第3章 情報通信による経済波及効果分析 - esri第3章...

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第3章 情報通信による経済波及効果分析 IT 投資及び情報通信産業の最終需要、設備投資による経済波及効果分析― 〔要約〕 本章では、産業連関分析の手法を用いて、IT 投資及び情報通信産業(情報サービス・コ ンテンツ産業、通信産業、放送産業、機器産業)の最終需要と設備投資に関して、1990 2005 年の経済波及効果(生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移を分析した。 この結果、IT 投資の内、ハードウエアの経済波及効果が減少した一方で、ソフトウエアの 経済波及効果は拡大したこと、及び、情報通信産業の最終需要と設備投資による経済波及 効果は、双方とも IT バブル期の 2000 年で大きく拡大した後やや減少したが、2005 年でも 依然として高い水準を保っていたことが明らかとなった。 58

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第3章 情報通信による経済波及効果分析

―IT 投資及び情報通信産業の 終需要、設備投資による経済波及効果分析―

〔要約〕

本章では、産業連関分析の手法を用いて、IT 投資及び情報通信産業(情報サービス・コ

ンテンツ産業、通信産業、放送産業、機器産業)の 終需要と設備投資に関して、1990 年

~2005 年の経済波及効果(生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移を分析した。

この結果、IT 投資の内、ハードウエアの経済波及効果が減少した一方で、ソフトウエアの

経済波及効果は拡大したこと、及び、情報通信産業の 終需要と設備投資による経済波及

効果は、双方とも IT バブル期の 2000 年で大きく拡大した後やや減少したが、2005 年でも

依然として高い水準を保っていたことが明らかとなった。

58

1.はじめに

第 2 章では、第 1 章で作成した情報資本ストックデータを用いて、それが経済の供給面

に与える影響を分析した。ここで、忘れてはならないことは、IT 投資や情報資本ストック

の蓄積は需要面でも経済に影響を与えることである。

情報資本ストックを形成する通信機や電子計算機(情報化投資財)を生産するためには、

様々な原材料や中間サービスが必要となり、これらの生産・サービス活動に伴って多くの

付加価値や雇用が生み出される。すなわち、IT 投資が行われることで、多くの経済波及効

果が生み出されるわけである。こうした IT 投資の需要面の効果を定量的に把握することは

重要であると考えられる。そこで、本章では IT 投資による経済波及効果を分析することと

した。

ただし、通信機や電子計算機を活用するためには、通信サービスの利用が不可欠である。

例えば、電子計算機の場合、計算や書類作成を行ってもその成果を通信できないとすると、

大きく利便性が損なわれてしまうであろう。従って、通信サービスを提供する情報通信産

業の存在が重要となってくる。本章では、情報通信産業が通信サービスを提供するために

は、多くの設備投資が必要であることも考慮し、情報通信産業の 終需要及び設備投資に

よる経済波及効果の分析も合わせて行った。この際、メディア融合の進展等も考慮し、情

報通信産業は放送やコンテンツ等も含む広い範囲を対象とした。

2.IT 投資による経済波及効果分析

ここでは、第 1 章で構築した IT 投資データを用いて、IT 投資による経済波及効果の分

析を行う。

2-1.IT 投資による経済波及効果分析の目的と背景

コンピュータや通信機、通信インフラ等の情報資本ストックは、企業の生産性を高め、

経済全体の成長に寄与する重要な生産要素である。しかし、こうした供給面の重要性の他

に、需要面の重要性も忘れてはならない。情報資本ストックの元になる投資(IT 投資)は、

さまざまな生産活動を誘発し、付加価値や雇用を誘発するという経済波及効果を生み出す。

ここでは産業連関分析の手法を用い、1995 年から 2005 年の間で、IT 投資による経済波及

効果がどのように変化したのかを分析する。

IT 投資の経済波及効果は、ソフトウエア・ハードウエア別の推移、及びハードウエアの

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内訳ごとの推移を分析する。また、IT 投資1単位当たりの生産誘発額については、先行研

究として篠崎(2003a)の第 6 章等の分析があるが、ここではより詳細な部門分類のデータ

を用いて、篠崎(2003a)の手法を元に分析期間を広げた。さらに、ソフトウエアを分析に

加えるとともに、購入者価格データを用い、輸入品を考慮した。

2-2.IT 投資による経済波及効果の算出方法

経済波及効果の算出には、一国全体の製品・サービスの取引をまとめた「産業連関表」

に基づく産業連関分析の手法を用いる。以下では、分析の対象と分析モデルの説明を行う。

2-2-1.IT 投資による経済波及効果の分析対象

経済波及効果の分析対象となる IT 投資データは第 1 章で作成した値を用いる。1995 年

~2005 年の5年ごとの値は、基本的に産業連関表の国内総固定資本形成(民間)の値を用

いているので、産業連関データのみによる分析とほぼ同義である(第 1 章図表 2 参照)。し

かし、1995 年の IT 投資額はソフトウエアの値のみ、産業連関表の値と異なっている。こ

れは、1995 年までの産業連関表ではソフトウエアプロダクトが中間需要に計上されていた

ためである。第1章で作成した IT 投資データでは、ソフトウエアプロダクトも含むように

補正している。

IT 投資額の推移を 5 年単位で確認すると、IT バブル期であった 2000 年で増加したが、

2005 年で減少したことが分かる(図表 1)。ソフトウエアは 2005 年も増加を続けているが、

2005 年のハードウエアの減少幅がソフトウエアの増加幅を上回った。

(図表 1)

2-2-2.IT 投資による経済波及効果の分析手法とデータ

前述のIT投資データ以外で、経済波及効果算出のために使用したデータは、2005 年が総

務省『平成 17 年産業連関表』、2000 年が総務省『平成 12 年産業連関表』、1995 年が総務省

『平成7年産業連関表』より得ている。各表は基本分類を元に、 も細かい部門分類で正

方化しているが、この際自家輸送部門を立てない形式としている。これは、接続産業連関

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表データを用いた分析と整合的な分析とするためである1。

正方化した場合の部門数は 1995 年が 395 部門、2000 年、2005 年が 397 部門である2。な

お、2005 年については、「その他の非金属鉱物」の輸入係数が 1 を越えてしまい、国産品

比率がマイナスになるという問題が発生したため、「砂利・採石」、「砕石」、「その他の非金

属鉱物」の 3 部門を「窯業原料鉱物以外の非金属鉱物」として統合している3。

分析に使用するのは産業連関分析の均衡産出高モデルである。モデル式は以下の通り。

)1(ˆˆ LL)ITM(I)A)M(I(IX 1II −−−= −

〔ただし、X:生産誘発額, I:単位行列, :輸入係数行列(輸入額/国内需要額

を対角とした対角行列), A:投入係数行列, IT:情報化投資額ベクトル, II は情

報化投資を示す添字(以降同じ)〕

(2)ˆ LLIIII XVVA =

〔ただし、VA:付加価値誘発額, :付加価値係数ベクトル(付加価値額/国内生

産額を対角とした対角行列)〕

(3)ˆ LLIIII XLLF =

〔ただし、LF:雇用誘発数, L̂ :雇用係数ベクトル(雇用者数(人)/国内生産額

(100 万円)を対角とした対角行列)〕

このモデルは輸入を考慮しており、輸入が多くなればなるほど、日本国内への経済波及

効果は小さくなる4。

情報化投資額ベクトル IT は当該情報化投資財及び商業マージンと輸送マージン(国内総

固定資本形成(民間)の部分に記載された値)以外がゼロのベクトルとなる。ベクトルの

1 自家輸送マトリクスを用いて、自家輸送部門の中間投入額を分割し、他の部門に加えている。 2 行部門は列部門の 6 桁コードに合わせて統合し、列部門の方が細かい「野菜」、「海面漁業」等は行部門

に合わせて統合している。なお、「鉄屑」は「銑鉄」、「非鉄金属屑」は「その他の非鉄金属地金」に統

合している。また、2005 年でコードが変更された「古紙」は、「パルプ」に統合している。2000 年以前

の表では、「古紙」と「パルプ」の 6 桁コードは同じであったので、統合方法は同じである。 3 「その他の非金属鉱物」は、近い部門に統合すべきだが、「砂利・採石」と「砕石」のどちらがより近

いかということは判断できないため、「非金属鉱物」のなかで「窯業原料鉱物」とそれ以外という区分

を採用した。 4 以下、経済波及効果という用語は、生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数のことを表している。

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値を全て合計すると、当該情報化投資財の購入者価格の投資額となる。

情報化投資 1 単位当たりの経済波及効果は、生産誘発額(X)、付加価値誘発額(VA)、

雇用誘発数(LF)の合計値のそれぞれを情報化投資額(IT)合計値で除して計算してい

る。情報化投資額は輸入を含めた値(国産品比率を乗じない値)となっており、輸入品を

含めた情報化投資額 1 単位でどれだけの経済波及効果を生み出すかという指標になって

いる。

以下では、情報化投資額全体及びハードウエア、ソフトウエア別の単位当たり経済波及

効果の推移をみた後、ハードウエアの内訳を分解して細かくみていく。

2-3.IT 投資による経済波及効果の推移

均衡産出高モデルに基づき算出した IT 投資の経済波及効果の 1995 年~2005 年の推移は

図表 2 の通りである。

(図表 2)

以下では、生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数ごとに、まずソフトウエア、ハー

ドウエアの推移を分析する。そのうえで、ハードウエアの内訳ごとに分析する。

2-3-1.IT 投資による生産誘発額の推移

IT 投資合計とハードウエア・ソフトウエア別の生産誘発額の 1995 年~2005 年における

推移を示したのが図表 3 である。

(図表 3)

IT 投資額の生産誘発額は IT バブル期の 2000 年で増加したが、2005 年で 1995 年を下回

る水準まで減少した。内訳をみると、ハードウエアが一貫して減少していたのに対して、

ソフトウエアは増加を続けている。ハードウエア合計は、2000 年まではソフトウエアを上

回っていたが、2005 年では両者が逆転した。2005 年の IT 投資による生産誘発額の減少要

因はハードウエアにあり、ソフトウエアの増加では補い切れなかったといえる。

次に、ハードウエアの内訳ごとの生産誘発額及び比較用のソフトウエアの生産誘発額を

示した図表 4 をみると、2005 年では全てのハードウエアが減少していることが分かる。

(図表 4)

コンピュータ関連の生産誘発額は 1995 年では IT 投資の中で も大きかったが、その後

減少を続け、2005 年ではソフトウエアと通信機器を下回っている。ハードウエアの生産誘

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発額が減少する主因となっている。通信機器の生産誘発額は、1995 年ではソフトウエアよ

