c-magazine 2014年 秋号(vol.74) - canon · 2014 autumn vol.74 ビッグデータ× 人間力...

19
2014 Autumn Vol.74 × 間力 カルビー/ ウェザーニューズ / 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス Cのキセキ POWER PROJECTOR 特集

Upload: others

Post on 13-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

2014 Autumn Vol.74

ビッグデータ×人間力カルビー/ウェザーニューズ/帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

Cのキセキ

POWER PROJECTOR

特集

2377

Page 2: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

あの人の仕事を変えたブレークスルーの瞬間に迫る

「POWER PROJECTOR」location:ハイアット リージェンシー大阪

アーバンリゾートウエディング【詳細は28ページ「Cのキセキ」】

キヤノンのある風景Cover

2

はじめの半歩

声優・タレント

山寺宏一さん

4

特集ビッ

グデータ×人間力

16

きずなのマーケティング

株式会社�

フォーデック

代表取締役社長�

沖本光旦さん

18

imaging�S�

「未知なる世界」 

写真家�

竹沢うるまさん

21

フォトなび�

⑲�

EOS�M2を持って旅に出よう!� 

横と縦の比率を変えて撮影する

22

ITソリューションのカエル力�Vol.7

「Webコミュニケーションの現在とこれから」

Web会議システム「IC3︵アイシーキューブ︶」

26

売れるモノには理由がある

ヒットのピント�

第4回

「アイデア」

28�Cのキセキ�

〜キヤノン製品に込めた思い〜�Episode.7

「POWER�PRO

JECTOR

34

世界が認めたニッポン 

「石州瓦」︵ロシア︶

35

Canon�Topics

「PIXUSのラインアップ刷新および

新シリーズMAXIFY登場」�ほか

36

Event�Information

キヤノンイーグルス試合情報

編集・発行

キヤノンマーケティングジャパン株式会社

コミュニケーション本部 広報部

〒108─

8011

東京都港区港南2─

16─

6

電話03─

6719─

9094

発行人・松阪喜幸  編集人・上野

制作スタッフ

Editor

安藤夏樹、御船晶子、菅原

研、中村真紀、

榎本

暁(日経BPコンサルティング)

Writer

 

二階堂

尚、宇治有美子、いなもあきこ、千葉はるか、

井上隆文、小泉森弥、手代木建

Art Director

 

おおうちおさむ(ナノナノグラフィックス)

Designer

 

伊藤

絢(ナノナノグラフィックス)

Cover Photographer

 

大腰和則

Photographer

 

本浪隆弘、江藤海彦、和泉義貴(studio

-L

)、

吉澤咲子(ブルーストーンスタジオ)、大腰和則、

上内かなえ(U

MUKA

)、武藤奈緒美、

GOTO

AKI、井上裕康、山田愼二

Illustrator

 

寺田晶子(ヒットのピント)

岡田

丈/vision track

( ITソリューションのカエル力)

Cooperation

 

石州瓦工業組合(世界が認めたニッポン)

※本誌で紹介している製品・サービスなどの名称は、

一般に各社の商標または登録商標です。

ことで、自分の持ち味を出そうと考えました」

元の作品を何度も見て、俳優の声を繰り返し聞く。

そうしてそのイメージを吸収して、自然な口調になる

までセリフの練習を重ねる。もらった役を自分のもの

にするために、いつも必死だったと振り返る。

 しかし、それは必ずしもつらいことではなかった。「小

さい頃から人の声をまねるのが大好きだったから」だ。

「つい、まねちゃうんですよ。声優の仕事を始めた頃

も、他の人がやっていた役を、家に帰って全部一人で

再現して楽しんでいました(笑)」

 その才能が後に、声優の枠を超えて「ものまねの達

人」として開花したのは周知の通りだ。

 月曜から金曜までの朝の子供向け番組「おはスタ」

の司会を務めて、今年で18年目になる。

「あの番組で皆さんに顔を覚えていただいて、仕事の

幅がぐっと広がりましたね」

 俳優、ナレーター、バラエティー番組と、活躍の

フィールドはキャリアを重ねるごとに広がる一方だ。最

近、演劇ユニットを起ち上げ、歌手としてデュエット

曲も発表した。慣れ不慣れはあっても、あらゆる仕事

にプロフェッショナルとして臨むこと。それが自分に

仕事をオファーしてくれた人への恩返しであると話す。

「いつも期待を超える仕事をして、たくさんの人に喜

んでいただきたい。それが声優を始めた頃からずっと

変わらない気持ちです。その気持ちが全ての仕事をつ

なげている。そう感じています」

「職人」という呼び名が最もふさわしい声優ではない

だろうか。

 洋画の吹き替えでは、トム・クルーズやブラッド・

ピットといった二枚目俳優から、エディ・マーフィ、

ジム・キャリーといった個性派までを幅広くこなし、

アニメでは『宇宙戦艦ヤマト』の古代進や『ルパン三世』

の銭形警部などの人気キャラクターを巧みに演じる。

ドナルドダック、スティッチ、めいけんチーズなど、

人間以外のキャラクターもお手のものだ。しかも、ど

れ一つとして同じ声はない。

 誰にもまねのできない、多彩にして多才な役作り。

しかし、その「小器用さ」が実はコンプレックスだった

と、山寺宏一さんは話す。

「何でもできてしまうということは、声に個性がない

ということですよね。若い頃は経験を積むために、と

にかくいろいろな役にチャレンジしていたのですが、

周囲からは『おまえって、ほんと器用貧乏だよな』とい

つも言われていました」

 クリント・イーストウッドならば山田康雄、ピー

ター・フォークならば小池朝雄、クラーク・ゲーブル

ならば納谷悟朗、アラン・ドロンなら野沢那智――。

あらゆる人を納得させるような、そんなはまり役が自

分にはなかった。だから、工夫を重ねるしかなかった。

そう山寺さんは言う。

「個性や演技力では先輩たちに太刀打ちできませんか

ら、オリジナルの俳優にできる限り近い声を再現する

やまでら・こういち◉1961年6月17日、宮城県塩竈市生まれ。東北学院大学卒業後、俳協養成所に入所。85年、オリジナルビデオアニメ『メガゾーン23』で声優デビュー。97年から子供向け番組「おはスタ」のメイン司会者を務める。テレビ、ラジオ、映画、ゲーム、CM、舞台などさまざまな分野で活動を続けている

山寺宏一さん

たくさんの人に喜んでほしい――

その気持ちが、全ての仕事をつなげています

声優・タレント

2014 Autumn Vol.74

23 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn 3 2

Page 3: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

IT企業や流通業、製造業をはじめ、幅広い業界に広がりつつあるビッグデータの活用。

コンピューターでデータの分析結果を出すことができても、全てをIT任せにしていては、

そこから改革を実行し、新事業を創造していくことはできないだろう。

人間の力でしか集められないデータを融合させる——。

人間の経験に基づく分析を行い、新しいアイデアを導く——。

必要なのは、データと人間の力との融合だ。成功事例から、新時代のデータ戦略に迫る。

45 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 4: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

すればいいのだろうか

—。星野さんの

一つの提案が、行動経済学の知見を応用

することだ。

 

従来の経済学は、「人間の合理的行動」

という基盤の上に築かれてきた。人は損

をするより得をすることを選ぶ。なぜな

ら、その方が合理的だから。それが経済

学の暗黙の前提だ。それに対し、心理学

の方法論などを応用した行動経済学は、

「人間はしばしば合理的とはいえない行

動をする」ことを出発点とする。この考

え方をベースに、経済活動を通して人間

が行いがちな判断や行動を研究する学問

が、行動経済学である。

「行動経済学が注目されたのは、一見非

合理に見える人間の行動にも、法則や傾

向があることを指摘したことによってで

した。その法則や傾向を実験によって明

らかにしたことが、この学問の大きな功

績です」

例えば、「割引セールをすれば、来客

数が増えて、売り上げが伸びる」という

広く信じられているセオリーがある。し

かし、行動経済学の知見によれば、この

セオリーは長期的に見て誤りであるケー

スが多い。

「割引は多くの人に“お得感”を与えま

すが、実は、その割引が終わって正価

に戻ったときの“損失感”の方が大きい

ことが、行動心理学の実験の結果、明

らかになっています。つまり、“お得感”

を醸成することによって獲得できる顧

客よりも、“損失感”を与えることで失っ

てしまう顧客の方が多い可能性が高い

のです」

行動経済学の領域には、このような知

見が蓄積していると星野さんは話す。ビ

ッグデータと、こういったいわば「人間

的知見」をうまく組み合わせれば、より

リアルで緻密なストーリーを作ることが

できる。それが星野さんの意見だ。

経済行動とは、もとより人間的行動で

ある。自らを「買い手」の立場に置いて

みれば、自分がいかに気まぐれに、その

ときのフィーリングや状況に応じて購買

決定や商品選択をしているかがすぐに分

かる。そのような人間的行動を、「売り

手」の立場から想像し、仮説を立て、実

行し、検証すること。その素材となりツ

ールとなるのがビッグデータであり、行

動経済学が提供してくれるような人間的

知見である。

高度成長時代、生活者のストーリーの

パターンは限られていた。しかし、日本

が成熟社会を迎えた今日、人々のストー

リーはいよいよ多様化し、いよいよ複雑

化している。その時代にあって、いかに

リアルで、いかに人間への洞察を備えた

ストーリーを紡いでいくか

—。それが、

モノやサービスを売る立場にある全ての

人間に求められているといっていいだ

ろう。

私たちの身の回りのあらゆる機器がネ

ットワーキングされるIoT(Internet

of Things:

モノのインターネット)の時

代が早晩到来するといわれている。そう

なれば、日々蓄積していくデータは一層

加速度的に「ビッグ」になっていくだろ

う。しかし、それを使いこなす適切なス

キルがなければ、ビッグデータが企業の

果実となることはない。そのスキルの一

つが、人間的知見であり人間的洞察で

あることは間違いない。

ることなどがあると考えられます」

 

マーケティングサイエンスを専門とす

る、東京大学大学院准教授の星野崇宏さ

んはそう語る。

インターネットの普及によって、ウェ

ブ閲覧やECサイトでの購買履歴などの

データが膨大にストックされるようにな

ったという事実を、そこに付け加えても

いいだろう。データの母数は、この10年

ほどの間に爆発的に膨れ上がっている。

しかし、蓄積されたその膨大なデータ

のポテンシャルを生かしたマーケティン

グ手法は、まだ確立していないと言われ

ている。生活者の行動をこと細かに示す

データがあるのに、それをどう自社のマ

ーケティング活動につなげていいか分か

らない。それが多くの企業が抱えている

悩みだ。

「重要なのは、そのデータを基にして、

いかに納得感のあるストーリーを作るか

です。そのストーリーがなければ、顧客

の心を捉えるマーケティングを実現する

ことは難しいでしょう」

データを基にしたストーリー作り

—。

それは、数字や断片的記録により構成さ

れる「データ」という抽象的素材から、

「生身の人間の行動」という具体的な像

を描き出していく作業といってもいいだ

ろう。

 

では、そのストーリーを紡ぐにはどう

 

この一年ほどで「ビッグデータ」とい

う言葉を新聞や雑誌で目にする機会が格

段に増えている。生活者の行動に関する

膨大なデータ

—。それがビッグデータ

の最もシンプルな説明だ。もちろん、そ

のようなデータが過去になかったわけで

はない。

「マーケティングの領域では、生活者の

データを企業活動に生かすことはこれま

でもごく当たり前に行われてきました。

しかし、近年になってとりわけデータ活

用に注目が集まっている背景には、経済

産業省や総務省が消費者データの有効利

用を本格的に推進し始めたことや、デー

タを解析するシステムの開発が進んでい

1975年生まれ。博士(学術、東京大学)、博士(経済学、名古屋大学)。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院客員、名古屋大学大学院経済学研究科准教授などを経て2014年4月より現職

