第13回半導体工学20180115 - 名古屋大学amano/h29/semi/ln-13.pdf · 2017. 9. 25. ·...
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2018年1月15日(月) 1限 8:45~10:15 IB015
天野 浩
第13回 半導体工学
項目
10章 半導体の各種性質
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt090j/0809_03_featurearticles/0809fa02/200809_fa02.html
熱電変換モジュール
温度差を電気エネルギーに変換!
1/38
半導体熱電変換素子の意義
図4 排熱の温度分布:200℃以下が7割を占める(提供:富士フイルム)
小さな温度差でどれくらい発電できるか?熱力学の壁がある!
2/38
熱力学の基本 最も高効率な熱機関カルノーサイクル
Nicolas LéonardSadi Carnot (1796-1832)
カルノーサイクルは、温度 TH, TL の間で動作
する可逆熱サイクルの一種で、一番能率のよいものである。実現不可能だが、限りなく近いものは作れる(スターリングエンジンはこれに近い)。ニコラ・レオナール・サディ・カルノー(1796~1832)が熱機関の研究のために思考実験として1820年代に導入したものである。カルノー
の導入以降しばらくは注目されなかったが、19 世紀後半にウィリアム・トムソンにより再発
見された後に本格的な熱力学の起点となり、熱力学第二法則、エントロピー等の重要な概念が導き出されることになった。
出典: ウィキペディア(Wikipedia)
3/38
カルノーサイクルで理想気体が高温熱源から受け取った熱量Q1、低温熱源に放出する熱量|Q2|、1サイクルの間に受け取った仕事W
p(圧力)
V(体積)
等温膨張
1
2
3
4断熱圧縮
断熱膨張
等温圧縮
1⇒2は等温変化なので
]ln[1
21
1
1
2
1
2
1
VVnRT
dVV
nRT
dVpQ
V
V
V
V
p
V
等温膨張
1
2
3
4断熱圧縮
断熱膨張
等温圧縮
3⇒4も等温変化
]ln[3
42
2
2
4
3
4
3
VVnRT
dVV
nRT
dVpQ
V
V
V
V
http://hr-inoue.net/zscience/topics/heat/htfig07.jpg
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断熱変化
理想気体 ⇒
熱力学第一法則 dVpqddVpdTcv
TRnVp
.)ln(.)ln()1()ln(
0)1(
0)(
0
1 ConstvTConstvTvdvC
TdTC
vdvCC
TdTC
dvv
nRTdTc
vv
vpv
v
n=1のとき
積分する
.1 ConstvT
熱の出入りが無いのでゼロ
断熱膨張:vは大きくなる。⇒Tは下がる。エアコン、冷蔵庫など。断熱圧縮:vは小さくなる。⇒Tは上がる。ディーゼルエンジンなど。
定積比熱
v
p
CC
理想気体
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カルノーサイクルで理想気体が高温熱源から受け取った熱量Q1、低温熱源に放出する熱量|Q2|、1サイクルの間に受け取った仕事W
p
V
等温膨張
1
2
3
4
断熱圧縮
断熱膨張
等温圧縮
2⇒3 4⇒1は断熱変化T1
T1
T2
T2.
.1
111
42
132
121
ConstVTVT
ConstVTVT
1
1
4
2
1
1
2
3
2
1
VV
TT
VV
TT
4
3
1
2
1
1
4
1
2
3
VV
VV
VV
VV
また、サイクルの性質から W+Q1+Q2=0
1
22121 ln)(
VVTTnRQQW
v
p
CC
http://hr-inoue.net/zscience/topics/heat/htfig07.jpg 6/38
カルノーサイクルで理想気体が高温熱源から受け取った熱量Q1、低温熱源に放出する熱量|Q2|、1サイクルの間に受け取った仕事W
1
21
1
21
TTT
QQQ
効率:受け取った熱量Q1のうち、どれだけ仕事をしたか?
1
211
1
22121
ln
ln)(
VVnRTQ
VVTTnRQQW
熱機関の最高効率
例えば水を使った場合、100℃と室温では、最高でも 19.6%
7/38
現在の火力発電所の熱効率
中部電力が所有する火力発電設備の熱効率の推移。出典:中部電力
カルノーサイクルだと84%
コンバインドサイクルとは?