りも大きく、コンピュータ関連に次ぐ大きさだったが、2000 年には減少してソフトウエア

を下回った。2005 年には減少幅が拡大している。事務用機器は他のハードウエアに比べて

変動が小さく、横ばいに近い動きとなっている。通信施設建設は 2000 年で増加したが、2005

年で大きく減少し、1995 年の水準を下回った。

以上をまとめると、IT投資による生産誘発額が 2005年に減少した主因はハードウエア、

特にコンピュータ関連と通信施設建設にあったといえる。一方、ソフトウエアの生産誘発

額は増加を続けていたが、ハードウエアの減少を補うほどの増加ではなかった。

2-3-2.IT 投資による付加価値誘発額の推移

IT 投資による付加価値誘発額は、生産誘発額とほぼ同様の推移である。すなわち、IT バ

ブル期の 2000 年に増加したが、2005 年で 1995 年を下回る水準まで減少した。

内訳をみると、生産誘発額と同様に、ハードウエアが一貫して減少していたのに対して、

ソフトウエアは増加を続けていた。2000 年まではハードウエア合計がソフトウエアを上回

っていたが、2005 年には両者が逆転した。なお、2005 年における、ソフトウエアとハード

ウエア合計の付加価値誘発額の差は生産誘発額よりも大きくなっている。

次に、ハードウエアの内訳をみると、生産誘発額と同様に 2005 年では全てのハードウエ

アで付加価値誘発額が減少していることが分かる。コンピュータ関連、通信機器が減少を

続け、事務用機器がほぼ横ばいで推移した。通信施設建設は 2000 年で増加した後 2005 年

で大きく減少している。

以上をまとめると、IT 投資による付加価値誘発額は、生産誘発額と同様に 2000 年の IT

バブル期に増加したが、2005 年に減少しており、この減少要因はハードウエア、特にコン

ピュータ関連と通信施設建設にあった。ソフトウエアの付加価値誘発額は増加を続けてい

たが、ハードウエアの減少幅が大きかった。2005 年の情報化投資全体の付加価値誘発額は

1995 年を下回った。

2-3-3.IT 投資による雇用誘発数の推移

IT 投資による雇用誘発数も、生産誘発額、付加価値誘発額と同様に、IT バブル期の 2000

年に増加したが、2005 年で減少している。内訳の動きも生産誘発額、付加価値誘発額と同

様である。なお、2005 年における、ソフトウエアとハードウエア合計の雇用誘発数の差は

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生産誘発額でみた場合よりも大きい。

次に、ハードウエアの内訳をみると、生産誘発額、付加価値誘発額と同様に 2005 年では

全てのハードウエアが減少している。コンピュータ関連、通信機器が減少を続けている点、

事務用機器がほぼ横ばいの点、通信施設建設が 2000 年で増加した後 2005 年で大きく減少

した点は、生産誘発額、付加価値誘発額と同じである。

以上をまとめると、IT 投資による雇用誘発数は生産誘発額、付加価値誘発額と同様の推

移となっており、2005 年の減少要因はハードウエア、特にコンピュータ関連と通信施設建

設にあった。一方、ソフトウエアの雇用誘発数は増加を続けていたが、生産誘発額、付加

価値誘発額に比べると増加幅は小さい。また、2005 年のハードウエアの減少幅が大きいた

め、2005 年の情報化投資全体の雇用誘発数は 1995 年を下回った。

2-4.IT 投資の単位当たり経済波及効果の推移

ここでは、IT 投資の単位当たり経済波及効果の分析を行う。1995 年~2005 年の推移を

示したのが図表 5 である。

(図表 5)

IT 投資合計とハードウエア・ソフトウエア別の単位当たり生産誘発額の 1995 年~2005

年における推移をみると、2005 年にかけて減少を続けている。ハードウエアが一貫して減

少していたのに対して、ソフトウエアは増加を続けていた。

単位当たり付加価値誘発額は一貫して減少を続けているものの、減少幅は単位当たり生

産誘発額よりも緩やかである。ハードウエアが一貫して減少していたのに対して、ソフト

ウエアは増加を続けていた点は、単位当たり生産誘発額と変わらない。

単位当たり雇用誘発数も、単位当たり生産誘発額と単位当たり付加価値誘発額と同様に

IT 投資合計では 1995 年~2005 年で減少を続けていた。ハードウエアが一貫して減少して

いた点も、単位当たり生産誘発額や単位当たり付加価値誘発額と同様であるが、ソフトウ

エアが減少していた点が異なっている。

2-5.IT 投資による経済波及効果のまとめ

2節では、1995 年~2005 年における IT 投資(コンピュータ関連、通信機器、事務用機

器、通信施設建設、ソフトウエア)による経済波及効果(生産誘発額、付加価値誘発額、

雇用誘発数)を産業連関分析の手法を用いて分析した。この結果、以下の2点が明らかと

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なった。

第一に、1995 年~2005 年における生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数の総量は、

IT バブル期の 2000 年に増加したが、2005 年で減少した。

第二に、経済波及効果の減少要因はハードウエア、特にコンピュータ関連と通信施設建

設にあり、ソフトウエアは増加を続けたが、ハードウエアの減少分を補うほどの増加幅で

はなかった。

また、IT 投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数の分析によって明

らかになったのは以下の 2 点である。

第一に、1995 年~2005 年における単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数

は減少が続いた。

第二に、この間、ハードウエアの単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数

が全て減少した一方で、ソフトウエアの単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額は増加し

た。ただし、ソフトウエアの単位当たり雇用誘発数は減少した。

3. 情報通信産業の 終需要による経済波及効果

ここでは、情報資本ストックの利用を支える情報通信産業に関して、 終需要による経

済波及効果の分析を行う。

3-1.情報通信産業の 終需要による経済波及効果分析の目的と背景

情報資本ストックを活用する際には、情報通信産業が提供するサービスが不可欠である。

また、情報通信産業は、IT を も利用(需要)し、かつ IT 関連の財・サービスを提供(供

給)する「かなめ」の立場にある重要な産業である。情報通信産業の生産・サービスの額

が大きいかどうかも重要であるが、さらに情報通信産業に対する 終需要によって、原材

料や中間サービスの需要が誘発され、 終的に大きな経済波及効果が日本経済にもたらさ

れるとすれば、情報通信産業の重要性はより高いといえる。ここでは、1990 年から 2005

年の間で、情報通信産業の 終需要による経済波及効果が日本経済の中でどのような規模

と影響力を有するようになったのかを明らかにする。

以下では、産業連関表を用いた分析によって、情報通信産業の 終需要からどの程度の

生産、付加価値、雇用が生じるかという経済波及効果を 1990 年から 2005 年にわたって計

測する。

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3-2.情報通信産業の 終需要による経済波及効果の算出方法

経済波及効果の算出には、「産業連関表」に基づく産業連関分析の手法を用いる。以下で

は、分析の対象と分析モデルの説明を行う。

3-2-1.情報通信産業の 終需要による経済波及効果の分析対象

分析する産業群は、(1)価値の実態としての情報サービス・コンテンツ産業、(2)ネットワ

ーク媒体としての通信サービスと(3)放送サービス、(4)インターフェースとしての機器であ

る。具体的な部門分類は図表 6 に示した5。

同様の分析を行った研究には廣松・篠崎・山本(2007)があるが、ここでの分析対象は

より広い部門をカバーしている。具体的には、(3)の放送と、(1)の情報サービス・コンテン

ツに含まれるソフトウエア業を中心とした情報サービス以外の部門(出版、映画・ビデオ

制作・配給業等のエンターテイメント系コンテンツや広告)、(4)の端末に含まれる通信機

械以外の部門(テレビ等の民生用電子機械やパソコン・周辺機器)が、廣松・篠崎・山本

(2007)で定義されている「情報ネットワーク産業」には含まれていない。メディア融合

や FMC(Fixed Mobile Convergence)の進展を踏まえ、広い範囲を対象としている。

分析対象の選定においては、 新データである『平成 17 年産業連関表』(確報)を基準

とし、対応する部門を過去のデータから抽出した。『平成 17 年産業連関表』で新設された

「インターネット付属サービス」部門も(1)の情報サービス・コンテンツ産業に含めたが、

情報通信産業全体の国内生産額に占める割合は 2%未満であり、新設の影響は軽微である。

また、比較の対象としては、廣松・篠崎・山本(2007)と同様に日本の産業の中核とし

て扱われることの多い自動車産業を取り上げ、情報通信産業の相対的位置付けを分析する。

(図表 6)

3-2-2.情報通信産業の 終需要による経済波及効果の分析手法とデータ

使用したデータは、2005 年が総務省『平成 17 年産業連関表』、2000 年が総務省『平成

12 年産業連関表』、1995 年と 1990 年が総務省『平成 2-7-12 年接続産業連関表』より得て

いる。各表は基本分類を元に、 も細かい部門分類で正方化しているが、この際 2000 年と

2005 年は『平成 2-7-12 年接続産業連関表』に合わせて、自家輸送部門を立てない形式とし

5 経済波及効果を計算するためには正方化(行と列を同じ数にする)する必要があるため、 も細かい基

本分類を元に正方化した部門分類を用いている。

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ている6。

正方化した場合の部門数は 1990 年、1995 年が 393 部門、2000 年、2005 年が 397 部門で

ある7。なお、2005 年については、「その他の非金属鉱物」の輸入係数が 1 を越えてしまい、

国産品比率がマイナスになるという問題が発生したため、「砂利・採石」、「砕石」、「その他

の非金属鉱物」の 3 部門を「窯業原料鉱物以外の非金属鉱物」として統合している8。

各年について、 終需要額を求め、それぞれについて、生産誘発額、付加価値誘発額、

雇用誘発数を計測し、経済波及効果の大きさとその変遷及び相対的地位を分析する。分析

に使用するのは産業連関分析の均衡産出高モデルである。モデル式は以下の通り。

(4)ˆˆ LLE))YM((I)A)M(I(IX 1FD +−−−= −

〔ただし、X:生産誘発額, I:単位行列, :輸入係数行列(輸入額/国内需要額

を対角とした対角行列), A:投入係数行列, Y:国内 終需要額, E:輸出額, FD

は情報通信産業の 終需要を示す添字(以降同じ)〕

(5)ˆ LLFDFD XVVA =

〔ただし、VA:付加価値誘発額, :付加価値係数ベクトル(付加価値額/国内生

産額を対角とした対角行列)〕

(6)ˆ LLFDFD XLLF =

〔ただし、LF:雇用誘発数, L̂ :雇用係数ベクトル(雇用者数(人)/国内生産額

(100 万円)を対角とした対角行列)〕

これにより、各産業の 終需要からの生産、付加価値、雇用がどれだけ誘発されるのか

という経済波及効果を計算することが出来る。また、このモデルは輸入を考慮しており、

輸入が多くなればなるほど、日本国内への経済波及効果は小さくなる。

なお、 終需要額単位当たりの経済波及効果である、生産誘発係数、付加価値誘発係数、

6 自家輸送マトリクスを用いて、自家輸送部門の中間投入額を分割し、他の部門に加えている。 7 行部門は列部門の 6 桁コードに合わせて統合し、列部門の方が細かい「野菜」、「海面漁業」等は行部門

に合わせて統合している。なお、「鉄屑」は「銑鉄」、「非鉄金属屑」は「その他の非鉄金属地金」に統

合している。また、2005 年でコードが変更された「古紙」は、「パルプ」に統合している。2000 年以前

の表では、「古紙」と「パルプ」の 6 桁コードは同じであったので、統合方法は同じである。 8 「その他の非金属鉱物」は、近い部門に統合すべきだが、「砂利・採石」と「砕石」のどちらがより近

いかということは判断できないため、「非金属鉱物」のなかで「窯業原料鉱物」とそれ以外という区分

を採用した。

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雇用誘発係数は、生産誘発額(X)、付加価値誘発額(VA)、雇用誘発数(LF)のそれぞれ

の合計値を 終需要額(Y+E)合計値で除して計算している。

以下では、まず情報通信産業全体の経済波及効果をみた後、4つのカテゴリ別に細かく

分析する。

3-3.情報通信産業の 終需要による経済波及効果

情報通信産業と自動車産業の 終需要による経済波及効果をまとめたのが図表 7 である。

(図表 7)

