第3章 災害発生時の活動 - 裾野市 · 2020. 5. 21. ·...

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22 第3章 災害発生時の活動 1 「時間的な経過」と「自主防災会の活動」 災害が発生した時、区民と自主防災会が各々取るべき行動は、時系列で変化します。 【個人が取るべき行動と自主防災会の活動のタイムライン(地震編)】 タイムラインとは、「いつ・どのような防災活動」を、「どの主体が行うか」を時系列に整理したもの 経過時間 状 況 個人の行動 自主防災会の活動 0分 地震発生 ・地震の揺れに注意し、身を守る (シェイクアウトの行動をとる) ・火の始末(身を守ること優先) ・玄関を開ける(出口の確保) (各個人の行動) 1~3分 揺れがおさまる 電気・水道・電話 などのライフライ ンの停止 ・山・がけ崩れ、(津波)の危険が予想 される地域は即避難行動 ・火元の確認(ガスの元栓を閉め、電 気のスイッチ・ブレーカーを切る) ・火が出ても落ち着いて初期消火 ・家族の安全確認 ・靴を履く ・家の中の危険物に注意 ①自主防災会や隣近所で避難を呼びか ける。 3~5分 (家族、隣近所の 状況確認) ・隣近所に声をかけて周りの人の安全 を確認 ・近所で出火している家がないか確認 (漏電、ガス漏れ、余震に注意) ②安否確認(集合場所で確認) ・居ない人がいたら、隣近所の人に確 認(明確な情報がなければ自宅確認) ・災害時要配慮者の安否確認 5~10 分 ・徒歩で避難(車で避難しない) ・ブロック塀の倒壊、割れたガラスに 注意 ③情報班による区内の被害状況の収集 ④市等からの情報を区民に正しく伝達 10 分~ 数時間 火災発生(発見) 家屋の倒壊発生 (発見) 負傷者発生(発見) 情報の混乱 ・区の自主防災会へ報告 ・協力して消火活動 ・協力して救出活動 ・協力して救護活動 ・防災行政無線(広報無線)やラジオ等 で情報確認 ・落ち着いた行動(デマに注意) ⑤区の被害状況、区民の安否情報を広 域避難地班に報告 ※市の支援が必要な場合は要請 ⑥消火班による消火活動 (バケツリレー・可搬ポンプ等) ⑦救出・救助班による救出活動 ⑧負傷者の応急救護、救護所への搬送 (④市等からの情報の伝達) ※ 無理をせず、できる範囲で ~数日 避難生活 ・持出品の準備 ・避難所への移動 ・秩序ある避難生活 ⑨広域避難地への移動 ⑩避難行動要支援者等の避難の支援 ⑪避難所の運営

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Page 1: 第3章 災害発生時の活動 - 裾野市 · 2020. 5. 21. · 2)救助活動において、余震等による2次災害が発生しないようにする。 (区による救助が難しい場合)

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第3章 災害発生時の活動

1 「時間的な経過」と「自主防災会の活動」

災害が発生した時、区民と自主防災会が各々取るべき行動は、時系列で変化します。

【個人が取るべき行動と自主防災会の活動のタイムライン(地震編)】

※タイムラインとは、「いつ・どのような防災活動」を、「どの主体が行うか」を時系列に整理したもの

経過時間 状 況 個人の行動 自主防災会の活動

0分 地震発生

・地震の揺れに注意し、身を守る

(シェイクアウトの行動をとる)

・火の始末(身を守ること優先)

・玄関を開ける(出口の確保)

(各個人の行動)

1~3分

揺れがおさまる

電気・水道・電話

などのライフライ

ンの停止

・山・がけ崩れ、(津波)の危険が予想

される地域は即避難行動

・火元の確認(ガスの元栓を閉め、電

気のスイッチ・ブレーカーを切る)

・火が出ても落ち着いて初期消火

・家族の安全確認

・靴を履く

・家の中の危険物に注意

①自主防災会や隣近所で避難を呼びか

ける。

3~5分

(家族、隣近所の

状況確認)