ほしの・たかひろ

星野崇宏

さん

東京大学 大学院

教育学研究科

准教授

膨大なデータから

いかに「ストーリー」を紡いでいくか

膨大に蓄積したビッグデータを有効に活用する方法を、現在、多くの企業が模索している。

データ活用のカギになるといわれているのが、「人間に対する洞察」だ。

その「洞察」を行動経済学の知見に求めることを提唱している星野崇宏さんに話を聞いた。

67 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 5: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

 

カルビーの業績が好調だ。スナック菓

子市場における国内シェアが5割を超え

たのは、昨年初頭のこと。連結の売上高

は、この5年でおよそ1・4倍になって

いる。その順調な経営の屋台骨を支えて

いるのが、ロングセラー「カルビーポテ

トチップス」をはじめとするじゃがいも

原料の商品である。

カルビー製品に使われる国産じゃがい

もの量は、年間およそ25・9万トン

(2012年産)。うち、約8割に当たる

17・9万トンが北海道で生産される。北

海道で作られるじゃがいもの量と質が、

事実上、カルビーの経営を左右している

というわけだ。

その原料じゃがいもの調達、貯蔵、品

種開発といった重要な役割を担っている

のが、関連会社のカルビーポテトである。

同社は2004年、北海道で産出するじ

ゃがいもの収量と品質を安定させるため

のデータ収集活動を始めた。

「それ以前、じゃがいも生産のノウハウ

は、ほぼ契約生産農家の皆さんの経験に

依存していました。しかしそれだけでは、

求められる水準の原料を安定的に供出で

きない可能性があります。そこで、植え

付けから収穫までのあらゆるデータを集

めて、収量と品質をコントロールできな

いかと考えたわけです」

同社馬鈴薯研究所栽培技術課の小野豪

朗さんはそう話す。生産現場に足を運び、

自らの五感を駆使してデータを収集する

こから日光が土中に差し込みます。それ

がじゃがいもの緑化の原因となっていま

した。そこで、フィールドマンが北海道

の全産地を調査し、種芋をどのくらいの

深さで植えれば日光が差し込まず、緑化

を低減できるかを明らかにしたのです」

結果、じゃがいもの緑化は大幅に減少

し、緑色のポテトチップスが消費者に届

くこともほぼなくなった。「人力」による

データ収集活動が、製品の品質を安定さ

せたというわけだ。

 

一方、「人力」以外のデータ収集も実践

している。同社は08年、道内全5カ所に

気象センサーを設置し、気温、降水量、

湿度、気圧、風向き、風速、日射量、日

照時間などのデータを自動で収集する仕

組みを作った。ここで得られる気象デー

タと収穫情報を照らし合わせることで、

気候とじゃがいも生育との関係を捉える

研究を進めている。

今後の目標は、フィールドマンが収集

する人力データと、自動的に取得される

デジタルデータを掛け合わせ、より確度

のは、「フィールドマン」と呼ばれる社員

だ。フィールドマンは、北海道全域でお

よそ20カ所を数えるじゃがいも産地をそ

れぞれ担当し、種芋を植える深さ、間隔、

最初に出る芽の本数、肥料の種類と量な

どを事細かに記録していく。病気の兆候

を捉えるのも、彼らの重要な役割だ。

「じゃがいもの生育条件は、畑ごとに異

なります。それぞれの畑のデータを記録

した一種のカルテを作成して、そこから

改善点を洗い出していく作業を現在も続

けています」

フィールドマンによるこの地道なデー

タ収集が大きな成果を発揮した一例が、

「緑化防止」である。じゃがいもには、

日光を浴びると表面に近い部分が緑色に

なるという性質がある。これをそのまま

加工すると、ふちが緑色のポテトチップ

スが出来上がり、その見た目から消費者

のクレームにつながる可能性がある。小

野さんはこう説明する。

「畑の土が乾燥すると、ひびが入り、そ

の高い収量予測を立てていくことだ。

「各産地のデータをベースとし、そこに

変動要因としての気象データを加えるこ

とで、例えば、冷夏の年にはどのような

対策を取ればいいかといったことが見え

てくると考えています」

気象条件が同じでも、土壌や立地条件

により栽培方法が異なる以上、対策法は

個別に立てていかなければならない。

個々の生産者と話し合いながら、よりよ

い生産法を考えていくこともまた、フィ

ールドマンの重要な仕事だ。センサーに

よるデータ収集がどれだけ進んでも、

「人力」が果たす役割がなくなることは

ない。そう小野さんは言う。

「カルビー製品に必要なじゃがいもの量

は、将来的に30万トンになると予測して

います。

今後、生産地でのデータ活用は

ますます重要になっていくでしょう」

老若男女に愛され続けているポテトチ

ップス。データ収集と活用の根気強い取

り組みが、人気商品の品質と、市場への

安定供給を支えている。

生産者専用のWebサイト。生産者への情報発信の窓口だ。気象センサーで取得した情報は、自動的にこのサイトにアップされる

カルビーポテトにてデータの収集、管理、分析などを担当している小野豪朗さん。2006年の入社当時は、フィールドマンだった

▲ 看板商品のひとつ「じゃがりこ サラダ」

▲ 左は「ポテトチップス うすしお味」、右は「堅あげポテト うすしお味」

収穫されたじゃがいもは、カルビーの工場や貯蔵庫に送られる。一年近くにわたって原料を傷まないように貯蔵するのも、重要な役割だ

北海道の十勝地区に広がるじゃがいも畑。備え付けられた気象センサーが、気温や降水量などのデータを自動で収集している

ビッグデータ 人間力

じゃがいもの植え付けや収穫は可能な限り機械化され、効率化されているが(上)、「人力」による作業も多い。じゃがいもの傷んだ部分や緑化した部分を取り除く作業は、現在も人の手によって担われている(左)

1カルビー

地道な「人力」データ収集で人気商品の品質を守る

case study

データ 収集 に人間力を生かす

ここからは、「ビッグデータ」に「人間力」を融合させ、成功している企業の事例を見ていこう。

ビッグデータに人間にしかできない仕事をいかに加えるか—。それにより、膨大なデータは有用なデータに変わるのである。

89 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 6: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

2ウェザーニューズ生活者からの「感測データ」が気象予報の精度を向上させる

case study

ビッグデータ 人間力

 

気象予報はデータ活用が最も進んでい

る分野の一つだ。国内外の観測所から得

られる気温、気圧、風向・風速などのデ

ータをコンピューターにインプットし、

気象の推移をほぼ自動的に算出する「数

値予報」と呼ばれる方法が、現代の気象

予報の根幹を成している。

 

その科学的モデルによる予報を生活者

から寄せられるデータで補完しているの

がウェザーニューズである。同社は、空

や雲の様子を携帯電話のカメラで撮影し

投稿してもらう取り組みを2005年に

スタートさせた。現在は、Webサイト

とスマートフォンアプリ「ウェザーニュー

スタッチ」でデータの収集と情報提供を

行っている。中でも成果を上げているコ

ンテンツの一つが、「ゲリラ雷雨防衛隊」

だ。取締役の森田清輝さんは説明する。

「ゲリラ雷雨が発生しそうな地域を従来

の観測データから割り出し、そこに居住

している方々に雲の写真を送っていただ

きます。その画像を解析することで、雷

雨の危険性が高いエリアを細かく絞り込

んでいくことが可能になります。現在の

科学でゲリラ雷雨をピンポイントで予測

することは不可能であると言われていま

した。しかしこの方法なら、特定の地域

を60分後に雷雨が襲う確率を、ほぼ9割

の精度で言い当てることができます」

 

スマートフォンアプリ「ウェザーニュ

ースタッチ」のダウンロード数は、現在

1000万超。いわば、1000万を超

えるミクロな観測所が全国に点在してい

るということだ。ユーザーは、天気予報

に関する専門的知識がなくても、住み慣

れた地域の天候に異変があれば、それを

感覚的に察知することができる。同社が

「感測データ」と呼ぶその情報が全国か

ら寄せられることによって、科学的観測

だけでは難しいリアルで緻密な気象予測

が可能になる。

「“感測データ”が従来の数値予報を強化

する方法論を今後、確立していきたいと

考えています」

 顧客がホテルに到着したという連絡がインカムでドアマン

から入れば、すぐにフロントに伝えてチェックインの準備

を促す。ロビーで待っている顧客がいれば、声をかけて要

望を聞く。チェックアウトの際は、手続きの進み具合を見な

がらベルマンやドアマンと連携し、車までスムーズに誘導

する─。その全てが、「ロビーマネージャー」の仕事だ。

 この耳慣れない職種を帝国ホテルが設置したのは、2005

年のこと。外資系ホテルに対抗するためのサービス強化策の

一環として設けられた職種である。

「ドアマン、ベルマン、フロント、ゲストサービスといった

持ち場をつなげ、“面”にするのが私たちの仕事です」

 9人いるロビーマネージャーの一人、金井大輔さんはそう

話す。特筆すべきは、全てのロビーマネージャーが「顧客単

位」でサービスを行うスキルを身に付けている点だ。それぞ

れのロビーマネージャーの頭にインプットされている顧客情

報は1000人以上。顔を見れば、即座に名前や好みが想起さ

れ、どのような応対をすればいいかが分かるという。

「お客さまの詳細なデータは、システムでも管理されていま

す。そのデジタルデータと、過去に交わした会話の内容など

の両方を活用することで、それぞれのお客さまに最適なサー

ビスをご提供することが可能になります」

タブレット端末で顧客データを見ながら接客をするという

方法もあり得なくはないだろう。しかし、それでは「自然な

接客」にはならないと金井さんは言う。

「大切なのは、私たちがお客さまを“覚えている”ことです。

顔を見て、お名前でお声掛けをすれば、多くの方々がホテル

のファンになってくださいます。そうや

ってお客さまとホテルの距離を近づけて

いくことが私たちの一番の役割です」

 データと人間力の融合が、他にはない

高品質なサービスを生み出している。

上/到着した顧客に名前で呼びかけ、笑顔で荷物を受け取る。「この顧客にはどのようなサポートをするのが最適か」といった情報も、全て頭にインプットされている下/ロビーでは、常に顧客が声をかけやすい場所に位置取る。ケアが必要そうな顧客がいれば、静かに近寄り声をかける。「声をかけてほしくない」という雰囲気が感じられる場合は、遠くから見守るにとどめる。マニュアルは一切ない。全ては、日々の訓練と経験のたまものだ

右/同社はコンテンツのユーザーを「サポーター」と呼ぶ。写真やコメントが全国のサポーターから連日寄せられる左/オフィスでは、サポーターから送られてきた写真が、エリアごとにリアルタイムで表示される

上/取締役の森田清輝さん。「将来的には、サポーターの皆さんの天気に関する知識が高まり、自ら天気予報ができるようになるのが理想」と話す下/世界中から届く気象データは、コンピューターでほぼ自動的に解析される。現在、この「観測データ」と「感測データ」の融合が目指されている

その究極の形

帝国ホテル・ロビーマネージャー

顧客データの有効活用は、サービスレベルの向上につながる。しかし、接客の現場で実際にサービスを行うのは、

常に生身の人間である。データを血の通ったサービスにつなげて顧客とのリレーションを

強化しているのが、帝国ホテルだ。

「データ 人間力」

ロビーマネージャー発足当初からこの職種を担当している金井大輔さん。初めてのゲストでも、観察し、コミュニケーションをする中で、どのような人かがおおむね分かるという

COLUM

N

千葉・幕張のウェザーニューズ本社にある「ゲリラ雷雨防衛隊本部」。ゲリラ雷雨発生が予測されると、ここからその地域に住む「隊員」にミッションを送り、雲の画像などを収集する