これをみると、まず「情報通信産業」の 終需要は、1990 年~2000 年までは拡大したが、

2005 年にかけて減少したことが分かる。しかし、相対的な大きさをみると、1990 年では「自

動車産業」の 終需要額 22 兆円より 2 兆円程大きかったのに対して、2005 年では「自動

車産業」の 24 兆円を約 10 兆円上回る 34 兆円となっており、2000 年より減少したといっ

ても自動車産業よりかなり大きい規模であることが分かる。

「情報通信産業」の 終需要からの生産誘発額は、1990 年では 50 兆円だったが、2005

年では 55 兆円まで拡大した。「自動車産業」の生産誘発額と比較してみると、「情報通信産

業」の生産誘発額がピークだった 2000 年(63 兆円)では「自動車産業」(54 兆円)を越え

る規模まで拡大したが、2005 年では再び「自動車産業」を下回った。

また、生産から生じる付加価値誘発額については、1990 年では「情報通信産業」21 兆円、

「自動車産業」18 兆円とその差は 3 兆円程度だったが、2005 年では「情報通信産業」25

兆円、「自動車産業」19 兆円と差が 6 兆円まで拡大している。

雇用誘発数は 1990 年で「情報通信産業」233 万人、「自動車産業」206 万人、2005 年で

「情報通信産業」243 万人、「自動車産業」206 万人となっており、付加価値誘発額と同様

に「情報通信産業」が「自動車産業」を上回っている。

こうしてみると、「自動車産業」は 1990 年以降の「失われた 10 年」で停滞していた一方、

「情報通信産業」が中核産業として発展したことが分かる。2000 年は、アメリカの IT 投

資バブルの影響で、日本の「情報通信産業」の経済波及効果も高まっていたという面もあ

るが、バブル後不況を経た 2005 年時点でも「自動車産業」を上回る規模を誇っている。

以下では、「情報通信産業」の経済波及効果の内訳を詳しくみていく。

68

3-3-1.カテゴリごとにみた情報通信産業の 終需要による経済波及効果

ここでは、情報通信産業の 終需要による経済波及効果を 4 カテゴリごとに分けて、そ

れぞれの推移を見た後、さらにその内訳を詳しくみていく。

図表 8 は「情報通信産業」の 終需要からの生産誘発額を 4 カテゴリ別に示したもので

あり、比較用に「自動車産業」の値も含めて示している。

(図表 8)

これをみると、情報サービス・コンテンツ、通信、放送の生産誘発額が増加傾向であっ

たのに対して、機器の生産誘発額が減少傾向であったことが分かる。1990 年~1995 年で「情

報通信産業」の生産誘発額が伸びていないのは、情報サービス・コンテンツや通信の伸び

を機器の減少が相殺したためであるといえる。また、2005 年における「情報通信産業」の

生産誘発額が減少した要因も機器にあることが確認できる。2005 年の機器の減少幅は大きい。

他方、「情報通信産業」の生産誘発額の増加を牽引したのは情報サービス・コンテンツと

通信である。通信は 2000~2005 年ではあまり伸びていないが、情報サービス・コンテンツ

は順調に増加している。

1990 年時点では、機器の生産誘発額が「情報通信産業」全体の 7 割以上を占めていたが、

2005 年では半分程度の規模になっている。2005 年では、情報サービス・コンテンツの生産

誘発額が機器の規模に近い値まで拡大している。

機器の減少は、付加価値誘発額でみた場合により顕著である。2005 年の機器の付加価値

誘発額は情報サービス・コンテンツよりも小さい値まで減少している 2000 年~2005 年に

かけて、「情報通信産業」の中心が機器から情報サービス・コンテンツへ移ったといえるだ

ろう。なお、通信、情報サービス・コンテンツ、放送の付加価値誘発額の推移は、生産誘

発額とほぼ同じであるが、2005 年で通信が増加していない点が異なっている。

また、雇用誘発数でみても機器は減少傾向である。特に、2005 年の減少幅が大きく、情

報サービス・コンテンツとの位置関係が逆転している点は、付加価値誘発額と同じである。

なお、生産誘発額や付加価値誘発額と異なり、機器産業が 2000 年でも減少している。通信、

情報サービス・コンテンツ、放送の推移は、生産誘発額とほぼ同じであるが、2005 年で通

信が若干減少している点が異なっている。

69

3-3-2.部門別にみた情報通信産業の 終需要による経済波及効果

ここでは、4 カテゴリごとにより細かい分類のデータの動きをみることで、それぞれの

カテゴリの経済波及効果の増減の要因がどこにあるのかを分析する。

(1)情報サービス・コンテンツ産業の 終需要による経済波及効果

まず、情報サービス・コンテンツ産業の部門別生産誘発額を示した図表 9 をみると、情

報サービスの規模が大きく、増加も顕著であることが分かる9。

(図表 9)

2005 年の情報サービスの生産誘発額は 1990 年の 3 倍以上の大きさとなっている。一方、

他部門に顕著な増加はみられず10、情報サービス・コンテンツ全体の増加は、ほとんどが

情報サービスの増加であることが分かる。情報サービスの増加が情報サービス・コンテン

ツ産業の増加の大部分を占めているという点は、付加価値誘発額、雇用誘発数をみても、

同様である。

ただし、2005 年の情報サービスの雇用誘発数は 1990 年の 2 倍強の大きさであり、生産

誘発額と付加価値誘発額に比べると倍率が小さい。情報サービスから誘発される生産と付

加価値の規模は 15 年で 3 倍になったが、誘発される雇用の規模はそれほど大きくなかった

わけである。

(2)通信産業の 終需要による経済波及効果

まず、通信産業の部門別生産誘発額を示した図表 10 をみると、その他の通信サービスの

生産誘発額は非常に規模が小さく、通信産業のほとんどを電気通信が占めていることが分

かる。

(図表 10)

電気通信の動きをみると、2000 年まで急激に増加した後、2005 年で伸びが鈍化している。

9 1995 年から 2000 年にかけての増加に関しては、情報サービス部門に含まれるソフトウエアプロダクト

について、中間需要に計上されていた分が 終需要に計上されるようになった影響を含んでいる点には

注意が必要である。ただし、1995 年から 2000 年にかけては情報サービス部門の国内生産額が大きく増

加しており、統計変更の影響で情報サービスの生産誘発額が大きく増加したわけではないと考えられる。 10 映像情報制作・配給業に関しては、2000 年から 2005 年にかけて大きく 終需要額が大きく増加してい

るため、生産誘発額が大きく増加している。これはビデオソフトに関して、 終需要に含まれる家計

終消費支出の見直しを行ったことと、レンタル用のビデオソフトの計上先を賃貸業の中間需要から、

終需要(国内総固定資本形成(民間))に変更したことの影響である。付加価値誘発額、雇用誘発数に

関しても同様の影響がある。

70

2000 年から 2005 年の電気通信の内訳をみると、移動電気通信の伸びが大きい一方で、固

定電気通信とその他の電気通信は減少している。つまり、2000 年から 2005 年にかけては、

固定電気通信とその他の電気通信の生産誘発額が減少したものの、これらの減少分以上に

移動電気通信の生産誘発額が増加したため、全体としての電気通信産業の生産誘発額が増

加したということである。

次に、付加価値誘発額、雇用誘発数をみると、その他の通信サービスの規模が小さい点、

2005 年で移動電気通信が伸びている一方で固定電気通信とその他の電気通信が減少して

いる点は、生産誘発額と共通している。

ただし、電気通信の内訳については、増減の方向は共通しているが、増減の相対的な大

きさが異なっており、これが3-3-1で述べた違いの原因である。付加価値誘発額では、

移動電気通信の増加と、固定電気通信、その他の電気通信の減少がちょうど同じ規模なの

で、電気通信全体では横ばいとなっている。雇用誘発数では、移動電気通信の増加よりも、

固定電気通信とその他の電気通信の減少の方が大きいために、電気通信全体では減少とな

っている。また、付加価値誘発額、雇用誘発数ともに、2000 年では移動電気通信の方が固

定電気通信よりも小さかったが、2005 年では移動電気通信が固定電気通信を上回っている。

以上を総括すると、通信産業のほとんどを占めている電気通信による生産誘発額は 1990

年から 2005 年にかけて増加を続けたが、2005 年の増加をけん引したのは、固定電気通信

とその他の電気通信の減少を補う以上に成長した移動電気通信であるといえる。一方、付

加価値誘発額と雇用誘発数については、2000 年まで増加を続けた点は同じであるが、付加

価値誘発額に関しては、2005 年の移動電気通信の伸びは、その他の減少を相殺する規模で

とどまり、雇用誘発数については他の減少を補う程の伸びではなかったといえる。とはい

え、通信産業の経済波及効果に関しては、移動電気通信が中心となったことに疑いはない

といえるだろう。

(3)放送産業の 終需要による経済波及効果

まず、放送産業の部門別生産誘発額を示した図表 11 をみると、公共放送の規模が大きく、

1990 年から 2005 年の期間では、民間放送や有線放送の 2 倍以上の規模である。

(図表 11)

ただし、民間放送の収入の多くは、放送番組の視聴者(消費者)からの支払いではなく、

広告収入が占めており、 終需要額が小さいため経済波及効果も小さいという点には留意

71

が必要である。推移をみると、公共放送は 2000 年まで増加した後減少しているが、民間放

送と有線放送は増加を続けている。特に 2005 年の増加が大きい。

公共放送の規模が大きい点と、民間放送と有線放送が増加を続けている点は、付加価値

誘発額、雇用誘発数でも同じである。

ただし、雇用誘発数に関しては、公共放送 2000 年の増加幅が小さい点、2005 年の減少

幅が大きい(1995 年よりも低い水準まで減少)点が、生産誘発額、付加価値誘発額の動き

と異なっている。

以上より、2005 年まで放送産業の経済波及効果が増加を続けたのは、2005 年において公

共放送の減少以上に民間放送と有線放送が増加したためであることが分かる。

(4)機器産業の 終需要による経済波及効果

機器産業に関しては、民生用電子機械とその他(通信機械、電子計算機)に分けて分析

を行っている。

まず、民生用電子機械産業の部門別生産誘発額を示した図表 12 をみると、ビデオ機器以

外は減少傾向であることが分かる。

(図表 12)

ビデオ機器は 1995 年で大きく減少したが、その後 2005 年まで増加し、2005 年では民生

用電子機械の中で 大となった。2005 年の規模をみると、ビデオ機器に次いで、電気音響

機器、ラジオ・テレビ受信機の順に大きい。電気音響機器の推移をみると、2005 年の減少

が大きい。一方、ラジオ・テレビ受信機は 2000 年まで減少したが、2005 年では横ばいと

なっている。

電気音響機器とラジオ・テレビ受信機の推移は、付加価値誘発額でもほぼ同じである。

ただし、ビデオ機器に関しては、1995 年で大きく減少した後、2000 年で増加した点は生産

誘発額と同じであるが、2005 年で横ばいとなっている点が異なっている。2005 年で生産誘

発額が増加したが、付加価値誘発額の増加にはつながっていないといえる。

また、部門別雇用誘発数をみても、電気音響機器とラジオ・テレビ受信機の推移は生産

誘発額とほぼ同じである。ビデオ機器に関しては、1995 年で大きく減少した点は生産誘発

額と同じであるが、2000 年以降横ばいとなっている点が異なっている。付加価値誘発額は

2005年で横ばいとなっているが、雇用誘発数については 2000年から横ばいが続いている。

以上をまとめると、民生用電子機械の経済波及効果は減少傾向であるが、唯一ビデオ機

72

器の生産誘発額のみ 2000 年以降増加に転じたといえる。ただし、生産誘発額が増加してい

る一方で、雇用誘発数は 2000 年以降横ばい、付加価値誘発額は 2005 年で横ばいとなって

おり、生産誘発額の増加が付加価値誘発額、雇用誘発数の増加につながっていない。

次に、通信機械と電子計算機の生産誘発額の推移を示した図表 13 をみると、ほとんどの

部門が 2005 年で減少していることが分かる。

(図表 13)

通信機械では、携帯電話機のみが増加を維持している。2005 年の増加幅は小さいものの、

通信機械の中で 大の規模であり、機器全体でみても 2 番目の大きさとなっている。有線

電気通信機器と無線電気通信機器は 2000年まで横ばいだったが、2005年で減少している。

特に有線電気通信機器の減少幅は大きく、無線電気通信機器との順位が入れ換わっている。

その他の電気通信機器は増加しているが規模が小さく、他の減少を補う程の影響力はない。

電子計算機では、パーソナルコンピュータのみ 2000 年まで増加した後 2005 年で減少と

なっているが、他は一貫して減少が続いている。特に電子計算機付属装置の減少は大きく、

1990 年では機器産業全体の中でも他の 2 倍程度の規模であったが、2005 年では携帯電話機

とほぼ同じ程度の規模まで減少している。

これまでに述べた各部門の推移は、付加価値誘発額、雇用誘発数でみてもほとんど同じ

である。

異なっている部分で、注目されるのは、携帯電話機の付加価値誘発額と雇用誘発数が

2005 年で増加していない点である。前述のビデオ機器と同様に、生産誘発額が増加しても

付加価値誘発額、雇用誘発数の増加につながっていない。

以上より、機器産業の経済波及効果は、ほとんどの部門で減少していることが分かった。

この原因の 1 つは輸入の増加である。民生用電子機械の輸入浸透度11を示した図表 14、通

信機械と電子計算機の輸入浸透度を示した図表 15 をみると、輸入浸透度が顕著に高まって

いる部門が確認できる。

(図表 14)