62%
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コンバインドサイクルのポイント
図1 「コンバインドサイクル」による発電設備。出典:関西電力
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熱電変換
http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H12/html/H1104A03_.html10/38
Seebeck効果
Thomas JohannSeebeck
1770-1831
名称構成材料 使用温度
範囲最高使用温度
特徴+脚 -脚
金鉄・クロメル
(AF)
ニッケルおよびクロムを主とした合金(クロメル)
鉄0.07%を
含む金鉄合金
-269℃~30℃ - 極低温測定に最適な熱電対。
イリジウム・ロジウム
ロジウム50%を含む
イリジウム・ロジウム合金
イリジウム1100℃~2000℃ 2100℃
真空・不活性ガス、およびやや酸化雰囲気に適する。イリジウムの蒸発による汚染がある。もろい。
タングステン・レニウム
レニウム5%を含むタングステン・レニウム合金
レニウム26%を含む
タングステン・レニウム合金
0℃~2400℃ 3000℃ 還元雰囲気、不活性ガス、水素気体に適す
る。もろい。
ニッケル・モリブデン
モリブデン18%を含む
ニッケルモリブデン合金
ニッケル0℃
~1200℃ 1250℃ 還元雰囲気中で使用できる。 熱起電力が大きい。
プラチネル
パラジウム、白金および金を主とした合金
金およびパラジウムを主とした合金
0℃~1100℃ 1300℃ 耐摩耗性が高い。熱起電力はK熱電対と
ほぼ同じ。
ゼーベック係数(SA、SB)の異なる二つの金属
T2
T111/38
金属の自由電子濃度の温度依存性
https://www.researchgate.net/publication/258849502_An_Environment-dependent_Semi-Empirical_Tight_Binding_Model_Suitable_for_Electron_Transport_in_Bulk_Metals_Metal_Alloys_Metallic_Interfaces_and_Metallic_Nanostructures_I_-_Model_and_Validation/figures?lo=1
銅のバンド構造
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n型Siの電子密度の温度依存性の例
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半導体のSeebeck効果
不純物伝導領域又は飽和領域にある半導体では、熱励起によりドナーまたはアクセプターがイオン化してキャリアを供給するため、キャリア濃度は温度に対して指数関数的に増大します。このため、温度差があると上図のように高温部と低温部でキャリアの濃度勾配が生じ、高温側のキャリアは濃度差による拡散で低温側に拡散していきます。一方、電離した不純物準位は一般に結晶中のイオンなので固定されていて拡散できず、高温側は反対符号の電荷を帯びます。この電荷の偏りによるクーロン力でキャリアは高温側に押し戻される力を受け、いずれは両者が釣り合った定常状態に達します。
結果として低温側に多数キャリアがたまることになり、ゼーベック係数はその正負と多数キャリアの符号が一致するように定義されています。高温側でのキャリア生成によるこの効果はキャリアの拡散速度の差よりずっと大きいので、半導体では数百μV/Kに及ぶ大きなゼーベック係数が得られます。なお、バンド
ギャップに比べて十分高温になって固有伝導領域に入ると、正負両方のキャリアが大量に生じるため、温度差によるキャリア濃度の違いは相対的にずっと小さくなってしまい、ゼーベック係数の絶対値は急激に減少します。このため、高温で用いる熱電変換材料には、十分大きなバンドギャップ(Eg>4kT)が必要です。
http://www.mm.kyushu-u.ac.jp/lab_02/pages/research/TE/semiconductor.html
n型半導体の例
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半導体のSeebeck効果
https://www.researchgate.net/publication/269721808_Connecting_Thermoelectric_Performance_and_Topological-Insulator_Behavior_Bi_2_Te_3_and_Bi_2_Te_2_Se_from_First_Principles/figures?lo=1
ゼーベック係数
BiTeのゼーベック係数の不純物濃度と温度依存性
TdTdVSV F
S ゼーベック電圧
フェルミエネルギーに対応する電位
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ED
EC
EV
エネル
ギー
価電子帯
温度による自由電子濃度nの変化
n
ED
価電子帯
n=ND
ED
価電子帯
温度上昇
不純物領域 飽和領域 真性領域
n
p
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TkENN
TkEEcNNn
B
DDC
B
DDC
2exp
22exp
2
C
DBDCf N
NTkEEE2
ln22
各領域における自由電子濃度nとフェルミ準位
不純物領域
飽和領域
真性領域
n=ND )ln(c
DBcf N
NTkEE
TkE
NNTkEENNnpn
B
gVC
B
VCVCi 2
exp2
exp
h
eB
gf m
mTkE
E ln43
2