データ 収集 に人間力を生かす

11 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn 10

Page 7: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」な

ど、レストランチェーン約3000店舗

を全国で展開している「すかいらーくグ

ループ」。神谷勇樹さんが一員となった

のは、昨年秋のことだった。コンサルテ

ィング会社を経て、グリーでビッグデー

タを担当してきたデータ分析のプロフェ

ッショナルだ。

 

以前より、すかいらーくではPOS

(販売時点情報管理)データを店舗経営

に生かしてきたが、ビッグデータの専門

家を迎え、データ活用をいよいよ本格化

させた。グループの全店舗から得られる

POSデータは一日数百万件。その膨大

な顧客データをはじめ、過去のキャンペ

ーンデータや提携企業が保有するビッグ

データを、メニュー改善や人員配置の最

適化、マーケティング戦略の立案などに

生かしている。

「データ活用の目的は、お客さまをより

深く理解することに尽きます。しかし、

過去に蓄積したデータだけでは、それを

実現することはできません」

 

神谷さんが挙げるのはこんな例だ。ガ

ストで昨年実施して好評を得た「アメリ

カンフェア」を今年再び展開するに当た

り、新しいメニューの試食調査を実施し

た。その結果、数あるメニューの中で、

ガストの中では高価格帯に属する「ミス

ジステーキ」の人気が突出して高いこと

が分かった。

「過去のデータから見れば、手頃な価格

が、データに「人間力」を掛け合わせる

ことだ。

「人間力には二つの意味があると思いま

す。一つが、経験を基にデータを読む力。

もう一つが、データから見えてきた仮説

を実現させる力です」

 

すかいらーくグループの新入社員は、

全員が一度は店舗での仕事を経験する。

そこでの接客経験が、データを読み取る

際に生かされることになる。

「同じデータを見ても、何を読み取るか

は人によって異なります。その差をもた

らすのが経験の質。お客さまとより深く

接した経験がある人ほど、データを深く

読むことができるのです」

 

神谷さんに店舗での経験はない。だか

ら自身は、店舗経験を持つ他のスタッフ

にデータ活用の方法論や考え方を示す立

場に徹する。結果、接客のスキルとデー

タ活用のノウハウの両方を備えたスタッ

フが育つことになる。

「データ活用のノウハウと接客のノウハ

のメニューを用意することが“正解”で

した。しかしお客さまの声は、やや高め

のミスジステーキを前面に出した新しい

フェアを行うべきであることを示してい

たのです」

 

その声に従って「アメリカンフェア」

を「ミスジステーキフェア」に変えた結

果、昨年を超える売り上げを記録した。

「アメリカンスタイルのメニューを提供

する」という施策自体は誤りではなかっ

たが、どこにフォーカスすべきかが新た

な調査によって明らかになった。これは

そんな一例だ。いわば、顧客の生の声が

過去のデータを補正したというわけだ。

このように、他の要素と掛け合わせるこ

とで、蓄積したデータは力を持つ場合

が多いと神谷さんは言う。特に重要なの

ウを切り離してはいけないと私は考えて

います。接客のプロがデータの活用法を

習得し、データ活用のプロとなっていく。

それが理想的なあり方です」

 

もう一方の「データから見えてきた仮

説を実現させる力」とは、コミュニケー

ション力であり、ネゴシエーション力で

あり、プレゼン力である。

「正しいと思われる方向性をデータが示

していても、“正しさ”だけで人は動きま

せん。その方向に進む意味と、期待され

る成果を根気強く周囲に説明し、納得さ

せなければ、データは絵に描いた餅で終

わってしまいます」

 

データ活用の専門家は、しばしば「こ

うすべきである」といった断定的な論調

で議論を進める。「なぜなら、データがそ

れを語っているのだから」と。しかし、

そのような言い分はビジネスの現場では

通用しないと神谷さんは言う。

「アイデアや仮説は実現に至らなければ

意味がありません。物事を実現させる道

筋を付けるところにこそ人間力が現れる

と言えるのではないでしょうか」

 

すかいらーくに来て約一年。「データに

はビジネスを動かす確かな力がある」と

いう認識が社内に定着しつつあることを

神谷さんは実感している。

「データをより有効に活用することで、

お客さまの姿を一層鮮明にしていくこと。

そこに私たちのこれからのチャレンジが

あると考えています」

3すかいらーくデータ活用に求められる

二つの「人間力」

case study

ビッグデータ 人間力

すかいらーくグループが展開する店舗は全10ブランド。中華の「バーミヤン」、和食の「夢庵」など、ブランドごとにコンセプトが異なる

新入社員の全員が店舗での仕事を経験する。それぞれが現場で得た経験値が、グループの貴重な資産となっている

「アメリカンフェア」から「ミスジステーキフェア」への転換によって、大幅な売り上げ増を達成した

すかいらーくグループで最も店舗数の多いブランド「ガスト」。現在、全国で1300店舗以上を展開している。リーズナブルな価格が特徴

ガストをはじめとする各店舗では、さまざまなキャンペーンを実施している。その実績も重要なデータとなる

マーケティング本部にてデータ戦略のディレクターを務める神谷勇樹さん。「社内のデータ活用のスキルをどんどん上げていきたい」と話す

データ 分析 に人間力を生かす

1213 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 8: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

常務の松波晴人さん。米コーネル大学大学院で行動観察の方法を学んだ。著書に『ビジネスマンのための「行動観察」入門』(講談社現代新書)などがある

 

しかし、私たちが数日間にわたって何

人かのお年寄りと接する中で分かったの

は、次のようなことでした。

 

高齢者の中には、ペットの世話、孫へ

の資金援助、近所への特産物のお裾分け

といった行動に情熱を燃やす人たちがい

る。彼・彼女らは、何かを「してほし

い」のではなく、何かを「してあげたい」

と考えている。彼・彼女らが抱えている

のは、「自分の困りごと」よりも、「人に何

かを提供したい」という思いである──。

 

ここから私たちは、「“高齢者に何かを

提供する”のではなく、“高齢者から何か

を提供してもらう”場を創出することで、

これまでにないサービスが成立するので

はないか」という仮説を導き出しました。

 

このように、対象者と接したり、現場

に足を運んだりする中から細かな事実を

集め、それを解釈し、そこから具体的な

仮説を生み出していくのが「行動観察」

と呼ばれる方法です。

 

従来のマーケティングリサーチと行動

観察の最大の相違点は、対象を知る「深

さ」にあります。行動観察では、対象者

と丸一日行動を共にすることもまれでは

なく、ときには同行が一週間にわたるこ

とも。その間、事実を徹底的に収集しま

す。多くの対象者を調査することは不可

能ですが、たとえサンプルが5人分だけ

だとしても、行動観察では本質的なイン

サイト(洞察)を導くことができます。

 

行動観察によって得られる情報は、ビ

高齢者を対象とした新しいサービスの

アイデアを出してほしい──。もし、こ

のような課題を与えられたら、どうすれ

ばよいでしょうか。多くの人は、最初に

おそらくこう考えるはずです。

「お年寄りは、生活上、たくさんの“困

りごと”を抱えているはずだから、それ

を見つけ出し、その解決を目指すサービ

スを考えればいい」

ッグデータの対極にあるデータと言って

もいいかもしれません。ビッグデータは、

文字通り、データの量が膨大であるとこ

ろに特徴があります。しかし、それぞれ

のデータは断片的で、文脈を欠いている

場合がほとんどです。例えば、「どのジ

ュースがどの店舗でどのくらい売れた

か」ということは分かっても、「なぜその

ジュースを買ったのか」「どのような比較

検討の過程を経て選ばれたのか」という

ことは分かりません。

 

一方、行動観察は、対象者と深く接す

ることで、事実の背後にある文脈をつか

むことを可能にします。人々の行動の裏

にある「なぜ」や「どのように」が把握で

きるわけです。

 

今後は、ビッグデータの「量」と行動

観察の「人間を見る深さ」を掛け合わせ

るデータ活用の方法が進んでいく。そう

私は考えています。その掛け合わせ方に

は、次の2つの方法があり得るでしょう。

  

行動観察の結果から仮説を立て、そ

れを補完するために既存のビッグデータ

を使う。あるいは、新たにデータを取

得する。

 

ビッグデータから傾向や法則などを

読み取り、行動観察でそれを検証する。

行動観察は、観察者の「人間力」が求

められる方法です。観察の過程では、対

象者との信頼関係をつくる力や、共感す

る力が必要です。データを解釈する段階

では、物事を考え続ける探求心が求めら

れます。仮説を作る際に重要なのは、既

存の枠組みにとらわれずに斬新な発想を

生み出す力です。

こうして必要な素養を挙げていくと、

行動観察とは極めてハードルの高い方法

だと感じるかもしれません。しかし、本

質にある要素は実はシンプル。現場に足

を運ぶこと、お客さまとじかに接するこ

と、常識や枠組みにとらわれないこと、

そして、人間に対する興味を絶やさない

こと──。そのような、ごく当たり前の

人間力があれば、誰でも行動観察を実行

することは可能です。

本田技研の創設者である本田宗一郎さ

んは、「研究所は人間の気持ちを研究す

るところであって、技術を研究するとこ

ろではない」と言って、居酒屋に足しげ

く通い、人々の様子をじっくり観察して

いたといいます。そのようなマインドが

あったからこそ、ホンダは人々に受け入

れられる自動車を造ることができたのだ

と私は思います。

データが膨大に収集できるようになっ

た今日でも、ビジネスの基本は、「人間」

をしっかりと見て、確かな気付きを得る

ことである。そう言えるのではないでし

ょうか。

人間の本質を深く捉える「行動観察」という方法

行動観察に求められるのは思い込みや偏見を取り払うこと。一つ一つの事実を丁寧に書き留めていく中から、新しい発想が見える

ワークショップのテーブルにも、写真と言葉で発想を広げる仕掛けが施されている。この空間で、クライアントと共に仮説を練る

行動観察研究所のワークショップルーム。ポジティブな言葉を壁に貼り付け、思考の枠を取り払う雰囲気をつくり出している

12

── 大阪ガス行動観察研究所・松波晴人常務に聞く

人間を徹底的に観察し、分析し、ビジネスのソリューションを考案する─。その「行動観察」の方法で数々の成果を上げているのが大阪ガス行動観察研究所だ。

数字的なデータからは見えてこない、人間の行動の「なぜ」や「どのように」を浮き彫りにするその作業に求められるのもまた、「人間の力」である。

15 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn 14

Page 9: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

株式会社 フォーデック「ファースト・コール・サプライヤーであり続けるのが私たちの願いです」代表取締役社長 沖本光旦さん

広 と々した打ち合わせスペース。「フェース・トゥ・フェースのコミュニケーション」のための場のひとつだ

今年7月に開催した「オフィストレンドフェア」には、過去最高となる1700名以上の来場者が集った。OA機器や文具、オフィス家具などの展示スペースの他、フォーデックの実行委員会が企画した、クイズコーナーやカフェ、展示即売コーナーといったコーナーも用意され、来場者を楽しませた

きずなのマーケ

ティング

文具、紙製品、事務用品、OA機器、オフィス家具、ファンシー商品、ギフト商品などの販売から、事務所や店舗の企画・設計・施行、ネットワークソリューションまで、オフィスの環境づくりや、オフィスソリューションをトータルに行っている。