(図表 15)

まず、民生用電子機械では、ビデオ機器の 2005 年にかけての輸入浸透度の高まりが顕著

で、国内需要に占める輸入の割合が 2000 年に比べて 2 割(1990 年に比べて 4 割)も増加

し、半分弱を輸入が占めるようになった。ラジオ・テレビ受信機の上昇も大きく、2005 年

11 国内需要額に占める輸入額の割合であり、(4)式における輸入係数と同じである。

73

でやや低下したものの、国内需要の約 3 割を輸入が占めており、1990 年に比べると 2 割上

昇している。また、電気音響機器についても、2005 年の値を 1990 年と比べると 2 割近く

上昇している。輸入品は国内に経済波及効果をもたらさないため、輸入浸透度の上昇は経

済波及効果の減少につながる。ビデオ機器の輸入浸透度が 1990 年から 2005 年にかけて約

4 割上昇したということは、経済波及効果のうち直接効果だけで 4 割の減少につながった

ということである。

輸入浸透度上昇による経済波及効果の減少は、電子計算機においてより顕著である。電

子計算機本体の輸入浸透度は 2005 年で約 8 割であり、1990 年から 6 割も上昇している。

また、2005 年でみると、パーソナルコンピュータが 5 割以上、電子計算機付属装置が 7 割

以上と、電子計算機に属する 3 部門は全て輸入浸透度がかなり大きい。この輸入浸透度の

大きさが、電子計算機の 2005 年の経済波及効果が小さくなっている要因と考えられる。

なお、通信機械は民生用電子機械や電子計算機に比べて輸入浸透度が小さく、増加が目

立つのは有線電気通信機器のみである。

3-4.情報通信産業の生産、付加価値、雇用誘発係数

終需要額 1 単位当たりの生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数(生産誘発額係数、

付加価値誘発額係数、雇用誘発数係数)を示したのが図表 16 である。

(図表 16)

まず、生産誘発係数をみると、1990 年から 2005 年の期間を通じて、情報通信産業は自

動車産業よりも小さい。情報通信産業の推移をみると、一貫して減少している。生産誘発

額のトレンドは増加であるが、単位当たりでみると減少している。一方、自動車産業の生

産誘発係数は 1995 年で減少したが、2000 年以降は増加した。2005 年における情報通信産

業と自動車産業の差は、1990 年よりも拡大している。

付加価値誘発係数においても、1990 年から 2005 年の期間を通じて、情報通信産業は自

動車産業よりも小さく、一貫して減少している。一方、自動車産業は 1995 年で増加した後

減少しており、生産誘発係数の動きと異なっている。ただし、2005 年における情報通信産

業と自動車産業の差が、1990 年よりも拡大している点は、生産誘発係数と同じである。

1990 年から 2005 年の期間を通じて、情報通信産業が一貫して減少している点は、雇用

誘発係数でも同じである。1990 年では、情報通信産業と自動車産業の雇用誘発係数は同じ

規模であり、その後減少をつづけた点も同じであるが、情報通信産業の方が減少幅が大き

74

いため、2005 年では情報通信産業の方が小さくなっている。

3-4-1.カテゴリごとにみた情報通信産業の生産、付加価値、雇用誘発係数

ここでは、情報通信産業の 終需要額単位当たり経済波及効果を 4 カテゴリごとに分け

て、それぞれの推移を見た後、さらにその内訳の部門ごとの値を詳しくみていく。

図表 17 は情報通信産業の生産誘発係数を 4 カテゴリ別に示したものであり、比較用に自

動車産業の値も含めて示している。

(図表 17)

これをみると、機器産業は 1990 年では情報通信産業の中で も大きかったが、その後低

下を続け、2005 年では放送産業を下回った。前述した情報通信産業の生産誘発係数低下の

要因は、機器産業にあるといえる。生産誘発係数の分子である生産誘発額は3-3-2(4)

で述べたように輸入浸透度上昇の影響で減少するが、分母である 終需要額は輸入額も含

んでいるため輸入浸透度が上昇しても減少することはない。このため、輸入浸透度が上昇

している機器産業の生産誘発係数の低下は大きいと考えられる。

逆に、生産誘発係数が上昇しているのは通信産業である。ただし、2005 年ではほぼ横ば

いとなっている。1990 年から 2005 年にかけて、情報通信産業の中で も値が小さい点は

変化していないが、2005 年は 1990 年と比べて他との差が縮小している。機器産業が減少

したこともあり、情報通信産業内の生産誘発係数のばらつきは 1990 年から 2005 年にかけ

て縮小している。放送産業と情報サービス・コンテンツ産業は、通信産業と機器産業に比

べて変動が小さい。

なお、自動車産業と比べてみると、同じ製造業である機器産業でも、1990 年時点で自動

車産業よりも小さい値である。

次に、付加価値誘発係数に関する図表 18 をみると、1990 年時点では通信産業が も大

きく、次いで放送産業、情報サービス・コンテンツ産業、機器産業の順に大きいが、2000

年に通信産業が情報サービス・コンテンツ産業を下回る水準まで減少したため順位が入れ

替わった。

(図表 18)

通信産業の生産誘発係数が増加傾向であるのに対して、付加価値誘発係数は減少傾向で

ある点が異なっている。一方、機器産業の減少が大きい点は、生産誘発額と同じであり、

やはり輸入浸透度上昇の影響だと考えられる。情報サービス・コンテンツ産業と放送産業

75

の変動幅が通信産業と機器産業よりも小さい点は生産誘発係数と同じである。

なお、自動車産業と比べてみると、1990 年~2005 年を通じて、通信産業、情報サービス・

コンテンツ産業、放送産業は自動車産業を上回っているが、1995 年以降の機器産業の減少

が大きく、情報通信産業全体で自動車産業を下回る要因となっている。

後に、雇用誘発係数に関する図表 19 をみると、1990 年時点では情報サービス・コン

テンツ産業が も大きく、次いで機器産業、通信産業、放送産業の順に大きいが、通信産

業と機器産業が減少したため、2005 年では大きい順に情報サービス・コンテンツ産業、放

送産業、機器産業、通信産業となった。

(図表 19)

情報サービス・コンテンツ産業と放送産業の変動幅が通信産業と機器産業に比べて小さ

くない点が、生産誘発係数、雇用誘発係数と異なっている。放送産業は 2005 年で横ばいと

なっているが、他の部門は減少している。

なお、自動車産業と比べてみると、情報サービス・コンテンツ産業のみ 1990 年~2005

年を通じて自動車産業を上回っている。

3-4-2.部門別にみた情報通信産業の生産、付加価値、雇用誘発係数

ここでは、4 カテゴリごとに、より細かい分類のデータで、生産誘発係数、付加価値誘

発係数、雇用誘発係数の動きを分析する。

(1)情報サービス・コンテンツ産業の部門別生産、付加価値、雇用誘発係数

まず、情報サービス・コンテンツ産業の部門別生産誘発係数を示した図表 20 をみると、

生産誘発額の規模が圧倒的に大きい情報サービスは、係数でみると も小さいことが分か

る12。情報サービスは 1995 年で減少したが、2000 年以降増加している。他の部門で顕著

な増減はみられない。

(図表 20)

次に、部門別付加価値誘発係数を示した図表 21 をみると、付加価値誘発額の規模が大き

い情報サービスは、係数でみても大きく、2005 年ではインターネット付随サービスに次ぐ

大きさである。

12 前述の様に、1995 年から 2000 年にかけては、情報サービス部門に含まれるソフトウエアプロダクトに

ついて、中間需要に計上されていた分が 終需要に計上されるようになった影響を含んでいる点には注

意が必要である。

76

(図表 21)

情報サービスの推移をみると、1995 年で広告よりも小さい水準まで減少したが、2000

年以降増加し、2005 年では再び両者を上回った。他の部門では映像情報制作・配給業が 2000

年以降顕著に減少しているが、2005 年で統計の変更があった点には注意が必要である13。

後に、部門別雇用誘発係数を示した図表 22 をみると、雇用誘発係数の規模が大きい情

報サービスは、係数でみても大きく、2005 年ではインターネット付随サービスに次ぐ大き

さである。ただし、2000 年以降は減少しており、2005 年では出版とほぼ同じ大きさである。

(図表 22)

図表 20~22 に共通していえることは、情報サービスの動きと情報サービス・コンテンツ

全体の動きはほぼ同じということである。経済波及効果の規模の大きい情報サービスの影

響力が大きいといえる。

(2)通信産業の部門別生産、付加価値、雇用誘発係数

まず、通信産業の部門別生産誘発係数を示した図表 23 をみると、電気通信は 2000 年ま

で増加した後横ばいとなっている。

(図表 23)

電気通信の内訳をみると、その他の電気通信の値が非常に大きく、次いで固定電気通信、

移動電気通信の順に大きい。その他の電気通信と固定電気通信は 2000 年から 2005 年にか

けてあまり変化していないが、移動電気通信は増加している。

なお、その他の通信サービスの生産誘発係数は増加を続けており、2005 年では電気通信

を上回った。ただし、生産誘発額の規模が小さいため通信産業全体における影響力は小さい。

次に、通信産業の部門別付加価値誘発係数を示した図表 24 をみると、電気通信は 2000

年以降減少しており、内訳の固定電気通信、移動電気通信、その他の電気通信は全て減少

している。

(図表 24)

ただし、移動電気通信の減少幅は小さい。大きさを比べてみると、固定電気通信が も

大きく、次いでその他の電気通信、移動電気通信の順となっている。なお、その他の通信

13 前述のように、映像情報制作・配給業に関しては、2000 年から 2005 年にかけて大きく 終需要額が大

きく増加している。これはビデオソフトに関して、 終需要に含まれる家計 終消費支出の見直しを行

ったことと、レンタル用のビデオソフトの計上先を賃貸業の中間需要から、 終需要(国内総固定資本

形成(民間))に変更したことの影響である。

77

サービスの付加価値誘発額は電気通信よりも大きいが、減少傾向となっている。

後に通信産業の部門別雇用誘発係数を示した図表 25 をみると、電気通信は 1995 年以

降減少傾向であることが分かる。

(図表 25)

内訳をみると、2005 年で移動電気通信は減少しているが、固定電気通信は微増、その他

の電気通信はほぼ横ばいである。その他の通信サービスは電気通信より大きく、増減を繰

り返しているが、雇用誘発数の規模が小さいため、通信産業全体に与える影響は小さい。

以上を総括すると、電気通信では、固定電気通信とその他の電気通信の推移は似ており、

移動電気通信の動きが異なっている。移動電気通信は 2005 年で、生産誘発係数が増加して

いる半面、付加価値誘発係数と雇用誘発係数が減少しているが、付加価値誘発係数の減少

幅は小さい。

(3)放送産業の部門別生産、付加価値、雇用誘発係数

まず、放送産業の部門別生産誘発係数を示した図表 26 をみると、公共放送と有線放送が

1995 年に急増した点が特徴的である14。

(図表 26)

