事をする中で、そして、違う経験を積んだ同期や同僚に相談する中で、さらには、他省庁や政府外の友人と話す中で、どうにかそこに近づける、というものだと思います。 入省を待つ必要はありません。是非、就職活動・官庁訪問も含めて、積極的にいろいろな体験をしてみていただければと思います。財務省の魅力の一つは、どんな分野の、どんな経験も、決して無駄にならないことです。 政府を、財務省を進化させるためには、多様な本気の個人が、チームとして機能することが不可欠です。お互いの経験をシェアする機会があることを、楽しみにしています。

 そして・・広く社会に訴えていく。「年金は賦課方式です」というよりも「年金は若い世代が高齢者を支える世代間の分かち合い」といった方がわかりやすい。「将来世代の給付水準確保」ではなくて「子や孫の年金を守る」の方が身近に伝わる。政策は国民生活に関わるもので、何のため具体的に何をするか、しっかりと説明責任を果たしていく。 同時に・・・年金額改定のルールを全て落とし込んだ年金法の条文をどう改正するのか。迷路のような歴史ある条文を持って、担当者が連日法制局で熱い審査を受ける。 さらに・・・法案審議は連日緊張だ。総理や大臣が国会の論戦で法案の意義をアピールするためのストラテジーを力一杯準備し、支えていく。 年金課だけでも600問を超える質問に答える法案審議を経て、成立。こうして、生活に密接に関わる年金制度を紡いでいく。 

 そして、この作業は年金局が独立しては決してできない。日々、他の部局と密接な連携を取る。生活保護との関係は?医療・介護保険料も含めるとどういった負担になるのか?そして、自分の本籍地でもある財務省とも、日々やりとりをする。例えば、無年金の方への対応について、新たに年金の支給を行うため財源が必要となる。その財源を捻出することと、無年金で生活が苦しい方に対応すること、その両者の重さを考えて、悩みつつ解決方法を見つけていく。これをまさに財務省がリードしていく。勿論省庁間で意見が違うこともある。国の財政に責任を持つ財務省と激論になることもある。ただ、何をどうすればより良い制度になるのか、どうすれば将来に対して責任ある国にできるのかという思いは同じだ。各フィールドに責任感をもって、真剣に他の省庁と議論を交わす財務省は外から見ても熱くて、真剣で、嬉しくなる。 10年前、政策というのは国の価値観を左右し得るような決定になるのだ、という話に感動して財務省の門を叩いた。高齢化のトップランナーである日本はその在り方をどう考えるか。女性の働き方に対してどういった税制、社会保障があればいいのか。 簡単な答えなんてない中で、知恵と力とバイタリティを絞って向き合うこと。信頼できる国であるために、しっかりと機能する土台を作っていくこと。これこそ霞ヶ関でできる仕事の神髄であると思う。そして、その中で多くの難しい分野と向き合い、責任を持つ財務省での仕事が、今後も楽しみでならない。

 厚生労働省年金局年金課。この課では、年金制度がどうあるべきかに向き合っている。年金というと「将来もらえない」「破綻する」といった誤解が多いが、そんなことは全くない。基礎年金の半分は税金であり、これに、働く世代が納める保険料などを組み合わせて高齢者の年金を支えていく。年金制度は連綿と続く世代をつなぐ重要な分かち合いの仕組みであり、それを守ることは老後の安心を守ることでもある。 長い間信頼できるような年金制度とはどういったものか。果たして、老後の生活を支えるために年金はどのぐらい必要なのか。そして、未曾有の高齢化社会に立ち向かう中で、一人で対処できないリスクに備えて、社会はどのように連携していき、社会保障はどうあるべきなのか。こういったことがまさに厚生労働省、そして中央省庁で立ち向かっていることだ。

 では、具体的にどうやって「立ち向かう」のか。昨年秋の臨時国会。年金制度についての法律が二本成立した。一つは、現在、年金をもらえていない方がもらいやすくなる法律。一つは、将来の若い世代が受け取る年金を確保するための法律。制度の改正はすなわち法律改正であり、その法律を通すために多くの工程がある。 まず・・現状を把握し、考える。リーマンショックなどの経済状況に合わせて年金水準を見直す仕組みを徹底しなかったことから、将来の年金の受け取り水準が下がってしまった。年金の世代間の分配ルールをどう変えればこの状況が改善するのか。

総理官邸活躍のフィールド

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 総理秘書官補として働くことの魅力は、何といっても、行政府の長である内閣総理大臣のすぐそばで仕事ができることです。 「総理」「官邸」という言葉は、テレビや新聞などで知っていても、それがどのようなものかを理解することは簡単ではありません。秘書官補として働いていると、その言葉が少しずつ実体的な意味を持つようになります。行政の長たる総理が物事を判断するとは具体的に何をどうすることなのか。政府という巨大で複雑な組織が、どう、ある程度のカタマリとして動いていくのか。総理の言葉がどのように報じられ、伝わっていくのか。 もちろん、秘書官補の立場から、すべてが見えるわけではありません。それでも、今の日本について考える材料に溢れています。