株式会社フォーデック

込める環境づくりにも力を入れていきたい

と現在制度を整えています」

メーカー、販売店、ユーザーの

輪を広げ、業界全体を活性化

メーカーや販売会社との信頼やきずなを

深め、業界全体を活性化させたい―。フ

ォーデックでは、その思いを具現化するた

めに、取り扱い商材であるOA機器やオフ

ィス家具、文具の総合的な展示フェア『オ

フィストレンドフェア』を9年前に企画し、

例年1400~1500人の来場者を集

めるフェアの運営を一手に担ってきた。

「販売店を通じて商品を提供する私どもの

業態上、ユーザーさまと直接接する機会が

ほとんどなかった。そこで、接点を持つ機

会を設け、ユーザーさまが何に興味を持ち、

どんなことに困っておられるかを知る場を

つくろうと考えたのがフェアを企画したき

っかけです」と、フェアの実行委員長を務

める専務取締役の田坂啓治さんは話す。

例年会場では、メーカーや販売店、ユー

ザーが活発に意見を交換し合う光景が各所

で見られる。7月に行われるこのフェアの

準備のため、4月から文具やOA機器、オ

フィス家具などの各セクションから選出さ

れた実行委員会のメンバーは週一度の会合

を行う。通常業務と並行して行うフェア準

備業務にかかる負担は決して少なくない。

「こうした負担を考えれば、ビジネス的に

結果が見えづらいフェアを続けていくこと

は疑問視されるかもしれない。しかし、長

く続けていくことで、必ず成果は現れてく

るはず」と田坂さんは熱を込めて語った。

販売店がユーザーに商品を実際に見せな

がら情報を提供したり、提案したりするこ

とで、メーカーと販売店、ユーザーの輪が

広がる。そうした交流の場をビジネスにつ

なげ、広島から中国四国、そして業界全体

を盛り上げていくのが目標だという。

こうした機会を通じて「私たちの社会貢

献の姿勢を社内外に積極的に見せていくこ

とも大切」と声を揃えて語った沖本社長と

田坂専務。業界全体のきずなを深め、広島

の街を元気に―。その熱意が同社のたゆ

まぬ努力の原動力となっている。

呼び掛けている。その際に、スローガンと

して折に触れて社員に語ってきた言葉があ

る。それは、お客さまにとっての「ファー

スト・コール・サプライヤー」になること

である。

「ファースト・コール・サプライヤーとは、

『ここに任せたら大丈夫』だとお客さまに

信頼していただき、何かあったときに一番

に相談してもらえる存在のこと。相談を持

ちかけられたら、常に最良の提案をしよう

と、社員には語りかけてきました」

そのために大切にしているのが、フェー

ス・トゥ・フェースのコミュニケーション。

時代が変わっても、人と人とが顔を合わせ、

心を通わせ合う関係の重要性は変わらない

というのが、沖本社長の持論だ。

「社員には、いつも相手にとってベストを

尽くすこと。そして、たとえ何か問題が発

生した際も他責にすることなく、自分に何

ができるかを真っ先に考えることが信頼を

得ることにつながると伝えています」

顧客の信頼を高めようと、社内体制の強

化も進めている。昨年には、支社制から事

業本部制へと大幅な変革にも着手。その狙

いを「専門性の追求」と「顧客満足の向上」

だと沖本社長は説明する。

「多様化するユーザーのニーズにベストを

尽くして応じるには、より一層高いソリュ

ーション力が求められます。事業本部制に

することで、OA機器や文具、家具など、

それぞれの事業部でより専門性を持った人

材を育てることができると考えました。事

業部ごとに、社員がより快適に仕事に打ち

キヤノン製品をはじめとするOA機器や

オフィス家具、文具の販売を通じて、オフ

ィス空間の総合的なソリューションを展開

するフォーデック。広島など中国四国7県

に拠点を置き、地域に密着した営業活動を

行う。社名「フォーデック」は、同社が掲

げる企業理念がベースになっている。

「FORは『FOR you on dem

and

(お客さま

の要望にお応えする)』、Dは『Design

(企

画・設計・プラン・デザイン)』、Eは

『Excellent

(全てにおいて最高にベストな

仕事)』、Cは『Com

munication

(人と人との

コミュニケーション)』を意味します。お

客さまにとって最適なプランを創り上げ、

信頼される企業を目指しています」と代表

取締役社長の沖本光旦さん。

この理念を社員全員で共有するため、同

社では毎年2回、沖本社長自ら行動方針を

フェース・トゥ・フェースで

顧客のニーズにベストを尽くす

●本社/広島市西区商工センター6-9-39●設立/1998年11月(創業1940年)●資本金/2億7566万5500円●従業員数253名(2013年現在)http://www.fordec.co.jp/

代表取締役社長の沖本光旦さん(右)と専務取締役の田坂啓治さん(左)

1617 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 10: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

imaging S

未知なる世界

写真家 竹沢うるま

さん

Page 11: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

EOS 5D MarkⅢ EOS 5D MarkⅡ EF24-70mm F2.8L II USM

〝自分の写真〟を撮らなければならな

い。だが、〝自分の写真〟とは何か。竹

沢うるまにしか撮れない写真とは─。

その問いへの答えを探す旅に出たとき、

彼は32歳になっていた。

長い旅の過程で撮った写真は、35万

点に及ぶ。ここで紹介した作品は、そ

こからの3点である。前ページの写真

は、ボリビアの伝統的な踊りのワンシ

ーン。上の2点は、ブラジルとインド

のラダックで撮影されている。

どの土地へ行っても、そこで暮らす

人々に惹きつけられ、時に共同生活を

送りながらシャッターを切り続けた。

写真に写る人の表情は、自分の心の投

影なのだと竹沢さんは言う。心がその

土地のその場所に自然に調和していれ

ば、相手は彼を受け入れてくれる。そ

れがおのずと表情に表れるのだと。

〝自分の写真〟とは、心を真っすぐに

焼き付けた写真にほかならない。この

世に一つしかない掛け替えのない自分

の心を─。3枚の写真から感じられ

るのは、彼のそんな強い思いだ。

未知のものに全身全霊で接し、それ

を写真として具現化することが、写真

家としての原点だと竹沢さんは言う。

長い旅を終えた今、未知のものへの強

い思いはひとたび彼のもとを去った。

次の「謎」がやって来るのを、今は静

かに待つ。

「一度全てを忘れたところから、まっ

たく新しい何かを生み出していきたい。

そう思っています」

2010年から3年弱にわたって

103カ国を旅した。その長い旅を終

えたとき、本来の自分に戻れた気がし

た─。竹沢うるまさんはそう話す。

「自分がいかに夢だけを見てきたか。

いかに余分なものを背負ってきたか。

そんなことに気付かされました」

写真を撮り始めたのは18歳の頃だ。

たまたま訪れた沖縄の離島で、海の美

しさに心をとらわれた。人生で初めて

体験した南島の海。そこに全身を浸し、

魚や珊瑚礁を間近に見たとき、「ここ

は宇宙だ」と感じたという。

「そこには、僕がまったく知らなかっ

た世界がありました。この世界を持っ

て帰りたい。そう思ったんです」

竹沢さんが水中写真を撮るようにな

ったのは、それからである。

大学在学中にダイビング雑誌の編集

部の門を叩き、その後の3年半、仕事

として海の写真を撮り続けた。フリー

となったのは24歳になってからだ。テ

ーマは海から、風景や人へと徐々に広

がっていった。

迷いは30歳を過ぎた頃に訪れた。

「これまで撮った中に、自分の写真と

本当に呼べるものが一枚でもあるだろ

うか。そんな思いに取りつかれて、居

ても立ってもいられなくなりました」

[図1]モードダイヤルを、〈2〉の「静止画応用撮影モード」に設定しましょう。「MENU」ボタンを押し、一番左のタブを選択します

[図2]3段目にある「アスペクト比」の項 目で、基本の「3:2」の他、「4:3」「16:9」

「1:1」の中から横と縦の比率を選択できます

 

今回のテーマは、写真の横と縦の比率

(アスペクト比)を変える撮影です。

一眼レフでは「3:2」の比率が基本で

すが、これを変更することで、新鮮なイ

メージの作品を撮ることができます。見

慣れた日常風景をかわいらしく際立たせ

たいなら、「1:1」の正方形がお薦め。

プリントしていくつかの作品を並べたり、

額縁内の余白の取り方を工夫したりして

飾るのもいいでしょう。

また、デジタルテレビでおなじみになっ

た「16:9」は、広がりのある景色にぴっ

たり。あえて縦にすると、掛け軸のよう

な作品を撮影することもできます。他に、

コンパクトカメラと同じ「4:3」も選択

可能です。

 

モードダイヤルを〈2〉(静止画応用撮

影モード)に合わせ、「MENU」ボタン

を押し、一番左のタブを選びます。[図1]

 

3段目の「アスペクト比」から、好み

の比率を選択します。[図2]

 

「MENU」ボタンを押して撮影モー

ドに戻すと、選んだ比率に応じて撮影範

囲を液晶モニターで確認できます。[図3]

 

シャッターを押せば、撮影完了です。

 

撮影した後で比率を変更する方法も

ありますが、最初から撮影範囲を決めて

おくことで、目の前の被写体に対する集

中力がアップ。被写体の選び方や構図、

自分の視点が、これまでとはかなり違っ

てくるはずです。

EOS M2を持って旅に出よう! 【今回のテーマ】

横と縦の比率を変えて撮影するEOS学園講師:川合麻紀さん

4 3 2 1

[図3]撮影モードに戻すと、アスペクト比に応じた撮影範囲が表示されます。撮影結果のイメージをつかみやすくなり、便利です

good!

いつもの写真

19

「1:1」で撮影した写真に、後からクリエイティブフィルターを重ねると、より新鮮なイメージに。メニューから「クリエイティブフィルター」を選び、画像を指定します。オリジナル画像も別に保存されるので安心。上段左の「1:1」で撮影したお手本写真も、「トイカメラ風」と「油彩風」処理を施したものです。

クリエイティブフィルターを重ね、一層印象的な作品に

good!

▼マルチアスペクト機能「1:1」で撮影 ▼マルチアスペクト機能

「16:9」で撮影

「1:1」で撮影した写真に

「トイカメラ風」のクリエイ

ティブフィルターを重ね、さ

らにキュートな作品に

EOS学園は、多くの方に写真の楽しさを知ってもらい、表現の可能性を広げるための写真教室です。プロの写真家を講師に招き※、講義と実習による講座を東京校、名古屋校、大阪校で開催。基礎コースから上級者向けコースまで、レベルに合わせて多彩な講座が選べます。「EOS M講座」は同校で開講中。詳細はホームページまで。          (※一部講座を除く)

楽しいフォトライフのための EOS学園 canon.jp/eos-school

【主な撮影機材】

自分にとって未知のものを

具現化したい。それが、

写真家としての原点です。

1977年生まれ。ダイビングの専門誌「ダイビングワールド」のスタッフフォトグラファーを経て、2004年独立。「竹沢うるま」として活動を始める。「うるま」とは沖縄の方言で、「珊瑚の島」という意味。以後、雑誌や広告の仕事と並行して海や島の写真を撮り続ける。2010年から12年12月までの旅の記録は、写真集『Walkabout』(小学館)にまとめられている

たけざわ・うるま

2021 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2013 Autumn

Page 12: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

Vol.7

ITソリューションの

カエル力が、かつてのポケベルのように、その不

自由さをあえて楽しんで工夫することで、

新しいコミュニケーションに欠かせない

ツールとして広がっていったのではない

でしょうか。

――ツイキャスやニコ生などの映像スト

リーミングサービスもコミュニケーシ

ョンツールの一つと言えそうです。

小寺

コミュニケーションは「双方向」

が基本です。マスメディアによる放送の

場合、番組の作り手から視聴者へと一方

向に情報が流れますが、映像ストリーミ

ングサービスでは流した映像に視聴者か

らSNS経由などでコメントがもらえま

すから、双方向のコミュニケーションが

成立しています。

 

