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浮体の動揺の基礎 Realization of Integrated Ocean Development and Utilization systems

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浮体の動揺の基礎

Realization of Integrated Ocean Development and Utilization systems

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並進運動

回転運動

Surge(前後揺れ)

Sway(左右揺れ)

Heave(上下揺れ)

Yaw(船首揺れ)

Roll(横揺れ)

Pitch(縦揺れ)

浮体の6自由度運動

重要な概念

連成運動 RAO

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連成運動とは?

• 2つ以上の運動モードが互いに作用を及ぼしあう挙動

• 重心の動きで運動方程式を表す時、ある運動モードで生じる流体力の作用中心が重心を通らないときなどに生じる

SWAYとROLLの連成

SWAY方向に動いた時に作用する流体力中心が重心より下にあればROLLを引き起こす

ROLL方向に動いた時に作用する

水平方向の流体力の総和がゼロでなければSWAYを引き起こす(上の場合、HEAVEは連成しない)

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連成運動とは?

• セミサブや台船のように前後・左右に対称な場合はSURGEとPITCH、SWAYとROLLのみが連成する

• 船のように長さに比べて幅や喫水が小さく、左右対称・前後非対称の場合、HEAVEとPITCH、SWAYとROLL、SWAYとYAWが連成する

• 一般論としては方向同士の全組合せの連成がありうる

運動方程式への反映(付加慣性力の例。減衰係数も同様)

FR1 M11 M12 M13 M14 M15 M16 X1FR2 M21 M22 M23 M24 M25 M26 X2FR3 M31 M32 M33 M34 M35 M36 X3MR4 M41 M42 M43 M44 M45 M46 X4MR5 M51 M52 M53 M54 M55 M56 X5MR6 M61 M62 M63 M64 M65 M66 X6

..

..

..

..

..

..

j方向への加速度がi方向への力あるいはモーメントを生じさせることを表す付加慣性力行列(i≠jでゼロでない項を連成項という)

X方向の加速度Y方向の加速度Z方向の加速度X軸周りの角加速度Y軸周りの角加速度Z軸周りの角加速度

X方向の力Y方向の力Z方向の力X軸周りのモーメントY軸周りのモーメントZ軸周りのモーメント

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RAOとは?

• Response Amplitude Operatorの頭文字

• 規則波に対する浮体の応答振幅を、波振幅や波傾斜で無次元化し、横軸に周波数をとってグラフにしたもの。波との位相差を併記する場合もある。

• 線形周波数応答関数、応答伝達関数、応答倍率などと称される

周波数(波長を浮体長さで無次元化して示す場合もある)

波に対する応答の大きさ

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復原力を変位に対して線形バネで近似できるとすると、浮体の運動方程式は以下のような6×6の行列式を用いた線形2階微分方程式で表わされる(詳しくは来月)

規則波に対する動揺

MX+CX+KX=F・・ ・

M;浮体の見かけ質量(質量+付加質量)マトリクスC;減衰係数マトリクスK;復原力係数マトリクスX;変位ベクトル(6自由度)F;外力ベクトル

(左辺第一項は慣性項、第二項は減衰項、第三項は復原項と呼ばれる。付加質量・減衰係数・外力などについては後述する。)

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ここで、 F=FAcos(ωt+θ) と仮定

変位 X=XAcos(ωt+δ)

速度 X=-ωXAsin(ωt+δ)

加速度 X=-ω2XAcos(ωt+δ)

運動方程式に代入すると、

-Mω2XAcos(ωt+δ)-CωXAsin(ωt+δ)+KXAcos(ωt+δ) = FAcos(ωt+θ)

・・

規則波に対する動揺

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t(時刻)によらず平衡するには、

cos成分 {(K-ω2M)cosδ-ωCsinδ}XA =FAcosθ

sin成分 {-ωCcosδ-(K-ω 2M)sinδ}XA =-FAsinθ

XA = (XAcosδ)2+(XAsinδ)2

| FA |

(K-ω 2M)2+(ωC)2

一般に減衰力係数Cは小さいので、K≒ω2Mの時にXの振幅は非常に大きくなる(共振現象)。ω0=√(K/M) を固有周波数、

T0=2π/ω0を固有周期と呼ぶ(注;モードごとに異なる)。

規則波に対する動揺

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動的変位振幅XA/FA

1/K

ω0=√(K/M)周波数ω

減衰の効果

ω→∞の時X→0

外力の周波数が固有周波数より低いとXA≒F/K

外力の周波数が高いとXA≒F/ω2M

共振領域

XAは大きくなる

基本的なRAO

もし、波による外力の振幅が周波数に依存しなければ・・

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海洋構造物の設計に関する自然環境

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浮体に影響を及ぼしうる自然環境要因

設計のための条件設定

自然環境条件により浮体に作用する荷重の推定

荷重に対する応答の推定

不規則な自然現象に対する確率論的取り扱い

海象の変化に対する統計的取り扱い

自然環境下で浮体の安全性や作業性を評価するには・・

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水深、地質、地形(海底、沿岸)

流れ(潮流、海流、吹送流)

潮汐(天文潮)、高潮(気象潮)