 総理秘書官補の業務内容は、とてもシンプルなものです。総理秘書官の日程の調整、総理答弁・発言案の事前チェック、各省との連絡調整、総理出張の調整など。政策の中身を議論していく総理や総理秘書官をサポートするのが仕事です。 ハードなこの仕事に不思議な楽しさがあるのは、絶対に処理不能だと思われる量と質のタスクを、多くの人に助けてもらいながら、なんとかこなしていくからでしょうか。 秘書官補は、政府内のすべての人がカウンターパートであり、やるべきことをやるのに躊躇は不要です。(躊躇している暇がないとも言えますが。)局長に直接電話してお願いすることもあれば、係員さんの機転に助けてもらうこともしばしばです。形式的な配慮は最小限にさせていただいて、単刀直入にアウトプットを追うことになります。 その中で、重要案件の進展に少し貢献できたり、苦しんでいる各省原課のお手伝いができたりすると、大きなモチベーションになります。

「総理」「官邸」とは

シンプルでハード 躊躇や形式は不要

戦友

チームジャパンの重要な一員として

日本の在り方に   向き合うこと

より「機能する」日本政府とは 年金制度と社会保障

臨場感ある描写をすると・・・

財務省で働いていくということ

財務省職員の活躍するフィールド

厚生労働省活躍のフィールド

日向寺 裕芽子Yume k o H YUGA J I[平成19年入省]平成19年 理財局総務課平成20年 理財局国債企画課平成21年 金沢国税局平成22年 大臣官房秘書課財務官室平成23年 IMF・世銀総会準備事務局班長平成24年 留学(英・LSE)平成26年 大臣官房総合政策課 課長補佐

厚生労働省年金局年金課長補佐

飯田 薫Kao r u I I DA[平成18年入省]平成18年 大臣官房文書課平成20年 金沢国税局平成21年 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課平成23年 留学(米・ミシガン大)平成25年 大臣官房総合政策課 課長補佐平成26年 主計局総務課 課長補佐平成27年 金融庁総務企画局市場課 課長補佐平成27年 金融庁総務企画局総務課 課長補佐

総理大臣官邸事務所(内閣総理大臣秘書官補)

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国際機関活躍のフィールド

有利 浩一郎Ko i c h i r o AR I TO SH I

[平成8年入省]

平成 8年 銀行局調査課平成10年 留学(仏・パリ第二大)平成12年 主計局主計企画官付平成13年 主計局調査課平成14年 農林水産省総合食料局品質課平成15年 農林水産省消費・安全局表示・規格課 課長補佐平成16年 理財局財政投融資総括課 課長補佐平成17年 武雄税務署長平成18年 国際局為替市場課 課長補佐平成20年 主税局税制第二課 課長補佐平成21年 主税局調査課 税制調査室長平成22年 主税局税制第三課 審査室長平成23年 主計局調査課 課長補佐平成24年 主計局主計官補佐(地方財政係担当主査)平成25年 大臣官房文書課 法令審査室長平成26年 大臣官房文書課 調査室長平成27年 大臣官房企画官

OECD(経済協力開発機構)日本政府代表部参事官

長谷川 実Min o r u HA S EGAWA

[平成20年入省]

平成20年 大臣官房総合政策課平成21年 大臣官房政策金融課平成22年 福岡国税局平成23年 留学(米・コロンビア大)平成25年 大臣官房秘書課財務官室平成27年 内閣官房健康・医療戦略室参事官補佐

国際通貨基金エコノミスト

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 「10年後、自分がどこでどんな仕事をしているか分からない世界に、飛び込んでみたくはないか?」 官庁訪問の際にとある財務省職員に言われた言葉を、今でも思い出します。 あれからちょうど10年。ワシントンDCにある国際通貨基金(IMF)に出向中の自分が、デンマーク人、イラン人、ナミビア人の同僚とともに、南スーダン政府とのミーティングのためにケニアに赴くことになるとは、当時の自分は全く想像もしていなかったと思います。

 私は現在、IMFで南スーダン担当のエコノミストとして、南スーダンの輸出入や外貨準備金に係る政策の分析・コンサルテーションを行っています。 2016年12月、私は南スーダンの財務・金融当局との協議のため、ケニアを訪れていました。南スーダンは2011年7月に独立した世界で最も新しい国で、アフリカ有数の産油国です。しかし、長引く紛争の影響により油田は閉鎖され、世界的な原油価格下落も重なって、石油依存の経済モデルは危機に陥っており、外貨準備金も枯渇しつつある切迫した状況でした。治安の懸念もあり、今回は第三国(ケニア)にて南スーダン当局と協議することになりました。 南スーダンのような独立して間もない国は財政・金融制度もまだきちんと整備されておらず、政府がそれらを設計するにあたり、マクロ経済の専門家集団であるIMFの分析・助言は非常に大きな影響力を持ちます。統計も未整備な部分が多く、データの入手も困難なため、分析の際には自ら推計モデルを構築し、中長期的な見通しを立てる必要があります。まさにマクロ経済の「現場」の最前線で戦うエコノミストとして、「理論」と「実践」の双方に渡る幅広い知見が求められます。30代前半の若手で、独立して間もない国の将来を左右するような重要な制度設計に関わるというのは、他ではできない経験であ