映像ストリーミングサービスが何かに

似ていると感じていたのですが、それが

はがきを通じてパーソナリティーとコミ

ュニケーションするラジオだと気付きま

した。ラジオのような「一対多」の情報

発信はハードルが高いと感じるかもしれ

ませんが、多様なWebコミュニケーシ

ョンツールの発達によって、そのハード

ルが非常に低くなっているわけです。

――新たなコミュニケーションツールが

登場し、その使い方も多様化する中、よ

りスムーズなコミュニケーションのため

に重要なポイントは何でしょうか。

小寺

Webコミュニケーションでは映

像や写真が多用されるようになっていま

す。今後はそこからいかに情報を読み取

れるかが問われるようになるでしょう。

文章の読解力は学校で学べますが、映像

や写真を見てそれを解釈する力は、学校

教育の中で身に付ける機会が少ないと思

います。ですから、Webコミュニケー

ション力は、映像や写真を読み解く力を

ユーザーが意識的に身に付ける必要があ

るのではないでしょうか。

 

そのような機会を作るためにも、まず

は新しいWebコミュニケーションに参

加してみることをお勧めします。映像ス

トリーミングサービスを視聴することか

ら始めてもいいでしょう。映像を介した

「一対多」のコミュニケーションになじ

むことができれば、その先には自ら映像

を作って他者とコミュニケーションする

世界も広がるかもしれません。映像を作

る人と見る人が分離していた時代は、も

う過去のものです。

――Webコミュニケーションのビジネス

利用には、セキュリティー面などで課題

もありそうです。ユーザーやサービスの

提供者が注意すべき点を教えてください。

小寺

一番気を付けたいのは、やはり

プライバシーの問題です。SNSや映像ス

トリーミングサービスなど、Webコミ

ュニケーションツールを利用して情報を

発信するとき、「その情報を見られるのは

誰か」を正しく理解することが第一歩で

しょう。例えばFacebookでは、友

達だけに公開するか、一般に公開するか

など、投稿の公開範囲を選択できます。

意識せずに利用している人も多いようで

すが、情報を公開する範囲を目的に合わ

――TwitterやLINEなどのS

NSが普及したことによるコミュニケー

ションの変化をどう見ていますか。

小寺

コミュニケーションでインター

ネットを使うメリットは、時間と空間に

ズレが生じても構わない点にあります。

 

顔を合わせて話せば微妙なニュアンス

も伝わりますから、コミュニケーション

としては直接会うのが一番濃密ですが、

時間的、距離的に難しい場合も多いでし

ょう。この点、電話は空間を共有できな

い相手と時間を共有してコミュニケーシ

ョンできるツールとして普及し、今も重

要な役割を担っています。

 

一方、テキストをベースとしたWeb

コミュニケーションは、時間も共有しな

くて済む手段として広がったと言えるで

しょう。テキストベースのコミュニケー

ションは不自由な点が多いのも確かです

映像や写真を使った

コミュニケーションが

より広がり、誰もが情報の

発信者になれる時代に

さまざまなWebサービスの登場により、

近年、人々のコミュニケーションのスタ

イルが急速に変化しつつある。今後はど

のような方向に向かっていくのか。イン

ターネット利用者の利便性に関して知識

の普及などの活動を行う、インターネッ

トユーザー協会

代表理事の小寺信良氏

にお話を伺った。

相次ぐ新たなツールの登場でWebコミュニケーションは

どう変わっていくのか?

Twitter、Facebook、LINEをはじめとするSNSや、ツイキャス、ニコ生などの映像ストリーミングサービス等の

普及により、近年、コミュニケーションの在り方が大きく変わりつつあります。今後はどのような

可能性が広がっているのかを見ていきましょう。

【 Webコミュニケーションの現在とこれから 】

せて適切に設定することが重要です。

 

一方、サービス提供者は、ユーザーに

情報の公開範囲を分かりやすく示すこと

が求められます。「特定の参加者のみ見ら

れるのか、誰でも見られるのか」「リアル

タイムでのみ視聴できるのか、後から再

生できるのか」「動画などのデータを外部

に持ち出せるのか、サービス内部でのみ

利用可能なのか」といったことを、ユー

ザーが分かりやすく、迷わず設定できる

ツールであることが理想です。便利なだ

けでなく、サービスやツールを利用する

ユーザーがプライバシーやセキュリティ

ーに自然に配慮できるよう、啓発する役

割も担ってほしいですね。

1963年生まれ。編集者としてバラエティー、報道、コマーシャルなどの映像制作を手掛けた後、ライターとして独立。AV機器や放送機器だけでなく、メディア論や子供とITの関係など、ネットやデジタル技術の問題点を掘り下げる執筆・評論活動も行っている。2007年には、一般社団法人インターネットユーザー協会をジャーナリストの津田大介氏と共に立ち上げ、インターネットにまつわる諸問題の解決に向けた活動に取り組んでいる

一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事小寺信良 氏

2223 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

コミュニケーションツールとデバイスがあるんだから

会社に戻らなくても会議くらいできるのに!

Page 13: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

――Web会議システムについて、昨今

はお客さまからどのような相談が寄せら

れていますか。

橋本 

遠隔地とコミュニケーションを取

るため、電話や出張による会議の代替

手段として検討されるお客さまが多いの

はもちろんですが、Web会議システム

で実現できるコミュニケーションの形は

「一対一」「多対多」「一対多」と多様です。

近年は、より幅広いシーンで活用したい

というご相談も増えています。

 

最近特に多いのは、社内教育にWeb

会議システムを使いたいというご要望で

す。集合研修を行うとなると、通常は参

加する社員を一つの拠点に集める必要

があります。しかしWeb会議システム

を使えば、違う場所にいる社員に対して

リアルタイムで一斉に研修を行うことが

可能になります。

安場 

ユニークな例では、全国数カ所に

事業所や営業所を持つお客さまから「採

用面接で活用したい」というご相談も受

けています。地方の拠点で人材を採用

する際、本社人事部も面接を行いたいと

いうご要望でした。人事部の方が多忙で

なかなか地方に足を運べない中、一般的

な無料ビデオチャットサービスも利用さ

れていますが、品質がいまひとつだとい

うことでした。スムーズにコミュニケー

ションが取れなければ面接を受けていた

だく方に悪い印象を与えかねないという

課題をお持ちで、高品質なWeb会議シ

ステムの導入を検討されています。

橋本 

一般に、Web会議システムは出

張費などの削減を目的に導入されること

が多く、実際に大幅なコスト削減を実現

したケースは多数あります。しかし一方

で、「せっかくの出張の機会を有効に使

いたい」という理由で、Web会議シス

テムを導入されたお客さまもいらっしゃ

います。定例会議にはWeb会議システ

ムを使って参加し、それにより捻出した

時間や費用で地方出張の頻度を増やして、

現場と密なコミュニケーションを取りた

いというニーズもあるわけです。業務効

率改善という観点では、Web会議には

本来時間を割くべき業務により多くの時

間をかけられるようになるメリットもあ

ると言えます。

山野 

タブレットによるWeb会議シス

テム利用のニーズも高まっていると感じ

ます。昨年頃まで、タブレットを導入し

た企業ではどのように活用するかがテー

マになっていましたが、現在は活用シー

ンを増やすフェーズに入っており、We

b会議システムについても採用を考える

ケースが増えているようです。

――多様なニーズに対し、キヤノンソフ

トウェアのWeb会議システム「IC3(ア

イシーキューブ)」はどのような価値を

提供しているのでしょうか。

橋本 

近年はWeb会議システムの音声

や画像に、より高い品質を求めるお客さ

まが増えています。機能の多さよりも、

安定してスムーズにコミュニケーション

できることが重視されているようです。

 

実際、他のWeb会議システムの利用

経験があるお客さまの中には、「音声や

画像の品質に不満を感じていた」「機能が

多く操作が分かりにくかった」というご

意見が少なくありません。操作が煩雑で

なかなか接続できず、予定した時間に会

議が始められないということもしばしば

あるようです。使用時にストレスを感じ

るシステムでは、導入しても、いずれ使

われなくなってしまうでしょう。

近年はWeb会議システムの普及が進み、

コスト削減はもちろん、コミュニケーシ

ョンの効率化や活性化も可能になってい

る。キヤノンソフトウェアではどのよう

なソリューションを提供しているのか、

パッケージソリューション事業本部の安

場剛志、橋本史朗、山野雄也がWeb会

議システムについて解説する。

 

その点IC3

は、お客さまから「シン

プルな操作で誰でも簡単に使える」「音声

や画像の品質が高く、一人一人の声が聞

き分けられる」といった評価をいただい

ています。操作に迷わず直感的なユーザ

ーインターフェースにこだわって開発し

ています。

安場 

7月下旬にはさらなる品質向上の

ため、新バージョンをリリースしました。

スムーズなコミュニケーションの妨げと

なる音声の遅延をこれまで以上に少なく

したのが大きな改善点で、従来よりさら

に自然なコミュニケーションが可能にな

ったと自負しています。

橋本 

この他にIC3

を導入したお客さ

まからよく聞くのは、「Web会議システ

ムの利用シーンが広がり、社員の利用頻

度も上がった」という声です。ある企業

では、東日本大震災の発生時、真っ先に

IC3

を立ち上げたと伺いました。電話

やメールと並ぶコミュニケーションツー

ルとしてIC3

が定着していることがう

かがえるエピソードだと思います。

山野 

IC3

は、導入企業のニーズに合

わせ、ソフトウエアを自社運用するサー

バーにインストールして専用システムと

して利用いただくオンプレミス型と、サ

ーバーのご用意が不要な月額利用のAS

P型がお選びいただけるのも特徴の一つ

です。また、HTTPS通信(SSL暗

号化)に標準で対応しているので、イン

ターネット環境の会議も安心して行うこ

とができます。

――5月にはiPad用アプリケーショ

ンの提供が開始されました。

橋本 

タブレットは、キーボードを使用

するパソコンと比べてアクセスが容易

なのが特徴です。iPad版ではその利

便性を生かし、シンプルなユーザーイン

ターフェースにこだわって必要な機能を

一画面に収めました。会議への参加は2

タッチで、会議参加後の資料共有や画

面変更は1タッチで操作可能です。

iPad版を採用された建設会社では、

これまで工事期間中の現場でテレビ会議

システムをレンタルしていましたが、現

在は社員がタブレットを携行し、IC3

で本社とコミュニケーションを取ってい

るそうです。

――今後のIC3の開発について、展望

を聞かせてください。

安場 

Web会議と実際に人が集まって

行う会議では、どうしても音や雰囲気の

伝わり方が異なります。マイクとスピー

カーを通すと、空調音や携帯電話の着信

音などの雑音が直接耳にするよりも大き

く聞こえ、不快に感じることもあるもの

です。そうした違和感を軽減し、より自

然で臨場感のあるコミュニケーションを

可能にしていきたいと考えています。

橋本 

もちろん、映像の品質も向上させ

ていきたいと考えていますし、タブレッ

トを利用した新しいワークスタイルの提

案も考えています。映像によるコミュニ

ケーションの可能性を、これからも追求

していきたいですね。

PRODUCT BRIEF

使いやすさと音声品質で高い評価を受けるWeb会議システム

「 IC3(アイシーキューブ)」

パソコンはもちろん

タブレットでも利用可能

Webコミュニケーションを

ビジネスでも活用する

左からキヤノンソフトウェア(株)のパッケージソリューション事業本部で、Web会議システム「IC3(アイシーキューブ)」の提供に携わる安場剛志、橋本史朗、山野雄也

パソコン、タブレットともに、一つの画面内に必要な機能を収めたシンプルかつ直感的に操作できるユーザーインターフェースを搭載している

Web会議システム「IC3(アイシーキューブ)」には自社サーバーで運用するオンプレミス型と月額制のASP型がある

2425 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 14: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