地震、津波

積雪、着氷、流氷

水温、気温 など

設計で考慮すべき自然環境

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自然環境条件;風

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• 大気の移動

• 風速と風向で表現される

• 風速の乱れ成分(風の息)を考慮する必要がある

海洋開発における風条件設定の必要性

• 構造物に作用する風荷重算定

• 波浪推算

• 風力発電ポテンシャル評価 など

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上空の風

(自由大気層)

地衡風

(季節風)

傾度風

(高/低気圧)

旋衡風

(台風)

地上の風

(大気境界層)

対流圏(海抜11km)- 自由大気層(1 ~11km)- 大気境界層(0~1km)

気圧配置の移動が遅い場合

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コリオリ力の簡単な説明

北極地球の自転

回転による速度は高緯度の方が小さいので、低緯度から高緯度へ向かって物体を投げると、狙った所より右へ行ってしまう⇒右向きの力が作用したように動く

回転による速度は低緯度の方が大きいので、高緯度から低緯度へ向かって物体を投げると、狙った所より右へ行ってしまう⇒右向きの力が作用したように動く

回転座標系の上で移動している際に、移動方向と垂直な方向に、移動速度に比例した大きさで受ける慣性力(見かけの力)をコリオリ力という。北半球では右側、南半球では左側へ作用する。

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地衡風

気圧傾度力

コリオリの力空気塊

• 地衡風は、低圧部を左に見ながら等圧線に沿って吹く• 日本周辺での冬場の西高東低気圧配置では北風が吹く

𝑉 =𝜕𝑝/𝜕𝑟

2𝜌𝑎𝜔 sin𝜑

V;風速、ω;地球自転の角速度、φ;緯度、∂P/∂r;等圧線の勾配、ρa;空気の密度

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傾度風

• 等圧線が曲率をもつと、気圧傾度力とコリオリ力のほかに遠心力がはたらく• 傾度風は、等圧線の接線方向に吹く

• 遠心力は低気圧性の場合は気圧傾度力を弱めるようにはたらくので、傾度風は地衡風に比べて弱くなる。高気圧性の場合は気圧傾度力を強めるようにはたらくので、傾度風は強くなる。

𝑉 = 𝑟𝜔 sin𝜑 2 +𝑟

𝜌𝑎

𝜕𝑃

𝜕𝑟− 𝑟𝜔 sin𝜑

V;風速、 r;曲率、ω;地球自転の角速度、φ;緯度、∂P/∂r;等圧線の勾配、ρa;空気の密度

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海上風速=傾度風速×50%~70%

緯度 10゚ 20゚ 30゚ 40゚ 50゚

β(海) 24゚ 20゚ 18゚ 17゚ 15゚

β(陸) 38゚ 35゚ 34゚ 33゚ 32゚

US/Ug 0.51 0.60 0.64 0.67 0.70

陸上風速=海上風速×70%~80%

β:海上風の風向と等圧線のなす角US: 海上風速,Ug: 傾度風速

地上風・海上風

地表近くや海面近くを吹く風は摩擦の影響を受ける。

風と逆向きに働く摩擦力をつりあい式に考慮すると、風向は等圧線の接線方向に対して傾く。

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台風の移動を考慮する場合

台風域内の気圧分布式

傾度風

傾度風から海上風を求め、台風の進行に伴う場の風を加える

藤田の式

𝑃 = 𝑃∞ −∆𝑃

1 + 𝑟 𝑟0

マイヤーズの式𝑃 = 𝑃∞ − ∆𝑃 𝑒𝑥𝑝 − 𝑟 𝑟0

P ;台風中心からの距離rにおける気圧P∞;r→∞での気圧ΔP=P∞-Pc

Pc;台風中心の気圧r ;台風中心からの距離r0;台風中心から最大風速の点までの距離

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定点観測データから最大風速を推定する

① 毎年、一年間で最大の風速を取り出す

② n年間のデータ → n個の年間最大風速 → 大きい順に並べる

③ 最も大きな最大風速は、未超過確率が n/(n+1) とみなす2番目に大きな最大風速は、未超過確率が (n-1)/(n+1) とみなす以下同様

④ 上記の関係を確率用紙にプロット(たとえばワイブル分布確率用紙)

⑤ 近似曲線からN年最大風速を推定する

𝑁 𝑁 + 1

𝑛 𝑛 + 1

𝑛 − 1 𝑛 + 1

最大風速

未超過確率

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基本風速から設計風速への換算

• 風を用いた波浪推算や風力エネルギーポテンシャル評価には、基本風速を用いる

• 構造物や係留の設計には風荷重算定のための風速に換算する

1. 高度補正

𝑉𝑧 𝑉0 = 𝑧 𝑧0𝛼

Vz;高さzにおける風速、V0;基準高さの風速、zo;基準高さ(海面上10m)、

α;粗度による指数(海上;1/7)

2. 構造物の大きさによる補正

ルールなどで決められていることがある

3. ガストファクター

剛な構造物に作用する風の瞬間的な最大値を考慮する増幅率

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風の変動について

Van der Hovenによる上空の風速変動

低気圧の移動による数日間周期、昼夜交替による半日間周期をのぞくと、風速変動の周期は3分間程度より短い。

→ 日本の気象庁による風速の観測時間は10分間 (米国は1時間)