その後、有線放送は増加幅が縮小して横ばいとなる一方、公共放送は減少に転じている。

民間放送は 2000 年で増加した後、2005 年で減少している。大きさを比べると民間放送が

も大きく、次いで公共放送、有線放送の順に大きいが、2005 年で公共放送と有線放送の

差が縮小している。

次に、放送産業の部門別付加価値誘発係数を示した図表 27 をみると、公共放送と有線放

送は、生産誘発係数と逆に 1995 年に減少している。その後、有線放送は増加、公共放送は

2000 年で増加した後 2005 年で減少となっている。

(図表 27)

民間放送は 2000 年で減少したが、2005 年で増加した。大きさを比べてみると、有線放

送が も大きく、次いで公共放送、民間放送の順に大きい。

後に、放送産業の部門別雇用誘発係数を示した図表 28 をみると、有線放送は減少を続

けているが、公共放送と民間放送は 2000 年以降横ばいである。

(図表 28) 14 民間放送の 1990 年の 終需要額はゼロなので、係数が計算できない。

78

公共放送は 1995 年で増加したが、2000 年で 1990 年と同程度まで減少した後横ばいとな

っている。大きさを比べると有線放送が も大きく、公共放送と民間放送は 2000 年以降ほ

ぼ同じ大きさである。

以上で特徴的な点は、有線放送の雇用誘発係数が減少している一方、公共放送と民間放

送は横ばいとなっている点である。有線放送は雇用誘発係数が減少しているのに対して、

付加価値誘発係数は増加している。

(4)機器産業の部門別生産、付加価値、雇用誘発係数

まず、機器産業の中で民生用電子機械の部門別生産誘発係数を示した図表 29 をみると、

どの部門も減少傾向であることが分かる。ただし、ラジオ・テレビ受信機のみ 2005 年で増

加に転じているが、1995 年よりも小さい値である。

(図表 29)

大きさを比べると、2005 年ではビデオ機器が も大きく、次いで電気音響機器、ラジオ・

テレビ受信機の順に大きい。

次に、民生用電子機械の部門別付加価値誘発係数をみると、どの部門も減少傾向である

点は生産誘発係数と同じである。ラジオ・テレビ受信機が 2005 年でも減少している点が生

産誘発係数と異なっているが、2005 年は減少幅が縮小している。ビデオ機器と電気音響機

器の減少幅が拡大しているのとは対照的である。

また、民生用電子機械の部門別雇用誘発係数をみると、生産誘発係数、付加価値誘発係

数と同様に減少傾向である。ラジオ・テレビ受信機の生産誘発係数が 2005 年で増加したの

は、輸入浸透度の低下の影響だと考えられるが、一方で付加価値誘発係数と雇用誘発係数

は減少している点が特徴的である。

以上でみたように、民生用電子機械の生産誘発係数は減少傾向であるが、通信機械と電

子計算機の部門別生産誘発係数を示した図表 30 をみても、ほとんどの部門が減少している。

(図表 30)

無線電気通信機器が 2000 年で増加しているのは例外的な動きであり、1990 年と 2005 年

を比べるとどの部門も 2005 年の方が、値が小さい。

減少傾向は、通信機械と電子計算機の部門別付加価値誘発係数、雇用誘発係数をみても

同じである。

無線電気通信機器のみ増加している年があるが、他の部門は減少が続いている。無線電

79

気通信機器の動きには輸入浸透度の増減が影響していると考えられる。

以上より、輸入浸透度増加の影響により、機器産業のほとんどの部門で生産誘発係数、

付加価値誘発係数、雇用誘発係数が減少していることが確認できた。

3-5.情報通信産業の 終需要による経済波及効果のまとめ

3節では、情報サービス・コンテンツ、通信、放送、機器を含む情報通信産業の 終需

要による経済波及効果を分析した。これにより、情報通信産業の生産誘発額、付加価値誘

発額、雇用誘発数が 1990 年以降増加したことが明らかとなった。情報通信産業の付加価値

誘発額と雇用誘発数は、アメリカの IT投資バブルの影響を受けた2000年にピークとなり、

2000年から 2005年にかけて減少したものの、自動車産業よりも大きい規模を保っていた。

特に付加価値誘発額については、情報通信産業と自動車産業の差は 1990 年から 2005 年に

かけて拡大した。これは情報通信産業が日本の中心産業となったことを示しているといえ

るだろう。

2000 年から 2005 年にかけて、情報通信産業の経済波及効果の減少要因となっていたの

は機器産業である。機器産業の輸入が増加したため、国内生産が減少し、経済波及効果の

減少を引き起こした。機器産業の経済波及効果の減少は、 終需要単位当たりの経済波及

効果においても顕著である。

これに対して、情報通信産業の増加要因であったのが情報サービス・コンテンツ産業で

ある。特に、ソフトウエアを中心とした情報サービスの増加は著しいものだった。また、

通信産業の経済波及効果も 2000 年までは大きく増加した。2005 年で移動電気通信以外が

減少したが、移動電気通信は増加を維持した。

結論として、情報通信産業は、その中心をハードからソフトへと移行させながら、経済

波及効果を拡大してきており、日本の中心産業となったといえるだろう。

4. 情報通信産業の設備投資による経済波及効果

ここでは、情報通信資本の利用を支える情報通信産業に関して、設備投資による経済波

及効果の分析を行う。

4-1.情報通信産業の設備投資による経済波及効果分析の目的と背景

3-1で述べたように、情報通信資本を活用する際には、情報通信産業が提供するサー

80

ビスが不可欠である。ここで重要なのは、情報通信産業の製品やサービスを提供するため

には、設備投資が必要だということである。例えば、通信サービスは光ファイバー設備や

通信基地局等の通信インフラがなければ提供することができない。また、篠崎(2003b)で

は、2000 年までのデータを用いて、通信産業の 終需要の生産誘発力は自動車製造に比べ

て小さいが、設備投資の生産誘発力は自動車産業を上回っていることが示されている。つ

まり、通信産業の設備投資は、サービス提供に不可欠な生産要素であると同時に、経済波

及効果の発生源としても重要であるといえる。

そこで、ここでは篠崎(2003b)と同様に産業連関分析の手法を用いて、1995 年~2005

年における、情報通信産業の設備投資による経済波及効果が、日本経済の中でどのような

規模と影響力を有するようになったのかを明らかにする。篠崎(2003b)では通信産業に焦

点を当てていたが、ここでは3と同様に情報サービス・コンテンツ産業、放送産業、機器

産業まで含む範囲を対象とし、さらに分析期間を 2005 年まで延長する。

以下では、産業連関表を用いた分析によって、情報通信産業の設備投資からどの程度の

生産、付加価値、雇用が生じるかという経済波及効果を 1995 年から 2005 年にわたって計

測する。

4-2.情報通信産業の設備投資による経済波及効果の算出方法

経済波及効果の算出には、一国全体の製品・サービスの取引をまとめた「産業連関表」

に基づく産業連関分析の手法を用いる。以下では、分析の対象と分析モデルの説明を行う。

4-2-1.情報通信産業の設備投資による経済波及効果の分析対象

分析する産業群は、(1)価値の実態としての情報サービス・コンテンツ産業、(2)ネットワ

ーク媒体としての通信サービスと(3)放送サービス、(4)インターフェースとしての機器であ

る。これは、3節と同じであり、3節が 終需要による経済波及効果を分析しているのに

対して、ここでは設備投資による経済波及効果を分析する。

ただし、設備投資データに関しては産業連関表の固定資本マトリクスの値を用いるが、

固定資本マトリクスの部門分類は基本分類よりも粗い分類となっており、3節の分析対象

と完全に一致する部門分類のデータが得られない。

3節の分析対象(2005 年)と対応する固定資本マトリクスの部門分類を示したのが図表

31 である。

81

(図表 31)

非 IT の列に×がない部門が3節の情報通信産業の分析対象であるが、固定資本マトリク

スの部門分類では、情報通信関連以外も含む広い範囲となっている場合があるため、固定

資本マトリクスの部門分類に合わせて、広い範囲で示している。

図表 31 をみると分かるように、情報サービス・コンテンツ産業と機器産業については、

3節の分析対象を全て含めると、情報通信に関連しない部門を多く含んでしまうことにな

る。そこで、1995 年~2005 年を通じて利用できる部門のみのデータを情報サービス・コン

テンツ産業と機器産業の代表として採用することとした。具体的には、情報サービス・コ

ンテンツ産業は情報サービス部門、機器産業は電子計算機・同付属装置部門である。分析

対象は図表 31 の 右列に○印で示した15。また、3節と同様に、日本の中核産業の一つと

して扱われることが多い自動車産業を比較対象として採用した。

4-2-2.情報通信産業の設備投資による経済波及効果の分析手法とデータ

使用したデータは、2005 年が総務省『平成 17 年産業連関表』、2000 年が総務省『平成

12 年産業連関表』、1995 年が総務省『平成 7 年産業連関表』より得ている。各表は基本分

類を元に、 も細かい部門分類で正方化しているが、この際自家輸送部門を立てない形式

としている。これは、接続産業連関表データを用いた分析と整合的な分析とするためである。

正方化した場合の部門数は 1995 年が 395 部門、2000 年、2005 年が 397 部門である16。

なお、2005 年については、「その他の非金属鉱物」の輸入係数が 1 を越えてしまい、国産

品比率がマイナスになるという問題が発生したため、「砂利・採石」、「砕石」、「その他の非

金属鉱物」の 3 部門を「窯業原料鉱物以外の非金属鉱物」として統合している17。

各年について、設備投資額を求め、それぞれについて、生産誘発額、付加価値誘発額、

雇用誘発数18を計測し、経済波及効果の大きさとその変遷及び相対的地位を分析する。分

析に使用するのは産業連関分析の均衡産出高モデルである。モデル式は以下の通り。

15 固定資本マトリクスの部門分類における通信産業には郵便産業も含まれるが、総固定資本形成(民間)

は公的部門である郵便産業の設備投資は含まれていない。 16 行部門は列部門の 6 桁コードに合わせて統合し、列部門の方が細かい「野菜」、「海面漁業」等は行部門

に合わせて統合している。なお、「鉄屑」は「銑鉄」、「非鉄金属屑」は「その他の非鉄金属地金」に統

合している。また、2005 年でコードが変更された「古紙」は、「パルプ」に統合している。2000 年以前

の表では、「古紙」と「パルプ」の 6 桁コードは同じであったので、統合方法は同じである。 17 「その他の非金属鉱物」は、近い部門に統合すべきだが、「砂利・採石」と「砕石」のどちらがより近

いかということは判断できないため、「非金属鉱物」のなかで「窯業原料鉱物」とそれ以外という区分

を採用した。 18 以下、経済波及効果という用語は、生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数のことを表している。