・隣近所に声をかけて周りの人の安全

を確認

・近所で出火している家がないか確認

(漏電、ガス漏れ、余震に注意)

②安否確認(集合場所で確認)

・居ない人がいたら、隣近所の人に確

認(明確な情報がなければ自宅確認)

・災害時要配慮者の安否確認

5~10分

・徒歩で避難(車で避難しない)

・ブロック塀の倒壊、割れたガラスに

注意

③情報班による区内の被害状況の収集

④市等からの情報を区民に正しく伝達

10分~

数時間

火災発生(発見)

家屋の倒壊発生

(発見)

負傷者発生(発見)

情報の混乱

・区の自主防災会へ報告

・協力して消火活動

・協力して救出活動

・協力して救護活動

・防災行政無線(広報無線)やラジオ等

で情報確認

・落ち着いた行動(デマに注意)

⑤区の被害状況、区民の安否情報を広

域避難地班に報告

※市の支援が必要な場合は要請

⑥消火班による消火活動

(バケツリレー・可搬ポンプ等)

⑦救出・救助班による救出活動

⑧負傷者の応急救護、救護所への搬送

(④市等からの情報の伝達)

※ 無理をせず、できる範囲で

~数日 避難生活

・持出品の準備

・避難所への移動

・秩序ある避難生活

⑨広域避難地への移動

⑩避難行動要支援者等の避難の支援

⑪避難所の運営

Page 2: 第3章 災害発生時の活動 - 裾野市 · 2020. 5. 21. · 2)救助活動において、余震等による2次災害が発生しないようにする。 (区による救助が難しい場合)

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2 自主防災会の行動(前頁①~⑪の説明)