 

次は、考えたアイデアを出し合い、新し

い商品やサービスに昇華させる段階だ。立

派な会議室で、中央に座った上司が「皆さ

んのアイデアを聞かせてください」という

光景も見られるが、そんな肩に力が入った

状態では難しい。アイデアが出てくるのは、

脳がリラックスしているとき。まるで、お

化けのように、アイデアの出やすい場所や

環境がある。だから、いかに出やすい場を

つくるかが大切なのだ。

 

例えば、服装。思い切ってTシャツ、G

パンで集まってもいいだろう。Gパンを履

くとアイデアが出るわけではなく、Gパン

だと椅子ではなく、地べたに座ることもで

きるからだ。座り込んだり、寝そべったり、

歩き回れる環境も理想的。そして、一番大

事なのは心をオープンにすること。会議の

前に、参加者の心を溶かす仕掛け「アイス

ブレーク」を用意するといいだろう。例え

ば、今日の会議は全員あだ名で呼ぶと決め

る。親密な仲間同士のような雰囲気なら、

発言もしやすい。

もうひとつのポイントは、部長や課長な

ど、場を仕切る人の役割だ。腕組みして

「君のアイデアを聞こうか」といった態度

は、絶対ダメ。服装もリラックスした格好

が好ましい。会議が始まったら、自ら率先

して「こんなこと言うと恥ずかしい」と思

われそうなアイデアを出す。そうすれば、

必ず場は和むだろう。

会議が始まったら、気を付けたいのは、

どんなアイデアにも「ダメ」とは言わない

こと。新しい価値をつくる場であるのに、

今までの価値観に基づいた「ダメ」という

意見には意味がないからだ。

アイデアとは、決して独創的なものを言

うわけではない。心の中にたくさんあるタ

ネをいかに上手にすくい出すのか。それが

出やすい環境をつくれば、きっとアイデア

は次々と飛び出してくるはずだ。

れ持ち帰ろう。プリントして持ち歩き、時

間があるときに眺めて気付いたことを書き

留めておいてもいいだろう。

 

次はアイデア出しだ。基本的に、アイデ

アは本数が大切。百本ノックと言ってもい

いほどで、まずは思いつくままに出してい

く。注意したいのは「これいいかも!」と

いうアイデアが出たとき。「これでいい」と

思ったら終わり。脳はサボるのが大好きだ

から「出た」と思ったらもう働かない。だ

から、知らん顔して出し続けるのが大事。

判断するのは後でいいのだ。例えば、会議

までに七日間あったら四日間はアイデアを

出し続ける。良しあしの判断はしない。そ

して、五日目はお休み。そこで頭を切り替

える。残りの時間は、削る作業。五十本出

して一本いいアイデアがあればいい方だ。

アイデアが出ないとき、どうしたらいい

のだろうか。答えは簡単。「アイデアは出て

当たり前」と思い込むこと。「アイデアが出

ない」と思ったら最後、いくらうなっても

何も出ないからだ。できないと考えた時点

で思考にブレーキがかかり、脳は働かなく

なる。「アイデアなんて、いくらでも考えら

れる」そう思っていれば、必ず出てくるのだ。

ただし、その前の準備は必要だ。準備と

は、既存の商品やサービスが持つ価値、市

場性、歴史などの「ファクト(本質)」を徹

底的に洗い出すこと。「なぜ人はこの商品

(サービス)を使うのか」「いつ使うのか」

「世界各国ではどのような位置づけなのか」

「どんな歴史があるのか」―と、基本に立

ち返る。既存の価値を理解できなければ、

新しい商品やサービスの価値を見つけられ

るはずがないからだ。

 

この「ファクト」出しは、一人よりチー

ムでやる方が効果的だ。他人の着眼点に刺

激され、思いも寄らない視点を得られるか

らだ。ここで有効なのが、全員が見られる

大きなホワイトボードや模造紙。そこに、

出てきた意見を全て書き出していく。最初

は黒で書き、いっぱいになったら赤、さら

に意見が出たら、その隙間に緑で書くなど、

三色ほどのペンを使うといいだろう。ポイ

ントは、この時点では何もえり好みしない

こと。これを基に、数日から1週間後、新

企画のアイデアを持ち寄る。そのためには、

このホワイトボードの写真を撮り、それぞ

1950年、愛知県生まれ。エージ―、博報堂、レオバーネットを経てJWトンプソンへ。2006年の独立以来、幅広いカテゴリーでブランディングを手掛ける。2001年からネスレ日本の「キットカット」を担当し、受験キャンペーンなどの戦略を開発、各国広告賞を受賞。『ズラす!思考』(あさ出版)など著書多数

宇佐美 清さん

取 材 協 力

ブランディングディレクター

売 れるモノに は 理 由 が あるわ け

部長がアロハで会議に出れば、

きっとアイデアが溢れだす

「アイデアが出ない」と思った

瞬間、脳は思考を停止する

アイデア今 回 のテーマ

ブランディングディレクター 宇佐美 清 さん

リラックスできる服装と場所を選ぶ

会議中はあだ名で呼び合うなど、意見を言いやすい環境をつくる

相手の意見を否定する言葉はNG

場を仕切る人が率先して心をオープンにし、自分をさらけ出す

で意識したいポイント企画会議

1

3

4

2

アイデアなんて、

誰の中にもある。

ポイントは、

準備することと

出やすい場を

つくること。

第 4 回

26 C-magazine 2014 Autumn27C-magazine 2014 Autumn

Page 15: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

「プロジェクションマッピングというと、

建物に投写した映像が動くものをイメー

ジされる方が多いかと思いますが、それ

はあくまでも一つの形。今回、企画・演

出・制作を行った『ナイトアクアリウ

ム』では、これまでとは違う使い方を示

すことができたと考えています」

 

そう話すのは、2012年に復元され

た東京駅丸の内駅舎を使った作品など、

数々のプロジェクションマッピングを手

掛けてきたN

AKED

Inc.

の代表を務める

村松亮太郎氏だ。新江ノ島水族館の開業

10周年特別企画にもなっている「ナイト

アクアリウム」を「新しいステップ」と位

置付けているという。

 

屋内で行っているだけでなく、主役で

ある海の生物と映像を融合させることで

展示を引き立てたり、人感センサーを使

ったインタラクティブな要素を取り入れ

たりといった点がその“新しさ”だ。

「単に“映像を見る”のとは違う感覚が

ある。エンターテインメントの世界にと

どまらない広がりがあるように感じてい

ただけると思っています」

 

見るものを圧倒する展示だが、その実

現には屋内ならではの難しさがあった。

「屋外でのプロジェクションマッピング

にも、遠くに光を投写するための強い光

が必要になるなど難しい点があるのです

が、映像の近くまで寄って見ることにな

る屋内のプロジェクションマッピングに

は、また違った難しさがあります」

 

まず考えなければならないのは、プロ

ジェクターをどこに設置するかだ。

「水族館という限られた空間ではスクリ

ーンになる壁や床までの距離が短いため、

大きな映像を投写するのが難しい。また、

映像に来館者自身の影がかかってしまっ

ては映像への没入感が薄れてしまうので、

来館者より高い位置からシャープで歪み

のない映像を投写しなければならない。設

置場所に関する条件はとてもシビアです」

 

他にも、複数のプロジェクターからの

映像を組み合わせて大きな映像を作れる

こと、発生する熱を逃して長時間の安定

的な運用ができることなど、村松氏はさ

まざまな点を挙げていく。

 

館内に設置されたプロジェクターを見

ると、説明の意味がよく分かる。新江ノ

島水族館名物の大水槽に投写される

1000インチ以上の映像は、スクリー

ンからわずか3メートルほどの距離にあ

る4台のプロジェクターから投写された

映像を合成している。廊下の壁面に投写

されるインタラクティブな映像は、1メ

ートルほど後方の天井から斜め下に急角

度で投写されている。設置条件が厳しい

ことは一目で分かる。だからこそ、プロ

ジェクターの選択がポイントになった。

 

今回の展示で使われているのは、いず

れも「PO

WE

R

PRO

JECT

OR

」のLCOS

シリーズだ。

「中でも短焦点モデルの『W

UX400ST

』に

「ナイトアクアリウム」の企画・演出・制作を行った映像クリエーター集団NAKED Inc.代表の村松亮太郎氏。これまでさまざまなプロジェクションマッピングのプロジェクトに携わってきたが、室内でのプロジェクションマッピングには屋外とは異なる難しさがあったという。特にプロジェクターに求められる要求は高く多様で、「キヤノンの『WUX400ST』がなければこの展示はできなかった」と話す

最新の映像表現を

支える

美しさ・使いやすさをキーワードにラインアップを展開しているキヤノンのプロジェクター。レンズ交換・レンズシフトに対応した大会議室向けモデル、コンパクトなボディーにレンズシフト機構を搭載した短焦点モデル、中会議室向けに自由な投写を実現したコンパクトな高輝度・高画質のシステムユースモデルや大音量スピーカー搭載モデル、多彩な用途で使用できる超短焦点モデル、ビジネスやホームユースの新たなニーズに応えるLEDモデルがラインアップされている。会議室やセミナー会場などのビジネスユースや教育機関、研究施設など従来の利用シーンだけでなく、プロジェクションマッピングやデジタルサイネージ、各種シミュレーターなど多様なニーズに対応している。

POWER PROJECTOR【パワープロジェクター】

WUX400ST

会議室やセミナー会場といったビジネス現場での

利用はもちろん、商業施設でのサイネージやエン

ターテインメントなど、さまざまな領域へとプロジェ

クターの利用シーンが広がっている。話題になるこ

とが多い最新の視覚映像演出である「プロジェク

ションマッピング」も、新しい活用領域の一つだ。そ

んなプロジェクター市場で、高い光学技術が生み

出す高画質を特徴とし、設置性の高い短焦点レン

ズシフトモデルやレンズ交換式モデルなど、多彩な

ラインアップを擁するのがキヤノンのプロジェクター

「POWER PROJECTOR」シリーズだ。

28 C-magazine 2014 Autumn29C-magazine 2014 Autumn

Page 16: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

出合わなければ、今回の展示は実現しな

かったでしょう」

 

そう話す村松氏が選んだ「W

UX400ST

とは、どのようなプロジェクターなのだ

ろうか。

既成概念を

取り払った開発

プロジェクターとひとくちに言っても

さまざまなタイプがあり、それぞれに特

徴がある。例えばホームシアター用途と

して使われる製品と、会議室などのビジ

ネスの現場で使われる製品では、重視さ

れるポイントが違う。また、映像をより

大きなサイズで投写するには、サイズに

た製品を開発してきた。市場のビジネス

向けプロジェクターの多くは、心臓部と

もいえる映像パネルに「透過型液晶」を

採用したものや、DMDを採用した

「DLP方式」だが、キヤノンのプロジ

ェクターでは、一部の機種を除いて

「LCOS(エルコス)」と呼ばれる、画

質を重視した反射型液晶パネルを採用し

比例した投写距離が必要になるが、それ

では設置の容易性など使い勝手が悪くな

るため、広角レンズを搭載して投写距離

を短くした「短焦点」「超短焦点」といっ

たモデルも存在する。

「WU

X400ST

」はビジネスはもちろんの

こと、シミュレーションやプロジェクシ

ョンマッピングなどにも使える、短焦点

プロジェクターだ。

「ビジネス市場に向けた機種であること

は間違いありませんが、われわれとして

は既成概念を取り払い、新しいジャンル

の製品を作り出すつもりで開発しました」

 