遠く離れたアフリカの地へ

ゼロからの国づくりに関わる

点と点の経験が、線で繋がる瞬間

「まだ見ぬ世界」に飛び込む勇気

りやりがいを感じる一方、責任の重さに身が引き締まります。

 約1週間に及ぶ協議の最終日。合意文書を取り交わした後、朝から晩まで会議室の中で膝をつき合わせ議論した南スーダン財務・経済計画省、中央銀行の担当者と固い握手を交わし、再会を誓います。国税局時代に帳簿上の細かな数字一つ一つを根気強く追った経験、留学時代に必死に学んだマクロ経済学の知識、係長・補佐時代に培った英語での交渉スキル・・・。財務省に入省してからの点としての数々の経験が、日本から遠く離れたケニアの地で、しっかりと線として繋がり実を結んだ瞬間です。財務省の、長期的な視座で人を育てる風土を改めて実感しました。

 地方赴任や留学、他省庁や在外公館・国際機関への出向。財務省で活躍できるフィールドは、皆さんの想像以上に広大です。常に何かを学ぶことが求められ、慣れない環境で苦労することもしばしばです。そうした環境に勇気を持って飛び込んで得られた経験は、何物にも代え難い財産となります。特に国際機関では、異なる文化を持つ各国の同僚と意見をぶつけ合い切磋琢磨することで、日本では得られないたくさんの新たな気づきが得られます。「まだ見ぬ世界」に飛び込む勇気を持った皆さんと、一緒に働けることを楽しみにしています。

国内・国際両方の    エキスパート

国際機関の  最前線から

 私は今、パリのOECD日本政府代表部に勤務しています。OECD(経済協力開発機構)は、国際社会が直面する経済・社会・環境分野の諸課題の解決を目指し、自らの研究分析を元に、各国政府への政策提言や各国政府間の政策の基準作りを行う国際機関です。日本政府代表部は、OECDと日本政府の間の連絡調整役を果たしており、その中で、私は財政・金融分野を担当しています。

 OECDといえば、多国籍企業の租税回避を防止するための行動計画をまとめ上げたBEPS(ベップス)プロジェクトが最近とみに有名ですが、これ以外の財政・金融分野でも、OECDは様々な活動を行っています。 例えば、各国の予算当局者が集まる「予算上級官吏会合」では、予算への成果主義の導入、国の会計報告への発生主義の導入などについて、各国の経験や優秀事例の共有が図られますが、私からは、日本の経験を話したり、今後の議論の方向性について意見を述べたりしています。 また、各国の資本規制の撤廃を目的としたOECD資本移動自由化規約の見直しが現在進められていますが、私は、それを担当する「諮問タスクフォース」の中心メンバー(ビューローメンバー)に本年から就任し、日本の立場を主張しつつ、会議を円滑に進めるのに貢献しています。

OECD日本政府代表部とは

OECDの仕事の間口の広さと何でも屋の財務省

消えつつある国内畑・国際畑の垣根

でも英語は苦手で・・・という方に

 しかし、OECDの間口の広さが影響して、思いもよらぬ仕事をしていることもあります。ある時は、環境政策委員会の作業部会に出席して、「パリ協定」発効で需要の高まる環境向け金融の議論に参加し、ある時には、OECDフォーラムという年一度の広報イベントに、著名な日本人をスピーカーとして呼んだり、日系企業の開発したロボットを出展してもらうべく奔走したり、といった具合に。 私は、こうした仕事を楽しみながらやっていますが、元をたどると、自分の仕事だけではなく、さまざまな省庁を集めて物事を取りまとめたり、他の省庁の政策のアイデアを一緒に考えたりといった、幅広い仕事を担う何でも屋の財務省での経験が活きていると感じます。

 私は、国際局での外貨準備の運用業務以外は、一貫して国内政策に携わってきました。だから、「君、国際的な仕事できたの?」と思われている気がしてならないのですが、実際、OECDで目撃するのは、国内政策担当の各国財務省職員が、そのまま国際的な会議にやってきて、英語でやりとりする場面です。そして、日本の財務省でも、国内政策のキャリアと国際的なキャリアの両方を積んでいる人が増えています。もはや、国際的な経験抜きにして、財務省の仕事を語れない時代が来るかもしれません。

 一方で、「国際的な仕事には興味はあるが、英語が苦手で・・・」といった方もいると思います。私も、英語は苦手で、それでフランスに留学した過去があるのですが、今回、英語で仕事をするうちにその苦手意識は払拭され、今は英仏両語を話せることが大きな武器になっています。それに、財務省の若手には留学機会も多く与えられています。ですから、今、英語ができないからといって、不安がる必要は全くありません。財務省は、国際的な活躍の場も用意して、あなたを待っています。

財務省職員の活躍するフィールド

在外公館活躍のフィールド

FIELD