①避難の呼びかけ

災害が起きた時、自主防災会が中心となり、区民と協力して避難を呼びかけます。

区内に土砂災害(特別)警戒区域や、浸水想定区域がある場合は、その付近に住んでい

る区民に積極的に避難を呼びかけてください。

②安否確認

区の組や班等の長は、決めてある安否確認場所において、区安否確認台帳に基づき、担

当区域内の住民の安否確認を行い、自主防災会長に報告します。この時、安否確認場所に

集合しない世帯等は、その家に赴き、大声で呼びかける等、要救助者がいないか確認しま

す。

災害時要配慮者(災害時要行動支援者)の安否確認も必ず行ってください。

◎確認した安否を「情報連絡票(安否確認)」(資料集(1)第2編 2-11)に取りま

とめます。

【避難行動要支援者の安否確認】

1)安否確認をする家族や支援者がいない場合は、区長・自主防災会長・自主防災会の役

員などが安否確認をする。

2)避難が必要な場合は避難を支援する(自宅内での移動・避難場所への移動 等)。

③地域内の情報収集

情報収集を迅速に行うため、事前に調査区域を分けて担当者を決め、区域内の被害状況

等、必要な情報を収集します。

◎収集した情報を「情報連絡票(自主防用)」(資料集(1)第2編 2-13)に取りま

とめます。

④区民への情報伝達

防災行政無線や市の広報車、テレビ、ラジオで正確な情報を確認し、区域内の各家庭に

伝え、混乱が起こらないようにします。

⑤広域避難地への報告

自主防災会長は、②・③の「情報連絡票(安否確認)」・「情報連絡票(自主防用)」を作

成し、市(広域避難地班長)に報告します。 ※連絡票書式がない場合はメモや口頭

で可。 ※「被害なし」の場合も 忘れずに報告するようにして下さい。

①~⑤までの流れ

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⑥消火活動

まずは各家庭での出火防止対策に心がけて下さい。

火災が発生してしまったら、区民や自主防災会が協力して、初期消火活動にあたって下

さい。

しかし、区での初期消火活動は火災の延焼防止が目的であり、無理をせず、消防団員や

消防署員が到着したらその指示に従って下さい。

⑦救出活動

バケツリレーで消す方法

地震発生

組長・班長で

安否確認

情報連絡票を

作成

広域避難地班

への報告

地震発生

出 火

火災発生

延焼拡大

消火器で消す方法

・天井に燃え移ったら限界

③レバーを強くにぎる

②ホースを

火元に向ける

①安全ピンをぬく

素早く火の始

末 消火器・くみ置きの水

などによる自らの消火

初期消火活動

消防団・消防署に任せる ・姿勢はできるだけ低く

・取手を持つ人

・柄を持つ人 に分け

ぶつかり合わないよ

うにする。

可搬ポンプで消す方法

・風向きに注意

・「放水始め」の合図をしっかり

・ホースの結合を確実に

情報班による

情報収集活動

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地震災害では、家屋の倒壊などで生き埋めや家具等の下敷きになる人が発生す

ることが予想されます。しかし、消防等の防災関係機関だけでは十分な対応がで

きません。

そのため、自主防災会が協力して救出・救助活動を行います。

【救出作業の手順】

1)要救助者の居場所、負傷の有無・程度の情報を集める。(大きな声で叫び反応を見る。)

2)居場所がわかったら救出のための人を集める。

3)近隣住民で、手近にある資機材を利用して救出する。

(ノコギリ、ハンマー、バール、ジャッキ、ロープなど)

4)自主防災会の救出・救助班を編成し、エンジンカッターなどの特技者を募り、救出活

動を行なう(チェンソー、可搬ウインチ、エンジンカッターなど)。

【作業をする上での注意事項】

1)被災者の埋没位置、数などを的確に把握しておくこと。

2)救助活動において、余震等による2次災害が発生しないようにする。

(区による救助が難しい場合)

⑧医療救護活動

南海トラフの巨大地震等では、大量の負傷者が発生することが予想されます。

家屋の倒壊・生き埋め者発生

近隣住民による救出活動

自主防(救出・救助班)による救出活動

消防署等による救出活動

救出作業は危険を伴う場合があります。

二次災害に十分注意しましょう。

情報連絡票(安否確認) 安否確認

市広域避難地班に報告

市に救助を要請

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しかしすぐに医師による治療が受けられるとは限りません。

◎市は沼津医師会裾野支部等と連携し、市内4か所に救護所を開設します。

◎医師等は医院を閉め救護所に赴くため医院での治療が受けられなくなります。)

【救護活動の手順】

1)負傷者を発見したらまず応急手当を行います。

2)重傷患者(入院が必要な人)や中等傷患者(入院は必要ないが医者が治療すべき人)

を、自主防災会が救護所に搬送します。

◎裾野市の救護所:南小学校・裾野高校・福祉保健会館・須山地区研修センターに設置

(参考)■ START(スタート)式トリア

医学的な診断ができない状況で自主防災組織がト

リアージを行う場合、患者の外見上の状態のみで判別します。

負傷者の発生

市が設置する医療救護施設

※トリアージの実施 ・重症・中等症患者の応 急処置

・軽症者の処置

※入院・手術等が必要な重

症・中等症患者は救護病

院へ搬送します

救護所

裾野赤十字病院

※裾野市は未定

救護病院

仮設救護病院

自主防による搬送

自分で移動

災害拠点病院

県が設置する医療救護施設

市町で対応できない重傷患者の

処置及び受入

対応不可能な

重症患者を

搬送する

【トリアージとは】

大規模災害時など、限られた人的・物的状況下で最大多

数の負傷者に最善の医療を施すため、患者の重症度により

治療優先度を決めることです。以前は医師が行うとされて

いましたが、現在は「スタート式トリアージ」という自主

防災組織でもできるトリアージがあります(次頁参照)。

閉院

国立病院機構静岡医療センター、

三島社会保険病院・沼津市立病院

順天大付属静岡病院

※注意※

市内の病院は閉院となります。

負傷者は救護所に!

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していない

※ 「とう骨動脈触知」とは、

手首の脈拍を測ること

10~29 回/分

【トリアージ・タッグ】

トリアージの際に用いる識別票(右図:裾野市用)。

記載された内容は、適切な治療を受けるための重要な情報

であり、被災地内の医療機関においては簡易カルテとしても

利用される場合がある。

負傷者の右手首にタッグのゴム輪を二重に巻きつける。

不可能な場合、左手首→右足首→左足首→首の順につける。

自発呼吸をしているか?