そう語るのは「W

UX400ST

」の商品企

画に携わったキヤノンのPJ

事業推進セ

ンター専任主任の山内悠だ。主に教育市

場向けのホワイトボードへの投写に特化

した、明るさや解像度、設置性といった

機能よりも比較的価格が優先される超短

焦点モデルとはコンセプトが異なる、「キ

ヤノンにしか作れない製品」を目指した。

「具体的には、美術館、博物館、医療分

野、シミュレーション用途をターゲット

とした、明るさ、高精細といった画質に

こだわりながら、コンパクトで設置性に

優れた短焦点プロジェクターです」

 

そう山内は簡単に話すが、その実現に

はさまざまな技術的な壁があった。

逆の発想で

問題を解決する

 

キヤノンはこれまでも、画質を追求し

ている。スクリーンに投写した画面のド

ット感やちらつきの面で他の方式に対し

てメリットがある。

 

ただし、LCOSを使えば高画質のプ

ロジェクターができるわけではない。プ

ロジェクターを構成する部品には相反す

る要素が多数存在するためだ。その一つ

が“明るさ”と“画質”の両立だ。

「WU

X400ST

」の光学部分、中でも「投

写光学系」と呼ばれる、プロジェクター

からスクリーンへ投写するレンズの開発

を担当した、ICP第一開発センターの

市村純也は言う。

「プロジェクターのレンズは、光の通る

向きこそ逆ですが、カメラのレンズと構

造は同じです。ですから投写される映像

の光量を上げるためには、レンズのF値

を小さくするのが一般的です。ただし、

F値を小さくするとレンズの基本性能は

下がってしまいます。特に中心から離れ

た周辺部分、つまり映像の四隅が流れた

り、シャープネスが失われたりするので

す。短焦点の『W

UX400ST

』は、焦点距

離8.8㎜という広角レンズを採用している

ため、周辺部分の画質維持はそもそも難

しいのですが、プレゼンテーションで四隅

の文字がぼけて読めないようでは話にな

りませんから、画像劣化は許されません」

 

さらに、「W

UX400ST

」には複数台の映

像を組み合わせて一つの映像を作る「エ

ッジブレンディング」の機能が搭載され

ているため、周辺部分の画質が低いと境

目になる映像の不自然さが際立つことに

なり、プロジェクションマッピングのよ

うな用途で使いものにならない。

 

では、どのように明るさと画質を両立

させたのか。それは、逆転の発想と言え

る意外な選択だった。「プロジェクターの

構成部品を全て内製しているキヤノンで

なければできない方法」と前置きをして

から、市村が続けた。

「あえてF値を大きく、つまりレンズを

暗くしました。このクラスではF

1.7程度

が一般的なのですが、それをF

2.7まで絞

って画質を高めています。F値を大きく

することで被写界深度も深くなり、ピン

ト調整も楽になります。美術館の展示ス

ペースなど、スクリーンや壁が湾曲して

いるような場所でもピントが合わせられ

るメリットも生まれます」

 

明るさの問題は、どのように解決した

のだろうか。

「プロジェクター内部には、ランプから

発光された光の向きを揃え、パネルに均

一に照明する『照明光学系』と呼ばれる

仕組みがあります。従来からある『AI

SYS(エイシス)』という技術をさらに発

展させ、光の減衰を最小限に抑えること

で十分な光量が得られるようにしました」

 

光学系のブラッシュアップによっても

たらされた明るさと画質の両立。このこ

とは、他の部分にもメリットをもたらし

ている。それが熱の問題だ。

熱との闘い

「WU

X400ST

」の筐体などメカ部門を取り

まとめたPJ

事業推進センター主任研究

員の田中秀知は、熱は厄介な問題だと語る。

「プロジェクターの内部には、有機系材

料を使った部品などの熱に弱い部分があ

り、きちんと排熱をしないとさまざまな

悪影響をもたらしてしまいます」

 

それを回避するために、筐体を大きめ

に設計して排熱ファンを高回転させるこ

とで対処することもできるが、安易な大

型化や排熱ファンの騒音はプロジェクタ

ーの使い勝手を損なう。

「最初に目標とするサイズと搭載する機

能を聞いたときは、“無茶を言わないで

反射型液晶の「LCOS」パネルを使ったプロジェクターが、透過型液晶のLCDプロジェクターと比べて高画質を実現できる理由は、投写する映像が滑らかで“ドット”を感じさせない点にある。透過型液晶は光源が液晶パネルの後ろにあり、光を「透過」させるため、液晶のドット間にある配線部分が格子状に映し出されてしまう。反射型液晶の「LCOS」パネルでは、光を配線部分の前にある鏡で反射させるため、映し出される配線部分の格子を極小に抑えることができる。

「LCOS」パネル

プロジェクターの内部には、ランプから発光された光をパネルに均一に照明する「照明光学系」と、パネルに表示された画像をスクリーンに拡大投写する「投写光学系」の、大きく分けて2種類の光学系が収められている。いずれもキヤノンが一眼レフカメラ用レンズなどの開発で培ってきた高度な光学技術が生かされている。

プロジェクター内部の「光学系」

「WUX400ST」の開発に携わったメンバー。左から、筐体などのメカ部分を担当したキヤノンPJ事業推進センターの田中秀知、商品企画を担当した同PJ事業推進センターの山内悠、投写レンズの設計を担当した ICP第一開発センターの市村純也

神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館で開催されている「ナイトアクアリウム」。大型水槽の前に設置した半透明スクリーンに映像を投写したり(上)、水槽の周囲の壁に映像を投写したり(左上)、さらには通路の壁面には人の動きに反応するインタラクティブな映像作品(左ページ右上)を投写したりなど、既存の展示空間と映像の融合による新しい水族館での体験を提供している

投写光学系

LCOSパネル照明光学系

3031 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 17: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

披露宴会場での360度投影による演出の最大の効果は、出席者全員が共有しているような演出ができる点にある。席によって見にくいということもなく、式に一体感が生まれて参加者の感動が深まるという

32

くれ”と本気で思いました」

 

そんな無茶を、田中は設計をいちから

見直すことで実現した。

「各パーツの設計者にあらためて熱対策

をしてもらい、その上でダクトの効率化

を図ったり、隣り合うパーツが熱を打ち

消しあうような配置にしたりすることで、

コンパクトで低回転のファンでも効率良

く排熱できる工夫をしました」

 

コンパクトな筐体の中に、整然と収め

られたパーツ。そこには熱の逃げ道が巧

妙に組み込まれている。

「キヤノンには、複写機など内部に熱源

を持つ機器の設計ノウハウが蓄積されて

いることも大きな要素でした。簡単では

ありませんが、開発者の地道な作業の積

み重ねで実現しました」

使い勝手を上げる

「切り札」

 

高画質・コンパクトで設置が容易な

「WU

X400ST

」。その特性をさらに生かす

のが「レンズシフト機能」だ。通常、高

い位置に画面を投写する場合ではプロジ

ェクター本体を傾けるのが一般的だが、

映像が台形に歪んでしまう。しかし、レ

ンズシフト機能を用いると、投写画面を

歪ませることなく画面の位置を動かすこ

とが可能となる。

「WU

X400ST

」は最大レンズシフト量が

75%と大きいため、会議室のテーブルの

下に置いても、椅子に座った人の真正面

にゆがみのない映像を投写できる。

「レンズシフト機能を使わず、デジタル

処理で補正することもできますが、映像

の補完をするため画質が劣化します。想

定している利用シーンを考えると、安易

な画質低下を許容することはできません

でした」(山内)

 

では、まったくデジタル処理を行って

いないのかというと、そうではない。画

質の劣化を補正するためではなく、より

見やすい画像、より自然な画質を実現す

るため、デジタルカメラの画像処理エン

ジンである「DIGIC(ディジック)」の

流れをくむ技術が生かされている。これ

によって映像の中身を自動的に判別して、

明るさや鮮やかさをコントロールしたり、

可読性が求められる文字のような部分は

エッジを立てて際立たせ、人物の肌など

は滑らかにしたりといった処理が可能に

なった。

 

EFレンズとも関係の深い光学技術と、

DIGICの流れをくむ画像処理、さら

に内部に熱源を持つ複写機などの経験が

生きる熱処理の技術。「W

UX400ST

」は、

キヤノンの強みを突き詰めることで完成

した一台だといえる。

新しい発想での

マーケティングを

ナイトアクアリウムで、屋内でのプロ

ジェクションマッピングという新しい映

像表現を実現する原動力となった「W

U X

400ST

」だが、エンターテインメント分

野だけを市場にした機種ではない。コン

パクトで設置性が高く、高画質という

「WU

X400ST

」の特徴は、会議室やセミ

ナー会場でのプレゼンテーションなどの

ビジネス用途でも生きる。

 

キヤノンマーケティングジャパンのオ

フィスデバイス企画本部ビジュアルソリ

ューション企画課長の森本晃二は、マー

ケティング上の狙いを語る。

「キヤノンのプロジェクターですから、

強みはやはり高い光学技術が生み出す画

質の良さです。それに加えてわれわれキ

ヤノンマーケティングジャパンには、全

国各地でパートナーの皆さまと共につく

り上げてきた販売・サポート網、そして

信頼関係があります。この強みを生かし

て進めているのが、事務機でキヤノン製

品を選んでいただいている既存のお客さ

まに、『プロジェクターもキヤノンで』と

言っていただくことです」

 

同じくビジュアルソリューション企画

課主任の門安博は、そのための具体的な

要望を開発チームに伝え、どのような製

品にするか激しい議論をしてきたという。

「その結果、『W

UX400ST

』は作り手と売

り手の考えをうまく重ね合わせることが

できた、重要な機種だと自負しています。

コンパクトで設置する場所を選ばず、ク

オリティーの高い映像を投写できる。そ

のことがビジネスの現場で武器になるこ

とを顧客に訴えていきたい」

 

一方で、プロジェクションマッピング

をはじめとする、新しいプロジェクター

の利用シーンから生まれる市場の開拓も

重要になると感じているという。

「ネイキッドさんのようなクリエーター

が、まず『W

UX400ST

』の良さを見つけ

て、話題になるような使い方をしてくれ

た。今後も商業施設でのサイネージや各

種シミュレーターなど、プロジェクター

の利用シーンは広がっていくでしょう。

これからは、われわれからもさまざまな

提案をしながら、新たなニーズと市場を

切り開いていきたいと考えています」

 

そんな門安の言葉通り、従来の枠を超

えたニーズが広がりつつある。

 

その一例が、ハイアットリージェンシ

ー大阪での利用法だ。導入の経緯を婚礼

部部長の可野茂久氏は次のように話す。

「厳しい競争の中、他の結婚式場を上回

る魅力的なサービスを提供しなければと

考え、キヤノンのプロジェクターを利用

して壁4面に映像を映す360度投影の

演出を導入しました」

 

披露宴会場の天井には12台のプロジェ

クターが設置され、四方の壁に映像が投

写される。森、桜、紅葉、摩天楼、キュ

ーピッドなどの映像が流れ始めると、そ

こは経験したことのない異空間だ。

「映像が映し出されると会場に一体感が

生まれます。この感動を言葉で伝えるの

が難しいのですが、体験した人から口コ

ミで広がりました。下見に来て感動のあ

まり泣き出す人もいるほどです」

 

映像素材は制作会社の協力のもと、季

節ごとに内容を見なおす。披露宴会場自

体はシンプルな作りのまま、投写する映

像を数多く用意して更新し続けることで、

ニーズの変化に継続的に応えられる空間

になった。今後は“空気感”まで表現で

きるような4K対応プロジェクターの登

場を期待しているという。

「ビジネス用途はもちろん、こうした新

しい市場も開拓して、3年でキヤノンの

主力製品の一つに成長させたい」

 

森本がそう語るキヤノンのプロジェク

ターの世界は、新しい段階に踏み出そう

としている。

キヤノンマーケティングジャパンのオフィスデバイス企画本部で、「POWER PROJECTOR」シリーズの販売企画を担当する森本晃二(右)と門安博(左)