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・ Davenport(1967)のスペクトル

fSu(f) = 0.012U102X/(1+X2)4/3

X=1200f/U10

f: 周波数(1/sec)

U10: 基準高さ10mにおける風速(m/sec)

平均風速 U10 (m/sec) ピーク周波数 fp (1/sec)

10 0.0144 (69.3sec)

20 0.0288 (34.7sec)

30 0.0433 (23.1sec)

40 0.0578 (17.3sec)

変動風のスペクトル

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風の息

平均風速や突風率は、評価時間を明確にする必要がある

評価時間S 1時間 10分間 1分間 1秒間

平均風速/10分間平均風速

0.94 1 1.16 1.50

観測時間(例えば10分間)の中で、風速は時々刻々変化する

• 10分平均風速:一般に風速と呼ばれているもの• 最大風速 :一定期間内の10分平均風速の最大値• 瞬間風速 :時々刻々変わる瞬間の風速• 最大瞬間風速:一定期間内の瞬間風速の最大値• 突風率(ガストファクター)=最大瞬間風速/最大風速

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スコール

Time

Wind speed

>8 m/s

>1 min

>11 m/s

気象用語:風の急変(激しい降雨を伴うが、英語で急な降雨はシャワー)

WMOによる定義(1964);•上昇幅 8m/sec以上•最大風速 11m/sec以上•継続時間 1分以上 (ガストと区別)

Squall Observed in West AfricaRef. Legerstee F, et al, OMAE, 2006

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• 熱帯地方(西アフリカ・東南アジアなど)ではハリケーンや台風がないので、設計条件として重要

• 予兆がなく、風向の急変をともなうこともあるので、一点係留浮体の係留設計への反映方法が課題

• メキシコ湾やブラジル沿岸域、日本のような中緯度地域でも観測されている

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南大東島で観測されていたスコール (2013年11月25日)

Time

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自然環境条件;流れ

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• 海水の動きのうち、定常成分とみなせるもの

• 沖合では、海流・潮流・吹送流など

• 沿岸域では、離岸流・河口からの流れなども生じる

• 場所によって異なる。データが不十分な場合が多い。

流れ

海洋開発における流れの条件設定の必要性

• 構造物に作用する荷重算定

• 水中線状構造(ライザーなど)の形状変化や渦励振の評価

• 海流・潮流発電ポテンシャル評価 など

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• 海洋大循環によって生じている地球規模の海水運動のうち、比較的流速が大きく、場所が特定されるもの

• 速いところでは5ノット以上

(参考:競泳男子100m自由形世界記録:46.91”=4.14ノット)

海流

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日本周辺の海流

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深さ方向の分布の提案式の例

浅海域

𝑉 𝑧 = 𝑉0ℎ−𝑧

1 7

深海域

𝑉 𝑧 =

𝑉0 𝑧 < 50𝑚

𝑉0 1 − 0.8 𝑧 − 50 /550 50 < 𝑧 < 600𝑚

0.2𝑉0 600𝑚 < 𝑧

V0;表層の流速h ; 水深

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• 月や太陽の引力のために生ずる周期的な流動

• 予測可能。半日周期・一日周期が主要。

• 地形影響を受ける

• 海峡などを除けば1~2ノット以下

潮流

http://murakamitakeyoshi.blog122.fc2.com/blog-category-30.html

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• 風による海面との摩擦によって生ずる流れ

吹送流

DNVの近似式

𝑉 𝑧 = 0.017𝑈10 50 − 𝑧 /50 z<50m

= 0.0 𝑧 > 50𝑚

U10;海面上10mにおける1分間平均風速

(つまり、表層では風速の1.7% 30m/sec → 0.5m/sec)

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例 題

高さH、外径D、密度ρで中実の鉛直円柱物体が、密度ρwの水に浮いている。付加質量を無視してよいとする時の、この浮体のHeaveの固有周期を求めよ。なおここでは転倒の有無を考慮しないものとする。

H

ρ

D

ρw

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例題の解

高さH、外径D、密度ρで中実の鉛直円柱物体が、密度ρwの水に浮いている。付加質量を無視してよいとする時の、この浮体のHeaveの固有周期を求めよ。なおここでは転倒の有無を考慮しないものとする。

H

ρ

D

ρw

この物体の質量Mは

𝜌𝜋𝐷2

4𝐻

であり、Heaveの復原力係数(単位長さの変)Kは

𝜌𝑤𝑔𝜋𝐷2

4

であるので、固有周期Tは、

𝑇 = 2𝜋 𝑀 𝐾

= 2𝜋𝜌𝐻

𝜌𝑤𝑔

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問 題

高さH、外径Dの鉛直円柱物体が、喫水dで、密度ρwの水に浮いている。この浮体に質量mの荷物を搭載した時のHeaveの固有周期を求めよ。ただし、付加質量は無視してよく、荷物搭載による沈没や傾斜や転倒はないものとする。

d

D

ρw