呼吸の回数はどのくらいか?

心拍数はどのくらいか?

意識はあるか?

応答できるか?

赤 赤

できる

なし

あり

9回/分以下、又は、30 回/分以上

120 回/分以上

または

(とう骨動脈蝕知)

触知不能2秒以上

なし

あり

できない

している

気道確保したら

呼吸はあるか?

50~120 回/分

または触知可能2秒以内

自分で歩くことができるか?

判 定

表 裏

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⑨広域避難地への移動

⑩避難行動要支援者等の避難の支援

災害時、全ての市民が避難所に避難できるわけではありません。

区の危険の度合いや被害状況によって、避難場所や避難方法が異なるので注意して下さ

い。

また、区域内の避難行動要支援者等は、自主防災会の中で担当を決めておくなどして、

皆で協力して避難の支援をして下さい。

津波危険予想地域

大きな地震が発生したら

山・がけ崩れ危険地域 その他の地域(延焼火災危険予想地域など)

避 難 地

高 台

津波避難施設

区の避難地

市広域避難地等

(被害状況により)

組や班の集合場所

区避難地・市広域避難地

災害によって自宅が損壊、または損壊するおそれのある者で

他に居住場所を確保できない者は避難所で一時的な生活を送る

台風・大雨等で避難が必要な場合

浸水想定地域 山・がけ崩れ危険地域 その他の地域

(不安がある建物等)

避難場所(所)への移動(屋外避難)

(区の集会所等、市指定避難所、近隣のより堅個な建物等)

建物内のより安全な場所で身の安全を確保(垂直避難)

(自宅の2階以上、崖・川から離れた部屋等)

裾野市に該当箇所はありません

屋内への

避難の方が

安全な場合

危険性の

種類

・富士山火山災害における避難は、避難対象エリアごとに避難します。

・避難は、各世帯:車両1両での避難となります。

・噴火前は市内避難。噴火後は状況に応じ広域避難(市外)をする計画です。

富士山火山で避難が必要な場合

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⑪避難所の運営

市指定避難所が開設された場合、運営は行政や施設管理者、避難者や自主防災会が協力

して行います。避難所生活は、災害による精神的な不安や、日常生活の不便、共同生活に

よる不自由等が考えられます。自主防災会を中心に、秩序ある避難生活を過ごせるよう、

お互いに助け合い協力することが重要です。

特に高齢者や障がいのある人、妊娠中の人や乳児のいる家庭など、避難行動要支援者等

への配慮が必要となります。

また、避難所では災害ボランティアの受け入れ体制も整備する必要があります。平常時

の訓練に取り入れ、そのときに混乱しないように心掛けましょう。

平常時より、災害が発生した場合を想定し、避難生活計画書を作成しておいて下さい。

【避難所運営までの手順】

1)市広域避難地班職員、施設管理者(学校等)、自主防災会で避難所の運営組織(運営

本部)を作ります。

2)運営本部に、「総務」、「被災者管理」、「情報」、「食料・物資」、「施設管理」、「保健・

衛生」等の班を作り、班長を決める。 ※役員には女性を配置することも重要です。

3)各班の下に、自主防災会ごとに班員を編成し、役割を決める。

4)運営本部の会議を、1日1~2回開催し、情報の収集・伝達、役割等を都度確認する。

5)ペットを同行する避難が課題となっています。ペット同行者による「ペット班」を必

ず編成してください。

【避難行動要支援者の支援】

1)避難行動要支援者の避難状況を把握する。

2)避難所での生活が困難な避難行動要支援者は、市広域避難地班員にその状況を連絡す

る。

●建物への立入(応急危険度判定)

地震発生後、必要に応じて応急危険度判定士の判定を受け、建物の安全を確認した上、

利用することができます。

市内の救護所開設を予定する施設、最初に避難所開設を予定する施設等は、優先的に応

急危険度判定をします。