82

(7)ˆˆ LL)CF)M((I)A)M(I(IX 1C −−−= −

〔ただし、X:生産誘発額, I:単位行列, :輸入係数行列(輸入額/国内需要額

を対角とした対角行列), A:投入係数行列, CF:設備投資額, C は情報通信産業

の設備投資を示す添字(以降同じ)〕

(8)ˆ LLCC XVVA =

〔ただし、VA:付加価値誘発額, :付加価値係数ベクトル(付加価値額/国内生

産額を対角とした対角行列)〕

(9)ˆ LLCC XLLF =

〔ただし、LF:雇用誘発数, L̂ :雇用係数ベクトル(雇用者数(人)/国内生産額

(100 万円)を対角とした対角行列)〕

経済波及効果の元となるベクトルは、各投資財の設備投資額(CF の各要素)に国産品

比率(1-輸入係数)を乗じた値であり、このモデルでは設備投資の内輸入品を除いて経

済波及効果を推定することになる。これにより、各産業の設備投資から生産、付加価値、

雇用がどれだけ誘発されるのかという経済波及効果を計算することが出来る。また、この

モデルは輸入を考慮しており、輸入が多くなればなるほど、日本国内への経済波及効果は

小さくなる。

設備投資額(CF)は、基本的に各年の産業連関表の固定資本マトリクスの値である。た

だし、電子計算機・同付属装置については、1995 年データでは電子・通信機器に含まれて

いる(図表 31 参照)。そこで、2000 年データで電子・通信機器に対応する部門の設備投資

額を全て合計し、その合計に占める電子計算機・同付属装置の割合を求め、1995 年の電子・

通信機械の設備投資額に乗じる19ことで、1995 の電子計算機・同付属装置の設備投資額を

推計した。

なお、設備投資額の単位当たり生産誘発係数、付加価値誘発係数、雇用誘発係数は、生

産誘発額(X)、付加価値誘発額(VA)、雇用誘発数(LF)の合計値それぞれを設備投資額

19 投資財によって、電子・通信機械に占める電子計算機・同付属装置のシェアは異なることが考えられる

が、1995 年と 2000 年では部門分類が異なるので、投資財ごとに 2000 年シェアを 1995 年の金額に乗じ

る方法は難しい。ここでは簡便な方法として、合計額のシェアを全ての投資財に乗じる方法を取った。

83

(CF)合計値で除して計算している。

以下では、まず情報通信産業全体の経済波及効果をみた後、4 つのカテゴリ別に細かく

分析する。

4-3.情報通信産業の設備投資による経済波及効果

以下では、情報通信産業の設備投資による経済波及効果の 1995 年~2005 年の推移を自

動車産業と比較した後、情報通信産業のカテゴリごとに設備投資による経済波及効果をみ

ていく。

4-3-1.情報通信産業と自動車産業の設備投資による経済波及効果の比較

情報通信産業と自動車産業の設備投資による経済波及効果を図表 32 にまとめた。

(図表 32)

これをみると、経済波及効果の元となる情報通信産業の設備投資額は、1995 年で 5.1 兆

円であり、自動車産業の 2.3 兆円の倍以上の大きさであった。その後、IT バブル期の 2000

年では、情報通信産業の設備投資額は 7.1 兆円まで拡大し、自動車産業の設備投資額 2.2

兆円の3倍以上の大きさとなったが、2005 年で 4.7 兆円まで減少した。これは 1995 年より

も小さい金額であり、自動車産業の設備投資額 2.9 兆円との差も、1995 年より小さい。

経済波及効果について、まず設備投資からの生産誘発額をみると、情報通信産業は 1995

年で 9.7 兆円であり、自動車産業の 4.3 兆円よりも 5 兆円以上大きい規模であった。2000

年では情報通信産業の生産誘発額は 13.1 兆円まで拡大し、自動車産業(3.9 兆円)との差

が 9 兆円を越えたが、2005 年では 8.2 兆円と減少し、自動車産業(5.1 兆円)との差も3兆

円まで縮小した。

次に、情報通信産業の設備投資からの付加価値誘発額は、1995 年で 4.3 兆円であり、2000

年に 5.9 兆円に拡大した後、2005 年で 3.7 兆円まで減少した。一方、自動車産業の設備投

資からの付加価値誘発額は 1995 年で 2.0 兆円、2000 年で 1.9 兆円、2005 年で 2.3 兆円とな

っており、情報通信産業の方が大きい。ただし、情報通信産業と自動車産業との差は 1995

年で 2.3 兆円だったが、2005 年では 1.4 兆円まで縮小した。

また、情報通信産業の雇用誘発数は、1995 年で 57.5 万人であり、2000 年に 79.0 万人に

拡大した後、2005 年で 51.3 万人まで減少した。一方、自動車産業の設備投資からの雇用誘

発数は 1995 年で 26.2 万人、2000 年で 23.7 万人、2005 年で 28.6 万人となっており、情報

84

通信産業の方が大きい点は、生産誘発額、付加価値誘発額と同様である。2005 年で、情報

通信産業と自動車産業との差が縮小した点も同じであり、1995 年では 30 万人程度の差だ

ったが、2005 年では 20 万人強の差まで縮小した。

以上のように、情報通信産業の設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発

数は 2000 年の IT バブル期に大きく増加したが、2005 年で 1995 年未満の水準まで減少し

た。ただし、2005 年で減少したとはいっても、1995 年~2005 年を通じて、自動車産業の

設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数より大きい水準は維持していた。

以下では、情報通信産業の設備投資による経済波及効果の内訳を詳しくみていく。

4-3-2.カテゴリごとにみた情報通信産業の設備投資による経済波及効果

ここでは、情報通信産業の設備投資による経済波及効果を情報サービス・コンテンツ産

業、通信産業、放送産業、機器産業の 4 カテゴリごとに分け、それぞれの推移をみていく。

図表33は情報通信産業の設備投資からの生産誘発額を4カテゴリ別に示したものであり、

比較用に自動車産業の値も含めて示している。

(図表 33)

これをみると、通信産業の規模が非常に大きく、1995 年~2005 年を通じて、残りの 3

産業の 2 倍以上の大きさだったことが分かる。2005 年でみると、通信産業の次に大きいの

は、情報サービス・コンテンツ産業であり、機器産業、放送産業の順に大きい。自動車産

業と比較してみると、1995 年~2005 年を通じて、通信産業単体で自動車産業を上回ってい

たが、残りの 3 産業は自動車産業を下回っていた。

次に、各産業の推移をみると、通信産業は IT バブル期の 2000 年で大きく増加した後、

2005 年で 1995 年未満の水準まで減少している。2005 年では自動車産業が増加したので、

通信産業と自動車産業の差が縮小した。情報サービス・コンテンツ産業、放送産業、機器

産業の変動は小さく、情報通信産業全体の設備投資による生産誘発額の変動はほとんどが

通信産業の変動であったといえる。

通信産業の規模が大きい点は、付加価値誘発額をみても同様である。

通信産業の設備投資による付加価値誘発額は、生産誘発額と同様に、2000 年で大きく増

加したが、2005 年で 1995 年を下回る水準まで減少した。1995 年~2005 年を通じて、通信

産業単体で自動車産業を上回っているが、残りの 3 産業は自動車産業を下回っている点、

情報サービス・コンテンツ産業、放送産業、機器産業の変動が小さい点も生産誘発額と同

85

じである。やはり、情報通信産業全体の設備投資による付加価値誘発額の変動はほとんど

が通信産業の変動であったといえる。

雇用誘発数をみても、通信産業の規模が大きい点、2000 年で大きく増加した後 2005 年

で 1995 年を下回る水準まで減少した点は、生産誘発額、付加価値誘発額と同じである。

また、1995 年~2005 年を通じて、通信産業単体で自動車産業を上回っているが、残りの

3 産業は自動車産業を下回っている点、情報サービス・コンテンツ産業、放送産業、機器

産業の変動が小さい点も生産誘発額、付加価値誘発額と同じである。情報通信産業全体の

設備投資による雇用誘発数の変動はほとんどが通信産業の変動であったといえる。ただし、

2005 年の通信産業と自動車産業の差が、生産誘発額、付加価値誘発額を比べて大きい。

以上をまとめると、1995 年~2005 年における情報通信産業の設備投資による生産誘発額、

付加価値誘発額、雇用誘発数の変動要因は、規模の大きい通信産業にあり、情報サービス・

コンテンツ産業、放送産業、機器産業の変動は小さかったといえる。1995 年~2005 年を通

じて、通信産業単体の設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数だけで、

自動車産業を上回っており、通信産業の設備投資による経済波及効果が非常に大きかった

といえる。

4-4.情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数

以下では、情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘

発数の 1995 年~2005 年の推移を自動車産業と比較した後、情報通信産業のカテゴリごと

に設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数をみていく。

4-4-1.情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり経済波及効果の比較

情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用

誘発数をまとめたのが図表 34 である。

(図表 34)

これをみると、1995 年の情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額は 1.887 であ

り、自動車産業の 1.840 を上回っていた。しかし、情報通信産業が 2000 年で 1.839、2005

年で 1.749 と減少を続けたのに対して、自動車産業は 2000 年で 1.775 と減少したものの、

2005 年で 1.787 と増加に転じ、情報通信産業を上回った。

情報通信産業の単位当たり付加価値誘発額は、1995 年で 0.846 であり、単位当たり生産

86

誘発額と異なり、自動車産業(0.876)より小さい。しかし、減少が続いた点は単位当たり

生産誘発額と同じであり、2000 年で 0.827、2005 年で 0.789 となっている。一方、自動車

産業も減少を続けた点は、単位当たり生産誘発額と異なっているが、情報通信産業を下回

るほどの減少ではなかった。

情報通信産業の単位当たり雇用誘発数は、1995 年で 0.112 であり、単位当たり付加価値

誘発額と同様、自動車産業(0.113)より小さい。2000 年以降、情報通信産業も自動車産業

も減少を続けた点は、単位当たり付加価値誘発額と同じである。ただし、情報通信産業が

2000 年で 0.111、2005 年で 0.110 と減少したのに対して、自動車産業は 2000 年で 0.107 と

情報通信産業を下回り、2005 年で 0.100 とさらに減少した。情報通信産業と自動車産業の

大きさが 2000 年で逆転した点が、単位当たり付加価値誘発額と異なっている。

以上を総括すると要点は以下の 2 点である。第 1 点目は、1995 年~2005 年の情報通信産

業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数は減少傾向であった

ことである。第 2 点目は、2000 年以降で情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額

と単位当たり付加価値誘発額は自動車産業より小さいのに対して、単位当たり雇用誘発数

は自動車産業より大きいことである。

以下では、情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘

発数の内訳を詳しくみていく。

4-4-2.カテゴリごとにみた情報通信産業の設備投資の単位当たり経済波及効果

ここでは、情報通信産業の設備投資による経済波及効果を情報サービス・コンテンツ産

業、通信産業、放送産業、機器産業の 4 カテゴリごとに分け、それぞれの推移をみていく。

図表35は情報通信産業の設備投資の単位当たり生産誘発額を4カテゴリ別に示したもの

であり、比較用に自動車産業の値も含めて示している。

(図表 35)

これをみると、情報サービス・コンテンツ産業、通信産業、放送産業、機器産業の全て

が 1995 年~2005 年で減少していたことが分かる。中でも、機器産業の減少が顕著である。

大きさを比較すると、放送産業、通信産業、情報サービス・コンテンツ産業、機器産業の

順に大きく、1995 年~2005 年を通じて順位は変動していない。自動車産業と比較すると、

2000 年までは放送産業と通信産業が自動車産業よりも大きかったが、2005 年では自動車産

業が増加し、自動車産業よりも大きいのは放送産業のみとなった。

87

次に、単位当たり付加価値誘発額を示した図表 36 をみると、1995 年~2005 年で通信産

業と機器産業が減少を続けていた点は単位当たり生産誘発額と同じである。

(図表 36)

しかし、放送産業と情報サービス・コンテンツ産業の単位当たり付加価値誘発額の動き

は単位当たり生産誘発額と異なっている。放送産業は 2000 年で微増した後 2005 年で減少

し、情報サービス・コンテンツ産業は 2000 年で大きく減少した後 2005 年で増加した。2005

年で大きさを比較すると、放送産業、通信産業、情報サービス・コンテンツ産業、機器産

業の順に大きい。2000 年は機器産業と情報サービス・コンテンツ産業の順位が入れ替わっ

ているが、1995 年は 2005 年の順位と同じである。自動車産業は減少を続けており、2000

年までは情報通信産業の全ての産業より大きかったが、2005 年で放送産業を下回った。

また、単位当たり雇用誘発数を示した図表 37 をみると、1995 年~2005 年で機器産業が

減少を続けていた点は単位当たり生産誘発額、単位当たり付加価値誘発額と同じである。

(図表 37)