ハイアットリージェンシー大阪では、キヤノンのプロジェクターを使い、結婚式用の披露宴会場の壁4面にさまざまな映像を映し出す

画質と並ぶ「WUX400ST」の特色が、高い設置性を実現する調整機能だ。本体そのものがコンパクトであることに加え、テーブルの下に置いても座った人の真正面にゆがみのない映像を投写する「レンズシフト機能」もその一つ。利用者から離して設置できるため、冷却ファンからの排気や音を避けられるというメリットもある

ハイアットリージェンシー大阪婚礼部部長の可野茂久氏は

「他の結婚式場を上回る魅力的なサービスを提供しなければと考え、360度投影を導入しました」と話す

3233 C-magazine 2014 AutumnC-magazine 2014 Autumn

Page 18: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

 日本三大瓦産地のひとつ、石州瓦。島根県西部の石見地方で作られているこの屋根材が、海外からの注目を呼んでいる。何よりの魅力は、

100年以上は使える耐久性だ。屋根材は絶えず雨や雪にさらされている。瓦には目では見えない大きさの細孔が存在し、そこに水が浸入する。浸入した水が冬に凍結と融解を繰り返す中で、瓦は徐々に劣化する。しかしながら、石州瓦は、水が浸入する細孔が少ないのだ。

「素材を形成する粒子が加熱により結合することを焼結といい、一般に温度が高いほど焼結が進行し、細孔は少なくなります。他産地の瓦の焼成温度は1000~1150℃ほどですが、石州瓦は1200℃。そのため焼結が進行し、凍害と塩害に強い瓦となるのです」(石州瓦工業組合)

 中国や台湾の他、東南アジアにも輸出しているが、中でも石州瓦を高く評価するのがロシアの人々だ。ウラジオストク、サンクトペテルブルクで特に人気を集めているという。 石州瓦の産地の中心である江津市とロシアは実のところ、“奇縁”で結ばれている。それは日露戦争中の1905年、日本海海戦で被弾したロシアの特務艦が江津市沖に沈没した「イルティッシュ号投降事件」。乗組員たちが武器を海に投げ捨てるのを見るや、地元の人 は々果敢に海に飛び込み、彼らを助けた。以来、この地では毎年「ロシア祭り」が開かれ、亡くなった乗組員の慰霊碑も建てられている。市民レベルの交流も続く中、近年は交易も活発化。ウラジオストクで開いた島根県産品の見本市に出品された

C-magazine 2014 Autumn

冬ともなればマイナス50℃を下回る地域すらあるロシアで、日本の石州瓦が珍重されている。寒さにも塩害にも耐える卓越した耐久性は、1200℃を上回る超高温で「焼き締める」からこそだ。

100年壊れない瓦。極寒のロシアで活躍「石州瓦」

Russian Federation

石州瓦に現地の建材商社が目を付け、2007年から本格的な輸出が始まった。

「初めは日本から職人が出向いたものでしたが、今では技術を学んだ現地の方が施工しています。少々値が張るせいか富裕層のステータスシンボルという一面もあるようです」

「赤瓦」とも呼ばれる石州瓦だが、近年は色や形状の選択肢も豊富で洋風建築にも合う。マイホームの新築やリフォームを考えている方は候補に加えてみては!?

MAXIFY MB5330

PIXUS MG7530

ぺんてる株式会社とキヤノンMJは「校舎の思い出プロジェクト」を2014年6月28日より開始しました。

校舎の改修や改築などの理由により、今まで通ってきた校舎で卒業式を迎えることができない生徒のための思い出づくりを、両社それぞれの得意分野を生かしてサポートしていきます。

絵の具やクレヨンで校舎内の壁にクラスごとに決めたデザインを描き、児童が「広報カメラマン」となって制作過程を撮影し、フォトブックにして思い出を残します。6月28日に実施された豊島区立池袋第三小学校を皮切りに、東京近郊の小学校から順次実施していきます。

キヤノンは、家庭用モデル「PIXUS MG7530/ MG6730/MG5630/ iP110」の4機種と、ビジネス向けモデル「MAXIFY MB5330/ MB5030/ MB2330/ MB2030/ iB4030」の5機種を新たに発売します。新しいPIXUSシリーズは、PIXUS MG7530に搭載された、スマホを本体にかざすだけで選んだ写真プリントができる「PIXUSタッチ」をはじめとして、スマートフォンやタブレット、クラウドサービスとの連携が強化されています。これまで以上に、簡単に楽しくプリントできる環境を提供します。

ビジネス向けインクジェットモデルの新しいブランドとして投入されたMAXIFYシリーズは、高い生産性・高画質・経済性を兼ね備えています。

Nemetschek Vectorworks, Inc.が開発した3D CADソフトウエアVectorworksの国内独占販売を行っているエーアンドエー社が、キヤノンMJグループに加わりました。これにより、キヤノンMJグループはこれまで積極的に推進してきた機械系CAD分野に加え、建築・意匠系分野においても3D CADを活用したソリューション展開が可能になりました。

今後もキヤノンMJグループは、MRシステム「MREAL(エムリアル)」や、3Dプリンターをはじめとした優れた3D関連商品・サービスを取り揃え、多様な販売チャネルを活用することで、さまざまな業種や分野で3D関連ビジネスを強力に推進していきます。

キヤノンMJとキヤノンが特別協賛する、第21回全国高等学校写真選手権大会(写真甲子園2014)の本戦が、“写真の町”北海道東

川町で開催されました。8月5日より8月8日まで行われた本戦に出場したのは、初戦審査会(6月に開催。521校が参加)を勝ち抜いた全国8ブロックの代表。各校とも、憧れの舞台で日ごろ鍛えた写真の腕を披露し、熱戦を繰り広げました。今年の大会で全国521校の頂点に立ったのは、中部・東海ブロック代表の愛知県立津島東高等学校です。

キヤノンMJとキヤノンは写真文化の醸成を願い、未来を担う高校生たちの創造力や感受性をサポートすべく、第1回から機材提供をはじめさまざまな場面で写真甲子園を支援し続けています。

写真甲子園2014が開催されました

「『くらし、しごと、社会』を半歩クリエーティブにするコミュニケーション誌」をコンセプトに、皆さまのビジネスや生活を豊かにする話題をお届けします。ご意見、ご感想を編集部までお寄せください。アンケートにお答えいただいた方の中から抽選で、下記のプレゼントを差し上げます。

読者プレゼント

「校舎の思い出プロジェクト」を開始 エーアンドエー株式会社がキヤノンMJグループ入り

『C-magazine』スペシャルページ『C-magazine』は、キヤノンホームページの会社情報ページからもご覧いただけます。

応募はコチラから

※応募締め切りは2014年10月19日(日)です。 当選者の発表はプレゼントの発送をもって代えさせていただきます。

canon.jp/cmag

特集「ビッグデータ×人間力」はいかがでしたか。記事の冒頭でご登場いただいた東京大学の星野准教授は、「ビッグデータそのものは過去の事実の積み重ねでしかない」と話されていました。それぞれの企業がその“事実の蓄積”に独自の工夫で「人間力」を掛け合わせ、付加価値の創造に結び付けるというお話はとても興味深いものばかりでした。それぞれに共通して言えるのは、いずれもその“事実”が発生する場所、つまり現場を大切にする姿勢でした。「事件は現場で起きている!」というセリフが有名なドラマがありましたが、「現場感」の大切さは、今も昔も変わらない、ということを強く感じました。 (川村)

編集後記

PIXUSのラインアップ刷新および新シリーズMAXIFY登場

キヤノンMJ会長 村瀬治男が、一般社団法人 日本経済団体連合会の審議員会副議長および、一般社団法人 日本映画テレビ技術協会の会長に就任しました。経団連審議員会とは経団連会長に助言を行う諮問機関で、村瀬は審議員会議長を補佐する18名の副議長の一人として、2016年6月までの2年間この要職に就きます。

また、日本映画テレビ技術協会は1947年に設立された法人団体で、映像技術全般にわたっての調査研究や、普及啓発などを行っています。村瀬は「日本がこの分野の国際的リーダーとなれるよう、協会長として業界の発展に貢献したい」と決意表明しました。

キヤノンMJ会長 村瀬治男が経団連の審議員会副議長および、日本映画テレビ技術協会会長に就任

山寺宏一さんサイン色紙

インクジェットプリンター「PIXUS MG7530」

キヤノンイーグルス レプリカジャージ

3名様

● 各モデルの発売日などの詳細に関しましては、PIXUSホームページ(canon.jp/pixus)およびMAXIFYホームページ(canon.jp/maxify)をそれぞれご確認下さい。

1名様

1名様

※ 右に掲載のオレンジ、ホワイト、ブラウン、ブラックのうち、ご希望のカラーをお送りいたします。

※ 当選者のご希望サイズをお送りいたします。

Canon Topics

35C-magazine 2014 Autumn 34

Page 19: C-magazine 2014年 秋号(vol.74) - Canon · 2014 Autumn Vol.74 ビッグデータ× 人間力 カルビー/ウェザーニューズ/ 帝国ホテル/すかいらーく/大阪ガス

 社会人ラグビーの全国リーグである、ジャパンラグビートップリーグ。2012年、このトップリーグへの昇格を果たしたのがキヤノンイーグルスです。2012-2013シーズンは11位、昨年度2013-2014シーズンは7位と、躍進を続けています。 8月末に、このジャパンラグビートップリーグの2014-2015シーズンが開幕。リーグチャンピオンを目指すキヤノンイーグルスは、監督・選手・スタッフがひとつとなり、熱い戦いを繰り広げています。1stステージ、イーグルスの対戦予定は右の通り。以降、今シーズンの戦いは来年のプレーオフトーナメントまで続きます。 試合会場に足を運べば、観客席でしか味わえない迫力に大興奮すること間違いなし。チケット情報はイーグルス公式ホームページに掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。また、オフィシャルグッズが割引購入できるほか、試合会場でチケット配布(会員1名様につき1枚まで)が受けられるなどの特典がうれしい、サポーターズクラブへの入会もこちらからお申し込みいただけます。 キヤノンイーグルスへのご声援をよろしくお願いします!

キヤノンイーグルスにご期待下さい !ジャパンラグビートップリーグ2014 -2015 シーズン開幕

www.canon-eagles.jp

試合日程 トップリーグ 1st ステージ

サントリーサンゴリアス

近鉄ライナーズ

NTTドコモレッドハリケーンズ

コカ・コーラレッドスパークス

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

対戦相手日にち ・ キックオフ 会場

9 月 5 日(金)19:30

9 月 14 日(日)16:00

9 月 20 日(土)19:00

10 月 12 日(日)13:00

10 月 19 日(日)13:00

秩父宮ラグビー場(東京)

ケーズデンキスタジアム水戸(茨城)

 秩父宮ラグビー場(東京)

大分市営陸上競技場(大分)

ニンジニアスタジアム(愛媛)

さまざまな特典が受けられるサポーターズクラブ入会や、チケットの購入については公式サイトへ !

※1stステージの成績によって決まる2ndステージ(2014年11月28日~2015年1月11日)以降の試合日程については、公式サイトで随時ご案内予定です。

2014・Autum

n 

第15巻第3号通巻74号 

平成26年9月1日発行︵季刊︶創刊2000年5月20日 

編集・発行/キヤノンマーケティングジャパン株式会社

コミュニケーション本部

広報部 

〒108-8011 

東京都港区港南2-

16

-6 

電話03 -

6719

-

9094

発行人/松阪喜幸 

編集人/上野

敦 

印刷/株式会社プレシーズ 

CMAGAZINEはソフトバンク

クリエイティブ株式会社の登録商標です。