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http://www.iue.tuwien.ac.at/phd/mwagner/node47.html
Si中 フェルミ準位の温度依存性
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/1994151978
TS
Tkqp
Tp
LT
Tp
xT
Tp
LS
Tkqp
xp
LSE
qTkD
IIEqpI
xpqDI
B
Bh
Bh
hcch
hhc
hch
,
,0
L
E電位差S
TTTk
qVqkT
qk
TVT
TVSVs
Tqk
TV
TVS
hB
FBBFF
BFF
23
23
23
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ZT=S2σT/κゼーベック係数S,電気伝導度σ,熱伝導度kとすると
熱電変換材料の性能指数Z
熱伝導度が小さく、電気伝導度とゼーベック係数が大きい材料
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt090j/0809_03_featurearticles/0809fa02/200809_fa02.html 19/38
熱電変換モジュール
変換効率11%の熱電変換モジュールを開発(高温側600℃、低温側10℃)
Ref. カルノーサイクル:67.6%ZT=S2σT/κ
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Peltier効果
Jean CharlesAthanase Peltier1785-1845
Wikipediaより
異なる金属を接合し電圧をかけると、接合点で熱の吸収・放出が起こる効果。ゼーベック効果の逆、電圧から温度差を作り出す現象である。トムソン効果とともに熱電効果のひとつである。ペルチエ効果、ペルチェ効果と表記することもある。
21/38
Peltier冷却器の動作原理
http://www.tzwrd.co.jp/technology/toragi/toragiAppen0703.pdf
http://www.ohm.jp/cooling/boxcool/
n型半導体の場合、負極側で吸熱
p型半導体の場合、正極側で吸熱
http://www.apiste.co.jp/enc/technology_enc/detail/id=127422/38
上図の様に、キャリアが正の電荷を持つ正孔の物質の場合、その中心を加熱すると ゼーベック効果と同様に、正孔が加熱されていない両端に集中し、加熱されている 中心部分は負の電荷を持つ状態になります。すると図に示した通り、両端から中心に 向かって内部電場が生じます。この状態で図の様に外部電源を接続し電流を流すと、 右から左に向かう外部電場が印加され、p型材料の右端から正孔が流れ込みます。 この時、右端から中心に向かう正孔の流れは、外部電場に加えて余分に内部電場の助けも 借りて運動するため余剰のエネルギーを放出し、放熱が 起こります。一方、中心を過ぎて左端に向かう場合には、外部電場と内部電場の向きが反対で あるため、内部電場の分だけ運動エネルギーを損することになります。これを補い、 左端まで正孔が流れるために、周囲から熱エネルギーを吸収する 吸熱が起こります。
http://www.ees.nagoya-u.ac.jp/~web_dai1/thermoelectric.htmlp型半導体の場合
Thomson効果
WilliamThomson
1824-1907
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Thomson効果
トムソン効果によって、放熱あるいは吸熱する単位体積当たりの熱量qは、 物質の電気抵抗率 ρ、電流密度ベクトル Jと温度勾配 ∇T、また、トムソン係数 Θを用いて、下式で表されます。
q = ρ J2 - Θ J·∇T
トムソン効果の項ジュール熱の項
24/38
磁電効果
GMR素子 MRAMホール素子
http://www.tdk.co.jp/techmag/inductive/200804/index2.htm http://elekitel.jp/elekitel/series/2010/04/sr_04_i.htm
25/38
端子A
端子B
端子C
端子D
磁界の向き
van der Pauwの測定法
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
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厚さ t
半無限の半導体板を考える。
抵抗率I I
rA B C D
E
EEj 1j:電流密度E:電界:電位:導電率:抵抗率
より jdr
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
27/38
厚さ t
I I
rA B C D
-I
rAB=d
Bから流入する電流Iが、Aに作る電位
d d
ABAB rr
AB drrt
Ijdr 1
rt
Ij
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
28/38
厚さ t
I
rA B C D
-I
rAB=d d d
VAD=AB+AC-(DB+DC)=
)2ln(2
1)(11)(1 22
tI
drrt
Idrrt
Idrrt
Idrrt
I dddd
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
29/38
A B C D
d d d
A
B
C
D
任意形状のサンプルへの変換
xz平面
w平面 等角写像法(Schwartz-Christofell変換) 2
121
21
21
1 32 dzdzdzzC
dzdw
という対応をつけると、二つは等価
(実際は、三つ以上の点が同一線上になければ、任意形状に対し、対応可能)
(電気磁気学を復習しよう!)