情報サービス・コンテンツ産業は、2000 年で大きく減少した後 2005 年で増加しており、

単位当たり付加価値誘発額と同様の動きである。通信産業がほぼ横ばいである点、放送産

業が増加を続けている点が、単位当たり生産誘発額、単位当たり雇用誘発数と異なってい

る。2005 年で大きさを比較すると、放送産業、通信産業、情報サービス・コンテンツ産業、

機器産業の順に大きい。2000 年以前は通信産業と放送産業の順位が逆になっていた。また、

2000 年で情報サービス・コンテンツ産業と機器産業の順位が入れ替わっている点は、単位

当たり生産誘発額と同じである。

以上より、1995 年~2005 年で、機器産業の設備投資の単位当たり生産誘発額、付加価値

誘発額、雇用誘発数は全て減少していたことが分かる。残りの 3 産業の単位当たり生産誘

発額、付加価値誘発額、雇用誘発数をみても減少しているケースが多い中で、放送産業の

単位当たり雇用誘発数が増加を続けていた点は注目に値する。放送産業の設備投資の単位

当たり付加価値誘発額は 2005 年で減少したが、単位当たり雇用誘発数は増加した。

4-5.情報通信産業の設備投資による経済波及効果のまとめ

本研究では、産業連関分析の手法を用いて、1995 年~2005 年における情報サービス・コ

ンテンツ、通信、放送、機器を含む情報通信産業の設備投資による経済波及効果を分析し

た。結論としていえることは以下の通りである。

88

まず、情報通信産業の設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数は IT

バブル期の 2000 年に大きく増加した後、2005 年で減少し、1995 年の水準を下回った。た

だし、2005 年で減少したといっても、1995 年~2005 年を通じて、情報通信産業の設備投

資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数は、自動車産業を上回っていた。

次に、情報通信産業の内訳ごとに設備投資による経済波及効果を分析したところ、1995

年~2005 年における情報通信産業の設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘

発数の変動要因は、規模の大きい通信産業にあり、情報サービス・コンテンツ産業、放送

産業、機器産業の変動は小さかったことが分かった。

また、1995 年~2005 年を通じて、通信産業単体の設備投資による生産誘発額、付加価値

誘発額、雇用誘発数だけで、自動車産業を上回っており、通信産業の設備投資による経済

波及効果が非常に大きかったといえる。

5.おわりに

第 3章では、IT 投資による経済波及効果、情報通信産業の 終需要による経済波及効果、

情報通信産業の設備投資による経済波及効果の分析を行った。それぞれの分析結果によっ

て、明らかになった点は以下の通りである。

まず、IT 投資による経済波及効果の分析により、以下の 2 点が明らかとなった。

第一に、1995 年~2005 年における情報化投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用

誘発数の総量は、IT バブル期の 2000 年に増加したが、2005 年で減少した。

第二に、情報化投資の経済波及効果の減少要因はハードウエア、特にコンピュータ関連

と通信施設建設にあり、ソフトウエアは増加を続けたが、ハードウエアの減少分を補うほ

どの増加幅ではなかった。

次に、情報通信産業の 終需要による経済波及効果の分析により、以下の 3 点が明らか

となった。

第一に、情報通信産業の付加価値誘発額と雇用誘発数は、アメリカの IT 投資バブルの影

響を受けた 2000 年にピークとなり、2000 年から 2005 年にかけて減少したものの、自動車

産業よりも大きい規模を保っていた。特に付加価値誘発額については、情報通信産業と自

動車産業の差は 1990 年から 2005 年にかけて拡大した。

第二に、2000 年から 2005 年にかけて、情報通信産業の経済波及効果の減少要因となっ

ていたのは機器産業である。機器産業の輸入が増加したため、国内生産が減少し、経済波

89

及効果の減少を引き起こした。機器産業の経済波及効果の減少は、 終需要単位当たりの

経済波及効果においても顕著である。

第三に、情報通信産業の増加要因であったのが情報サービス・コンテンツ産業である。

特に、ソフトウエアを中心とした情報サービスの増加は著しいものだった。また、通信産

業の経済波及効果も 2000 年までは大きく増加した。2005 年で移動電気通信以外が減少し

たが、移動電気通信は増加を維持した。

また、情報通信産業の設備投資による経済波及効果の分析により、以下の 3 点が明らか

となった。

第一に、情報通信産業の設備投資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数は IT

バブル期の 2000 年に大きく増加した後、2005 年で減少し、1995 年の水準を下回った。た

だし、2005 年で減少したといっても、1995 年~2005 年を通じて、情報通信産業の設備投

資による生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数は、自動車産業を上回っていた。

第二に、1995 年~2005 年における情報通信産業の設備投資による生産誘発額、付加価値

誘発額、雇用誘発数の変動要因は、規模の大きい通信産業にあり、情報サービス・コンテ

ンツ産業、放送産業、機器産業の変動は小さかった。

第三に、1995 年~2005 年を通じて、通信産業単体の設備投資による生産誘発額、付加価

値誘発額、雇用誘発数だけで、自動車産業を上回っており、通信産業の設備投資による経

済波及効果が非常に大きかった。

以上の分析結果よりいえるのは、情報化投資の経済波及効果に関しても、情報通信産業

の経済波及効果に関しても、IT バブル期の 2000 年で大きく拡大した後やや減少したが、

2005 年でも依然として高い水準を保っていたということである。情報通信産業の 終需要

と設備投資による付加価値誘発額は、1990 年~2005 年を通じて自動車産業を上回っており、

情報通信産業は日本経済において重要な地位を占めているといえる。

また、経済波及効果の内訳をみると、電子計算機や通信機器といったハードウエアの経

済波及効果が輸入増加の影響により減少したことが分かる。一方で、ソフトウエアを中心

とする情報サービスの経済波及効果は一貫して増加しており、情報通信に関する経済波及

効果は、ハードウエアからソフトウエアに中心が移ってきたといえる。

90

〔第 3 章 参考文献一覧〕

篠崎彰彦(2003a)『情報技術革新の経済効果-日米経済の明暗と逆転-』日本評論社, 2003 年

7 月. 篠崎彰彦(2003b)「通信産業における設備投資の経済効果分析」情報通信総合研究所

『InfoCom REVIEW』No.31, 2003 年 8 月, pp.36-45. 総務省(2008)『平成 17 年接続産業連関表速報』. 総務省(2004)『平成 12 年産業連関表』. 総務省(1999)『平成7年産業連関表』. 廣松毅・篠崎彰彦・山本悠介(2007)「「情報通信産業」の経済波及効果-産業連関表による

1990-1995-200-2004 年の計測と自動車産業との比較-」情報通信総合研究所『InfoCom REVIEW』NO.43, 2007 年 12 月, pp.30-35.

宮澤健一(2002)『産業連関分析入門』第 7 版, 日本経済新聞社, 2002 年 6 月. 山本悠介・久保田茂裕・篠崎彰彦(2009)「情報化投資と情報資本ストックの推計 2009 年 6

月改定版」情報通信総合研究所『ICT 関連経済指標テクニカルペーパー』No.09-1, 2009年 6 月.

山本悠介・篠崎彰彦(2009a)「1990 年~2005 年における情報通信産業の 終需要による経

済波及効果」情報通信総合研究所『ICT 関連経済指標テクニカルペーパー』No.09-3, 2 009年 8 月.

山本悠介・篠崎彰彦(2009b)「1995 年~2005 年における情報化投資による経済波及効果分

析」情報通信総合研究所『ICT 関連経済指標テクニカルペーパー』No.09-4, 2 009 年 9月.

山本悠介・篠崎彰彦(2009c)「1995 年~2005 年における情報通信産業の設備投資による経

済波及効果分析」情報通信総合研究所『ICT 関連経済指標テクニカルペーパー』No.09-5, 2 009 年 10 月.

91

〔第 3 章 図表一覧〕

図表 1 1995 年~2005 年における情報化投資額

単位:10億円1995年 2000年 2005年

コンピュータ関連 5,514 5,154 3,823通信機器 3,169 3,074 2,138事務用機器 1,156 1,402 1,271通信施設建設 781 1,445 312ソフトウェア 4,010 6,015 7,277ハードウェア合計 10,620 11,075 7,544情報化投資合計 14,630 17,090 14,821

図表 2 1995 年~2005 年における情報化投資による経済波及効果一覧

単位:10億円、1000人1995年 2000年 2005年

コンピュータ関連 9,503 6,926 3,214通信機器 6,376 5,985 3,814事務用機器 2,313 2,747 2,524通信施設建設 1,483 2,659 615ソフトウェア 6,097 9,266 11,449ハードウェア合計 19,675 18,317 10,166情報化投資合計 25,772 27,583 21,615コンピュータ関連 3,766 2,572 1,374通信機器 2,590 2,330 1,552事務用機器 988 1,138 986通信施設建設 706 1,295 266ソフトウェア 3,588 5,407 6,598ハードウェア合計 8,050 7,335 4,178情報化投資合計 11,638 12,742 10,776コンピュータ関連 451 300 153通信機器 315 263 193事務用機器 113 129 100通信施設建設 99 186 44ソフトウェア 488 647 743ハードウェア合計 978 878 489情報化投資合計 1,467 1,525 1,232

生産誘発額

付加価値

誘発額

雇用誘発数

92

図表 3 1995 年~2005 年における情報化投資による生産誘発額

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

1995年 2000年 2005年

(10億円)

ソフトウェア ハードウェア合計 情報化投資合計

図表 4 1995 年~2005 年における情報化投資による生産誘発額(内訳別)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1995年 2000年 2005年

(10億円)

コンピュータ関連 通信機器 事務用機器

通信施設建設 ソフトウェア

93

図表 5 1995 年~2005 年のおける情報化投資の単位当たり経済波及効果一覧

単位:10億円、1000人1995年 2000年 2005年

ソフトウェア 1.520 1.541 1.573ハードウェア合計 1.853 1.654 1.348情報化投資合計 1.762 1.614 1.458ソフトウェア 0.895 0.899 0.907ハードウェア合計 0.758 0.662 0.554情報化投資合計 0.795 0.746 0.727ソフトウェア 0.122 0.108 0.102ハードウェア合計 0.092 0.079 0.065情報化投資合計 0.100 0.089 0.083

生産誘発額

付加価値

誘発額

雇用誘発数

図表 6 情報通信産業の部門分類

平成2-7-12年 平成12年 平成17年接続産業連関表の分類 産業連関表の分類 産業連関表の分類

情報サービス 情報サービス 情報サービス

- - インターネット附随サービス

映画・ビデオ制作・配給業 映画・ビデオ制作・配給業 映像情報制作・配給業

新聞 新聞 新聞

出版 出版 出版

ニュース供給・興信所 ニュース供給・興信所 ニュース供給・興信所

広告 広告 広告

電気通信 固定電気通信 固定電気通信

電気通信 移動電気通信 移動電気通信

電気通信 その他の電気通信 その他の電気通信

その他の通信サービス その他の通信サービス その他の通信サービス

公共放送 公共放送 公共放送

民間放送 民間放送 民間放送

有線放送 有線放送 有線放送

ビデオ機器※1 ビデオ機器※1 ビデオ機器※1

電気音響機器※1 電気音響機器※1 電気音響機器※1

ラジオ・テレビ受信機※1ラジオ・テレビ受信機※1

ラジオ・テレビ受信機※1

有線電気通信機器※2有線電気通信機器※2

有線電気通信機器※2

携帯電話機※2 携帯電話機※2 携帯電話機※2

無線電気通信機器(除携帯電話機)※2 無線電気通信機器(除携帯電話機)※2 無線電気通信機器(除携帯電話機)※2

その他の電気通信機器※2その他の電気通信機器※2

その他の電気通信機器※2

パーソナルコンピュータ※3パーソナルコンピュータ※3

パーソナルコンピュータ※3

電子計算機本体(除パソコン)※3電子計算機本体(除パソコン)※3

電子計算機本体(除パソコン)※3

電子計算機付属装置※3 電子計算機付属装置※3 電子計算機付属装置※3

乗用車 乗用車 乗用車

トラック・バス・その他の自動車 トラック・バス・その他の自動車 トラック・バス・その他の自動車

二輪自動車 二輪自動車 二輪自動車

自動車車体 自動車車体 自動車車体

自動車用内燃機関・同部分品 自動車用内燃機関・同部分品 自動車用内燃機関・同部分品

自動車部品 自動車部品 自動車部品

分類

通信

放送

機器

情報サービス

・コンテンツ

自動車(比較用)