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
30/38
A
B
C
D
BC間に一定電流を流し、AD間の電位差を観測する。
より
t
IV BCAD )2ln(2
IVt
)2ln(2
実際には、形状の違いを補正するため、2箇所で測定して形状の違いに基づく平均化を行う。
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
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次にキャリア濃度nと移動度を求める。簡単のために、キャリアは一種類、即ち電子または正孔とする。
移動度とは? vd=E ドリフト速度と電界の比例定数
j=Ej=q×n×v=qnE より
nq1n型半導体の場合
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
32/38
A
B
C
D
磁界B電子は、ローレンツ力によりD方向に力を受ける。→ Dのポテンシャルが高くなる。
(ホール電界が発生する。)→ ローレンツ力とホール電界がつりあう。
qvB=qEH
b
IAC=jAC×b×t=qnvbtまた、BDのところで
従って、ホール電圧VHは、
ACACHBDBDH ItB
qnI
qnbtbBbvBEbBVBVV 1)()()0()(
半導体の抵抗率、移動度、キャリア濃度を求めるには?
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半導体の抵抗率・cm]キャリア濃度n[cm-3]移動度cm2/V・sを求めるには?
1.半導体試料の膜厚を測定する。2.隣り合う二点間に一定電流を流し残りの二点間の電圧を測定する。
の関係より、抵抗率が求まる。
3.対角線上に一定電流を流し、磁界がゼロのときと、一定磁界を加えたときの残りの二点間の電圧の差を測定する。
HVI
tB
qn 1 より、キャリア濃度nが求まる。
qn11
11
qnより、移動度が求まる。
IVt
)2ln(2
Van der Pauw法 抵抗率、移動度、キャリア濃度測定のまとめ
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1.AからCに向かって電流を流し、BD間の電圧を測定したとき、磁界がゼロのときに比べ、図のような磁界を加えることにより、Bの電圧がDの電圧より高くなった。この半導体はn型かp型か?
2.AB間に電流1[mA]を流したとき、CD間に電圧0.15[V]発生した。この試料の抵抗率を[・cm]の単位で求めなさい。
3.AC間に電流1[mA]を流し、BD間の電圧を測定したところ、磁界がゼロのときはVBD=0[V]、磁界B=0.1[T]を加えたら、VBD=0.05[V]であった。この試料のキャリア濃度[cm-3]と移動度[cm2/Vs]を求めなさい。
Q膜厚t=50[m]の四角の半導体の四隅に電極を蒸着し、ホール効果測定を行った。以下の問題に答えなさい。
A
B C
D
t=50[m]
磁界B
p型V
][70.1)2ln(2
cmIVt
V
][105.21 315 cmVI
tB
qp
H
]/[470,111 2 Vscmqpp
V
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磁気抵抗素子
電極
磁気抵抗素子(InSbなど)
BvqEqf
22*
*2
0
22
)()()(
)(1)(1
1
Bq
mmqB
RR
c
cc
電気伝導度テンソルの磁束密度の影響の項
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歪効果
CdSeのバンドギャップの静水圧依存性
1GPa=10000気圧
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歪効果
緩和したSi-Ge上にコヒーレント成長したSiは、正孔移動度が増大する。
https://www2.warwick.ac.uk/fac/sci/physics/current/postgraduate/regs/mpags/ex5/strainedlayer/introduction/
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