(注)※1 を民生用電子機械、※2 を通信機械、※3 を電子計算機と総称している。

(資料)総務省『平成 17 年産業連関表』『平成 12 年産業連関表』『平成 2-7-12 年接続産業連関表』より作成。

94

図表 7 情報通信産業と自動車産業の 終需要による経済波及効果のまとめ

(10 億円、1000 人)

1990 年 1995 年 2000 年 2005 年

情報通信産業 24,486 26,971 36,661 34,012 終需要額

自動車産業 21,619 19,261 19,479 23,859

情報通信産業 49,214 49,747 63,094 54,910

生産

誘発額 自動車産業 60,539 53,458 54,418 70,456

情報通信産業 20,533 21,543 27,506 24,706

付加価値

誘発額 自動車産業 18,188 16,253 16,167 18,753

情報通信産業 2,334 2,359 2,800 2,433

雇用

誘発数 自動車産業 2,057 1,789 1,704 2,062

図表 8 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の 終需要による生産誘発額

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信合計 自動車

95

図表 9 情報サービス・コンテンツ産業の 終需要による生産誘発額

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

情報サービス インターネット附随サービス

映像情報制作・配給業 新聞

出版 ニュース供給・興信所

広告

図表 10 通信産業の 終需要による生産誘発額

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

電気通信 固定電気通信

移動電気通信 その他の電気通信

その他の通信サービス

96

図表 11 放送産業の 終需要による生産誘発額

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

公共放送 民間放送 有線放送

図表 12 機器産業の 終需要による生産誘発額(民生用電子機械)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

5,500

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

ビデオ機器 電気音響機器 ラジオ・テレビ受信機

97

図表 13 機器産業の 終需要による生産誘発額(通信機械、電子計算機)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1990年 1995年 2000年 2005年

(10億円)

有線電気通信機器 携帯電話機

無線電気通信機器(除携帯電話機) その他の電気通信機器

パーソナルコンピュータ 電子計算機本体(除パソコン)

電子計算機付属装置

図表 14 機器産業の輸入浸透度(民生用電子機械)

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

1990年 1995年 2000年 2005年

ビデオ機器 電気音響機器 ラジオ・テレビ受信機

98

図表 15 機器産業の輸入浸透度(通信機械、電子計算機)

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1990年 1995年 2000年 2005年

有線電気通信機器 携帯電話機

無線電気通信機器(除携帯電話機) その他の電気通信機器

パーソナルコンピュータ 電子計算機本体(除パソコン)

電子計算機付属装置

図表 16 情報通信産業と自動車産業の生産、付加価値、雇用誘発係数

1990 年 1995 年 2000 年 2005 年

情報通信産業 2.010 1.844 1.721 1.614 生産

誘発係数 自動車産業 2.800 2.775 2.794 2.953

情報通信産業 0.839 0.799 0.750 0.726 付加価値

誘発係数 自動車産業 0.841 0.844 0.830 0.786

情報通信産業 0.095 0.087 0.076 0.072 雇用

誘発係数 自動車産業 0.095 0.093 0.087 0.086

(注)生産誘発額、付加価値誘発額、雇用誘発数を 終需要額で除した値。雇用誘発係数の単位は人/100 万円。

99

図表 17 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の生産誘発係数

1.25

1.50

1.75

2.00

2.25

2.50

2.75

3.00

1990年 1995年 2000年 2005年

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信合計 自動車

図表 18 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の付加価値誘発係数

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1990年 1995年 2000年 2005年

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信合計 自動車

100

図表 19 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の雇用誘発係数

0.05

0.06

0.07

0.08

0.09

0.10

0.11

0.12

1990年 1995年 2000年 2005年

(人/100万円)

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信合計 自動車

図表 20 情報サービス・コンテンツ産業の生産誘発係数

1.50

1.75

2.00

2.25

2.50

1990年 1995年 2000年 2005年

情報サービス インターネット附随サービス

映像情報制作・配給業 新聞

出版 ニュース供給・興信所

広告

101

図表 21 情報サービス・コンテンツ産業の付加価値誘発係数

0.82

0.84

0.86

0.88

0.90

0.92

0.94

1990年 1995年 2000年 2005年

情報サービス インターネット附随サービス

映像情報制作・配給業 新聞

出版 ニュース供給・興信所

広告

図表 22 情報サービス・コンテンツ産業の雇用誘発係数

0.07

0.08

0.09

0.10

0.11

0.12

0.13

1990年 1995年 2000年 2005年

(人/100万円)

情報サービス インターネット附随サービス

映像情報制作・配給業 新聞

出版 ニュース供給・興信所

広告

102

図表 23 通信産業の生産誘発係数

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

2.1

1990年 1995年 2000年 2005年

電気通信 固定電気通信

移動電気通信 その他の電気通信

その他の通信サービス

図表 24 通信産業の付加価値誘発係数

0.76

0.78

0.80

0.82

0.84

0.86

0.88

0.90

0.92

0.94

0.96

0.98

1990年 1995年 2000年 2005年

電気通信 固定電気通信

移動電気通信 その他の電気通信

その他の通信サービス

103

図表 25 通信産業の雇用誘発係数

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

0.18

0.20

0.22

1990年 1995年 2000年 2005年

(人/100万円)

電気通信 固定電気通信

移動電気通信 その他の電気通信

その他の通信サービス

図表 26 放送産業の生産誘発係数

1.30

1.40

1.50

1.60

1.70

1.80

1.90

2.00

2.10

1990年 1995年 2000年 2005年

公共放送 民間放送 有線放送

104

図表 27 放送産業の付加価値誘発係数

0.89

0.90

0.91

0.92

0.93

0.94

1990年 1995年 2000年 2005年

公共放送 民間放送 有線放送

図表 28 放送産業の雇用誘発係数

0.06

0.07

0.08

0.09

0.10

0.11

0.12

0.13

0.14

1990年 1995年 2000年 2005年

(人/100万円)

公共放送 民間放送 有線放送

105

図表 29 機器産業の生産誘発係数(民生用電子機械)

1.50

1.75

2.00

2.25

2.50

1990年 1995年 2000年 2005年

ビデオ機器 電気音響機器 ラジオ・テレビ受信機

図表 30 機器産業の生産誘発係数(通信機械、電子計算機)

0.50

0.75

1.00

1.25

1.50

1.75

2.00

2.25

2.50

1990年 1995年 2000年 2005年

有線電気通信機器 携帯電話機

無線電気通信機器(除携帯電話機) その他の電気通信機器

パーソナルコンピュータ 電子計算機本体(除パソコン)

電子計算機付属装置

106

図表 31 情報通信産業の部門分類

分類平成17年

産業連関表の分類※1非IT

設備投資(固定資本マトリクス)

の分類(1995年)

設備投資(固定資本マトリクス)

の分類(2000年)

設備投資(固定資本マトリクス)

の分類(2005年)分析対象

情報サービス 広告・調査・情報サービス※ 広告・調査・情報サービス※2 情報サービス ○インターネット附随サービス - - インターネット附随サービス映像情報制作・配給業 娯楽サービス 娯楽サービス 映像・文字情報制作映画舘 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービス劇場・興行場 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービス遊戯場 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービス競輪・競馬等の競走場・競技団 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービススポーツ施設提供業・公園・遊園地 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービス興行団 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービスその他の娯楽 × 娯楽サービス 娯楽サービス 娯楽サービス新聞 出版・印刷 出版・印刷 映像・文字情報制作印刷・製版・製本 × 出版・印刷 出版・印刷 印刷・製版・製本出版 出版・印刷 出版・印刷 映像・文字情報制作ニュース供給・興信所 広告・調査・情報サービス 広告・調査・情報サービス 映像・文字情報制作広告 広告・調査・情報サービス 広告・調査・情報サービス 広告固定電気通信 通信 通信 通信 ○移動電気通信 通信 通信 通信 ○その他の電気通信 通信 通信 通信 ○その他の通信サービス 通信 通信 通信 ○

公共放送 放送 放送 放送 ○

民間放送 放送 放送 放送 ○有線放送 放送 放送 放送 ○ビデオ機器 民生用電気機械 民生用電子・電気機器 通信機械・同関連機器電気音響機器 民生用電気機械 民生用電子・電気機器 通信機械・同関連機器ラジオ・テレビ受信機 民生用電気機械 民生用電子・電気機器 通信機械・同関連機器エアーコンディショナ × 民生用電気機械 民生用電子・電気機器 民生用電気機器民生用電気機器(除エアコン) × 民生用電気機械 民生用電子・電気機器 民生用電気機器有線電気通信機器 電子・通信機器 通信機械 通信機械・同関連機器携帯電話機 電子・通信機器 通信機械 通信機械・同関連機器無線電気通信機器(除携帯電話機) 電子・通信機器 通信機械 通信機械・同関連機器その他の電気通信機器 電子・通信機器 通信機械 通信機械・同関連機器パーソナルコンピュータ 電子・通信機器 電子計算機・同付属装置 電子計算機・同付属装置 ○電子計算機本体(除パソコン) 電子・通信機器 電子計算機・同付属装置 電子計算機・同付属装置 ○電子計算機付属装置 電子・通信機器 電子計算機・同付属装置 電子計算機・同付属装置 ○電子応用装置 × 電子・通信機器 電子応用装置・電気計測器 電子応用装置・電気計測器電気計測器 × 電子・通信機器 電子応用装置・電気計測器 電子応用装置・電気計測器半導体素子 × 電子・通信機器 半導体素子・集積回路 半導体素子・集積回路集積回路 × 電子・通信機器 半導体素子・集積回路 半導体素子・集積回路電子管 × 電子・通信機器 電子部品 その他の電子部品液晶素子 × 電子・通信機器 電子部品 その他の電子部品磁気テープ・磁気ディスク × 電子・通信機器 電子部品 その他の電子部品その他の電子部品 × 電子・通信機器 電子部品 その他の電子部品

情報サービス

・コン

テンツ

機器

通信

放送

(資料)総務省『平成 17 年産業連関表』『平成 12 年産業連関表』『平成 7 年産業連関表』より作成。

図表 32 情報通信産業と自動車産業の設備投資による経済波及効果のまとめ

(10 億円、1000 人)

1995 年 2000 年 2005 年

情報通信産業 5,132 7,134 4,684 設備投資額

自動車産業 2,312 2,213 2,864

情報通信産業 9,687 13,122 8,192

生産

誘発額 自動車産業 4,254 3,929 5,118

情報通信産業 4,342 5,900 3,698

付加価値

誘発額 自動車産業 2,024 1,863 2,314

情報通信産業 575 790 513

雇用

誘発数 自動車産業 262 237 286

107

図表 33 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の設備投資による生産誘発額

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1995年 2000年 2005年

(10億円)

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信全体 自動車

図表 34 情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり経済波及効果のまとめ

1995 年 2000 年 2005 年

情報通信産業 1.887 1.839 1.749 単位当たり

生産誘発額 自動車産業 1.840 1.775 1.787

情報通信産業 0.846 0.827 0.789 単位当たり

付加価値誘発額 自動車産業 0.876 0.842 0.808

情報通信産業 0.112 0.111 0.110 単位当たり

雇用誘発数 自動車産業 0.113 0.107 0.100

(注)雇用誘発係数の単位は人/100 万円。

108

図表 35 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり生産誘発額

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

2.1

1995年 2000年 2005年

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信全体 自動車

図表 36 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり付加価値誘発額

0.8

0.8

0.8

0.8

0.8

0.9

0.9

1995年 2000年 2005年

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信全体 自動車

109

図表 37 カテゴリ別情報通信産業と自動車産業の設備投資の単位当たり雇用誘発数

0.090

0.095

0.100

0.105

0.110

0.115

0.120

1995年 2000年 2005年

(人/100万円)

情報サービス・コンテンツ 通信

放送 機器

情報通信全体 自動車

110